(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146379
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
G01L3/10 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047300
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】日本電産コパル電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嵩幸
(57)【要約】
【課題】 起歪体の電極が配置された部分への応力を低減することができ、接続不良や断線を防止することが可能なトルクセンサを提供する。
【解決手段】 第1構造体11と第2構造体12は複数の第3構造体13によりれんけつされる。第1歪センサ14及び第2歪センサ15は、第1構造体と第2構造体との間に固定される。第1歪センサ及び第2歪センサのそれぞれは、矩形状の起歪体14aを具備する。起歪体14aは、第1構造体に固定された第1端部と第2構造体に固定された中間部と、第2端部を有する。第2構造体は、接触部12bを具備し、接触部12bは、起歪体の中間部と第2端部との間の一部に接触する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造体と、
前記第1構造体の内側に前記第1構造体と同心状に配置された第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体を連結する複数の第3構造体と、
前記第3構造体以外の位置で前記第1構造体と前記第2構造体との間に固定された第1歪センサ及び第2歪センサと、を具備し、
第1歪センサ及び第2歪センサのそれぞれは、
第1端部と、第2端部と、前記第1端部と前記第2端部との間の中間部とを有し、前記第1端部が前記第1構造体の表面に固定され、前記中間部が前記第2構造体の表面に固定され、前記第2端部が前記第2構造体の表面に位置する矩形状の起歪体と、
前記起歪体の前記第1端部と前記中間部との間の表面に設けられた薄膜抵抗体と、
前記起歪体の前記第2端部と前記中間部との間に位置する前記起歪体の表面に設けられ、前記薄膜抵抗体に電気的に接続された薄膜電極と、を具備し、
前記第2構造体と前記起歪体の一方に設けられ、前記起歪体の前記中間部と前記第2端部との間の一部分、又は前記第2構造体の一部に接触する接触部を具備することを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
前記第2構造体は、前記起歪体の前記中間部の近傍に設けられた前記接触部としての段部を具備することを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記第2構造体は、前記起歪体の前記中間部と前記第2端部との間に設けられた凹部を具備し、前記凹部の縁部が前記接触部であることを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記第2構造体は、前記起歪体の長手方向に沿った溝を具備し、前記溝の長手方向に沿った両側が前記起歪体の長手方向の両側に接触する前記接触部であることを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項5】
前記第2構造体は、前記起歪体の前記第2端部の近傍と対応する位置に、前記起歪体に点接触する前記接触部としての第1突起を具備することを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項6】
前記第2構造体は、前記起歪体の前記第2端部の近傍と対応する位置に、前記起歪体に線接触する前記接触部としての第2突起を具備することを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項7】
前記第2構造体は、前記起歪体の前記第2端部の近傍と対応する位置に、前記起歪体に接触する低摩擦係数の材料により形成された接触部としての第3突起を具備することを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項8】
前記起歪体の前記中間部と前記第2端部は、前記第2構造体の平坦な面に接触して配置され、前記起歪体は、前記中間部と前記薄膜電極の間に幅の狭いくびれ部を有ることを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えばロボットアームの関節に設けられるトルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクセンサは、第1構造体と第2構造体が複数の第3構造体により接続され、第1構造体と第2構造体との間に設けられた薄膜歪センサによりトルクが検出される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
薄膜歪センサは、一般に、起歪体上に絶縁膜が形成され、絶縁膜上に薄膜抵抗体や薄膜電極が形成された構成を有しており、起歪体に印加された力に応じて生じた起歪体の変形を薄膜抵抗体の抵抗値の変化として検出する(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-91813号公報
【特許文献2】特開2018-132312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薄膜歪センサの起歪体は、第1構造体と第2構造体に固定される。第1構造体と第2構造体との間にトルクが印加された場合、第1構造体と第2構造体は相対的に移動し、起歪体の第1構造体と第2構造体との間の部分に配置された複数の薄膜抵抗体によりトルクが検出される。第1構造体と第2構造体に対する起歪体の固定力又は剛性が十分に大きい場合、トルクにより第1構造体と第2構造体が相対的に移動しても、起歪体の第1構造体と第2構造体との間に位置する部分以外の電極が配置された部分には、トルクの影響が及ばない。
【0006】
しかし、固定力又は剛性が十分に大きくない場合、起歪体の第1構造体又は第2構造体との摩擦により、起歪体の電極が配置された部分に微小な応力(歪み)が生じる。このため、電極において、電気的な接続が不安定になったり、断線したりしてしまうことがある。
【0007】
本発明の実施形態は、起歪体の電極が配置された部分への応力を低減することができ、接続不良や断線を防止することが可能なトルクセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態のトルクセンサは、第1構造体と、前記第1構造体の内側に前記第1構造体と同心状に配置された第2構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体を連結する複数の第3構造体と、前記第3構造体以外の位置で前記第1構造体と前記第2構造体との間に固定された第1歪センサ及び第2歪センサと、を具備し、第1歪センサ及び第2歪センサのそれぞれは、第1端部と、第2端部と、前記第1端部と前記第2端部との間の中間部とを有し、前記第1端部が前記第1構造体の表面に固定され、前記中間部が前記第2構造体の表面に固定され、前記第2端部が前記第2構造体の表面に位置する矩形状の起歪体と、前記起歪体の前記第1端部と前記中間部との間の表面に設けられた薄膜抵抗体と、前記起歪体の前記第2端部と前記中間部との間に位置する前記起歪体の表面に設けられ、前記薄膜抵抗体に電気的に接続された薄膜電極と、を具備し、前記第2構造体と前記起歪体の一方に設けられ、前記起歪体の前記中間部と前記第2端部との間の一部分、又は前記第2構造体の一部に接触する接触部を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るトルクセンサを示す平面図。
【
図2】第1実施形態に適用される歪センサの一例を示す平面図。
【
図4】
図3のIV-IV線に沿った断面を示す斜視図。
【
図6】第2実施形態に係るトルクセンサの主要部を示す斜視図。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿った断面を示す斜視図。
【
図8】第3実施形態に係るトルクセンサの主要部を示す斜視図。
【
図9】
図8のIX-IX線に沿った断面を示す斜視図。
【
図10】第4実施形態に係るトルクセンサの主要部を示す斜視図。
【
図12】第5実施形態に係るトルクセンサの主要部を示す斜視図。
【
図13】
図12のXIII-XIII線に沿った断面を示す斜視図。
【
図14】第6実施形態に係るトルクセンサの主要部を示す斜視図。
【
図16】第7実施形態に係るトルクセンサの主要部を示す斜視図。
【
図17】
図16のXVII-XVII線に沿った断面を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一符号を付している。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るトルクセンサ10を示している。
トルクセンサ10は、第1構造体11、第2構造体12、梁としての複数の第3構造体13、第1歪センサ14、第2歪センサ15、第3歪センサ16、第4歪センサ17を具備している。
【0012】
環状の第1構造体11の内側に環状の第2構造体12が同心状に配置され、第1構造体11と第2構造体12は、放射状に配置された複数の第3構造体13により連結されている。第1構造体11は、例えばトルクを受け、第2構造体12は、例えばトルクを出力する。
【0013】
第1構造体11、第2構造体12、及び複数の第3構造体13は、例えば金属により構成されるが、印加されるトルクに対して機械的な強度を十分に得ることができれば、金属以外の材料を使用することも可能である。
【0014】
第1構造体11と第2構造体12との間には、第1歪センサ14、第2歪センサ15、第3歪センサ16、第4歪センサ17が接続されている。これらセンサは、それぞれ90°離れて配置されている。歪センサの数は、4つに限定されるものではなく、例えば2つ又は3つであってもよい。第1歪センサ14、第2歪センサ15、第3歪センサ16、第4歪センサ17の構成は、同一であるため、第1歪センサ14の構成についてのみ説明する。
【0015】
図2は、第1歪センサ14を拡大して示している。
第1歪センサ14は、起歪体14a、薄膜抵抗体14b、14c、複数の薄膜配線14d、14e、14f、14g、薄膜電極14h、14i、14jを具備している。
【0016】
起歪体14aは、例えば矩形状の弾性体(金属)、例えばステンレススチール(SUS)により構成されている。起歪体14aの形状、材料は、これに限定されるものではなく、セラミックス(例えばSUSと線膨張係数が近いジルコニア)など、後述する溶接又はろう付けが可能な材料であればよい。
【0017】
起歪体14aは、薄膜抵抗体14b、14c、薄膜配線14d、14e、14f、薄膜電極14h、14i、14j、第1固定部C1、C2、第2固定部C3、C4、伝達部14k、及び電極配置領域14lと、を具備している。薄膜抵抗体の数は、2つに限定されるものではなく、例えば4つであってもよい。薄膜抵抗体の数、及び歪センサの数は、抵抗体により構成されるブリッジ回路の構成に応じて変更可能である。
【0018】
第1固定部C1、C2は、起歪体14aの長手方向の第1端部で、起歪体14aの短手方向の両端に設けられている。第2固定部C3、C4は、起歪体14aの長手方向のほぼ中間部で、起歪体14aの短手方向の両端に設けられている。
【0019】
伝達部14kは、第1固定部C1、C2と第2固定部C3、C4の間に設けられ、電極配置領域14lは、起歪体14aの長手方向の第2端部と第2固定部C3、C4の間とに設けられている。
【0020】
第1固定部C1、C2は、第1構造体11に固定され、第1構造体11と起歪体14aとの間で力を伝達する部分である。第2固定部C3、C4は、トルクセンサの第2構造体12に固定され、第2構造体12と起歪体14aとの間で力を伝達する部分である。
【0021】
第1固定部C1、C2と第1構造体11との固定方法、及び第2固定部C3、C4と第2構造体12との固定方法は、例えば溶接又はろう付けである。
【0022】
図1、
図2に第1固定部C1、C2、第2固定部C3、C4として示す丸印は、接合位置(接合領域)を示している。
図2において、2つの丸印を結ぶ破線(直線)は、伝達部14kの範囲を便宜的に示している。
【0023】
伝達部14kは、第1固定部C1、C2、第2固定部C3、C4との間で力を伝達する部分であり、伝達部14kは、第1構造体11及び第2構造体12から受けた力に応じて変形する領域である。
【0024】
薄膜抵抗体14b、14cは、伝達部14k内に第1固定部C1、C2の近傍に配置され、伝達部14kの変形を電気信号に変換する。
【0025】
薄膜電極14h、14i、14jは、第1固定部C1、C2、第2固定部C3、C4、伝達部14k以外の電極配置領域14lで、起歪体14aの他端部近傍に配置されている。
【0026】
薄膜電極14h、14iは、薄膜配線14d、14eにより薄膜抵抗体14bに接続され、薄膜電極14i、14jは、薄膜配線14f、14gにより薄膜抵抗体14cに接続されている。薄膜電極14iは、薄膜抵抗体14b、14cに共通の電極である。
【0027】
尚、薄膜抵抗体の数、薄膜電極の数、及び薄膜抵抗体と薄膜電極とを接続する配線の数は、これに限定されるものではなく、変形可能である。
【0028】
図3、
図4は、
図1のA部を拡大して示している。
第1構造体11は、起歪体14aを収容するための第1凹部11aを有し、第2構造体12は、起歪体14aを収容するための第2凹部12aを有している。第1凹部11aは第1底面11bを有し、第2凹部12aは、第1底面11bと同じ高さの第2底面12bを有している。第1凹部11a及び第2凹部12aは、必須の構成ではなく、省略することも可能である。
【0029】
起歪体14aは、第1固定部C1、C2において、第1構造体11の第1底面11bに接合され、第2固定部C3、C4において、第2構造体12の第2底面12bに接合される。
【0030】
第2構造体12の第2凹部12aは、起歪体14aの電極配置領域14lと対応する部分に、第2底面12bよりさらに低い第3底面12cを有しており、接触部としての第2底面12bと第3底面12cとの間に段部12dを有している。段部12dは、第2固定部C3、C4の近傍に配置されている。
【0031】
起歪体14aの裏面と第3底面12cとの間には隙間があり、起歪体14aの電極配置領域14lの裏面は、第3底面12cから離れている。隙間は、例えば0.05mm以下である。したがって、起歪体14aの電極配置領域14lの裏面と、第3底面12cとの間に摩擦力が生じない。
【0032】
図5は、第1実施形態の作用を示すものであり、第1構造体11と第2構造体12との間に力が伝達される場合を示している。
【0033】
第1構造体11と第2構造体12が図示矢印に示すように互いに逆方向に動き、第1固定部C1、C2及び第2固定部C3、C4の固定力又は剛性が十分である場合、起歪体14aの伝達部14kが変形し、薄膜抵抗体14b、14cにより、歪みが検知される。この時、起歪体14aの電極配置領域14lの裏面と第3底面12cとの間に隙間があるため、これらの間に摩擦力が生じず、電極配置領域14lは、第2構造体12からの力を受けない。このため、第2固定部C3、C4の固定力又は剛性が許容範囲内において弱い場合においても、電極配置領域14lは変形しない。したがって、電極配置領域14lに配置された薄膜電極14h、14i、14jや、薄膜電極14h、14i、14jにボンディングされたワイヤにも第2構造体12からの力が伝達されず、これらの破損を防止できる。
【0034】
一方、従来のように、電極配置領域14lの裏面全体が第2構造体12の表面に接触している場合、電極配置領域14lと第2構造体12との摩擦力により、電極配置領域14lは、第2構造体12からの力を受ける。このため、第2固定部C3、C4の固定力又は剛性が許容範囲内において弱い場合、
図5に破線で示すように、電極配置領域14lが変形する。したがって、電極配置領域14lに配置された薄膜電極14h、14i、14jや、薄膜電極14h、14i、14jにボンディングされたワイヤが力を受け、破損する可能性がある。
【0035】
尚、起歪体14aの裏面と第3底面12cとの間の隙間は、例えば0.05mm以下であり、極めて狭い。このため、薄膜電極14h、14i、14jに図示せぬワイヤをボンディングする際、起歪体14aが撓んで第3底面12cに当接することができる。したがって、ワイヤを薄膜電極14h、14i、14jに十分な強度で接合させることが可能である。
【0036】
(第1実施形態の効果)
上記第1実施形態によれば、第2構造体12は、接触部としての第2底面12bを有し、起歪体14aは、第2固定部C3、C4と段部12dとの間の第2底面12bに接触され、起歪体14aの電極配置領域14lの裏面と第3底面12cとの間には隙間がある。このため、第1構造体11と第2構造体12との間に力が伝達された場合において、起歪体14aの電極配置領域14lは、第2構造体12からの力を受けない。したがって、第2固定部C3、C4の固定力又は剛性が許容範囲内で弱い場合においても、電極配置領域14lの変形を防止でき、電極配置領域14lに配置された薄膜電極14h、14i、14jの破損を防止できる。
【0037】
(第2実施形態)
図6、
図7は、第2実施形態を示している。第1実施形態において、第2構造体12は、接触部としての段部12dを有し、起歪体14aの電極配置領域14lは、第2構造体12の第3底面12cから離れていた。
【0038】
これに対して、第2実施形態において、第2構造体12は、第2凹部12a内にさらに第3凹部21を有し、第3凹部21の縁部うち、起歪体14aの長手方向に位置する2つの第2底面12bが接触部として機能する。
【0039】
具体的には、第3凹部21は、起歪体14aの電極配置領域14lの中央部に対応して配置される。このため、電極配置領域14lの大部分は第3凹部21と対向しており第2底面12bと接触せず、起歪体14aの第2固定部C3、C4の近傍と第2端部が、第3凹部21の縁部うち、起歪体14aの長手方向に位置する2つの第2底面12bと接触する。
【0040】
上記構成において、第1構造体11と第2構造体12が互いに逆方向に動き、第2固定部C3、C4の固定力又は剛性が許容範囲内において弱い場合、起歪体14aは、第2固定部C3、C4と第3凹部21との間の部分、及び起歪体14aの第2端部の裏面と、第2底面12bとの間に僅かな摩擦力が生じる。しかし、電極配置領域14lの大部分は、摩擦が生じないため第2構造体12からの力を受けず、電極配置領域14lは殆ど変形しない。したがって、電極配置領域14lに配置された薄膜電極14h、14i、14jや、薄膜電極14h、14i、14jにボンディングされた図示せぬワイヤにも第2構造体12からの力が伝達されず、これらの破損を防止できる。
【0041】
また、起歪体14aの第2端部は、第2底面12b上に配置されているため、薄膜電極14h、14i、14jに図示せぬワイヤをボンディングする際、起歪体14aを十分に保持することができる。したがって、ワイヤを薄膜電極14h、14i、14jに十分な強度で接合させることが可能である。
【0042】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、第2実施形態によれば、起歪体14aの第2端部が第2凹部12aの第2底面12b上に配置されているため、起歪体14aを安定に保持することが可能である。
【0043】
(第3実施形態)
図8、
図9は、第3実施形態を示している。第2実施形態において、起歪体14aは、その第2端部が第2凹部12aの第2底面12bの上に配置されている。
これに対して、第3実施形態において、第2構造体12は、起歪体14aの長手方向に沿った溝31を有し、溝31の両側が起歪体14aの長手方向の両側に接触する接触部として機能する。
【0044】
具体的には、第2構造体12の第2底面には、第2固定部C3、C4の近傍から、第2構造体12の径方向に沿って、溝31が形成されている。溝31の幅は、起歪体14aの幅より狭い。このため、起歪体14aの長手方向の両側が溝31の両側の第2底面12bに接触し、起歪体14aの大部分は、溝31と対向し、第2底面12bに接触しない。
【0045】
上記構成において、第1構造体11と第2構造体12が互いに逆方向に動き、第2固定部C3、C4の固定力又は剛性が許容範囲内において弱い場合、起歪体14aは、第2固定部C3、C4と溝31との間の部分、及び起歪体14aの両側の裏面と、第2底面12bとの間に僅かな摩擦力が生じる。しかし、電極配置領域14lの大部分は、摩擦が生じないため第2構造体12からの力を受けず、電極配置領域14lは殆ど変形しない。したがって、電極配置領域14lに配置された薄膜電極14h、14i、14jや、薄膜電極14h、14i、14jにボンディングされたワイヤにも第2構造体12からの力が伝達されず、これらの破損を防止できる。
【0046】
また、起歪体14aの両側は、第2底面12b上に配置されているため、薄膜電極14h、14i、14jに図示せぬワイヤをボンディングする際、起歪体14aを十分に保持することができる。したがって、ワイヤを薄膜電極14h、14i、14jに十分な強度で接合させることが可能である。
【0047】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、第3実施形態によれば、起歪体14aの両側が第2底面12b上に配置されているため、起歪体14aを安定に保持することが可能である。
【0048】
(第4実施形態)
図10、
図11は、第4実施形態を示している。第3実施形態は、起歪体14aの両側が第2底面12b上に配置されていた。
これに対して、第4実施形態は、第1実施形態を変形するものであり、起歪体14aの第2端部の近傍に点接触する接触部としての第1突起41を具備している。
【0049】
具体的には、第1突起41は、段部12dにより形成された第3底面12cに設けられている。第1突起41は、例えばノックピンであるが、これに限定されるものではない。第1突起41の第1端部は、第2構造体12に挿入され、第2端部の表面は、例えば球面状に加工されており、起歪体14aの電極配置領域14lの裏面に点接触される。点接触する位置は、例えば電極配置領域14lの薄膜電極14iが配置された位置に対応している。
【0050】
上記構成において、第1構造体11と第2構造体12が互いに逆方向に動き、第2固定部C3、C4の固定力又は剛性が許容範囲内において弱い場合、起歪体14aは、第2固定部C3、C4と段部12dとの間の部分、及び起歪体14aの裏面に点接触した第1突起41との間に僅かな摩擦力が生じる。しかし、電極配置領域14lの大部分は、摩擦が生じないため第2構造体12からの力を受けず、電極配置領域14lは殆ど変形しない。したがって、電極配置領域14lに配置された薄膜電極14h、14i、14jや、薄膜電極14h、14i、14jにボンディングされたワイヤにも第2構造体12からの力が伝達されず、これらの破損を防止できる。
【0051】
また、起歪体14aは、第1突起41により支えられているため、薄膜電極14h、14i、14jに図示せぬワイヤをボンディングする際、起歪体14aを十分に保持することができる。したがって、ワイヤを薄膜電極14h、14i、14jに十分な強度で接合させることが可能である。
【0052】
(第4実施形態の効果)
第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、第4実施形態によれば、起歪体14aは、第1突起41により支えられているため、起歪体14aを安定に保持することが可能である。
【0053】
(第5実施形態)
図12、
図13は、第5実施形態を示している。第4実施形態において、起歪体14aの裏面は、第1突起41に点接触されていた。
これに対して、第5実施形態は、起歪体14aの第2端部の近傍に線接触する接触部としての第2突起51を具備している。
【0054】
具体的には、第2突起51は、例えば円柱である。第2構造体12の段部12dにより形成された第3底面12cには、起歪体14aの長手方向と交差する方向に溝12eが設けられている。第2突起51は、円柱の軸が起歪体14aの長手方向と交差する方向に溝12e内に収容される。溝12eの深さは、円柱のほぼ半径と等しく、円柱の第2突起51のほぼ半分は、溝12eから突出され、起歪体14aの電極配置領域14lの裏面に線接触される。線接触する位置は、例えば電極配置領域14lの薄膜電極14h、14i、14jが配置された位置に沿っている。
【0055】
上記構成において、第1構造体11と第2構造体12が互いに逆方向に動き、第2固定部C3、C4の固定力又は剛性が許容範囲内において弱い場合、起歪体14aは、第2固定部C3、C4と段部12dとの間の部分、及び起歪体14aの裏面に線接触した第2突起51との間に僅かな摩擦力が生じる。しかし、電極配置領域14lの大部分は、摩擦が生じないため第2構造体12からの力を受けず、電極配置領域14lは殆ど変形しない。したがって、電極配置領域14lに配置された薄膜電極14h、14i、14jや、薄膜電極14h、14i、14jにボンディングされたワイヤにも第2構造体12からの力が伝達されず、これらの破損を防止できる。
【0056】
また、起歪体14aは、第2突起51により支えられているため、薄膜電極14h、14i、14jに図示せぬワイヤをボンディングする際、起歪体14aを十分に保持することができる。したがって、ワイヤを薄膜電極14h、14i、14jに十分な強度で接合させることが可能である。
【0057】
(第5実施形態の効果)
第5実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、第5実施形態によれば、起歪体14aは、起歪体14aに線接触する第2突起51により支えられているため、起歪体14aをより安定に保持することが可能である。
【0058】
(第6実施形態)
図14、
図15は、第6実施形態を示している。第5実施形態において、第2突起51の形状は円柱であった。
これに対して、第6実施形態は、起歪体14aの第2端部の近傍に低摩擦係数の材料により形成された接触部としての第3突起61を具備している。第3突起61の形状は、例えば四角柱である。
【0059】
低摩擦係数の材料により形成された四角柱の第3突起61は、その軸が起歪体14aの長手方向と交差する方向に溝12e内に収容される。溝12eの深さは、四角柱の一辺の長さのほぼ半分であり、四角柱の第3突起61のほぼ半分は、溝12eから突出し、起歪体14aの電極配置領域14lの裏面に面接触される。面接触する位置は、例えば電極配置領域14lの薄膜電極14h、14i、14jが配置された位置に沿っている。
【0060】
低摩擦係数の材料としては、例えばフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、ナイロン樹脂(ポリアミド(PA))などの樹脂、又は無電解ニッケルメッキが施された金属や、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コートされた金属、含油焼結金属を適用することが可能である。含油焼結金属は、例えばグラファイト微粉末を含む銅系金属からなる多孔質焼結体に油を含ませたものである。
【0061】
上記構成において、第1構造体11と第2構造体12が互いに逆方向に動き、第2固定部C3、C4の固定力又は剛性が許容範囲内において弱い場合、起歪体14aは、第2固定部C3、C4と溝31との間の部分、及び起歪体14aの裏面に面接触した低摩擦係数の第3突起61との間に僅かな摩擦力が生じる。しかし、電極配置領域14lの大部分は、摩擦が生じないため第2構造体12からの力を受けず、電極配置領域14lは殆ど変形しない。したがって、電極配置領域14lに配置された薄膜電極14h、14i、14jや、薄膜電極14h、14i、14jにボンディングされたワイヤにも第2構造体12からの力が伝達されず、これらの破損を防止できる。
【0062】
また、起歪体14aは、面接触された第3突起61により支えられているため、薄膜電極14h、14i、14jに図示せぬワイヤをボンディングする際、起歪体14aを十分に保持することができる。したがって、ワイヤを薄膜電極14h、14i、14jに十分な強度で接合させることが可能である。
【0063】
(第6実施形態の効果)
第6実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、第6実施形態によれば、起歪体14aは、起歪体14aに面接触する第3突起61により支えられているため、起歪体14aをより一層安定に保持することが可能である。
【0064】
(第7実施形態)
図16、
図17は、第7実施形態を示している。上記第1乃至第6実施形態は、起歪体14aと第2構造体12との摩擦力を低減させるため、第2構造体12側の構成を改良した。
【0065】
これに対して、第7実施形態は、第2構造体12に代わり起歪体14aの構成を改良している。
具体的には、起歪体14aの電極配置領域14lは、平坦な第2底面12bに接触して配置され、起歪体14aは、電極配置領域14lの一部にくびれ部71を有している。くびれ部71は、例えば第2固定部C3、C4と薄膜電極14h、14i、14jとの間に設けられる。くびれ部71は、電極配置領域14lの他の部分より狭い面積を有している。このため、電極配置領域14lと第2構造体12の第2底面12bとの接触面積が減少されている。
【0066】
上記構成において、第1構造体11と第2構造体12が互いに逆方向に動き、第2固定部C3、C4の固定力又は剛性が許容範囲内において弱い場合、起歪体14aの電極配置領域14lは、第2構造体12の第2底面12bとの間に僅かな摩擦力が生じる。しかし、くびれ部71によりくびれ部71がない場合に比べて摩擦力が低減されている。しかも、くびれ部71の幅は、電極配置領域14lの他の部分の幅より狭いため、この部分が変形可能とされている。このため、摩擦力によりくびれ部71が変形し、電極配置領域14lの変形が防止される。したがって、電極配置領域14lに配置された薄膜電極14h、14i、14jや、薄膜電極14h、14i、14jにボンディングされたワイヤにも第2構造体12からの力が伝達されず、これらの破損を防止できる。
【0067】
また、電極配置領域14lは、第2底面12bにより支えられているため、薄膜電極14h、14i、14jに図示せぬワイヤをボンディングする際、電極配置領域14lを十分に保持することができる。したがって、ワイヤを薄膜電極14h、14i、14jに十分な強度で接合させることが可能である。
【0068】
(第7実施形態の効果)
第7実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、第7実施形態によれば、くびれ部71が変形することにより、電極配置領域14lに配置された薄膜電極14h、14i、14jや、薄膜電極14h、14i、14jにボンディングされたワイヤへ第2構造体12からの力が伝達されることを防止できる。したがって、これらの破損をより一層防止することが可能である。
【0069】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…トルクセンサ、11…第1構造体、11a…第1凹部、11b…第1底面、12…第2構造体、12a…第2凹部、12b…第2底面、12c…第3底面、12d…段部、12e…溝、13…第3構造体、14…第1歪センサ、14a…起歪体、14b、14c…薄膜抵抗体、14h、14i、14j…薄膜電極、14k…伝達部、14l…電極配置領域、15…第2歪センサ、16…第3歪センサ、17…第4歪センサ、21…第3凹部、31…溝、41…第1突起、51…第2突起、61…第3突起、71…くびれ部、C1、C2…第1固定部、C3、C4…第2固定部。