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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146338
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20220928BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20220928BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20220928BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20220928BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0247
H01M8/02
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047245
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 肇
(72)【発明者】
【氏名】森川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅也
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA08
5H126AA12
5H126AA14
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE11
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックの発電性能の低下を抑制する。
【解決手段】
セパレータ外側部とインターコネクタ外側部との一方を第1の外側部といい、他方を第2の外側部といい、空気極と燃料極とが対向する方向(以下、第1の方向)視において、ガス室にガスを導入するガス導入口と単セルとを最短距離で結ぶ直線の方向を第2の方向といい、第2の方向に直交する方向を第3の方向という。燃料電池スタックの第1の方向に沿った断面において、第1の外側部は、ガス導入流路を画定する輪郭線である特定輪郭線が第2の方向に延伸している第1の部分を有する。第2の外側部は、第1の部分に対してガス流れ下流側においてガス導入流路を画定する第2の部分であって、第1の方向の第1の外側部側の端部が、第1の方向において特定輪郭線と重なる仮想直線の位置から当該仮想直線よりも第1の外側部寄りであって第1の外側部の手前までの領域に配置された第2の部分を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を備える単セルと、
前記空気極と前記燃料極との一方である特定電極に対して前記第1の方向の前記電解質層とは反対側に配置され、前記特定電極に電気的に接続されるインターコネクタであって、前記第1の方向視において前記単セルの外側に位置する部分であるインターコネクタ外側部を有するインターコネクタと、
前記単セルに接続された単セル用セパレータであって、前記第1の方向視において前記インターコネクタ外側部に重なる部分であるセパレータ外側部を有する単セル用セパレータと、
前記特定電極に面するガス室にガスを導入するためのガス導入口であって、前記第1の方向視において前記セパレータ外側部と前記インターコネクタ外側部とに重なるガス導入口と、
前記ガス室の部分であって、前記ガス導入口に連なり、かつ、前記セパレータ外側部と前記インターコネクタ外側部とにより画定された部分であるガス導入流路と、
前記ガス室の部分であって、前記ガス導入流路に対して前記ガス流れ下流側であり、前記第1の方向視で前記単セルに重なる部分である単セル側ガス流路と、
をそれぞれ備え、前記第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位を備える燃料電池スタックにおいて、
前記セパレータ外側部と前記インターコネクタ外側部との一方を第1の外側部とし、他方を第2の外側部とし、
かつ、前記第1の方向視において、前記ガス導入口と前記単セルとを最短距離で結ぶ直線の方向を第2の方向とし、前記第2の方向に直交する方向を第3の方向とし、前記単セルの前記第3の方向の中央に位置する部分であって、前記第3の方向の幅が前記単セルの前記第3の方向の最大幅の2/3である部分を単セル中央部としたときに、
前記第1の方向と前記第2の方向とに沿った断面であって、前記単セル中央部を含む断面である第1特定断面と、前記第1の方向と前記第2の方向とに沿った断面であって、前記ガス導入口を含む断面である第2特定断面と、のそれぞれにおいて、
前記第1の外側部は、前記ガス導入流路のうち前記単セルとは反対側の端部を画定する第1の部分であって、前記ガス導入流路を画定する輪郭線である特定輪郭線が前記第2の方向に延伸している第1の部分を有し、
前記第2の外側部は、前記第1の部分に対して前記ガス流れ下流側において前記ガス導入流路を画定する第2の部分であって、前記第1の方向の前記第1の外側部側の端部が、前記第1の方向において、前記特定輪郭線と重なる仮想直線の位置から前記仮想直線よりも前記第1の外側部寄りであって前記第1の外側部の手前までの領域に配置された第2の部分を有する、
ことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池スタックであって、
前記第1特定断面と前記第2特定断面とのそれぞれにおいて、
前記ガス導入流路は、
少なくとも一部が前記第1の部分により画定される部分である第1の流路部であって、前記第2の方向に延伸している第1の流路部と、
前記第1の流路部の前記ガス流れ下流側において前記第1の流路部に連なり、かつ、少なくとも一部が前記第2の部分により画定される部分である第2の流路部であって、前記単セル側ほど前記第1の方向の一方側に位置するように前記第2の方向に対して傾斜する方向に延伸している第2の流路部と、を有する、
ことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池スタックであって、
前記第1特定断面と前記第2特定断面とのそれぞれにおいて、
前記ガス導入流路のうち、前記第2の流路部と前記単セル側ガス流路とに連なる部分は、
前記第2の流路部の前記ガス流れ下流側において前記第2の流路部に連なる第3の流路部であって、前記第2の方向に延伸している第3の流路部と、
前記第3の流路部の前記ガス流れ下流側において前記第3の流路部に連なる第4の流路部であって、前記単セル側ほど前記第1の方向の前記一方と反対側に位置するように前記第2の方向に対して傾斜する方向に延伸している第4の流路部と、
前記第4の流路部の前記ガス流れ下流側において前記第4の流路部に連なる第5の流路部であって、前記第2の方向に延伸している第5の流路部と、を有する、
ことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の燃料電池スタックであって、
前記第1特定断面と前記第2特定断面とのそれぞれにおいて、
前記第2の流路部を画定する前記第1の外側部の部分と前記第2の外側部の部分との間の最短距離は、前記第1の流路部を画定する前記第1の外側部の部分と前記第2の外側部の部分との間の最短距離よりも短い、
ことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の燃料電池スタックであって、
前記第2の部分は前記第3の方向に沿って前記単セル中央部の前記幅以上の長さで延在している、
ことを特徴とする燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCは、一般に、複数の構成単位(以下、「発電単位」という。)が所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に並べて配置された燃料電池スタックの形態で利用される。各発電単位は、燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)と、インターコネクタと、単セル用セパレータとを備える。単セルは、電解質層と、電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを備える。インターコネクタは、空気極と燃料極との一方(以下、「特定電極」という。)に対して第1の方向の電解質層とは反対側に配置され、特定電極に電気的に接続される。インターコネクタは、第1の方向視において単セルの外側に位置する部分(以下、「インターコネクタ外側部」という。)を有する。単セル用セパレータは、単セルに接続されている。単セル用セパレータは、第1の方向視においてインターコネクタ外側部に重なる部分(以下、「セパレータ外側部」という。)を有する。
【0003】
各発電単位には、ガス導入口と、ガス導入流路と、単セル側ガス流路とが形成されている。ガス導入口は、特定電極に面するガス室(以下、単に「ガス室」という。)に反応ガスを導入するための開口部である。ガス導入口は、第1の方向視においてセパレータ外側部とインターコネクタ外側部とに重なっている。ガス導入流路と単セル側ガス流路とはいずれも、ガス室の部分であり、反応ガスを通すための流路として機能する空間である。ガス導入流路は、セパレータ外側部とインターコネクタ外側部とにより画定された部分であり、ガス導入口に連なっている。単セル側ガス流路は、ガス導入流路に対してガス流れ下流側であり、第1の方向視で単セルに重なっている。ガス導入口から反応ガスがガス室に導入され、ガス導入流路、単セル側ガス流路の順に流れた後にガス室から排出される。
【0004】
セパレータ外側部と、第1の方向の隣に位置するインターコネクタ外側部との一方を「第1外側部」とし、他方を「第2外側部」としたときに、第1外側部の全体が、第2外側部に対して第1の方向の一方側に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-9744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の燃料電池スタックでは、上述したように、第1外側部の全体が第2外側部に対して第1の方向の一方側に位置している。このような燃料電池スタックでは、ガス導入口から導入され、ガス導入流路を、第1の方向に直交する方向(以下、「ガス導入方向」という。)に流れる反応ガスが、第1の方向視でガス導入方向に直交する方向(以下、「ガス導入直交方向」という。)に十分に拡散せず、ガス導入直交方向の一部に集中することがある。これにより、単セル側ガス流路を流れた後に単セル内を流れる反応ガスの供給量にバラツキが生じ、単セル内を流れる反応ガスの流れがガス導入直交方向の一部に集中することがある。単セル内を流れる反応ガスの流れがガス導入直交方向の一部に集中すると、単セルの一部で、発熱反応である発電反応が過度に生じることにより、単セルの当該一部が過度に高温となる。単セルは温度がある上限値を超えると発電性能が著しく低下するため、上記従来の燃料電池スタックでは、単セルの一部の温度が温度上限を超えることにより、単セルの発電性能(ひいては燃料電池スタックの発電性能)が低下するおそれがある。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される燃料電池スタックは、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を備える単セルと、前記空気極と前記燃料極との一方である特定電極に対して前記第1の方向の前記電解質層とは反対側に配置され、前記特定電極に電気的に接続されるインターコネクタであって、前記第1の方向視において前記単セルの外側に位置する部分であるインターコネクタ外側部を有するインターコネクタと、前記単セルに接続された単セル用セパレータであって、前記第1の方向視において前記インターコネクタ外側部に重なる部分であるセパレータ外側部を有する単セル用セパレータと、前記特定電極に面するガス室にガスを導入するためのガス導入口であって、前記第1の方向視において前記セパレータ外側部と前記インターコネクタ外側部とに重なるガス導入口と、前記ガス室の部分であって、前記ガス導入口に連なり、かつ、前記セパレータ外側部と前記インターコネクタ外側部とにより画定された部分であるガス導入流路と、前記ガス室の部分であって、前記ガス導入流路に対して前記ガス流れ下流側であり、前記第1の方向視で前記単セルに重なる部分である単セル側ガス流路と、をそれぞれ備え、前記第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位を備える燃料電池スタックにおいて、前記セパレータ外側部と前記インターコネクタ外側部との一方を第1の外側部とし、他方を第2の外側部とし、かつ、前記第1の方向視において、前記ガス導入口と前記単セルとを最短距離で結ぶ直線の方向を第2の方向とし、前記第2の方向に直交する方向を第3の方向とし、前記単セルの前記第3の方向の中央に位置する部分であって、前記第3の方向の幅が前記単セルの前記第3の方向の最大幅の2/3である部分を単セル中央部としたときに、前記第1の方向と前記第2の方向とに沿った断面であって、前記単セル中央部を含む断面である第1特定断面と、前記第1の方向と前記第2の方向とに沿った断面であって、前記ガス導入口を含む断面である第2特定断面と、のそれぞれにおいて、前記第1の外側部は、前記ガス導入流路のうち前記単セルとは反対側の端部を画定する第1の部分であって、前記ガス導入流路を画定する輪郭線である特定輪郭線が前記第2の方向に延伸している第1の部分を有し、前記第2の外側部は、前記第1の部分に対して前記ガス流れ下流側において前記ガス導入流路を画定する第2の部分であって、前記第1の方向の前記第1の外側部側の端部が、前記第1の方向において、前記特定輪郭線と重なる仮想直線の位置から前記仮想直線よりも前記第1の外側部寄りであって前記第1の外側部の手前までの領域に配置された第2の部分を有する。
【0010】
本燃料電池スタックにおいては、第2の方向に延伸している第1の部分に沿って当該方向に流れる反応ガスは、第2の外側部の第2の部分が第1の方向の上記仮想直線よりも第1の外側部から離れた領域までしか配置されていない構成と比較して、ガス導入流路において第2の部分に衝突することにより、第2の方向に流れることが抑制されつつ、第3の方向に流れ易くなる。これにより、単セル側ガス流路内における第3の方向のガス拡散性が向上し、ひいては、単セル内における第3の方向のガス拡散性が向上し、単セル内における反応ガスの拡散性が比較的均一となる。そのため、本燃料電池スタックによれば、反応ガスの流れが単セルの一部に集中して発電反応が過度に生じることに起因する単セルの発電性能(ひいては燃料電池スタック、以下同様)の低下を抑制することができる。
【0011】
(2)上記燃料電池スタックにおいて、前記第1特定断面と前記第2特定断面とのそれぞれにおいて、前記ガス導入流路は、少なくとも一部が前記第1の部分により画定される部分である第1の流路部であって、前記第2の方向に延伸している第1の流路部と、前記第1の流路部の前記ガス流れ下流側において前記第1の流路部に連なり、かつ、少なくとも一部が前記第2の部分により画定される部分である第2の流路部であって、前記単セル側ほど前記第1の方向の一方側に位置するように前記第2の方向に対して傾斜する方向に延伸している第2の流路部と、を有する構成としてもよい。
【0012】
本燃料電池スタックによれば、上述したように主に第2の部分を有することにより単セル内における第3の方向のガス拡散性を向上させるものでありながら、第1の流路部が第2の方向に延伸し、かつ、第2の流路部が上述したように第2の方向に対して傾斜する方向(単セル側ほど第1の方向の一方側に位置するように第2の方向に対して傾斜する方向)に延伸していることにより、第2の方向(厳密には、第2の方向の成分を有する方向)のガス流れもある程度以上確保することができる。
【0013】
(3)上記燃料電池スタックにおいて、前記第1特定断面と前記第2特定断面とのそれぞれにおいて、前記ガス導入流路のうち、前記第2の流路部と前記単セル側ガス流路とに連なる部分は、前記第2の流路部の前記ガス流れ下流側において前記第2の流路部に連なる第3の流路部であって、前記第2の方向に延伸している第3の流路部と、前記第3の流路部の前記ガス流れ下流側において前記第3の流路部に連なる第4の流路部であって、前記単セル側ほど前記第1の方向の前記一方と反対側に位置するように前記第2の方向に対して傾斜する方向に延伸している第4の流路部と、前記第4の流路部の前記ガス流れ下流側において前記第4の流路部に連なる第5の流路部であって、前記第2の方向に延伸している第5の流路部と、を有する構成としてもよい。本燃料電池スタックによれば、より効果的に、第3の方向のガス拡散性を向上させつつ第2の方向(厳密には、第2の方向の成分を有する方向)のガス流れを確保することができる。
【0014】
(4)上記燃料電池スタックにおいて、前記第1特定断面と前記第2特定断面とのそれぞれにおいて、前記第2の流路部を画定する前記第1の外側部の部分と前記第2の外側部の部分との間の最短距離(以下、「第2最短距離」という。)は、前記第1の流路部を画定する前記第1の外側部の部分と前記第2の外側部の部分との間の最短距離(以下、「第1最短距離」という。)よりも短い構成としてもよい。本燃料電池スタックでは、第1最短距離と第2最短距離とが同等である構成と比較して、第2の流路部を反応ガスが第2の方向に流れる際の抵抗が高まり、これにより第2の流路部における第3の方向のガス拡散性が向上する。従って、本燃料電池スタックによれば、単セル内における第3の方向のガス拡散性を更に向上させることができる。
【0015】
(5)上記燃料電池スタックにおいて、前記第2の部分は前記第3の方向に沿って前記単セル中央部の前記幅以上の長さで延在している構成としてもよい。そのため、本燃料電池スタックによれば、特に効果的に、単セル側ガス流路内における第3の方向のガス拡散性を向上させることができる。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池スタック、燃料電池スタックの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図4図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
図5図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図6図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図7図5および図6のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図
図8図5および図6のVIII-VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図
図9】単セル用セパレータ120およびインターコネクタ用セパレータ191とその周辺の詳細構成(図5のX1部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図
図10】単セル用セパレータ120およびインターコネクタ用セパレータ191とその周辺の詳細構成(図6のX2部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A-1.全体構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1(および後述する図7および図8)のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1(および後述する図7および図8)のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図4は、図1(および後述する図7および図8)のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図5以降についても同様である。
【0019】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、下端用セパレータ189と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、7つの発電単位102からなる発電ブロック103と下端用セパレータ189とから構成される集合体の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他の(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、発電ブロック103を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0020】
図1および図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(上側エンドプレート104、各発電単位102、下端用セパレータ189)のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されており、下側エンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近における上側の表面には、孔(ネジ孔)が形成されている。これらの各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、ボルト孔109と呼ぶ場合がある。
【0021】
各ボルト孔109にはボルト22が挿入されている。各ボルト22の下端部は下側エンドプレート106に形成されたネジ孔に螺号しており、各ボルト22の上端部にはナット24が嵌められている。ナット24の下側の表面は、絶縁シート26を介してエンドプレート104の上側の表面に当接している。このような構成のボルト22およびナット24により、燃料電池スタック100の各層が一体に締結されている。なお、絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0022】
また、図1から図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下端用セパレータ189、下側エンドプレート106)のZ軸方向回りの周縁部には、各層を上下方向に貫通する4つの孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、最上部の発電単位102から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0023】
図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。
【0024】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス供給マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス供給マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0025】
図2および図3に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。なお、各ガス通路部材27と下側エンドプレート106の表面との間には、絶縁シート26が介在している。
【0026】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。一対のエンドプレート104,106の中央付近には、それぞれ、Z軸方向に貫通する孔32,34が形成されている。Z軸方向視で、一対のエンドプレート104,106のそれぞれに形成された孔32,34の内周線は、後述する各単セル110を内包している。そのため、各ボルト22およびナット24による締結によって生じるZ軸方向の圧縮力は、主として各発電単位102の周縁部(後述する各単セル110より外周側の部分)に作用する。また、本実施形態では、上側エンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側エンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0027】
(下端用セパレータ189の構成)
下端用セパレータ189は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば金属により形成されている。下端用セパレータ189の周縁部は、発電ブロック103と下側エンドプレート106との間に挟み込まれた状態で、下側エンドプレート106と例えば溶接により接合されており、下側エンドプレート106と電気的に接続されている。
【0028】
(発電単位102の構成)
図5は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図6は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図7は、図5および図6のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、図8は、図5および図6のVIII-VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【0029】
図5および図7に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ用セパレータ190におけるZ軸方向回りの周縁部には、各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。
【0030】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112のZ軸方向の一方側(上側)に配置された空気極114と、電解質層112のZ軸方向の他方側(下側)に配置された燃料極116と、電解質層112と空気極114との間に配置された反応防止層118とを備える。空気極114および燃料極116は、電解質層112を挟んでZ軸方向に互いに対向しているといえる。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0031】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。反応防止層118は、Z軸方向視で空気極114と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)とYSZとを含むように構成されている。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO)が生成されることを抑制する機能を有する。
【0032】
単セル用セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。単セル用セパレータ120における貫通孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110(電解質層112)と接合(接続)されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。
【0033】
単セル用セパレータ120における貫通孔121付近には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0034】
インターコネクタ190は、基部(以下、「インターコネクタ基部」という。)151と、セパレータ(以下、「インターコネクタ用セパレータ」という。)191とを備える。
【0035】
インターコネクタ基部151は、略矩形の平板形状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略柱状の空気極側集電部134と、を有する導電性の部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。本実施形態では、インターコネクタ基部151の表面(空気室166に面する表面)に、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性の被覆層194が形成されている。以下では、被覆層194に覆われたインターコネクタ基部151を、単にインターコネクタ基部151という。各発電単位102において、上側のインターコネクタ基部151(の平板部150)は、単セル110に対して空気室166を挟んで上側(空気極114に対してZ軸方向の電解質層112とは反対側)に配置されている。上側のインターコネクタ基部151(の各空気極側集電部134)は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114に接合されており、これにより単セル110の空気極114に電気的に接続されている。また、各発電単位102において、下側のインターコネクタ基部151は、単セル110に対して燃料室176を挟んで下側に配置されており、後述する燃料極側集電部材144を介して、単セル110の燃料極116に電気的に接続されている。インターコネクタ基部151は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を抑制する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ基部151は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ基部151は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ基部151と同一部材である。また、燃料電池スタック100は下端用セパレータ189を備えているため、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ基部151を備えていない(図2から図4参照)。
【0036】
インターコネクタ用セパレータ191は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。インターコネクタ用セパレータ191の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。インターコネクタ用セパレータ191における貫通孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190の平板部150の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。ある発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ用セパレータ191のうち、上側のインターコネクタ用セパレータ191は、該発電単位102の空気室166と、該発電単位102に対して上側に隣り合う他の発電単位102の燃料室176とを区画する。また、ある発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ用セパレータ191のうち、下側のインターコネクタ用セパレータ191は、該発電単位102の燃料室176と、該発電単位102に対して下側に隣り合う他の発電単位102の空気室166とを区画する。このように、インターコネクタ用セパレータ191により、発電単位102の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。なお、燃料電池スタック100において最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190に接合されたインターコネクタ用セパレータ191は、上側エンドプレート104に電気的に接続されている。
【0037】
図5および図7に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、単セル用セパレータ120の周縁部における上側の表面と、上側のインターコネクタ用セパレータ191の周縁部における下側の表面とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ用セパレータ191間(すなわち、一対のインターコネクタ190間)間が電気的に絶縁される。
【0038】
図6および図8に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、単セル用セパレータ120の周縁部における下側の表面と、下側のインターコネクタ用セパレータ191の周縁部における上側の表面とに接触している。
【0039】
図5および図6に示すように、燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116の下側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190(の平板部150)の上側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていないため、該発電単位102における燃料極側集電部材144のインターコネクタ対向部146は、下端用セパレータ189に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ190(または下端用セパレータ189)とを電気的に接続する。なお、燃料極側集電部材144の電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または下端用セパレータ189)との電気的接続が良好に維持される。
【0040】
A-2.単セル用セパレータ120およびインターコネクタ用セパレータ191とその周辺の詳細構成:
図9は、単セル用セパレータ120およびインターコネクタ用セパレータ191とその周辺の詳細構成(図5のX1部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。図10は、単セル用セパレータ120およびインターコネクタ用セパレータ191とその周辺の詳細構成(図6のX2部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。
【0041】
なお、図7および図8に示すように、単セル110のY軸方向(X軸方向に直交する方向)の中央に位置する部分であって、Y軸方向の幅W11が単セル110のY軸方向の最大幅W12の2/3である部分を「単セル中央部111」という。また、図9および図10に示す断面は、燃料電池スタック100のうち、上下方向(空気極114と燃料極116とが対向する方向)とX軸方向(上下方向視においてガス導入口GI1と単セル110とを最短距離で結ぶ直線L11(図7参照)の方向)とに沿った断面であって、単セル中央部111を含む断面に相当し、すなわち、特許請求の範囲における第1特定断面に相当する。図9および図10に示す断面は、また、上下方向(空気極114と燃料極116とが対向する方向)とX軸方向(上下方向視においてガス導入口GI1と単セル110とを最短距離で結ぶ直線L11(図7参照)の方向)とに沿った断面であって、ガス導入口GI1を含む断面に相当し、すなわち、特許請求の範囲における第2特定断面にも相当する。本実施形態では、X軸方向は特許請求の範囲の第2の方向に相当し、Y軸方向は特許請求の範囲の第3の方向に相当する。以下、図9および図10を参照しながら、燃料電池スタック100の当該断面構成について説明する。なお、本実施形態の燃料電池スタック100では、上下方向視で単セル110周りの全周に亘って、以下に説明するような断面構成となっている。
【0042】
(インターコネクタ用セパレータ191の構成)
インターコネクタ用セパレータ191は、上下方向視において単セル110の外側に位置する部分(以下、「インターコネクタ外側部」という。)192を有している。
【0043】
インターコネクタ外側部192は、第1の部分1921と、第2の部分1922と、第3の部分1923と、第4の部分1924と、第5の部分1925とを有している。
【0044】
第1の部分1921は、インターコネクタ外側部192のうち、単セル110から最も遠い端部である。第1の部分1921は、X軸方向に延伸している。ここでいう「ある方向に延伸」とは、当該方向について±5°の誤差が許容されるものであってもよい(以下において、ある方向に延伸、というときも同様)。
【0045】
第2の部分1922は、第1の部分1921の単セル110側の端部に連なり、かつ、第1の部分1921に対して単セル110側に位置している。第2の部分1922は、単セル110側ほど下方(Z軸負方向)側に位置するようにX軸方向に対して傾斜する方向に延伸している。
【0046】
第3の部分1923は、第2の部分1922の単セル110側の端部に連なり、かつ、第2の部分1922に対して単セル110側に位置している。第3の部分1923は、X軸方向に延伸している。
【0047】
第4の部分1924は、第3の部分1923の単セル110側の端部に連なり、かつ、第3の部分1923に対して単セル110側に位置している。第4の部分1924は、単セル110側ほど上方(Z軸正方向)側に位置するようにX軸方向に対して傾斜する方向に延伸している。
【0048】
第5の部分1925は、第4の部分1924の単セル110側の端部に連なり、かつ、第4の部分1924に対して単セル110側に位置している。第5の部分1925は、X軸方向に延伸している。
【0049】
(単セル用セパレータ120の構成)
単セル用セパレータ120は、上下方向視において単セル110の外側に位置する部分(以下、「セパレータ外側部」という。)129を有している。本実施形態では、セパレータ外側部129の全体は、上下方向視においてインターコネクタ用セパレータ191に重なっている。従って、セパレータ外側部129は、上下方向視においてインターコネクタ用セパレータ191に重なっている部分を有しているといえる。
【0050】
セパレータ外側部129は、第1の部分1291と、第2の部分1292と、第3の部分1293と、第4の部分1294と、第5の部分1295とを有している。
【0051】
第1の部分1291は、空気極側フレーム130よりも単セル110側のセパレータ外側部129のうち、単セル110から最も遠い端部である。第1の部分1291は、X軸方向に延伸している。
【0052】
第2の部分1292は、第1の部分1291の単セル110側の端部に連なり、かつ、第1の部分1291に対して単セル110側に位置している。第2の部分1292は、単セル110側ほど下方(Z軸負方向)側に位置するようにX軸方向に対して傾斜する方向に延伸している。
【0053】
第3の部分1293は、第2の部分1292の単セル110側の端部に連なり、かつ、第2の部分1292に対して単セル110側に位置している。第3の部分1293は、X軸方向に延伸している。
【0054】
第4の部分1294は、第3の部分1293の単セル110側の端部に連なり、かつ、第3の部分1293に対して単セル110側に位置している。第4の部分1294は、単セル110側ほど上方(Z軸正方向)側に位置するようにX軸方向に対して傾斜する方向に延伸している。
【0055】
第5の部分1295は、第4の部分1294の単セル110側の端部に連なり、かつ、第4の部分1294に対して単セル110側に位置している。第5の部分1295は、X軸方向に延伸している。
【0056】
(空気室166等のガス流路の構成)
図9および図5に示すように、各発電単位102は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連なるガス導入口GI1と、空気室166の部分であるガス導入流路GP1および単セル側ガス流路GP2と、酸化剤ガス排出マニホールド162に連なるガス排出流路GP3を含んでいる。
【0057】
ガス導入口GI1は、空気室166に酸化剤ガスOG(反応ガス)を導入するための開口部である。ガス導入口GI1は、上下方向視においてセパレータ外側部129とインターコネクタ外側部192とに重なっており、セパレータ外側部129とインターコネクタ外側部192と空気極側フレーム130とにより画定されている。
【0058】
ガス導入流路GP1は、ガス導入口GI1に連なっている。ガス導入流路GP1は、セパレータ外側部129とインターコネクタ外側部192とにより画定されている。
【0059】
単セル側ガス流路GP2は、ガス導入流路GP1に連なり、かつ、ガス導入流路GP1に対してガス流れ(酸化剤ガスOGの流れ)下流側である。単セル側ガス流路GP2は、上下方向視で単セル110に重なっている。単セル側ガス流路GP2は、主に単セル110とインターコネクタ190とにより画定されている。
【0060】
ガス排出流路GP3は、単セル側ガス流路GP2に連なり、かつ、単セル側ガス流路GP2に対してガス流れ(酸化剤ガスOGの流れ)下流側である。
【0061】
ガス導入流路GP1は、第1の流路部GP11と、第2の流路部GP12と、第3の流路部GP13と、第4の流路部GP14と、第5の流路部GP15とを含んでいる。
【0062】
第1の流路部GP11は、インターコネクタ外側部192の第1の部分1921と、セパレータ外側部129の第1の部分1291とにより画定されている。第1の流路部GP11は、ガス導入流路GP1のうち、単セル110から最も遠い端部である。第1の流路部GP11は、X軸方向に延伸している。
【0063】
第2の流路部GP12は、インターコネクタ外側部192の第2の部分1922と、セパレータ外側部129の第2の部分1292とにより画定されている。第1の流路部GP11の単セル110側の端部に連なり、かつ、第1の流路部GP11に対して単セル110側(換言すれば、第1の流路部GP11に対してガス流れ下流側)に位置している。第2の流路部GP12は、単セル110側ほど下方(Z軸負方向)側に位置するようにX軸方向に対して傾斜する方向に延伸している。
【0064】
第3の流路部GP13は、インターコネクタ外側部192の第3の部分1923と、セパレータ外側部129の第3の部分1293とにより画定されている。第3の流路部GP13は、第2の流路部GP12の単セル110側の端部に連なり、かつ、第2の流路部GP12に対して単セル110側に位置している。第3の流路部GP13は、X軸方向に延伸している。
【0065】
第4の流路部GP14は、インターコネクタ外側部192の第4の部分1924と、セパレータ外側部129の第4の部分1294とにより画定されている。第4の流路部GP14は、第3の流路部GP13の単セル110側の端部に連なり、かつ、第3の流路部GP13に対して単セル110側に位置している。第4の流路部GP14は、単セル110側ほど上方(Z軸正方向)側に位置するようにX軸方向に対して傾斜する方向に延伸している。
【0066】
第5の流路部GP15は、インターコネクタ外側部192の第5の部分1925と、セパレータ外側部129の第5の部分1295とにより画定されている。第5の流路部GP15は、第4の流路部GP14の単セル110側の端部に連なり、かつ、第4の流路部GP14に対して単セル110側に位置している。第5の流路部GP15は、X軸方向に延伸している。
【0067】
(燃料室176等のガス流路の構成)
以下において、隣(より正確には、Z軸負方向側の隣)の発電単位102を構成するインターコネクタ用セパレータ191を、「隣接インターコネクタ用セパレータ191A」といい、隣接インターコネクタ用セパレータ191Aにおけるインターコネクタ外側部192を「隣接インターコネクタ外側部192A」といい、隣接インターコネクタ外側部192Aの第1の部分1921、・・・、第5の部分1925を「第1の部分1921A、・・・、第5の部分1925A」という。
という。
【0068】
図10および図6に示すように、各発電単位102は、燃料ガス供給マニホールド171に連なるガス導入口GI2と、燃料室176の部分であるガス導入流路GP4および単セル側ガス流路GP5と、燃料ガス排出マニホールド172に連なるガス排出流路GP6とを含んでいる。
【0069】
ガス導入口GI2は、燃料室176に燃料ガスFG(反応ガス)を導入するための開口部である。ガス導入口GI2は、上下方向視において隣接インターコネクタ外側部192Aとセパレータ外側部129とに重なっており、隣接インターコネクタ外側部192Aとセパレータ外側部129と燃料極側フレーム140とにより画定されている。
【0070】
ガス導入流路GP4は、ガス導入口GI2に連なっている。ガス導入流路GP4は、隣接インターコネクタ外側部192Aとセパレータ外側部129とにより画定されている。
【0071】
単セル側ガス流路GP5は、ガス導入流路GP4に対してガス流れ(燃料ガスFGの流れ)下流側である。単セル側ガス流路GP5は、上下方向視で単セル110に重なっている。単セル側ガス流路GP5は、主にインターコネクタ190と単セル110とにより画定されている。
【0072】
ガス排出流路GP6は、単セル側ガス流路GP5に連なり、かつ、単セル側ガス流路GP5に対してガス流れ(燃料ガスFGの流れ)下流側である。
【0073】
ガス導入流路GP4は、第1の流路部GP41と、第2の流路部GP42と、第3の流路部GP43と、第4の流路部GP44と、第5の流路部GP45とを含んでいる。
【0074】
第1の流路部GP41は、セパレータ外側部129の第1の部分1291と、隣接インターコネクタ外側部192Aの第1の部分1921Aとにより画定されている。第1の流路部GP41は、ガス導入流路GP4のうち、単セル110から最も遠い端部である。第1の流路部GP41は、X軸方向に延伸している。
【0075】
第2の流路部GP42は、セパレータ外側部129の第2の部分1292と、隣接インターコネクタ外側部192Aの第2の部分1922Aとにより画定されている。第1の流路部GP41の単セル110側の端部に連なり、かつ、第1の流路部GP41に対して単セル110側(換言すれば、第1の流路部GP41に対してガス流れ下流側)に位置している。第2の流路部GP42は、単セル110側ほど下方(Z軸負方向)側に位置するようにX軸方向に対して傾斜する方向に延伸している。
【0076】
第3の流路部GP43は、セパレータ外側部129の第3の部分1293と、隣接インターコネクタ外側部192Aの第3の部分1923Aとにより画定されている。第3の流路部GP43は、第2の流路部GP42の単セル110側の端部に連なり、かつ、第2の流路部GP42に対して単セル110側に位置している。第3の流路部GP43は、X軸方向に延伸している。
【0077】
第4の流路部GP44は、セパレータ外側部129の第4の部分1294と、隣接インターコネクタ外側部192Aの第4の部分1294Aとにより画定されている。第4の流路部GP44は、第3の流路部GP43の単セル110側の端部に連なり、かつ、第3の流路部GP43に対して単セル110側に位置している。第4の流路部GP44は、単セル110側ほど上方(Z軸正方向)側に位置するようにX軸方向に対して傾斜する方向に延伸している。
【0078】
第5の流路部GP45は、セパレータ外側部129の第5の部分1295と、隣接インターコネクタ外側部192Aの第5の部分1295Aとにより画定されている。第5の流路部GP45は、第4の流路部GP44の単セル110側の端部に連なり、かつ、第4の流路部GP44に対して単セル110側に位置している。第5の流路部GP45は、X軸方向に延伸している。
【0079】
なお、インターコネクタ外側部192の各部(第1の部分1921,・・・,第5の部分1925)の形状や、セパレータ外側部129の各部(第1の部分1291,・・・,第5の部分1295)の形状や、ガス導入流路GP1,GP4の各部(第1の流路部GP11、・・・、第5の流路部GP15)の形状は、製品出荷時においては上述の通りであるが、燃料電池スタック100の運転に伴ってインターコネクタ外側部192やセパレータ外側部129が変形すること等により、変化することがある。
【0080】
(特徴的構成)
図9に示すように、セパレータ外側部129の第1の部分1291は、ガス導入流路GP1を画定する輪郭線(以下、「特定輪郭線」という。)C1がX軸方向に延伸している。インターコネクタ外側部192の第2の部分1922は、セパレータ外側部129側の下端部(上下方向のセパレータ外側部129側の端部)が、上下方向において、特定輪郭線C1と重なる仮想直線L1の位置から当該仮想直線L1よりもセパレータ外側部129寄り(下方)であって当該セパレータ外側部129(第2の部分1292や第3の部分1293)の手前までの領域に配置されている。これは、図9に示すように、インターコネクタ外側部192の第2の部分1922は、セパレータ外側部129側の下端部が、上下方向において、当該仮想直線L1よりもセパレータ外側部129寄り(下方)の領域にまで配置されている態様とすることを含む。また、このような態様に換えて、インターコネクタ外側部192の第2の部分1922は、セパレータ外側部129側の下端部が、上下方向において、輪郭線C1と重なる仮想直線L1の位置に配置され、当該仮想直線L1よりもセパレータ外側部129寄り(下方)の領域にまでは配置されていない態様とすることも含む。なお、後述するセパレータ外側部129の第2の部分1292についても同様である。
【0081】
第2の流路部GP12を画定するインターコネクタ外側部192の部分(第2の部分1922)とセパレータ外側部129の部分(第2の部分1292)との間の最短距離D12(μm)は、第1の流路部GP11を画定するインターコネクタ外側部192の部分(第1の部分1921)とセパレータ外側部129の部分(第1の部分1291)との間の最短距離D11(μm)よりも短い。なお、最短距離D11,D12(μm)の有効数字は3桁である。
【0082】
図7に示すように、インターコネクタ外側部192の第2の部分1922はY軸方向(X軸方向に直交する方向)に沿って単セル中央部111の幅W11以上の長さで延在している。
【0083】
図10に示すように、隣接インターコネクタ外側部192Aの第1の部分1921Aは、ガス導入流路GP4を画定する輪郭線(以下、「特定輪郭線」という。)C2がX軸方向に延伸している。セパレータ外側部129の第2の部分1292は、隣接インターコネクタ外側部192A側の下端部(上下方向の隣接インターコネクタ外側部192A側の端部)が、上下方向において、特定輪郭線C2と重なる仮想直線L2の位置から当該仮想直線L2よりも隣接インターコネクタ外側部192A寄り(下方)であって当該隣接インターコネクタ外側部192A(第2の部分1922Aや第3の部分1923A)の手前までの領域に配置されている。
【0084】
第2の流路部GP42を画定するセパレータ外側部129の部分(第2の部分1292)と隣接インターコネクタ外側部192Aの部分(第2の部分1922A)との間の最短距離D22(μm)は、第1の流路部GP41を画定するセパレータ外側部129の部分(第1の部分1291)と隣接インターコネクタ外側部192Aの部分(第1の部分1921A)との間の最短距離D21(μm)よりも短い。なお、最短距離D21,D22(μm)の有効数字は3桁である。
【0085】
図8に示すように、セパレータ外側部129の第2の部分1292はY軸方向(X軸方向に直交する方向)に沿って単セル中央部111の幅W21以上の長さで延在している。
【0086】
A-3.燃料電池スタック100の動作:
図2および図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102のガス導入口GI1を介して、空気室166に供給される。また、図3および図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102のガス導入口GI2を介して、燃料室176に供給される。
【0087】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。空気室166に供給される酸化剤ガスOGは、まず、ガス導入流路GP1を、第1の流路部GP11、・・・、第5の流路部GP15の順に流れ、それから、単セル側ガス流路GP2、ガス排出流路GP3の順に流れる。同様に、燃料室176に供給される燃料ガスFGは、まず、ガス導入流路GP4を、第1の流路部GP41、・・・、第5の流路部GP45の順に流れ、それから、単セル側ガス流路GP5、ガス排出流路GP6の順に流れる。各発電単位102において、単セル110の空気極114は上側のインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して下側のインターコネクタ190(または、下端用セパレータ189)に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。また、最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190およびインターコネクタ用セパレータ191は、上側エンドプレート104に電気的に接続されており、最も下側に位置する発電単位102の燃料極側集電部材144に電気的に接続された下端用セパレータ189は、下側エンドプレート106に電気的に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0088】
図2および図5に示すように、各発電単位102の空気室166からガス排出流路GP3を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、図3および図6に示すように、各発電単位102の燃料室176からガス排出流路GP6を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0089】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、上下方向(以下、「第1の方向」という。)に並べて配置された複数の発電単位102を備える。各発電単位102は、単セル110と、インターコネクタ190と、単セル用セパレータ120とを備える。単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極114および燃料極116とを備える。インターコネクタ190は、空気極114に対して第1の方向の電解質層112とは反対側に配置された部材であり、空気極114に電気的に接続される。インターコネクタ190は、第1の方向視において単セル110の外側に位置するインターコネクタ外側部192を有する。単セル用セパレータ120は、単セル110に接続された部材であり、第1の方向視においてインターコネクタ外側部192に重なる部分であるセパレータ外側部129を有する。各発電単位102は、ガス導入口GI1と、ガス導入流路GP1と、単セル側ガス流路GP2とを備える。ガス導入口GI1は、空気極114に面する空気室166に反応ガス(酸化剤ガスOG)を導入するための開口部であって、第1の方向視においてセパレータ外側部129とインターコネクタ外側部192とに重なる。ガス導入流路GP1は、空気室166の部分であって、ガス導入口GI1に連なり、かつ、セパレータ外側部129とインターコネクタ外側部192とにより画定されている。単セル側ガス流路GP2は、空気室166の部分であって、ガス導入流路GP1に対してガス流れ下流側であり、第1の方向視で単セル110に重なっている。以下、第1の方向視においてガス導入口GI1と単セル110とを最短距離で結ぶ直線L11の方向(本実施形態ではX軸方向)を「第2の方向」といい、第1の方向視において第2の方向に直交する方向(本実施形態ではY軸方向)を「第3の方向」という。燃料電池スタック100の第1の方向と第2の方向とに沿った断面(例えば、図9および図10に示す断面)であって、単セル中央部111(単セル110の第3の方向の中央に位置する部分であって、第3の方向の幅W11が単セル110の第3の方向の最大幅W12の2/3である部分)を含む断面を「第1特定断面」といい、第1の方向と第2の方向とに沿った断面(例えば、図9および図10に示す断面)であって、ガス導入口GI1を含む断面を「第2特定断面」という。
【0090】
第1特定断面と第2特定断面とのそれぞれにおいて、セパレータ外側部129は、ガス導入流路GP1を画定する第1の部分1291を有する。第1の部分1291は、ガス導入流路GP1のうち単セル110とは反対側の端部を画定する輪郭線(以下、「特定輪郭線」という。)C1が第2の方向(本実施形態ではX軸方向)に延伸している。インターコネクタ外側部192は、第1の部分1291に対してガス流れ下流側においてガス導入流路GP1を画定する第2の部分1922を有する。インターコネクタ外側部192の第2の部分1922は、セパレータ外側部129側の下端部(第1の方向のセパレータ外側部129側の端部)が、第1の方向において特定輪郭線C1と重なる仮想直線L1の位置から当該仮想直線L1よりもセパレータ外側部129寄りであって当該セパレータ外側部129の手前までの領域に配置されている。このような構成である本実施形態の燃料電池スタック100においては、第2の方向に延伸している第1の部分1291に沿って当該方向に流れる反応ガスは、インターコネクタ外側部192の第2の部分1922が第1の方向の仮想直線L1よりもセパレータ外側部129から離れた領域までしか配置されていない構成と比較して、ガス導入流路GP1において第2の部分1922に衝突することにより、第2の方向に流れることが抑制されつつ、第3の方向(本実施形態ではY軸方向)に流れ易くなる。これにより、単セル側ガス流路GP2内における第3の方向のガス拡散性が向上し、ひいては、単セル110内における第3の方向のガス拡散性が向上し、単セル110内における反応ガスの拡散性が比較的均一となる。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、反応ガスの流れが単セル110の一部に集中して発電反応が過度に生じることに起因する単セル110の発電性能(ひいては燃料電池スタック100、以下同様)の低下を抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、第1特定断面と第2特定断面とのそれぞれにおいて、ガス導入流路GP1は、少なくとも一部が第1の部分1291(セパレータ外側部129の第1の部分1291)により画定される部分である第1の流路部GP11と、第1の流路部GP11のガス流れ下流側において第1の流路部GP11に連なり、かつ、少なくとも一部が第2の部分1922(インターコネクタ用セパレータ191の第2の部分1922)により画定される部分である第2の流路部GP12とを有する。第1の流路部GP11は、第2の方向(本実施形態ではX軸方向)に延伸している。第2の流路部GP12は、単セル110側ほど第1の方向の一方側に位置するようにX軸方向に対して傾斜する方向に延伸している。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、上述したように主に第2の部分1922を有することにより単セル110内における第3の方向(本実施形態ではY軸方向)のガス拡散性を向上させるものでありながら、第1の流路部GP11が第2の方向に延伸し、かつ、第2の流路部GP12が上述したように第2の方向に対して傾斜する方向(単セル110側ほど第1の方向の一方側に位置するように第2の方向に対して傾斜する方向)に延伸していることにより、第2の方向(厳密には、第2の方向の成分を有する方向)のガス流れもある程度以上確保することができる。
【0092】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、第1特定断面と第2特定断面とのそれぞれにおいて、ガス導入流路GP1のうち、第2の流路部GP12と単セル側ガス流路GP2とに連なる部分は、第2の流路部GP12のガス流れ下流側において第2の流路部GP12に連なる第3の流路部GP13と、第3の流路部GP13のガス流れ下流側において第3の流路部GP13に連なる第4の流路部GP14と、第4の流路部GP14のガス流れ下流側において第4の流路部GP14に連なる第5の流路部GP15とを有する。第3の流路部GP13は、第2の方向(本実施形態ではX軸方向)に延伸している。第4の流路部GP14は、単セル110側ほど第1の方向の一方と反対側に位置するようにX軸方向に対して傾斜する方向に延伸している。第5の流路部GP15は、第2の方向に延伸している。このような構成である本実施形態の燃料電池スタック100によれば、より効果的に、第3の方向(本実施形態ではY軸方向)のガス拡散性を向上させつつ第2の方向(厳密には、第2の方向の成分を有する方向)のガス流れを確保することができる。
【0093】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、第1特定断面と第2特定断面とのそれぞれにおいて、第2の流路部GP12を画定するインターコネクタ外側部192の部分(第2の部分1922)とセパレータ外側部129の部分(第2の部分1292)との間の最短距離D12は、第1の流路部GP11を画定するインターコネクタ外側部192の部分(第1の部分1921)とセパレータ外側部129の部分(第1の部分1291)との間の最短距離D11よりも短い。このような構成である本実施形態の燃料電池スタック100では、最短距離D11と最短距離D12とが同等である構成と比較して、第2の流路部GP12を反応ガスが第2の方向(本実施形態ではX軸方向)に流れる際の抵抗が高まり、これにより第2の流路部GP12における第3の方向(本実施形態ではY軸方向)のガス拡散性が向上する。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、単セル110内における第3の方向のガス拡散性を更に向上させることができる。
【0094】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、インターコネクタ外側部192の第2の部分1922は第3の方向(本実施形態ではY軸方向)に沿って単セル中央部111の幅W11以上の長さで延在している。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、特に効果的に、単セル側ガス流路GP2内における第3の方向のガス拡散性を向上させることができる。
【0095】
上記では、本発明を、空気室166における酸化剤ガスOGの流れに関する構成に適用した部分による効果を説明したが、燃料室176における燃料ガスFGの流れに関する構成に適用した部分についても同様の効果が得られる。
【0096】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0097】
上記実施形態における燃料電池スタック100の構成や燃料電池スタック100を構成する各部分の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。また、セパレータ外側部129の形状は、「インターコネクタ用セパレータ191の第2の部分1922は、第1の方向のセパレータ外側部129側の端部が、第1の方向において特定輪郭線C1と重なる仮想直線L1の位置から当該仮想直線L1よりもセパレータ外側部129寄りであって当該セパレータ外側部129の手前までの領域に配置されている」という条件を満たす限りにおいて、どのようなものであってもよい。このような構成である燃料電池スタック100においては、上記実施形態と同様に、反応ガスの流れが単セル110の一部に集中して発電反応が過度に生じることに起因する単セル110の発電性能の低下を抑制することができる。また、インターコネクタ用セパレータ191の形状についても同様である。
【0098】
上記実施形態(または変形例、以下同様)の燃料電池スタック100では、第1特定断面であり、かつ、第2特定断面でもある断面(例えば、図9および図10に示す断面)において、単セル用セパレータ120およびインターコネクタ用セパレータ191等が上述した特徴的構成とされているが、第1特定断面でしかない断面と第2特定断面でしかない断面とがそれぞれ存在し、それら断面において上述した特徴的構成とされていてもよい。
【0099】
上記実施形態の燃料電池スタック100では、第1の方向視(上記実施形態では上下方向視)で単セル110周りの全周に亘って、単セル用セパレータ120およびインターコネクタ用セパレータ191等が上述した特徴的構成とされているが、当該全周の一部のみにおいて、上述した特徴的構成とされていてもよい。
【0100】
上記実施形態では、インターコネクタ190が、空気極114に対して第1の方向(上記実施形態では上下方向)の電解質層112とは反対側に配置された部材であり、空気極114に電気的に接続された燃料電池スタック100に本発明を適用したものである。また、インターコネクタが、燃料室176に対して第1の方向の電解質層112とは反対側に配置された部材であり、燃料室176に電気的に接続された燃料電池スタックに本発明を適用してもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100に含まれるすべての単セル用セパレータ120およびインターコネクタ用セパレータ191等が上述した特徴的構成とされているが、一部の単セル用セパレータ120およびインターコネクタ用セパレータ191等のみが上述した特徴的構成とされていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 32,34:孔 100:燃料電池スタック 102:発電単位 103:発電ブロック 104,106:エンドプレート 108:連通孔 109:ボルト孔 110:単セル 111:単セル中央部 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 118:反応防止層 120:単セル用セパレータ 121:貫通孔 124:接合部 125:ガラスシール部 129:セパレータ外側部 1291:第1の部分 1292:第2の部分 1293:第3の部分 1294:第4の部分 1295:第5の部分 130:空気極側フレーム 131:孔 134:空気極側集電部 140:燃料極側フレーム 141:孔 144:燃料極側集電部材 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:平板部 151:インターコネクタ基部 161:酸化剤ガス供給マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス供給マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 181:貫通孔 189:下端用セパレータ 190:インターコネクタ 191:インターコネクタ用セパレータ 191A:隣接インターコネクタ用セパレータ 192:インターコネクタ外側部 1921:第1の部分 1922:第2の部分 1923:第3の部分 1924:第4の部分 1925:第5の部分 192A:隣接インターコネクタ外側部 1921A:第1の部分 1922A:第2の部分 1923A:第3の部分 1924A:第4の部分 1925A:第5の部分 194:被覆層 196:導電性接合材 C1,C2:特定輪郭線 D11,D12,D21,D22:最短距離 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス GI1:ガス導入口 GI2:ガス導入口 GP1:ガス導入流路 GP11:第1の流路部 GP12:第2の流路部 GP13:第3の流路部 GP14:第4の流路部 GP15:第5の流路部 GP2:単セル側ガス流路 GP3:ガス排出流路 GP4:ガス導入流路 GP41:第1の流路部 GP42:第2の流路部 GP43:第3の流路部 GP44:第4の流路部 GP45:第5の流路部 GP5:単セル側ガス流路 GP6:ガス排出流路 L11:直線 L1:仮想直線 L2:仮想直線 OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス W11,W21:単セル中央部の幅 W12:単セルの最大幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10