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  • 特開-風車及び風力発電装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146321
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】風車及び風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
F03D3/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047221
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC01
3H178DD12Z
(57)【要約】
【課題】回転エネルギー変換効率を改善可能な風車を提供する。
【解決手段】実施形態に係る風車は、軸と、翼と、支持材とを備える。風車は、軸の中心軸回りに回転可能である。翼は、中心軸の方向である軸方向に沿って延在している翼本体部を有する。翼本体部は、軸方向に直交している断面視において、風車の回転方向の前方側の端である前縁と、回転方向の後方側の端である後縁とを含む。支持材は、軸方向に直交し、かつ中心軸を通る径方向に沿って延在することにより、軸と翼本体部とを接続している。支持材は、回転方向の前方側の端である前端と、回転方向の後方側の端である後端とを有する。前端と後端との中間位置を通り、かつ径方向に平行な直線は、前縁と後縁とを結んだ翼弦線の中点よりも後縁側において翼弦線と交差している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車であって、
軸と、翼と、支持材とを備え、
前記風車は、前記軸の中心軸回りに回転可能であり、
前記翼は、前記中心軸の方向である軸方向に沿って延在している翼本体部を有し、
前記翼本体部は、前記軸方向に直交している断面視において、前記風車の回転方向の前方側の端である前縁と、前記回転方向の後方側の端である後縁とを含み、
前記支持材は、前記軸方向に直交し、かつ前記中心軸を通る径方向に沿って延在することにより、前記軸と前記翼本体部とを接続しており、
前記支持材は、前記回転方向の前方側の端である前端と、前記回転方向の後方側の端である後端とを有し、
前記前端と前記後端との中間位置を通り、かつ前記径方向に平行な直線は、前記前縁と前記後縁とを結んだ翼弦線の中点よりも前記後縁側において前記翼弦線と交差している、風車。
【請求項2】
前記翼本体部側の端部にある前記前端は、前記翼弦線の方向において、前記後縁からの距離が前記翼弦線の長さの2/3となる位置よりも前記後縁側にある、請求項1に記載の風車。
【請求項3】
前記直線は、前記翼弦線と90°未満の角度をなしている、請求項1又は請求項2に記載の風車。
【請求項4】
前記翼本体部側の端部にある前記前端は、前記翼弦線の方向において、前記翼本体部の重心位置よりも前記後縁側にある、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の風車。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の前記風車と、
前記風車の前記中心軸回りの回転により発電を行う発電機とを備える、風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車及び風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-169292号公報(特許文献1)には、風力発電用の縦型風車が記載されている。特許文献1に記載の縦型風車は、回転体と、ブレード(翼)と、水平支持腕(支持材)とを有している。回転体は、中心軸回りに回転可能になっている。翼は、回転体の中心軸の方向(軸方向)に沿って延在している主部を有している。支持材は、軸方向に直交し、かつ回転体の中心軸を通る方向(径方向)に沿って延在することにより、ブレードの主部と回転体とを接続している。支持材は、径方向に直交している断面において、略魚形である。
【0003】
特許第5527783号公報(特許文献2)には、風力発電用のロータが記載されている。特許文献1に記載のロータは、回転軸と、ブレード(翼)と、支持台(支持材)とを有している。回転軸は、中心軸回りに回転可能になっている。翼は、回転軸の中心軸の方向(軸方向)に沿って延在している。支持材は、軸方向に直交し、かつ回転軸の中心軸を通る方向(径方向)に沿って延在することにより、ブレードと回転軸とを接続している。支持材は、径方向に直交している断面において、流線形である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-169292号公報
【特許文献2】特許第5527783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の風車及び特許文献2に記載のロータでは、径方向に直交している支持材の断面形状が略魚形又は流線形とされることにより、支持材自体の空気抵抗を低減して回転エネルギー変換効率が改善されている。しかしながら、特許文献1に記載の風車及び特許文献2に記載のロータでは、支持材と翼との接続部における気流の乱れには着眼されていない。そのため、特許文献1に記載の風車及び特許文献2に記載のロータは、回転エネルギー変換効率に改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、回転エネルギー変換効率を改善可能な風車及び風力発電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の風車は、軸と、翼と、支持材とを備えている。風車は、軸の中心軸回りに回転可能である。翼は、中心軸の方向である軸方向に沿って延在している翼本体部を有する。翼本体部は、軸方向に直交している断面視において、風車の回転方向の前方側の端である前縁と、回転方向の後方側の端である後縁とを含む。支持材は、軸方向に直交し、かつ中心軸を通る径方向に沿って延在することにより、軸と翼本体部とを接続している。支持材は、回転方向の前方側の端である前端と、回転方向の後方側の端である後端とを有する。前端と後端との中間位置を通り、かつ径方向に平行な直線は、前縁と後縁とを結んだ翼弦線の中点よりも後縁側において翼弦線と交差している。
【0008】
上記の風車では、翼本体部側の端部にある前端が、翼弦線の方向において、後縁からの距離が翼弦線の長さの2/3となる位置よりも後縁側にある。
【0009】
上記の風車では、前端と後端との中間位置を通り、かつ径方向に平行な直線が、翼弦線と90°未満の角度をなしていてもよい。
【0010】
上記の風車では、翼本体部側の端部にある前端が、翼弦線の方向において、翼本体部の重心位置よりも後縁側にあってもよい。
【0011】
本発明の風力発電装置は、上記の風車と、風車の中心軸回りの回転により発電を行う発電機とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の風車及び風力発電装置によると、回転エネルギー変換効率を改善可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】風力発電装置100の正面図である。
図2図1のII-IIにおける断面図である。
図3】翼本体部12aのアジマス角と風向との関係を示す模式図である。
図4】翼12が2枚である場合の風車10の回転時間と風車10に加わる回転トルクとの関係を示す模式的なグラフである。
図5】風力発電装置200の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0015】
(実施形態に係る風力発電装置の構成)
第1実施形態に係る風力発電装置(以下においては、「風力発電装置100」とする)の構成を説明する。
【0016】
図1は、風力発電装置100の正面図である。図1に示されるように、風力発電装置100は、風車10と、発電機20とを有している。発電機20は、風車10が後述する中心軸A回りに回転することにより、発電を行う。風力発電装置100は、図示しない支柱上に取り付けられることにより、高所に設置される。
【0017】
風車10は、垂直軸風車(縦型風車)である。風車10は、軸11と、翼12と、支持材13とを有している。軸11の中心軸を、中心軸Aとする。中心軸Aの方向を、軸方向とする。軸方向に直交し、かつ中心軸Aを通る方向を、径方向とする。風車10は、中心軸A回りに回転可能である。図1に示される例では、風車10は、中心軸Aに関して対称な位置に配置されている2つの翼12を有している。但し、翼12の数は、これに限られない。
【0018】
軸11は、軸方向に延在している。軸11は、中心軸A回りに回転可能である。翼12は、翼本体部12aと、翼端傾斜部12bと、翼端傾斜部12cとを有している。翼本体部12aは、軸方向に沿って延在している。図2は、図1のII-IIにおける断面図である。図2に示されるように、翼本体部12aは、例えば、軸方向に直交している断面視において、揚力形である。
【0019】
軸方向に直交している断面視において、翼本体部12aは、前縁12aaと、後縁12abとを有している。前縁12aaは、風車10の回転方向(図2中に矢印で示されている)の前方側にある翼本体部12aの端である。後縁12abは、風車10の回転方向の後方側にある翼本体部12aの端である。前縁12aaと後縁12abとを結んだ可能線を、翼弦線12acとする。翼弦線12acの方向を、翼弦方向とする。
【0020】
前縁12aaと後縁12abとの中間位置にある翼弦線12ac上の点を、中間位置MPとする。翼弦方向における中間位置MPと前縁12aaとの間の距離は、翼弦方向における中間位置MPと後縁12abとの間の距離に等しい。
【0021】
軸方向に直交している断面視における翼本体部12aの重心位置を、重心位置GPとする。翼弦方向に直交している方向における翼本体部12aの幅は、前縁12aa側で最大となり、そこから後縁12ab側に向かうにしたがって小さくなる。そのため、重心位置GPは、翼弦方向において中間位置MPよりも前縁12aa側にある。重心位置GPは、翼弦線12ac上にあってもよく、翼弦線12ac上になくてもよい。なお、図2には、重心位置GPが翼弦線12ac上にある場合の例が示されている。
【0022】
翼弦方向における後縁12abからの距離が翼弦長(翼弦線12acの長さ)の2/3になる位置を、位置Pとする。位置Pは、翼弦方向において、中間位置MP及び重心位置GPよりも前縁12aa側にある。
【0023】
翼本体部12aは、内側面12adと、外側面12aeとを有している。内側面12adは、翼本体部12aの表面のうちの中心軸A側(径方向内側)を向いている面である。外側面12aeは、翼本体部12aの表面のうちの中心軸Aとは反対側(径方向外側)を向いている面である。このことを別の観点から言えば、外側面12aeは、径方向における内側面12adの反対面である。
【0024】
図1に示されるように、翼端傾斜部12bは、翼本体部12aの軸方向における一方端(上端)に接続されている。翼端傾斜部12bは、径方向内側に向かって傾斜しながら、翼本体部12aの上端から上方に延在している。翼端傾斜部12cは、翼本体部12aの軸方向における他方端(下端)に接続されている。翼端傾斜部12cは、径方向内側に傾斜しながら、翼本体部12aの下端から下方に延在している。
【0025】
支持材13は、径方向に沿って延在している。支持材13が径方向に沿って延在していることにより、軸11と翼12(翼本体部12a)とが接続されている。支持材13は、翼本体部12aの内側面12ad側に接続されている。図2に示されるように、支持材13は、平面視において(軸方向に沿って見た際に)、前端13aと、後端13bとを有している。前端13aは、風車10の回転方向の前方側にある支持材13の端である。後端13bは、風車10の回転方向の後方側にある支持材13の端である。
【0026】
前端13aと後端13bとの中間位置を通り、かつ径方向に平行な直線を、直線13cとする。直線13c及び翼弦線12acは、交点CPで交わっている。交点CPは、翼弦方向において、中間位置MPよりも後縁12ab側にある。直線13cは、翼弦線12acとの間で角度θをなしている。角度θは、例えば、90°未満である。
【0027】
支持材13の翼本体部12a側の端部にある前端13aは、翼弦方向において、位置Pよりも後縁12ab側にある。好ましくは、支持材13の翼本体部12a側の端部にある前端13aは、翼弦方向において、重心位置GPよりも後縁12ab側にある。
【0028】
図示されていないが、径方向に直交している断面視において、支持材13は、例えば、流線型、楕円等の滑らかな形状になっている。
【0029】
図3は、翼本体部12aのアジマス角と風向との関係を示す模式図である。翼本体部12aのアジマス角は、風向が後縁12abから前縁12aaに向かう方向に対して90°回転しているときに、0°となる。図3の例では、翼本体部12aのアジマス角は、風車10が反時計回りに回転していくにしたがって翼本体部12aのアジマス角が増加し、風車10が1周すると翼本体部12aのアジマス角は、0°に戻る。
【0030】
図4は、翼12が2枚である場合の風車10の回転時間と風車10に加わる回転トルクとの関係を示す模式的なグラフである。図4に示されるように、風車10に加わる回転トルクは、翼本体部12aのアジマス角が0°付近になるときに、最大となる。
【0031】
(実施形態に係る風力発電装置の効果)
以下に、風力発電装置100の効果を、比較例に係る風力発電装置(以下においては、「風力発電装置200」とする)と対比しながら説明する。
【0032】
風力発電装置200は、風車10と、発電機20とを有している。図5は、風力発電装置200の断面図である。図5には、図1中のII-IIに対応する位置の断面が示されている。図5に示されるように、風力発電装置200では、風車10が、軸11(図5中において図示せず)と、翼12と、支持材13を有している。これらの点に関して、風力発電装置200の構成は、風力発電装置100の構成と共通している。
【0033】
しかしながら、風力発電装置200では、重心位置GPが、直線13c上にある。すなわち、風力発電装置200では、直線13cと翼弦線12acとの交点CPが、中間位置MPよりも前縁12aa側にある。この点に関して、風力発電装置200の構成は、風力発電装置100の構成と異なっている。なお、風力発電装置200では、直線13cと翼弦線12acとが、例えば直角をなしている。
【0034】
風力発電装置200では、重心位置GPが直線13c上にあるため、翼12(翼本体部12a)に加わる遠心力を支持材13により支持しやすい。しかしながら、風力発電装置200では、回転エネルギー変換効率に改善の余地がある。
【0035】
より具体的には、風車10の回転力を生み出しているのは、主として前縁12aa近傍にある内側面12adの周囲(図5中において点線で示されている領域、以下「負圧発生領域」とする)に発生する負圧である。風力発電装置200では、直線13c上に重心位置GPがあるように支持材13が翼本体部12aに接続されているため、支持材13と翼本体部12aとの接続部の位置が負圧発生領域に近くなる。支持材13と翼本体部12aとの接続部には、気流の乱れが発生しやすい。この気流の乱れが負圧発生領域を流れている気流に干渉する結果、負圧発生領域を流れる気流を内側面12adから剥離させ、風車10の回転力を低下させる。
【0036】
他方で、風力発電装置100では、直線13cと翼弦線12acとの交点CPが中間位置MPよりも後縁12ab側にあるため、風力発電装置100では、支持材13と翼本体部12aとの接続部を負圧発生領域から離すことができ、支持材13と翼本体部12aとの接続部で発生する気流の乱れが負圧発生領域に干渉しにくくなる。このように、風力発電装置100によると、支持材13と翼本体部12aとの接続部で発生する気流の乱れによる風車10の回転力低下を抑制することができるため、回転エネルギー変換効率を改善することができる。
【0037】
風力発電装置100において翼本体部12a側の支持材13の端部にある前端13aが翼弦方向において位置P(又は重心位置GP)よりも後縁12ab側にある場合、支持材13と翼本体部12aとの接続部を負圧発生領域からさらに離すことができるため、回転エネルギー変換効率をさらに改善することができる。
【0038】
風力発電装置100において直線13cと翼弦線12acとがなす角度(角度θ)が90°未満である場合、前縁12aa及び後縁12abの回転軌跡を同一径上に配置することが可能となるため、翼本体部12aの側方から見た際の投影面積が小さくなる。そのため、この場合には、風車10の回転抵抗を減らし、回転エネルギー変換効率を改善することができる。
【0039】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上記の実施形態は、垂直軸風車及び垂直軸風車を有する風力発電装置に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0041】
10 風車、11 軸、12 翼、12a 翼本体部、12aa 前縁、12ab 後縁、12ad 内側面、12ae 外側面、12b 翼端傾斜部、12c 翼端傾斜部、13 支持材、13a 前端、13b 後端、13c 直線、20 発電機、100,200 風力発電装置、A 中心軸、CP 交点、GP 重心位置、MP 中間位置、P 位置。
図1
図2
図3
図4
図5