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特開2022-146413撮像光学系および撮像装置および移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146413
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】撮像光学系および撮像装置および移動体
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20220928BHJP
   G02B 13/04 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047351
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】514274487
【氏名又は名称】リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健祐
(72)【発明者】
【氏名】中沼 寛
(72)【発明者】
【氏名】畑下 千恵子
(72)【発明者】
【氏名】荻野 心平
(72)【発明者】
【氏名】市井 大輔
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087KA02
2H087LA01
2H087LA03
2H087NA18
2H087PA05
2H087PA18
2H087PB06
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】ゴースト光の影響を軽減できる新規な撮像光学系を実現する。
【解決手段】撮像対象を物体とする像を、撮像面上に結像させる撮像光学系であって、前記物体の側から像側に向かってレンズ系とフィルタF1とを配してなり、前記レンズ系は5群構成で、前記フィルタF1は平行平板状で前記レンズ系の光軸に直行するように配置され、前記レンズ系の第1群G1は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズである第1レンズL1により構成され、前記第1レンズL1の物体側面の曲率半径:R11、全系の焦点距離:f、前記フィルタF1の物体側面と像面ISとの距離:Df、前記全系の全長:Lが、条件式:
(1) 0.55 <(R11/f)×(Df/L)< 1.00
を満足する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象を物体とする像を、撮像面上に結像させる撮像光学系であって、
前記物体の側から像側に向かってレンズ系とフィルタとを配してなり、
前記レンズ系は5群構成で、前記フィルタは平行平板状で前記レンズ系の光軸に直行するように配置され、
前記レンズ系の第1群は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズである第1レンズにより構成され、
前記第1レンズの物体側面の曲率半径:R11、全系の焦点距離:f、前記フィルタの物体側面と像面との距離:Df、前記全系の全長:Lが、条件式:
(1) 0.55 <(R11/f)×(Df/L)< 1.00
を満足する撮像光学系。
【請求項2】
請求項1記載の撮像光学系であって、
前記全系の焦点距離:f、前記全系の全長:L、半画角:W(度)が、条件式:
(2) 4.0 < W×(L/f)/100 < 6.0
を満足する撮像光学系。
【請求項3】
請求項2記載の撮像光学系であって、
前記全系の焦点距離:f、前記フィルタの物体側面と像面との距離:Df、前記半画角:W(度)、前記全系の全長:Lが、条件式:
(3) 14.0 < W×(Df/L)
を満足する撮像光学系。
【請求項4】
請求項3記載の撮像光学系であって、
前記第1レンズの物体側面の曲率半径:R11、全系の焦点距離:f、前記半画角:W(度)が、条件式:
(4) 1.5 <W×(R11/f)< 4.0
を満足する撮像光学系。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1項に記載の撮像光学系であって、
前記第1レンズの物体側面の曲率半径:R11、前記第1レンズの像側面の曲率半径:R12が、条件式:
(5) 0.2 < R12/R11 < 0.4
を満足する撮像光学系。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1項に記載の撮像光学系であって、
前記レンズ系は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズである前記第1レンズにより成る第1群、負レンズである第2レンズにより成る第2群、正レンズである第3レンズにより成る第3群、正レンズまたは負レンズの第4レンズと負レンズまたは正レンズの第5レンズとを接合した接合レンズにより成り全体として正の屈折力を有する第4群、正レンズである第6レンズにより成る第5群を物体側から像側へ向かって配してなり、前記第5群の像側に前記フィルタを有する撮像光学系。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1項に記載の撮像光学系であって、
前記第1レンズが少なくとも1つの非球面を有し、前記第6レンズが少なくとも1つの非球面を有する撮像光学系。
【請求項8】
請求項1ないし6の何れか1項に記載の撮像光学系であって、
前記第2レンズが少なくとも1つの非球面を有し、前記第6レンズが少なくとも1つの非球面を有する撮像光学系。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか1項に記載の撮像光学系を有し、エリアセンサの受光面を撮像面として用いる撮像装置。
【請求項10】
カメラ装置として構成された請求項9記載の撮像装置。
【請求項11】
車載撮像装置として構成された請求項9記載の撮像装置。
【請求項12】
請求項9ないし10の撮像装置を搭載された移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撮像光学系および撮像装置および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像対象を物体とする像を撮像面上に結像させる撮像光学系は、撮影カメラ用の撮影光学系等を始めとして従来から種々の物が知られている。近来は、各種のエリアセンサを用いる撮像装置とし、監視カメラや検査用カメラ、あるいは自動車や飛行機、ドローン等の移動体に搭載することが行われている(特許文献1)。
エリアセンサを用いて撮像を行う場合、撮像面をなす「エリアセンサの受光面」は、レンズ系による結像光束の一部を反射する。撮像面で反射された光は、結像レンズ系に入射し、レンズ系のレンズ面で反射されて撮像面に戻り、エリアセンサで撮像するべき像に対してゴースト光として作用することが知られている。
【0003】
また、撮像光学系は、レンズ系と共に例えば「赤外線カットフィルタや光学的ローパスフィルタ」のようなフィルタが用いられるのが普通である。このようなフィルタは一般に平行平板状で、レンズ系の光軸に対して直交するように、即ち、撮像面と平行に設けられるので、結像光束の「フィルタ面による反射光」も、レンズ系に入射してレンズ面により反射され、ゴースト光として作用し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、上記の如きゴースト光の影響を軽減できる新規な撮像光学系の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の撮像光学系は、撮像対象を物体とする像を、撮像面上に結像させる撮像光学系であって、前記物体の側から像側に向かってレンズ系とフィルタとを配してなり、前記レンズ系は5群構成で、前記フィルタは平行平板状で前記レンズ系の光軸に直行するように配置され、前記レンズ系の第1群は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズである第1レンズにより構成され、前記第1レンズの物体側面の曲率半径:R11、全系の焦点距離:f、前記フィルタの物体側面と像面との距離:Df、前記全系の全長:Lが、条件式:
(1) 0.55 <(R11/f)×(Df/L)< 1.00
を満足する。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、ゴースト光の影響を軽減できる新規な撮像光学系を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】撮像光学素子の実施例1の光学構成を示す図である。
図2】実施例1のデータを示す図である。
図3】実施例1の撮像光学系における非球面データを示す図である。
図4】実施例1の撮像光学系のパラメータ等を示す図である。
図5】実施例1の撮像光学系の収差図である。
図6】実施例1の撮像光学系によるゴースト光の影響の低減を示す図である。
図7】撮像光学素子の実施例2の光学構成を示す図である。
図8】実施例2のデータを示す図である。
図9】実施例2の撮像光学系における非球面データを示す図である。
図10】実施例2の撮像光学系のパラメータ等を示す図である。
図11】実施例2の撮像光学系の収差図である。
図12】実施例2の撮像光学系によるゴースト光の影響の低減を示す図である。
図13】撮像光学素子の実施例3の光学構成を示す図である。
図14】実施例3のデータを示す図である。
図15】実施例3の撮像光学系における非球面データを示す図である。
図16】実施例3の撮像光学系のパラメータ等を示す図である。
図17】実施例3の撮像光学系の収差図である。
図18】実施例3の撮像光学系によるゴースト光の影響の低減を示す図である。
図19】撮像装置の実施の1形態であるデジタルカメラを説明する図である。
図20図19のデジタルカメラのシステム構成図である。
図21】撮像装置の実施の1例であるステレオカメラを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態に即し、図面を参照して説明する。
図1図7図13に、この発明の撮像光学系の実施の形態を3例示す。
これらの図に示す実施の形態は、図番の順に後述する実施例1、実施例2、実施例3の撮像光学系に対応する。
図の繁雑を避けるために、これらの図において符号を共通化する。
図1図7図13において、図の左側が物体側、右側が像側である。
この発明の撮像光学系は、図1図7図13の左方に在って図示されていない撮像対象を物体とする像を、撮像面IS上に結像させる撮像光学系であって、物体の側から像側に向かってレンズ系とフィルタF1とを配してなる。
「レンズ系」は5群構成で、フィルタF1は平行平板状である。レンズ系の群構成については後述する。フィルタF1はレンズ系の光軸に直交するように設けられる。
レンズ系の第1群G1は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズである第1レンズL1により構成されている。
第1レンズL1の物体側の曲率半径:R11、全系の焦点距離:f、フィルタF1の物体側面と像面ISとの距離:Df、全系の全長:Lが、条件式:
(1) 0.55 <(R11/f)×(Df/L)< 1.00
を満足する。
全系の焦点距離:fは、レンズ系とフィルタF1とを含む系における焦点距離であり、全系の全長:Lは、第1群G1をなす第1レンズL1の物体側面から撮像面ISに至る光軸上の距離である。図7図13においては全長:Lは図示を省略されている。
【0009】
図1図7図13に示す実施の形態は何れも、撮像光学系による物体の像をエリアセンサ(撮像素子)により読み取る場合が想定されており、図1図7図13における撮像面ISは「結像の像面」であって、エリアセンサの受光面に合致している。また符号CGはエリアセンサの受光面に近接して設けられたカバーガラスを示している。
【0010】
この発明の撮像光学系は、上記構成に加えて、全系の焦点距離:f、全系の全長:L、半画角:W(度)が、条件式:
(2) 4.0 < W×(L/f)/100 < 6.0
を満足することが好ましい。
さらに、条件式:(1)および(2)に加えて、全系の焦点距離:f、フィルタF1の物体側面と像面ISとの距離:Df、半画角:W(度)、全系の全長:Lが、条件式:
(3) 14.0 < W×(Df/L)
を満足することが好ましい。
また、条件式(1)ないし(3)に加えて、さらに、第1レンズL1の物体側の曲率半径:R11、全系の焦点距離:f、半画角:W(度)が、条件式:
(4) 1.5 <W×(R11/f)< 4.0
を満足することが好ましい。
【0011】
この発明の撮像光学系は、前記条件式(1)とともに、あるいは条件式(1)、(2)とともに、さらには条件式(1)ないし(3)、あるいは条件式(1)ないし(4)とともに以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
(5) 0.2 < R12/R11 < 0.4
ここに、R11は上述の如く「物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズ」である第1レンズL1の物体側面の曲率半径、R12は第1レンズL1の像側面の曲率半径である。
【0012】
第1レンズL1は「物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズ」であるから、R11、R12は何れも「正」であり、「R11>R12」である。
【0013】
ここで、撮像光学系の「レンズ系」を構成する群構成について説明すると、レンズ系の第1群は前述の如く「物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズ」であるが、第2群ないし第5群の好ましい例として、以下の如き構成を挙げることができる。
第2群は「負レンズである第2レンズ」、第3群は「正レンズである第3レンズ」、第4群は「正または負の第4レンズと正または負の第5レンズとを接合し、正の屈折力を持つ接合レンズ」、第5群は「正レンズである第6レンズ」により構成し、第1群ないし第5群を物体側から像側へ向かって、順次配列した構成とすることができる。
【0014】
図1図7図13に示す実施の形態においては、第2群G2を構成する第2レンズL2は「凹面を物体側に向けた負メニスカスレンズ」、第3群G3を構成する第3レンズL3は「両凸レンズ」である。
第4群G4は、正の屈折力を持つ{第4レンズ}である両凸レンズL4を物体側とし、その像側に「第5レンズ」である負の屈折力を持つ両凹レンズL5を接合してなる。第4群G4を成す第4レンズL4と第5レンズL5の接合レンズを接合レンズL45と呼ぶ。
【0015】
第5群G5を構成する第6レンズL6は「近軸形状が両凸レンズ」である。なお、第3群をなす第3レンズL3と第4群を成す接合レンズL45との間に、開口絞りSが配置されている。
【0016】
この発明の撮像光学系におけるレンズ系においては、第1群1Gを構成する第1レンズL1が少なくとも1つの非球面を有し、第5群を成す第6レンズL6が少なくとも1つの非球面を有することができる。
また、第2群G2を構成する第2レンズL2が少なくとも1つの非球面を有し、第5群G5を構成する第6レンズL6が少なくとも1つの非球面を有することができる。
なお、非球面において曲率半径:R11等は「近軸曲率半径」である。
【0017】
この発明の撮像光学系をエリアセンサと組み合わせ、エリアセンサの受光面を撮像面として用いることにより「撮像装置」を構成できる。この撮像装置は「デジタルカメラやステレオカメラ等のカメラ装置」や「監視カメラや検査用カメラ等のセンシングカメラ」として構成することができ、あるいは「車載撮像装置」として構成することもできる。
【0018】
また、この発明の撮像装置を自動車や飛行機、ドローン等に搭載した「移動体」を構成することができる。
【0019】
以下、条件式(1)ないし(5)の意義につき説明する。
条件式(1)は「撮像面ISによる反射に起因するゴースト光」と、「フィルタF1の物体側面による反射に起因するゴースト光」の影響を有効に軽減する条件である。
撮像光学系による結像光が撮像面ISにより反射されて撮像光学系内を逆行し、第1レンズの物体側面で反射されてゴースト光となる場合のゴースト光を以下「撮像面由来のゴースト光」と呼ぶ。
また、レンズ系による結像光がフィルタF1の物体側面で反射されてレンズ系内を逆行し、第1レンズの物体側面で反射されてゴースト光となる場合のゴースト光を以下「フィルタ由来のゴースト光」と呼ぶ。
【0020】
撮像面由来のゴースト光の影響が最も強く表れるのは、このゴースト光が撮像面ISの位置に集光する場合である。
同様に、フィルタ由来のゴースト光の影響も、このゴースト光が撮像面ISの位置に集光する場合に最も著しくなる。
この発明の撮像光学系では、第1レンズL1の物体側面で反射されてレンズ系とフィルタF1を介して撮像面IS側に向かう「撮像面由来のゴースト光」および「フィルタ由来のゴースト光」の集光位置を「撮像面位置からずらす」ことによりゴースト光の影響を軽減する。
【0021】
条件式(1)のパラメータは、第1レンズL1の物体側面の曲率半径:R11が大きく(小さく)なる場合、および、撮像面ISとフィルタF1の物体側面との距離:Dfが大きく(小さく)なる場合に大きく(小さく)なる。
条件式(1)のパラメータが小さくなって下限を超える場合は、光軸付近の分解能を向上でき、かつ「撮像面由来のゴースト光の影響」を抑制することが容易となる。
しかし、第1レンズL1の物体側面の曲率半径:R11が小さくなると「コマ収差や像面湾曲などの諸収差」が増大し撮像光学系の撮像性能が低下する。
また「フィルタ由来のゴースト光」が撮像面近傍に小径のスポットとして集光するようになりフィルタ由来のゴースト光の影響が増大してしまう。
逆に、条件式(1)のパラメータが大きくなって条件式(1)の上限を超えると、第1レンズL1の物体側面の曲率半径が大きくなり、撮像面由来のゴースト光が、撮像面IS近傍に小径のスポットとして集光するようになり、撮像面由来のゴースト光の影響が増大してしまう。
【0022】
条件式(1)が満足される範囲では、「撮像面由来のゴースト光の集光位置」が撮像面ISよりも物体側へずれ、「フィルタ由来のゴースト光の集光位置」が撮像面SIよりも像側へずれる。
このように、撮像面由来のゴースト光と、フィルタ由来のゴースト光の、夫々の集光位置が、撮像面ISから光軸方向へ「互いに反対側」にずれることにより何れのゴースト光の影響も軽減される。
【0023】
条件式(1)が満足される条件下において、条件式(2)が満足されることにより、撮像光学系を広角化する場合に「広角化に伴って焦点距離が短くなって歪曲収差が増大」するのを抑制できる。
条件式(1)、(2)が共に満足される条件下において、条件式(3)が満足されることにより、フィルタF1の位置を撮像面ISから離れた位置に配置することができ、フィルタ由来のゴースト光の影響をより有効に抑制できる。
【0024】
条件式(1)~(3)が満足される条件下で、条件式(4)を満足させると、撮像光学系の広角化に際して「第1レンズL1の物体側面の曲率半径」を過小にすることなく、良好な歪曲収差を実現できる。また、撮像面由来およびフィルタ由来のゴースト光」の影響をより良好に抑制できる。
【0025】
条件式(5)が満足されると、撮像面ISやフィルタF1の物体側面での反射光が、第1レンズL1の「像側面」で反射してゴースト光となるのを有効に防止できる。
【0026】
この発明の撮像光学系ではレンズ系の第1群G1をなす第1レンズL1が「凸面を物体側に向けた負メニスカスレンズ」である。
このように、第1レンズL1を、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズとすることで、フィルタF1やカバーガラスCG、撮像面ISにおいて反射した光線が第1レンズL1の物体側面で再反射した再反射光(撮像面由来およびフィルタ由来のゴースト光が、撮像面ISに小さいスポット光として集光するのを防止できる。
また、第1レンズL1の像側面も凹面であり、負の屈折力を保ちつつ、歪曲収差の調整が可能である。
【0027】
「広画角とバックフォーカス」を確保しようとすると、軸外主光線を「光軸から離れるように屈曲」させる作用を第1レンズL1にある程度持たせる必要があり、このために第1レンズL1にはある程度の負の屈折力が必要である。
図1図7図13に示す実施の形態のように、第2レンズL2の物体側面も凹面にすることにより、負の屈折力を第1レンズL1と第2レンズL2に分散させることができ、諸収差の発生を抑制でき、比較的小さい屈折力で解像度性能を向上させることができる。
【0028】
第3レンズL3を正レンズとすることにより、第1レンズL1で発生する球面収差を有効に補正できる。
第4レンズL4と第5レンズL5を接合レンズL45とすることにより、色収差および高次収差の抑制を有効に行うことができる。また、接合により2枚のレンズL4、L5を1つのレンズ群G4として配置できるため、環境温度変化時に発生し易い偏心に対して光軸の像高変化量を抑制できる。さらに接合によりレンズ群数が減るので製造容易性が向上する。
【0029】
第5群G5をなす第6レンズL6の「少なくとも1つのレンズ面」に非球面を用いることにより、光線を「画角によって分割する」ことができ、諸収差(歪曲、球面、像面湾曲、コマ収差)を補正しながら、球面レンズのみの構成よりもレンズ全長を短くし、また、最終レンズの屈折力が極端に強くならないようにできる。
【0030】
この発明の撮像光学系は、第1レンズL1、もしくは、第2レンズL2のいずれか一方に、非球面を用いることで、第1レンズL1の物体側面での反射によるゴースト光の発生を抑制するように曲率半径を調整でき、かつ「広画角で良好な結像性能」を保つことができる。
【0031】
「実施例」
以下、撮像光学系の具体的な実施例を3例挙げる。
以下に挙げる実施例1ないし3は、図1図7図13に即して説明した実施の形態に対応するものである。各実施例においてフィルタF1としては「赤外線カットフィルタ」が想定されている。
各実施例における記号の意味は、以下の通りである。
f:全系の焦点距離
fi:第iレンズの焦点距離
Fno:Fナンバ
L:全系の全長
W:半画角(度)
R:曲率半径(非球面にあっては近軸曲率半径)
D:面間隔
Df:撮像面からフィルタの物体側面までの距離
Nd:屈折率
νd:アッベ数
E:レンズ有効径 。
【0032】
非球面は、光軸方向に平行な方向の非球面量をX、光軸直交方向の距離をyとし、近軸曲率半径:R、円錐定数:K、4次、6次、8次、10次、12次、14次の非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14として、周知の次式
X=(y/R)/[1+√(1-(K+1)(y/R))]
+A4・y+A6・y+A8・y+A10・y10+A12・y12+A14・y14
で表し、K、R、A4等を与えて形状を特定する。
【0033】
「実施例1」
実施例1は、図1に即して説明した実施の形態の具体的な例である。
【0034】
図2に、実施例1の撮像光学系のデータを示す。
図2において「左端の欄」は、物体側から数えた「面番号」であり、開口絞りSの面を含む。
また、曲率半径:R=∞(inf)は平面を表し、非球面に対応する面番号には「*印」を付している。後述する実施例2,3においても同様である。
【0035】
「非球面のデータ」
実施例1の撮像光学系における非球面のデータを図3に示す。
実施例1においては、第1レンズの両面および第6レンズの両面が非球面である。
図において例えば「3.7005E-08」とあるのは「3.7005×10-8」を意味する。後述の実施例2、3においても同様である。
図4(a)には、実施例1の撮像光学系の全系の焦点距離:f、Fno、全長:L、画角:Wを示し、(b)には、第1群G1~第5群G5の各々の焦点距離:f1~f5、レンズ有効径:E1~E5を示す。
また、図4(c)には、実施例1の撮像光学系の条件式(1)~(5)のパラメータの値を示す。
図5には、実施例1の撮像光学系の収差図を示す。
図5の左図は「球面収差」、中央の図は「非点収差(実線はサジタル。破線はメリディオナル)」を示し、右図は「歪曲収差」を示す。dはd線(λ=587.6nm)、gはg線(λ=435.8nm)を示す。
【0036】
図6は、実施例1の撮像光学系におけるゴースト光の振る舞いを示す図である。
図6(a)は、物体側からの結像光束が撮像面ISで反射され、さらに第1レンズL1の物体側面で反射された「撮像面由来のゴースト光」の振る舞いを近軸光線につき示している。
図示されたように、この場合のゴースト光は、撮像面ISの手前側、即ち「物体側」で収束し、発散しつつ撮像面ISに入射する。従って、撮像面ISへの集光は回避され、撮像面由来のゴースト光の影響が軽減される。
【0037】
図6(b)は、物体側からの結像光束がフィルタF1の物体側面で反射され、さらに第1レンズL1の物体側面で反射された「フィルタ由来のゴースト光」の振る舞いを、近軸光線につき示している。
図に示されたように、この「フィルタ由来のゴースト光」は、撮像面ISの奥側、即ち「像側」に向かって収束し、収束途上で撮像面ISに入射する。したがって、撮像面ISへの集光は回避され、フィルタ由来のゴースト光の影響が軽減される。
【0038】
即ち、撮像面由来のゴースト光と、フィルタ由来のゴースト光は、それらの集束位置が、撮像面ISの物体側と像側とに分離し、撮像面IS上には小径のスポットとして集光しないので、これらのゴースト光の影響が有効に軽減される。
【0039】
「実施例2」
実施例2は、図7に即して説明した実施の形態の具体的な例である。
【0040】
図8に、実施例2の撮像光学系のデータを図2に倣って示す。
「非球面のデータ」
実施例2の撮像光学系における非球面のデータを図3に倣って、図9に示す。
実施例2においても、第1レンズの両面および第6レンズの両面が非球面である。
図10(a)には、実施例2の撮像光学系の全系の焦点距離:f、Fno、全長:L、画角:Wを示し、(b)には、第1群G1~第5群G5の各々の焦点距離:f1~f5、レンズ有効径:E1~E5を示す。
また、図10(c)に、実施例2の撮像光学系の条件式(1)~(5)のパラメータの値を示す。
図11には、実施例2の撮像光学系の収差図を図5に倣って示す。
図12は、実施例2の撮像光学系における、撮像面由来とフィルタ由来のゴースト光の振る舞いを、図6に倣って示す図である。
図12(a)は、撮像面由来のゴースト光の振る舞いを近軸光線につき示している。図に示されたように、この場合のゴースト光は撮像面ISの手前側、即ち「物体側」で収束し、発散しつつ撮像面ISに入射する。したがって、撮像面ISへの集光は回避され、撮像面由来のゴースト光の影響が軽減される。
【0041】
図12(b)は、物体側からの結像光束がフィルタF1の物体側面で反射され、さらに第1レンズL1の物体側面で反射されたフィルタ由来のゴースト光の振る舞いを、近軸光線につき示している。図に示されたように、この場合のゴースト光は、撮像面ISの奥側、即ち「像側」に向かって収束し、収束途上で撮像面ISに入射する。したがって、撮像面ISへの集光は回避され、フィルタ由来のゴースト光の影響が軽減される。
【0042】
即ち、撮像面由来のゴースト光と、フィルタ由来のゴースト光は、それらの集束位置が、撮像面ISの物体側と像側とに分離し、撮像面IS上には小径のスポットとつぃて収束しないので、ゴースト光としての影響が有効に軽減される。
【0043】
「実施例3」
実施例3は、図13に即して説明した実施の形態の具体的な例である。
【0044】
図14に、実施例3の撮像光学系のデータを図2に倣って示す。
「非球面のデータ」
実施例3の撮像光学系における非球面のデータを図3に倣って、図15に示す。
実施例3においては、第2レンズの両面および第6レンズの両面が非球面である。
図16(a)には、実施例3の撮像光学系の全系の焦点距離:f、Fno、全長:L、画角:Wを示し、第1群G1~第5群G5の各々の焦点距離:f1~f5、レンズ有効径:E1~E5を示す。
また、図16(c)に、実施例3の撮像光学系の条件式(1)~(5)のパラメータの値を示す。
図17には、実施例3の撮像光学系の収差図を図5に倣って示す。
図18は、実施例3の撮像光学系におけるゴースト光の振る舞いを、図6に倣って示す図である。
図18(a)は、物体側からの結像光束が撮像面ISで反射され、さらに第1レンズL1の物体側面で反射された撮像面由来のゴースト光の振る舞いを近軸光線につき示している。図示されたように、この場合のゴースト光は、撮像面ISの手前側、即ち「物体側」で収束し、発散しつつ撮像面ISに入射する。したがって、撮像面ISへの集光は回避され、撮像面由来のゴースト光の影響が軽減される。
【0045】
図18(b)は、物体側からの結像光束がフィルタF1の物体側面で反射され、さらに第1レンズL1の物体側面で反射されたフィルタ由来のゴースト光の振る舞いを、近軸光線につき示している。図示されたように、この場合のゴースト光も、撮像面ISの奥側、即ち「像側」に向かって収束し、収束途上で撮像面ISに入射する。したがって、撮像面ISへの集光は回避され、フィルタ由来のゴースト光の影響が軽減される。
【0046】
即ち、撮像面由来のゴースト光と、フィルタ由来のゴースト光は、それらの集束位置が、撮像面ISの物体側と像側とに分離し、撮像面IS上には小径のスポットとつぃて収束しないので、ゴースト光としての影響が有効に軽減される。
【0047】
実施例1ないし3に係る撮像光学系は収差図に示すように、各収差とも高いレベルで補正されており、球面収差、軸上色収差は問題にならないほど小さい.非点収差、像面湾曲も十分に小さく、図示されていないが倍率色収差も十分に小さく、コマ収差やその色差の乱れも最周辺部まで良く抑えられている。
【0048】
また、実施例1~3とも「半画角:65度以上の広画角」を実現している。
【0049】
以下に、この発明の撮像光学系用いた撮像装置の具体的な例として、カメラ装置として実施したデジタルカメラの実施形態と、ステレオカメラとして実施した実施形態を説明する。
【0050】
図19(a)、(b)に示すように、デジタルカメラ100は、筐体(カメラボディ)5に、撮像光学系である撮影レンズ1、ファインダ2、ストロボ(電子フラッシュライト)3、シャッタボタン4、電源スイッチ6、液晶モニタ7、操作ボタン8及びメモリカードスロット9等を装備している。
デジタルカメラ100のシステム構成は、図20に示すように、筐体5内に、中央演算装置(CPU)11、画像処理装置12、エリアセンサである受光素子13、信号処理装置14、半導体メモリ15及び通信カード16等を有している。
デジタルカメラ100は、撮像光学系としての撮影レンズ1と、CMOS等の(相補型金属酸化物半導体)撮像素子又はCCD(電荷結合素子)撮像素子等を用いてイメージセンサとして構成されたエリアセンサである受光素子13とを有しており、撮像光学系1によって結像される被写体像を受光素子13によって読み取る。
撮像光学系1として、上述した実施例1ないし実施例3の撮像光学系を用いることができる。このとき、受光素子13の受光面が上述の説明における撮像面である。
受光素子13の出力は、中央演算装置11によって制御される信号処理装置14によって処理され、デジタル画像情報に変換される。
信号処理装置14によってデジタル化された画像情報は、やはり中央演算装置11によって制御される画像処理装置12において所定の画像処理が施された後、不揮発性メモリ等の半導体メモリ15に記録される。
この場合、半導体メモリ15は、メモリカードスロット9に装填されたメモリカードや、デジタルカメラ本体にオンボードで内蔵された半導体メモリを用いることもできる。
液晶モニタ7には、撮影中の画像を表示することもできるし、半導体メモリ15に記録されている画像を表示することもできる。また、半導体メモリ15に記録した画像は、通信カードスロット(メモリカードスロット9と兼用することもできる)に装填した通信カード16等を介して外部へ送信することも可能である。
【0051】
撮像光学系である撮影レンズ1は、カメラの携帯時には、その対物面がレンズバリア(図示を省略されている。)により覆われており、ユーザが電源スイッチ6を操作して電源を投入すると、レンズバリアが開き、対物面が露出する構成となっている。
半導体メモリ15に記録した画像の液晶モニタ7への表示や、通信カード16等を介しての外部への送信は、操作ボタン8の操作により行う。半導体メモリ15及び通信カード16等は、メモリカードスロット9及び通信カードスロット等のような、それぞれ専用または汎用のスロットに装填して使用される。
図21に、この発明の撮像光学系を用いるカメラ装置の実施の1形態として、ステレオカメラを示す。
図21に示すように、ステレオカメラ200は、2つのカメラ装置100aおよび100bを有しており、これらカメラ装置100a、100bの撮像光学系として、実施例1ないし実施例3のような撮像光学系を用いている。
カメラ装置100a、100bとしては、例えば、図18図19に即して説明したカメラ装置100と同様の構成のものを用いることができるが、これに限定されるわけではない。
カメラ装置100a、100bから出力されるデジタル画像情報を、ステレオカメラ200に設けた画像処理部等で適宜補正や画像処理を施して出力することで、製造ラインや車両の制御等のセンシング技術に用いることができる。
以上に説明したように、この発明の撮像光学系は、撮像面由来のゴースト光のみならずフィルタ由来のゴースト光の影響を有効に軽減することができる。また、実施例1ないし3の如く半画角:65度以上と広画角で、性能良好であり、これを用いてカメラ装置等の撮像装置を構成したり、撮像装置を車載撮像装置として車輛に搭載したり、ドローン等の各種移動体に搭載することができる。
【0052】
なお、この発明の撮像装置がデジタルカメラに限定されることはなく、動画撮影を主としたビデオカメラや在来のいわゆる銀塩フィルムを用いるフィルムカメラ等を含む主として撮像専用のカメラ装置としても実施できることは言うまでもない。
【0053】
また、カメラ装置のみならず、携帯電話機やPDA(personal data assistant)などと称される携帯情報端末装置、さらにはこれらの機能を含む、いわゆるスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末装置を含む種々の情報装置に、デジタルカメラ等に相当する撮像機能が組み込まれることが多いが、このような情報装置も、デジタルカメラ等と実質的に同様の機能及び構成を含んでおり、このような情報装置に、上述した実施例1ないし実施例3の撮像光学系を用いることができる。
以上、発明の好ましい実施の形態について説明したが、この発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
この発明の実施の形態に記載された効果は、発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、発明による効果は「実施の形態に記載されたもの」に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
G1 第1群
G2 第2群
G3 第3群
G4 第4群
G5 第5群
S 開口絞り
F1 フィルタ
IS 撮像面
CG カバーガラス
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L45 第4レンズと第5レンズの接合レンズ
L6 第6レンズ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2019-211598号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21