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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146398
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】代掻き作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/04 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
A01B35/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047330
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100086184
【弁理士】
【氏名又は名称】安原 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】戸舘 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】野村 拓未
(72)【発明者】
【氏名】久保 陽拓
【テーマコード(参考)】
2B034
【Fターム(参考)】
2B034AA10
2B034BA07
2B034BB01
2B034BC03
2B034BD10
2B034EA02
2B034EB02
2B034EB04
(57)【要約】
【課題】
土寄せ体によって、予め大まかに平坦に均した土を砕土部で整地し、代掻き作業の仕上がり状態が良好となる代掻き作業機を提供する。
【解決手段】
走行機体1の後部に装着し、走行機体1の前進とともに耕耘爪32を回転駆動させて土を砕土する砕土部3と、走行機体1の進行方向の後方且つ砕土部3の進行方向の前方側に配置し、走行機体1によって形成された走行跡に、土を移動させて走行跡を消すことが可能な第2土寄せ体42と、を備え、第2土寄せ体42は移動速度に応じて前方投影面積を変化させることができる構成である、ことを特徴とする代掻き作業機1。
【選択図】図18

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後方に位置し、前記走行機体の前進とともに耕耘爪を回転駆動させて土を砕土する砕土部と、
前記走行機体の進行方向の後方且つ前記砕土部の進行方向の前方側に配置し、前記走行機体によって形成された走行跡に、土を移動させて走行跡を消すことが可能な土寄せ体と、を備え、
前記土寄せ体は移動速度に応じて前方投影面積を変化させることができる構成である、
ことを特徴とする代掻き作業機。
【請求項2】
前記土寄せ体は、前記土寄せ体をほぼ水平方向に旋回させることができる旋回軸と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の代掻き作業機。
【請求項3】
前記土寄せ体を水平方向に回動可能な旋回軸を有し、
前記旋回軸の前記土寄せ体への取り付け位置を選択することで、前記旋回軸を挟んだ前記土寄せ体両側の土に接するそれぞれの面の面積を変化させる、ことを特徴とする請求項1に記載の代掻き作業機。
【請求項4】
前記旋回軸の前記土寄せ体への前記取り付け位置は、前記土寄せ体の左右幅に対する真ん中から側方にずれていることを特徴とする請求項2乃至3のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項5】
前記旋回軸の前記土寄せ体への前記取り付け位置を挟んだ土寄せ体の両側のそれぞれの面が受ける土からの押圧力を変化させる、ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項6】
前記走行機体が低速から高速に変化することで、前記旋回軸を旋回中心とする前記土寄せ体の方向を変化させる、ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項7】
作業速度が低速から高速に移行すると、押し寄せる土の押し力によって、前記前方投影面積が徐々に面積小から面積大に移行する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項8】
作業速度が低速から高速に移行すると、押し寄せる土の押し力によって、前記前方投影面積が徐々に面積大から面積小に移行する、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項9】
前記旋回軸は前記土寄せ体を上下方向に移動可能にさせるとともに、前記土寄せ体を上下方向に対する任意の位置で固定可能である、
ことを特徴とする請求項2乃至8のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項10】
前記旋回軸によって旋回可能な土寄せ体を一方の旋回方向に付勢する弾性部材と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項2乃至9のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項11】
前記土寄せ体は、前記土寄せ体と一体になって旋回するとともに前記土寄せ体が旋回できる範囲を規制する規制体と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項12】
前記旋回軸は、前記砕土部に対する左右幅方向に位置変更が可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項13】
前記土寄せ体は、少なくとも第1土寄せ体、第2土寄せ体、第3土寄せ体、の内のいずれか1つに設ける、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の代掻き作業機。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は代掻き作業機に関する。更に詳細には、土寄せ体によって、予め大まかに平坦に均した土を砕土部で整地する代掻き作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行する走行機体に装着し回転駆動する耕耘爪によって、圃場を耕耘するとともに整地する代掻き作業を行う作業機の例として、特許文献1記載発明がある。この発明には、走行機体の通過に伴い、タイヤ等によって圃場表面に形成される溝部に、土を寄せる土寄せ板が設けられている。この土寄せ板によって溝部に土を寄せることで、整地性能を向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-208869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
代掻き作業を迅速に短時間で行うためには、走行機体の走行速度、すなわち作業速度を高めることが必要である。その一方で、土壌の土質や土壌に浸される水分の含有条件、作業圃場の面積によっては、作業速度を高めることができない場面も存在する。特許文献1に記載の作業機が備える土寄せ板では、作業速度の変化に対応できる土寄せ板の構造ではなく、作業速度の変化があったときは、土寄せ効果すなわち走行跡を消す効果が十分に発揮できない課題が生じている。
【0005】
したがって、本発明は上記課題に着眼してなされたものであり、速度条件が変化しても土寄せ効果を発揮できる代掻き作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、
走行機体の後方に位置し、前記走行機体の前進とともに耕耘爪を回転駆動させて土を砕土する砕土部と、
前記走行機体の進行方向の後方且つ前記砕土部の進行方向の前方側に配置し、前記走行機体によって形成された走行跡に、土を移動させて走行跡を消すことが可能な土寄せ体と、を備え、
前記土寄せ体は移動速度に応じて前方投影面積を変化させることができる構成である、
ことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0007】
この発明は、更に、
前記土寄せ体は、前記土寄せ体をほぼ水平方向に旋回させることができる旋回軸と、
を備えたことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0008】
この発明は、更に、
前記土寄せ体を水平方向に回動可能な旋回軸を有し、
前記旋回軸の前記土寄せ体への取り付け位置を選択することで、前記旋回軸を挟んだ前記土寄せ体両側の土に接するそれぞれの面の面積を変化させる、ことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0009】
この発明は、更に、
前記旋回軸の前記土寄せ体への前記取り付け位置は、前記土寄せ体の左右幅に対する真ん中から側方にずれていることを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0010】
この発明は、更に、
前記旋回軸の前記土寄せ体への前記取り付け位置を挟んだ土寄せ体の両側のそれぞれの面が受ける土からの押圧力を変化させる、ことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0011】
この発明は、更に、
前記走行機体が低速から高速に変化することで、前記旋回軸を旋回中心とする前記土寄せ体の方向を変化させる、ことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0012】
この発明は、更に、
作業速度が低速から高速に移行すると、押し寄せる土の押し力によって、前記前方投影面積が徐々に面積小から面積大に移行する、ことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0013】
この発明は、更に、
作業速度が低速から高速に移行すると、押し寄せる土の押し力によって、前記前方投影面積が徐々に面積大から面積小に移行する、ことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0014】
この発明は、更に、
前記旋回軸は前記土寄せ体を上下方向に移動可能にさせるとともに、前記土寄せ体を上下方向に対する任意の位置で固定可能である、
ことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0015】
この発明は、更に、
前記旋回軸によって旋回可能な土寄せ体を一方の旋回方向に付勢する弾性部材と、
をさらに備えたことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0016】
この発明は、更に、
前記土寄せ体は、前記土寄せ体と一体になって旋回するとともに前記土寄せ体が旋回できる範囲を規制する規制体と、
をさらに備えたことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0017】
この発明は、更に、
前記旋回軸は、前記砕土部に対する左右幅方向に位置変更が可能である、
ことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【0018】
この発明は、更に、
前記土寄せ体は、少なくとも第1土寄せ体、第2土寄せ体、第3土寄せ体、の内のいずれか1つに設ける、
ことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、土寄せ体によって、予め大まかに平坦に均した土を砕土部で整地するので、代掻き作業の仕上がり状態が良好となる代掻き作業機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の第1実施例乃至第4実施例に係る代掻き作業機の正面図である。代掻き作業機の進行方向前方からみた全体を示す。
図2】この発明の第1実施例乃至第4実施例に係る代掻き作業機の平面図である。代掻き作業機の全体を示す。
図3】この発明の第1実施例に係る代掻き作業機の進行方向左から見た側面図である。
図4】この発明の第1実施例に係る代掻き作業機の底面図であって、進行方向左側の第1土寄せ体乃至第3土寄せ体部分の一部拡大図である。図中上部が代掻き作業機の前部である。
図5】この発明の第1実施例に係る代掻き作業機の左側の第1土寄せ体の作用面の前方から見た側面図である。
図6】この発明の第1実施例に係る代掻き作業機の左側の第1土寄せ体の作用面と垂直方向から見た正面図である。
図7】この発明の第1実施例に係る代掻き作業機の左側の第2土寄せ体の作用面と垂直方向から見た正面図である。
図8】この発明の第1実施例に係る代掻き作業機の左側の第2土寄せ体の作用面の前方から見た側面図である。
図9】この発明の第1実施例に係る代掻き作業機の左側の第3土寄せ体の作用面と垂直方向から見た正面図である。
図10】この発明の第1実施例に係る代掻き作業機の左側の第3土寄せ体の作用面の前方から見た側面図である。
図11】この発明の第2実施例に係る代掻き作業機の側面図である。代掻き作業機の進行方向左側から見た全体を示す。
図12】この発明の第2実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体の拡大斜視図である。
図13】この発明の第2実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体を支点ボスで断面した断面図であり、土寄せ体(支点パイプ)を上方に移動させた状態である。
図14】この発明の第2実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体を支点ボスで断面した断面図であり、土寄せ体(支点パイプ)を下方に移動させた状態である。
図15】この発明の第2実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体を拡大した正面図であり、低速時を示す。
図16】この発明の第2実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体を拡大し、支点軸方向から見た平面図であり、低速時を示す。
図17】この発明の第2実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体を拡大した正面図であり、高速時を示す。
図18】この発明の第2実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体を拡大した平面図であり、土寄せ体及び規制部の実線で描いた部分は高速時(回転後)を、二点鎖線で描いた部分は低速時(回転前)を示す。
図19】この発明の第3実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体を拡大した平面図であり、実線で示す土寄せ体は低速時を、二点鎖線で示す土寄せ体は高速例時を示す。
図20】この発明の第4実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体を拡大した平面図であり、実線で示す土寄せ体は低速時を、二点鎖線で示す土寄せ体は高速時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の第1実施例に係る代掻き作業機について図面にしたがって説明する。
1は、代掻き作業機である。
11は、中央作業体である。中央作業体11は、代掻き作業機1の中央に位置して、代掻き作業を行う。
11Lは、延長作業体左である。延長作業体左11Lは、中央作業体11の進行方向左側に位置して中央作業体11と折り畳み可能に取り付け、代掻き作業を行なう。
11Rは、延長作業体右である。延長作業体右11Rは、中央作業体11の進行方向右側に位置して中央作業体11と折り畳み可能であり、代掻き作業を行なう。
【0022】
2は、フレームである。フレーム2は、パイプフレーム22を有する。パイプフレーム22は、代掻き作業機1の骨格をなすフレームである。
20は、装着部である。201は、トップリンクピンである。202は、ロアリンクピンである。装着部20は、トップリンクピン201と、ロアリンクピン202を有する。
装着部20は、これらにより、代掻き作業機1をけん引するトラクタに取り付ける。
【0023】
21は、入力ケース、211は、入力軸である。入力軸211は、入力ケース21内に取り付け、トラクタのPTO軸に接続して、トラクタの駆動力を取り出す。
212は、トップマストである。トップマスト212は、パイプフレーム22上に設ける。トップマスト212は、先端にトップリンクピン201を設ける。
213は、ロワプレートである。ロワプレート213は、パイプフレーム22に取り付ける。ロワプレート213先端には、ロアリンクピン202を取り付ける。
23は、伝動ケースである。伝動ケース23は、パイプフレーム22に設け、入力ケース21に設けた入力軸211からの駆動力を出力する。
【0024】
24は、サポートフレームである。サポートフレーム24は、入力ケース21に対して伝動ケース23と左右対称の位置に設け、パイプフレーム22より下方で後述するロータ軸31を保持する。
25は、支点部である。支点部25はパイプフレーム22の両端部にそれぞれ設け、延長作業体左11L及び延長作業体右11Rの折り畳み回動支点部である。一方の支点部25には延長作業体左11Lに設けたカバー体左4Lから上部に突出させた支点フレーム41Lを、他方の支点部25には延長作業体右11Rに設けたカバー体右4Rから上部に突出させた支点フレーム41Rを、それぞれ回動可能に連結している。
【0025】
3は、砕土部である。砕土部3は、フレーム2の下方に設けて回転駆動可能であり、圃場を砕土する。砕土部3は、走行機体であるトラクタ等の後部に装着した代掻き作業機1に備え、走行機体の後方に位置する。走行機体であるトラクタ等の前進とともに砕土部3が備える耕耘爪32を回転駆動させて土を砕土する。
3Lは、延長砕土部左である。延長砕土部左3Lは、砕土部3の進行方向左側の延長作業体左11Lに回転可能に取り付け、延長作業体左11Lと一体になって折り畳み可能である。3Rは、延長砕土部右である。延長砕土部右3Rは、砕土部3の進行方向右側の延長作業体右11Rに回転可能に取り付け、延長作業体右11Rと一体になって折り畳み可能である。
31は、ロータ軸である。ロータ軸31は、伝動ケース23とサポートフレーム24のそれぞれの下部に掛け渡された回転軸であり、伝動ケース23からの駆動力で回転する。
31Lは、延長側ロータ軸左である。延長側ロータ軸左31Lは、ロータ軸31の進行方向左側に設ける。31Rは、延長側ロータ軸右である。延長側ロータ軸右31Rは、ロータ軸31の進行方向右側に設ける。延長側ロータ軸左31L、延長側ロータ軸右31Rは、伝動ケース23からの駆動力で回動する。
【0026】
32は、耕耘爪である。耕耘爪32は、ロータ軸31及び延長側ロータ軸左31L及び延長側ロータ軸右31Rのそれぞれの周囲に複数取り付け、ロータ軸31および延長側ロータ軸左31L及び延長側ロータ軸右31Rの回転により駆動し、圃場を耕耘する。
33は、ドッグクラッチ中央側である。ドッグクラッチ中央側33は砕土部3の両端部の伝動ケース23及びサポートフレーム24の近傍のそれぞれに設ける。
33Lは、延長側ドッグクラッチ左延長側である。延長側ドッグクラッチ左延長側33Lは、延長砕土部左3Lの進行方向右側に設けてドッグクラッチ中央側33と噛み合うことで、進行方向左側のドッグクラッチを構成する。
33Rは、延長側ドッグクラッチ右延長側である。延長側ドッグクラッチ右延長側33Rは、延長砕土部左3Rの進行方向左側に設けてドッグクラッチ中央側33と噛み合うことで、進行方向右側のドッグクラッチを構成する。ドッグクラッチで、ロータ軸31と延長側ロータ軸左31L及び延長側ロータ軸右31Rの回転駆動を入切する。
【0027】
34は、保持部である。保持部34は、ロータ軸31の軸受部であり、伝動ケース23及びサポートフレーム24の下部に設ける。
34Lは、左延長側保持部である。左延長側保持部34Lは、ロータ軸31Lの軸受部であり、後述するカバー体左4Lの下部で延長側ドッグクラッチ左延長側33Lの近傍に設ける。
34Rは、右延長側保持部である。右延長側保持部34Rは、ロータ軸31Rの軸受部であり、後述するカバー体右4Rの下部で延長側ドッグクラッチ右延長側33Rの近傍に設ける。
保持部34、左延長側保持部34L、右延長側保持部34Rは、内部にベアリング、オイルシールを有する。
【0028】
4は、カバー体である。カバー体4は、砕土部3の上部を覆う。4Lは、カバー体左である。4Rは、カバー体右である。カバー体左4Lは、延長砕土部左3Lの上部を覆う。
カバー体右4Rは、延長砕土部右3Lの上部を覆う。カバー体4及びカバー体左4L及びカバー体右4Rは、砕土部3及び延長砕土部左3L及び延長砕土部右3Rによって砕土あるいは耕耘された土が周囲へ飛散することを防ぐ。
41Lは、左支点フレームである。左支点フレーム41Lは、代掻き作業機1の延長作業体左11Lを支点部25に対して回動自在に取り付けるための上部に突出した部材であり、カバー体左4Lと一体となったアームである。
41Rは、右支点フレームである。右支点フレーム41Rは、代掻き作業機1の延長作業体右11Rを支点部25に対して回動自在に取り付けるための上部に突出した部材であり、カバー体右4Rと一体となったアームである。
【0029】
42bは、後述する第1土寄せ体42を支持する支持部材である。第1土寄せ体42の支持部材42bは、第1土寄せ体42を代掻き作業機1に取り付けるための部材で、ロワプレート213から下方に向けて湾曲させながら配置し固定した板状部材である。支持部材42bの下部はカバー体4の下端部より下方に位置していて、この支持部材42bの下部に第1土寄せ体42を取り付ける。
43bは、後述する第2土寄せ体43を支持する支持部材である。第2土寄せ体43の支持部材43bは、第1土寄せ体42を代掻き作業機1に取り付けるための部材で、カバー体4前部の両端部のそれぞれから下方に向けて垂れ下がるように配置し固定した板状部材である。支持部材43bの下部はカバー体4の下端部より下方に位置していて、この支持部材43bの下部に第2土寄せ体43を取り付ける。
【0030】
45は、前部カバーである。前部カバー45は、カバー体4及びカバー体左4L及びカバー体右4Rの前端より前側に位置させている。さらに、前部カバー45の下端部はカバー体4及びカバー体左4L及びカバー体右4Rの前端より下方に位置させている。第1実施例において、前部カバー45はカバー体4の前方に配置している。前部カバー45はカバー体4と圃場面の間から前方に飛散する泥土等の飛散を防止する。
46は、スタンドブラケットである。スタンドブラケット46は、代掻き作業機1をスタンド(図示せず)に載置するときのブラケットである。スタンドブラケット46はカバー体4の前部の両端部にそれぞれ配置していて、スタンド(図示せず)を用いて保管や移動をさせる場合に機体の安定性を確保することができる。
47は、後部土寄せ体である。後部土寄せ体47は、板状部材であり、ロータ軸31及び延長側ロータ軸左31L及び延長側ロータ軸右31Rのより進行方向の後方側に位置させるとともに、カバー体左4L又はカバー体4Rに取り付けられている。また、後部土寄せ体47の下端は、下方に向かうにつれてドッグクラッチ中央側33に傾斜するとともに、正面視においてドッグクラッチ中央側33より下方に位置する。後部土寄せ体47は代掻き作業機1の進行方向後部で、代掻き作業機1の進行に伴い、左延長側保持部34L及び右延長側保持部34Rの近傍を通過した土をドッグクラッチ中央側33側に寄せる土寄せ作業を行う。
【0031】
42は、第1土寄せ体である。第1土寄せ体42は、砕土部3の前方且つカバー体4の下方に位置し、走行する走行機体である代掻き作業機1によって圃場に形成される一つの轍の幅に対する一方側に配置した面を、機体幅に対する外側に向かうにつれて後方側に傾斜させる。
第1土寄せ体42は、代掻き作業機1の中央側に設置する。
42aは、第1作用面である。第1作用面42aは、第1土寄せ体42表面に設け、代掻き作業機1の移動に伴い、当接した土を順次この第1作用面42aに沿って、後方且つ轍溝側に土を送り土寄せ作業を行う面である。第1作用面42aの上端部と下端部は前方に向けて湾曲させていて、押し出される土が、この湾曲部分を乗り越えることを抑止して効率的に轍溝側に送られる。
【0032】
43は、第2土寄せ体である。第2土寄せ体43は、砕土部3の前方且つカバー体4の下方に位置し、轍の他方側に配置した面を、機体幅である代掻き作業機1幅に対する内側に向かうにつれて後方側に傾斜させる。
第2土寄せ体43は、第1土寄せ体42よりも代掻き作業機1の機体幅外側であるカバー体4の端部側に設置する。
第1土寄せ体42と第2土寄せ体43とは、走行する走行機体である代掻き作業機1によって圃場に形成される一つの轍の幅を挟んで、対向させて設置する。
43aは、第2作用面である。第2作用面43aは、第2土寄せ体43表面に設け、代掻き作業機1の移動に伴い、当接した土を順次この第2作用面43aに沿って、後方且つ轍溝側に土を送り土寄せ作業を行う。第2作用面43aの上端部と下端部は前方に向けて湾曲させていて、押し出される土が、この湾曲部分を乗り越えることを抑止して効率的に轍溝側に送られる。
【0033】
44は、第3土寄せ体である。第3土寄せ体44は、砕土部3の前方且つカバー体4の下方に位置し、轍の他方側に配置するとともに第2土寄せ体43より進行方向に対する左右側の外側に位置した面を、機体幅である代掻き作業機1幅に対する内側に向かうにつれて後方側に傾斜させる。
第3土寄せ体44は、代掻き作業機1のカバー体4の端部側であり、第2土寄せ体43よりも進行方向に対する外側に設置する。第3土寄せ体44は、スタンドブラケット46の一端部を下方に延設した部分を支持部材にして取り付けている。
第1土寄せ体42と、第2土寄せ体43及び第3土寄せ体44とは、走行する走行機体である代掻き作業機1によって圃場に形成される一つの轍の幅を挟んで、対向させて設置する。
【0034】
44aは、第3作用面である。第3作用面44aは、第3土寄せ体44表面に設け、代掻き作業機1の移動に伴い、当接した土を順次この第3作用面44aに沿って、後方且つ轍溝側に土を送り土寄せ作業を行う面である。第3作用面44aは、第1作用面42a及び第2作用面と比較し、やや下方に向けられていている。
すなわち、図4から、第1作用面42a及び第2作用面43aは互いに斜め前方に向けていて、図面上の奥行方向である機体の上下方向には傾斜していない。上下方向傾きの成分に限っては、互いに平行である。図8を参照すれば判るように、第2作用面43aに対して第3作用面44aは下方に傾斜している。第2作用面43aの中央部の線分と、第3作用面44aの線分(図示せず。44の引き出し線の右側の開始点のすぐ左に引いてある輪郭線と同等)は、平行でない。
そのため、土が面に沿って轍側に移動するときは、後方及び轍側への移動とともに、土を圃場表面より下方に送ることができる。したがって、第3作用面44aに沿って移動後の土は、圃場表面に浮き出ることを抑止されるので、圃場面を荒らすことなく平らにしつつ、轍を埋めることができる。
【0035】
第2土寄せ体43の第2作用面43aの面積は、第1土寄せ体42の第1作用面42aの面積より小さく、第3土寄せ体44の第3作用面44aの面積は、第2作用面43aの面積より小さい。
第2土寄せ体43の第2作用面43aの面積は、第1土寄せ体42の第1作用面42aの面積より小さく、第3土寄せ体44の第3作用面44aの面積は、第2作用面43aの面積より小さい。つまり、第1作用面42a、第2作用面43a、第3作用面44aのそれぞれの作用面積は異なるように設定している。
【0036】
底面図をあらわす図4に図示するように、αは、第1土寄せ体42の第1角度である。
第1角度αは、第1土寄せ体42の進行方向に対する角度である。
同様に、βは、第2土寄せ体43の第2角度である。第2角度βは、第2土寄せ体43の進行方向に対する角度である。
同様に、γは、第3土寄せ体44の第3角度である。第3角度第γは、第3土寄せ体43の進行方向に対する角度である。
【0037】
平面視あるいは底面視において、進行方向と第3作用面44aとがなす角である第3角度γは、進行方向と第2作用面43aとがなす角である第2角度βよりも大きく、進行方向と第1作用面とがなす角である第1角度αは、進行方向と第3作用面44aとがなす角である第3角度γよりも大きい。すなわち、第1角度α、第2角度β、第3角度γは、それぞれ互いに異なる角度に設定されている。
【0038】
平面視である図2及び進行方向左側から見た側面図である図3に図示するように、第1土寄せ体42の前端は第2土寄せ体43の前端より後方に位置する。第2土寄せ体43は、第1土寄せ体42より、進行方向に飛び出している。本来は、第1土寄せ体42は、進行方向に突き出した方が埋戻し効果がよいが、第1土寄せ体42は、三点リンクが上下動するときに、トラクタのタイヤやクローラと接触するのを避けるため、進行方向に突きだせない。
【0039】
第3土寄せ体44の前端は第1土寄せ体42の前端より後方に位置する。第2土寄せ体43からあふれた土の流れを補足するため、第3土寄せ体44は、第2土寄せ体43のある程度後方に設ける。第3土寄せ体44は、第2土寄せ体43に対してあまり前過ぎると、第2土寄せ体43と第3土寄せ体44の間隔が狭くなり、この間を通過する土の流れが悪くなる。
第1土寄せ体42及び第2土寄せ体43及び第3土寄せ体44のそれぞれの前端はカバー体4の前端より前方に突出している。カバー体4の機体の幅方向に対する中央付近に第1土寄せ体42が、カバー体4の機体の幅方向に対する端部に第2土寄せ体43及び第3土寄せ体44がそれぞれ配置されてある。土が、カバー体4の前端部より後方に位置する砕土部3に到達する前に、土の流れを決めて、予め轍溝へ土を送ることができる。
【0040】
第1土寄せ体42は、走行機体である代掻き作業機1に装着するための装着部20から下方に向けて配置した支持部材42bに取り付ける。
46は、スタンドブラケットである。スタンドブラケット46は、平面視において、第2土寄せ体43及び第3土寄せ体44の間に配置し、スタンド(図示せず)を取り付けることができる。
34は、保持部である。保持部34は、第3土寄せ体44の後方に位置して砕土部3の回転軸を保持する。保持部34は、伝動ケース23とサポートフレーム24のそれぞれの下部に取り付ける。
【0041】
5は、整地体である。整地体5は、代掻き作業機1の作業時進行方向後部にカバー体4の後部に取り付ける。進行に伴い圃場を整地する。
5Lは、左整地体である。左整地体5Lは、カバー体左4Lの後部に取り付け、整地体5の作業時進行方向左側端部を構成する。
5Rは、右整地体である。右整地体5Rは、カバー体右4Rの後部に取り付け、整地体5の作業時進行方向右側端部を構成する。
【0042】
51は、第1整地体である。第1整地体51は、この発明の第1実施例に係る代掻き作業機1の平面図をあらわす図2に図示するように、代掻き作業機1の後端側よりも先方側で整地する。第1整地体51の進行方向左側端部には第1整地体左51L、行方向右側端部には第1整地体左51Rが位置している。
512は、支点軸である。
52は、ヒンジである。ヒンジ52は、支点軸512を介して、整地体5の第1整地体51及び第1整地体左51L及び第1整地体左51Rをカバー体4及びカバー体左4L及びカバー体右4Rに対して上下回動する回動支点として取り付ける。
【0043】
56は、第2整地体である。第2整地体56は、代掻き作業機1の平面図をあらわす図2に図示するように、作業機1に取り付けた第1整地体51の後端側で整地する。
56Lは、左第2整地体である。左第2整地体56Lは、進行方向左側に位置するカバー体左4Lの後方を整地する。
56Rは、右第2整地体である。右第2整地体56Rは、進行方向右側に位置するカバー体右4Rの後方を整地する。
562は、回動支点である。回動支点562は、第1整地体51及び第1整地体左51L及び第1整地体左51Rの後端部に設け、第2整地体56、左第2整地体56L、右第2整地体56Rを第1整地体51及び第1整地体左51L及び第1整地体左51Rに対して上下に回動可能にする。
【0044】
第1土寄せ体42、第2土寄せ体43、第3土寄せ体44の作用面の面積の大きさは、表1に示すように、前方投影面積、実面積のいずれにおいても、第1土寄せ体42>第2土寄せ体43>第3土寄せ体44の順で小さくなっている。第1土寄せ体42は前方投影面積及び実面積ともに一番大きいため土壌の捕捉量が大きく、低速度域での土寄せ効果が大きい。第2土寄せ体43は第1土寄せ体42より前方投影面積及び実面積ともに小さい
ものの、進行方向から押し寄せる土壌の抵抗になりにくく、第2作用面43aを効率的に沿って移動ができるため、高速度域での土寄せ効果が大きい。第3土寄せ体44は、高速度域での第2土寄せ体43の土寄せ補助を行い、第2土寄せ体43の前方から第3土寄せ体44側の側方に溢れ出た土壌及び泥土を捕捉し、作業幅に対する中央側に移動させることができる。第1土寄せ体42及び第2土寄せ体43及び第3土寄せ体44はそれぞれ、異なる速度域で異なる特性と役割がある。
【0045】
第2土寄せ体43の作用面積が第1土寄せ体42の作用面積より前方投影面積、実面積のいずれにおいても、小さい理由について説明する。
単純に、第2土寄せ体43を、第1土寄せ体42と轍に対して、轍の幅を挟んで対称に配置した場合、特に代掻き作業機1の作業速度を大きくすると、土壌の移動量が大きくなり、埋め戻した轍跡は却って土壌が盛り上がることがある。これを防ぐために第1土寄せ体42と轍に対して、轍の幅を挟んで対称に配置した第2土寄せ体43の作用面積を前方投影面積、実面積のいずれにおいても、小さくして、轍に埋め戻す土量を調整している。
【0046】
表1に示すように、第3土寄せ体44の作用面積が、第2土寄せ体43の作用面積より前方投影面積、実面積のいずれにおいても、小さい理由について説明する。
代掻き作業機1の作業速度を速めると、第2土寄せ体43の前端から外側側方に土壌が溢れ出ることがある。第3土寄せ体44は、この溢れ出た土壌を捕捉し、第2土寄せ体43の後方を経由して轍に向けて移動させる。第3土寄せ体44は第2土寄せ体43の補助としての役割を担うため、第3土寄せ体44の第3作用面44aの面積は第2土寄せ体43の第2作用面43aの面積より前方投影面積、実面積のいずれにおいても、小さい。逆に大きくすると、轍に埋め戻す土量が多くなり、逆に轍筋を形成する不都合が生じる。
【0047】
第1土寄せ体42の作用面の面積の大きさと、第2土寄せ体43と第3土寄せ体44の作用面の面積の合計の大きさは、前方投影面積では、近似する。
実面積では、第2土寄せ体43と第3土寄せ体44の合計は、第1土寄せ体42を超えるものの、後述する各土寄せ体の作用角度によって形成される各土寄せ体の前方投影面積の差異及び各土寄せ体の配置の組み合わせによって、異なる速度域でも最適な土寄せ効果を実現可能にしている。
【0048】
第1土寄せ体42の大きさについて説明する。
第1土寄せ体42は、移動させる土壌量を多くすることができるものの、土質にも依るが、後述する第1角度αの角度が大きいことから、土壌は進行と共に轍側に、つまり幅方向に方向転換しながら移動する効率が悪いことがある。具体的には、第1土寄せ体42の第1作用面42aに進行方向前方から相対的に衝突した土壌は、この一部は上方に逃げようとする現象がある。この逃げた土壌を受け止めるために、第1土寄せ体42の第1作用面42aの面積を大きくしている。特に上方に向けて面積を拡大している。
【0049】
第1土寄せ体42の形状について説明する。
第1土寄せ体42に設けた第1土寄せ体42の第1作用面42aの上端部は、前方に向けて湾曲させている。この湾曲により、土壌が第1土寄せ体の上方を乗り越えて移動することを防ぎ、第1土寄せ体42の第1作用面42aの前方且つ轍側に移動させる。
また、第1作用面42aの上端は、轍側に向かうほど下方に傾斜している。第1土寄せ体42の第1作用面42aの前方側、すなわち、轍から遠く位置する側は、横に移動する距離が長い。このため、前述のような土壌のせり上がりが発生する。半面、第1土寄せ体42の第1作用面42aの後方側すなわち、轍に近い側は、横に移動する距離が短いため、上方に移動する前に轍側に土壌が移動する。このため、轍側すなわち、内側の上端は、下方に傾斜させていても土壌の移動に問題が生じにくい。
【0050】
各作用面の角度について説明する。
第1土寄せ体42と第2土寄せ体43は互いに得意とする作業速度が異なることは前記の記載の通りで、これに基いて角度が設定される。
第1土寄せ体42は進行方向との角度を大きく取ることによって、進行方向前面から見た投影面積を大きくしているので、より多くの土壌を寄せることができる。第1実施例では、第1土寄せ体42の最好適は65度、好適とされる角度範囲は60~70度である。70度より大だと、土の流れが悪くなり、代掻き作業機1の牽引抵抗が大きくなる。角度が60度より少ないと、低速度域での土の移動効率が低下する。
【0051】
第2土寄せ体43は、進行方向との角度を第1土寄せ体42より小さく設定している。
第2土寄せ体43は、第1実施例において、最好適は45度、好適とされる角度範囲は40~50度である。
これは走行速度が大きくなっても土壌の流れを良くするための配慮である。代掻き作業機1の走行速度が大きくなると、進行方向に対する角度が大きい第1土寄せ体42に衝突した土壌の流れは悪くなるのに対し、進行方向に対する角度が第1土寄せ体42より小さい第2土寄せ体43は、第1土寄せ体42と比較して土壌の流れを良くすることができる。すなわち、速度域が高い状態では、第1土寄せ体42より第2土寄せ体43の方が、土壌の移動量を多くすることができる。このことから、第1土寄せ体42と第2土寄せ体43とによって、広い作業速度域下で、轍を埋める土壌量を確保できる。
ちなみに、代掻き作業時の慣行速度は1~3km/h程度である。実施例での作業速度は1~5.5km/hである。
【0052】
第3土寄せ体44は、表1に示すように、面積を前方投影面積、実面積のいずれにおいても、小さく設定していることから、前面投影面積を確保するため第2土寄せ体43と比較し、やや大きい角度としている。第1実施例では最好適は50度、好適とされる角度範囲は45~55度である。第3土寄せ体44によって、土壌及び土塊は耕耘爪の回転領域がない部分である伝動ケース23やサポートフレーム24、及び、これらに取り付けられた砕土部3を保持する保持部34の近傍を通過することを避けて、砕土部3に送ることができる。このため、土壌及び土塊の砕土不良による、代掻き性能の低下を防ぐことができる。
【0053】
前方に位置する走行機体との干渉を避けるため、第1土寄せ体42、第2土寄せ体43、第3土寄せ体44の先端は、装着部20の先端から前方に突出しないように設定している。また、第1土寄せ体42、第2土寄せ体43、第3土寄せ体44の先端をカバー体4の前端から前方に突出させているので、耕耘爪32の回転領域に達する前に土壌の移動を終了させることが可能となり、砕土性能の向上を図っている。
【0054】
スタンドブラケット46について説明する。
スタンドブラケット46は、保管時に代掻き機を単独で接地させるためのスタンド(図示せず)を取り付けるための保持部材である。特に、延長作業部を折り畳んだ状態で保管する場合は、重心が高くなるため、接地した際の安定性を確保する目的から、スタンドは極力機体幅の広い位置に設けることが良い。第1実施例の場合、伝動ケース23及びサポートフレーム24の前方部のカバー体4端部に設置することで、安定性を確保している。
【表1】
【0055】
この発明の第2実施例について図11乃至図18を中心に説明する。第2実施例は、第1実施例に、以下の構成からなる第2土寄せ体43を設ける。第1土寄せ体42、第3土寄せ体44も同じ構造としてもよい。
【0056】
第2土寄せ体43を含め、土寄せ体である第1土寄せ体42、第2土寄せ体43、第3土寄せ体44は、走行機体であるトラクタの進行方向の後方且つ前記砕土部3の進行方向の前方側に配置し、トラクタによって形成された走行跡に、土を移動させて走行跡を消すことが可能である。第2実施例での第2土寄せ体43は、カバー体4の左右両端部に設けている。第2実施例の説明においては、カバー体4の左端部に設けた第2土寄せ体43を用いて説明し、右端部に設けた第2土寄せ体43は、左端部に設けた第2土寄せ体43の対称形状であるため、繰り返しとなるため説明を省略する。また、カバー体4の左端部の第2土寄せ体43に対して、代掻き作業機1の進行方向に対する中央側に轍を位置させるものとして説明する。また、第1土寄せ体42、第3土寄せ体44も同じ構造としてもよい。
土寄せ体である第2土寄せ体43は、走行跡である轍の縁部に位置させて、轍に土を移動させて、轍の跡を消して、平坦に均す。第2土寄せ体43の上部はやや前方に傾斜するように折り曲げられていて、第2土寄せ体43の前方に沿って移動する土が、第2土寄せ体43に乗り上げて後方に移動することを防ぐ。
【0057】
46は、カバー体側突出片である。カバー体側突出片46は、カバー体4に設ける。カバー体側突出片46は、カバー体4から代掻き作業機1の進行方向前方に向けて突出させる。
47は、取り付けベースである。取り付けベース47は、カバー体4の進行方向前方面に取り付ける。
471は、取り付けベース47の左右位置調整用孔である。取り付けベース47の左右位置調整用孔471は複数個設け、取り付けベース47を取り付ける進行方向左右に対する左右方向の位置を選択して取り付けることができる。
472は、接触片である。接触片472は、取り付けベース47の進行方向前方に向けて設け、後述する規制片64に接触させることができる。
【0058】
Aは、旋回軸である。62は、支点ボスである。61は、支点パイプである。旋回軸Aは、支点パイプ61と支点ボス62からなる。支点ボス62は、軸方向を上下方向に向けた筒状の部材で、接触片472の前端部に固定して設ける。支点ボス62は、取り付けベース47に直接設けてもよい。支点パイプ61は、支点ボス62の筒内径に設け、軸方向への上下移動及び軸周りへの旋回動作が可能である。旋回軸Aによって、支点パイプ61に対する前方側に一体的に設けた土寄せ体(第2土寄せ体43)をほぼ水平方向に旋回可能にさせる。土寄せ体(第2土寄せ体43)の旋回によって、進行方向前方から見たときの第2土寄せ体43の前方投影面積を変化させることができる。
第2土寄せ体43は旋回軸Aの進行方向左右方向に対する取り付け位置を選択することで、旋回軸Aから進行方向左右幅に対する一方側と旋回軸Aから進行方向左右幅に対する他方側の、旋回軸Aを挟んだ土寄せ体43の左右両側の面積を変化させることができる。
旋回軸Aは支点ボス62によって、土寄せ体である第2土寄せ体43を上下方向に移動可能にさせるとともに、第2土寄せ体43を上下方向に対する任意の位置で固定可能である。旋回軸A及び支点ボス62は取り付けベース47によって、砕土部3に対する左右幅方向に位置変更が可能で土寄せ体である第2土寄せ体43を左右幅方向に位置変更をさせることができる。
【0059】
71は弾性部材である。弾性部材71は、旋回軸Aによって旋回可能な第2土寄せ体43を一方の旋回方向に付勢する。第2実施例では、弾性部材71は、第2土寄せ体43のカバー体4Lの左右に対する中央側の端部を後方であるカバー体4方向へ引っ張る引っ張りばねとして作用する。
64は、規制体(規制片)である。472は、接触片である。接触片472は、基部を取り付けベース47に取り付けた板状部材であり、前方側に向けた先端を規制体64に接触させる。
規制体64は、支点パイプ61に取り付けた二股状部材である。規制体64は、土寄せ体である第2土寄せ体43と一体になって旋回するとともに、接触片472に接触することで、第2土寄せ体43が旋回できる範囲を規制する。すなわち、第2土寄せ体43は、接触片472が二股状の規制体64の間に接触するまでの範囲で旋回ができる。
【0060】
65は、上下位置調整用孔、66は上部カラー、67は下部カラーである。上下位置調整用孔65は、支点パイプ61の軸方向に複数設けた貫通孔である。上部カラー66及び下部カラー67は、支点ボス62を上下に挟むように支点パイプ61に設け、支点ボス62に対する支点パイプ61の上下方向への移動を規制する。また、第2実施例での上部カラー66は、規制体64と一体にして設けている。上下位置調整用孔65は、支点パイプ61と上部カラー66及び下部カラー67との上下の取り付け位置を選択して、支点パイプ61の上下位置の調整をする。
431は、第2土寄せ体43に複数設けた支点パイプ61との進行方向左右に対する相対位置調整用孔である。相対位置調整用孔431は、支点パイプ61と第2土寄せ体43との取り付け位置である。第2土寄せ体43は、支点パイプ61と第2土寄せ体43との取り付け位置である相対位置調整用孔431を選択して、旋回軸Aに対する左右位置を調整する。
第2土寄せ体43と旋回軸Aとの取り付け位置である支点パイプ61との相対位置調整用孔431は、第2土寄せ体43が有する面の幅方向に対する真ん中を避けている。すなわち、第2土寄せ体43の幅方向の中心からずれている。第2実施例の場合、支点パイプとの相対位置調整用孔431の4個の孔の真ん中が、第2土寄せ体43が有する面の幅方向のほぼ中心である。
【0061】
681(68)、682(68)は、固定部材である。固定部材681(68)、682(68)は、ボルトからなり、上部カラー66及び下部カラー67を上下位置調整用孔65に貫通させることよって、支点パイプ61に固定する。固定部材681(68)、682(68)を取り付けた上部カラー66及び下部カラー67によって、支点パイプ61は支点ボス62に対して、上下方向への移動ができないように取り付けることができる。
支点パイプ61の前方には土寄せ体である第2土寄せ体43が固定されていて、支点パイプ61は第2土寄せ体43の実質的な旋回軸Aとなっている。支点パイプ61は支点ボス62に対して、上下方向へのスライドと軸周りへの旋回が可能である。支点パイプ61を支点ボス62から引き抜くことで第2土寄せ体43の着脱が可能である。
支点パイプ61には複数の上下位置調整用孔65を設け、上部カラー66及び下部カラー67で、上下位置を選択して固定するとともに、支点パイプ61の上下移動を規制することができる。そのため、土寄せ体(第2土寄せ体43)の上下位置を調整可能である。
【0062】
上部カラー66に設けた規制体64は、二股に分かれる。規制体64の二股の間に、取り付けベース47から前方に突出して設けた接触片472を位置させる。規制体64が接触片472に接触することで、支点パイプ61の旋回を規制する。
弾性部材71は、第2実施例では、上部カラー66の上部から上方に向けて設けた旋回軸側突出片63と、取り付けベース47或いはカバー体4に設けた旋回軸側突出片63に架け渡す。上部カラー66及び支点パイプ61を介して土寄せ体(第2土寄せ体43)を一方側に旋回させるように付勢する。実施例では、引張ばねで示したが、一方側に旋回させるように配置した圧縮ばね、巻きばね、流体圧を使用した弾性部材71でもよい。
【0063】
第2実施例では、第2土寄せ体43は、移動速度に応じて旋回軸Aを軸にして、ほぼ水平方向に旋回することで、進行方向前方側から見た時の投影面積を変化させることができる。
土寄せ体(第2土寄せ体43)によって、予め大まかに平坦に均した土を砕土部3で砕土・整地部で整地するので、代掻き作業の仕上がり状態が良好となる。
第2土寄せ体43の前方投影面積を変化させることによって、土を側方に押し退けて移動させる土の量や勢いを進行速度に合わせて調整できるので、より一層平坦に均すことができる。
【0064】
第2実施例では、前方投影面積を変化させる土寄せ体(第2土寄せ体43)の旋回は、代掻き作業機1の前進方向への進行とともに土が土寄せ体(第2土寄せ体43)に衝突する力によって行われる。
土寄せ体(第2土寄せ体43)の前方投影面積の変化比率は、面積小から面積大にかけて、1.2~1.5倍となるのが良い。実施の形態では、1.35倍を採用している。
第2実施例(図示)では、作業速度が低速(第1速度)から高速(第2速度)に移行すると、押し寄せる土の押し力によって、前方投影面積が徐々に面積小から面積大に移行する。
【0065】
第2実施例では、第2土寄せ体43の旋回軸Aへの取り付けを、取り付け位置である複数の左右相対位置調整用孔431から選択することで、旋回軸Aの進行方向左右に対する第2土寄せ体43の相対位置を移動可能である。すなわち、旋回軸Aを挟んだ土寄せ体43の左右両側の面積を変化させることができる。
第2実施例では、旋回軸Aを構成する支点パイプ61の第2土寄せ体43との取り付けは、支点パイプ61との左右相対位置調整用孔431のうち、図18で図示する左側である第2土寄せ体43のカバー体4への近接端側の先端側の2個を使用している。旋回軸Aの第2土寄せ体43が有する面に対向した前方からみたときの第2土寄せ体43との相対位置について、旋回軸Aを挟んだ第2土寄せ体43の幅方向両側の面積は、轍側に近い側の面積を小さく、轍から遠ざかった側の面積を大きく設けている。
第2土寄せ体43の旋回軸Aは、図18で図示する左側である第2土寄せ体43のカバー体4進行方向に対する幅方向の中央寄りに取り付けられている。また、弾性部材71は、平面視において、進行方向に対する幅方向の中央寄りである轍側に近い側に設けているので、第2土寄せ体43の轍側に近い側を常時後方に旋回させるように力がかかる。
【0066】
また、図18において、第2土寄せ体43の支点パイプ61より図中右側の面積であるカバー体4から前方側に離れた側の面積、つまり、旋回軸Aから第2土寄せ体43が轍から遠ざかる側の面積が、図中左側の面積であるカバー体4Lへの近接した側の面積、つまり、旋回軸Aから第2土寄せ体43が轍に近づく側の面積より大きくなる。
そのため、第2土寄せ体43は図中右側である進行方向左側の方が土の圧力を多く受ける。代掻き作業機1の進行とともに土が第2土寄せ体43に衝突すると、衝突力により、旋回軸Aを回動中心として、第2土寄せ体43は反時計回りに、左回転する。すなわち、第2土寄せ体43の平面視における傾斜角度は、図18に二点鎖線であらわしたカバー体4の前端に対して垂直方向側である前方に向かって立った姿勢である一方側から、実線であらわしたカバー体4の前端に対して平行方向側に倒れた姿勢である他方側に回転する。
【0067】
進行する速度が増すと土寄せ体(第2土寄せ体43)に衝突する力も増していく。衝突する力は、土寄せ体(第2土寄せ体43)を旋回軸A周りの他方側に旋回させる力となる。この他方側への旋回力が、一方側に付勢する弾性部材71の付勢力より大きくなると、第2土寄せ体43の旋回が開始される。第2実施例では、平面視において、第2土寄せ体43は反時計回りである左回りに回転する。
【0068】
反対に、進行する速度が低下すると土の衝突する力も減少するので、一方側に付勢する弾性部材71の付勢力により、土寄せ体(第2土寄せ体43)が一方側の元の位置に復帰するように旋回する。第2実施例では、旋回軸Aを回動中心として、第2土寄せ体43は時計回りに、右回転する。
図18に、この発明の第2実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体を拡大した平面図に示すように、第2土寄せ体43及び規制部である規制片64の実線で描いた部分は高速時(回転後)を、二点鎖線で描いた部分は低速時(回転前)を示す。
すなわち、旋回軸Aと、第2土寄せ体43における、支点パイプ61との左右相対位置調整用孔431との取り付け位置で、第2土寄せ体43が高速と低速でどちら向きの旋回をするかの作用が決まる。旋回軸Aに対する第2土寄せ体43の位置によって、土の抵抗を受けていた場合に、第2土寄せ体43がどちら方向に回動するかが決まる。
旋回軸Aと第2土寄せ体43との位置関係によって、第2土寄せ体43の土が流れる面から見た時の支点軸Aを基準にした左右それぞれの面積の大小によって、作業機が進行して土の抵抗を受ける面積が大きい側がどちら側かが決まる。進行速度が速くなると第2土寄せ体43は、土の抵抗を受けやすい側である、平面視長い方あるいは面積が大きい側が後方に向かって回転する。
【0069】
土寄せ体(第2土寄せ体43)の旋回は、規制体64によって旋回できる範囲が限定されているので、土寄せ体(第2土寄せ体43)が旋回し続けることを防止できる。したがって、土の移動方向を轍に向けさせ続けることができるので、跡消し作業を途切れることなく行うことができる。
弾性部材71は、常時、一方側の旋回方向に付勢しているので、土の衝突が無くなる、又は土の衝突力が減少すると、元の位置に復帰させることができる。また、取り付け位置、弾性部材71の素材、形態等を適宜調整することで付勢力を調整し、土の衝突加減との調整を行うことができる。
【0070】
第2実施例の場合、作業速度が、例えば、1~3km/h程度の低速(第1速度)のときは、土寄せ体(第2土寄せ体43)の跡消し面を轍溝の中央側に向けて、前方投影面積を小さくし、土を少量ずつ轍に移動させる。
作業速度が、例えば、3~6km/h程度の高速(第2速度)のときは、土寄せ体である第2土寄せ体43の跡消し面を轍溝の中央側から進行方向の前方側に向けて、より多くの土を轍に移動させることができる。
すなわち、作業速度が低速時は土寄せ体である第2土寄せ体43の前方投影面積を小さくし、高速時は前方投影面積を大きくする。作業速度が高速時に形成される轍溝の脇には、走行機体で押し退けられた土が、走行速度の勢いに乗って低速時より多量に発生するため、前方投影面積を大きくすることで効率よく土を移動できる。
【0071】
図19に図示するこの発明の第3実施例について説明する。第3実施例は、第1実施例に、以下の構成からなる第2土寄せ体43を設ける。第1土寄せ体42、第3土寄せ体44も同じ構造としてもよい。
図19で、実線で示す第2土寄せ体43は低速時を、二点鎖線で示す第2土寄せ体43は高速時を示す。
第3実施例では、旋回軸Aを構成する支点パイプ61の第2土寄せ体43との取り付けは、左右相対位置調整用孔431のうち、図19で図示する右側である第2土寄せ体43のカバー体4から離間する側の先端側の2個を使用している。第2土寄せ体43が有する面に対向した前方からみたとき、旋回軸Aと第2土寄せ体43との相対位置ついて、旋回軸Aを挟んだ第2土寄せ体43の幅方向両側の面積は、轍側に近い側の面積を大きく、轍から遠ざかった側の面積を小さく設けている。
【0072】
第3実施例では、弾性部材71は、圧縮バネからなる。弾性部材71は、旋回軸Aによって旋回可能な土寄せ体である第2土寄せ体43を一方の旋回方向に付勢する。第3実施例では、第2土寄せ体43の轍側の端部をカバー体4の前端から前方に離れる方向、つまり一方の旋回方向へ旋回させる力を与える圧縮ばねとして作用する。
弾性部材71は、第3実施例では、上部カラー66に設けた旋回軸側突出片63と、取り付けベース47或いはカバー体4に設けたカバー体側突出片46に架け渡す。上部カラー66及び支点パイプ61を介して土寄せ体(第2土寄せ体43)を一方側に旋回させるように付勢する。実施例では、圧縮ばねで示したが、一方側に旋回させるように配置した引張ばね、巻きばね、流体圧を使用した弾性部材71でもよい。
【0073】
72は、伸縮ロッドである。伸縮ロッド72は、第3実施例では、弾性部材71の中心に設置する伸縮ロッド72は、弾性部材71をガイドする。
第3実施例では、第2土寄せ体43への旋回軸Aの取り付け位置を取り付け位置である、支点パイプとの左右相対位置調整用孔431から選択することで、旋回軸Aを挟んだ土寄せ体43両側の面積を変化させることができる。
第3実施例では、旋回軸Aを構成する支点パイプ61の第2土寄せ体43との取り付けは、左右相対位置調整用孔431のうち、図19で図示する右側である第2土寄せ体43のカバー体4Lから離れた端側の2個を使用している。
【0074】
そのため、第2土寄せ体43の旋回軸Aは、図19で図示する右側である第2土寄せ体43のカバー体4から離れた側に取り付けられている。
第2土寄せ体43の土が移動する面から見た場合の、第2土寄せ体43と旋回軸Aとの相対的な取り付け位置関係は、第2土寄せ体43の真ん中を避けて中心から側方にずれている場所に旋回軸Aを配置している。なお、平面視において、第2土寄せ体43の土の移動面の中間は、相対位置調整用孔431の4個の孔の真ん中が、これに該当する位置である。
第2土寄せ体43の土が移動する面から見た場合において、実質的な支点軸Aとなる支点パイプ61より図中左側の面積であるカバー体4へ近接した側の面積が、支点パイプ61より図中右側の面積であるカバー体4から離れた側の面積より大きくなる。
【0075】
そのため、第2土寄せ体43は面積の大きい図中左側の方が土の圧力を多く受ける。代掻き作業機1の進行とともに土が第2土寄せ体43に衝突すると、衝突力により、旋回軸Aを回動中心として、第2土寄せ体43は時計回りに、右回転する。すなわち、第2土寄せ体43の平面視における傾斜角度は、図19に実線であらわしたカバー体4の前端に対して平行方向に向かって倒れた姿勢である一方側から、二点鎖線であらわしたカバー体4の前端に対して垂直方向側である前方に向かって立った姿勢である他方側に回転する。
第3実施例は他の構成は第2実施例と同じである。
【0076】
進行する速度が増すと土寄せ体(第2土寄せ体43)に衝突する力も増していく。衝突する力は、土寄せ体(第2土寄せ体43)を旋回軸A周りの他方側に旋回させる力となる。この他方側への旋回力が、一方側に付勢する弾性部材71の付勢力より大きくなると、第2土寄せ体43の旋回が開始される。第3実施例では、第2土寄せ体43は時計回りに右回りに回転する。
【0077】
反対に、進行する速度が低下すると土の衝突する力も減少するので、一方側に付勢する弾性部材71の付勢力により、土寄せ体(第2土寄せ体43)が一方側の元の位置に復帰するように旋回する。第3実施例では、旋回軸Aを回動中心として、第2土寄せ体43は反時計回りに、左回転する。
図19に、この発明の第3実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体を拡大した平面図に示すように、第2土寄せ体43及び規制部である規制体64の実線で描いた部分は低速時(回転前)を、二点鎖線で描いた部分は高速時(回転後)を示す。
【0078】
土寄せ体(第2土寄せ体43)の旋回は、規制体64によって旋回できる範囲が限定されているので、土寄せ体(第2土寄せ体43)が旋回し続けることを防止できる。したがって、土の移動方向を轍に向けさせ続けることができるので、跡消し作業を途切れることなく行うことができる。
【0079】
弾性部材71は、常時、一方側の旋回方向に付勢しているので、土の衝突が無くなると、元の位置に復帰させることができる。また、取り付け位置、弾性部材71の素材、形態等を適宜調整することで付勢力を調整し、土の衝突加減との調整を行うことができる。
第3実施例では、土寄せ体と旋回軸Aとの相対的な位置関係や、弾性部材71の種類の変更及び配置する位置関係の変更によって、作業速度が低速から高速に移行すると、前方投影面積が徐々に面積大から面積小に移行させることができる。
【0080】
第3実施例の場合、作業速度が、例えば、1~3km/h程度の低速(第1速度)のときは、土寄せ体(第2土寄せ体43)の跡消し面を轍溝の中央側に向けて、前方投影面積を大きくし、土を積極的に轍に移動させる。
作業速度が、例えば、3~6km/h程度の高速(第2速度)のときは、土寄せ体である第2土寄せ体43の土の移動面を進行方向の側方側に向けて、土を進行方向に沿うように徐々に轍に移動させることができる。
すなわち、作業速度が低速時は土寄せ体である第2土寄せ体43の前方投影面積を大きくし、高速時は前方投影面積を小さくする。
【0081】
第3実施例での土寄せ体(第2土寄せ体43)は、土質や水分量によって土の粘度が低い場合に有効である。粘度が低い土の場合、走行機体によって轍が形成されるものの、土自体の重量及び水分の流れで、形成された轍の溝に移動する。このため、轍の脇に押し退けられた土の量は少なく、轍も深くならない。
第1速度である低速時は、土の粘度が低く土の移動効率が悪化することが多いため、前方投影面積を大きくするように旋回させて、土が移動する量を積極的に確保する。反対に、第2速度である高速時に勢いよく轍に向けて土を移動させると、土は流動性が高い状態のため、移動させた土が轍を乗り越えてしまうことがある。これを避けるために、高速時のときには、前方投影面積を小さくするように旋回させて、移動する土の流れを進行方向に沿うように土寄せ体(第2土寄せ体43)を旋回させると、土が轍を乗り越えてしまうことを防ぐことができる。すなわち、第3実施例での土寄せ体によって、効果的に轍に土を移動させて、土を均平にすることができる。
【0082】
図20に平面図を図示する第4実施例では、弾性部材71は、引張ばねからなる。
弾性部材71は、旋回軸Aによって旋回可能な土寄せ体である第2土寄せ体43を一方の旋回方向に付勢する。第4実施例では、第2土寄せ体43の轍側の端部をカバー体4の前端から離れた方向である前方へ引っ張る引張ばねとして作用する。
【0083】
第4実施例では、左右相対位置調整用孔431のうち、図20で図示する右側である第2土寄せ体43のカバー体4から離れた端側の2個を使用している。
そのため、第2土寄せ体43の旋回軸Aは、図20で図示する右側である第2土寄せ体43のカバー体4から離れた側に取り付けられている。
第2土寄せ体43の土が移動する面から見た場合の、第2土寄せ体43と旋回軸Aとの相対的な取り付け位置関係は、第2土寄せ体43の真ん中を避けて中心から側方にずれている場所に旋回軸Aを配置している。なお、平面視において、第2土寄せ体43の土の移動面の中間は、相対位置調整用孔431の4個の孔の真ん中が、これに該当する位置である。
【0084】
そこで、第2土寄せ体43の土が移動する面から見た場合において、実質的な支点軸Aとなる支点パイプ61より図中左側の面積であるカバー体4近接した側の面積が、支点パイプ61より図中右側の面積であるカバー体4から離れた側の面積より大きくなる。
そのため、第2土寄せ体43は面積の大きい図中左側の方が土の圧力を多く受ける。代掻き作業機1の進行とともに土が第2土寄せ体43に衝突すると、衝突力により、旋回軸Aを回動中心として、第2土寄せ体43は時計回りに、右回転する。すなわち、第2土寄せ体43の平面視における傾斜角度は、図20に実線であらわしたカバー体4に対して平行方向に向かって倒れた姿勢である一方側から、二点鎖線であらわしたカバー体4の前端に対して垂直方向側である前方に向かって立った姿勢である他方側に回転する。
第4実施例は他の構成は第2実施例、第3実施例と同じである。
【0085】
進行する速度が増すと土寄せ体(第2土寄せ体43)に衝突する力も増していく。衝突する力は、土寄せ体(第2土寄せ体43)を旋回軸A周りの他方側に旋回させる力となる。この他方側への旋回力が、一方側に付勢する弾性部材71の付勢力より大きくなると、第2土寄せ体43の旋回が開始される。第4実施例では、第2土寄せ体43は時計回りに右回りに回転する。
【0086】
反対に、進行する速度が低下すると土の衝突する力も減少するので、一方側に付勢する弾性部材71の付勢力により、土寄せ体(第2土寄せ体43)が一方側の元の位置に復帰するように旋回する。第3実施例では、旋回軸Aを回動中心として、第2土寄せ体43は反時計回りに、左回転する。
図20に、この発明の第4実施例に係る代掻き作業機の土寄せ体を拡大した平面図に示すように、第2土寄せ体43及び規制部である規制体64の実線で描いた部分は低速時(回転前)を、二点鎖線で描いた部分は高速時(回転後)を示す。
【0087】
土寄せ体(第2土寄せ体43)の旋回は、規制体によって旋回できる範囲が限定されているので、土寄せ体(第2土寄せ体43)が旋回し続けることを防止できる。したがって、土の移動方向を轍に向けさせ続けることができるので、跡消し作業を途切れることなく行うことができる。
【0088】
弾性部材71は、常時、一方側の旋回方向に付勢しているので、土の衝突が無くなると、元の位置に復帰させることができる。また、取り付け位置、弾性部材71の素材、形態等を適宜調整することで付勢力を調整し、土の衝突加減との調整を行うことができる。
【0089】
第4実施例では、土寄せ体と旋回軸Aとの相対的な位置関係や、弾性部材71の種類の変更及び配置する位置関係の変更によって、作業速度が低速から高速に移行すると、前方投影面積が徐々に面積大から面積小に移行させることができる。第4実施例における土寄せ体によって発生する作用及びその効果は、第3実施例と同様であるので、その説明を省略する。
【0090】
第4実施例は、平面視において、埋め戻そうとする轍から進行方向幅方向に向かって、轍の側部に位置する土寄せ体である第2土寄せ体43、土寄せ体を旋回させる旋回軸A、これに続いて弾性部材71を配置している。これに対し、第2実施例及び第3実施例は、轍の側部に位置する第2土寄せ体43、続いて弾性部材71を配置し、旋回軸A、が続いて配置している。第4実施例は、轍から遠ざかる位置に弾性部材71を配置している。さらに、弾性部材71と轍との間に旋回軸Aである支点パイプ61が位置している。したがって、埋戻し時に轍から発生し得る泥の飛沫が弾性部材71に到達しにくく、また、轍から支点パイプ61の陰になって弾性部材71を配置していることから、直接的に泥の飛沫がかかることを抑制できる。
【0091】
第2実施例、第3実施例、第4実施例では、第2土寄せ体43への旋回軸Aの取り付け位置を支点パイプとの左右相対位置調整用孔431から選択することで、旋回軸Aを挟んだ土寄せ体43両側の面積を変化させることができる。
第2実施例では、旋回軸Aを構成する支点パイプ61の第2土寄せ体43との取り付けは、支点パイプ61との左右相対位置調整用孔431のうち、図18で図示する左側である第2土寄せ体43のカバー体4への近接端側の先端側の2個を使用している。
【0092】
第3実施例では、旋回軸Aを構成する支点パイプ61の第2土寄せ体43との取り付けは、支点パイプとの左右相対位置調整用孔431のうち、図19で図示する右側である第2土寄せ体43のカバー体4Lから離れた端側の2個を使用している。
【0093】
第4実施例では、旋回軸Aを構成する支点パイプ61の第2土寄せ体43との取り付けは、支点パイプ61との左右相対位置調整用孔431のうち、図20で図示する右側である第2土寄せ体43のカバー体4から離れた端側の2個を使用している。
旋回軸Aを構成する支点パイプ61と、第2土寄せ体43との取り付けを、支点パイプ61との左右相対位置調整用孔431を選択することで、旋回軸Aの位置を第2土寄せ体43のどの位置にするかを選択することができ、第2土寄せ体43における旋回軸Aから、カバー体4よりの面積と、カバー体4から離れた側の面積とを変化させる。
そのため、第2土寄せ体43が土に接して押圧されたときに、どちら側の面に土の押圧が多くなるかを調整する。土の押圧力が多い方が圧力は多くなるため、押されやすくなり、土と接し土の大圧力を多く受ける側の面が第2土寄せ体43側に近づくように回転する。
そのため、旋回軸Aを第2土寄せ体43のどこに取り付けるかにより回転方向を選択することができる。
【0094】
この実施例では、支点パイプとの左右相対位置調整用孔431は、4個設け、2個づつ使用して、第2土寄せ体43と旋回軸Aを固定するが、更に数を多くすれば、移動距離、移動速度を更に変更することが可能である。
【0095】
第2実施例、第3実施例、第4実施例では、第2土寄せ体43に発明の機構を組み入れているが、他の第1土寄せ体42、第3土寄せ体44に組み入れてもよい。
また、第2実施例、第3実施例の土寄せ体(第2土寄せ体43)は、中央作業体11以外の側部作業体である延長作業体左11Lあるいは、延長作業体右11Rに設けてもよい。
また、中央作業体11のみで構成する作業体(いわゆる折畳機構が無い作業機)に設けてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 代掻き作業機(走行機体)
3 砕土部
32 耕耘爪
43 第2土寄せ体(土寄せ体)
431 支点パイプとの左右相対位置調整用孔(取り付け位置)
64 規制体
71 弾性部材
A 旋回軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2022-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後方に位置し、前記走行機体の前進とともに耕耘爪を回転駆動させて土を砕土する砕土部と、
前記走行機体の進行方向の後方且つ前記砕土部の進行方向の前方側に配置し、前記走行機体によって形成された走行跡に、土を移動させて走行跡を消すことが可能な土寄せ体と、を備え、
前記土寄せ体は移動速度に応じて前方投影面積を変化させることができる構成であり、
前記土寄せ体を水平方向に回動可能な旋回軸を有し、
前記旋回軸の前記土寄せ体への取り付け位置を選択することで、前記旋回軸を挟んだ前記土寄せ体両側の土に接するそれぞれの面の面積を変化させる、ことを特徴とする代掻き作業機。
【請求項2】
前記旋回軸の前記土寄せ体への前記取り付け位置は、前記土寄せ体の左右幅に対する真ん中から側方にずれていることを特徴とする請求項1に記載の代掻き作業機。
【請求項3】
前記旋回軸の前記土寄せ体への前記取り付け位置を挟んだ土寄せ体の両側のそれぞれの面が受ける土からの押圧力を変化させる、ことを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項4】
前記走行機体が低速から高速に変化することで、前記旋回軸を旋回中心とする前記土寄せ体の方向を変化させる、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項5】
作業速度が低速から高速に移行すると、押し寄せる土の押し力によって、前記前方投影面積が徐々に面積小から面積大に移行する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項6】
作業速度が低速から高速に移行すると、押し寄せる土の押し力によって、前記前方投影面積が徐々に面積大から面積小に移行する、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項7】
前記旋回軸は前記土寄せ体を上下方向に移動可能にさせるとともに、前記土寄せ体を上下方向に対する任意の位置で固定可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項8】
前記旋回軸によって旋回可能な土寄せ体を一方の旋回方向に付勢する弾性部材と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項9】
前記土寄せ体は、前記土寄せ体と一体になって旋回するとともに前記土寄せ体が旋回できる範囲を規制する規制体と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の代掻き作業機。
【請求項10】
前記旋回軸は、前記砕土部に対する左右幅方向に位置変更が可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の代掻き作業機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
この発明は、
走行機体の後方に位置し、前記走行機体の前進とともに耕耘爪を回転駆動させて土を砕土する砕土部と、
前記走行機体の進行方向の後方且つ前記砕土部の進行方向の前方側に配置し、前記走行機体によって形成された走行跡に、土を移動させて走行跡を消すことが可能な土寄せ体と、を備え、
前記土寄せ体は移動速度に応じて前方投影面積を変化させることができる構成であり、
前記土寄せ体を水平方向に回動可能な旋回軸を有し、
前記旋回軸の前記土寄せ体への取り付け位置を選択することで、前記旋回軸を挟んだ前記土寄せ体両側の土に接するそれぞれの面の面積を変化させる、ことを特徴とする代掻き作業機、
に係る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】削除
【補正の内容】