(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146507
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220928BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L21/304 651M
H01L21/306 J
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047503
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 明
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴大
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043DD07
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F157AA12
5F157AB02
5F157AB13
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157BB75
5F157BH18
5F157CF34
(57)【要約】
【課題】、回転軸まわりに回転する基板の一方主面の直下で、かつ基板の端面から回転軸側に離れた位置に配置される発光素子から射出される光により基板の周縁部を効率的に加熱して短時間で処理液による処理を実行可能とする。
【解決手段】発光素子は、発光面が基板の周縁部を向くように水平面から傾斜して配置されている。このため、発光素子の発光面から射出される光は、基板の下面周縁部またはこれに近い領域に照射される。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を略水平に保持し、所定の回転軸まわりに回転可能に設けられた基板保持部と、
前記基板保持部を前記回転軸まわりに回転させる回転機構と、
前記回転軸まわりに回転する前記基板の一方主面の直下で、かつ前記基板の端面から回転軸側に離れた位置に配置される発光素子の発光面から射出される光を前記基板の一方主面に照射して前記基板を加熱する加熱機構と、
前記加熱機構により加熱される前記基板の他方主面に処理液を吐出する処理液吐出機構と、を備え、
前記発光素子は、前記発光面が前記基板の周縁部を向くように水平面から傾斜して配置されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記加熱機構は前記水平面に対する前記発光面の傾斜角度を調整する傾斜角調整部を有する基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記傾斜角調整部は前記基板の種類に応じて前記傾斜角度を調整する基板処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記傾斜角調整部は、前記発光面から前記光が連続的に射出されている間、前記傾斜角度を連続的または断続的に変化させる基板処理装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記傾斜角調整部は、装置外部と前記基板保持部との間で前記基板の搬入および搬出を行っている間、前記発光面が水平姿勢となるように前記傾斜角度を調整することで鉛直方向における前記加熱機構と前記基板保持部との間隔を前記発光面から前記光を射出している間の前記間隔よりも広げる基板処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記回転軸の反対側から前記加熱機構を囲って前記基板の一方主面で反射された反射光を遮光する遮光部材をさらに備える基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記発光素子は前記発光面の反対面である底面を有し、
前記発光素子の前記底面と密着した状態で前記発光素子を支持するヒートシンクをさらに備える基板処理装置。
【請求項8】
回転軸まわりに回転する基板の一方主面の直下で、かつ前記基板の端面から回転軸側に離れた位置に配置される発光素子の発光面が前記基板の周縁部を向くように水平面から傾斜させたまま、前記発光面から前記基板の一方主面に光を照射して前記基板を加熱することを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、太陽電池用基板、等(以下、単に「基板」という)を非接触で加熱しながら当該基板に処理液を供給して処理する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸まわりに回転する半導体ウエハなどの基板に加熱処理を加えつつ当該基板の被処理面に処理液を供給して薬液処理や洗浄処理などを施す基板処理装置として、例えば特許文献1に記載の装置が知れられている。この基板処理装置では、基板の上面(被処理面)とは反対側の下面(被加熱面)を加熱するために、発熱体を内蔵する環状のヒーターが基板の下面周縁部に沿って基板の周方向に延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、非接触で基板を加熱するための加熱源として、発熱体の代わりに、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子を用いることが検討されている。例えば、日亜化学工業株式会社製の紫外発光LED(型番NVCUQ096A-D4)を加熱源として用いることができる。上記LEDでは、複数の発光部が素子基板の一方主面上において面状に配置され、発光面として機能する。このように構成されたLEDにより加熱処理を施す場合、後で
図7を参照しつつ説明するように、基板の下面周縁部またはその近傍の直下位置に配置するのが好適である。しかしながら、実際の基板処理装置では、基板の周囲に種々の構成が配設される。例えば基板処理中に基板から飛散する処理液等を受け止めるために、スプラッシュガードやそれを駆動する機構などが基板の周囲に配置される。このような装置各部のレイアウト制約から、LEDの配置が許される空間は、基板の下面直下で、かつ基板の端面から回転軸側に離れた位置に制限される。したがって、このような配置制限を受けながらも、基板の周縁部を迅速に加熱してタクトタイムを短縮することができる基板処理装置の提供が望まれている。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、回転軸まわりに回転する基板の一方主面の直下で、かつ基板の端面から回転軸側に離れた位置に配置される発光素子から射出される光により基板の周縁部を効率的に加熱して短時間で処理液による処理を実行可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一態様は、基板を略水平に保持し、所定の回転軸まわりに回転可能に設けられた基板保持部と、基板保持部を回転軸まわりに回転させる回転機構と、回転軸まわりに回転する基板の一方主面の直下で、かつ基板の端面から回転軸側に離れた位置に配置される発光素子の発光面から射出される光を基板の一方主面に照射して基板を加熱する加熱機構と、加熱機構により加熱される基板の他方主面に処理液を吐出する処理液吐出機構と、を備え、発光素子は、発光面が基板の周縁部を向くように水平面から傾斜して配置されることを特徴としている。
【0007】
この発明の他の態様は、基板処理方法であって、回転軸まわりに回転する基板の一方主面の直下で、かつ基板の端面から回転軸側に離れた位置に配置される発光素子の発光面が基板の周縁部を向くように水平面から傾斜させたまま、発光面から基板の一方主面に光を照射して基板を加熱することを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、基板の周縁部を加熱する加熱源として発光素子が用いられるが、その配置は回転軸まわりに回転する基板の一方主面の直下で、かつ基板の端面から回転軸側に離れた位置に制限される。しかしながら、発光素子は、発光面が基板の周縁部を向くように水平面から傾斜して配置されている。このため、発光素子の発光面から射出される光は、基板の下面周縁部またはこれに近い領域に照射される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、発光素子の配置が、回転軸まわりに回転する基板の一方主面の直下で、かつ基板の端面から回転軸側に離れた位置に制限されるものの、当該位置に配置された発光素子から射出される光により基板の周縁部を効率的に加熱することができる。その結果、短時間で処理液による処理が実行可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【
図2】
図1に示す基板処理装置を上方から見た平面図である。
【
図4B】加熱機構の一構成であるヒートシンクの構造を示す斜視図である。
【
図5】
図1に示す基板処理装置による基板処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】加熱機構の比較例における発光素子の配置を示す図である。
【
図8】基板の端面から発光面の中心位置までの距離が温度上昇特性に与える影響を示すグラフである。
【
図9】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態に装備される加熱機構を示す図である。
【
図10】本発明に係る基板処理装置の第3実施形態に装備される加熱機構を示す図である。
【
図11】本発明に係る基板処理装置の第4実施形態に装備される加熱機構を示す図である。
【
図12】第4実施形態における加熱機構の動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
図2は
図1に示す基板処理装置を上方から見た平面図である。なお、以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。上下方向は鉛直方向であり、スピンチャックに対して基板側が上である。
【0012】
基板処理装置1は、回転保持機構2、飛散防止部3、表面保護部4、処理部5、ノズル移動機構6、加熱機構7および制御部10を備えている。これら各部2~7は、制御部10と電気的に接続されており、制御部10からの指示に応じて動作する。制御部10としては、例えば、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御部10は、例えば、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM、制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク、等を備えている。制御部10においては、プログラムに記述された手順に従って主制御部としてのCPUが演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を制御する。
【0013】
回転保持機構2は、基板Wを、その表面を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持しつつ回転可能な機構である。回転保持機構2は、基板Wを、主面の中心c1を通る鉛直な回転軸a1のまわりに回転させる。回転保持機構2は、基板Wより小さい円板状の部材であるスピンチャック(「基板保持部」)21を備える。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸a1に一致するように設けられている。スピンチャック21の下面には、円筒状の回転軸部22が連結されている。回転軸部22は、その軸線を回転軸a1と一致させた状態で、鉛直方向に延設されている。また、回転軸部22には、回転駆動部(例えば、モータ)23が接続される。回転駆動部23は、回転軸部22をその軸線まわりに回転駆動する。従って、スピンチャック21は、回転軸部22とともに回転軸a1周りに回転可能である。回転駆動部23と回転軸部22とは、スピンチャック21を、回転軸a1を中心に回転させる回転機構231である。回転軸部22および回転駆動部23は、筒状のケーシング24内に収容されている。
【0014】
スピンチャック21の中央部には、図示省略の貫通孔が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、図示省略の配管、開閉弁を介して図示省略のポンプが接続されている。当該ポンプ、開閉弁は、制御部10に電気的に接続される。制御部10は、当該ポンプ、開閉弁の動作を制御する。当該ポンプは、制御部10の制御に従って、負圧と正圧とを選択的に供給可能である。基板Wがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプが負圧を供給すると、スピンチャック21は、上面Wuを上方に向けた略水平姿勢の基板Wを下方から吸着保持する。ポンプが正圧を供給すると、基板Wは、スピンチャック21の上面から取り外し可能となる。
【0015】
この構成において、スピンチャック21が基板Wを吸着保持した状態で、回転駆動部23が回転軸部22を回転すると、スピンチャック21が鉛直方向に沿った軸線周りで回転される。これによって、スピンチャック21上に保持された基板Wが、その面内の中心c1を通る鉛直な回転軸a1を中心に矢印AR1方向に回転される。
【0016】
なお、基板Wの保持方式は、これに限定されるものではなく、複数個(例えば6個)のチャックピンにより保持する、いわゆるメカチャック方式であってもよい。
【0017】
飛散防止部3は、スピンチャック21とともに回転される基板Wから飛散する処理液等を受け止める。飛散防止部3は、スプラッシュガード31を備える。スプラッシュガード31は、上端が開放された筒形状の部材であり、回転保持機構2を取り囲むように設けられる。スプラッシュガード31には、これを昇降移動させるガード駆動機構が接続されており、制御部10からの昇降指令に応じて駆動される。
【0018】
表面保護部4は、スピンチャック21上に保持されて回転している基板Wの上面Wuの周縁部に当たるように不活性ガスのガス流を吐出するガス吐出機構を備えている。「不活性ガス」は、基板Wの材質およびその表面に形成された薄膜との反応性に乏しいガスであり、例えば、窒素(N2)ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどである。ガス吐出機構は、ガス吐出機構41、42を備えて構成されている。ガス吐出機構41、42は、不活性ガスを、例えば、ガス柱状のガス流として吐出する。ガス吐出機構42は、ガス吐出機構41が吐出するガス流が基板Wの周縁部に当たる位置よりも基板Wの回転方向の上流側の位置に当たるように不活性ガスのガス流を吐出する。
【0019】
表面保護部4は、スピンチャック21上に保持されて回転している基板Wの上面Wuの中央付近に対して不活性ガスのガス流を吐出するガス吐出機構43をさらに備える。表面保護部4は、ガス吐出機構41~43から基板Wの上面Wuに不活性ガスのガス流を吐出することによって、基板Wの上面Wuの周縁部に規定される環状の処理領域に当たるように吐出された処理液等から基板Wの上面Wuの非処理領域を保護する。
【0020】
ガス吐出機構41、42は、ノズルヘッド44を備える。ガス吐出機構43は、ノズルヘッド45を備える。ノズルヘッド44、45は、それぞれ後述するノズル移動機構6のアーム61、62の先端に取り付けられている。アーム61、62は水平面に沿って延在する。ノズル移動機構6は、アーム61、62を移動させることによって、ノズルヘッド44、45をそれぞれの処理位置と退避位置との間で移動させる。
【0021】
ノズルヘッド44は、2つのノズル46、47を有し、アーム61の先端に取り付けられている。ノズル46、47は、その先端部(下端部)をノズルヘッド44の下面から下方に突出させ、その上端部を上面から上方に突出させている。一方のノズル46の上端には、配管411の一端が接続されている。配管411の他端は、ガス供給源412に接続している。また、配管411の経路途中には、ガス供給源412側から順に流量制御器413、開閉弁414が設けられている。もう一方のノズル47にも、配管421の一端が接続されている。配管421の他端は、ガス供給源422に接続している。また、配管421の経路途中には、ガス供給源422側から順に流量制御器423、開閉弁424が設けられている。
【0022】
ここで、ノズル移動機構6がノズルヘッド44を、その処理位置に配置すると、ノズル46の吐出口は、回転保持機構2が回転させる基板Wの周縁部の回転軌跡の一部に対向し、ノズル47の吐出口は、当該回転軌跡の他の一部に対向する。
【0023】
ノズルヘッド44が処理位置に配置されている状態において、ノズル46、47は、ガス供給源412、422から不活性ガス(図示の例では、窒素(N2)ガス)を供給される。ノズル46は、供給された不活性ガスのガス流を基板Wの周縁部の回転軌跡に規定される位置に当たるように上方から吐出する。ノズル46は、吐出したガス流が位置に達した後、位置から基板Wの周縁に向かって流れるように、ガス流を吐出口から定められた方向に吐出する。ノズル47は、供給された不活性ガスのガス流が当該回転軌跡上に規定される位置に当たるように、ガス流を上方から吐出する。ノズル47は、吐出したガス流が位置に達した後、位置から基板Wの周縁に向かって流れるように、ガス流を吐出口から定められた方向に吐出する。
【0024】
ガス吐出機構43のノズルヘッド45は、アーム62の先端部の下面に取り付けられた円柱部材93と、円柱部材93の下面に取り付けられた円板状の遮断板90と、円筒状のノズル48とを備えている。円柱部材93の軸線と遮断板90の軸線とは、一致しており、それぞれ鉛直方向に沿う。遮断板90の下面は、水平面に沿う。ノズル48は、その軸線が遮断板90、円柱部材93の軸線と一致するように、円柱部材93、遮断板90を鉛直方向に貫通している。ノズル48の上端部は、さらにアーム62の先端部も貫通して、アーム62の上面に開口する。ノズル48の上側の開口には、配管431の一端が接続されている。配管431の他端は、ガス供給源432に接続している。配管431の経路途中には、ガス供給源432側から順に流量制御器433、開閉弁434が設けられている。ノズル48の下端は、遮断板90の下面に開口している。当該開口は、ノズル48の吐出口である。
【0025】
ノズル移動機構6がノズルヘッド45をその処理位置に配置すると、ノズル48の吐出口は、基板Wの上面Wuの中心付近に対向する。この状態において、ノズル48は、配管431を介してガス供給源432から不活性ガス(図示の例では、窒素(N2)ガス)を供給される。ノズル48は、供給された不活性ガスを基板Wの上面Wuの中心付近に向けて不活性ガスのガス流として吐出する。ガス流は、基板Wの中央部分の上方から基板Wの周縁に向かって放射状に広がる。すなわち、ガス吐出機構43は、基板Wの上面Wuの中央部分の上方から不活性ガスを吐出して、当該中央部分の上方から基板Wの周縁に向かって広がるガス流を生成させる。
【0026】
処理部5は、スピンチャック21上に保持された基板Wの上面周縁部における処理領域に対する処理を行う。具体的には、処理部5は、スピンチャック21上に保持された基板Wの処理領域に処理液を供給する。処理部5は、処理液吐出機構51Aを備える。処理液吐出機構51Aは、スピンチャック21上に保持されて回転している基板Wの上面Wu(処理面)の周縁部の一部に当たるように処理液の液流を吐出する。液流は、液柱状である。処理液吐出機構51Aは、ノズルヘッド50を備える。ノズルヘッド50は、ノズル移動機構6が備える長尺のアーム63の先端に取り付けられている。アーム63は、水平面に沿って延在する。ノズル移動機構6は、アーム63を移動させることによって、ノズルヘッド50をその処理位置と退避位置との間で移動させる。
【0027】
ノズルヘッド50は、4本のノズル53~56を有し、アーム63の先端に取り付けられている。ノズル5a~5dはアーム63の延在方向に沿って一列に並んで配置されている。ノズルヘッド50では、ノズル5a~5dの先端部(下端部)が下方に突出し、その基端部(上端部)が上方に突出している。ノズル5a~5dには、これらに処理液を供給する配管系である処理液供給部51が接続されている。具体的には、ノズル5a~5dの上端には、処理液供給部51の配管511a~511dの一端が接続している。ノズル5a~5dは、処理液供給部51から処理液をそれぞれ供給され、供給された処理液を先端の吐出口からそれぞれ吐出する。処理液吐出機構51Aは、ノズル5a~5dのうち制御部10に設定された制御情報によって定まる1つのノズルから、制御部10の制御に従って処理液の液流を吐出する。
【0028】
処理液供給部51は、具体的には、SC-1供給源52a、DHF供給源52b、SC-2供給源52c、リンス液供給源52d、複数の配管53a,53b,53c,53d、および、複数の開閉弁54a,54b,54c,54dを、組み合わせて構成されている。SC-1、DHF、SC-2は、薬液である。従って、処理液吐出機構51Aは、基板Wの周縁部に薬液を吐出する薬液吐出部である。
【0029】
SC-1供給源52aは、SC-1を供給する供給源である。SC-1供給源52aは、開閉弁54aが介挿された配管53aを介して、ノズル5aに接続されている。したがって、開閉弁54aが開放されると、SC-1供給源52aから供給されるSC-1が、ノズル5aから吐出される。
【0030】
DHF供給源52bは、DHFを供給する供給源である。DHF供給源52bは、開閉弁54bが介挿された配管53bを介して、ノズル5bに接続されている。したがって、開閉弁54bが開放されると、DHF供給源52bから供給されるDHFが、ノズル5bから吐出される。
【0031】
SC-2供給源52cは、SC-2を供給する供給源である。SC-2供給源52cは、開閉弁54cが介挿された配管53cを介して、ノズル5cに接続されている。したがって、開閉弁54cが開放されると、SC-2供給源52cから供給されるSC-2が、ノズル5cから吐出される。
【0032】
リンス液供給源52dは、リンス液を供給する供給源である。ここでは、リンス液供給源52dは、例えば、純水を、リンス液として供給する。リンス液供給源52dは、開閉弁54dが介挿された配管53dを介して、ノズル56に接続されている。したがって、開閉弁54dが開放されると、リンス液供給源52dから供給されるリンス液が、ノズル56から吐出される。なお、リンス液として、純水、温水、オゾン水、磁気水、還元水(水素水)、各種の有機溶剤(イオン水、IPA(イソプロピルアルコール)、機能水(CO2水など)、などが用いられてもよい。
【0033】
処理液供給部51は、SC-1、DHF、SC-2、および、リンス液を選択的に供給する。処理液供給部51から処理液(SC-1、DHF、SC-2、あるいは、リンス液)がノズル5a~5dのうち対応するノズルに供給されると、回転している基板Wの上面周縁部の処理領域に当たるように、当該ノズルは当該処理液の液流を吐出する。ただし、処理液供給部51が備える開閉弁54a,54b,54c,54dの各々は、制御部10と電気的に接続されている図示省略のバルブ開閉機構によって、制御部10の制御下で開閉される。つまり、ノズルヘッド50のノズルからの処理液の吐出態様(具体的には、吐出される処理液の種類、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出流量、等)は、制御部10によって制御される。すなわち、処理液吐出機構51Aは、制御部10の制御によって、回転軸a1を中心に回転している基板Wの上面周縁部の回転軌跡のうち位置に当たるように処理液の液流を吐出する。
【0034】
ノズル移動機構6は、ガス吐出機構41~43および処理液吐出機構51Aのノズルヘッド50をそれぞれの処理位置と退避位置との間で移動させる機構である。ノズル移動機構6は、水平に延在するアーム61~63、ノズル基台64~66、駆動部67~69を備える。ノズルヘッド44、45、50は、アーム61~63の先端部分に取り付けられている。
【0035】
アーム61~63の基端部は、ノズル基台64~66の上端部分に連結されている。ノズル基台64~66は、その軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢でケーシング24の周りに分散して配置されている。ノズル基台64~66は、その軸線に沿って鉛直方向に延在し、軸線周りに回転可能な回転軸をそれぞれ備えている。ノズル基台64~66の軸線と各回転軸の軸線とは一致する。各回転軸の上端には、ノズル基台64~66の上端部分がそれぞれ取り付けられている。各回転軸が回転することにより、ノズル基台64~66の各上端部分は各回転軸の軸線、すなわちノズル基台64~66の軸線を中心に回転する。ノズル基台64~66には、それぞれの回転軸を軸線周りに回転させる駆動部67~69が設けられている。駆動部67~69は、例えば、ステッピングモータなどをそれぞれ備えて構成される。
【0036】
駆動部67~69は、ノズル基台64~66の回転軸を介してノズル基台64~66の上端部分をそれぞれ回転させる。各上端部分の回転に伴って、ノズルヘッド44、45、50もノズル基台64~66の軸線周りに回転する。これにより、駆動部67~69は、ノズルヘッド44、45、50をそれぞれの処理位置と、退避位置との間で水平に移動させる。
【0037】
ノズルヘッド44が処理位置に配置されると、ノズル46の吐出口は、回転保持機構2が回転させる基板Wの周縁部の回転軌跡の一部に対向し、ノズル47の吐出口は、当該回転軌跡の他の一部に対向する。
【0038】
ノズルヘッド45が処理位置に配置されると、ノズル48は、基板Wの中心c1の上方に位置し、ノズル48の軸線は、スピンチャック21の回転軸a1に一致する。ノズル48の吐出口(下側の開口)は、基板Wの中心部に対向する。また、遮断板90の下面は、基板Wの上面Wuと平行に対向する。遮断板90は、基板Wの上面Wuと非接触状態で近接する。
【0039】
ノズルヘッド50が処理位置に配置されると、ノズル5a~5dが処理位置に配置される。ノズルヘッド44、45、50の各待避位置は、これらが基板Wの搬送経路と干渉せず、かつ、これらが相互に干渉しない各位置である。各退避位置は、例えば、スプラッシュガード31の外側、かつ、上方の位置である。
【0040】
スピンチャック21により保持された基板Wの下面Wdの下方には、加熱機構7が設けられている。以下、
図3、
図4Aおよび
図4Bを参照しつつ加熱機構7の構成および動作について詳述する。
図3は加熱機構を鉛直方向から見た平面図である。
図4Aは
図3のIV-IV線断面図である。
図4Bは加熱機構の一構成であるヒートシンクの構造を示す斜視図である。なお、加熱機構7の内部構造を明確するため、
図3では加熱筐体71および基板Wをそれぞれ破線および一点鎖線で図示している。
【0041】
加熱機構7は、
図1ないし
図3に示すように、基板Wの下面Wdの下方で、かつ基板Wの端面We(
図4)よりも回転軸a1側に設けられている。加熱機構7は、上方からの平面視で円環形状を有する樹脂製の加熱筐体71を有している。加熱筐体71の外径は基板Wの外径よりも狭い。加熱筐体71の回転対称軸a71がスピンチャック21の回転軸a1に一致している。このため、鉛直下方から見ると、加熱筐体71はスピンチャック21に保持された基板Wの下面周縁部Wdpの内側(回転軸a1側)で基板Wと同心状に配置されている。
【0042】
加熱筐体71は、
図4に示すように、上方の開口したボックス部材711と、ボックス部材711の円環開口を上方から塞ぐように配置された透明部材712とを有している。これらボックス部材711および透明部材712により形成される略トーラス(ドーナツ型)の収納空間713に対し、加熱源として機能する発光素子72、ヒートシンク73およびベース部材74が収納されている。後述するように発光素子72は点灯すると、発光素子72からの光が透明部材712を介して基板Wの下面周縁部Wdpに向けて照射される。このように第1実施形態では、透明部材712全体が透過窓として機能しているが、発光素子72からの光が透過する光透過領域を除き、透明部材712の上面または下面を遮光性部材で覆うことで、透過窓の範囲を制限してもよい。また、ボックス部材711の円環開口を上方から塞ぐように遮光性部材で覆うとともに、当該遮光性部材のうち光透過領域に相当する領域に開口を設けるとともに、当該開口に透明部材を嵌め込み、これを透過窓として機能させてもよい。
【0043】
収納空間713の内底部には、加熱筐体71に対応して円環形状のベース部材74が配置されている。ベース部材74はアルミニウム板で構成されている。このベース部材74上に金属製のヒートシンク73が配置される。ヒートシンク73は、発光素子72の前記発光面722aの反対面である底面722bに密着して当該発光素子72を支持しつつこれを冷却する機能を担っている。より具体的には、ヒートシンク73は、
図4Bに示すように、ベース部材74と同一の平面形状、つまり円環形状の底面731を有している。ヒートシンク73の側面は傾斜面732であり、回転対称軸733から周方向に進むにしたがって下り傾斜に仕上げられている。本実施形態では、その傾斜角度θは10゜ないし20゜に設定されている。このような外観形状を有するヒートシンク73は、回転対称軸733が加熱筐体71の回転対称軸a71とほぼ一致するようにベース部材74に固定されている。また、ヒートシンク73の内部では、図示を省略する冷却水循環供給部により冷却水が循環される。これによって、発光素子72が冷却される。ヒートシンク73は発光素子72の底面722bに密着した状態で発光素子72を冷却するので発光素子72を効率よく冷却することができる。
【0044】
ヒートシンク73の傾斜面732には、既述の紫外発光LEDなどの発光素子72が、透明部材(透過窓)712を介して基板Wの下面周縁部Wdpと対向するように、配置されている。第1実施形態では、基板周縁部を予め設定された加熱条件(例えば10秒で、80℃まで昇温)で加熱するために、6個の発光素子72がヒートシンク73の回転対称軸733を中心に等角度間隔(60゜間隔)で放射状にヒートシンク73の傾斜面732に配列されている。各発光素子72は、素子基板721と、光(紫外線)を射出する発光部722と、発光部722の制御信号や温度検出信号を制御部10との間で授受するためのコネクタ723とを有している。発光部722およびコネクタ723は素子基板721の一方主面上で隣接して取り付けられている。そして、発光部722およびコネクタ723を基板Wに向けた状態で発光素子72はヒートシンク73の傾斜面732に固定されている。このため、6個の発光素子72はすべて発光面722aが基板Wの下面周縁部Wdpを向くように水平面から上記傾斜角度θだけ傾斜して配置される。
【0045】
このように構成された発光素子72では、制御部10からの点灯信号をコネクタ723を介して受け取ると、発光部722が点灯し、紫外光Lを基板Wの下面周縁部Wdpに向けて射出する。紫外光Lは透明部材712を介して回転軸a1まわりに回転している基板Wの下面周縁部Wdpおよびその近傍に照射される。これによって、基板周縁部が加熱されて所望温度に到達する。
【0046】
図5は
図1に示す基板処理装置による基板処理動作の一例を示すフローチャートである。上記のように構成された基板処理装置1では、制御部10がプログラムに記述された手順に従って装置各部を以下のように制御する。未処理の基板Wが、図示を省略する搬送ロボットなどにより装置外部から基板処理装置1に搬入されてスピンチャック21の上面に載置されると、スピンチャック21が当該基板Wを保持する(ステップS1:基板のローディング)。また、搬送ロボットが基板処理装置1から退避する。それに続いて、ノズルヘッド44、45、50はノズル移動機構6によって処理位置に配置されるとともに、スプラッシュガード31はガード駆動機構によって上方位置に配置される。
【0047】
こうして、基板処理の準備が完了すると、基板処理装置1の回転機構231が、基板Wを保持するスピンチャック21の回転を開始する(ステップS2)。基板Wの回転速度は、例えば、1800回転/分に設定される。また、制御部10からの点灯信号を受け、全発光部722が点灯する(ステップS3)。これにより、各発光部722の発光面722aから紫外光Lが射出され、透明部材712を介して回転している基板Wの下面周縁部Wdpに照射される。こうして、基板Wの周縁部の加熱が開始される。
【0048】
次に、ガス吐出機構41、42がノズルヘッド44のノズル46、47から不活性ガスのガス流の吐出を開始するとともに、ガス吐出機構43が、ノズルヘッド45のノズル48から不活性ガスのガス流の吐出を開始する(ステップS4)。
【0049】
時間の経過によって基板Wの周縁部の温度が上昇して安定した後、処理液吐出機構51Aは、基板Wの上面周縁部に当たるように処理液(薬液)の液流を吐出して上面周縁部の処理を行う(ステップS5)。制御部10が、基板Wの処理に要する処理時間の経過などを検出すると、処理液吐出機構51Aは、処理液の吐出を停止する。
【0050】
それに続いて、制御部10からの消灯信号を受け、発光部722が消灯し、基板Wの周縁部の加熱が停止される(ステップS6)。また、ガス流の吐出も停止される(ステップS7)。さらに、スピンチャック21の回転が停止される(ステップS8)。その後で、図示を省略する搬送ロボットのハンドが基板処理装置1に進入し、処理済の基板Wを受け取ると、スピンチャック21による基板Wの保持が解除される。そして、搬送ロボットは受け取った基板Wを次の基板処理装置に搬出する(ステップS9:アンローディング)。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、6個の発光素子72がすべて水平面から傾斜して配置され、発光面722aが基板Wの下面周縁部Wdpに向いている。このため、発光素子72の発光面722aから射出される紫外光Lは基板Wの下面周縁部Wdpまたはその近傍に照射される。したがって、基板Wの周縁部を効率的に加熱することができる。その結果、基板Wの周縁部が所定の温度に達して安定するまでに要する時間、つまりガス流の吐出開始(ステップS4)から処理液の吐出開始(ステップS5)までの時間を短縮することができる。その結果、基板処理に要するタクトタイムを短くすることができる。
【0052】
ここで、本実施形態の作用効果をより明確にするために、
図6および
図7に示す比較例(発光面722aを水平に設定した装置)における基板周縁部の温度上昇を調べた。その結果、
図8に示す温度上昇特性がわかった。
図6は加熱機構の比較例における発光素子の配置を示す図である。
図7は
図6のVII-VII線断面図である。
図8は、基板の端面から発光面の中心位置までの距離が温度上昇特性に与える影響を示すグラフである。
【0053】
比較例に係る加熱機構70が第1実施形態に装備された加熱機構7と大きく相違する点は、大きく2点である。すなわち、発光素子72の個数が加熱機構7よりも1個少ない5個である点と、円環平板状のヒートシンク730が用いられている点とである。比較例では、ヒートシンク730の上面に発光素子72が配置されており、発光面722aの傾斜角度θはゼロである。つまり、発光面722aは水平面と平行に配置されている。なお、使用している発光素子72が第1実施形態と同一のものである。したがって、発光素子72の1個当たりの光量は144Wであり、加熱機構70全体では720Wである。そして、基板Wの端面Weから発光素子72(発光面722a)の中心位置までの距離Dを10mm、20mm、30mmに設定しつつ、1800rpmで回転する基板Wに向けて紫外光Lを照射した。そして、加熱開始から10秒経過した時点での基板周縁部の温度を計測し、距離Dごとの計測温度をプロットしたものが
図8に示すグラフである。
【0054】
同図からわかるように、距離Dが長くなる、つまり基板Wの端面Weから離れるにしたがって、基板周縁部の到達温度は低く、基板周縁部を処理液による基板処理に適した温度まで上昇させるために要する時間が長くなってしまう。逆に言うと、発光素子72を基板Wの端面We側に近づけることで加熱時間の短縮を図ることができる。しかしながら、装置各部のレイアウト制約から、発光素子72の配置が許される空間は、基板Wの下面直下で、かつ基板Wの端面Weから回転軸a1側に離れた範囲に制限される。そのため、加熱時間を短縮するという観点では、距離D=10mmで発光素子72を配置する、つまり基板Wの下面周縁部Wdpの直下位置に配置するのが望ましい。しかしながら、実際にはD=20mm~30mm、あるいはそれ以上の位置に発光素子72を配置する必要がある。これに対し、第1実施形態の加熱機構7では、発光面722aを傾けて基板Wの下面周縁部Wdpに向けているため、発光素子72が基板Wの端面Weから多少離れていたとしても、紫外光Lを基板Wの下面周縁部Wdpまたはその近傍に照射することができ、発光素子72を水平配置した比較例よりも短時間で加熱することができる。また、第1実施形態と同一の位置に比較例に示す態様で発光素子72を配置しつつ所望の加熱性能を得るためには、設計上、第1実施形態の加熱機構7(発光素子6個)よりも多い9個の発光素子72を設ける必要がある。このように、第1実施形態によれば、発光素子72の個数を削減することができ、装置サイズおよびランニングコストの面で比較例よりも有利である。
【0055】
ところで、上記第1実施形態では、発光面722aを傾けて配置していることから、
図4に示すように、基板Wの下面周縁部Wdpに対する紫外光Lの入射角は比較的大きくなり、下面周縁部Wdpで反射される反射光RLの反射角も大きくなる。このため、反射光RLが装置内部に深く進入する可能性がある。そこで、
図9に示すように、加熱機構7の周囲を遮光性を有する耐熱遮光部材75で囲ってもよい(第2実施形態)。
【0056】
図9は本発明に係る基板処理装置の第2実施形態に装備される加熱機構を示す図である。第2実施形態では、同図に示すように、スプラッシュガード31の一部に耐熱性を有する遮光部材75が取り付けられている。遮光部材75としては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のカバー部材を用いることができる。このように回転軸a1の反対側から加熱機構7を遮光部材75により覆うことで反射光RLによる影響が装置内部に及ぶのを効果的に防止することができる。
【0057】
また、比較例との対比説明から明らかなように、発光素子72の個数削減が可能であることから、例えば
図10に示すように発光素子72の配列態様を変更してもよい(第3実施形態)。
【0058】
図10は本発明に係る基板処理装置の第3実施形態に装備される加熱機構を示す図である。第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、上方からの平面視での加熱筐体71、ヒートシンク73およびベース部材74の形状が略扇形状であり、ヒートシンク73の傾斜面732上に6個の発光素子72が配置されている点である。つまり、第1実施形態では、発光素子72を回転軸a1を中心に等角度間隔で全体的に分散して配置しているのに対し、第3実施形態では、上方からの平面視で6個の発光素子72が略扇形状の領域に集中的に配置されている。したがって、第3実施形態では、基板処理装置1内での加熱機構7の占有率が低下し、装置の設計自由度を高めることができる。
【0059】
また、上記第1実施形態ないし第3実施形態では、発光面722aの傾斜角度θは固定されているが、傾斜角度θを調整可能に構成してもよい(第4実施形態)。
【0060】
図11は本発明に係る基板処理装置の第4実施形態に装備される加熱機構を示す図である。
図12は第4実施形態における加熱機構の動作の一例を示す図である。この第4実施形態では、
図11に示すように、発光素子72と同一個数の加熱筐体71が回転軸a1を中心に等角度間隔で全体的に分散して配置されている。各加熱筐体71には、1個の発光素子72が収容されている。つまり、加熱筐体71の内底部上に、ベース部材74、ヒートシンク73が積層して配置されている。ヒートシンク73は回転軸a1から周方向に進むにしたがって下り傾斜を有する、いわゆる片流れ屋根状の傾斜面734を有するブロック体である。そして、傾斜面734上に発光素子72が固定されている。このため、第4実施形態においても、各発光素子72では、発光面722aが基板Wの下面周縁部Wdpに向いている。
【0061】
また、各加熱筐体71は、発光面722aを中央部を通過しながら、発光面722aの傾斜方向と直交するとともに発光面722aの平行な幅方向に延びる回転軸a2まわりに回転自在に支持されている。各加熱筐体71には、傾斜角調整部76が接続されている。このため、制御部10からの回転指令に応じて傾斜角調整部76が加熱筐体71を回転軸a2まわりに回転させることで、水平面に対する発光面722aの傾斜を任意に設定可能となっている。第4実施形態では、基板Wのローディング時(ステップS1)およびアンローディング時(ステップS9)においては、発光面722aが水平面とほぼ平行となるように傾斜角調整部76が加熱筐体71を位置決めする。一方、それ以外の時、つまり基板処理時には、発光面722aがスピンチャック21に保持された基板Wの下面周縁部Wdpを向くように傾斜角調整部76が加熱筐体71を位置決めする。
【0062】
このように構成された第4実施形態では、基板処理時には、
図12(b)に示すように、発光面722aから射出された紫外光Lが下面周縁部Wdpおよびその近傍に照射され、基板Wの周縁部を効率的に加熱することができる。一方、基板Wのローディング/アンローディング時には、
図12(a)に示すように、鉛直方向におけるスピンチャック21上の基板Wと加熱筐体71との間隔Haが基板処理時の間隔Hbよりも広がる。このため、ローディング/アンローディング時における搬送ロボットのハンドの可動スペースが広がり、スピンチャック21に対する基板Wの受渡し作業を安定して行うことができる。
【0063】
また、発光面722aから射出された紫外光Lを一定方向に照射し続けると、紫外光Lが直接照射される基板領域の温度上昇が急激となり、それに隣接する基板領域との温度差が大きくなることがある。この温度差によって基板Wが反る可能性がある。このような反りが顕著となる基板Wを処理する場合には、発光面722aから紫外光Lが連続的に射出されている間に、傾斜角調整部76が作動することで傾斜角度θを連続的または断続的に変化させる、つまり発光素子72をスイングさせてもよい。これによって、基板Wの反りを抑制することができ、基板処理の品質を高めることができる。
【0064】
また、基板Wの種類に応じて傾斜角調整部76が基板処理中における傾斜角度θを調整するように構成してもよい。これにより、種々の基板Wに対応することができ、基板処理装置1の汎用性を高めることができる。
【0065】
上記したように、第1実施形態ないし第4実施形態において、基板Wの下面Wdおよび上面Wuがそれぞれ本発明の「基板の一方主面」および「基板の他方主面」に相当している。また、基板Wのローディングおよびアンローディングが本発明の「基板の搬入」および「基板の搬出」の一例に相当している。
【0066】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば実施形態では、発光素子72の個数を6に設定しているが、これに限定されるものではなく、基板処理に要求される基板周縁部の温度に応じた個数に設定すればよい。
【0067】
また、上記実施形態では、紫外光Lを射出するLEDを発光素子72として用いているが、発光素子72から射出される光の波長域はこれに限定されるものではない。ただし、基板Wの下面Wdに光を照射して基板周縁部を加熱するため、当該光が基板Wの上面Wuに形成されるデバイスに到達するのを回避するのが望ましい。そこで、例えば基板Wの厚みが775μmであるとき、基板Wの上面Wuへの透過率を0.01%以下に設定するためには、光Lの侵入長を100μm以下に抑える必要がある。ここで、Handbook of Optical Constants of Solidsに記載されたシリコンの場合の光の波長と侵入長の関係を参照すると、光Lの波長を950nm以下にすれば、透過率は0.01%以下となり、デバイスに影響を与える可能性は小さい。一方、波長300nm以下の光Lは基板Wを構成するシリコンの結合を切断する可能性がある。よって、基板Wがシリコン基板である場合、波長300nmないし950nmの光を射出する発光素子を用いるのが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
この発明は、基板の周縁部を非接触で加熱しながら当該基板に処理液を供給して処理する基板処理技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…基板処理装置
7…加熱機構
21…スピンチャック(基板保持部)
51A…処理液吐出機構
71…加熱筐体
72…発光素子
73…ヒートシンク
75…遮光部材
76…傾斜角調整部
231…回転機構
722…発光部
722a…発光面
722b…底面
732,734…傾斜面
a1…(基板の)回転軸
a2…(加熱筐体の)回転軸
D…距離
L…紫外光
W…基板
Wd…下面(基板の一方主面)
Wdp…(基板の)下面周縁部
We…端面
Wu…上面(基板の他方主面)
θ…傾斜角度