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特開2022-146324スリーブ式電極およびスリーブ式電極を用いた接合方法
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  • 特開-スリーブ式電極およびスリーブ式電極を用いた接合方法 図1
  • 特開-スリーブ式電極およびスリーブ式電極を用いた接合方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146324
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】スリーブ式電極およびスリーブ式電極を用いた接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/04 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
B23K3/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047226
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小須田 桂一
(72)【発明者】
【氏名】乙部 鉄太郎
(57)【要約】
【課題】従来の金属接合技術で可能な平面度や平行度を維持し、より高精度で接合強度を上げることが可能な接合技術が求められている。
【解決手段】上部電極と下部電極とで被接合材を挟持し、接合を行う接合装置の電極であって、前記上部電極は、上側から順に上部第一電極と上部第二電極と上部第三電極が平面を介して配置され、該上部第三電極の外側に上部スリーブ電極が配置され、前記下部電極は、下側から順に平面を介して下部第一電極と下部第二電極と下部第三電極が配置され、該下部第三電極の外側に下部スリーブ電極が配置されていることを特徴とするスリーブ式電極。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極と下部電極とで被接合材を挟持し、接合を行う接合装置の電極であって、
前記上部電極は、上側から順に上部第一電極と上部第二電極と上部第三電極が平面を介して配置され、該上部第三電極の外側に上部スリーブ電極が配置され、
前記下部電極は、下側から順に平面を介して下部第一電極と下部第二電極と下部第三電極が配置され、該下部第三電極の外側に下部スリーブ電極が配置されていることを特徴とするスリーブ式電極。
【請求項2】
前記上部第三電極および前記下部第三電極は、被接合領域に合わせた形状であることを特徴とする請求項1記載のスリーブ式電極。
【請求項3】
前記上部スリーブ電極および前記下部スリーブ電極は、高熱伝導性材料であることを特徴とする請求項1、または2記載のスリーブ式電極。
【請求項4】
前記上部スリーブ電極および前記下部スリーブ電極は、前記被接合材と当接する面に、絶縁性の薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスリーブ式電極。
【請求項5】
前記上部スリーブ電極および前記下部スリーブ電極は、前記被接合材と当接する面に、薄い絶縁シートが嵌合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスリーブ式電極。
【請求項6】
前記上部第一電極および前記下部第一電極の材質は、CuまたはCu合金であり、前記上部第二電極および前記下部第二電極の材質は、カーボンまたはカーボン合金であり、前記上部第三電極および前記下部第三電極の材質は、WまたはW合金であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のスリーブ式電極。
【請求項7】
請求項1から6記載のスリーブ式電極を用いた接合方法であって、
前記上部スリーブ電極、および/または、前記下部スリーブ電極を被接合材に当接させた後、または同時に、前記上部第三電極と前記下部第三電極とを被接合材に当接させる工程と、
前記上部第一電極と前記上部第二電極と前記上部第三電極とを備える上部電極と、前記下部第一電極と前記下部第二電極と前記下部第三電極とを備える下部電極とを、通電させ、抵抗発熱により前記被接合材を抵抗溶接させる工程と、
前記上部第三電極と前記下部第三電極とを、被接合材から離間させた後に、前記上部スリーブ電極、および/または、前記下部スリーブ電極を被接合材から離間させる工程とを有することを特徴とするスリーブ式電極を用いた接合方法。
【請求項8】
請求項1から6記載のスリーブ式電極を用いた接合方法であって、
前記上部スリーブ電極、および/または、前記下部スリーブ電極を被接合材に当接させた後、または同時に、前記上部第三電極と前記下部第三電極とを被接合材に当接させる工程と、
前記上部第一電極と前記上部第二電極と前記上部第三電極とを備える上部電極と、前記下部第一電極と前記下部第二電極と前記下部第三電極とを備える下部電極とを、通電させ、前記上部電極、および/または、前記下部電極の抵抗発熱を用いて、前記被接合材の接合面間に形成したロウ材を溶融させて前記被接合材をロウ接させる工程と、
前記上部第三電極と前記下部第三電極とを、被接合材から離間させた後に、前記上部スリーブ電極、および/または、前記下部スリーブ電極を被接合材から離間させる工程とを有することを特徴とするスリーブ式電極を用いた接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスリーブ式電極およびスリーブ式電極を用いた接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属接合技術は、いろいろな方式があり、科学技術の進歩により大きく発展してきている。その中で、材質的な接合では、材料そのものを溶融させる溶融接合や、界面だけを溶融させる界面接合に大別される。
【0003】
溶融接合も界面接合も、何らかの電極を用いて実施するのがほとんどである。界面接合の中で、拡散接合に分類される方式でパルス通電加熱を用いたものがある。
【0004】
特許文献1には、パルス通電接合装置において、上下1対の電極の間に、カーボン部材を配置し、その間に被接合部材を挟んでパルス通電接合を行う内容が示されている。
【0005】
また、特許文献2では、抵抗溶接装置の筒状の電極において、内側の電極と外側の電極がそれぞれ同芯状に設置された構成になっている。
ピン状またはナット状の被溶接物を平板状の被溶接物にインダイレクト方式で溶接する内容が記載されている。ピン状またはナット状の被溶接物の周辺部の各溶接点と溶接電極との条件が異なってしまう関係で、平板状の被溶接物に流れる電流量がピンまたはナット状の被溶接物の周囲の各部分においてアンバランスとなるため、2本の溶接電極1、2を同芯状に配置し、筒状の外側溶接電極1内に筒状の内側溶接電極2を装設し、外側溶接電極1の内側に電気絶縁体を配置して、外径を小さくしても外側溶接電極1と内側溶接電極2の絶縁性が保たれるような抵抗溶接装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-44721号公報
【特許文献2】特許第4175562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、金属接合技術は、いろいろな分野へ適用されてきており、高精度で接合強度を上げることが求められている。
【0008】
接合面の接合強度を上げるために、接合面を加圧することが行われているが、接合時の加熱で被接合部材が熱膨張して、加圧力が自然と高くなる現象が生じることがあり、初期の加圧力を高くし過ぎると被接合部材がつぶれてしまい、下げ過ぎると熱膨張は抑えられるが、被接合部材と電極との間に僅かなすき間が生じ、被接合部材の平面度や平行度が低くなるという課題がある。
【0009】
また、被接合部材が比較的薄い板材の場合、電極部で加熱される範囲とその周辺部分の温度差により、被接合部材が変形してしまうという問題があり、良い対応策を取り入れることが接合を採用するうえで重要な課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上部電極と下部電極とで被接合材を挟持し、接合を行う接合装置の電極であって、上部電極は、上側から順に上部第一電極と上部第二電極と上部第三電極が平面を介して配置され、上部第三電極の外側に上部スリーブ電極が配置され、下部電極は、下側から順に平面を介して下部第一電極と下部第二電極と下部第三電極が配置され、下部第三電極の外側に下部スリーブ電極が配置されているスリーブ式電極とする。
【0011】
上部第三電極および下部第三電極は、被接合領域に合わせた形状であるスリーブ式電極とする。
【0012】
上部スリーブ電極および下部スリーブ電極は、高熱伝導性材料であるスリーブ式電極とする。
【0013】
上部スリーブ電極および下部スリーブ電極は、被接合材と当接する面に、絶縁性の薄膜が形成されているスリーブ式電極とする。
【0014】
上部スリーブ電極および下部スリーブ電極は、被接合材と当接する面に、薄い絶縁シートが嵌合されているスリーブ式電極とする。
【0015】
上部第一電極および下部第一電極の材質は、CuまたはCu合金であり、上部第二電極および下部第二電極の材質は、カーボンまたはカーボン合金であり、上部第三電極および下部第三電極の材質は、WまたはW合金であるスリーブ式電極とする。
【0016】
上部スリーブ電極、および/または、下部スリーブ電極を被接合材に当接させた後、または同時に、上部第三電極と下部第三電極とを被接合材に当接させる工程と、上部第一電極と上部第二電極と上部第三電極とを備える上部電極と、下部第一電極と下部第二電極と下部第三電極とを備える下部電極とを、通電させ、抵抗発熱により被接合材を抵抗溶接させる工程と、上部第三電極と下部第三電極とを、被接合材から離間させた後に、上部スリーブ電極、および/または、下部スリーブ電極を被接合材から離間させる工程とを有することを特徴とするスリーブ式電極を用いた接合方法とする。
【0017】
上部スリーブ電極、および/または、下部スリーブ電極を被接合材に当接させた後、または同時に、上部第三電極と下部第三電極とを被接合材に当接させる工程と、上部第一電極と上部第二電極と上部第三電極とを備える上部電極と、下部第一電極と下部第二電極と下部第三電極とを備える下部電極とを、通電させ、上部電極、および/または、下部電極の抵抗発熱を用いて、被接合材の接合面間に形成したロウ材を溶融させて被接合材をロウ接させる工程と、上部第三電極と下部第三電極とを、被接合材から離間させた後に、上部スリーブ電極、および/または、下部スリーブ電極を被接合材から離間させる工程とを有することを特徴とするスリーブ式電極を用いた接合方法とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被接合部材の平面度や平行度を満たしながら高精度で接合強度も高い接合を得ることができる。
また、被接合部材が比較的薄い板材の場合であっても、被接合部材の変形を抑えて接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による接合装置のスリーブ式電極の接合前の断面図(A)、接合時の断面図(B)、接合後の断面図(C)
図2】本発明による別の接合装置のスリーブ式電極の接合前の断面図(A)、接合時の断面図(B)、接合後の断面図(C)、接合前の斜視図(D)、接合時の斜視図(E)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明におけるスリーブ式電極を、以下に説明する。図1は本発明による接合装置のスリーブ式電極の接合前の断面図(A)と接合時の断面図(B)と接合後の断面図(C)である。
【0021】
図1に示すように、接合装置(不図示)の電極部分は、上部電極1と下部電極2に分かれている。上部電極1は、中央に位置する電極を上から上部第一電極10、上部第二電極11、上部第三電極12と配置されている。それぞれが円柱形状であり、上下の面を介して位置が決まっている。中央部の上部第一電極10、上部第二電極11、上部第三電極12の外側には、円筒形状の上部スリーブ電極13がほぼ同芯状に配置されている。中央に位置する上部第一電極10の材質はCu(Cu合金でもよい)、上部第二電極11の材質はカーボン(カーボン合金でもよい)、上部第三電極12の材質はW(W合金でもよい)であり、その外側にある上部スリーブ電極13の材質は高熱伝導性材のCu(Cu合金でもよい)でできている。上部スリーブ電極13の接合面側には絶縁処理であるセラミック薄膜AD法による薄膜13aが施されている。代わりにセラミックスの溶射やコールドスプレー法を用いてもよい。また代わりに薄いセラミックスのシート(不図示)を耐熱性接着処理で取り付けてもよい。これは、接合時に中央部の電極を流れた電流と上部スリーブ電極13が被接合部材31と当接したときにショートしないためである。上部第一電極10、上部第二電極11、上部第三電極12とその外側の上部スリーブ電極13の間に、同じく円筒形状の上部絶縁部材14がほぼ同芯状に配置されている。この上部絶縁部材14の材質はアルミナ(他のセラミックス材でもよい)でできている。これは、接合時に中央部の電極のみに電流を流し、上部スリーブ電極13には電流を流さないよう上部絶縁部材14で遮断している。
【0022】
同様に、下部電極2は、中央に位置する電極を下から下部第一電極20、下部第二電極21、下部第三電極22と配置されている。それぞれが円柱形状であり、上下の面を介して位置が決まっている。中央部の下部第一電極20、下部第二電極21、下部第三電極22の外側には、円筒形状の下部スリーブ電極23がほぼ同芯状に配置されている。中央に位置する下部第一電極20の材質はCu(Cu合金でもよい)、下部第二電極21の材質はカーボン(カーボン合金でもよい)、下部第三電極22の材質はW(W合金でもよい)であり、その外側にある下部スリーブ電極23の材質は高熱伝導性材のCu(Cu合金でもよい)でできている。下部スリーブ電極23の接合面側には絶縁処理であるセラミック薄膜AD法による薄膜23aが施されている。代わりにセラミックスの溶射やコールドスプレー法を用いてもよい。また代わりに薄いセラミックスのシート(不図示)を耐熱性接着処理で取り付けてもよい。これは、接合時に中央部の電極を流れた電流と下部スリーブ電極23が被接合部材30と当接したときにショートしないためである。下部第一電極20、下部第二電極21、下部第三電極22とその外側の下部スリーブ電極23の間に、同じく円筒形状の下部絶縁部材24がほぼ同芯状に配置されている。この下部絶縁部材24の材質はアルミナ(他のセラミックス材でもよい)でできている。これは、接合時に中央部の電極のみに電流を流し、下部スリーブ電極23には電流を流さないよう下部絶縁部材24で遮断している。
【0023】
次に接合動作について説明する。最初に接合前の状態を説明する。図1(A)に示すように、上部電極1は、接合装置(不図示)の最上部電極待機点の位置にて停止している。下部電極2の中央部電極である下部第一電極20、下部第二電極21、下部第三電極22は基準の位置に固定されている。上部電極1と下部電極2との間に、被接合部材30,31が配置され、下部第三電極22の上面22aは被接合部材30に当接している。この時、下部スリーブ電極23も被接合部材30に当接する。被接合部材31の接合面側には、予めNiとPの成分のロウ材31aが適当な厚さでめっき処理されている。
【0024】
次に接合を開始するため、接合装置(不図示)を可動させて上部電極1を接合する位置まで下降させて、図1(B)に示すような上部電極1と下部電極2で被接合部材30,31を挟み込んだ状態になる。この時、上部第三電極12の接合面側の面12aと被接合部材31が当接される。このタイミングで、上部電極1の上部第一電極10、上部第二電極11、上部第三電極12と被接合部材31、被接合部材30、下部電極2の下部第三電極22、下部第二電極21、下部第一電極20へ所定の電流数千アンペアを流す。同時に、被接合部材31と当接されている上部第三電極12を含む上部電極1によって適当な圧力をかけて押し付ける。
【0025】
この一連の動作では、電流を流す時間、保持する時間、冷却時間を所定の条件で管理するように設定されている。電流が流れることによって、各電極が抵抗発熱する。上部第二電極11、下部第二電極21はそれぞれカーボンで造られており、抵抗が高く容易に発熱する。その熱が上部第三電極12、下部第三電極22に伝わり、被接合部材31、被接合部材30を介してロウ材31aに伝わり、このロウ材31aがその熱で溶融することによって、被接合部材30とロウ接接合できる。
【0026】
接合動作で、上部電極1を下降させて被接合部材31に上部第三電極12を当接させるとき、上部スリーブ電極13も被接合部材31に当接し、材質Cu(Cu合金でもよい)の高熱伝導性の作用により接合時に伝わる熱をできるだけ速やかに逃がすことで、被接合部材31が熱による変形を生じ難くすることができる。この時、上部スリーブ電極13の接合面側に施されている絶縁処理である薄膜13aにより接合時の電流とショートすることなく被接合部材31に当接でき、更に薄膜であるため高熱伝導性の作用も保たれて、被接合部材31の熱による変形を抑える効果が大きくなる。また被接合部材31の熱による変形を上部スリーブ電極13によって強制的に抑え込む効果も持っている。また、上部スリーブ電極13を上部第三電極12より先に被接合部材31に当接させることも可能であり、より被接合部材31、30の平面度や平行度を向上させることができる。
【0027】
下部電極2も上部電極1と同じ構造であるため、同様な作用となる。下部スリーブ電極23を被接合部材30に当接させていることで、材質Cu(Cu合金でもよい)の高熱伝導性の作用により接合時に伝わる熱をできるだけ速やかに逃がすことで、被接合部材30が熱による変形を生じ難くすることができる。この時、下部スリーブ電極23の接合面側に施されている絶縁処理である薄膜23aにより接合時の電流とショートすることなく被接合部材30に当接でき、更に薄膜であるため高熱伝導性の作用も保たれて、被接合部材30の熱による変形を抑える効果が大きくなる。また被接合部材30の熱による変形を下部スリーブ電極23によって強制的に抑え込む効果も持っている。また、下部スリーブ電極23を下部第三電極22より先に被接合部材30に当接させることも可能であり、被接合部材30、31の平面度や平行度を向上させることができる。
【0028】
接合の終わりは、上部電極1の上部第一電極10、上部第二電極11、上部第三電極12と被接合部材31、被接合部材30、下部電極2の下部第三電極22、下部第二電極21、下部第一電極20へ流した電流を止めることによって、抵抗発熱が解消され冷却される。このあと適宜冷却時間を保持したあと、上部スリーブ電極13を被接合部材31に当接させたまま、上部第一電極10、上部第二電極11、上部第三電極12が被接合部材31から離間させる。この時、下部第一電極20、下部第二電極21、下部第三電極22も被接合部材から離間させることもできる。この時、中央部の上部第三電極12が被接合部材31から離間した後も、上部スリーブ電極13が被接合部材31を当接して抑え込んでいる時間を確保して、より冷却効果を上げることもできる。また、同様に下部スリーブ電極23が被接合部材30を当接して抑え込んでいる時間を確保して、より冷却効果を上げることもできる。この結果、平面度や平行度を満たす高精度な接合が得られ、接合強度にも良い影響を与えることができる。このあと、上部スリーブ電極13も被接合部材31から離間させ、図1(A)に示す接合前の位置に戻り、接合の1サイクルが終了する。
【0029】
図2は本発明による別の接合装置のスリーブ式電極の接合前の断面図(A)と接合時の断面図(B)と接合後の断面図(C)、接合前の斜視図(D)と接合時の斜視図(E)である。
【0030】
図2に示すように、接合装置(不図示)の電極部分は、上部電極40と下部電極41に分かれている。上部電極40は、中央に位置する電極を上から上部第一電極50、上部第二電極51、上部第三電極52と配置されている。それぞれが円柱形状であり、上下の面を介して位置が決まっている。中央部の上部第一電極50、上部第二電極51、上部第三電極52の外側には、円筒形状の上部スリーブ電極53がほぼ同芯状に配置されている。被接合部材71に当接する先端の押さえ部53bは被接合部材70の材料形状に合わせた長方形になっていて、熱による変形を効率的に抑える効果をもたらしている。中央に位置する上部第一電極50の材質はCu(Cu合金でもよい)、上部第二電極51の材質はカーボン(カーボン合金でもよい)、上部第三電極52の材質はW(W合金でもよい)であり、その外側にある上部スリーブ電極53の材質は高熱伝導性材のCu(Cu合金でもよい)でできている。上部スリーブ電極53の接合面側には絶縁処理であるセラミック薄膜AD法による薄膜53aが施されている。代わりにセラミックスの溶射やコールドスプレー法を用いてもよい。また代わりに薄いセラミックスのシート(不図示)を耐熱性接着処理で取り付けてもよい。これは、接合時に中央部の電極を流れた電流と上部スリーブ電極53が被接合部材71と当接したときにショートしないためである。上部第一電極50、上部第二電極51、上部第三電極52とその外側の上部スリーブ電極53の間に、同じく円筒形状の上部絶縁部材54がほぼ同芯状に配置されている。この上部絶縁部材54の材質はアルミナ(他のセラミックス材でもよい)でできている。これは、接合時に中央部の電極のみに電流を流し、上部スリーブ電極53には電流を流さないよう上部絶縁部材54で遮断している。
【0031】
同様に、下部電極41は、中央に位置する電極を下から下部第一電極60、下部第二電極61、下部第三電極62と配置されている。それぞれが円柱形状であり、上下の面を介して位置が決まっている。中央部の下部第一電極60、下部第二電極61、下部第三電極62の外側には、円筒形状の下部スリーブ電極63がほぼ同芯状に配置されている。被接合部材70に当接する先端の押さえ部63bは被接合部材70の材料形状に合わせた長方形になっていて、熱による変形を効率的に抑える効果をもたらしている。中央に位置する下部第一電極60の材質はCu(Cu合金でもよい)、下部第二電極61の材質はカーボン(カーボン合金でもよい)、下部第三電極62の材質はW(W合金でもよい)であり、その外側にある下部スリーブ電極63の材質は高熱伝導性材のCu(Cu合金でもよい)でできている。下部スリーブ電極63の接合面側には絶縁処理であるセラミック薄膜AD法による薄膜63aが施されている。代わりにセラミックスの溶射やコールドスプレー法を用いてもよい。また代わりに薄いセラミックスのシート(不図示)を耐熱性接着処理で取り付けてもよい。これは、接合時に中央部の電極を流れた電流と下部スリーブ電極63が被接合部材70と当接したときにショートしないためである。下部第一電極60、下部第二電極61、下部第三電極62とその外側の下部スリーブ電極63の間に、同じく円筒形状の下部絶縁部材64がほぼ同芯状に配置されている。この下部絶縁部材64の材質はアルミナ(他のセラミックス材でもよい)でできている。これは、接合時に中央部の電極のみに電流を流し、下部スリーブ電極63には電流を流さないよう下部絶縁部材64で遮断している。
【0032】
次に接合動作について説明する。最初に接合前の状態を説明する。図2(A)、図2(D)に示すように、上部電極40は、接合装置(不図示)の最上部電極待機点の位置にて停止している。下部電極41の中央部電極である下部第一電極60、下部第二電極61、下部第三電極62、および下部スリーブ電極63は基準の位置に固定されている。上部電極40と下部電極41との間に、被接合部材70,71が配置され、下部第三電極62の上面62aと被接合部材70が当接する。この時、下部スリーブ電極63も被接合部材70に当接する。被接合部材70は、その上に接合するもう1種の被接合部材71が重なって設置されている。被接合部材71の接合面側には、予めNiとPの成分のロウ材71aが適当な厚さでめっき処理されている。
【0033】
次に接合を開始するため、接合装置(不図示)を可動させて上部電極40を接合する位置まで下降させて、図2(B)、図2(E)に示すような上部電極40と下部電極41で被接合部材70,71を挟み込んだ状態になる。この時、上部第三電極52の接合面側の面52aと被接合部材71が当接される。このタイミングで、上部電極40の上部第一電極50、上部第二電極51、上部第三電極52と被接合部材71、被接合部材70、下部電極41の下部第三電極62、下部第二電極61、下部第一電極60へ所定の電流数千アンペアを流す。同時に被接合部材71と当接されている上部第三電極52を含む上部電極40によって適当な加圧力をかけて押し付ける。
【0034】
この一連の動作では、電流を流す時間、保持する時間、冷却時間を所定の条件で管理するように設定されている。電流が流れることによって、各電極が抵抗発熱する。上部第二電極51、下部第二電極61はそれぞれカーボンで造られており、抵抗が高く容易に発熱する。その熱が上部第三電極52、下部第三電極62に伝わり、被接合部材71、被接合部材70を介してロウ材71aに伝わり、このロウ材71aがその熱で溶融することによって、被接合材70とロウ接接合できる。
【0035】
接合動作で、上部電極40を下降させて被接合部材71に上部第三電極52を当接させるとき、上部スリーブ電極53も被接合部材71に当接し、材質Cu(Cu合金でもよい)の高熱伝導性の作用により接合時に伝わる熱をできるだけ速やかに逃がすことで、被接合部材71が熱による変形を生じ難くすることができる。この時、上部スリーブ電極53の接合面側に施されている絶縁処理である薄膜53aにより接合時の電流とショートすることなく被接合部材71に当接でき、更に薄膜であるため高熱伝導性の作用も保たれて、被接合部材71の熱による変形を抑える効果が大きくなる。また、上部スリーブ電極53の被接合部材71に当接する先端の押さえ部53bは被接合部材71の材料形状に合わせた長方形になっており、被接合部材71の熱による変形を上部スリーブ電極53の押さえ部53bによって全体を強制的に抑え込む効果も持っている。また、上部スリーブ電極53を上部第三電極52より先に被接合部材71に当接させることも可能であり、より被接合部材71、70の平面度や平行度を向上させることができる。
【0036】
下部電極41も上部電極40と同じ構造であるため、同様な作用となる。下部スリーブ電極63を被接合部材70に当接させていることで、材質Cu(Cu合金でもよい)の高熱伝導性の作用により接合時に伝わる熱をできるだけ速やかに逃がすことで、被接合部材70が熱による変形を生じ難くすることができる。この時、下部スリーブ電極63の接合面側に施されている絶縁処理である薄膜63aにより接合時の電流とショートすることなく被接合部材70に当接でき、更に薄膜であるため高熱伝導性の作用も保たれて、被接合部材70の熱による変形を抑える効果が大きくなる。また、下部スリーブ電極63の被接合部材70に当接する先端の押さえ部63bは被接合部材70の材料形状に合わせた長方形になっており、被接合部材70の熱による変形を下部スリーブ電極63の押さえ部63bによって全体を強制的に抑え込む効果も持っている。また、下部スリーブ電極63を下部第三電極62より先に被接合部材70に当接させることも可能であり、被接合部材70、71の平面度や平行度を向上させることができる。
【0037】
接合の終わりは、上部電極40の上部第一電極50、上部第二電極51、上部第三電極52と被接合部材71、被接合部材70、下部電極41の下部第三電極62、下部第二電極61、下部第一電極60へ流した電流を止めることによって、抵抗発熱が解消され冷却される。このあと適宜冷却時間を保持したあと、図2(C)に示すように、上部スリーブ電極53を被接合部材71に当接させたまま、上部第一電極50、上部第二電極51、上部第三電極52が被接合部材71から離間させる。この時、下部第一電極60、下部第二電極61、下部第三電極62も被接合部材から離間させることもできる。この時、中央部の上部第三電極52が被接合部材71から離間した後も、上部スリーブ電極53の押さえ部53bが被接合部材71を当接して抑え込んでいる時間を確保して、より冷却効果を上げることもできる。また、同様に下部スリーブ電極63の押さえ部63bが被接合部材70を当接して抑え込んでいる時間を確保して、より冷却効果を上げることもできる。この結果、平面度や平行度を満たす高精度な接合が得られ、接合強度にも良い影響を与えることができる。このあと、上部スリーブ電極53も被接合部材71から離間させ、図2(A)、図2(D)に示す接合前の位置に戻り、接合の1サイクルが終了する。
【符号の説明】
【0038】
1 上部電極
2 下部電極
10 上部第一電極
11 上部第二電極
12 上部第三電極
12a 接合面側の面
13 上部スリーブ電極
13a 薄膜
14 上部絶縁部材
20 下部第一電極
21 下部第二電極
22 下部第三電極
22a 接合面側の面
23 下部スリーブ電極
23a 薄膜
24 下部絶縁部材
30 被接合部材
31 被接合部材
31a ロウ材
40 上部電極
41 下部電極
50 上部第一電極
51 上部第二電極
52 上部第三電極
52a 接合面側の面
53 上部スリーブ電極
53a 薄膜
53b 押さえ部
54 上部絶縁部材
60 下部第一電極
61 下部第二電極
62 下部第三電極
62a 接合面側の面
63 下部スリーブ電極
63a 薄膜
63b 押さえ部
64 下部絶縁部材
70 被接合部材
71 被接合部材
71a ロウ材
図1
図2