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特開2022-146505ダンパ開度設定装置、ダンパ開度設定方法及びダンパ開度設定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146505
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ダンパ開度設定装置、ダンパ開度設定方法及びダンパ開度設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/04 20060101AFI20220928BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F24F7/04
F24F7/007 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047501
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 公雄
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
【Fターム(参考)】
3L056BD04
3L058BA04
3L058BC03
(57)【要約】
【課題】ダンパの開度をより柔軟に調整することができる。
【解決手段】複数のノードと、ノード間の接続部に配置され、開度が設定可能なダンパと、を含む解析モデルを取得するモデル取得部と、解析モデルのノード間を流れる流量と、各ノードの圧力の制約範囲を設定する流量圧力設定部と、ダンパの目標開度を設定するダンパ開度設定部と、解析モデルを制約範囲とダンパの目標開度に基づいて最適化計算を行い、制約条件を満たし、目標開度に近い開度となるダンパの開度を算出するモデル解析部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードと、ノード間の接続部に配置され、開度が設定可能なダンパと、を含む解析モデルを取得するモデル取得部と、
前記解析モデルのノード間を流れる流量と、各ノードの圧力の制約範囲を設定する流量圧力設定部と、
前記ダンパの目標開度を設定するダンパ開度設定部と、
解析モデルを制約範囲とダンパの目標開度に基づいて最適化計算を行い、制約条件を満たし、前記目標開度に近い開度となるダンパの開度を算出するモデル解析部と、を備えるダンパ開度設定装置。
【請求項2】
前記目標開度は、ダンパ開度の40%以上60%以下から設定された1つの値である請求項1に記載のダンパ開度設定装置。
【請求項3】
前記モデル解析部で算出した条件に基づいて、前記解析モデルに対応する空調システムで実行した運転データを取得する運転データ取得部と、
運転データと解析モデルの解析結果とを比較する比較部と、
比較部の比較結果で運転データと解析モデルの解析結果の差が閾値以上と判定した場合、前記モデル解析部の解析条件を変更する条件補正部と、を含み、
前記モデル解析部は、前記条件補正部で補正した条件でダンパ開度を再計算する請求項1また請求項2に記載のダンパ開度設定装置。
【請求項4】
前記条件補正部は、ダンパの開度と流抵抗係数の関係を補正する請求項3に記載のダンパ開度設定装置。
【請求項5】
前記条件補正部は、ダンパの目標開度を補正する請求項3または請求項4に記載のダンパ開度設定装置。
【請求項6】
前記条件補正部は、解析モデルにリークパスを追加する請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のダンパ開度設定装置。
【請求項7】
複数のノードと、ノード間の接続部に配置され、開度が設定可能なダンパと、を含む解析モデルを取得するモデル取得ステップと、
前記解析モデルのノード間を流れる流量と、各ノードの圧力の制約範囲を設定する流量圧力設定ステップと、
前記ダンパの目標開度を設定するダンパ開度設定ステップと、
解析モデルを制約範囲とダンパの目標開度に基づいて最適化計算を行い、制約条件を満たし、前記目標開度に近い開度となるダンパの開度を算出するモデル解析ステップと、を備えるダンパ開度設定方法。
【請求項8】
複数のノードと、ノード間の接続部に配置され、開度が設定可能なダンパと、を含む解析モデルを取得するモデル取得ステップと、
前記解析モデルのノード間を流れる流量と、各ノードの圧力の制約範囲を設定する流量圧力設定ステップと、
前記ダンパの目標開度を設定するダンパ開度設定ステップと、
解析モデルを制約範囲とダンパの目標開度に基づいて最適化計算を行い、制約条件を満たし、前記目標開度に近い開度となるダンパの開度を算出するモデル解析ステップと、を備える処理をコンピュータに実行させるダンパ開度設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダンパ開度設定装置、ダンパ開度設定方法及びダンパ開度設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
気密空間に接続された経路にダンパを備える空調設備がある。空調設備は、ダンパの開度を調整することで、気密空間の圧力や、気密空間に流入または気密空間から流出する空気の流量を調整する。空調設備のダンパの開度を設定する方法として、特許文献1の記載の方法がある。
【0003】
特許文献1には、コンピュータを使用して換気空調系のダクトの所定位置に設置されたダンパの開度に関する調整作業を支援する換気空調系ダンパの調整作業支援方法であって、ダクトの複数位置にノードを設定し、各ノードにおける圧力及び風量をダンパの開度に基づいて算出すると共に、各ダンパの開度を変更しながら所要のノードにおける圧力及び風量が予め決められた所定値となるように各ダンパの開度を決定する演算工程と、演算工程によって決定した各ダンパの開度を表示する表示工程と、からなることを特徴とする換気空調系ダンパの調整作業支援方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-235940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法のように、モデルを作成し開度を算出することで、実際のダンパの調整作業の負荷を小さくすることができる。しかしながら、特許文献1に記載の方法でも、ダンパの開度の調整が好適にできない場合がある。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、ダンパの開度をより柔軟に調整することができるダンパ開度設定装置、ダンパ開度設定方法及びダンパ開度設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るダンパ開度設定装置は、複数のノードと、ノード間の接続部に配置され、開度が設定可能なダンパと、を含む解析モデルを取得するモデル取得部と、前記解析モデルのノード間を流れる流量と、各ノードの圧力の制約範囲を設定する流量圧力設定部と、前記ダンパの目標開度を設定するダンパ開度設定部と、解析モデルを制約範囲とダンパの目標開度に基づいて最適化計算を行い、制約条件を満たし、前記目標開度に近い開度となるダンパの開度を算出するモデル解析部と、を備える。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るダンパ開度設定方法は、複数のノードと、ノード間の接続部に配置され、開度が設定可能なダンパと、を含む解析モデルを取得するモデル取得ステップと、前記解析モデルのノード間を流れる流量と、各ノードの圧力の制約範囲を設定する流量圧力設定ステップと、前記ダンパの目標開度を設定するダンパ開度設定ステップと、解析モデルを制約範囲とダンパの目標開度に基づいて最適化計算を行い、制約条件を満たし、前記目標開度に近い開度となるダンパの開度を算出するモデル解析ステップと、を備える。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るダンパ開度設定プログラムは、複数のノードと、ノード間の接続部に配置され、開度が設定可能なダンパと、を含む解析モデルを取得するモデル取得ステップと、前記解析モデルのノード間を流れる流量と、各ノードの圧力の制約範囲を設定する流量圧力設定ステップと、前記ダンパの目標開度を設定するダンパ開度設定ステップと、解析モデルを制約範囲とダンパの目標開度に基づいて最適化計算を行い、制約条件を満たし、前記目標開度に近い開度となるダンパの開度を算出するモデル解析ステップと、を備える処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ダンパの開度をより柔軟に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、空調システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、ダンパ開度設定装置の概略構成を示すブロック図である。
図3図3は、ダンパ開度設定装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
図4図4は、ダンパ開度設定装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
図5図5は、ダンパ開度設定装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0013】
(空調システム)
図1は、空調システムの概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係る空調システム10は、ダンパを介して接続された複数の気密空間(ノード)の空調を管理するシステムである。空調システム10の対象としては、プラントの圧力制御が必要な建屋、航空機、潜水設備等、複数の気密空間を備える構造物を対象とすることができる。
【0014】
本実施形態に係る空調システム10は、ノード12、14、16と、接続管18、20と、ダンパ22、24と、圧力センサ26、28、30と、流量センサ32、34と、制御装置40と、ダンパ開度設定装置50と、を含む。また、後述するが、空調システム10は、バイパスライン38を備えることが想定される。
【0015】
ノード12、14、16は、それぞれ気密空間である。接続管18は、ノード12とノード14を接続する。接続管20は、ノード14とノード16とを接続する。つまり本実施形態の空調システム10は、ノード12、接続管18、ノード14、接続管20、ノード16が直列で接続している。なお、空調システムは、ノードとノードとが壁で仕切られ、連結した構造でもよい。この場合、接続管は、壁に形成された穴となる。
【0016】
ダンパ22は、接続管18に配置されている。ダンパ24は、接続管20に配置されている。ダンパ22、24は、開度が調整可能な構造物であり、例えば流量調整弁である。ダンパ22、24、は開度を0の全閉にすることで、接続管18、20を流体が流れない状態とする。ダンパ22、24は、開度を100、全開にすることで、ダンパ22、24の抵抗が最も小さい状態で、接続管18、20を流体が流れる状態となる。
【0017】
圧力センサ26は、ノード12の圧力を検出する。圧力センサ28は、ノード14の圧力を検出する。圧力センサ30は、ノード16の圧力を検出する。圧力センサ26、28、30は、検出したノード12、14、16の圧力を制御装置40に送る。
【0018】
流量センサ32は、接続管18を流れる流体の流量を検出する。流量センサ34は、接続管20を流れる流体の流量を検出する。本実施形態は、気体が流れるため、流量センサ32、34は、風量を計測する。
【0019】
バイパスライン38は、空調システム10の構成上で生じる流体の漏れを規定するための仮想の構造物である。バイパスライン38は、ダンパ開度設定装置50の計算で使用される。
【0020】
本実施形態の空調システム10は、ノードを接続管で接続した換気系統として説明するが、各ノードの圧力を調整する各種空調の系統に適用することができる。また、ノードの接続関係は、直列に限定されず、並列で接続していてよい。また、ノードに、他のノードに接続されず他端が開放さされた接続管が配置されてもよい。なお、ノードに接続される接続管は、全てダンパが設置される構造となる。
【0021】
制御装置40は、空調システム10の各部の動作を制御する。また、制御装置40は、圧力センサ26、28、30で検出した結果、流量センサ32、34で検出した結果、ダンパ22、24の開度の情報等を、ダンパ開度設定装置50に送る。制御装置40は、コンピュータであり、通信部、記憶部、制御部等を含む。通信部は、制御部に用いられて、外部の装置と通信するモジュールであり、例えばアンテナなどを含んでよい。通信部による通信方式は、本実施形態では無線通信であるが、通信方式は任意であってよい。記憶部は、制御部の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。制御部は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部は、記憶部からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、空調システム10で検出した各種情報をダンパ開度設定装置50に供給する。なお、制御部は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。
【0022】
次に、図2を用いて、ダンパ開度設定装置50について説明する。図2は、ダンパ開度設定装置の概略構成を示すブロック図である。ダンパ開度設定装置50は、空調システム10の各種条件に基づいて、条件を満たすダンパ22、24の開度を算出する。ダンパ開度設定装置50は、コンピュータであり、図2に示すように、入力部60と、出力部62と、通信部64と、演算部66と、記憶部68と、を備える。
【0023】
入力部60は、キーボード及びマウス、タッチパネル、またはオペレータからの発話を集音するマイク等の入力装置を含み、オペレータが入力装置に対して行う操作に対応する信号を演算部66へ出力する。出力部62は、ディスプレイ等の表示装置を含み、演算部66から出力される表示信号に基づいて、処理結果や処理対象の画像等、各種情報を含む画面を表示する。また、出力部62は、データを記録媒体で出力する記録装置を含んでもよい。通信部64は、外部機器と通信を行い取得した各種データ、プログラムを記憶部16に送り、保存する。通信部は、有線の通信回線で外部機器と接続しても、無線の通信回線で外部機器と接続してもよい。
【0024】
演算部66は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の集積回路(プロセッサ)と、作業領域となるメモリとを含み、これらのハードウェア資源を用いて各種プログラムを実行することによって各種処理を実行する。具体的に、演算部66は、記憶部68に記憶されているプログラムを読み出してメモリに展開し、メモリに展開されたプログラムに含まれる命令をプロセッサに実行させることで、各種処理を実行する。演算部66は、モデル取得部70と、流量圧力設定部72と、ダンパ開度設定部74と、モデル解析部76と、運転データ取得部78と、判定部80と、条件補正部82と、を含む。演算部66の各部の説明の前に記憶部68について説明する。
【0025】
記憶部68は、磁気記憶装置や半導体記憶装置等の不揮発性を有する記憶装置からなり、各種のプログラムおよびデータを記憶する。記憶部68は、ダンパ開度設定プログラム90と、解析モデルデータ92と、条件データ94と、を含む。
【0026】
また、記憶部68に記憶されるデータとしては、解析モデルデータ92と、条件データ94と、が含まれる。解析モデルデータ92は、空調システム10を解析のためにモデル化したものである。解析モデルデータ92は、オペレータの入力に基づいて作成しても、空調システム10の設計データに基づいて、プログラムで作成してもよい。条件データ42は、ダンパ開度設定プログラムするための条件の情報、例えば、閾値条件や補正条件等のデータを含む。
【0027】
記憶部18に記憶されるプログラムとしては、ダンパ開度設定プログラム90がある。ダンパ開度設定プログラム90は、演算部66で実行されることで、モデル取得部70と、流量圧力設定部72と、ダンパ開度設定部74と、モデル解析部76と、運転データ取得部78と、判定部80と、条件補正部82の各部の処理を実現する。
【0028】
次に、演算部66で実行する各部の機能について説明する。モデル取得部70は、ダンパの開度を設定する対象の空調システム10のモデルの情報を取得する。具体的には、図1の場合、ノード12、14、16、接続管18、20、ダンパ22、24の情報を含むモデルである。また、対象のモデルは、ノード12の圧力をp、ノード14の圧力をp、ノード16の圧力をpとし、接続管18を流れる空気の風量をg、接続管20を流れる空気の風量をgとする。
【0029】
流量圧力設定部72は、空調システム10のノードの圧力、接続管の風量の制約範囲を設定する。制約範囲は、所定の幅のある値である。ダンパ開度設定部74は、ダンパ22、24の目標開度を設定する。目標開度は、中間開度、つまり、全閉ではなく全開でもない開度である。目標開度を、中間開度とすることで、開度の増加、減少をしやすい値を目標開度とすることができる。ここで、ダンパ22は、開度と流抵抗係数との関係が規定されている。
【0030】
モデル解析部76は、設定した解析モデルを制約範囲、目標開度に基づいて最適化計算を行い、制約範囲を満たし、かつ、目標開度に近い、ダンパの開度を算出する。最適化計算の手法としては、種々の手法を用いることができる。
【0031】
運転データ取得部78は、モデル解析部76で算出したダンパの開度を空調システム10に適用して運転した場合の運転データを取得する。運転データ取得部78は、各部の圧力、風量の検出結果の情報を取得する。
【0032】
判定部80は、運転データ取得部78で取得した結果と制約範囲とを比較する。判定部80は、判定条件に基づいて、運転データ取得部78で取得した結果が収束条件を満たしているかを判定する。ここで、収束条件としては、制約範囲に含まれているかとしてもよいが、これに限定されない。判定部80は、制約範囲よりもさらに狭い範囲を収束条件としてもよい。判定部80は、モデル解析部76で解析した結果と、運転データ取得部78で取得した結果を比較してもよい。この場合、判定部80は、判定条件に基づいて、モデル解析部76で解析した結果と、運転データ取得部78で取得した結果との差が収束条件を満たしているかを判定する。
【0033】
条件補正部82は、判定部80で収束条件を満たしていないと判定した場合、解析モデルの解析の条件を補正する。補正する条件としては、ダンパの開度と流抵抗係数の関係、ダンパの中間開度、解析モデルの少なくとも1つがある。解析モデルの補正としては、ノードに対してリークパスを設定することが例示される。
【0034】
図3は、ダンパ開度設定装置の処理の一例を説明するフローチャートである。図3に示す処理は、モデル取得部70と、流量圧力設定部72と、ダンパ開度設定部74と、モデル解析部76の機能で実行することができる。
【0035】
ダンパ開度設定装置50は、換気系統を定義する(ステップS12)。つまり、ダンパ開度設定装置50は、空調システム10の空気が流れる系統をモデル化した解析モデルを取得する。
【0036】
ダンパ開度設定装置50は、風量、圧力の制約範囲を定義する(ステップS14)。具体的には、解析モデルのノードと接続管のそれぞれの位置での風量、圧力の制約範囲を設定する。ダンパ開度設定装置50は、ダンパ開度の中間開度(目標開度)を定義する(ステップS16)。具体的には、各ダンパについて、目標開度となる中間開度を設定する。ここで、中間開度は、開度を増加、減少、いずれの方向にも変化可能な開度である。
【0037】
ダンパ開度設定装置50は、風量、圧力の制約を満たし、かつ、中間開度に近いダンパ開度を最適化計算で算出する(ステップS18)。最適化計算の一例を説明する。Nをダンパの数、xをi番目のダンパの開度、xi,midをi番目のダンパの中間開度、g(x)を風量・圧力などの関数、g(下棒)を風量・圧力などの下限、g(上棒)を風量・圧力などの上限とした場合、風量・圧力の制約を等式制約または不等式制約とし、ダンパ開度とその中間開度との二乗誤差を目的関数とした、最適化問題の下記式で表すことができる。
【0038】
【数1】
【0039】
図1に示す排気系統の場合、最適化問題は、下記式で表すことができる。ここで、fはダンパの開度から流抵抗係数を求める関数である。また、ノードの圧力差は、流抵抗係数に比例し、風量の二乗に比例するものとした。
【数2】
【0040】
制約範囲、中間開度に基づいて、最適化問題を解くことで、制約範囲を満たし、中間開度に近いダンパの開度を算出することができる。
【0041】
また、ダンパ開度ではなく、流抵抗係数を直接最適化の対象とすることができる。この場合、流抵抗係数の目標値(すなわち、中間開度に相当する流抵抗係数)ki,midとおくと最適化問題は、次式のようになる。
【数3】
上記式で最適化問題を解いた場合、流抵抗係数の最適解からダンパ開度を求めることができる。
【0042】
ダンパ開度設定装置50は、上記処理で算出した計算結果を表示し(ステップS20)、本処理を終了する。
【0043】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係るダンパ開度設定装置50は、ダンパの目標開度を中間開度で設定し、制約条件を満たす開度を算出することで、中間開度に近い値で、制約範囲を満たすダンパの開度を算出することができる。これにより、ダンパ開度設定装置50は、ダンパの調整がしやすい開度をダンパの設定値とすることができる。つまり、ダンパ開度設定装置50の設定値を空調システム10に適用した後、調整が必要になった場合も、ダンパの開度、両方向に調整できるため、開度を調整しやすくでき、制約範囲を満たす運転状態に調整しやすくできる。
【0044】
ここで、目標開度、つまり中間開度は、一例として下記と設定することができる。例えば、中間開度は、ダンパの物理的な開度の中間値とすることができる。具体的には、ダンパの開度が、物理的に0度から90度まで調節できる場合、中間開度は45度とすることができる。また、ダンパの流抵抗係数から中間開度を逆算してもよい。具体的には、流抵抗係数が10から1000の範囲でダンパを使用したい場合、流抵抗係数が(指数的に)中間の100になる開度を目標開度に設定してもよい。なお、目標開度は、ダンパ開度を0%(全閉)から100%(全開)とした場合、の40%以上60%以下から設定された1つの値であることが好ましい。目標開度(中間開度)を上記範囲とすることで、開度の再調整が必要になった場合に、ダンパを開方向・閉方向のいずれにも充分な範囲で動かすことができる。これにより、開度を手動で調節するダンパの数を減らせるため、作業期間を短縮できる。
【0045】
(他の実施形態)
次に、他の実施形態について説明する。上記実施形態では、繰り返し計算を実行しない場合としたが、解析モデルを解析する条件を補正する処理を実行してもよい。図4は、ダンパ開度設定装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
【0046】
ダンパ開度設定装置50は、換気系統を定義し(ステップS32)、風量、圧力の制約範囲を定義し(ステップS34)、ダンパ開度の中間開度(目標開度)を定義する(ステップS36)。
【0047】
次に、ダンパ開度設定装置50は、風量、圧力の制約を満たし、かつ、中間開度に近いダンパ開度を最適化計算で算出する(ステップS38)。次に、ダンパ開度設定装置50は、計算結果を表示させる(ステップS40)。
【0048】
次に、空調システム10は、ダンパ開度設定を行い、試運転を行う(ステップS42)。つまり、ステップS38で算出した計算結果の開度にダンパを設定し、空調システム10を稼働させる。次に、空調システム10は、風量、圧力を計測する(ステップS44)。つまり、圧力センサ26、28、30、流量センサ32、34の計測結果を試験結果として取得する。空調システム10は、制御装置40でセンサの計測結果を取得し、取得した情報をダンパ開度設定装置50に送信する。
【0049】
次に、ダンパ開度設定装置50は、圧力、風量が、制約範囲内であるかを判定する(ステップS46)。具体的には、ダンパ開度設定装置50は、試運転で取得した空調システム10の計測結果の圧力、風量が、制約範囲内であるかを判定する。
【0050】
次に、ダンパ開度設定装置50は、圧力、風量が、制約範囲内ではない(ステップS46でNo)と判定した場合、圧力、風量の誤差が基準以下であるかを判定する(ステップS48)。ここで、基準値は、予め設定した値である。また、各センサを個別に判定しても、計測値を設定した演算式で処理した値を比較してもよい。
【0051】
次に、ダンパ開度設定装置50は、誤差が基準値以下である(ステップS48でYes)と判定した場合、ダンパの開度と流抵抗係数の関係を修正し(ステップS50)、ダンパの中間開度を修正し(ステップS52)、ステップS38に戻る。ダンパの開度と流抵抗係数の関係は、設定されたダンパの特性の情報の補正である。ダンパの中間開度の補正は、目標開度の補正となる。補正量は、あらかじめ設定した量としても、誤差に比例した量としてもよい。
【0052】
次に、ダンパ開度設定装置50は、誤差が基準値以下ではない(ステップS48でNo)と判定した場合、つまり誤差が基準値よりも大きい場合、リークパスをモデルに追加し(ステップS54)、ステップS38に戻る。リークパスのモデルの追加とは、例えば、モデルに図1のバイパスライン38の追加する処理である。
【0053】
ここで、リークパスの位置の推定方法の一例を説明する。まず、解析時にリークパスが存在するノードのペアの候補を設定する。例えば、図面上で隣接しているノード同士をペアの候補として設定する。次に、最適化計算で得られた候補ノード(例えば、ノードAとノードB)の圧力をそれぞれpA,opt、pB,optととし、測定で得られた圧力をそれぞれpA,mea、pB,meaとする。次に、θ1>0、θ2>0の閾値を設定し、以下の3つの式が全て成り立つときにリークパスを設定する。つまり、リークパスが存在すると圧力差が小さくなるため、圧力差が小さくなる経路を算出する。
A,opt>pA,mea+θ1
A,mea≧pB,mea
B,mea>pB,opt+θ2
【0054】
例えば、図1の経路の場合、最適化計算で得られたノード12、ノード16の圧力をそれぞれp1,opt=100[Pa]、p3,opt=300[Pa]であり、試運転時に測定したノード12、ノード16の圧力がそれぞれp1,mea=140[Pa]、p3,mea=250[Pa]であったとする。しきい値をθ1=30[Pa]、θ2=30[Pa]とすると、
3,opt=300>280=p3,mea+θ
3,mea=250>140=p1,mea
1,mea=140>130=p1,opt+θ2
となる。以上より、上記関係の場合、モデルにリークパスとなるバイパスライン38を設定する。
【0055】
一方、ダンパ開度設定装置50は、圧力、風量が、制約範囲内である(ステップS46でYes)と判定した場合、本処理を終了する。
【0056】
なお、上記実施形態では、制約範囲であるかを判定したが、収束条件は、制約範囲に限定されず、モデル解析部76の算出結果との誤差としてもよいし、制約範囲よりも厳しい範囲としてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、ダンパの中間開度を修正したが、中間開度を修正しなくてもよい。図5は、ダンパ開度設定装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
【0058】
ダンパ開度設定装置50は、換気系統を定義し(ステップS62)、風量、圧力の制約範囲を定義し(ステップS64)、ダンパ開度の中間開度(目標開度)を定義する(ステップS66)。
【0059】
次に、ダンパ開度設定装置50は、風量、圧力の制約を満たし、かつ、中間開度に近いダンパ開度を最適化計算で算出する(ステップS68)。次に、ダンパ開度設定装置50は、計算結果を表示させる(ステップS70)。
【0060】
次に、空調システム10は、ダンパ開度設定を行い、試運転を行う(ステップS72)。つまり、ステップS68で算出した計算結果の開度にダンパを設定し、空調システム10を稼働させる。次に、空調システム10は、風量、圧力を計測する(ステップS74)。つまり、圧力センサ26、28、30、流量センサ32、34の計測結果を試験結果として取得する。空調システム10は、制御装置40でセンサの計測結果を取得し、取得した情報をダンパ開度設定装置50に送信する。
【0061】
次に、ダンパ開度設定装置50は、圧力、風量が、制約範囲内であるかを判定する(ステップS76)。具体的には、ダンパ開度設定装置50は、試運転で取得した空調システム10の計測結果の圧力、風量が、制約範囲内であるかを判定する。
【0062】
次に、ダンパ開度設定装置50は、圧力、風量が、制約範囲内ではない(ステップS76でNo)と判定した場合、圧力、風量の誤差が基準以下であるかを判定する(ステップS78)。ここで、基準値は、予め設定した値である。また、各センサを個別に判定しても、計測値を設定した演算式で処理した値を比較してもよい。
【0063】
次に、ダンパ開度設定装置50は、誤差が基準値以下である(ステップS78でYes)と判定した場合、ダンパの開度と流抵抗係数の関係を修正し(ステップS80)、ステップS68に戻る。ダンパの開度と流抵抗係数の関係は、設定されたダンパの特性の情報の補正である。補正量は、あらかじめ設定した量としても、誤差に比例した量としてもよい。
【0064】
次に、ダンパ開度設定装置50は、誤差が基準値以下ではない(ステップS78でNo)と判定した場合、つまり誤差が基準値よりも大きい場合、リークパスをモデルに追加し(ステップS82)、ステップS68に戻る。
【0065】
一方、ダンパ開度設定装置50は、圧力、風量が、制約範囲内である(ステップS76でYes)と判定した場合、本処理を終了する。
【0066】
以上のように、ダンパ開度設定装置50は、試験結果との比較を行い、誤差に基づいて解析条件を補正することで、ダンパの開度をより目的の運転状態に近い開度にすることができる。また、計算で調整できるため、空調システム10を運転した状態で、ダンパの開度を変化させつつ、調整する場合よりも迅速に所望の運転状態とすることができる。
【0067】
また、ダンパ開度設定装置50は、図4に示す処理と、図5に示す処理のいずれを実行するかは、予め設定してもよいし、算出した誤差に応じて切り替えてもよい。また、上記実施形態では、リークパスを設定するとしたが、リークパスを設定しない処理としてもよい。
【0068】
(本開示の効果)
以上説明したように、本開示のダンパ開度設定装置は、複数のノードと、ノード間の接続部に配置され、開度が設定可能なダンパと、を含む解析モデルを取得するモデル取得部と、解析モデルのノード間を流れる流量と、各ノードの圧力の制約範囲を設定する流量圧力設定部と、ダンパの目標開度を設定するダンパ開度設定部と、解析モデルを制約範囲とダンパの目標開度に基づいて最適化計算を行い、制約条件を満たし、目標開度に近い開度となるダンパの開度を算出するモデル解析部と、を備える。
【0069】
目標開度は、ダンパ開度の40%以上60%以下から設定された1つの値であることが好ましい。
【0070】
モデル解析部で算出した条件に基づいて、解析モデルに対応する空調システムで実行した運転データを取得する運転データ取得部と、運転データと解析モデルの解析結果とを比較する比較部と、比較部の比較結果で運転データと解析モデルの解析結果の差が閾値以上と判定した場合、モデル解析部の解析条件を変更する条件補正部と、を含み、モデル解析部は、条件補正部で補正した条件でダンパ開度を再計算することが好ましい。
【0071】
条件補正部は、ダンパの開度と流抵抗係数の関係を補正することが好ましい。
【0072】
条件補正部は、ダンパの目標開度を補正することが好ましい。
【0073】
条件補正部は、解析モデルにリークパスを追加することが好ましい。
【0074】
以上説明したように、本開示のダンパ開度設定方法は、複数のノードと、ノード間の接続部に配置され、開度が設定可能なダンパと、を含む解析モデルを取得するモデル取得ステップと、解析モデルのノード間を流れる流量と、各ノードの圧力の制約範囲を設定する流量圧力設定ステップと、ダンパの目標開度を設定するダンパ開度設定ステップと、解析モデルを制約範囲とダンパの目標開度に基づいて最適化計算を行い、制約条件を満たし、目標開度に近い開度となるダンパの開度を算出するモデル解析ステップと、を備える。
【0075】
以上説明したように、本開示のダンパ開度設定プログラムは、複数のノードと、ノード間の接続部に配置され、開度が設定可能なダンパと、を含む解析モデルを取得するモデル取得ステップと、解析モデルのノード間を流れる流量と、各ノードの圧力の制約範囲を設定する流量圧力設定ステップと、ダンパの目標開度を設定するダンパ開度設定ステップと、解析モデルを制約範囲とダンパの目標開度に基づいて最適化計算を行い、制約条件を満たし、目標開度に近い開度となるダンパの開度を算出するモデル解析ステップと、を備える処理をコンピュータに実行させる。
【0076】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
10 空調システム
12、14、16 ノード
18、20 接続管
22、24 ダンパ
26、28、30 圧力センサ
32、34 流量センサ
40 制御装置
50 ダンパ開度設定装置
60 入力部
62 出力部
64 通信部
66 演算部
68 記憶部
70 モデル取得部
72 流量圧力設定部
74 ダンパ開度設定部
76 モデル解析部
78 運転データ取得部
80 判定部
82 条件補正部
90 ダンパ開度設定プログラム
92 解析モデルデータ
94 条件データ
図1
図2
図3
図4
図5