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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146475
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20220928BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20220928BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220928BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220928BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L7/00
C08K3/04
B60C1/00 B
B60C1/00 Z
B60C15/06 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047455
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】柏野 智洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA06
3D131AA12
3D131AA19
3D131BA05
3D131BA07
3D131BC02
3D131BC09
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002BB151
4J002DA036
4J002DA037
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】タイヤリサイクルのために再生カーボンブラック(再生CB)をゴム組成物に配合すると、タイヤの強度や発熱性等が大幅に低下するという問題点がある。
【解決手段】ジエン系ゴム、カーボンブラック(CB)および再生CBを含み、CBのNSAが30~90m/gであり、かつDBP吸油量が70~140ml/100gであり、再生CBのNSAが65~95m/gであり、かつDBP吸油量が75~105ml/100gであり、CBおよび再生CBの合計のカーボンブラック総量が、ジエン系ゴム100質量部に対して30~130質量部であり、カーボンブラック総量のうち、再生CBの割合が3~30質量%であるタイヤ用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともジエン系ゴム、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含むタイヤ用ゴム組成物であって、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAが30~90m/gであり、かつDBP吸油量が70~140ml/100gであり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAが65~95m/gであり、かつDBP吸油量が75~105ml/100gであり、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計のカーボンブラック総量(但し前記再生カーボンブラックに含まれる灰分を除く)が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して30~130質量部であり、
前記カーボンブラック総量のうち、前記再生カーボンブラックの割合(但し前記再生カーボンブラックに含まれる灰分を除く)が、3~30質量%である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム100質量部中、天然ゴムの割合が30質量部以上であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびタイヤに関するものであり、詳しくはカーボンブラック総量の一部を再生カーボンブラックに置換しても、破断強度を維持しつつ、低発熱性を達成し得るタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の保全や環境保護が注目される中、タイヤにおいてもリサイクル率の向上が求められている。そこで廃タイヤなど使用済みのゴム製品を熱分解して得られる再生カーボンブラックの使用が検討されている(例えば下記特許文献1参照)。
しかし再生カーボンブラックにはタイヤの原材料である補強材、タイヤコード等由来の不純物が含まれているため、タイヤの強度や発熱性等が大幅に低下するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6553959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的は、カーボンブラック総量の一部を再生カーボンブラックに置換しても、破断強度を維持しつつ、低発熱性を達成し得るタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、少なくともジエン系ゴム、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含むタイヤ用ゴム組成物において、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAおよびDBP吸油量を特定の範囲に定め、かつ再生カーボンブラックの配合量を適切な範囲に定めることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0006】
すなわち本発明は、少なくともジエン系ゴム、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含むタイヤ用ゴム組成物であって、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAが30~90m/gであり、かつDBP吸油量が70~140ml/100gであり、
前記再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAが65~95m/gであり、かつDBP吸油量が75~105ml/100gであり、
前記カーボンブラックおよび前記再生カーボンブラックの合計のカーボンブラック総量(但し前記再生カーボンブラックに含まれる灰分を除く)が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して30~130質量部であり、
前記カーボンブラック総量のうち、前記再生カーボンブラックの割合(但し前記再生カーボンブラックに含まれる灰分を除く)が、3~30質量%である
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、少なくともジエン系ゴム、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含むタイヤ用ゴム組成物において、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAおよびDBP吸油量を特定の範囲に定め、かつ再生カーボンブラックの配合量を適切な範囲に定めているので、カーボンブラック総量の一部を再生カーボンブラックに置換しても、破断強度を維持しつつ、低発熱性を達成し得るタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、とくに制限されないが、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
なお、本発明の前記効果が向上するという観点から、本発明で使用されるジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、NRの配合量が30質量部以上、好ましくは30~50質量部であるのがよい。
【0010】
(カーボンブラック)
本発明で使用するカーボンブラック(CB)は、窒素吸着比表面積NSAが30~90m/gであり、かつDBP吸油量が70~140ml/100gである。
CBのNSAが30m/g未満であると破断強度が低下し、90m/gを超えると低発熱性が得られない。
CBのDBP吸油量が70ml/100g未満であると破断強度が低下し、140ml/100gを超えると低発熱性が悪化する。
本発明において、CBのNSAは30~70m/gが好ましく、DBP吸油量は80~120ml/100gが好ましい。
【0011】
(再生カーボンブラック)
本発明で使用する再生カーボンブラック(再生CB)は、例えば廃タイヤの熱分解を経て生成される再生CBであることができる。廃タイヤの熱分解は公知の方法にしたがって行うことができる。例えば、650℃以上の温度の熱分解法が挙げられる。
本発明で使用する再生CBは、窒素吸着比表面積NSAが65~95m/gであり、かつDBP吸油量が75~105ml/100gである。再生CBのNSAおよびDBP吸油が前記範囲を外れると、本発明の効果を奏することができない。
なお、本発明における再生CBは市販されているものを利用することができ、例えばEnrestec社製商品名PB365が挙げられる。PB365は、廃タイヤの熱分解を経て生成される再生CBであり、NSAが76m/gであり、DBP吸油量が88ml/100gである。また、PB365は灰分を17質量%程度含んでいる。前記灰分に含まれる代表的な元素組成は、以下の通りである。
【0012】
【表1】
【0013】
なお本発明において、NSAは、JIS K6217-2に準拠し、DBP吸油量はASTM D2414に準拠し、灰分は、公知のICP法により測定される。
【0014】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、少なくとも前記ジエン系ゴム、前記CBおよび前記再生CBを含み、前記CBおよび前記再生CBの合計のカーボンブラック総量(但し前記再生CBに含まれる灰分を除く)が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して30~130質量部(好ましくは60~100質量部)であり、前記カーボンブラック総量のうち、前記再生CBの割合(但し前記再生CBに含まれる灰分を除く)が、3~30質量%(好ましくは5~15質量%)であることを特徴とする。
前記カーボンブラック総量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し30質量部未満であると、破断強度が低下し、逆に130質量部を超えると低発熱性が悪化する。
前記カーボンブラック総量のうち、前記再生CBの割合が3質量%未満であると、低発熱性が悪化し、逆に30質量%を超えると破断強度が悪化する。
【0015】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤;樹脂;硬化剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0016】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック総量の一部を再生カーボンブラックに置換しても、破断強度を維持しつつ、低発熱性を達成し得ることから、タイヤのケーシング部材(アンダートレッド、サイドトレッド、リムクッション等)に好適に用いられ得る。また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【実施例0017】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0018】
標準例1~2、実施例1~6および比較例1~8
サンプルの調製
表2に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で150℃で30分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られた加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
【0019】
破断強度(TB):JIS K 6251に従い、室温で試験した。結果は標準例1または2の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、破断強度に優れることを示す。
tanδ(60℃):JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。結果は、標準例1または2の値を100として指数表示した。指数が小さいほど、低発熱性であることを示す。
なお、比較例1~4および実施例1~3は標準例1と比較され、比較例5~8および実施例4~6は標準例2と比較される。
【0020】
結果を表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】
*1:NR(PT.KIRANA SAPTA製SIR20)
*2:SBR(ZSエラストマー株式会社製 Nipol 1502)
*3:BR(ZSエラストマー株式会社製 Nipol BR1220)
*4:GPFカーボンブラック1(日鉄カーボン株式会社製ニテロン#GN、窒素吸着比表面積(NSA)=32m/g、DBP吸油量=82ml/100g)
*5:FEFカーボンブラック2(日鉄カーボン株式会社製ニテロン#10N、窒素吸着比表面積(NSA)=40m/g、DBP吸油量=120ml/100g)
*6:SAFカーボンブラック3(東海カーボン株式会社製シースト9M、窒素吸着比表面積(NSA)=150m/g、DBP吸油量=113ml/100g)
*7:SRFカーボンブラック4(東海カーボン株式会社製シーストG-FY、窒素吸着比表面積(NSA)=27m/g、DBP吸油量=65ml/100g)
*8:再生カーボンブラック(Enrestec社製商品名PB365、窒素吸着比表面積(NSA)=76m/g、DBP吸油量=88ml/100g)
*9:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*10:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*11:老化防止剤(EASTMAN社製6PPD)
*12:オイル(昭和シェル石油株式会社製エキストラクト4号S)
*13:硫黄(四国化成工業株式会社製ミュークロンOT-20)
*14:加硫促進剤TBBS(三新化学工業株式会社製サンセラーNS-G)
【0023】
表2の結果から、実施例1~6のゴム組成物は、少なくともジエン系ゴム、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックを含むタイヤ用ゴム組成物において、カーボンブラックおよび再生カーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAおよびDBP吸油量を特定の範囲に定め、かつ再生カーボンブラックの配合量を適切な範囲に定めているので、標準例1または2のゴム組成物に比べ、カーボンブラック総量の一部を再生カーボンブラックに置換しても、破断強度を維持しつつ、低発熱性を達成し得ることが分かる。
一方、比較例1、5は、カーボンブラック総量のうち、再生カーボンブラックの割合(但し前記再生カーボンブラックに含まれる灰分を除く)が約37.2質量%であるので(PB365の配合量25質量部のうち、灰分が17質量%であるので、カーボンブラック総量は、CB35質量部+(再生CB25質量部-再生CB灰分4.25質量部)=55.75質量部であり、再生CBの割合は、20.75質量部/55.75質量部 × 100=37.2質量%となる)、破断強度が悪化した。
比較例2、6は、配合したカーボンブラックの全てが再生カーボンブラックであるので、破断強度が悪化した。
比較例3、7は、配合したカーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAが本発明で規定する上限を超えているので、発熱性が悪化した。
比較例4、8は、配合したカーボンブラックの窒素吸着比表面積NSAが本発明で規定する下限未満であるので、破断強度が悪化した。