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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146476
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】フィルタおよび高周波装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/20 20060101AFI20220928BHJP
   H01P 7/10 20060101ALI20220928BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01P1/20 A
H01P7/10
H01P3/12 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047459
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】北條 皓也
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆志
【テーマコード(参考)】
5J006
5J014
【Fターム(参考)】
5J006HC06
5J006HC12
5J006JA01
5J006LA02
5J006ND03
5J014DA06
(57)【要約】
【課題】共振器間の結合係数を大きくすること。
【解決手段】フィルタは、第1誘電体層12dと、第2誘電体層12eと、第1誘電体層に対し第2誘電体層と反対側に設けられた第1導電体層14dと、第1誘電体層を貫通する複数の第1導電体ポスト16dと、複数の第1導電体ポストに囲まれ第1中心50bを有する第1空間11bと、第2誘電体層に対し第1誘電体層と反対側に設けられ、第2誘電体層に接する第2導電体層14fと、第2誘電体層を貫通する導電体ポスト16eと、複数の第2導電体ポストに囲まれた第2中心50cを有する第2空間11cと、平面視において第1中心および第2中心の両側に設けられ、第1中心および第2中心に重ならない一対の開口18eを有し、第1誘電体層と第2誘電体層との間に設けられ、第1誘電体層および第2誘電体層に接する第3導電体層14eとを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1誘電体層と、
前記第1誘電体層に積層された第2誘電体層と、
前記第1誘電体層に対し前記第2誘電体層と反対側に設けられ、前記第1誘電体層に接する第1導電体層と、
前記第1誘電体層を貫通し、一端が前記第1導電体層に接する複数の第1導電体ポストと、
平面視において前記複数の第1導電体ポストに囲まれ、第1中心を有する第1空間と、
前記第2誘電体層に対し前記第1誘電体層と反対側に設けられ、前記第2誘電体層に接する第2導電体層と、
前記第2誘電体層を貫通し、一端が前記第2導電体層に接する複数の第2導電体ポストと、
平面視において前記複数の第2導電体ポストに囲まれ、第2中心を有する第2空間と、
平面視において前記第1中心および前記第2中心の両側に設けられ、前記第1中心および前記第2中心に重ならない一対の開口を有し、前記第1誘電体層と前記第2誘電体層との間に設けられ、前記第1誘電体層、前記第2誘電体層、前記複数の第1導電体ポストの他端および前記複数の第2導電体ポストの他端に接する第3導電体層と、
を備えるフィルタ。
【請求項2】
平面視において前記一対の開口は前記第1中心および前記第2中心の少なくとも一方に対し略対称である請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記第1空間および前記第2空間の平面形状は略円形状である請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
平面視において前記一対の開口は前記第1空間の外周および/または前記第2空間の外周に沿って湾曲する請求項3に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記一対の開口は、前記略円形状の中心を中心とする2つの円弧と、前記略円形状の中心を通る2つの直線と、により画定される請求項3に記載のフィルタ。
【請求項6】
平面視において、前記一対の開口の各々の重心は、前記略円形状の中心と前記第1空間の平面形状および前記第2空間の平面形状のうち小さい方の平面形状の外周との中点をつなぐ線より外側に位置する請求項3から5のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記第2導電体層は、平面視において、前記第2空間内に設けられ、前記第2中心の両側に設けられ、前記第2中心および前記一対の開口に重ならない別の一対の開口を有する請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記第2中心から前記一対の開口の各々の重心に至る第1方向と、前記第2中心から前記別の一対の開口の各々の重心に至る第2方向と、のなす角度は45°以上かつ135°以下である請求項7に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記第1導電体層、前記第3導電体層、前記複数の第1導電体ポストおよび前記第1空間内の前記第1誘電体層は第1共振器を形成し、
前記第2導電体層、前記第3導電体層、前記複数の第2導電体ポストおよび前記第1空間内の前記第2誘電体層は第2共振器を形成する請求項1から8のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項10】
前記第1共振器および前記第2共振器の共振モードはTE01モードである請求項9に記載のフィルタ。
【請求項11】
前記第3誘電体層上に設けられ、平面視において前記一対の開口に重なり、互に接続される一対の伝送線路を備える請求項1から10のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のフィルタと、
前記第2誘電体層上に設けられ、前記一対の開口と高周波的に接続された放射素子と、
を備える高周波装置。
【請求項13】
前記放射素子に対し対角に設けられ、前記フィルタから前記放射素子に伝送される高周波信号の一部を分岐する一対のカプラを備え、
前記第1空間および前記第2空間の平面形状は略円形状であり、前記フィルタは、前記放射素子に対し別の対角に一対設けられる請求項12記載の高周波装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタおよび高周波装置に関し、例えば誘電体層を貫通する導電体ポストを有するフィルタおよび高周波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波等で用いられる導波管フィルタの金属壁の代わりに、複数の導電体ポストを壁として用いるSIW(Substrate Integrated Waveguide)フィルタが知られている。導電体ポストで閉じられた空間で共振器を形成し、共振器を平面方向に配列することでフィルタ装置とすることが知られている(例えば特許文献1)。導電体ポストで閉じられた共振器を、結合窓を有する導電体層を介し積層することが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-207167号公報
【特許文献2】特開2018-191170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層された共振器間の結合係数を大きくすることが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、共振器間の結合係数を大きくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1誘電体層と、前記第1誘電体層に積層された第2誘電体層と、前記第1誘電体層に対し前記第2誘電体層と反対側に設けられ、前記第1誘電体層に接する第1導電体層と、前記第1誘電体層を貫通し、一端が前記第1導電体層に接する複数の第1導電体ポストと、平面視において前記複数の第1導電体ポストに囲まれ、第1中心を有する第1空間と、前記第2誘電体層に対し前記第1誘電体層と反対側に設けられ、前記第2誘電体層に接する第2導電体層と、前記第2誘電体層を貫通し、一端が前記第2導電体層に接する複数の第2導電体ポストと、平面視において前記複数の第2導電体ポストに囲まれ、第2中心を有する第2空間と、平面視において前記第1中心および前記第2中心の両側に設けられ、前記第1中心および前記第2中心に重ならない一対の開口を有し、前記第1誘電体層と前記第2誘電体層との間に設けられ、前記第1誘電体層、前記第2誘電体層、前記複数の第1導電体ポストの他端および前記複数の第2導電体ポストの他端に接する第3導電体層と、を備えるフィルタ。
【0007】
上記構成において、平面視において前記一対の開口は前記第1中心および前記第2中心の少なくとも一方に対し略対称である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第1空間および前記第2空間の平面形状は略円形状である構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、平面視において前記一対の開口は前記第1空間の外周および/または前記第2空間の外周に沿って湾曲する構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記一対の開口は、前記略円形状の中心を中心とする2つの円弧と、前記略円形状の中心を通る2つの直線と、により画定される構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、平面視において、前記一対の開口の各々の重心は、前記略円形状の中心と前記第1空間の平面形状および前記第2空間の平面形状のうち小さい方の平面形状の外周との中点をつなぐ線より外側に位置する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第2導電体層は、平面視において、前記第2空間内に設けられ、前記第2中心の両側に設けられ、前記第2中心および前記一対の開口に重ならない別の一対の開口を有する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第2中心から前記一対の開口の各々の重心に至る第1方向と、前記第2中心から前記別の一対の開口の各々の重心に至る第2方向と、のなす角度は45°以上かつ135°以下である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1導電体層、前記第3導電体層、前記複数の第1導電体ポストおよび前記第1空間内の前記第1誘電体層は第1共振器を形成し、前記第2導電体層、前記第3導電体層、前記複数の第2導電体ポストおよび前記第1空間内の前記第2誘電体層は第2共振器を形成する構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記第1共振器および前記第2共振器の共振モードはTE01モードである構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記第3誘電体層上に設けられ、平面視において前記一対の開口に重なり、互に接続される一対の伝送線路を備える構成とすることができる。
【0017】
本発明は、上記フィルタと、前記第2誘電体層上に設けられ、前記一対の開口と高周波的に接続された放射素子と、を備える高周波装置である。
【0018】
上記構成において、前記放射素子に対し対角に設けられ、前記フィルタから前記放射素子に伝送される高周波信号の一部を分岐する一対のカプラを備え、前記第1空間および前記第2空間の平面形状は略円形状であり、前記フィルタは、前記放射素子に対し別の対角に一対設けられる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、共振器間の結合係数を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例1に係るフィルタの斜視図である。
図2図2は、実施例1に係るフィルタの解体斜視図である。
図3図3は、図1のX-X断面図である。
図4図4は、図1のY-Y断面図である。
図5図5(a)および図5(b)は、実施例1における共振器の斜視図および平面図である。
図6図6は、実施例1に係るフィルタの平面図である。
図7図7(a)および図7(b)は、実施例1に係るフィルタの等価回路図である。
図8図8(a)から図8(c)は、実施例1における導電体ポストおよび開口の別の例である。
図9図9(a)および図9(b)は、比較例1における共振器の斜視図および平面図である。
図10図10(a)および図10(b)は、シミュレーション1におけるそれぞれ実施例1および比較例1の共振器の平面図である。
図11図11は、シミュレーション1における実施例1および比較例1の結合窓の面積に対する結合係数を示す図である。
図12図12(a)は、シミュレーション2における共振器の斜視図、図12(b)および図12(c)は、共振器内の電界強度および磁界強度を示す図である。
図13図13(a)は、シミュレーション3における共振器の斜視図、図13(b)および図13(c)は、共振器内の電界強度および磁界強度を示す図である。
図14図14(a)および図14(b)は、シミュレーション4における実施例1および比較例1のフィルタの周波数に対するそれぞれ通過特性S21および反射特性S11を示す図である。
図15図15(a)は、シミュレーション5における実施例1のフィルタの平面図、図15(b)は、通過特性を示す図である。
図16図16(a)から図16(c)は、シミュレーション6における共振器A~Cの構造を示す図である。
図17図17は、実施例2の高周波装置が用いられる通信基地局の回路図である。
図18図18は、実施例2に係る高周波装置の斜視図である。
図19図19は、実施例2に係る高周波装置の平面図である。
図20図20は、実施例2における1個の放射素子近傍の斜視図である。
図21図21は、図20のA-A断面図である。
図22図22は、図20のB-B断面図である。
図23図23は、実施例2における4つの放射素子を示す平面図である。
図24図24は、実施例2における4つの放射素子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例0022】
図1は、実施例1に係るフィルタの斜視図である。図2は、実施例1に係るフィルタの解体斜視図である。図3は、図1のX-X断面図、図4は、図1のY-Y断面図である。誘電体層および導電体層の積層方向をZ方向、平面方向のうち、一対の開口18cの配列方向をX方向、X方向に直交する方向をY方向とする。
【0023】
図1から図4に示すように、複数の誘電体層12a~12hが積層されている。複数の誘電体層12a~12hに交互に複数の導電体層14a~14iが積層されている。誘電体層12a~12hを貫通しZ方向に延伸する導電体ポスト16a~16hがそれぞれ設けられている。導電体ポスト16c~16fにそれぞれ囲まれた空間内の誘電体層12c~12fと、各々の誘電体層12c~12fに接する導電体層14c~14gとは、共振器10a~10dを形成する。導電体層14c~14gは、結合窓として機能する開口18c~18gを有している。開口18c~18gは各々一対設けられている。
【0024】
導電体層14aおよび14iには開口21aおよび21iがそれぞれ設けられている。開口21aおよび21i内に導電体層14aおよび14iにより形成されたパッド20aおよび20iがそれぞれ設けられている。導電体層14bは、パッド20bおよび伝送線路22bを形成し、導電体層14hは、パッド20hおよび伝送線路22hを形成する。パッド20bは導電体ポスト16aと16bとに接し、パッド20hは導電体ポスト16gと16hに接する。導電体ポスト16a、16bおよびパッド20bは伝送線路22bを囲むように設けられ、導電体ポスト16g、16hおよびパッド20hは伝送線路22hを囲むように設けられている。
【0025】
フィルタ100の動作周波数は例えば4.2GHz~52.6GHzである。導電体層14a~14i、導電体ポスト16a~16hは、例えば銅、銀または金等の金属を主成分とする。誘電体層12は、例えばLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)もしくはHTCC(High Temperature Co-fired Ceramics)等のセラミックス、または、フッ素樹脂、ポリエチレン、液晶ポリマー、ポリフェニレンエーテルもしくはポリスチレン等の樹脂を主成分とする。
【0026】
図5(a)および図5(b)は、実施例1における共振器の斜視図および平面図である。図5(a)および図5(b)に示すように、誘電体層12d(第1誘電体層)と誘電体層12e(第2誘電体層)が積層されている。導電体層14d(第1導電体層)は、誘電体層12dに対し誘電体層12eの反対側に設けられ、誘電体層12dに接する。複数の導電体ポスト16d(第1導電体ポスト)は、誘電体層12dを貫通し、一端が導電体層14dに接する。導電体層14f(第2導電体層)は、誘電体層12eに対し、誘電体層12dと反対側に設けられ、誘電体層12eに接する。複数の導電体ポスト16e(第2導電体ポスト)は誘電体層12eを貫通し、一端が導電体層14fに接する。導電体層14e(第3導電体層)は、誘電体層12dと12eとの間に設けられ、誘電体層12d、12e、複数の導電体ポスト16dおよび16eの他端に接する。
【0027】
複数の導電体ポスト16dに囲まれた誘電体層12d内の空間は空間11b(第1空間)であり、複数の導電体ポスト16eに囲まれた誘電体層12e内の空間は空間11c(第2空間)である。共振器10b(第1共振器)は、導電体層14d、14e、複数の導電体ポスト16dおよび誘電体層12d内の空間11bにより形成される。共振器10c(第2共振器)は、導電体層14e、14f、複数の導電体ポスト16eおよび誘電体層12e内の空間11cにより形成される。空間11bおよび11cのそれぞれの平面視における中心は中心50b(第1中心)および50c(第2中心)である。中心50bおよび50cは、例えば空間11bおよび11cの平面形状の重心である。図5(b)では、中心50bと50cとは製造誤差を許容する程度に略一致している。導電体層14eは一対の開口18eを有している。一対の開口18eは、平面視において空間11bおよび11c内に設けられ、中心50bおよび50cの両側に設けられ、中心50bおよび50cに重ならない。開口18eの平面形状は、中心50bおよび50cを中心とする2つの円の外周と円の半径方向の2つの線分とからなる。開口18eは共振器10bと10cとを結合する結合窓である。
【0028】
図6は、実施例1に係るフィルタの平面図である。主に、空間11a~11d、導電体ポスト16d~16f、開口18c、18d、18f、18g、伝送線路22bおよび22hを示している。図6に示すように、空間11a~11dの平面形状は略円形状である。空間11a~11dの平面視における中心50a~50dは製造誤差程度に略一致している。空間11bおよび11cの平面形状は空間11aおよび11dの平面形状より大きい。開口18c、18d、18gおよび18fは、空間11a~11d内に設けられている。開口18cおよび18gは各々X方向に配列し、開口18dおよび18fは各々Y方向に配列する。
【0029】
伝送線路22bおよび22hの平面形状はT字状である。伝送線路22bおよび22hの各々の一端はそれぞれパッド20aおよび20iに接続されている(図4参照)。伝送線路22bの2つの枝はそれぞれ一対の開口18cに平面視において重なり、伝送線路22hの2つの枝はそれぞれ一対の開口18gに平面視において重なる。伝送線路22bおよび22hの端と開口18cおよび18gの径方向の中心との距離は略λ/4である。λは高周波信号の誘電体内の波長である。共振器10aおよび10dは伝送線路22bおよび22hに結合する。これにより、パッド20iに入力した高周波信号は伝送線路22hを通過し共振器10dに入力する。共振器10aから出力された高周波信号は伝送線路22bを通過しパッド20aから出力される。
【0030】
図7(a)および図7(b)は、実施例1に係るフィルタの等価回路図である。図7(a)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に共振器10a~10dが直列に接続されている。各共振器10a~10dは、インダクタL1~L4とキャパシタC1~C4をそれぞれ備えている。入力端子Tinおよび出力端子Toutにそれぞれ接続されたインダクタL0およびL5はそれぞれ伝送線路22bおよび22hに対応する。インダクタL0およびL5と共振器10aおよび10dとは結合係数ke1およびke2によりそれぞれ結合されている。共振器10a~10d間は結合係数k12~k34により結合されている。結合係数ke1、k12、k23、k34およびke2は、それぞれ開口18c~18gを介した電磁界結合に対応する。図7(b)に示すように、結合係数ke1、k12、k23、k34およびke2をそれぞれ相互インダクタンスM01、M12、M23、M34およびM45を用い表してもよい。
【0031】
図7(a)および図7(b)に示すように、入力端子Tinに入力した高周波信号は伝送線路22hに相当するインダクタL5に結合された共振器10dに入力する。電磁界結合された共振器10d~10aを通過し伝送線路22bに相当するインダクタL0を介し出力端子Toutに出力される。フィルタ100は、共振器10a~10dの共振周波数近傍の信号を通過させる。
【0032】
共振器10a~10dの共振周波数を異ならせることで、通過帯域を広帯域化させることができる。空間11a~11dの平面面積を異ならせることで、共振器10a~10dの共振周波数を異ならせることができる。フィルタにおいて特性を向上させるためには、空間11aと11dの面積は互いに略同じであり、空間11bと11cの平面面積は互いに略同じであり、空間11bと11cの各々の平面面積は空間11aと11dの各々の平面面積より大きいことが好ましい。空間11bおよび11cの平面形状の半径は空間11aおよび11dの平面形状の半径の1.2倍~1.4倍が好ましい。共振器10a~10dの高さは異なっていてもよい。これにより、各共振器10a~10dの無負荷時のQ値が異なる。フィルタにおいて特性を向上させるためには、空間11aと11dの高さは互いに略同じであり、空間11bと11cの高さは互いに略同じであり、空間11bと11cの各々の高さは空間11aと11dの各々の高さより大きいことが好ましい。空間11bおよび11cの高さは空間11aおよび11dの高さの1.0倍~3.0倍が好ましい。
【0033】
導電体ポスト16a~16hの内側の間隔は、電磁界エネルギーが導電体ポスト16a~16hの内側に閉じ込められるように設定される。導電体ポスト16a~16hの隣接する導電体ポストの内側の間隔は、高周波信号の誘電体内の波長をλとしたとき、例えばλ/2以下であり、λ/4以下がより好ましく、λ/8以下がさらに好ましい。隣接する導電体ポストの内側の間隔は、λ/10以上が好ましい。
【0034】
図8(a)から図8(c)は、実施例1における導電体ポストおよび開口の別の例である。図8(a)に示すように、誘電体層12を貫通する導電体ポスト16は2重に設けられていてもよい。外側の導電体ポスト16yは内側の導電体ポスト16xの間の径方向に設けられている。これにより、電磁界エネルギーが空間11から外部に漏れることをより抑制できる。図8(b)に示すように、導電体ポスト16は、3重に設けられていてもよい。導電体ポスト16zは導電体ポスト16yの間の径方向に設けられている。図8(a)および図8(b)のように、導電体ポスト16は2重または3重に設けられていてもよい。図8(c)に示すように、開口18の平面形状は矩形でもよい。一対の開口18の形状は任意であり、平面視において空間11の中心50の両側設けられていればよい。
【0035】
[比較例1]
図9(a)および図9(b)は、比較例1における共振器の斜視図および平面図である。図9(a)および図9(b)に示すように、比較例1では、開口18eは、中心50bおよび50cを中心とする円である。その他の構成は実施例1と同じである。
【0036】
[シミュレーション1]
実施例1および比較例1において、開口18の面積を変え共振器10bと10cの結合係数を有限要素法による電磁界解析を用いシミュレーションした。図10(a)および図10(b)は、シミュレーション1におけるそれぞれ実施例1および比較例1の共振器の平面図である。
【0037】
図10(a)および図10(b)に示すように、導電体ポスト16dおよび16eは2重に設けられている。誘電体層12dおよび12eの直径W1を3.66mmとし、空間11bおよび11cの直径W2を2.7mmとした。図10(a)のように、実施例1では、開口18eの外周の一部を中心50bおよび50cを中心とした2つの円弧とした。内側の円弧の半径W4を0.75mmとし、2つの円弧の距離W3を0.3mmとした。開口18eの外周のうち2つの径方向の辺のなす角度θ1を30°~65°の範囲で変更することで、開口18eの面積を変えた。図10(b)に示すように、比較例1では、開口18eは中心50bおよび50cを中心とする円である。開口18eの直径W0を0.6mm~0.95mmの範囲内で変更することで、開口18eの面積を変えた。
【0038】
図11は、シミュレーション1における実施例1および比較例1の結合窓の面積に対する結合係数を示す図である。結合係数は共振器10bと10cとの電磁界結合の大きさを示している。図11に示すように、結合窓面積(開口18eの面積)が0.4mm以下では、実施例1と比較例1の結合係数はほぼ同じである。結合窓面積が0.4mm以上では、実施例1は比較例1に比べ結合係数が大きくなる。結合窓面積が大きくなると共振器から漏れる電磁界エネルギーが大きくなる。よって、実施例1は比較例1に比べ電磁界エネルギーの漏洩が小さくかつ共振器10bと10cの結合を大きくできる。
【0039】
[シミュレーション2]
共振器10の共振モードがTE01モードのとき電界強度および磁界強度を有限要素法により電磁界解析を用いシミュレーションした。TE(Transverse Electric Wave)モードは、電磁波が伝搬する方向(Z方向)に電界成分を持たないモードであり、TE01モードは基本モードである。まず、理想的な共振器10についてシミュレーションした。図12(a)は、シミュレーション2における共振器の斜視図、図12(b)および図12(c)は、共振器内の電界強度および磁界強度を示す図である。図12(a)に示すように、共振器10は、導電体層14に誘電体層12が挟まれている。誘電体層12は円柱状であり、円柱の側面状に導電体層15が設けられている。導電体層15内が空間11である。空間11の直径W2は4mm、共振器10の高さH1(誘電体層12の厚さ)は0.4mmである。導電体層14および15の材料は銅であり、導電率は5.8×10S/mである。誘電体層12の材料はLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)であり、誘電体層12の比誘電率は7.4であり、tanδは0.0011である。電界強度および磁界強度は、誘電体層12のZ方向の中心位置におけるX方向について算出した。中心50を0とした。
【0040】
図12(b)に示すように、電界強度は位置Xが0のとき最大である。空間11の端であるXが±2mmでは電界強度は0となる。図10(c)に示すように、磁界強度はX=0のとき0であり、Xが±1.5m付近で磁界強度が最大となる。
【0041】
[シミュレーション3]
次に、SIW共振器10についてシミュレーションした。図13(a)は、シミュレーション3における共振器の斜視図、図13(b)および図13(c)は、共振器内の電界強度および磁界強度を示す図である。図13(a)に示すように、共振器10では、導電体ポスト16内の空間11は円柱状である。空間11の直径W2は3.66mm、共振器10の高さH1(誘電体層12の厚さ)は0.2mmである。その他の構成は図12(a)と同じである。
【0042】
図13(b)に示すように、電界強度は位置Xが0のとき最大である。空間11の端であるXが±1.83mmでは電界強度は0となる。導電体ポスト16内およびその外側では電界強度は0となる。位置X=0付近が比較例1の開口18に相当する。図13(c)に示すように、磁界強度はX=0のとき0であり、導電体ポスト16付近で磁界強度が最大となる。導電体ポスト16内およびその外側では磁界強度は0となる。位置X=0.8~1.1mmおよび-0.8~-1.1mm付近が実施例1の開口18に相当する。
【0043】
以上のように、比較例1では開口18を介した電磁界結合は主に電界結合であり、実施例1では開口18を介した電磁界結合は主に磁界結合である。実施例1では、磁界強度の大きい位置に開口18を設けることで結合係数を大きくすることができる。
【0044】
[シミュレーション4]
実施例1および比較例1におけるフィルタの通過特性および反射特性を有限要素法による電磁界解析を用いシミュレーションした。周波数のスイープ範囲を20GHz~40GHz、ステップを100MHzとした。図14(a)および図14(b)は、シミュレーション4における実施例1および比較例1のフィルタの周波数に対するそれぞれ通過特性S21および反射特性S11を示す図である。
【0045】
図14(a)および図14(b)に示すように、実施例1は比較例1に比べ、フィルタの通過帯域が広帯域化し、かつリップルが抑制されている。これは実施例1では比較例1に比べ共振器10a~10d間の結合が大きくなったこと、伝送線路22bおよび22hの特性インピーダンスと共振器10aおよび10dとのインピーダンス調整が行われたためと考えられる。
【0046】
[シミュレーション5]
実施例1のフィルタにおいて、開口の回転角を変え通過特性を有限要素法による電磁界解析を用いシミュレーションした。図15(a)は、シミュレーション5における実施例1のフィルタの平面図、図15(b)は、通過特性を示す図である。図15(a)に示すように、開口18c、18e(図5(b)参照)および18gと開口18dおよび18dとの中心50a~50dに対する回転角θ2を、0°、30°、45°、60°および90°とし、フィルタの通過特性S21をシミュレーションした。
【0047】
図15(b)に示すように、θ2=90°のフィルタの通過特性は良好である。θ2=60°のフィルタはθ2=90°とほぼ同じ通過特性である。θ2=45°では、通過帯域が狭くなり、リップルが大きくなる。θ2=30°、0°では通過帯域がさらに狭くなり、リップルがより大きくなる。このように、θ2が小さくなるとフィルタ特性が劣化するのは、共振器(例えば共振器10b)の上下の開口(例えば開口18dと18e)が重なると共振器(例えば共振器10b)を飛び越えて上下の共振器(例えば共振器10aと10c)が結合するためと考えられる。
【0048】
[シミュレーション6]
空間11の形状を検討するため、3つの形状において共振器の無負荷Q値および共振周波数をシミュレーションした。図16(a)から図16(c)は、シミュレーション6における共振器A~Cの構造を示す図である。共振器A~Cは、誘電体層12と誘電体層12の周りをすべて導電体層で覆われているとする。図16(a)に示すように、共振器Aでは、空間11の平面形状は直角2等辺三角形であり、空間11は三角柱となる。直角2等辺三角形のうち直角の頂点を挟む2つの辺の長さW5=5.5mm、誘電体層12の厚さH1=0.77mmである。
【0049】
図16(b)に示すように、共振器Bでは、空間11の平面形状は正方形であり、空間11は四角柱となる。正方形の辺の長さW6=4mm、誘電体層12の厚さH1=0.77mmである。図16(c)に示すように、共振器Cでは、空間11の平面形状は円形であり、空間11は円柱となる。円形の直径W2=4mm、誘電体層12の厚さH1=0.77mmである。
【0050】
表1は、共振器Aの各モードに対する周波数およびQ値を示す表である。
【表1】
【0051】
表2は、共振器Bの各モードに対する周波数およびQ値を示す表である。
【表2】
【0052】
表3は、共振器Cの各モードに対する周波数およびQ値を示す表である。
【表3】
【0053】
表1~3において、モード1はTEモードの基本モードTE01に対応し、モード1の周波数が共振器A~Cの共振周波数である。モード2~5は高調波モードでありスプリアスに相当する。表1~3のモード1のQ値を比較すると、共振器CのQ値が最も高い。モード1とモード2の周波数差を比較すると、共振器Cが最も大きい。モード1とモード2の周波数差が大きいとスプリアスの周波数が共振周波数から離れておりスプリアスの影響が小さい。以上のように、空間11を円形状とすることで、Q値が高く、スプリアスの影響を受けにくくなる。
【0054】
実施例1によれば、図5(b)のように、一対の開口18eは、平面視において、空間11bおよび11c内に設けられ、中心50bおよび50cの両側に設けられ、中心50bおよび50cに重ならない。これにより、シミュレーション2の図13(c)のように、磁界強度が大きい箇所において共振器10bと10cとが結合できる。よって、共振器10bと10cとの結合係数を向上できる。
【0055】
一対の開口18eは中心50bおよび50cに対し略対称(点対称)である。これにより結合係数を大きくできる。略対称とは、製造誤差を許容し、例えば一対の開口18eを中心50bおよび50cに対し180°回転させたときに一対の開口18eが重ならない平面面積が一対の開口18eの平均面積の20%以下であればよい。
【0056】
シミュレーション4のように、空間11bおよび11cの平面形状は略円形である。これにより、共振器のQ値が向上し、スプリアスの影響を受けにくくなる。なお、略円形とは、幾何学的な真円でなくてもよく、楕円形状や長円形状のオーバル形状でもよい。楕円形状や長円形状の場合、例えば長軸が短軸の1.2倍以下であればよい。
【0057】
図5(b)のように、一対の開口18eは空間11bおよび11cの外周に沿って湾曲する。これにより、図13(c)において、開口18eを磁界強度が大きい領域に設けることができる。開口18eは、略円形の中心を中心とする2つの円弧と、略円形の中心を通る2つの直線と、により画定される。これにより、開口18eを磁界強度が大きい領域に設けることができる。
【0058】
図5(b)のように、開口18eの重心は、円形状の中心と空間11bおよび11cの小さい方の空間の外周との中点をつなぐ線52bおよび52cより外側に位置する。これにより、図13(b)のように、開口18eを磁界強度の大きい空間に設けることができる。開口18eの面積の半分以上は線52bおよび52cの外側であることが好ましく、開口18eの全ては線52bおよび52cの外側であることがより好ましい。
【0059】
図5(b)および図6のように、導電体層14fは、空間11c内に設けられ、中心50cの両側に設けられ、中心50cおよび開口18eに重ならない別の開口18fを有する。これにより、共振器10cと共振器10dとの結合係数を大きくできる。
【0060】
シミュレーション3の図15(a)および図15(b)のように、中心50cから一対の開口18eの各々の重心に至る第1方向と、中心50cから別の一対の開口18fの各々重心に至る第2方向と、のなす角度(回転角θ2)は45°以上かつ135°以下である。これにより、フィルタの通過特性を向上できる。回転角θ2は60°以上かつ120°以下が好ましい。
【0061】
図6のように、誘電体層12d上に設けられ、平面視において一対の開口18cに重なり、互に接続される一対の伝送線路22bを備える。これにより、開口18cと伝送線路22bとを結合させることができる。
【実施例0062】
実施例2は、実施例1のフィルタを用いる高周波装置の例である。図17は、実施例2の高周波装置が用いられる通信基地局の回路図である。図17に示すように、通信基地局は、ビームフォーミング回路38と高周波装置102を備えている。高周波装置102は、放射素子30、カプラ36およびフィルタ34を備えている。5G(5th Generation Mobile Communication System)用の通信基地局では、ビームフォーミング技術を用いるため複数の放射素子30が設けられている。ビームフォーミング回路38から複数の水平偏波用高周波信号Hおよび垂直偏波用高周波信号Vが出力される。複数のフィルタ34は、高周波信号HおよびVを濾過する。カプラ36は高周波信号HおよびVの一部をフィードバックする。放射素子30には各々高周波信号HおよびVが入力する。
【0063】
図18は、実施例2に係る高周波装置の斜視図である。図19は、実施例2に係る高周波装置の平面図である。図18および図19に示すように、誘電体層12の表面に放射素子30がX方向およびY方向にアレイ状に配列されている。放射素子30の周りにダミー放射素子32が配列されている。ダミー放射素子32はアレイアンテナの放射特性の乱れを抑制する。放射素子30の配列は例えば4×4である。放射素子30の平面形状は略正方形または略円形である。放射素子30のアレイ数および平面形状は任意に設定可能である。放射素子30およびダミー放射素子32のX方向およびY方向の幅は、例えば略λ/2である。放射素子30およびダミー放射素子32のX方向およびY方向の間隔は例えばλ/4~λ/2である。放射素子30のX方向の配列間隔とY方向の配列間隔は同じでもよいし、異なっていてもよい。放射素子30の対角に一対のフィルタ34が設けられている。一対のフィルタ34はそれぞれ垂直偏波用および水平偏波用である。放射素子30の別の対角に一対の伝送路37が設けられている。伝送路37はそれぞれ垂直偏波用および水平偏波用の信号のフィードバック用である。
【0064】
図20は、実施例2における1個の放射素子近傍の斜視図である。図20に示すように、放射素子30は、誘電体層12の表面に設けられたパターン30aと誘電体層12内に設けられたパターン30bを有する。パターン30aには、パターン30bから高周波信号が間接的に給電される。パターン30aには高周波信号が直接給電されてもよい。カプラ36は伝送線路42と伝送路37を備えている。伝送路37はZ方向に延伸する線路44と線路44を囲む導電体ポスト46を備えている。伝送線路42は、パターン30aに電磁界結合されている。パターン30bの高周波信号の一部は伝送線路42に分岐される。伝送線路42に分岐された高周波信号の一部は伝送路37を通過し誘電体層12の下面に出力される。
【0065】
図21は、図20のA-A断面図である。図22は、図20のB-B断面図である。図21および図22に示すように誘電体層12は、積層された複数の誘電体層12a~12h、12j~12nを備えている。誘電体層12a~12h、12j~12nと交互に複数の導電体層14a~14nが設けられている。導電体ポスト16は誘電体層12a~12h、12j~12nを貫通する。パターン30aは導電体層14jにより形成されている。パターン30bは導電体層14kにより形成されている。パターン30aと30bは誘電体層12jを介し電磁界結合されている。
【0066】
図21のように、伝送線路42は導電体層14lにより形成されている。伝送線路42の一端とパターン30bは誘電体層12kを介し電磁界結合されている。伝送線路42の他端は線路44に接続されている。線路44は導電体ポスト16と導電体層14a~14iおよび14mにより形成され、Z方向に延伸する。導電体ポスト46は、導電体ポスト16と導電体層14a~14iにより形成される。伝送線路42aは導電体層14mにより形成される。伝送線路42aの一端は線路44に接続し他端はパッド41に接続されている。パターン30bから伝送線路42の一端に分岐された高周波信号は、矢印55のように伝送線路42、伝送路37、伝送線路42aを通過しパッド41から出力される。
【0067】
図22のように、フィルタ34は、実施例1のフィルタ100と同様に、誘電体層12a~12hおよび導電体層14a~14iにより形成される。フィルタ34のパッド20aはパターン30bの給電点31に接続されている。フィルタ34のパッド20iはパッド40に接続されている。パッド40は導電体層14nにより形成されている。パッド40に入力した高周波信号はフィルタ34により濾過され、パッド20aから給電点31に出力される。
【0068】
図23は、実施例2における4つの放射素子を示す平面図である。放射素子30、フィルタ34H、34Vおよびカプラ36を図示している。電界がX方向の偏波を水平偏波、電界がY方向の偏波を垂直偏波とする。図23に示すように、垂直偏波用フィルタ34Vの伝送線路22Vおよび水平偏波用フィルタ34Hの伝送線路22Hから放射素子30に高周波信号が給電される。垂直偏波用の給電点31Vは放射素子30の中心30cよりY方向にシフトして設けられている。これにより、給電点31Vに給電され高周波信号は垂直偏波信号となる。水平偏波用の給電点31Hは放射素子30の中心30cよりX方向にシフトして設けられている。これにより、給電点31Hに給電され高周波信号は水平偏波信号となる。
【0069】
図24は、実施例2における4つの放射素子を示す平面図である。放射素子30、フィルタ34H、34V、配線48H、48Vおよびビームフォーミング回路38を示している。配線48Hおよび48Vは例えば誘電体層12内の導電体層(例えば導電体層14m)に設けられ、ビームフォーミング回路38は誘電体層12の下面に設けられている。図24に示すように、フィルタ34Hのパッド40Hは配線48Hを介しビームフォーミング回路38に接続されている。フィルタ34Vのパッド40Vは配線48Vを介しビームフォーミング回路38に接続されている。これにより、ビームフォーミング回路38から出力された水平偏波用の高周波信号は配線48Hを通過しフィルタ34Hのパッド40Hに入力する。ビームフォーミング回路38から出力された垂直偏波用の高周波信号は配線48Vを通過しフィルタ34Vのパッド40Vに入力する。
【0070】
実施例2によれば、高周波装置102は、実施例1のフィルタ34と誘電体層12a上に設けられ、一対の開口18cと高周波的に接続された放射素子30と、を備える。これにより、放射素子30の下にフィルタ34を設けることができる。
【0071】
一対のカプラ36は、放射素子30に対し対角に設けられ、フィルタ34から放射素子30に伝送される高周波信号の一部を分岐する。フィルタ34の共振器10の空間11は略円柱であり、フィルタ34は放射素子30に対し別の対角に一対設けられる。これにより、図23および図24のように、放射素子30、フィルタ34H、34Vおよびカプラ36を効率的に配置することができる。よって、高周波装置102を小型化できる。
【0072】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
10、10a~10d 共振器
11、11a~11d 空間
12、12a~12h、12j~12n 誘電体層
14、14a~14n 導電体層
16、16a~16h 導電体ポスト
18、18c~18g 開口
20a、20b、20h、20i、40、41 パッド
22b、22h、42 伝送線路
30 放射素子
30a、30b パターン
31、31H、31V 給電点
34、34H、34V、100 フィルタ
36 カプラ
37 伝送路
38 ビームフォーミング回路
50、50a~50d 中心
52b、52c 線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15
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図22
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図24