(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146419
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20220928BHJP
F16C 33/80 20060101ALI20220928BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20220928BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20220928BHJP
F16J 15/40 20060101ALI20220928BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20220928BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C33/80
F16C19/06
F16J15/447
F16J15/40 C
F16J15/3232 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047362
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】片山 昭彦
【テーマコード(参考)】
3J006
3J042
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J006AE12
3J006AE16
3J006AE34
3J006AE41
3J006AE46
3J006CA01
3J042AA09
3J042AA12
3J042CA08
3J042CA10
3J042DA10
3J216AA02
3J216AA03
3J216AA12
3J216AB05
3J216AB38
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CA06
3J216CB03
3J216CB07
3J216CB12
3J216CB13
3J216CC03
3J216CC15
3J216CC35
3J216CC41
3J216CC51
3J216CC53
3J216CC68
3J216DA01
3J216DA11
3J701AA02
3J701AA12
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA73
3J701EA02
3J701EA03
3J701EA49
3J701FA13
3J701GA01
3J701GA21
(57)【要約】
【課題】雨水または泥水のような異物が軸受空間に侵入することを防ぐことができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】転がり軸受1は、外輪11と、内輪10と、複数の転動体12と、シール部材20と、スリンガ30と、らせん突起40とを備える。転がり軸受1の軸方向からの平面視において、らせん突起40の巻き方向は、外輪11の回転方向とは反対方向である。スリンガ30は、円筒部31と、フランジ部32と、リム部33とを含む。内輪10及び外輪11の他方とリム部33との間に、ラビリンス50が形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受であって、
第一軌道面を含む外輪と、
前記外輪の内側に配置されている内輪とを備え、前記内輪は、前記第一軌道面に対向する第二軌道面と含み、
前記第一軌道面と前記第二軌道面とに接触する複数の転動体と、
前記内輪と前記外輪との間に形成される軸受空間の両端開口をシールするシール部材と、
前記シール部材に対して前記転がり軸受の軸方向における外側に配置されているスリンガと、
らせん突起とを備え、
前記シール部材及び前記スリンガの一方は、前記外輪に固定されており、
前記らせん突起は、前記シール部材及び前記スリンガの前記一方に形成されており、
前記軸方向からの平面視において、前記らせん突起の内側端部から前記らせん突起の外側端部に向かう際の前記らせん突起の巻き方向は、前記外輪の回転方向とは反対方向であり、
前記スリンガは、前記内輪及び前記外輪の一方に固定されている円筒部と、前記円筒部に接続されており、かつ、前記転がり軸受の径方向及び周方向に延在するフランジ部と、前記内輪及び前記外輪の他方に近位する前記フランジ部の端部に接続されており、かつ、前記軸方向及び前記周方向に延在するリム部とを含み、
前記内輪及び前記外輪の前記他方と前記リム部との間に、ラビリンスが形成されている、転がり軸受。
【請求項2】
前記スリンガは、前記外輪に固定されており、
前記らせん突起は、前記軸方向における前記フランジ部の外側表面に形成されており、
前記ラビリンスは、前記内輪の外周面と前記リム部との間に形成されている、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記らせん突起と前記スリンガとは、単一部材として形成されている、請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記らせん突起に、一つ以上のスリットが形成されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記シール部材は、前記外輪に固定されており、
前記シール部材は、前記外輪に固定されている固定部と、前記固定部に接続されており、かつ、前記転がり軸受の前記径方向及び前記周方向に延在するシールリングと、前記シールリングに接続されており、かつ、前記内輪に接触するシールリップとを含み、
前記らせん突起は、前記軸方向における前記シールリングの外側表面に形成されている、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記らせん突起の頂部は、前記外輪の第一側面及び前記内輪の第二側面に対して、前記軸方向における内側方向に位置している、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の転がり軸受。
【請求項7】
転がり軸受であって、
第一軌道面を含む外輪と、
前記外輪の内側に配置されている内輪とを備え、前記内輪は、前記第一軌道面に対向する第二軌道面と含み、
前記第一軌道面と前記第二軌道面とに接触する複数の転動体と、
前記内輪と前記外輪との間に形成される軸受空間の両端開口をシールするシール部材と、
前記シール部材に対して前記転がり軸受の軸方向における外側に配置されているスリンガと、
複数の放射状突起とを備え、
前記シール部材及び前記スリンガの一方は、前記外輪に固定されており、
前記複数の放射状突起は、前記シール部材及び前記スリンガの前記一方に形成されており、
前記軸方向からの平面視において、前記転がり軸受の径方向に対する、前記複数の放射状突起の各々の内側端部から前記複数の放射状突起の各々の外側端部に向かう際の前記複数の放射状突起の各々の傾き方向は、前記外輪の回転方向であり、
前記スリンガは、前記内輪及び前記外輪の一方に固定されている円筒部と、前記円筒部に接続されており、かつ、前記転がり軸受の前記径方向及び周方向に延在するフランジ部と、前記内輪及び前記外輪の他方に近位する前記フランジ部の端部に接続されており、かつ、前記軸方向及び前記軸方向に延在するリム部とを含み、
前記内輪及び前記外輪の前記他方と前記リム部との間に、ラビリンスが形成されている、転がり軸受。
【請求項8】
前記複数の放射状突起と前記スリンガとは、単一部材として形成されている、請求項7に記載の転がり軸受。
【請求項9】
前記シール部材は、前記外輪に固定されている固定部と、前記固定部に接続されており、かつ、前記転がり軸受の前記径方向及び前記周方向に延在するシールリングと、前記シールリングに接続されており、かつ、前記内輪に接触するシールリップとを含み、
前記複数の放射状突起は、前記軸方向における前記シールリングの外側表面に形成されている、請求項7に記載の転がり軸受。
【請求項10】
前記複数の放射状突起の各々の頂部は、前記外輪の第一側面及び前記内輪の第二側面に対して、前記軸方向における内側方向に位置している、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013-145018号公報(特許文献1)は、固定輪としての内輪と、回転輪としての外輪と、複数の転動体と、シール部材と、スリンガとを備える転がり軸受を開示している。スリンガと外輪の内周面との間に隙間が形成されている。スリンガの環状部とシール部材の突起との間にラビリンスが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された転がり軸受では、スリンガと外輪の内周面との間に形成される隙間の長さは、スリンガの厚さしかない。そのため、この隙間によって、雨水または泥水のような異物が、内輪と外輪との間に形成される軸受空間に侵入することを防ぐことは難しい。また、特許文献1に開示された転がり軸受では、雨水または泥水のような異物が、ラビリンスを通って落下して、軸受空間に侵入することがある。そのため、ラビリンスによって、雨水または泥水のような異物が軸受空間に侵入することを防ぐことは難しい。本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、雨水または泥水のような異物が軸受空間に侵入することを防ぐことができる転がり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一の局面の転がり軸受は、外輪と、内輪と、複数の転動体と、シール部材と、スリンガと、らせん突起とを備える。外輪は、第一軌道面を含む。内輪は、外輪の内側に配置されている。内輪は、第一軌道面に対向する第二軌道面と含む。複数の転動体は、第一軌道面と第二軌道面とに接触する。シール部材は、内輪と外輪との間に形成される軸受空間の両端開口をシールする。スリンガは、シール部材に対して転がり軸受の軸方向における外側に配置されている。シール部材及びスリンガの一方は、外輪に固定されている。らせん突起は、シール部材及びスリンガの一方に形成されている。転がり軸受の軸方向からの平面視において、らせん突起の内側端部かららせん突起の外側端部に向かう際のらせん突起の巻き方向は、外輪の回転方向とは反対方向である。スリンガは、円筒部と、フランジ部と、リム部とを含む。円筒部は、内輪及び外輪の一方に固定されている。フランジ部は、円筒部に接続されており、かつ、転がり軸受の径方向及び周方向に延在している。リム部は、内輪及び外輪の他方に近位するフランジ部の端部に接続されており、かつ、転がり軸受の軸方向及び周方向に延在している。内輪及び外輪の他方とリム部との間に、ラビリンスが形成されている。
【0006】
本開示の第二の局面の転がり軸受は、外輪と、内輪と、複数の転動体と、シール部材と、スリンガと、複数の放射状突起とを備える。外輪は、第一軌道面を含む。内輪は、外輪の内側に配置されている。内輪は、第一軌道面に対向する第二軌道面と含む。複数の転動体は、第一軌道面と第二軌道面とに接触する。シール部材は、内輪と外輪との間に形成される軸受空間の両端開口をシールする。スリンガは、シール部材に対して転がり軸受の軸方向における外側に配置されている。シール部材及びスリンガの一方は、外輪に固定されている。複数の放射状突起は、シール部材及びスリンガの一方に形成されている。転がり軸受の軸方向からの平面視において、転がり軸受の径方向に対する、複数の放射状突起の各々の内側端部から複数の放射状突起の各々の外側端部に向かう際の複数の放射状突起の各々の傾き方向は、外輪の回転方向である。スリンガは、円筒部と、フランジ部と、リム部とを含む。円筒部は、内輪及び外輪の一方に固定されている。フランジ部は、円筒部に接続されており、かつ、転がり軸受の径方向及び周方向に延在している。リム部は、内輪及び外輪の他方に近位するフランジ部の端部に接続されており、かつ、転がり軸受の軸方向及び周方向に延在している。内輪及び外輪の他方とスリンガのリム部との間に、ラビリンスが形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の第一の局面の転がり軸受及び本開示の第二の局面の転がり軸受は、雨水または泥水のような異物が軸受空間に侵入することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1の転がり軸受の概略断面図である。
【
図2】実施の形態1の転がり軸受の左側面図である。
【
図3】実施の形態1の転がり軸受の右側面図である。
【
図4】実施の形態1の転がり軸受の概略部分拡大断面図である。
【
図5】実施の形態2の転がり軸受の概略部分拡大断面図である。
【
図6】実施の形態3の転がり軸受の概略部分拡大断面図である。
【
図7】実施の形態4の転がり軸受の概略断面図である。
【
図8】実施の形態4の転がり軸受の左側面図である。
【
図9】実施の形態4の転がり軸受の右側面図である。
【
図10】実施の形態5の転がり軸受の概略部分拡大断面図である。
【
図11】実施の形態6の転がり軸受の概略断面図である。
【
図12】実施の形態6の転がり軸受の左側面図である。
【
図13】実施の形態6の転がり軸受の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
(実施の形態1)
図1から
図4を参照して、実施の形態1の転がり軸受1を説明する。転がり軸受1は、例えば、アイドラプーリまたはテンションプーリのようなエンジン補機の駆動に用いられる。エンジン補機のプーリ用の転がり軸受1は、例えば、自動車のエンジンルームの下部に取り付けられることが多い。そのため、雨水または泥水のような異物が軸受空間15に侵入することを防止する必要がある。
【0011】
転がり軸受1は、外輪11と、内輪10と、複数の転動体12と、保持器13と、シール部材20と、スリンガ30と、らせん突起40とを備える。なお、以下の説明では、転がり軸受1の中心軸2に沿う方向を、転がり軸受1の軸方向と呼ぶ。転がり軸受1の中心軸2に垂直な方向を、転がり軸受1の径方向と呼ぶ。転がり軸受1の中心軸2を中心とする円の周方向を、転がり軸受1の周方向と呼ぶ。転がり軸受1の軸方向において複数の転動体12に近づく方向を、軸方向における内側方向と呼ぶ。転がり軸受1の軸方向において複数の転動体12から離れる方向を、軸方向における外側方向と呼ぶ。
【0012】
図4を参照して、外輪11は、第一軌道面11aと、一対の第一側面11sとを含む。第一軌道面11aは、外輪11の内周面の一部である。外輪11の内周面に溝11bが形成されてもよい。一対の第一側面11sは、各々、転がり軸受1の径方向及び周方向に延在している。一対の第一側面11sの各々の法線は、転がり軸受1の軸方向に沿ってもよい。一対の第一側面11sは、転がり軸受1の軸方向において互いに離間されている。一対の第一側面11sの間の距離は、転がり軸受1の幅を規定してもよい。外輪11は、例えば、JIS規格に定められるSUJ2鋼材のような軸受鋼で形成されている。外輪11の外周面に、例えば、プーリ(図示せず)が装着される。外輪11は、回転輪として機能する。転がり軸受1の動作時に、外輪11は、回転方向3に回転する。
【0013】
内輪10は、外輪11の内側に配置されている。内輪10は、第一軌道面11aに対向する第二軌道面10aと、一対の第二側面10sとを含む。第二軌道面10aは、内輪10の外周面の一部である。一対の第二側面10sは、各々、転がり軸受1の径方向及び周方向に延在している。一対の第二側面10sの各々の法線は、転がり軸受1の軸方向に沿ってもよい。一対の第二側面10sは、それぞれ、一対の第一側面11sと面一であってもよい。一対の第二側面10sは、転がり軸受1の軸方向において互いに離間されている。一対の第二側面10sの間の距離は、転がり軸受1の幅を規定してもよい。内輪10は、例えば、JIS規格に定められるSUJ2鋼材のような軸受鋼で形成されている。内輪10に、例えば、プーリ軸部材(図示せず)が固定される。内輪10は、固定輪として機能する。
【0014】
複数の転動体12は、外輪11の第一軌道面11aと内輪10の第二軌道面10aとに接触する。複数の転動体12は、第一軌道面11aと第二軌道面10aとの間に転動自在に配置されている。複数の転動体12は、例えば、JIS規格に定められるSUJ2鋼材のような軸受鋼で形成されている。本実施の形態では、複数の転動体12は複数のボールであり、かつ、転がり軸受1は深溝玉軸受である。複数の転動体12は複数の円筒ころであってもよく、かつ、転がり軸受1は円筒ころ軸受であってもよい。
【0015】
保持器13は、複数の転動体12を保持する。複数の転動体12は、保持器13によって、転がり軸受1の周方向に沿って、互いに間隔を空けて配列されている。軸受空間15が、内輪10と外輪11との間に形成される。
【0016】
シール部材20及びスリンガ30の一方(本実施の形態では、スリンガ30)は、外輪11に固定されている。本実施の形態では、シール部材20及びスリンガ30の他方(本実施の形態では、シール部材20)も、外輪11に固定されている。すなわち、シール部材20及びスリンガ30の両方が、外輪11に固定されている。
【0017】
シール部材20は、軸受空間15の両端開口をシールする。シール部材20は、芯金21と、芯金21を覆う被覆部22とを含む。芯金21は、鋼のような金属で形成されている。芯金21は、例えば、鋼板をプレス加工することによって得られる。被覆部22は、ニトリルゴム、アクリルゴムまたはフッ素ゴムのような、柔軟性および耐摩耗性に優れたゴム材料で形成されている。
【0018】
シール部材20は、固定部23と、シールリング24と、シールリップ25とを含む。
【0019】
シール部材20は、外輪11に固定されている。具体的には、固定部23は、外輪11に固定されている。例えば、固定部23は、外輪11の溝11bに嵌合されている。固定部23は、外輪11に近位するシールリング24の端部に接続されている。固定部23は、転がり軸受1の周方向に沿って延在している。
【0020】
シールリング24は、固定部23に接続されている。シールリング24は、主に、転がり軸受1の径方向及び周方向に延在している環状部材である。
【0021】
シールリップ25は、シールリング24に接続されている。具体的には、シールリップ25は、内輪10に近位するシールリング24の端部に接続されている。シールリップ25は、固定部23に接続されているシールリング24の一方の端部とは反対側のシールリング24の他方の端部に接続されている。シールリップ25は、転がり軸受1の軸方向に沿って延在している。シールリップ25は、内輪10に接触する。具体的には、シールリップ25は、内輪10の外周面に弾性接触している。特定的には、シールリップ25は、内輪10の外周面に形成されている側壁10bに弾性接触している。シール部材20が外輪11とともに転がり軸受1の中心軸2のまわりを回転すると、シールリップ25は、側壁10bに摺接しながら転がり軸受1の中心軸2のまわりを回転する。こうして、シール部材20は、軸受空間15の両端開口をシールすることができる。
【0022】
スリンガ30は、内輪10及び外輪11の一方(本実施の形態では、外輪11)に固定されている。スリンガ30は、鋼のような金属で形成されている。スリンガ30は、例えば、鋼板をプレス加工することによって得られる。
【0023】
スリンガ30は、円筒部31と、フランジ部32と、リム部33とを含む。
【0024】
円筒部31は、内輪10及び外輪11の一方(本実施の形態では、外輪11)に固定されている。例えば、円筒部31を外輪11の内周面の端部に圧入することによって、円筒部31は、外輪11の内周面に固定される。円筒部31は、内輪10及び外輪11の一方(本実施の形態では、外輪11)に近位するフランジ部32の端部に接続されている。本実施の形態では、円筒部31は、外輪11に近位するフランジ部32の端部に接続されている。円筒部31は、転がり軸受1の軸方向及び周方向に沿って延在している。円筒部31は、フランジ部32から、転がり軸受1の軸方向に突出している。円筒部31は、フランジ部32から、転がり軸受1の軸方向における内側方向に突出している。すなわち、円筒部31は、転がり軸受1の軸方向において、フランジ部32から複数の転動体12に向けて突出している。転がり軸受1の軸方向における円筒部31の長さは、フランジ部32の厚さより大きくてもよい。
【0025】
フランジ部32は、円筒部31に接続されている。フランジ部32は、転がり軸受1の径方向及び周方向に延在している環状部材である。転がり軸受1の軸方向において、フランジ部32は、シールリング24に面している。
【0026】
リム部33は、内輪10及び外輪11の他方(本実施の形態では、内輪10)に近位するフランジ部32の端部に接続されている。リム部33は、転がり軸受1の軸方向及び周方向に延在している。リム部33は、フランジ部32から、転がり軸受1の軸方向に突出している。リム部33は、フランジ部32から、転がり軸受1の軸方向における内側方向に突出している。すなわち、リム部33は、転がり軸受1の軸方向において、フランジ部32から複数の転動体12に向けて突出している。転がり軸受1の軸方向におけるリム部33の長さは、フランジ部32の厚さより大きくてもよい。
【0027】
スリンガ30は、シール部材20に対して、転がり軸受1の軸方向における外側に配置されている。すなわち、スリンガ30は、転がり軸受1の軸方向において、シール部材20よりも、複数の転動体12から離れて配置されている。フランジ部32は、シールリング24に対して、転がり軸受1の軸方向における外側に配置されている。すなわち、フランジ部32は、転がり軸受1の軸方向において、シールリング24よりも、複数の転動体12から離れて配置されている。
【0028】
内輪10及び外輪11の他方(本実施の形態では、内輪10)とリム部33との間に、ラビリンス50が形成されている。特定的には、ラビリンス50は、内輪10の外周面とのリム部33との間に形成されている。
【0029】
らせん突起40は、シール部材20及びスリンガ30の一方(本実施の形態では、スリンガ30)に形成されている。特定的には、らせん突起40は、転がり軸受1の軸方向におけるフランジ部32の外側表面に形成されている。すなわち、らせん突起40は、転がり軸受1の軸方向において複数の転動体12から遠位する表面であるフランジ部32の外側表面に形成されている。らせん突起40は、シールリング24に面するフランジ部32の内側表面とは反対側のフランジ部32の外側表面に形成されている。
【0030】
らせん突起40は、例えば、鋼のような金属で形成されている。らせん突起40は、スリンガ30を形成する材料と同じ材料で形成されてもよいし、スリンガ30を形成する材料とは異なる材料で形成されてもよい。らせん突起40は、例えば、溶接、接着またはねじ固定などによって、シール部材20及びスリンガ30の一方(本実施の形態では、スリンガ30)に取り付けられる。本実施の形態では、らせん突起40は、スリンガ30とは別部材として形成されている。
図2及び
図3に示されるように、転がり軸受1の軸方向からの平面視において、らせん突起40の内側端部41かららせん突起40の外側端部42に向かう際のらせん突起40の巻き方向は、外輪11の回転方向3とは反対方向である。
【0031】
本実施の形態の転がり軸受1の効果を説明する。
【0032】
本実施の形態の転がり軸受1は、外輪11と、内輪10と、複数の転動体12と、シール部材20と、スリンガ30と、らせん突起40とを備える。外輪11は、第一軌道面11aを含む。内輪10は、外輪11の内側に配置されている。内輪10は、第一軌道面11aに対向する第二軌道面10aと含む。複数の転動体12は、第一軌道面11aと第二軌道面10aとに接触する。シール部材20は、内輪10と外輪11との間に形成される軸受空間15の両端開口をシールする。スリンガ30は、シール部材20に対して転がり軸受1の軸方向における外側に配置されている。シール部材20及びスリンガ30の一方は、外輪11に固定されている。らせん突起40は、シール部材20及びスリンガ30の一方に形成されている。転がり軸受1の軸方向からの平面視において、らせん突起40の内側端部41かららせん突起40の外側端部42に向かう際のらせん突起40の巻き方向は、外輪11の回転方向3とは反対方向である。スリンガ30は、円筒部31と、フランジ部32と、リム部33とを含む。円筒部31は、内輪10及び外輪11の一方に固定されている。フランジ部32は、円筒部31に接続されており、かつ、転がり軸受1の径方向及び周方向に延在している。リム部33は、内輪10及び外輪11の他方に近位するフランジ部32の端部に接続されており、かつ、転がり軸受1の軸方向及び周方向に延在している。内輪10及び外輪11の他方とリム部33との間に、ラビリンス50が形成されている。
【0033】
そのため、ラビリンス50は、転がり軸受1の軸方向に相対的に長く延在している。さらに、らせん突起40は、外輪11の回転によって生じる遠心力により、雨水または泥水のような異物をらせん突起40に沿って吹き飛ばすことができる。本実施の形態の転がり軸受1は、雨水または泥水のような異物が軸受空間15に侵入することを防ぐことができる。
【0034】
本実施の形態の転がり軸受1では、スリンガ30は、外輪11に固定されている。らせん突起40は、転がり軸受1の軸方向におけるフランジ部32の外側表面に形成されている。ラビリンス50は、内輪10の外周面とリム部33との間に形成されている。そのため、本実施の形態の転がり軸受1は、雨水または泥水のような異物が軸受空間15に侵入することを防ぐことができる。
【0035】
(実施の形態2)
図5を参照して、実施の形態2の転がり軸受1bを説明する。本実施の形態の転がり軸受1bは、実施の形態1の転がり軸受1と同様の構成を備えるとともに、同様の効果を奏するが、主に以下の点で異なる。
【0036】
転がり軸受1bでは、らせん突起40とスリンガ30とは、単一部材として形成されている。例えば、らせん突起40とフランジ部32とは、鋼板をプレス加工することによって得られる。そのため、転がり軸受1bの製造工程数が減少して、転がり軸受1bのコストが低減され得る。
【0037】
(実施の形態3)
図6を参照して、実施の形態3の転がり軸受1cを説明する。本実施の形態の転がり軸受1cは、実施の形態1の転がり軸受1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0038】
転がり軸受1cでは、らせん突起40の頂部40tは、外輪11の第一側面11s及び内輪10の第二側面10sに対して、転がり軸受1cの軸方向における内側方向に位置している。すなわち、転がり軸受1cの軸方向において、らせん突起40の頂部40tは、外輪11の第一側面11s及び内輪10の第二側面10sよりも、複数の転動体12に近位している。
【0039】
円筒部31は、フランジ部32から、転がり軸受1cの軸方向における外側方向に突出している。すなわち、円筒部31は、転がり軸受1cの軸方向において、複数の転動体12から離れる方向にフランジ部32から突出している。リム部33は、フランジ部32から、転がり軸受1cの軸方向における外側方向に突出している。すなわち、リム部33は、転がり軸受1cの軸方向において、複数の転動体12から離れる方向にフランジ部32から突出している。
【0040】
らせん突起40の頂部40tは、円筒部31の頂部に対して、転がり軸受1cの軸方向における内側方向に位置してもよい。すなわち、転がり軸受1cの軸方向において、らせん突起40の頂部40tは、円筒部31の頂部よりも、複数の転動体12に近位してもよい。らせん突起40の頂部40tは、リム部33の頂部に対して、転がり軸受1cの軸方向における内側方向に位置してもよい。すなわち、転がり軸受1cの軸方向において、らせん突起40の頂部40tは、リム部33の頂部よりも、複数の転動体12に近位してもよい。
【0041】
本実施の形態の転がり軸受1cは、実施の形態1の転がり軸受1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0042】
本実施の形態の転がり軸受1cでは、らせん突起40の頂部40tは、外輪11の第一側面11s及び内輪10の第二側面10sに対して、転がり軸受1cの軸方向における内側方向に位置している。そのため、転がり軸受1cの軸方向における転がり軸受1cのサイズが減少する。転がり軸受1cが小型化され得る。
【0043】
(実施の形態4)
図7から
図9を参照して、実施の形態4の転がり軸受1dを説明する。本実施の形態の転がり軸受1dは、実施の形態1の転がり軸受1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0044】
転がり軸受1dでは、らせん突起40に、一つ以上のスリット43が形成されている。特定的には、らせん突起40に、複数のスリット43が形成されてもよい。
【0045】
本実施の形態の転がり軸受1dは、実施の形態1の転がり軸受1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0046】
本実施の形態の転がり軸受1dでは、らせん突起40に、一つ以上のスリット43が形成されている。そのため、外輪11の回転によって吹き飛ばされる雨水または泥水のような異物はスリット43を通過する。雨水または泥水のような異物は、より短時間で効率よく転がり軸受1dの外部に排出され得る。
【0047】
(実施の形態5)
図10を参照して、実施の形態5の転がり軸受1eを説明する。本実施の形態の転がり軸受1eは、実施の形態1の転がり軸受1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0048】
転がり軸受1eでは、シール部材20及びスリンガ30の一方(本実施の形態では、シール部材20)は、外輪11に固定されている。らせん突起40は、シール部材20及びスリンガ30の一方(本実施の形態では、シール部材20)に形成されている。特定的には、らせん突起40は、転がり軸受1eの軸方向におけるシールリング24の外側表面に形成されている。シールリング24の外側表面は、スリンガ30(フランジ部32)に面している。シールリング24の外側表面は、転がり軸受1の軸方向において複数の転動体12から遠位するシールリング24の表面である。
【0049】
スリンガ30は、内輪10及び外輪11の一方(本実施の形態では、内輪10)に固定されている。円筒部31は、内輪10及び外輪11の一方(本実施の形態では、内輪10)に固定されている。例えば、円筒部31を内輪10の外周面の端部に圧入することによって、円筒部31は、内輪10の外周面に固定される。円筒部31は、内輪10及び外輪11の一方(本実施の形態では、内輪10)に近位するフランジ部32の端部に接続されている。リム部33は、内輪10及び外輪11の他方(本実施の形態では、外輪11)に近位するフランジ部32の端部に接続されている。ラビリンス50は、内輪10及び外輪11の他方(本実施の形態では、外輪11)とリム部33との間に形成されている。特定的には、ラビリンス50は、外輪11の内周面とリム部33との間に形成されている。
【0050】
本実施の形態の転がり軸受1eの効果を説明する。
【0051】
本実施の形態の転がり軸受1eでは、シール部材20は、外輪11に固定されている。シール部材20は、外輪11に固定されている固定部23と、固定部23に接続されており、かつ、転がり軸受1eの径方向及び周方向に延在するシールリング24と、シールリング24に接続されており、かつ、内輪10に接触するシールリップ25とを含む。らせん突起40は、転がり軸受1eの軸方向におけるシールリング24の外側表面に形成されている。
【0052】
そのため、仮に雨水または泥水のような異物がラビリンス50を通過してシール部材20とスリンガ30の間の空間に侵入したとしても、らせん突起40は、外輪11の回転によって生じる遠心力により、雨水または泥水のような異物を転がり軸受1eの外部に排出することができる。本実施の形態の転がり軸受1eは、雨水または泥水のような異物が軸受空間15に侵入することを防ぐことができる。
【0053】
(実施の形態6)
図11から
図13を参照して、実施の形態6の転がり軸受1fを説明する。本実施の形態の転がり軸受1fは、実施の形態1の転がり軸受1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0054】
本実施の形態の転がり軸受1fは、実施の形態1らせん突起40に代えて、複数の放射状突起45を備えている。複数の放射状突起45は、シール部材20及びスリンガ30の一方(本実施の形態では、スリンガ30)に形成されている。特定的には、複数の放射状突起45は、転がり軸受1fの軸方向におけるフランジ部32の外側表面に形成されている。すなわち、複数の放射状突起45は、転がり軸受1fの軸方向において複数の転動体12から遠位する表面であるフランジ部32の外側表面に形成されている。複数の放射状突起45は、シールリング24に面するフランジ部32の内側表面とは反対側のフランジ部32の外側表面に形成されている。転がり軸受1fの軸方向からの平面視において、転がり軸受1fの径方向に対する、複数の放射状突起45の各々の内側端部46から複数の放射状突起45の各々の外側端部47に向かう際の複数の放射状突起45の各々の傾き方向は、外輪11の回転方向3である。
【0055】
本実施の形態の変形例を説明する。実施の形態2と同様に、複数の放射状突起45とスリンガ30とは、単一部材として形成されてもよい。実施の形態3と同様に、複数の放射状突起45の各々の頂部は、外輪11の第一側面11s及び内輪10の第二側面10sに対して、転がり軸受1fの軸方向における内側方向に位置してもよい。実施の形態5と同様に、複数の放射状突起45は、シール部材20に形成されてもよい。特定的には、複数の放射状突起45は、シールリング24に形成されてもよい。
【0056】
本実施の形態の転がり軸受1fは、実施の形態1の転がり軸受1の効果と同様の以下の効果を奏する。
【0057】
本実施の形態の転がり軸受1fは、外輪11と、内輪10と、複数の転動体12と、シール部材20と、スリンガ30と、複数の放射状突起45とを備える。外輪11は、第一軌道面11aを含む。内輪10は、外輪11の内側に配置されている。内輪10は、第一軌道面11aに対向する第二軌道面10aと含む。複数の転動体12は、第一軌道面11aと第二軌道面10aとに接触する。シール部材20は、内輪10と外輪11との間に形成される軸受空間15の両端開口をシールする。スリンガ30は、シール部材20に対して転がり軸受1fの軸方向における外側に配置されている。シール部材20及びスリンガ30の一方は、外輪11に固定されている。複数の放射状突起45は、シール部材20及びスリンガ30の一方に形成されている。転がり軸受1fの軸方向からの平面視において、転がり軸受1fの径方向に対する、複数の放射状突起45の各々の内側端部46から複数の放射状突起45の各々の外側端部47に向かう際の複数の放射状突起45の各々の傾き方向は、外輪11の回転方向3である。スリンガ30は、円筒部31と、フランジ部32と、リム部33とを含む。円筒部31は、内輪10及び外輪11の一方に固定されている。フランジ部32は、円筒部31に接続されており、かつ、転がり軸受1fの径方向及び周方向に延在している。リム部33は、内輪10及び外輪11の他方に近位するフランジ部32の端部に接続されており、かつ、転がり軸受1fの軸方向及び周方向に沿って延在している。内輪10及び外輪11の他方とリム部33との間に、ラビリンス50が形成されている。
【0058】
そのため、ラビリンス50は、転がり軸受1fの軸方向に相対的に長く延在している。さらに、複数の放射状突起45は、外輪11の回転によって生じる遠心力により、雨水または泥水のような異物を複数の放射状突起45に沿って吹き飛ばすことができる。本実施の形態の転がり軸受1fは、雨水または泥水のような異物が軸受空間15に侵入することを防ぐことができる。
【0059】
本実施の形態の転がり軸受1fでは、複数の放射状突起45とスリンガ30とは、単一部材として形成されてもよい。そのため、転がり軸受1fの製造工程数が減少して、転がり軸受1fのコストが低減され得る。
【0060】
本実施の形態の転がり軸受1fでは、シール部材20は、外輪11に固定されている固定部23と、固定部23に接続されており、かつ、転がり軸受1fの径方向及び周方向に延在するシールリング24と、シールリング24に接続されており、かつ、内輪10に接触するシールリップ25とを含む。複数の放射状突起45は、転がり軸受1fの軸方向におけるシールリング24の外側表面に形成されてもよい。そのため、本実施の形態の転がり軸受1fは、雨水または泥水のような異物が軸受空間15に侵入することを防ぐことができる。
【0061】
本実施の形態の転がり軸受1fでは、複数の放射状突起45の各々の頂部は、外輪11の第一側面11s及び内輪10の第二側面10sに対して、転がり軸受1fの軸方向における内側方向に位置してもよい。そのため、転がり軸受1fの軸方向における転がり軸受1fのサイズが減少する。転がり軸受1fが小型化され得る。
【0062】
今回開示された実施の形態1-6はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態1-6の少なくとも二つを組み合わせてもよい。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0063】
1,1b,1c,1d,1e,1f 転がり軸受、2 中心軸、3 回転方向、10 内輪、10a 第二軌道面、10b 側壁、10s 第二側面、11 外輪、11a 第一軌道面、11b 溝、11s 第一側面、12 転動体、13 保持器、15 軸受空間、20 シール部材、21 芯金、22 被覆部、23 固定部、24 シールリング、25 シールリップ、30 スリンガ、31 円筒部、32 フランジ部、33 リム部、40 らせん突起、40t 頂部、41 内側端部、42 外側端部、43 スリット、45 放射状突起、46 内側端部、47 外側端部、50 ラビリンス。