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特開2022-146486技工物識別システム、技工物識別方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146486
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】技工物識別システム、技工物識別方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/38 20060101AFI20220928BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A61C13/38
A61C19/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047474
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】514306629
【氏名又は名称】株式会社DSi
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩志
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052NN04
4C052NN16
(57)【要約】
【課題】完成した歯科技工物がどの患者のものであるかを容易に識別することができる技工物識別システム、技工物識別方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】技工物識別システム100は、技工指示書と関連づけられたSTLデータである基準形状データを取得する基準形状データ取得部101と、識別対象技工物形状データを取得する識別対象技工物形状データ取得部103と、前記基準形状データに基づく第1の特徴量と、前記識別対象技工物形状データに基づく第2の特徴量と、を比較して両者の類似度を判定する類似度判定部105と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
技工指示書と関連づけられたSTLデータである基準形状データを取得する基準形状データ取得部と、
識別対象技工物形状データを取得する識別対象技工物形状データ取得部と、
前記基準形状データに基づく第1の特徴量と、前記識別対象技工物形状データに基づく第2の特徴量と、を比較して両者の類似度を判定する類似度判定部と、を有する
技工物識別システム。
【請求項2】
前記基準形状データは、前記STLデータ以外の形式のデータであって、口腔内の形状データ、技工物の設計データ又は基準技工物の形状データのいずれかである
請求項1記載の技工物識別システム。
【請求項3】
前記基準形状データと、患者の識別子と、を対応付けて蓄積する形状データ蓄積部と、
前記基準形状データに対応付けられた前記患者の識別子を前記形状データ蓄積部から前記類似度に応じて抽出し出力する出力部と、をさらに有する
請求項1記載の技工物識別システム。
【請求項4】
前記第1の特徴量及び前記第2の特徴量は、マージンラインの形状に関する情報を含む
請求項1記載の技工物識別システム。
【請求項5】
前記基準形状データ取得部は、前記技工指示書に関連づけられた二次元コードを読み取り、前記二次元コードに関連づけられた格納場所から前記基準形状データを取得する
請求項1記載の技工物識別システム。
【請求項6】
情報処理装置が、
サーバから技工指示書を取得するステップと、
前記技工指示書に関連づけられた二次元コードを読み取るステップと、
前記二次元コードに関連づけられた格納場所から前記基準形状データを取得するステップと、
識別対象技工物形状データを取得するステップと、
前記基準形状データに基づく第1の特徴量と、前記識別対象技工物形状データに基づく第2の特徴量と、を比較して両者の類似度を判定する類似度判定ステップと、を有する
技工物識別方法。
【請求項7】
情報処理装置に、
サーバから技工指示書を取得するステップと、
前記技工指示書に関連づけられた二次元コードを読み取るステップと、
前記二次元コードに関連づけられた格納場所から前記基準形状データを取得するステップと、
識別対象技工物形状データを取得するステップと、
前記基準形状データに基づく第1の特徴量と、前記識別対象技工物形状データに基づく第2の特徴量と、を比較して両者の類似度を判定する類似度判定ステップと、を実行させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、技工物識別システム、技工物識別方法及びプログラムに関し、具体的には、完成した歯科技工物がどの患者のものであるかを識別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科技工物(以下、単に技工物ともいう)は歯科模型に基づいて作成されることがほとんどであった。典型的には、歯科医院において患者の歯型が採取され、歯型をベースに歯科模型が作成される。歯科模型は、患者を識別できる情報とともに歯科技工所(以下、単に技工所という)に送られる。技工所は歯科模型上にワックスで技工物を構築し、このワックス製技工物の型をとって鋳型を作成する。この鋳型に金属等の材料を流し込むことで、技工物を得る。
【0003】
技工所は、異なる患者の技工物の作成を同時期に受注することがある。この際、それらの技工物が同じ部位、同じ材質のものであると、完成した技工物がどの患者のものであったかを識別することが困難になる場合がある。技工物には患者名を記入することができないためである。このような場合、技工所は完成した技工物をパズルのように歯科模型に合わせてみることで識別を行うことがある。歯科模型には患者名を記入することができるので、歯科模型を介して技工物と患者との対応関係を確認するのである。
【0004】
一方、最近では、歯科医院が歯科模型を作成せずに口腔内スキャンデータを受け渡すことで技工物を発注する手法が提案されるようになった(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-006651号公報
【特許文献2】特表2019-511293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
口腔内スキャンデータに基づいて技工物を作成する場合には、歯科模型を必ずしも製作しなくても良くなるため、コスト削減などの観点から歯科模型を用いない発注形態が増える可能性がある。また、従来のように歯科模型を制作する場合であっても、技工物の制作過程では歯科模型が破損してしまうことも少なくない。このような場合は、パズルのように歯科模型に合わせてみることで技工物を識別することができない。したがって、たとえ歯科模型が存在しなくても、完成した技工物と患者との対応関係を識別する手法の提供が望まれる。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、完成した歯科技工物がどの患者のものであるかを容易に識別することができる技工物識別システム、技工物識別方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態に係る技工物識別システムは、技工指示書と関連づけられたSTLデータである基準形状データを取得する基準形状データ取得部と、識別対象技工物形状データを取得する識別対象技工物形状データ取得部と、前記基準形状データに基づく第1の特徴量と、前記識別対象技工物形状データに基づく第2の特徴量と、を比較して両者の類似度を判定する類似度判定部と、を有する。
本発明の一実施の形態に係る技工物識別システムにおいて、前記基準形状データは、前記STLデータ以外の形式のデータであって、口腔内の形状データ、技工物の設計データ又は基準技工物の形状データのいずれかである。
本発明の一実施の形態に係る技工物識別システムにおいて、前記基準形状データと、患者の識別子と、を対応付けて蓄積する形状データ蓄積部と、前記基準形状データに対応付けられた前記患者の識別子を前記形状データ蓄積部から前記類似度に応じて抽出し出力する出力部と、をさらに有する。
本発明の一実施の形態に係る技工物識別システムにおいて、前記第1の特徴量及び前記第2の特徴量は、マージンラインの形状に関する情報を含む。
本発明の一実施の形態に係る技工物識別システムにおいて、前記基準形状データ取得部は、前記技工指示書に関連づけられた二次元コードを読み取り、前記二次元コードに関連づけられた格納場所から前記基準形状データを取得する。
本発明の一実施の形態に係る技工物識別方法は、情報処理装置が、サーバから技工指示書を取得するステップと、前記技工指示書に関連づけられた二次元コードを読み取るステップと、前記二次元コードに関連づけられた格納場所から前記基準形状データを取得するステップと、識別対象技工物形状データを取得するステップと、前記基準形状データに基づく第1の特徴量と、前記識別対象技工物形状データに基づく第2の特徴量と、を比較して両者の類似度を判定する類似度判定ステップと、を有する。
本発明の一実施の形態に係るプログラムは、情報処理装置に上記方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、完成した歯科技工物がどの患者のものであるかを容易に識別することができる技工物識別システム、技工物識別方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】技工物識別システム100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】技工物識別システム100の機能構成の一例を示す図である。
図3】技工物識別システム100の機能構成の一例を示す図である。
図4】口腔内形状を説明する図である。
図5】技工物識別システム100の動作の一例を示す図である。
図6】口腔内形状データの共有処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、技工物識別システム100のハードウェア構成の一例を示す図である。技工物識別システム100は、CPU11、ROM12、RAM13、不揮発性メモリ14、バス10、入出力装置60を有する。
【0013】
CPU11は、技工物識別システム100を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、ROM12に格納されたシステム・プログラムをバス10を介して読み出し、システム・プログラムに従って技工物識別システム100全体を制御する。
【0014】
ROM12は、各種処理を実行するためのシステム・プログラムを予め格納している。RAM13は、一時的な計算データや表示データ、入出力装置60を介してユーザが入力したデータやプログラム等を一時的に格納する。
【0015】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされており、技工物識別システム100の電源が遮断されても記憶状態を保持する。不揮発性メモリ14は、入出力装置60から入力されるデータやプログラム等を格納する。不揮発性メモリ14に記憶されたプログラムやデータは、実行時及び利用時にはRAM13に展開されても良い。
【0016】
入出力装置60は、ディスプレイやキー入力インタフェース等を備えたデータ入出力装置である。入出力装置60は、インタフェース18を介してCPU11から受けた情報をディスプレイに表示する。入出力装置60は、キー入力インタフェース等から入力された指令やデータ等をインタフェース18を介してCPU11に渡す。
【0017】
なお、本実施の形態では技工物識別システム100をスタンドアロン型の情報処理装置として構成する場合を想定しているが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば上述のようなハードウェアをそれぞれ有する複数の情報処理装置が協働することにより実現されるものであっても良い。例えば、技工物識別システム100はクラウドコンピューティング技術を利用して構成することもできる。
【0018】
図2は、技工物識別システム100の機能構成の一例を示すブロック図である。技工物識別システム100は、基準形状データ取得部101、識別対象技工物形状データ取得部103、類似度判定部105、形状データ記憶部107を有する。
【0019】
基準形状データ取得部101は、基準形状データを取得する。基準形状データとは、誰のものか分からなくなった技工物(以下、識別対象技工物)を識別する際に基準として用いられる形状データをいう。基準形状データには、例えば患者の口腔内の形状データ(以下、口腔内形状データ)、技工物の設計データ、どの患者のものであるかが判明している技工物(以下、基準技工物)の形状データ(以下、基準技工物形状データ)等が含まれる。
【0020】
口腔内形状データは、口腔を開いた状態における上顎部及び下顎部の歯、支台歯、及びこれらの間に形成される空隙の形状を示すデータ(以下、上顎データ及び下顎データと称する)、並びに、口腔を閉じた(噛み合わせた)状態における歯列の形状を示すデータ(以下、上下バイトデータと称する)を含む(図4参照)。口腔内形状データは、例えば口腔内スキャナにより取得可能なSTL(Standard Triangulated Language)データをはじめとする3次元形状データ、レントゲンやCT(Computed Tomography)スキャンで取得された2次元画像データ等に基づいて構成される3次元形状データであって良い。基準形状データ取得部101は、口腔内スキャナ、レントゲン装置、CTスキャン装置又はこれらが出力するデータを加工する任意の情報処理装置などから口腔内形状データを入力する。また、基準形状データ取得部101は、口腔内形状データに対応する患者の識別子の入力を受け付ける。
【0021】
設計データは、口腔内形状データを基に作成される、技工物の形状を定義した3次元形状データである。設計データは、例えばSTLデータであり、技工物の鋳造、削り出し加工等を行う際に使用される。典型的には、技工所又はメーカーが、歯科医院で取得された口腔内形状データに基づいて設計データを作成する。より具体的には、既存のテンプレートを口腔内データに基づいて修正することにより設計データを完成する。基準形状データ取得部101は、設計装置や、設計データを保管できる指示書発行装置などから設計データを取得する。また、基準形状データ取得部101は、設計データに対応する患者の識別子の入力を受け付ける。
【0022】
基準技工物には、例えば加工途中の技工物、患者の口腔内形状の型取りをした歯科模型等が含まれる。基準技工物形状データは、例えば深度情報を取得するデプスセンサ等により基準技工物を計測することで取得可能な3次元形状データ、カメラで基準技工物を撮影することで取得された2次元画像データ等に基づいて構成される3次元形状データであって良い。基準形状データ取得部101は、デプスセンサ、カメラ又はこれらが出力するデータを加工する任意の情報処理装置などから基準技工物形状データを入力する。また、基準形状データ取得部101は、基準技工物形状データに対応する患者の識別子の入力を受け付ける。
【0023】
識別対象技工物形状データ取得部103は、識別対象技工物の形状を示すデータ(以下、識別対象技工物形状データ)を取得する。識別対象技工物は、それがどの患者のものであるか分からない技工物である。識別対象技工物形状データ取得部103は、基準形状データ取得部101が基準技工物形状データを取得する場合と同様の手法で、識別対象技工物形状データを取得することができる。
【0024】
形状データ記憶部107は、口腔内形状データ、設計データ及び基準技工物形状データ、識別対象技工物形状データを格納する記憶領域である。このうち口腔内形状データ、設計データ及び基準技工物形状データは、通常、患者識別情報(氏名や識別番号など)と紐付けて格納される。患者識別情報は、口腔内形状データ、設計データ及び基準技工物形状データとともに供給されるものとする。
【0025】
類似度判定部105は、識別対象技工物形状データを入力して、これを形状データ記憶部107に格納されている口腔内形状データ、設計データ又は基準技工物形状データと比較し、両者の類似度を算出する。類似度判定部105は、特徴抽出部1051、比較部1053、出力部1055を有する。
【0026】
特徴抽出部1051は、口腔内形状データ、設計データ又は基準技工物形状データ、及び識別対象技工物形状データから特徴量を抽出する。本実施の形態における特徴量とは、口腔内、設計データ、基準技工物、識別対象技工物の形状の特徴を定量的に表現した数値である。例えば、形状に含まれる特徴的な点の座標値や、特徴的な面の法線ベクトル等を特徴量として用いて良いが、これらに限定することなく任意の特徴量を採用して構わない。
【0027】
特徴量は、マージンラインの形状を示すものを含むことが望ましい。マージンラインとは、支台歯(技工物の土台となる歯)を形成した後に残った歯質と、技工物との境界面を示す仮想的なラインである。マージンラインは、識別対象技工物の形状を特徴づける重要な特徴である。技工物の外形は、上顎データ又は下顎データに含まれる支台歯の形状や、上下バイトデータから取得できる窩洞の形状に基づいて、概ね決定される。典型的には、予め用意された幾つかの形状パターンの中から最適なものを選択することにより、略自動的に決定できる。また、技工物の咬合面の形状も、予め用意された幾つかの形状パターンから最適なものを選択することで、略自動的に決定できる。しかしながら、技工物の根元側にあたるマージンラインについては、患者個々による差異が大きく、歯科技工士が患者ごとに個別に設計している。マージンラインを自動設計することも可能ではあるが、この場合もその形状には個人差が生じる。したがって、マージンラインの形状は、同じものが2つとない指紋のような特徴となりうる。
【0028】
マージンラインを特徴量として抽出可能な技工物(例えば差し歯、クラウン、インレイ等)については、特徴抽出部1051は、上述のようにマージンラインの形状を示す特徴量を抽出することで、高精度な類否判定が可能である。それ以外の技工物については、マージンライン以外の要素の特徴量を利用することができる。例えば、特徴抽出部1051は、技工物(維持装置を含む)の外形、空隙の形状(技工物の両隣にあたる歯の間の距離等)、口腔内の形状(隆起の状態)、小窩裂溝(歯の咬合面の溝)の形状(溝の位置や摩耗具合等を示す)等を示す特徴量を抽出することができる。例えば、部分入れ歯であれば、維持装置を含む技工物の外形と空隙の形状を示す特徴量、総入れ歯であれば口腔内形状(上顎下顎の歯茎の隆起の状態)を示す特徴量、インプラントであればインプラント土台の形状又は位置関係(隣の歯や他のインプラント土台までの距離を示す)を示す特徴量等を抽出することができる。なお、マージンラインの特徴量を利用可能な技工物であっても、マージンライン以外の特徴量を使って判定を行っても良い。又は、マージンラインの特徴量とその他の特徴量とを併用しても良い。
【0029】
比較部1053は、口腔内形状データ、設計データ又は基準技工物形状データの特徴量と、識別対象技工物形状データの特徴量と、を比較し、類似度を算出する。設計データ又は基準技工物形状データと、識別対象技工物形状データとは、両者の外形の特徴量を比較する手法により類似度判定を行うことができる。口腔内形状データと、識別対象技工物形状データとは、例えば口腔内の空隙の形状と識別対象技工物の形状とを比較する手法、又は、口腔内形状(隆起の状態など)と、技工物と口腔の接触面の形状と、を比較する手法により類似度判定を行うことができる。特徴量の比較による類似度判定については種々の手法が公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0030】
出力部1055は、識別対象技工物形状データに類似すると判定された口腔内形状データ又は基準技工物形状データ、及びこれらのデータに紐付けられた患者識別情報を出力する。例えば、形状データ記憶部107に格納されている口腔内形状データ及び基準技工物形状データのうち、類似度の高いものから数個のデータをランキング形式で表示しても良い。
【0031】
なお、上述の各処理部は、技工物識別システム100を構成する複数の情報処理装置に分散して実装されても良い。例えば、スマートフォン等の携帯情報端末に全ての処理部を実装してもよく、一部又は全部の処理部をクラウドコンピューティング技術を利用した仮想的な情報処理リソースによって構成することもできる。
【0032】
図5のフローチャートを用いて、技工物識別システム100の動作について時系列で説明する。
S1:基準形状データの取得
基準形状データ取得部101は、口腔内形状データ、設計データ又は基準技工物形状データ等を収集し、患者識別子と紐付けて形状データ記憶部107に蓄積する。口腔内形状データは、例えば歯科医院から技工物の発注を受ける際に、指示書発行システムを介して指示書とともに取得できる。基準技工物形状データは、例えば技工所において、焼成や洗浄など複数の患者の技工物が混在するような状況の前段階において取得すると良い。
【0033】
図6は、典型的な口腔内形状データであるSTLデータを、技工所が歯科医院から取得する際のフローの一例を示すチャートである。
S101:STLデータの作成
歯科医院においてSTLデータが作成される。例えば歯科医師が口腔内スキャナを使用して患者の口腔内形状をスキャンすることにより、口腔内スキャナがSTLデータを生成し、ローカルPCやクラウドストレージ等の記憶媒体にSTLデータを格納する。
【0034】
S102:STLデータの共有
歯科医院は、指示書発行システムを介してSTLデータを技工所と共有することができる。
【0035】
ここで指示書発行システムとは、典型的には歯科医院側端末、サーバ、及び技工所側端末を含むシステムであって、歯科医院が技工所に対し技工物の製造を発注するための機能を提供する(一例として特開2018-124868、特開2018-124872、特願2021-032920を参照)。一般に、歯科医院側端末では技工指示書を作成してサーバにアップロードすることができ、技工所側端末ではサーバにアップロードされた技工指示書を閲覧することが可能となっている。
【0036】
本実施の形態では、歯科医院側端末は、技工指示書を作成して発注を行う際に、又は発注を行った後に、当該発注に関連するSTLデータをサーバにアップロードする。サーバは、技工指示書が発行された(すなわち発注が行われた)とき、又はSTLデータアップロードされたとき、技工所側端末にその旨を通知する。技工所側端末は、技工指示書を端末上で閲覧したり印刷したりすることができるだけでなく、STLデータをダウンロードすることも可能である。これにより、歯科医院から歯科技工所にSTLデータが受け渡される。
【0037】
なお、技工所側端末だけでなく、技工所において使用される他の情報処理装置(例えば本実施の形態にかかる基準形状データ取得部101を備える情報処理装置や、技工物を設計するためのPC等)で直接STLデータをダウンロードできるようにしても良い。例えば、指示書発行システムの技工所側端末は、STLデータをダウンロードするための位置指定子(URL:Uniform Resource Locator等)を技工指示書又は他の帳票に印刷したり、画面表示したり、他の手段で出力したりすることができる。位置指定子は、例えば二次元コード(QRコード(登録商標))やバーコード等の形式にエンコードして印刷、表示又は出力することができる。この場合、基準形状データ取得部101は、二次元コード等を読み取って位置指定子を取得し、位置指定子が示すリソースにアクセスし、STLデータをダウンロードする。これにより、歯科医院から歯科技工所にSTLデータが受け渡される。
【0038】
なお、本実施の形態では技工所側端末が指示書発行システムのサーバからSTLデータをダウンロードする方法を主に開示したが、本発明はこれに限定されず、技工所側端末はSTLデータが格納されている任意の記憶領域からSTLデータを取得することが可能である。例えば、STLデータは、医療機器ベンダーや他のサービサーが提供する専用又は汎用のオンラインストレージに格納されていても良い。この場合、指示書発行システムのサーバは、STLデータが格納されているストレージにアクセスするための位置指定子を、技工指示書と関連づけて保持する。また、技工所側端末は、STLデータが格納されているストレージにアクセスするための位置指定子をサーバから取得して、技工指示書又は他の帳票に二次元コード等の形式で印刷したり、画面表示したり、他の手段で出力したりすることができる。
【0039】
また、本実施の形態ではSTLデータを受け渡すケースについて主に説明したが、本発明はこれに限定されず、任意のフォーマットの口腔内形状データ、設計データ又は基準技工物形状データ等を同様のスキームで共有することが可能である。また、歯科医院側端末、技工所側端末の機能は典型的にはPC又はタブレット端末等で動作するアプリケーション、又はウェブブラウザで動作するアプリケーションとして提供されうるが、他の任意の形態で提供されても構わない。
【0040】
S2:識別対象技工物形状データの取得
技工物がどの患者のものであるか分からなくなってしまった場合、識別対象技工物形状データ取得部103が起動される。識別対象技工物形状データ取得部103は、識別対象技工物形状データを取得する。
【0041】
S3:類似度判定
類似度判定部105は、S2で取得された識別対象技工物形状データを、S1で蓄積された基準技工物形状データと一つ一つ照合し、類似度判定を行う。
【0042】
S4:出力
出力部1055は、S3の結果を出力する。例えば、類似度が最も高いと判定された基準技工物形状データに対応する患者識別子を表示する。又は、類似度が高いと判定されたものから順に、基準技工物形状データに対応する患者識別子をランキング形式で表示することもできる。必要に応じ、類似度を示す指標等を併記しても良い。
【0043】
本実施の形態によれば、技工物がどの患者のものであるかを識別することが難しい状況であっても、過去に蓄積された基準技工物形状データと照合することで、容易に技工物に対応する患者を識別することができる。ここで、基準技工物形状データは、口腔内形状データ、設計データ又は基準技工物形状データであって良いので、従来のような歯科模型を用いる製作手法であっても、口腔内スキャナを用いた自動製作手法であっても、識別が可能である。
【0044】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を損なわない限りにおいて任意に変更されて良い。例えば、上述の実施の形態では、口腔内形状データ、設計データ又は基準技工物形状データのいずれか1つと、識別対象技工物形状データと、を比較する手法を主に開示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、口腔内形状データ、設計データ又は基準技工物形状データのうち複数のデータと、識別対象技工物形状データと、を比較しても良い。
【符号の説明】
【0045】
100 技工物識別システム
101 基準形状データ取得部
103 識別対象技工物形状データ取得部
105 類似度判定部
1051 特徴抽出部
1053 比較部
1055 出力部
107 形状データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6