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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146479
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ステレオカメラ装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
G01C3/06 110V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047464
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】514274487
【氏名又は名称】リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】野口 慎二
(72)【発明者】
【氏名】青木 智範
【テーマコード(参考)】
2F112
【Fターム(参考)】
2F112AC03
2F112AC06
2F112BA18
2F112CA12
2F112DA40
(57)【要約】
【課題】耐気候性を向上したステレオカメラ装置を提供する。
【解決手段】ステレオカメラ装置は、複数のカメラと、前記複数のカメラで捕捉された画像データに基づいて前記対象物までの距離を算出する電子回路と、前記複数のカメラと、前記電子回路とを収容するハウジングケースと、を有し、前記ハウジングケースは第1ケース部材と第2ケース部材で形成されており、前記複数のカメラは前記第1ケース部材に配置され、前記電子回路は前記第2ケース部材に配置されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカメラと、
前記複数のカメラで捕捉された画像データに基づいて対象物までの距離を算出する電子回路と、
前記複数のカメラと、前記電子回路とを収容するハウジングケースと、
を有し、
前記ハウジングケースは、第1ケース部材と第2ケース部材で形成されており、前記複数のカメラは前記第1ケース部材に配置され、前記電子回路は前記第2ケース部材に配置されている、
ステレオカメラ装置。
【請求項2】
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材は、前記ハウジングケースの底面に対して斜めに分断されている、
請求項1に記載のステレオカメラ装置。
【請求項3】
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材は、前記ハウジングケースの底面に対して傾斜する接合面で連結されて内部で連通する、
請求項1または2に記載のステレオカメラ装置。
【請求項4】
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材は、三角柱の形状である、
請求項1乃至3のいずれかに記載のステレオカメラ装置。
【請求項5】
前記第1ケース部材は前記ハウジングケースの前面と上面を構成し、前記第2ケース部材は前記ハウジングケースの背面と底面を構成する、
請求項1乃至4のいずれかに記載のステレオカメラ装置。
【請求項6】
前記第1ケース部材は、前記複数のカメラのレンズ面を露出する複数の開口を有し、前記第2ケース部材は、前記電子回路に接続される外部インターフェイスを受け取る開口を有する、
請求項1乃至5のいずれかに記載のステレオカメラ装置。
【請求項7】
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材は、前記第1ケース部材と前記第2ケース部材のいずれよりも熱抵抗の高いシール部材を挟んで接合される、
請求項1乃至6のいずれかに記載のステレオカメラ装置。
【請求項8】
前記第2ケース部材は放熱部を有する、
請求項1乃至7のいずれかに記載のステレオカメラ装置。
【請求項9】
前記第1ケース部材は、移動体への取付部を有する、
請求項1乃至8のいずれかに記載のステレオカメラ装置。
【請求項10】
前記第2ケース部材は、前記第1ケース部材を前記移動体に取り付けた状態で、前記第1ケース部材から取り外し可能である。
請求項9に記載のステレオカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車分野の他、フォークリフト、油圧ショベル等の産業機械分野においても、運転操作者の不注意による事故回避のため、様々な安全装置が車両に装備されている。安全対策のひとつとして、周囲の物体を検知する外界認識センサの搭載が進められている。外界認識センサには、ステレオカメラ、ミリ波レーダ等がある。このような安全装置を用いることで、車両周囲の物体や作業者を検知したときに、検知した周囲の状況に応じて、運転者への注意喚起、車両の走行制御などを行って、車両の衝突にともなう事故を回避する。
【0003】
ステレオカメラは、2つのカメラで得られた画像からの視差情報を用いて距離を算出する。そのため、単眼カメラと比べて検知距離は短いが、近距離領域で精度良く物体を検知することができる。ステレオカメラによる距離計測は、原理的に2台のカメラの光軸が平行であることを前提とする。ステレオカメラを車両に搭載する場合、温度あるいは振動によるレンズ姿勢の経時変化、ハウジングの機構的な公差などにより、厳密な平行配置を維持することが難しい。
【0004】
一組の単眼カメラの光軸が同一直線上になる位置に並設させて一体に連結するカメラステイと、各々の単眼カメラからの撮影画像を補正する画像補正手段と、画像補正手段で補正された補正画像から視差を求め、被写体までの距離を算出する距離算出手段とを備えるステレオカメラが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。ステレオカメラの前方に校正用ターゲットを、後方にレーザ距離計を設置し、レーザ距離計からカメラステイの基準面までの距離L1と、レーザ距離計から校正用ターゲットまでの距離L2を用いて、ステレオカメラのパラメータを校正する方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。ステレオカメラで撮影された画像歪の状況からレンズの位置ずれを推定し、画像補正処理により電子的に画像を変形することで歪補正を行って、元画像を再現する技術が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カメラが広角になるほど発生する画像歪は複雑になり、補正量も増えてくる。多項式近似による幾何学的な補正だけでは十分な歪補正を実現することが困難であり、カメラ間の姿勢を安定して保持する機械的な構造が求められる。建設現場などのように温度変化や天候の変化の影響を受ける環境では、防水、防塵を含む耐気候性の構成が望まれる。
【0006】
本発明の一つの側面では、耐気候性を向上したステレオカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様では、ステレオカメラ装置は、複数のカメラと、前記複数のカメラで捕捉された画像データに基づいて前記対象物までの距離を算出する電子回路と、前記複数のカメラと前記電子回路とを収容するハウジングケースと、を有し、前記ハウジングケースは第1ケース部材と第2ケース部材で形成されており、前記複数のカメラは前記第1ケース部材に配置され、前記電子回路は前記第2ケース部材に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
耐気候性が向上したステレオカメラ装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のステレオカメラ装置の外観図である。
図2A図1のステレオカメラ装置のハードウエア構成図である。
図2B図2Aの集積回路の機能ブロック図である。
図3】ステレオカメラ装置の距離計測の原理を説明する図である。
図4】ステレオカメラ装置の校正のフローチャートである。
図5】校正時のデバイスの位置関係を示す図である。
図6】カメラの分解斜視図である。
図7】ステレオカメラ装置の分解斜視図である。
図8A】ステレオカメラ装置の垂直断面図である。
図8B】ステレオカメラ装置の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態のステレオカメラ装置100の外観図、図2Aはステレオカメラ装置100のハードウエア構成図である。図1、及び図2Aに示すように、ステレオカメラ装置100は、カメラ10A及び10B、測距センサ20、電子回路50、及び、これらの光学機器と電子回路50を収容するハウジングケース101を有する。ハウジングケース101はケースの一例である。この例では、2つのカメラ10A、及び10Bを用いているが、3つ以上のカメラを用いて距離測定を行ってもよい。
【0011】
図1で、カメラ10Aとカメラ10Bの配列方向をX方向、光軸方向をZ方向、X方向とZ方向に直交する方向をY方向とする。後述するように、カメラ10A及び10Bと、測距センサ20は、保持部材30(図7、8A、及び8B参照)により、ハウジングケース101の内部で所定の位置関係で保持されている。ハウジングケース101はこれらの光学機器と電子回路50の保護部材として機能する。カメラ10A及び10Bと測距センサ20を、ハウジングケース101の内部に配置することで、衝突物などに対する堅牢性、塵や埃などに対する防塵性、雨などに対する防水性等を確保する。ハウジングケース101は、内部の光学機器、電子回路等を保護できれば、完全な密閉性を有していなくてもよい。カメラ10A及び10Bと測距センサ20は、一実施例では、ハウジングケース101内で、保持部材30によってを一定の位置関係で一体的に保持され、位置精度を保つ。
【0012】
ハウジングケース101は、たとえば、ダイカスト法で形成された金属または合金のケースである。図1の例では、ハウジングケース101は、アルミダイカストで作製されている。ハウジングケース101は、底面に対して斜めに分断可能な上ケース15と下ケース40で形成されており、ハウジングケース101の内部に収容された部品の保守、修理、交換等が容易である。
【0013】
ハウジングケース101は、カメラ10A、及び10Bによる撮像を可能にするカメラ用開口部16A及び16Bと、測距センサ20で測距するための測距用開口部17とを有する。ハウジングケース101はその最前面に、光透過部材としてのカバーガラス102を有する。カバーガラス102は、カメラ用開口部16A及び16Bと、測距用開口部17を塞いで、光透過性を維持しつつ、ハウジングケース101の密閉性を保つ。カバーガラス102は、好ましくは一枚の板ガラスであり、カメラ用開口部16A、16B、及び、測距用開口部17の間で、厚さや反りの差による光学的な誤差が生じることを防止する。
【0014】
電子回路50は、カメラ10A、及び10Bによって撮影された測定対象物の画像データ(撮像画像)に基づいて、画像処理、距離演算処理などを行い、測定対象物までの距離を計測する。
【0015】
一方、測距センサ20は、画像測距を校正(キャリブレーション)するために、測定対象物に照射した光の反射光を受光することで、測定対象物までの距離を測定する。測距センサ20は、たとえば、測定対象物に光(電磁波)を照射してから、測定対象物からの反射光を受光するまでの光飛行時間(Time of Flight:TOF)に基づいて測定対象物までの距離を測定するToFセンサである。
【0016】
図2Bは、電子回路50の機能ブロック図である。電子回路50は、大規模集積回路(LSIC)で構成されたマイクロプロセッサであってもよいし、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの論理デバイスであってもよい。電子回路50は制御部50Aとして機能し、その機能として、画像処理部51、視差演算部52、校正演算部53、距離演算部54、及びデータ入力部55を有する。
【0017】
データ入力部55は、カメラ10A及び10Bのそれぞれから出力される撮影画像と、測距センサ20から出力される距離情報とを受け取る。撮影画像は、データ入力部55から画像処理部51に入力される。距離情報は、データ入力部55から校正演算部53に入力される。
【0018】
画像処理部51は、撮像画像に適切な画像処理を施して補正画像を生成し、補正画像を視差演算部52に供給する。視差演算部52は、補正画像から、パターンマッチング法などにより、カメラ10Aと10Bの間の視差pを計算する。視差pは、距離演算部54と、校正演算部53に入力される。
【0019】
校正演算部53は、測距センサ20で得られた測定対象物までの距離情報Lと、測距センサ20とカメラ10A、及び10Bの間の既知の位置関係とに基づいて、カメラ10A及び100Bの光学中心から測定対象物までの距離Zを算出する。校正演算部53は、算出した距離Zと、視差演算部52から入力された視差pを用いて、B*f値と視差オフセットΔpを求め、B*f値とΔpを距離演算部54に供給する。ここで、B*f値は、後述するように、カメラ10Aと10Bの間の実際の光軸間の距離(基線長)Bと、実際の焦点距離fの積である。
【0020】
距離演算部は、視差演算部52から入力された視差pと、校正演算部53から入力された視差オフセットΔp及びB*f値を用いて、測定対象物までの距離Zを、
Z=B×f/(p+Δp) (1)
で求める。
【0021】
ステレオカメラ装置100の校正は、ステレオカメラ装置100の工場出荷前の製品検査で行ってもよいし、ステレオカメラ装置100を移動体などに設置した後の使用時に測定対象物を用いて行ってもよい。
【0022】
<距離計測の原理>
図3は、ステレオカメラ装置100の距離計測の原理を説明する図である。カメラ10Aと10Bが距離Bだけ離れて設置されている。距離Bは、カメラ10Aと10Bの光軸間の距離であり、基線とも呼ばれる。カメラ10Aと10Bの焦点距離をf、それぞれの光学中心をO、及びO、それぞれの撮像面をs、及びsする。求めたいのは、カメラ10Aと10Bの光学中心から、測定対象物Aまでの距離Zである。
【0023】
カメラ10Aの光学中心OAから光軸方向(Z方向)に距離Zだけ離れた位置にある測定対象物Aの像は、直線A-Oと撮像面sとの交点であるPに像を結ぶ。一方、カメラ10Bでは、同じ測定対象物Aが撮像面s上の位置Pに像を結ぶ。ここで、カメラ10Bの光学中心OBを通り直線A-Oと平行な直線PLと、撮像面sとの交点をP'とする。P'とPの間の距離がカメラ10Aと10Bの間の視差pである。
【0024】
点P'は、カメラ10Aの光軸に対する像点Pの位置を表す。視差pは、P'とPを合わせた距離であり、同じ測定対象物Aを二台のカメラ10Aと10Bで撮影した画像上での位置ずれ量に対応する。
【0025】
三角形A-O-Oと、三角形O-P'-Pは相似なので、
Z=B×f/p (2)
が得られる。カメラ10Aと10Bの光軸間の距離(基線長)Bと焦点fが既知ならば、視差pから距離Zを求めることができるが、実際は、温度変化、振動等の影響によりレンズ光軸などの経時変動で、基線長B、焦点距離f、視差pはわずかに変化する。したがって、上述のように視差オフセットΔpを用いて、式(1)によりZを求める。
Z=B×f/(p+Δp) (1)
複数の位置で、式(1)から測定対象物Aまでの距離Zを計測することで、連立方程式によりBとfの実際の値を求めることができる。
【0026】
<校正プロセス>
図4は校正のフローチャート、図5は校正時のデバイスの位置関係を示す図である。工場出荷前の検査では、校正用のターゲットTを用いて校正を行ってもよい。実際の測距時は、上述したように、測定対象物を用いて校正してもよい。図5では、校正プロセスを説明するために、測距センサ20をカメラ10A及び10Bの後方(-Z側)に描いているが、測距センサ20は保持部材30によって、カメラ10A及び10Bと一体的に保持されていてもよい。
【0027】
まず、図5に示すように、ステレオカメラ装置100の測定方向(Z方向)の前方に、校正用ターゲットTを設置する(S1)。次に、測距センサ20から出射される光ビームが校正用ターゲットTの特徴点T1を照射するように、ステレオカメラ装置100を所定の位置に設置する(S2)。
【0028】
測距センサ20は、校正用ターゲットTに光ビームを照射する光源と、校正用ターゲットTからの反射光を検出する光検出器とを有する。光源は、たとえばレーザダイオードであり、光検出器は、たとえばフォトダイオードである。光源と光検出器の光軸は、同一方向にそろっている。光検出器は、出射光と反射光の光軸が測距センサ20は、光源から光ビームを出射してから反射光を受光するまでの時間ToFを計測し、計測時間に基づいて校正用ターゲットTまでの距離L1を測定する(S3)。制御部50Aの距離演算部54は、測距センサ20で測定された測定距離L1と、既知の値ΔZとから、カメラの光学中心Oと校正用ターゲットTの間の距離Zを算出する(S4)。既知の値ΔZは、測距センサ20の測距原点と、カメラ10A及び10Bの光学中心Oとの間の距離であるが、同じ保持部材30に取り付けられたカメラ10A及び10Bの光学中心Oと、測距センサ20の測距原点とは、ほぼ同じ面内にあり、ΔZはゼロをみなし得る。保持部材30に取り付けられた状態で、カメラ10A及び10Bの光学中心Oと、測距センサ20の測距限定との間にZ方向の差がある場合は、ΔZを用いて距離Zを算出する。
【0029】
他方で、カメラ10A、及び10Bで、校正用ターゲットTの特徴点T1を撮像する(S5)。撮像された特徴点T1の画像を画像処理部51で画像処理し、補正後の画像データ(補正画像)を生成する(S6)。視差演算部52は、生成された補正画像から校正用ターゲットTに対する視差pを算出する(S7)。校正用ターゲットTのZ方向の位置を変えて、ステップS1からS7を、2回以上繰り返す(S8でYES)。
【0030】
校正演算部53は、距離Zと視差pの組を2つ以上用いて、実際のB*f値と、視差オフセットΔpを算出する。このB*f値と視差オフセットΔpが校正用のデータである。
【0031】
ステレオカメラ装置100が車両に取り付けられて作業現場で用いられる場合、ステレオカメラ装置100で前方、側方、後方の障害物や作業者を検知する。障害物または作業者と車両との間の相対速度、相対位置等に基づいて、衝突のおそれがある場合に、アラートを発する、あるいは自動ブレーキを作動させてもよい。測距精度が低い場合、頻繁に自動ブレーキが作動して作業に支障をきたすおそれがあるので、人との接触リスクが高い場合にだけ自動ブレーキを作動させるのが望ましい。そのためには、作業者と資材等とを区別できる分解能が必要である。また、温度差が大きく、粉塵、雨滴が存在する屋外環境でも測距性能を維持する必要がある。
【0032】
実施形態では、以下で述べる機械的な構造により、カメラ10A及び10Bと測距センサ20を、ハウジングケース101とは別の保持部材30によって保持することで、カメラ10A及び10Bと測距センサ20の間の位置精度をできるだけ高く保つ。また、温度差、振動等に起因する光学機器の位置関係に経時変化が生じた場合でも、上述した校正機能でステレオカメラ装置100の測定精度を補償する。
【0033】
<装置構成>
図6は、カメラ10の分解斜視図である。カメラ10Aと10Bは同じ構成を有するため、一台のカメラ10として説明する。カメラはレンズ21と、プリント基板25に実装されたイメージセンサ23を備える。レンズ21は、レンズセル211の内部に、複数のレンズ素子を有する。イメージセンサ23は、たとえばCMOSセンサである。レンズ21と、イメージセンサ23が実装されたプリント基板25は、アルミダイカスト製のベース部材22に組み込まれて、単眼のカメラ10を構成する。ベース部材22には、レンズ21を受け取る円筒状の螺合穴24が形成されている。螺合穴24は、ベース部材22のZ方向に突き出た円筒223の内部に、レンズ21の光軸と同軸に形成されている。プリント基板25は、イメージセンサ23がレンズ21の光軸と同軸になるように、ベース部材22の取付面221、及び222に固定される。
【0034】
ベース部材22の取付面221は、イメージセンサ23の周囲を囲み、取付面221の外側の複数個所に取付面222が設けられている。後述するように、取付面222は、プリント基板25の外縁の近傍を複数個所にわたって仮固定するために用いられ、取付面221で最終的にプリント基板25を固定する。取付面222を、イメージセンサ23の中心軸に対して対称の位置に設けることで、仮固定時の接着剤の硬化収縮に伴ってプリント基板25に偏った引張応力が発生することを防止し、位置ずれを抑制する。
【0035】
図7は、ステレオカメラ装置100の分解斜視図、図8A図1のYZ面に沿った垂直断面図、図8B図1のXZ面に沿った水平断面図である。図7、及び図8Bに示すように、カメラ10A及び10Bと、測距センサ20は、保持部材30に取り付けられる。図6を参照して説明したように、カメラ10Aのレンズ21Aは、ベース部材22Aの螺合穴24Aに嵌め込まれ、レンズ21Aの光軸と、プリント基板25Aに実装されたイメージセンサ23Aと光軸がそろえられる。ベース部材22Aの円筒223は、保持部材30の嵌合穴13Aに挿入されて、位置決めされる。
【0036】
同様に、カメラ10Bのレンズ21Bは、ベース部材22Bの螺合穴24Bに嵌め込まれ、レンズ21Bの光軸と、プリント基板25Bに実装されたイメージセンサ23Bと光軸がそろえられる。ベース部材22Bの円筒223(図6参照)は、保持部材30の嵌合穴13Bに挿入されて、位置決めされる。
【0037】
嵌合穴13Aと13Bによって、カメラ10Aと10Bはそれぞれの光軸が平行となるように保持部材30に取り付けられる。カメラ10Aと10Bのそれぞれで、イメージセンサ23A,23Bを実装するプリント基板25A、25Bは、レンズ21A、21Bに対して光軸がそろえられ、かつ光軸を回転軸とするチルト角とが既定されている。したがって、カメラ10Aと10Bが、互いに光軸を平行にして保持部材30に取り付けられた後でも、各カメラ10で位置決めされた光学配置が維持される。
【0038】
測距センサ20は、プリント基板31に実装されている。測距センサ20は、その光ビーム入出射窓が保持部材30の開口14内に露出するように、カメラ10Aと10Bのほぼ中間に配置される。測距センサ20は、光源と光検出器の光軸が同一方向に揃った状態で、保持部材30に取り付けられている。これにより、カメラ10A及び10Bと測距センサ20は、それぞれの光軸が適切に調整された状態で、保持部材30に保持される。
【0039】
図8A、及び図8Bに示すように、レンズ21Aと21Bは、それぞれが複数のレンズ素子の組み合わせで形成されている。レンズ21Aと21Bは、ベース部材22Aと22Bに形成された螺合穴24Aと24Bに螺合され、イメージセンサ23Aと23Bの撮像面が略同一面となるように固定される。
【0040】
レンズ21A及び21Bは、たとえば、複数のレンズ素子を組み合わせたレトロフォーカスタイプのレンズであり、各レンズ素子は軸芯を合わせてレンズセル211に収容されている。レンズセル211には、光軸を位置決めする嵌合部62、レンズ21を光軸方向に所定の軸力で螺合させる螺合部63、及び、係止部64が形成されている。一般にレトロフォーカスレンズのような広角レンズでは焦点距離が短く、図示するように光学系の主点位置65がイメージセンサ23側に偏った配置となる。このようなレトロフォーカス型の配置であっても、螺合穴24の内部で各レンズ素子の位置ずれや姿勢変化によって主点位置65が変動しないことが望ましい。
【0041】
実施例では、嵌合部62を最もイメージセンサ23に近いレンズセル211の端部に設けることで、少なくとも光学系の主点位置65の近傍でレンズ21を固定し、光軸に対して各レンズ素子の平行度を保つ。
【0042】
螺合穴24と螺合する螺合部63は、嵌合部62よりも被写体側(イメージセンサ23から遠い側)に設けられ、係止部64はさらに被写体側に設けられている。レンズ21が螺合穴24と螺合したときに、係止部64が所定の軸力でベース部材22に突き当たり、レンズ21をイメージセンサ23に対して位置決めできる。温度変化による膨張収縮、経年劣化によるクリープ等があっても、振動や衝撃に耐えうる軸力が保持される。
【0043】
レンズ21Aと21Bはそれぞれ、嵌合部62Aと62Bによって拘束されるため、例えば温度が上昇すると、熱膨張によってイメージセンサ23Aと23Bから遠ざかる方向に移動する。一方、主点位置65は螺合部63に対して相対的にイメージセンサ23に近づくように移動する。これにより、主点位置65とイメージセンサ23との距離の変動を低減でき、温度変化による結像特性の変化を抑制できる。
【0044】
イメージセンサ23A、23Bを実装するプリント基板25A、25Bは、ベース部材22A、22Bに固定されたレンズ21A、21Bのそれぞれに対し、結像特性が適正になるようにアライメント調整される。アライメント調整では、光軸(Z)方向の位置、光軸と直交するXY面内での座標、x軸回りのチルト成分α、y軸回りのチルト成分β、及びz軸周りのチルト成分γの6つの要素についてアライメント調整される。その後、アライメントされた位置と姿勢を維持したまま、ベース部材22A、22Bに形成された取付面222(図6参照)とプリント基板25A、25Bとの隙間に装填された紫外線(UV)硬化型の接着剤にUV光を照射して硬化させる。
【0045】
この接着硬化により、アライメント調整されたプリント基板25A、25Bは仮固定され、レンズ21A、21Bに対するイメージセンサ23A、23Bの撮像面の位置と姿勢が保持される。
【0046】
一方、ベース部材22A,22Bの取付面221(図6参照)には、あらかじめ熱硬化型接着剤が塗布されており、アライメント調整が済んだカメラ10A,10Bを加熱炉に投入し、熱硬化型接着剤を硬化させる。これにより、炎天下を想定した高温環境に放置しても、ベース部材22A、22Bとプリント基板25A、25Bの間の接着強度が保たれる。
【0047】
実施例では、UV硬化型接着剤として、比較的衝撃と引っ張りに強く、柔軟性の高いアクリル樹脂またはウレタン樹脂を主成分とした接着剤を用いる。熱硬化型接着剤として、耐熱性が高く、硬く強靭なエポキシ樹脂を主剤とした接着剤を用いる。ベース部材22に2種類の取付面221、及び222を設けて塗布位置を離隔し、柔軟性が高いUV硬化型の接着剤を外側に配置することで、ベース部材22とプリント基板25の熱膨張係数の違いによるせん断応力による剥離を防止する。
【0048】
熱硬化型接着剤は、UV硬化型接着剤よりも分子間の凝集力、つまりヤング率(弾性率)が高いか同等の弾性率の接着剤を選択するのがよい。UV硬化型接着剤と熱硬化型接着剤は、主剤が同一であっても構わない。たとえば、エポキシ樹脂を主剤として用い、配合する硬化促進剤を選択することで、工程の設計要件に応じてUV硬化型か、熱硬化型かを使い分けてもよい。
【0049】
一般に、UV硬化型接着剤は短時間のUV照射により硬化するため、組立工程のタクトタイムを担保するためには有効であるが、耐熱性が不十分な場合がある。熱硬化型接着剤は、耐熱性は高いものの、完全硬化するまで長時間(1時間以上)を要するため、アライメント調整工程に組込むことは難しい。
【0050】
したがって、実施例では、アライメント調整が完了したら、まずUV硬化型接着剤で仮固定を行う。その後、調整済の半完成品を複数個まとめて加熱炉に投入し、熱硬化型接着剤を硬化させるバッチ処理を行うように、工程設計がなされている。これにより、ベース部材22の取付面222がUV照射光のエネルギーが到達しにくい部位であっても、最終的な接着力を確保する。
【0051】
また、図6に示されるように、ベース部材22の取付面221は、イメージセンサ23の周囲を囲んでおり、熱硬化型接着剤でプリント基板25と取付面221を接着封止することで、カメラ10内部への塵や水滴の侵入を防止する。
【0052】
実施例では、タクトタイム短縮のために、UV硬化型接着剤と熱硬化型接着剤を併用する例を示したが、この手法に限定されない。たとえば、熱硬化型接着剤に短時間、熱風を当ててアライメント調整がずれない程度に仮硬化させ、その後、まとめて加熱炉に投入して完全硬化する手法でもよい。後者の手法でもタクトタイムへの影響は少なく、必ずしもUV硬化型接着剤を用いなくてもよい。
【0053】
接合の機械的強度と信頼性を担保するために、完全硬化に先立って短時間で仮硬化できる工程を追加することができれば、UV硬化型、または熱硬化型に限定されず、どのような種類の接着剤を組み合わせてもよい。
【0054】
カメラ10A、10Bをそれぞれ個別にアライメント調整し、熱硬化型接着剤を完全硬化させた後に、単眼での検査を行って保持部材30に取り付ける。レンズ21A、21Bの光軸と同軸に形成されたベース部材22A、22Bの円筒223を、保持部材30の嵌合穴13A、13Bに挿入し、回転方向でベース部材22A、22Bの外表面を係止部29(図7参照)に突き当てることで、光軸周りの位置と姿勢が決まる。
【0055】
レンズ21A、21Bの光軸と直交するXY面内で、ベース部材22A、22Bの前面を保持部材30の当接面30aに突き当て、ねじ締結によりカメラ10A、10Bを保持部材30に固定する。この当接面30aは、カメラ10A、10Bに共通の位置決め手段として機能する。上述したアライメント調整の際にも、当接面30aを基準としてベース部材22に対するプリント基板25の配置を調整できる。
【0056】
実施例では、カメラ10A、10Bをあらかじめベース部材22A、22Bに個別に組付けた後に、保持部材30に固定する構成としたが、ベース部材22A、22Bを用いずに、螺合穴24、取付面221、及び222を保持部材30に設けて、レンズ21A、21Bとプリント基板25A、25Bを、保持部材30に直接組付ける構成でもよい。
【0057】
ハウジングケース101の上ケース15の前面には、カメラ用開口部16と測距用開口部17が形成され、下ケース40の背面に、外部インターフェイスとなるケーブル配線400(図8A参照)用の開口43が形成されている。上ケース15と下ケース40は、ハウジングケース101の前側と背面側で機能が分担されるように、XZ面(図1参照)に対して斜めに傾斜する接合面(または分割面)42を有する。上ケース15と下ケース40は、接合面42にて面一で連結される。
【0058】
上ケース15と下ケース40は、それぞれが三角柱の形状を有する。上ケース15は、ハウジングケース101の前面と上面を構成し、下ケース40は、ハウジングケース101の背面と底面を構成する。上ケース15の側面は、斜辺が下向きの三角形であり、下ケース40の側面は、斜辺が上向きの三角形である。上ケース15と下ケース40を、上ケース15の上面または下ケース40の底面と水平な面に対して斜めに傾斜する接合面42で接合することで、矩形のハウジングケース101が組み立てられる。上ケース15と下ケース40の各々を、直方体のケースを斜めに分断した三角柱の形状とすることで、分割面を少なくとして、防水効果を高めることができる。また、ハウジングケース101の製造と組み立てが容易である。
【0059】
上ケース15と下ケース40を、接合面42でシリコーンゴム製のシート状のシール部材44を間に挟んで連結することで、ステレオカメラ装置100内部への塵や水滴の侵入を防止する。実施例では、上ケース15と下ケース40との間の熱伝導を抑制するため、シート状のシール部材44を用いて、上ケース15と下ケース40が直接接触しない構成を採用しているが、この例に限定されない。上ケース15と下ケース40の一方に溝を形成し、パッキンを嵌め込むなど一般的なシーリング法を用いてもよい。
【0060】
カメラ10A、10Bと測距センサ20は、上ケース15に配置される。一例として、カメラ10A、10Bと測距センサ20が組付けられた保持部材30は、上ケース15の前面内壁に、光軸と直交するXY面で当接してネジ止めされる。カメラ10A及び10Bと測距センサ20との光学的な位置関係を維持した状態で、上ケース15への保持部材30の取り付けと、取外しを可能とする。これにより、カメラ10A、10B、及び測距センサ20をハウジングケース101内に収容する際に、各光学機器の配置を個別に再調整する必要がなく、測距性能を保証できる。
【0061】
ハウジングケース101に外部から衝撃が加わっても、上ケース15と別体の保持部材30を配備したことで、カメラ10A、10B、及び測距センサ20の間の相対的な位置関係、姿勢等の変化を抑制することができる。上ケース15に形成されたカメラ用開口部16A、16B、及び測距用開口部17は、内面反射を防止するために、拡散形状(ギザギザ)に成形する、あるいは、つや消し黒塗装を施すなどして、強い日差しを避け、外乱光による検出不良の発生を抑制する構成にしてもよい。
【0062】
上ケース15の前面には、カメラ用開口部16A、16Bと測距用開口部17を覆うカバーガラス102が取り付けられる。カバーガラス102の外周をシーリング材で密閉してもよい。上述したように、カバーガラス18は1枚の板ガラスで構成されており、カメラ10A、10B、及び測距センサ20を一体化した状態で取付け、取外しを行っても、カバーガラス18の厚み、反り等のばらつきによって各々のカメラ10で発生するディストーション(歪曲収差)の差やピント位置のずれが抑制される。
【0063】
電子回路50が取り付けられたプリント基板41は、下ケース40に配置される。一例として、電子回路50が実装されたプリント基板41は、下ケース40の内側の底面に配置される。下ケース40を上ケース15から取り外すことで、ケーブル配線400との接続、メンテナンス等が行われる。
【0064】
上ケース15に保持されるプリント基板25A、25B、及びプリント基板31と、下ケース40に保持されるプリント基板41とは、上ケース15と下ケース40を組み合わせる際に、フレキシブル配線板(FPC)ケーブル48によって配線接続される。FPCケーブル48はハウジングケース101内に畳み込まれて収容される。
【0065】
外部インターフェイスとなるケーブル配線400は、中継コネクタ45、防水パッキン46、ロックナット47を含む。下ケース40の背面に形成された開口43に、防水パッキン46を挟んで、中継コネクタ45の螺合部を外側から挿入し、内側からロックナット47を締め付けることで、ケーブル配線400が取り付けられる。このケーブル配線400の構成により、ステレオカメラ装置100内への水、油、粉塵などの侵入を防止している。
【0066】
検出の分解能を向上するためには、撮像素子の画素数を増やす必要がある。撮像素子の画素数の増加にともなって、必然的に電子情報処理量も増加し、電子回路50による発熱も増加する。
【0067】
実施例では、下ケース40に放熱経路を設け、LSIC、FPGAなどで形成される電子回路50を実装するプリント基板41で発生した熱を下ケース40から外部に逃がす。また、イメージセンサ23を実装するプリント基板25は、上述したように、熱硬化型またはUV硬化型の熱が伝わりにくい接着剤でベース部材22に接合されるため、プリント基板25で発生した熱は、主にFPCケーブル48を介してプリント基板41に伝熱される。たとえば、FPCケーブル48とプリント基板41の接地パターンをベタ配線にして積層するなどして、効率よく熱を下ケース40に伝達する構成にしてもよい。
【0068】
プリント基板41に実装された電子回路50を、放熱グリスにより下ケース40に密着させてもよい。放熱グリスはシリコーンオイルにアルミナなど熱伝導性のよい粉末を配合したペースト状の樹脂である。下ケース40に形成された台座面に放熱グリスを塗布し、下ケース40にプリント基板41を組み付けることで、電子回路50は下ケース40に密着される。
【0069】
放熱グリスを塗布する下ケース40の台座の面積は、発熱源であるLSI、FPGA等の発熱量(消費電力)と放熱グリスの熱抵抗とに基づいて決定される。放熱グリスの代わりにシート状のシリコーンパッドなどを用いてもよい。実施例では、プリント基板41の組み付け時には未硬化状態で、プリント基板41と台座面との隙間に応じて柔軟に広がって定着するペースト状の伝熱材を使用して、プリント基板41に押圧による過負荷がかからない構成にしている。
【0070】
下ケース40の外面に、表面積を広げるための放熱フィン401が形成されている。放熱フィン401と下ケース40の外面に、黒色塗装などの表面処理を施すことによって放熱性をさらに向上してもよい。下ケース40に伝達した熱が外気に効率よく輻射され、自然対流によって蓄熱しないように熱回路が形成されている。
【0071】
上述のとおり、上ケース15にカメラを含む光学系を集約し、下ケース40に電子回路50を配置することで、撮像機能と演算処理機能が分担される。上ケース15と下ケース40のいずれよりも熱抵抗が高いシール部材44を間に挟んで上ケース15と下ケース40を組み合わせることで、電子回路50を実装するプリント基板41で発生した熱は、下ケース40から放熱される。熱抵抗の低いシール部材44が緩衝材となって、下ケース40から上ケース15への伝熱を抑制できる。この構成により、レンズ21A、21Bを保持するベース部材22A、22Bへの熱の影響を最小限とし、レンズ21A、21Bの位置と姿勢を長期にわたって安定的に保持する。
【0072】
ステレオカメラ装置100は、例えばフォークリフトや油圧ショベルのヘッドガードを構成するフレームに直接装着され得る。実施例では、上ケース15に、車両への取付部49を設けている。ステレオカメラ装置100の車両への取り付け時に、光学的に視野を調整することで、カメラ10A及び10Bによる測距性能を保つことができる。
【0073】
ステレオカメラ装置100をフォークリフトや油圧ショベルに装着する場合、車両と物体との接触距離だけでなく、積荷端と物体との接触距離の推定も必要である。前方と後方にそれぞれステレオカメラ装置100を配備して、回転動作に対応した360度検出を可能とするシステムでは、視野の連続性を担保する必要がある。そのため、ステレオカメラ装置100を車両に取り付ける際には、現場の状況に応じて物体識別機能を調整できることが望ましい。物体識別機能のアップデート、電子回路50の動作不良、シール部材44の経年劣化などで部品交換が必要になった場合、カメラ10A及び10Bが保持される上ケース15を車両に固定したままで下ケース40を取り外して、メンテナンス作業を行うことができる。ステレオカメラ装置100は、車両搭載に適した構成を有し、かつ、測距性能を保つことができる。ステレオカメラ装置100は、車両だけではなく、ドローン等の飛行体、船舶等の移動体への搭載に適している。
【0074】
ハウジングケース101とは別の保持部材30で、カメラ10A及び10Bと測距センサ20とを一体的に保持しているので、カメラ10A及び10Bと、測距センサ20との位置関係が正確に保たれている。カメラ10A、10B、測距センサ20等の光学機器を直接ハウジングケース101に取り付けると、光学系に対する振動や熱の影響が大きくなるが、実施例の構成により、撮像系への環境の影響を最小にして、測距精度を維持する。保持部材30は上ケース15に固定されているので、下ケース40を取り外す場合でも、カメラ10A、10Bと測距センサ20を含む撮像系と車両との位置関係が保たれる。なお、測距センサ20と、カメラ10A及び10Bが所定の位置関係に維持されるならば、必ずしも保持部材30で一体保持されていなくてもよい。たとえば、測距センサ20と、カメラ10A及び10Bが別々の保持部材に取り付け、測距センサ20とカメラ10A及び10Bとの位置関係が保たれるように保持部材同士を組み合わせ、または連結させてもよい。
【0075】
ステレオカメラ装置100では、屋外環境でも測距性能の劣化が抑制される。ステレオカメラ装置100が車両、ドローン等の移動体に取り付けらえたときに、移動体の移動速度、または方向と関係なく視差から距離を算出するので、近距離領域において精度良く物体検知と距離推定を行える。またレトロフォーカスレンズを用いて、視野角120°以上の広角近視野で、作業者と資材とを判別できる。
【符号の説明】
【0076】
10A、10B カメラ
13 嵌合穴(位置決め手段)
15 上ケース(第1ケース部材)
16A,16B カメラ用開口部
17 測距用開口部
20 測距センサ
22 ベース部材
25、25A、25B、31、41 プリント基板
30 保持部材
30a 当接面
40 下ケース(第2ケース部材)
42 接合面
43 開口(外部インターフェイス用)
44 シール部材
49 取付部
50 電子回路
50A 制御部
51 画像処理部
52 視差演算部
53 校正演算部
54 距離演算部
55 データ入力部
100 ステレオカメラ装置
101 ハウジングケース(ケース)
102 カバーガラス
400 ケーブル配線(外部インターフェイス)
401 放熱フィン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開2012-189324号公報
【特許文献2】特開2012-167944号公報
【特許文献3】特開平11-325890号公報
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B