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特開2022-146309電気化学反応単セルおよび電気化学反応セルスタック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146309
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】電気化学反応単セルおよび電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1226 20160101AFI20220928BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20220928BHJP
   H01M 8/2432 20160101ALI20220928BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20220928BHJP
   C25B 9/63 20210101ALI20220928BHJP
【FI】
H01M8/1226
H01M8/12 101
H01M8/2432
C25B9/00 A
C25B9/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047202
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸輔
(72)【発明者】
【氏名】松田 和幸
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA02
4K021DB46
4K021DB53
5H126AA02
5H126AA22
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE11
5H126GG02
(57)【要約】
【課題】電気化学反応単セルにおける金属支持体からの特定電極の剥離を抑制する。
【解決手段】電気化学反応単セルは、電解質層と、電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する燃料極および空気極と、燃料極と空気極との一方(特定電極)に対して電解質層とは反対側に位置する金属支持体とを備える。金属支持体は、第1の方向に貫通する複数の貫通孔を有する。特定電極は、複数の貫通孔の1つ(特定貫通孔)内に位置する電極孔内部を備える。電気化学反応単セルの第1の方向に沿った特定断面において、金属支持体の特定貫通孔を画定する2つの輪郭線の少なくとも一方は、第1の方向に沿って延伸する第1の延伸部と、第1の延伸部から第2の方向に沿って延伸する第2の延伸部と、第2の延伸部から第1の方向に沿って延伸する第3の延伸部とを備える段差部を有する。電極孔内部は、第2の延伸部の第1の方向の電解質層とは反対側に位置する特定部分を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、
前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する燃料極および空気極と、
前記燃料極と前記空気極との一方である特定電極に対して前記電解質層とは反対側に位置する金属支持体であって、前記第1の方向視で前記特定電極と重なる位置において前記第1の方向に貫通する複数の貫通孔を有する金属支持体と、を備える電気化学反応単セルにおいて、
前記特定電極は、前記複数の貫通孔の少なくとも1つである特定貫通孔内に位置する電極孔内部を備え、
前記電気化学反応単セルの前記第1の方向に沿った少なくとも1つの断面である特定断面において、
前記金属支持体の前記特定貫通孔を画定する2つの輪郭線の少なくとも一方は、
前記第1の方向の前記電解質層側の端部から延伸している第1の延伸部であって、前記第1の方向に沿って延伸している部分を含む第1の延伸部と、
前記第1の延伸部の前記第1の方向の前記電解質層とは反対側の端部から延伸している第2の延伸部であって、前記第1の方向に交差する第2の方向のうち、前記第1の延伸部によって画定される前記特定貫通孔の前記電解質層側部分の中心から遠ざかる方向である遠心方向に沿って延伸している部分を含む第2の延伸部と、
前記第2の延伸部の前記遠心方向の端部から延伸している第3の延伸部であって、前記第1の方向の前記電解質層とは反対側に沿って延伸している部分を含む第3の延伸部と、を備える第1の段差部を有し、
前記電極孔内部は、前記第2の延伸部に対して前記第1の方向の前記電解質層とは反対側に位置する特定部分を有する、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応単セルであって、
前記特定断面において、
前記特定部分は、前記第2の延伸部に接合されている、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応単セルであって、
前記特定断面において、
前記特定貫通孔は、前記電極孔内部の前記第1の方向の前記電解質層とは反対側に空間を有する、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セルであって、
前記金属支持体は、
板状の第1の金属部材であって、前記第2の延伸部を含む第1の表面と、前記第1の表面から前記第1の方向に貫通する貫通孔であって、前記第1の延伸部によって画定される前記特定貫通孔の前記電解質層側部分を構成する貫通孔と、を有する板状の第1の金属部材と、
前記第1の表面に接合される第2の表面を有する板状の第2の金属部材であって、前記第2の表面から前記第1の方向に貫通する貫通孔であって、前記第2の延伸部と前記第3の延伸部とによって画定される前記特定貫通孔の前記電解質層とは反対側の部分を構成する貫通孔を有する第2の金属部材と、を含む、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セルであって、
前記特定断面において、
前記金属支持体の前記特定貫通孔を画定する前記2つの輪郭線の他方は、
前記第1の方向の前記電解質層側の端部から延伸している第4の延伸部であって、前記第1の方向に沿って延伸している部分を含む第4の延伸部と、
前記第4の延伸部の前記第1の方向の前記電解質層とは反対側の端部から延伸している第5の延伸部であって、前記第2の方向のうち、前記第4の延伸部によって画定される前記特定貫通孔の前記電解質層側部分の中心に近づく方向である求心方向に沿って延伸している部分を含む第5の延伸部と、
前記第5の延伸部の前記求心方向の端部から延伸している第6の延伸部であって、前記第1の方向の前記電解質層とは反対側に沿って延伸している部分を含む第6の延伸部と、を備える第2の段差部を有し、
前記特定電極は、前記第5の延伸部に接合されている、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セルと、前記特定電極が面するガス室とをそれぞれ有し、前記第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタックであって、
少なくとも1つの前記電気化学反応単位において、
前記遠心方向は、前記第2の方向の前記ガス室におけるガス流れの方向とは反対の方向である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応単セルおよび電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCの構成単位である燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)は、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に互いに対向する燃料極および空気極とを備える。
【0003】
単セルの一形態として、金属支持型(メタルサポート型)の単セルが知られている。金属支持型の単セルは、燃料極と空気極との一方(以下、「特定電極」という。)に対して電解質層とは反対側に配置された金属支持体を備え、金属支持体によって単セルにおける他の部分(電解質層等)を支持する。一般に、金属支持型の単セルは、他のタイプ(例えば燃料極支持型)の単セルと比較して、熱衝撃による割れが生じにくく、また起動性が高い。
【0004】
金属支持型の単セルでは、金属支持体に、発電に供される反応ガスを通過させるために、金属支持体の一方の表面から他方の表面まで貫通する複数の貫通孔が形成されている。従来、金属支持体に、第1の方向視で特定電極と重なる位置において第1の方向に貫通する複数の貫通孔が形成され、特定電極は、その全体が金属支持体の貫通孔に対して第1の方向の電解質層側に位置する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5423093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の金属支持型の単セルでは、上述したように、特定電極は、その全体が金属支持体の貫通孔に対して上記第1の方向の電解質層側に位置しており、換言すれば、金属支持体の貫通孔内に位置する部分を備えていない。この単セルでは、金属支持体に形成された複数の当該貫通孔の存在により特定電極と金属支持体との接触面積が小さくなることに起因して、特定電極と金属支持体との接合強度が低下し、ひいては金属支持体からの特定電極の剥離が生じるおそれがある。
【0007】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解単セルにも共通の問題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて、電気化学反応単セルと呼ぶ。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される電気化学反応単セルは、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する燃料極および空気極と、前記燃料極と前記空気極との一方である特定電極に対して前記電解質層とは反対側に位置する金属支持体であって、前記第1の方向視で前記特定電極と重なる位置において前記第1の方向に貫通する複数の貫通孔を有する金属支持体と、を備える電気化学反応単セルにおいて、前記特定電極は、前記複数の貫通孔の少なくとも1つである特定貫通孔内に位置する電極孔内部を備え、前記電気化学反応単セルの前記第1の方向に沿った少なくとも1つの断面である特定断面において、前記金属支持体の前記特定貫通孔を画定する2つの輪郭線の少なくとも一方は、前記第1の方向の前記電解質層側の端部から延伸している第1の延伸部であって、前記第1の方向に沿って延伸している部分を含む第1の延伸部と、前記第1の延伸部の前記第1の方向の前記電解質層とは反対側の端部から延伸している第2の延伸部であって、前記第1の方向に交差する第2の方向のうち、前記第1の延伸部によって画定される前記特定貫通孔の前記電解質層側部分の中心から遠ざかる方向である遠心方向に沿って延伸している部分を含む第2の延伸部と、前記第2の延伸部の前記遠心方向の端部から延伸している第3の延伸部であって、前記第1の方向の前記電解質層とは反対側に沿って延伸している部分を含む第3の延伸部と、を備える第1の段差部を有し、前記電極孔内部は、前記第2の延伸部に対して前記第1の方向の前記電解質層とは反対側に位置する特定部分を有する。
【0011】
本電気化学反応単セルにおいては、上述したように、特定電極(燃料極と空気極との一方)は、特定貫通孔(複数の貫通孔の少なくとも1つ)内に位置する電極孔内部を備える。特定断面において、金属支持体の特定貫通孔を画定する2つの輪郭線の一方である輪郭線は、上述した第1の延伸部と第2の延伸部と第3の延伸部とを備える第1の段差部を有する。特定電極の電極孔内部は、上記遠心方向(第1の方向に交差する第2の方向のうち、第1の延伸部によって画定される特定貫通孔の電解質層側部分の中心から遠ざかる方向)に延伸する第2の延伸部に対して第1の方向の電解質層とは反対側に位置する特定部分を有する。本電気化学反応単セルでは、金属支持体の第1の段差部と特定電極の特定部分とを引き離す力(第1の方向に略平行な力)が作用したときに、特定電極の特定部分が金属支持体の第1の段差部に係合してアンカーとして効果的に機能する。そのため、本電気化学反応単セルでは、特定電極と金属支持体とにおける相対的な第1の方向(より詳細には、第1の方向のうち、特定電極と金属支持体とが離れる方向)の位置ずれを抑制することができ、ひいては、金属支持体からの特定電極の剥離を抑制することができる。
【0012】
(2)上記電気化学反応単セルにおいて、前記特定断面において、前記特定部分は、前記第2の延伸部に接合されている構成としてもよい。電極孔内部の第1の方向の長さが長くなるほど、金属支持体の貫通孔を通る反応ガスの流通性は悪化し、ひいては、上記電気化学反応単セルの性能は低下する。本電気化学反応単セルにおいては、上述したように、特定断面において、特定電極の特定部分が上記遠心方向(第1の方向に交差する第2の方向のうち、第1の延伸部によって画定される特定貫通孔の電解質層側部分の中心から遠ざかる方向)に沿って延伸する第2の延伸部に接合されているため、特定電極の特定部分が第1の方向に沿って延伸する部分に接合される構成と比較して、電極孔内部の第1の方向の長さを長くせずに特定電極と金属支持体との接触面積を大きくすることができる。従って、本電気化学反応単セルによれば、金属支持体の貫通孔を通る反応ガスの流通性に起因する上記電気化学反応単セルの性能の低下を抑制しつつ、特定電極と金属支持体との接合強度を向上させることができる。
【0013】
(3)上記電気化学反応単セルにおいて、前記特定断面において、前記特定貫通孔は、前記電極孔内部の前記第1の方向の前記電解質層とは反対側に空間を有する構成としてもよい。本電気化学反応単セルにおいては、上述したように、金属支持体が第1の段差部を有し、かつ、特定電極が特定部分を有することにより、金属支持体からの特定電極の剥離を抑制することができる。本電気化学反応単セルによれば、このような効果が得られるものでありながら、上述したように特定貫通孔が電極孔内部の第1の方向の電解質層とは反対側に空間を有することにより、特定貫通孔が当該空間を有さない構成(例えば特定貫通孔の全体に渡って特定電極が充填された構成)と比較して、特定貫通孔を通る反応ガスの流通性を向上させることができ、ひいては、上記電気化学反応単セルの性能を向上させることができる。
【0014】
(4)上記電気化学反応単セルにおいて、前記金属支持体は、板状の第1の金属部材であって、前記第2の延伸部を含む第1の表面と、前記第1の表面から前記第1の方向に貫通する貫通孔であって、前記第1の延伸部によって画定される前記特定貫通孔の前記電解質層側部分を構成する貫通孔と、を有する板状の第1の金属部材と、前記第1の表面に接合される第2の表面を有する板状の第2の金属部材であって、前記第2の表面から前記第1の方向に貫通する貫通孔であって、前記第2の延伸部と前記第3の延伸部とによって画定される前記特定貫通孔の前記電解質層とは反対側の部分を構成する貫通孔を有する第2の金属部材と、を含む構成としてもよい。本電気化学反応単セルにおいては、第1の段差部は、上述した第1の金属部材と第2の金属部材とを接合する際に、板状である第1の金属部材の上記貫通孔と、板状である第2の金属部材の上記貫通孔との相対位置を調節することにより容易に実現(製造)することができる。また、特定電極の特定部分は、特定電極を形成する材料(例えば、ペースト。以下、「電極材料」という。)を、板状である第1の金属部材の上記貫通孔と、板状である第2の金属部材の上記貫通孔とのそれぞれに充填することにより特定電極を形成する際に、各貫通孔に充填する電極材料の構成(例えば、充填量や充填位置)を調節することにより容易に実現(製造)することができる。
【0015】
(5)上記電気化学反応単セルにおいて、前記特定断面において、前記金属支持体の前記特定貫通孔を画定する前記2つの輪郭線の他方は、前記第1の方向の前記電解質層側の端部から延伸している第4の延伸部であって、前記第1の方向に沿って延伸している部分を含む第4の延伸部と、前記第4の延伸部の前記第1の方向の前記電解質層とは反対側の端部から延伸している第5の延伸部であって、前記第2の方向のうち、前記第4の延伸部によって画定される前記特定貫通孔の前記電解質層側部分の中心に近づく方向である求心方向に沿って延伸している部分を含む第5の延伸部と、前記第5の延伸部の前記求心方向の端部から延伸している第6の延伸部であって、前記第1の方向の前記電解質層とは反対側に沿って延伸している部分を含む第6の延伸部と、を備える第2の段差部を有し、前記特定電極は、前記第5の延伸部に接合されている構成としてもよい。本電気化学反応単セルにおいては、特定電極のうち、金属支持体の第5の延伸部に接合されている部分が特定貫通孔の第1の方向に沿って延伸する部分に接合される構成と比較して、電極孔内部の第1の方向の長さを長くせずに特定電極と金属支持体との接触面積を大きくすることができる。従って、本電気化学反応単セルにおいては、より効果的に、金属支持体の貫通孔を通る反応ガスの流通性に起因する上記電気化学反応単セルの性能の低下を抑制しつつ、特定電極と金属支持体との接合強度を向上させることができる。
【0016】
(6)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、上記(1)から(5)までのいずれか一つに記載の電気化学反応単セルと、前記特定電極が面するガス室とをそれぞれ有し、前記第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位を備え、少なくとも1つの前記電気化学反応単位において、前記遠心方向(前記第1の方向に交差する第2の方向のうち、前記第1の延伸部によって画定される前記特定貫通孔の前記電解質層側部分の中心から遠ざかる方向)は、前記第2の方向の前記ガス室におけるガス流れの方向とは反対の方向である。そのため、本電気化学反応セルスタックにおいては、第1の段差部は、上記遠心方向に、第1の延伸部、第2の延伸部、第3の延伸部の順に位置する構成である。本電気化学反応セルスタックにおいては、更に、上述したように上記遠心方向は第2の方向(第1の方向に交差する方向)の燃料室におけるガスの流れの方向とは反対の方向であるため、第1の段差部は、第2の方向において、ガスの流れの方向に、第3の延伸部、第2の延伸部、第1の延伸部の順に位置する構成である。この第3の延伸部、第2の延伸部、第1の延伸部という並び順は、第1の方向のガス流れの方向(第1の方向の金属支持体に対して電解質層の方向)とも一致している。そのため、本電気化学反応単セルによれば、例えば上記遠心方向がガス流れの方向である構成(つまり、ガス流れの方向に、第1の延伸部、第2の延伸部、第3の延伸部の順に位置する構成)等と比較して、特定貫通孔を通る反応ガスの流通性を向上させることができ、ひいては、上記電気化学反応単セルの性能を向上させることができる。
【0017】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応単セル(燃料電池単セルまたは電解単セル)、複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
図6】本実施形態における単セル110の詳細構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.実施形態:
A-1.燃料電池スタック100の構成:
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
【0020】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態ではZ軸方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。上記配列方向(Z軸方向)は、特許請求の範囲における第1の方向の一例である。発電単位102は、特許請求の範囲における電気化学反応単位の一例である。
【0021】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、Z軸方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士がZ軸方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたってZ軸方向に延びる貫通孔108を構成している。以下の説明では、貫通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、貫通孔108と呼ぶ場合がある。
【0022】
各貫通孔108にはZ軸方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ナット24と各エンドプレート104,106(または後述するガス通路部材27)との間には、絶縁シート26が介在している。
【0023】
各ボルト22の軸部の外周面と各貫通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、1つのボルト22(ボルト22A)と該ボルト22Aが挿通された貫通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOG(例えば空気)が導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の空気室166に供給するガス流路である空気極側ガス供給マニホールド161として機能し、他の1つのボルト22(ボルト22B)と該ボルト22Bが挿通された貫通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する空気極側ガス排出マニホールド162として機能する。また、図1および図3に示すように、他の1つのボルト22(ボルト22D)と該ボルト22Dが挿通された貫通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFG(例えば水素リッチなガス)が導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の燃料室176に供給する燃料極側ガス供給マニホールド171として機能し、他の1つのボルト22(ボルト22E)と該ボルト22Eが挿通された貫通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料極側ガス排出マニホールド172として機能する。
【0024】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の本体部28の孔は、各ガス通路部材27の設置位置に設けられた各マニホールド161,162,171,172に連通している。
【0025】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向に略直交する平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、該発電単位102と電気的に接続されている。他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置され、該発電単位102と電気的に接続されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0026】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0027】
図4および図5に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、セパレータ120と、空気極側フレーム部材130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム部材140と、燃料極側集電体144と、一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム部材130、燃料極側フレーム部材140、インターコネクタ150の周縁部には、上述したボルト22が挿通される貫通孔108に対応する孔が形成されている。
【0028】
インターコネクタ150は、Z軸方向に略直交する平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
【0029】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んでZ軸方向に互いに対向する空気極114および燃料極116とを備える。単セル110は、さらに、燃料極116(より詳細には、後述する燃料極116の基部117)に対して電解質層112とは反対側(下側)に配置された金属支持体180を備える。
【0030】
金属支持体180は、Z軸方向に略直交する平板形状の導電性部材であり、金属(例えばステンレス)により形成されている。金属支持体180は、単セル110における他の構成要素(電解質層112等)を支持している。このように、本実施形態の単セル110は、金属支持体180によって単セル110の機械的強度を確保する、いわゆる金属支持型(メタルサポート型)の単セルである。金属支持型の単セルは、他のタイプ(例えば燃料極支持型)の単セルと比較して、熱衝撃による割れが生じにくく、また起動性が高い。後述するように、金属支持体180には、燃料ガスFGを通過させるための複数の貫通孔50が形成されている(図6参照)。
【0031】
電解質層112は、Z軸方向に略直交する平板形状部材であり、緻密な層である。本実施形態では、電解質層112は、燃料極116における上側の表面と、金属支持体180における上側の表面の内、燃料極116に覆われていない領域とを連続的に覆うように形成されている。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)等の固体酸化物により形成されている。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向に略直交する平板形状部材であり、多孔質な層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))により形成されている。燃料極116は、Z軸方向に略直交する平板形状部材であり、多孔質な層である。燃料極116は、例えば、Niと酸化物イオン伝導性セラミックス粒子(例えば、YSZ)とからなるサーメットにより形成されている。本実施形態では、燃料極116は、特許請求の範囲における特定電極に相当する。
【0032】
セパレータ120は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えばステンレスにより形成されている。セパレータ120における孔121を取り囲む部分は、例えばロウ材を含む接合部124により、単セル110(電解質層112)の周縁部と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画される。
【0033】
空気極側フレーム部材130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えばマイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム部材130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム部材130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。空気極側フレーム部材130には、空気極側ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する空気極側ガス供給連通流路132と、空気室166と空気極側ガス排出マニホールド162とを連通する空気極側ガス排出連通流路133とが形成されている。
【0034】
燃料極側フレーム部材140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えばステンレスにより形成されている。燃料極側フレーム部材140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム部材140には、燃料極側ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料極側ガス供給連通流路142と、燃料室176と燃料極側ガス排出マニホールド172とを連通する燃料極側ガス排出連通流路143とが形成されている。
【0035】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置された複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えばステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。ただし、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、該発電単位102における空気極側集電体134は、空気極114と上側のエンドプレート104とを電気的に接続する(図2および図3参照)。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として構成されていてもよい。
【0036】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置された複数の略四角柱状の集電体要素145から構成されており、例えばステンレスにより形成されている。燃料極側集電体144は、金属支持体180とインターコネクタ150とを電気的に接続する。ただし、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、該発電単位102における燃料極側集電体144は、金属支持体180と下側のエンドプレート106とを電気的に接続する(図2および図3参照)。なお、燃料極側集電体144とインターコネクタ150とが一体の部材として構成されていてもよい。
【0037】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガスOGは、空気極側ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)から、該ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して空気極側ガス供給マニホールド161に供給され、空気極側ガス供給マニホールド161から各発電単位102の空気極側ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガスFGは、燃料極側ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)から、該ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料極側ガス供給マニホールド171に供給され、燃料極側ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料極側ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
【0038】
各発電単位102において、空気室166に供給された酸化剤ガスOGが多孔質な空気極114内に進入し、かつ、燃料室176に供給された燃料ガスFGが金属支持体180に形成された複数の貫通孔50を通って多孔質な燃料極116内に進入すると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は、空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は、金属支持体180および燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0039】
図2および図4に示すように、各発電単位102の空気室166から空気極側ガス排出連通流路133を介して空気極側ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、空気極側ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)から燃料電池スタック100の外部に排出される。また、図3および図5に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料極側ガス排出連通流路143を介して燃料極側ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料極側ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)から燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0040】
A-3.単セル110の詳細構成:
図6は、本実施形態における単セル110の詳細構成を示す説明図である。図6には、図5のX1部における単セル110のYZ断面構成が拡大して示されている。なお、図5および図6に示す単セル110の断面は、Z軸方向に沿った断面であり、特許請求の範囲における特定断面の一例である。
【0041】
図6に示すように、本実施形態における単セル110では、金属支持体180に複数の貫通孔50が形成されている。金属支持体180において、各貫通孔50は、燃料極116(より詳細には、燃料極116における電解質層112に近い側の一部分である基部117)に接する上面S11から、上面S11とは反対側の下面S22まで貫通している。このことから、各貫通孔50はZ軸方向に貫通する孔であるといえる。
【0042】
本実施形態では、金属支持体180は、2枚の板状部材(第1の金属部材181および第2の金属部材182)がZ軸方向に積層された構成を有している。第2の金属部材182は、第1の金属部材181の下側に配置されており、例えば溶接によって第1の金属部材181と接合されている。本実施形態では、第1の金属部材181の厚さと第2の金属部材182の厚さとは、略同一である。なお、第1の金属部材181の下面S12は、特許請求の範囲における第1の表面の一例であり、第2の金属部材182の上面S21は、特許請求の範囲における第2の表面の一例である。
【0043】
金属支持体180に形成された各貫通孔50は、金属支持体180の上面S11における開口53を含む第1の部分51を有している。各貫通孔50の第1の部分51は、金属支持体180を構成する第1の金属部材181に形成されている。第1の金属部材181において、各第1の部分51は、燃料極116に接する電解質層112側の上面S11から、上面S11とは反対側の下面S12まで貫通している。このことから、各貫通孔50の第1の部分51はZ軸方向に延伸しているといえる。ここでいう「ある方向に沿って延伸している」とは、当該方向に略直線状に延伸していることを意味し、その延伸方向について、±10°までの誤差が許容されるものであってもよい(以下、同様)。
【0044】
また、金属支持体180に形成された各貫通孔50は、第1の部分51に加えて、第1の部分51に連通する第2の部分52を有している。第2の部分52は、金属支持体180の下面S22における開口54を含む部分である。すなわち、本実施形態では、各貫通孔50は、第1の部分51と第2の部分52とから構成されている。各貫通孔50において、第2の部分52は、Z軸方向視における輪郭線が第1の部分51の輪郭線と重ならないように位置し、かつ、Z軸方向に延伸している。
【0045】
金属支持体180の各貫通孔50を画定する2つの輪郭線(OL1,OL2)の一方(本実施形態ではY軸正方向)である輪郭線OL1は、第1の延伸部OL11と第2の延伸部OL12と第3の延伸部OL13とを備える第1の段差部OL10を有している。
【0046】
金属支持体180の輪郭線OL1の第1の延伸部OL11は、輪郭線OL1のZ軸正方向の端部から延伸している。第1の延伸部OL11は、Z軸方向に沿って延伸している部分を含んでいる。この「Z軸正方向」は、Z軸方向の電解質層112側である、といえる(以下、同様)。本実施形態では、第1の延伸部OL11は、その全体がZ軸方向に沿って延伸しているが、一部のみがZ軸方向に沿って延伸しているものであってもよい。例えば、金属支持体180の貫通孔50を画定する面(のZ軸方向の電解質層112側)に面取りを施した際には、第1の延伸部OL11のZ軸方向の電解質層112側の端部は、Z軸方向に対して傾いた方向に延伸するテーパー状となる(後述する第2~6の延伸部OL12,OL13,OL24,OL25,OL26について面取りを施した場合も同様)。本実施形態では、第1の延伸部OL11は、第1の金属部材181の貫通孔50の第1の部分51を画定する部分である。以上のことから、第1の金属部材181は、第2の延伸部OL12を含む下面S12と、下面S12からZ軸方向に貫通する貫通孔(第1の部分51)とを有している、といえる。当該貫通孔(第1の部分51)は、第1の延伸部OL11によって画定される貫通孔50の電解質層112側部分を構成している。
【0047】
金属支持体180の輪郭線OL1の第2の延伸部OL12は、第1の延伸部OL11のZ軸負方向の端部から延伸している。第2の延伸部OL12は、Y軸正方向に沿って延伸している部分を含んでいる。本実施形態では、第2の延伸部OL12は、その全体がY軸正方向に沿って延伸しているが、一部のみがY軸正方向に沿って延伸しているものであってもよい。この「Y軸正方向」は、Y軸方向(Z軸方向に交差する方向)のうち、第1の延伸部OL11によって画定される貫通孔50の電解質層112側部分の中心から遠ざかる方向CFD(以下、「遠心方向CFD」という。)である、といえる。本実施形態では、金属支持体180の輪郭線OL1の第2の延伸部OL12は、第1の金属部材181の下面S12の一部である。また、遠心方向CFD(Y軸正方向)は、X軸方向の燃料室176における反応ガス(酸化剤ガスOG)の流れの方向(Y軸負方向)とは反対の方向である、といえる。
【0048】
金属支持体180の輪郭線OL1の第3の延伸部OL13は、第2の延伸部OL12のY軸正方向(遠心方向CFD)の端部から延伸している。第3の延伸部OL13は、Z軸負方向に沿って延伸している部分を含んでいる。本実施形態では、第3の延伸部OL13は、その全体がZ軸負方向に沿って延伸しているが、一部のみがZ軸負方向に沿って延伸しているものであってもよい。この「Z軸負方向」は、Z軸方向の電解質層112とは反対側であるといえる(以下、同様)。本実施形態では、第3の延伸部OL13は、貫通孔50の第2の部分52を画定する部分である。第2の金属部材182は、第1の金属部材181の下面S12に接合される上面S21を有し、かつ、上面S21からZ軸方向に貫通する貫通孔(第2の部分52)を有している。当該貫通孔(第2の部分52)は、第2の延伸部OL12と第3の延伸部OL13とによって画定される貫通孔50のZ軸負方向(Z軸方向の電解質層112とは反対側)の部分を構成している。
【0049】
燃料極116は、各貫通孔50について、基部117に連なり、かつ、貫通孔50内に位置する部分118(以下、「孔内部118」という。)を備えている。燃料極116の孔内部118は、特許請求の範囲における電極孔内部の一例である。各孔内部118は、第2の延伸部OL12に対してZ軸負方向(Z軸方向の電解質層112とは反対側)に位置する部分119(以下、「特定部分119」という。)を有している。
【0050】
本実施形態では、燃料極116の特定部分119は、金属支持体180の第2の延伸部OL12に接合されている。
【0051】
金属支持体180の各貫通孔50を画定する2つの輪郭線(OL1,OL2)の他方である輪郭線OL2は、第4の延伸部OL24と第5の延伸部OL25と第6の延伸部OL26とを備える第2の段差部OL20を有する。第4の延伸部OL24は、輪郭線OL2のZ軸正方向(Z軸方向の電解質層112側)の端部から延伸している。第4の延伸部OL24は、Z軸方向に沿って延伸している部分を含んでいる。第5の延伸部OL25は、第4の延伸部OL24のZ軸負方向(Z軸方向の電解質層112とは反対側)の端部から延伸している。第5の延伸部OL25は、Y軸正方向に沿って延伸している部分を含んでいる。この「Y軸正方向」は、Y軸方向のうち、第4の延伸部OL24によって画定される貫通孔50の電解質層112側部分の中心に近づく方向CPD(以下、「求心方向CPD」という。)である、といえる。第6の延伸部OL26は、第5の延伸部OL25のX軸正方向(求心方向CPD)の端部からZ軸負方向(Z軸方向の電解質層112とは反対側)に沿って延伸している部分である。
【0052】
本実施形態では、燃料極116は、金属支持体180の第5の延伸部OL25に接合されている。
【0053】
各貫通孔50は、燃料極116の各孔内部118のZ軸負方向(Z軸方向の電解質層112とは反対側)に空間SPを有している。燃料室176に供給された反応ガス(燃料ガスFG)は、該空間SPから燃料極116の各孔内部118の空隙内を進行し、さらに燃料極116の基部117の空隙内を進行して、反応場に供給される。
【0054】
なお、本実施形態では、単セル110のXY断面における各貫通孔50形状は、円形である。各貫通孔50の径は、金属支持体180の上面S11における開口53の位置から下面S22における開口54の位置にわたって略一定である。また、複数の貫通孔50の径は、互いに略同一である。
【0055】
このような構成の単セル110は、例えば以下の製造方法により製造することができる。まず、金属支持体180を構成する第1の金属部材181および第2の金属部材182を準備し、孔開け加工によって第1の金属部材181に各貫通孔50の第1の部分51を形成すると共に、第2の金属部材182に各貫通孔50の第2の部分52を形成する。次に、第1の金属部材181と第2の金属部材182とを、各第1の部分51が各第2の部分52と連通し、かつ第1の段差部OL10および第2の段差部OL20が形成されるように位置を合わせて、例えば溶接によって接合することにより、金属支持体180を作製する。なお、本実施形態では、第1の金属部材181と第2の金属部材182とを接合する際に、板状である第1の金属部材181の上記貫通孔(第1の部分51)と、板状である第2の金属部材182の上記貫通孔(第2の部分52)との相対位置を調節することにより第1の段差部OL10および第2の段差部OL20を容易に実現(製造)することができる。
【0056】
次に、燃料極116の孔内部118および基部117のそれぞれを形成するためのペーストを調製する。そして、孔内部118を形成するためのペーストを、金属支持体180に形成された各貫通孔50に充填する。このとき、金属支持体180の各貫通孔50の最下部の一部分(第2の部分52における下側の一部分)に例えば樹脂を充填しておくことにより、孔内部118を形成するためのペーストが該部分には充填されないようにする。その後、基部117を形成するためのペーストを、金属支持体180の上面S11に塗布することによって成膜する。なお、孔内部118を形成するためのペーストと基部117を形成するためのペーストとは、同一組成であってもよいし、互いに異なる組成であってもよい。
【0057】
次に、電解質層112を形成するためのペーストを調製し、燃料極116の基部117を形成するためのペーストの塗膜上に塗布することによって成膜する。このようにして作製された積層体を所定の温度で焼成することにより、電解質層112および燃料極116を形成し、金属支持体180と電解質層112と燃料極116との積層体を得る。次に、空気極114を形成するためのペーストを調製し、電解質層112上に塗布することによって成膜する。このようにして作製された積層体を所定の温度で焼成することにより、空気極114を形成し、上述した構成の単セル110を得る。なお、本実施形態では、燃料極116を形成するペーストを、板状である第1の金属部材181の上記貫通孔(第1の部分51)と、板状である第2の金属部材182の上記貫通孔(第2の部分52)とのそれぞれに充填することにより燃料極116を形成する際に、各貫通孔(51,52)に充填する電極材料の構成(例えば、充填量や充填位置)を調節することにより燃料極116の特定部分119を容易に実現(製造)することができる。
【0058】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んでZ軸方向に互いに対向する燃料極116および空気極114と、金属支持体180とを備える。金属支持体180は、燃料極116に対して電解質層112とは反対側に位置する部材である。金属支持体180は、Z軸方向視で燃料極116と重なる位置においてZ軸方向に貫通する複数の貫通孔50を有する。燃料極116は、複数の貫通孔50の少なくとも1つである貫通孔(以下、「特定貫通孔」という。)内に位置する孔内部118を備える。単セル110のZ軸方向に沿った少なくとも1つの断面(例えば、図5および図6に示す単セル110の断面。以下、「特定断面」という。)において、金属支持体180の特定貫通孔を画定する2つの輪郭線(OL1,OL2)の一方である輪郭線OL1は、第1の延伸部OL11と第2の延伸部OL12と第3の延伸部OL13とを備える第1の段差部OL10を有する。第1の延伸部OL11は、輪郭線OL1のZ軸方向の電解質層112側の端部から延伸している。第1の延伸部OL11は、Z軸方向に沿って延伸している部分を含む。第2の延伸部OL12は、第1の延伸部OL11のZ軸方向の電解質層112とは反対側の端部から延伸している。第2の延伸部OL12は、Y軸方向(Z軸方向に交差する方向)のうち、第1の延伸部OL11によって画定される特定貫通孔の電解質層112側部分の中心から遠ざかる方向である遠心方向CFDに沿って延伸している部分を含む。第3の延伸部OL13は、第2の延伸部OL12の遠心方向CFDの端部から延伸している。第3の延伸部OL13は、Z軸方向の電解質層112とは反対側に沿って延伸している部分を含む。燃料極116の孔内部118は、第2の延伸部OL12に対してZ軸方向の電解質層112とは反対側に位置する特定部分119を有する。
【0059】
本実施形態の単セル110においては、上述したように、燃料極116は、特定貫通孔(複数の貫通孔50の少なくとも1つ)内に位置する孔内部118を備える。特定断面において、金属支持体180の特定貫通孔を画定する2つの輪郭線(OL1,OL2)の一方である輪郭線OL1は、上述した第1の延伸部OL11と第2の延伸部OL12と第3の延伸部OL13とを備える第1の段差部OL10を有する。燃料極116の孔内部118は、遠心方向CFD(X軸方向のうち、第1の延伸部OL11によって画定される特定貫通孔の単セル110側部分の中心から遠ざかる方向)に延伸する第2の延伸部OL12に対してZ軸方向の電解質層112とは反対側に位置する特定部分119を有する。本実施形態の単セル110では、金属支持体180の第1の段差部OL10と燃料極116の特定部分119とを引き離す力(Z軸方向に略平行な力)が作用したときに、燃料極116の特定部分119が金属支持体180の第1の段差部OL10に係合してアンカーとして効果的に機能する。そのため、本実施形態の単セル110によれば、燃料極116と金属支持体180とにおける相対的なZ軸方向(より詳細には、Z軸方向のうち、燃料極116と金属支持体180とが離れる方向)の位置ずれを抑制することができ、ひいては、金属支持体180からの燃料極116の剥離を抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態の単セル110は、特定断面において、燃料極116の特定部分119(第2の延伸部OL12に対してZ軸方向の電解質層112とは反対側に位置する部分)は、第2の延伸部OL12に接合されている。燃料極116の孔内部118のZ軸方向の長さが長くなるほど、金属支持体180の貫通孔50を通る反応ガス(酸化剤ガスOG)の流通性は悪化し、ひいては、単セル110の発電性能は低下する。本実施形態の単セル110においては、上述したように、特定断面において、燃料極116の特定部分119が遠心方向CFD(Y軸方向のうち、第1の延伸部OL11によって画定される特定貫通孔の電解質層112側部分の中心から遠ざかる方向)に沿って延伸する第2の延伸部OL12に接合されているため、燃料極116の特定部分119がZ軸方向に沿って延伸する部分に接合される構成と比較して、燃料極116の孔内部118のZ軸方向の長さを長くせずに燃料極116と金属支持体180との接触面積を大きくすることができる。従って、本実施形態の単セル110によれば、金属支持体180の貫通孔50を通る反応ガスの流通性に起因する単セル110の発電性能の低下を抑制しつつ、燃料極116と金属支持体180との接合強度を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態の単セル110は、特定断面において、特定貫通孔は、燃料極116の孔内部118のZ軸方向の電解質層112とは反対側に空間SPを有する。本実施形態の単セル110においては、上述したように、金属支持体180が第1の段差部OL10を有し、かつ、燃料極116が特定部分119を有することにより、金属支持体180からの燃料極116の剥離を抑制することができる。本実施形態の単セル110によれば、このような効果が得られるものでありながら、上述したように特定貫通孔が孔内部118のZ軸方向の電解質層112とは反対側に空間SPを有することにより、特定貫通孔が当該空間SPを有さない構成(例えば特定貫通孔の全体に渡って燃料極116が充填された構成)と比較して、特定貫通孔を通る反応ガスの流通性を向上させることができ、ひいては、単セル110の発電性能を向上させることができる。
【0062】
また、金属支持体180は、第1の金属部材181と第2の金属部材182とを含んでいる。第1の金属部材181は、板状部材であって、第2の延伸部OL12を含む下面S12と、下面S12からZ軸方向に貫通する貫通孔(第1の部分51)であって、第1の延伸部OL11によって画定される特定貫通孔の電解質層112側部分を構成する貫通孔(第1の部分51)とを有する。第2の金属部材182は、第1の金属部材181の下面S12に接合される上面S21を有する板状部材であって、上面S21からZ軸方向に貫通する貫通孔52であって、第2の延伸部OL12と第3の延伸部OL13とによって画定される特定貫通孔の電解質層112とは反対側の部分を構成する貫通孔52を有する。本実施形態の単セル110においては、第1の段差部OL10は、上述した第1の金属部材181と第2の金属部材182とを接合する際に、板状である第1の金属部材181の上記貫通孔(第1の部分51)と、板状である第2の金属部材182の上記貫通孔(第2の部分52)との相対位置を調節することにより容易に実現(製造)することができる。また、燃料極116の特定部分119は、燃料極116を形成する材料(例えば、ペースト。以下、「電極材料」という。)を、板状である第1の金属部材181の上記貫通孔(第1の部分51)と、板状である第2の金属部材182の上記貫通孔(第2の部分52)とのそれぞれに充填することにより燃料極116を形成する際に、各貫通孔(51,52)に充填する電極材料の構成(例えば、充填量や充填位置)を調節することにより燃料極116の特定部分119を容易に実現(製造)することができる。
【0063】
また、本実施形態の単セル110は、特定断面において、金属支持体180の特定貫通孔を画定する2つの輪郭線(OL1,OL2)の他方である輪郭線OL2は、第4の延伸部OL24と第5の延伸部OL25と第6の延伸部OL26とを備える第2の段差部OL20を有する。第4の延伸部OL24は、輪郭線OL2のZ軸方向の電解質層112側の端部から延伸している。第4の延伸部OL24は、Z軸方向に沿って延伸している部分を含む。本実施形態では、第4の延伸部OL24は、その全体がZ軸方向に沿って延伸しているが、一部のみがZ軸方向に沿って延伸しているものであってもよい。第5の延伸部OL25は、第4の延伸部OL24のZ軸方向の電解質層112とは反対側の端部から延伸している。第5の延伸部OL25は、Y軸方向のうち、第4の延伸部OL24によって画定される特定貫通孔の電解質層112側部分の中心に近づく方向である求心方向CPDに沿って延伸している部分を含む。本実施形態では、第5の延伸部OL25は、その全体が求心方向CPDに沿って延伸しているが、一部のみが求心方向CPDに沿って延伸しているものであってもよい。第6の延伸部OL26は、第5の延伸部OL25の求心方向CPDの端部から延伸している。第6の延伸部OL26は、Z軸方向の電解質層112とは反対側に沿って延伸している部分を含む。本実施形態では、第6の延伸部OL26は、その全体が、Z軸方向の電解質層112とは反対側に沿って延伸しているが、一部のみが、Z軸方向の電解質層112とは反対側に沿って延伸しているものであってもよい。燃料極116は、第5の延伸部OL25に接合されている。
【0064】
本実施形態の単セル110においては、上述したように、特定断面において、燃料極116は、求心方向CPD(Y軸方向のうち、第4の延伸部OL24によって画定される特定貫通孔の電解質層112側部分の中心に近づく方向)に沿って延伸する第5の延伸部OL25に接合されている。そのため、本実施形態の単セル110においては、燃料極116のうち、金属支持体180の第5の延伸部OL25に接合されている部分が特定貫通孔のZ軸方向に沿って延伸する部分に接合される構成と比較して、燃料極116の孔内部118のZ軸方向の長さを長くせずに燃料極116と金属支持体180との接触面積を大きくすることができる。従って、本実施形態の単セル110においては、より効果的に、金属支持体180の貫通孔50を通る反応ガスの流通性に起因する単セル110の発電性能の低下を抑制しつつ、燃料極116と金属支持体180との接合強度を向上させることができる。
【0065】
本実施形態の燃料電池スタック100は、単セル110と、燃料極116が面する燃料室176とをそれぞれ有し、Z軸方向に並べて配置された複数の発電単位102を備える。少なくとも1つの発電単位102において、遠心方向CFDは、Y軸方向の燃料室176におけるガス流れの方向とは反対の方向である。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100においては、第1の段差部OL10は、Y軸方向のうち、第1の延伸部OL11によって画定される特定貫通孔の電解質層112側部分の中心から遠ざかる方向である遠心方向CFDに、第1の延伸部OL11、第2の延伸部OL12、第3の延伸部OL13の順に位置する構成である。本実施形態の燃料電池スタック100においては、更に、上述したように遠心方向CFDはY軸方向の燃料室176におけるガスの流れの方向とは反対の方向であるため、第1の段差部OL10は、Y軸方向において、ガスの流れの方向に、第3の延伸部OL13、第2の延伸部OL12、第1の延伸部OL11の順に位置する構成である。この第3の延伸部OL13、第2の延伸部OL12、第1の延伸部OL11という並び順は、Z軸方向のガス流れの方向(Z軸方向の金属支持体180に対して電解質層112の方向)とも一致している。そのため、本実施形態の単セル110によれば、例えば遠心方向CFDがガス流れの方向である構成(換言すれば、ガス流れの方向に、第1の延伸部OL11、第2の延伸部OL12、第3の延伸部OL13の順に位置する構成)等と比較して、特定貫通孔を通る反応ガスの流通性を向上させることができ、ひいては、単セル110の発電性能を向上させることができる。
【0066】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0067】
上記実施形態における燃料電池スタック100や単セル110の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、金属支持体180に形成された各貫通孔50が、第1の部分51と第2の部分52とから構成されているが、貫通孔50の構成は、金属支持体180の輪郭線OL1が第1の段差部OL10を有する限りにおいて、必ずしもこれに限られない。例えば、金属支持体180に形成された貫通孔50が、第1の部分51および第2の部分52に加えて、第2の部分52に連通する第3の部分を有していてもよい。また、当該第3の部分が、第3の延伸部OL13のZ軸負方向の端部からY軸正方向(遠心方向CFDまたは求心方向CPD)に延伸する延伸部と、当該延伸部からZ軸負方向(Z軸方向の電解質層112とは反対側)に延伸する延伸部とを備える第3の段差部を有していてもよいし、同様に第4以降の段差部を有していても良い。
【0068】
上記実施形態(または変形例、以下同様)では、単セル110のXY断面における金属支持体180の各貫通孔50形状は、円形であるが、円形以外の形状(例えば矩形)であってもよい。また、上記実施形態では、各貫通孔50の径は、金属支持体180の上面S11における開口53の位置から下面S22における開口54の位置にわたって略一定であるが、いずれかの位置で異なっていてもよい。また、上記実施形態では複数の貫通孔50の構成は同様であるが、いずれかの貫通孔の構成が他の貫通孔の構成と異なっていてもよい。例えば、複数の貫通孔50の径は、互いに略同一であるが、互いに異なっていてもよい。
【0069】
上記実施形態では、金属支持体180が、Z軸方向に積層された第1の金属部材181および第2の金属部材182から構成されているが、金属支持体180の構成はこれに限られない。例えば、金属支持体180が、1枚の板状部材から構成されていてもよいし、Z軸方向に積層された3枚以上の板状部材から構成されていてもよい。また、金属支持体180がZ軸方向に積層された複数の板状部材から構成されている場合、各板状部材の厚さは互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0070】
上記実施形態では、特定貫通孔は、燃料極116の孔内部118のZ軸方向の電解質層112とは反対側に空間SPを有しているが、必ずしもこれに限られない。例えば、特定貫通孔の全体に渡って燃料極116が充填されていてもよい。
【0071】
上記実施形態では、金属支持体180(の輪郭線OL2)は、第4の延伸部OL24と第5の延伸部OL25と第6の延伸部OL26とを備える第2の段差部OL20を有するが、必ずしもこれに限られない。例えば、金属支持体180の輪郭線OL2は、後述する第7の延伸部と第8の延伸部と第9の延伸部とを備える構成であってもよい。第7の延伸部は、上記輪郭線(2つの輪郭線の一方)のZ軸方向の電解質層112側の端部からZ軸方向に沿って延伸している部分である。第8の延伸部は、第7の延伸部のZ軸方向の電解質層112とは反対側の端部から、Y軸方向(Z軸方向に交差する方向)のうち、第7の延伸部によって画定される特定貫通孔の電解質層112側部分の中心から遠ざかる方向である遠心方向に沿って延伸している部分である。第9の延伸部は、第8の延伸部の当該遠心方向の端部からZ軸方向の電解質層112とは反対側に沿って延伸している部分である。
【0072】
上記実施形態では、燃料極116の特定部分119は、金属支持体180の第2の延伸部OL12に接合されているが、接合されていなくてもよいし、接合されずに接触しているだけでもよいし、離隔していてもよい。
【0073】
上記実施形態では、単セル110は、燃料極116に対して電解質層112とは反対側に位置する金属支持体180を備え、かつ、金属支持体180(の輪郭線OL1)は、第1の延伸部OL11と第2の延伸部OL12と第3の延伸部OL13とを備える第1の段差部OL10を有し、かつ、燃料極116の孔内部118は、第2の延伸部OL12に対してZ軸方向の電解質層112とは反対側に位置する特定部分119を有する。このような金属支持体180に換えて、または加えて、後述する空気極側金属支持体を備える構成を採用してもよい。すなわち、単セル110は、空気極114に対して電解質層112とは反対側に位置する金属支持体(以下、「空気極側金属支持体」という。)を備え、かつ、特定断面(単セル110のZ軸方向に沿った少なくとも1つの断面)において、空気極側金属支持体の2つの輪郭線の一方は、第1の段差部OL10と同様の段差部(以下、「空気極側段差部」という。)を有し、かつ、空気極114は、特定部分119と同様の特定部分(以下、「空気極特定部分」という。)を有する構成を採用してもよい。具体的には、空気極側金属支持体は、Z軸方向視で空気極114と重なる位置においてZ軸方向に貫通する複数の貫通孔(以下、「空気極側貫通孔」という。)を有する。空気極側段差部は、後述する第10の延伸部と第11の延伸部と第12の延伸部とを備える。第10の延伸部は、空気極側金属支持体の上記輪郭線(2つの輪郭線の一方)のZ軸方向の電解質層112側の端部からZ軸方向に沿って延伸している部分である。第11の延伸部は、第10の延伸部のZ軸方向の電解質層112とは反対側の端部から、X軸方向(Z軸方向に交差する方向)のうち、第10の延伸部によって画定される空気極側特定貫通孔の電解質層112側部分の中心から遠ざかる方向である遠心方向に沿って延伸している部分である。第12の延伸部は、第11の延伸部の当該遠心方向の端部からZ軸方向の電解質層112とは反対側に沿って延伸している部分である。空気極114は、空気極側貫通孔の少なくとも1つである貫通孔(以下、「空気極側特定貫通孔」という。)内に位置する孔内部(以下、「空気極孔内部」という。)を備え、この空気極孔内部が空気極特定部分を有する。空気極特定部分は、空気極側金属支持体の第11の延伸部に対してZ軸方向の電解質層112とは反対側に位置する部分である。以上のような空気極側金属支持体を備える(かつ、空気極114が空気極孔内部を備える)構成においては、空気極側金属支持体の空気極側段差部と空気極特定部分の存在により、空気極114と空気極側金属支持体とにおける相対的なZ軸方向(より詳細には、Z軸方向のうち、空気極114と空気極側金属支持体とが離れる方向)の位置ずれを抑制することができ、ひいては、空気極側金属支持体からの空気極114の剥離を抑制することができる。また同様に、以上説明した空気極側金属支持体を備える(かつ、空気極114が空気極孔内部を備える)構成において上記実施形態の他の特徴的な構成を更に採用してもよい。なお、このような構成において、空気極114は、特許請求の範囲における特定電極の一例である。
【0074】
上記実施形態において、単セル110の空気極114と電解質層112との間に、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO)が生成されることを抑制する反応防止層が配置されるとしてもよい。反応防止層は、例えば、セリア系のイオン伝導体材料により形成される。
【0075】
上記実施形態において、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての単セル110において、上述した構成が実現されている必要はなく、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの単セル110において、上述した構成が実現されていればよい。例えば、上記実施形態では各単セル110が備える金属支持体180の構成は同様であるが、いずれかの単セルが備える金属支持体の構成が異なっていてもよい。また、上記実施形態では各単セル110が備える燃料極116の構成は同様であるが、いずれかの単セルが備える燃料極の構成が異なっていてもよい。
【0076】
上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。また、上記実施形態における単セル110の製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0077】
上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行う固体酸化物形燃料電池(SOFC)を対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルおよび複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、貫通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、貫通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解単セルにおいても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0078】
上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
22(22A~22E): ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 50:貫通孔 51:第1の部分 52:第2の部分 53:開口 54:開口 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104,106:エンドプレート 108:貫通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 117:基部 118:孔内部 119:特定部分 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム部材 131:孔 132:空気極側ガス供給連通流路 133:空気極側ガス排出連通流路 134:空気極側集電体 135:集電体要素 140:燃料極側フレーム部材 141:孔 142:燃料極側ガス供給連通流路 143:燃料極側ガス排出連通流路 144:燃料極側集電体 145:集電体要素 150:インターコネクタ 161:空気極側ガス供給マニホールド 162:空気極側ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料極側ガス供給マニホールド 172:燃料極側ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:金属支持体 181:第1の金属部材 182:第2の金属部材 CFD:遠心方向 CPD:求心方向 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OL10:第1の段差部 OL11:第1の延伸部 OL12:第2の延伸部 OL13:第3の延伸部 OL1:輪郭線 OL20:第2の段差部 OL24:第4の延伸部 OL25:第5の延伸部 OL26:第6の延伸部 OL2:輪郭線 OOG:酸化剤オフガス S11:上面 S12:下面 S21:上面 S22:下面 SP:空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6