(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146515
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】膜厚推定方法、膜厚推定装置およびエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20220928BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220928BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L21/306 U
H01L21/66 P
G01B11/06 H
G01B11/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047513
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴大
【テーマコード(参考)】
2F065
4M106
5F043
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065BB03
2F065BB22
2F065BB23
2F065CC19
2F065CC32
2F065DD06
2F065FF04
2F065FF41
2F065GG22
2F065GG23
2F065GG25
2F065HH12
2F065JJ03
2F065JJ08
2F065JJ26
2F065PP01
2F065PP13
2F065PP22
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
4M106AA01
4M106BA04
4M106CA48
4M106DH03
4M106DH31
4M106DH44
4M106DH55
5F043AA31
5F043DD07
5F043DD13
5F043DD25
5F043EE07
5F043EE08
(57)【要約】
【課題】多層構造を有する基板の最上層の膜厚を低コストかつリアルタイムで求める。
【解決手段】波長λにおける多層構造を構成する各層の屈折率および消光係数と、多層構造のうち最上層を除く各層の膜厚とが予め記憶されている。処理が施された基板の最上層の膜厚を求める際には、当該基板に波長λの観察光が照射されるとともに、当該基板の最上層の像が撮像部により取得される。そして、予め記憶された屈折率、消光係数および膜厚と、波長λにおける基板の反射率R(λ)と最上層の膜厚d1との関係を示す関数(R(λ)=f(d1))の逆関数とに基づいて、最上層の像を構成する画素の輝度値から最上層の膜厚が推定される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層上に少なくとも1層以上の薄膜が積層された多層構造を有する基板に対して処理を施した後の前記基板の最上層の膜厚を推定する膜厚推定方法であって
(a)前記処理が施された前記基板に波長λの観察光を照射して前記基板の最上層の像を撮像部で取得する工程と
(b)前記波長λにおける前記多層構造を構成する各層の屈折率および消光係数と、前記多層構造のうち前記最上層を除く各層の膜厚とを記憶する工程と
(c)前記工程(b)で記憶された前記屈折率、前記消光係数および前記膜厚と、前記波長λにおける前記基板の反射率R(λ)と前記最上層の膜厚d1との関係を示す関数(R(λ)=f(d1))の逆関数とに基づいて、前記最上層の像を構成する画素の輝度値から前記最上層の膜厚を推定する工程と、
を備えることを特徴とする膜厚推定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の膜厚推定方法であって
(d)前記工程(c)を実行するための校正値を求める工程を備え、
前記工程(d)は
(d-1)前記観察光を射出しない暗環境で前記撮像部により撮像する工程と
(d-2)前記工程(d-1)により取得された像を構成する画素の輝度値を輝度値オフセットIoffとして記憶する工程と
(d-3)最上層が前記多層構造において上から2番目の第2層を構成する材料で構成される校正用基板に前記観察光を照射して前記校正用基板の像を前記撮像部で取得する工程と
(d-4)前記工程(d-3)で取得された像を構成する画素の輝度値と前記校正用基板の反射率とに基づいてゲインAを求める工程と
を有し、
前記逆関数は、d1=f-1((I(λ)-Ioff)/A)、
ただし、I(λ)は、前記工程(a)で取得された像を構成する画素の輝度値、
である膜厚推定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の膜厚推定方法であって、
前記ゲインAは、次式
A=(I(λ,d-3)-Ioff)/R(λ,d-3))
ただし、I(λ,d-3)は前記工程(d-3)で取得された像を構成する画素の輝度値であり、
R(λ,d-3)は波長λにおける前記校正用基板の反射率である、
により求められる膜厚推定方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の膜厚推定方法であって
(e)処理前の前記最上層の膜厚を直前膜厚として取得する工程を備え、
前記工程(c)は
(c-1)前記最上層の像を構成する画素毎に、前記工程(b)で記憶された前記屈折率、前記消光係数および前記膜厚と、前記逆関数とに基づいて前記画素の輝度値から前記最上層の膜厚候補値を取得した後で、前記直前膜厚に基づいて前記膜厚候補値から膜厚を求める工程と、
(c-2)前記画素毎の膜厚推定値から前記最上層の膜厚を決定する工程と、
を有する膜厚推定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の膜厚推定方法であって、
前記工程(e)は
(e-1)処理前の前記基板の最上層の設計値を取得する工程と
(e-2)処理前の前記基板に観察光を照射して前記基板の最上層の像を取得する工程と
(e-3)前記工程(b)で記憶された前記屈折率、前記消光係数および前記膜厚と、前記逆関数とに基づいて前記直前膜厚を求める工程と、
を有する膜厚推定方法。
【請求項6】
請求項1に記載の膜厚推定方法であって
前記工程(a)は、互いに異なる波長の光成分を有する光を前記観察光として照射するとともに前記撮像部により前記波長毎の像を取得する工程であり、
前記波長毎に、前記工程(b)および前記工程(c)が実行される膜厚推定方法。
【請求項7】
基材層上に少なくとも1層以上の薄膜が積層された多層構造を有する基板に対して処理を施した後の前記基板の最上層の膜厚を推定する膜厚推定装置であって、
前記処理が施された前記基板に波長λの観察光を照射する照明部と、
前記観察光が照射された前記基板を撮像して前記基板の最上層の像を取得する撮像部と、
前記波長λにおける前記多層構造を構成する各層の屈折率および消光係数と、前記多層構造のうち前記最上層を除く各層の膜厚とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記屈折率、前記消光係数および前記膜厚と、前記基板の反射率R(λ)と前記最上層の膜厚d1との関係を示す関数(R(λ)=f(d1))の逆関数とに基づいて、前記最上層の像を構成する画素の輝度値から前記最上層の膜厚を推定する膜厚推定部と、
を備えることを特徴とする膜厚推定装置。
【請求項8】
基材層上に少なくとも1層以上の薄膜が積層された多層構造を有する基板に対して処理液を供給して前記基板の最上層をエッチングするエッチング方法であって、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の膜厚推定方法を用いて前記処理液による処理を受けている前記基板の最上層について膜厚を求め、前記膜厚に応じて前記処理液の供給を制御することを特徴とするエッチング方法。
【請求項9】
請求項8に記載のエッチング方法であって、
前記処理液を前記基板の周縁部に供給することで前記最上層の周縁部を選択的にエッチングし、
前記膜厚推定値がゼロとなった時点で、前記基板の周縁部への前記処理液の供給を停止するエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基材層上に少なくとも1層以上の薄膜が積層された多層構造を有する基板に対して処理を施した後の当該基板の最上層の膜厚を推定する膜厚推定技術および当該膜厚推定技術を用いるエッチング方法に関するものである。ここで、基板としては、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、太陽電池用基板、等(以下、単に「基板」という)が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板に形成された最上層の膜厚を測定する技術として、触針式表面形状測定による方法、テラヘルツ波を利用する方法(特許文献1参照)や分光エリプソメーターや干渉膜厚計を使用する方法(特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6589239号
【特許文献2】特開2001-41713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の膜厚測定技術を基板に対して処理を施す基板処理装置、例えばエッチング装置に適用しようとすると、次のような問題が生じる。触針式表面形状測定では、基板に対して汚染や損傷などの不都合を加えてしまう。また、テラヘルツ波を利用する方法では、高価な膜厚測定装置をエッチング装置に組み込む必要があり、エッチング装置のコスト増大を招く。さらに、分光エリプソメーターや干渉膜厚計を膜厚測定装置として用いる場合、音響光学分光フィルターなど分光光学部品を装備する必要がある。そのため、装置が高価となるという問題とともに、一定の帯域内で観察光の波長を走査させなければならず、リアルタイムでの膜厚測定が困難となる。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、多層構造を有する基板の最上層の膜厚を低コストかつリアルタイムで求めることができる膜厚推定技術および当該膜厚推定技術を用いたエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1態様は、基材層上に少なくとも1層以上の薄膜が積層された多層構造を有する基板に対して処理を施した後の基板の最上層の膜厚を推定する膜厚推定方法であって、(a)処理が施された基板に波長λの観察光を照射して基板の最上層の像を撮像部で取得する工程と、(b)波長λにおける多層構造を構成する各層の屈折率および消光係数と、多層構造のうち最上層を除く各層の膜厚とを記憶する工程と、(c)工程(b)で記憶された屈折率、消光係数および膜厚と、波長λにおける基板の反射率R(λ)と最上層の膜厚d1との関係を示す関数(R(λ)=f(d1))の逆関数と、に基づいて、最上層の像を構成する画素の輝度値から最上層の膜厚を推定する工程と、を備えることを特徴としている。
【0007】
この発明の第2態様は、基材層上に少なくとも1層以上の薄膜が積層された多層構造を有する基板に対して処理を施した後の基板の最上層の膜厚を推定する膜厚推定装置であって、処理が施された基板に波長λの観察光を照射する照明部と、観察光が照射された基板を撮像して基板の最上層の像を取得する撮像部と、波長λにおける多層構造を構成する各層の屈折率および消光係数と、多層構造のうち最上層を除く各層の膜厚とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された屈折率、消光係数および膜厚と、基板の反射率R(λ)と最上層の膜厚d1との関係を示す関数(R(λ)=f(d1))の逆関数と、に基づいて、最上層の像を構成する画素の輝度値から最上層の膜厚を推定する膜厚推定部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
この発明の第3態様は、基材層上に少なくとも1層以上の薄膜が積層された多層構造を有する基板に対して処理液を供給して基板の最上層をエッチングするエッチング方法であって、上記膜厚推定方法を用いて処理液による処理を受けている基板の最上層について膜厚を求め、推定値に応じて処理液の供給を制御することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、波長λにおける多層構造を構成する各層の屈折率および消光係数と、多層構造のうち最上層を除く各層の膜厚とが予め記憶されている。処理が施された基板の最上層の膜厚を推定する際には、当該基板に波長λの観察光が照射されるとともに、当該基板の最上層の像が撮像部により取得される。そして、予め記憶された屈折率、消光係数および膜厚と、波長λにおける基板の反射率R(λ)と最上層の膜厚d1との関係を示す関数(R(λ)=f(d1))の逆関数とに基づいて、最上層の像を構成する画素の輝度値から最上層の膜厚が求められる。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された発明によれば、特定の波長λの観察光で照明された基板を撮像して取得される基板の最上層の像から当該最上層の膜厚を求めることができる。このように従来技術のように観察光の波長走査を必要とせず、特定の波長λの観察光を用いて最上層の膜厚を推定することが可能となっている。その結果、多層構造を有する基板の最上層の膜厚を低コストかつリアルタイムで求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る膜厚推定装置の一実施形態である膜厚推定機構を装備する基板処理装置の一例を示す図である。
【
図2】
図1に示す基板処理装置を上方から見た平面図である。
【
図3】
図1および
図2に示す基板処理装置に装備された膜厚推定機構の構成を示す図である。
【
図4】
図1および
図2に示す基板処理装置によるベベルエッチング動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】ベルエッチング処理前に実行される校正値の取得動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】最上層の膜厚推定動作を示すフローチャートである。
【
図7】最上層の膜厚推定動作を説明するための図である。
【
図8】最上層の膜厚推定動作を説明するための図である。
【
図9】膜厚候補値の決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係る膜厚推定装置の一実施形態である膜厚推定機構を装備する基板処理装置の一例を示す図である。
図2は
図1に示す基板処理装置を上方から見た平面図である。
図3は
図1および
図2に示す基板処理装置に装備された膜厚推定機構の構成を示す図である。なお、以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。上下方向は鉛直方向であり、スピンチャックに対して基板側が上である。
【0013】
基板処理装置1は、回転保持機構2、飛散防止部3、表面保護部4、処理部5、ノズル移動機構6、加熱機構7、本発明に係る膜厚推定装置の一実施形態に相当する膜厚推定機構8および制御部10を備えている。これら各部2~8は、制御部10と電気的に接続されており、制御部10からの指示に応じて動作する。制御部10としては、例えば、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御部10は、例えば、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM、制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク、等を備えている。制御部10においては、プログラムに記述された手順に従って主制御部としてのCPUが演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を制御する。
【0014】
この基板処理装置1は、例えば
図3に示すように基材層Lq上に少なくとも1層以上の薄膜が積層されたq層構造を有する基板Wの周縁部に対してエッチング処理を施す、いわゆるベベルエッチング装置である。基板処理装置1では、膜厚推定機構8が所定のサンプリング周期で基板Wの周縁部の最上層L1の膜厚d1を求める。そして、制御部10は、エッチング処理中に、膜厚推定機構8により求められた膜厚d1がゼロとなった時点をエンドポイントとして検出し、その検出時点でエッチング処理を停止する。なお、基板処理装置1における膜厚のサンプリングおよびベベルエッチング動作については、後で詳述する。
【0015】
回転保持機構2は、基板Wを、その表面を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持しつつ回転可能な機構である。回転保持機構2は、基板Wを、主面の中心c1を通る鉛直な回転軸a1のまわりに回転させる。回転保持機構2は、基板Wより小さい円板状の部材であるスピンチャック(「基板保持部」)21を備えている。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸a1に一致するように設けられている。スピンチャック21の下面には、円筒状の回転軸部22が連結されている。回転軸部22は、その軸線を回転軸a1と一致させた状態で、鉛直方向に延設されている。また、回転軸部22には、回転駆動部(例えば、モータ)23が接続されている。回転駆動部23は、制御部10からの回転指令に応じて回転軸部22をその軸線まわりに回転駆動する。従って、スピンチャック21は、回転軸部22とともに回転軸a1周りに回転可能である。回転駆動部23と回転軸部22とは、スピンチャック21を、回転軸a1を中心に回転させる回転機構231である。回転軸部22および回転駆動部23は、筒状のケーシング24内に収容されている。
【0016】
スピンチャック21の中央部には、図示省略の貫通孔が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、図示省略の配管、開閉弁を介して図示省略のポンプが接続されている。当該ポンプ、開閉弁は、制御部10に電気的に接続される。制御部10は、当該ポンプ、開閉弁の動作を制御する。当該ポンプは、制御部10の制御に従って、負圧と正圧とを選択的に供給可能である。基板Wがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプが負圧を供給すると、スピンチャック21は、基板Wを下方から吸着保持する。ポンプが正圧を供給すると、基板Wは、スピンチャック21の上面から取り外し可能となる。
【0017】
この構成において、スピンチャック21が基板Wを吸着保持した状態で、回転駆動部23が回転軸部22を回転すると、スピンチャック21が鉛直方向に沿った軸線周りで回転される。これによって、スピンチャック21上に保持された基板Wが、その面内の中心c1を通る鉛直な回転軸a1を中心に矢印AR1方向に回転される。
【0018】
なお、基板Wの保持方式は、これに限定されるものではなく、複数個(例えば6個)のチャックピンにより保持する、いわゆるメカチャック方式であってもよい。
【0019】
飛散防止部3は、スピンチャック21とともに回転される基板Wから飛散する処理液等を受け止める。飛散防止部3は、スプラッシュガード31を備える。スプラッシュガード31は、上端が開放された筒形状の部材であり、回転保持機構2を取り囲むように設けられる。スプラッシュガード31には、これを昇降移動させるガード駆動機構(図示省略)が接続されており、制御部10からの昇降指令に応じて駆動される。
【0020】
表面保護部4は、スピンチャック21上に保持されて回転している基板Wの上面(後の
図4中の符号Wu)の周縁部に当たるように不活性ガスのガス流を吐出するガス吐出機構を備えている。「不活性ガス」は、基板Wの材質およびその表面に形成された薄膜との反応性に乏しいガスであり、例えば、窒素(N2)ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどである。本実施形態では、ガス吐出機構41、42が備えられている。ガス吐出機構41、42は、不活性ガスを、例えば、ガス柱状のガス流として吐出する。ガス吐出機構42は、ガス吐出機構41が吐出するガス流が基板Wの周縁部に当たる位置よりも基板Wの回転方向の上流側の位置に当たるように不活性ガスのガス流を吐出する。
【0021】
表面保護部4は、スピンチャック21上に保持されて回転している基板Wの上面の中央付近に対して不活性ガスのガス流を吐出するガス吐出機構43をさらに備える。表面保護部4は、ガス吐出機構41~43から基板Wの上面に不活性ガスのガス流を吐出することによって、基板Wの上面の周縁部に規定される環状の処理領域に当たるように吐出された処理液等から基板Wの上面の非処理領域を保護する。
【0022】
ガス吐出機構41、42は、ノズルヘッド44を備える。ガス吐出機構43は、ノズルヘッド45を備える。ノズルヘッド44、45は、それぞれ後述するノズル移動機構6のアーム61、62の先端に取り付けられている。アーム61、62は水平面に沿って延在する。ノズル移動機構6は、アーム61、62を移動させることによって、ノズルヘッド44、45をそれぞれの処理位置(
図2中の実線位置)と退避位置(
図2中の2点鎖線位置)との間で移動させる。
【0023】
ノズルヘッド44は、2つのノズル46、47を有し、アーム61の先端に取り付けられている。ノズル46、47は、その先端部(下端部)をノズルヘッド44の下面から下方に突出させ、その上端部を上面から上方に突出させている。一方のノズル46の上端には、配管411の一端が接続されている。配管411の他端は、ガス供給源412に接続している。また、配管411の経路途中には、ガス供給源412側から順に流量制御器413、開閉弁414が設けられている。もう一方のノズル47にも、配管421の一端が接続されている。配管421の他端は、ガス供給源422に接続している。また、配管421の経路途中には、ガス供給源422側から順に流量制御器423、開閉弁424が設けられている。
【0024】
ここで、ノズル移動機構6がノズルヘッド44を、その処理位置に配置すると、ノズル46の吐出口は、回転保持機構2が回転させる基板Wの周縁部の回転軌跡の一部に対向し、ノズル47の吐出口は、当該回転軌跡の他の一部に対向する。
【0025】
ノズルヘッド44が処理位置に配置された状態で、ノズル46、47は、ガス供給源412、422から不活性ガス(図示の例では、窒素(N2)ガス)を供給される。ノズル46は、供給された不活性ガスのガス流を基板Wの周縁部の回転軌跡に規定される位置に当たるように上方から吐出する。ノズル46は、吐出したガス流が位置に達した後、位置から基板Wの周縁に向かって流れるように、ガス流を吐出口から定められた方向に吐出する。ノズル47は、供給された不活性ガスのガス流が当該回転軌跡上に規定される位置に当たるように、ガス流を上方から吐出する。ノズル47は、吐出したガス流が位置に達した後、位置から基板Wの周縁に向かって流れるように、ガス流を吐出口から定められた方向に吐出する。
【0026】
ガス吐出機構43のノズルヘッド45は、アーム62の先端部の下面に取り付けられた円柱部材93と、円柱部材93の下面に取り付けられた円板状の遮断板90と、円筒状のノズル48とを備えている。円柱部材93の軸線と遮断板90の軸線とは、一致しており、それぞれ鉛直方向に沿う。遮断板90の下面は、水平面に沿う。ノズル48は、その軸線が遮断板90、円柱部材93の軸線と一致するように、円柱部材93、遮断板90を鉛直方向に貫通している。ノズル48の上端部は、さらにアーム62の先端部も貫通して、アーム62の上面に開口する。ノズル48の上側の開口には、配管431の一端が接続されている。配管431の他端は、ガス供給源432に接続している。配管431の経路途中には、ガス供給源432側から順に流量制御器433、開閉弁434が設けられている。ノズル48の下端は、遮断板90の下面に開口している。当該開口は、ノズル48の吐出口である。
【0027】
ノズル移動機構6がノズルヘッド45をその処理位置に配置すると、ノズル48の吐出口は、基板Wの上面の中心付近に対向する。この状態において、ノズル48は、配管431を介してガス供給源432から不活性ガス(図示の例では、窒素(N2)ガス)を供給される。ノズル48は、供給された不活性ガスを基板Wの上面の中心付近に向けて不活性ガスのガス流として吐出する。ガス流は、基板Wの中央部分の上方から基板Wの周縁に向かって放射状に広がる。すなわち、ガス吐出機構43は、基板Wの上面の中央部分の上方から不活性ガスを吐出して、当該中央部分の上方から基板Wの周縁に向かって広がるガス流を生成させる。
【0028】
処理部5は、スピンチャック21上に保持された基板Wの上面周縁部における処理領域に対する処理を行う。具体的には、処理部5は、スピンチャック21上に保持された基板Wの処理領域に処理液を供給する。処理部5は、処理液吐出機構51Aを備える。処理液吐出機構51Aは、スピンチャック21上に保持されて回転している基板Wの上面(処理面)の周縁部の一部に当たるように処理液の液流を吐出する。液流は、液柱状である。処理液吐出機構51Aは、ノズルヘッド50を備える。ノズルヘッド50は、ノズル移動機構6が備える長尺のアーム63の先端に取り付けられている。アーム63は、水平面に沿って延在する。ノズル移動機構6は、アーム63を移動させることによって、ノズルヘッド50をその処理位置(
図2中の実線位置)と退避位置(
図2中の2点鎖線位置)との間で移動させる。
【0029】
ノズルヘッド50は、4本のノズル5a~5dを有し、アーム63の先端に取り付けられている。ノズル5a~5dはアーム63の延在方向に沿って一列に並んで配置されている。ノズルヘッド50では、ノズル5a~5dの先端部(下端部)が下方に突出し、その基端部(上端部)が上方に突出している。ノズル5a~5dには、これらに処理液を供給する配管系である処理液供給部51が接続されている。具体的には、ノズル5a~5dの上端には、処理液供給部51の配管53a~53dの一端が接続している。ノズル5a~5dは、処理液供給部51から処理液をそれぞれ供給され、供給された処理液を先端の吐出口からそれぞれ吐出する。処理液吐出機構51Aは、ノズル5a~5dのうち制御部10に設定された制御情報によって定まる1つのノズルから、制御部10の制御に従って処理液の液流を吐出する。
【0030】
処理液供給部51は、具体的には、SC-1供給源52a、DHF供給源52b、SC-2供給源52c、リンス液供給源52d、複数の配管53a,53b,53c,53d、および、複数の開閉弁54a~54dを、組み合わせて構成されている。SC-1、DHF、SC-2は、薬液である。従って、処理液吐出機構51Aは、基板Wの周縁部に薬液を吐出する薬液吐出部である。
【0031】
SC-1供給源52aは、SC-1を供給する供給源である。SC-1供給源52aは、開閉弁54aが介挿された配管53aを介して、ノズル5aに接続されている。したがって、開閉弁54aが開放されると、SC-1供給源52aから供給されるSC-1が、ノズル5aから吐出される。
【0032】
DHF供給源52bは、DHFを供給する供給源である。DHF供給源52bは、開閉弁54bが介挿された配管53bを介して、ノズル5bに接続されている。したがって、開閉弁54bが開放されると、DHF供給源52bから供給されるDHFが、ノズル5bから吐出される。
【0033】
SC-2供給源52cは、SC-2を供給する供給源である。SC-2供給源52cは、開閉弁54cが介挿された配管53cを介して、ノズル5cに接続されている。したがって、開閉弁54cが開放されると、SC-2供給源52cから供給されるSC-2が、ノズル5cから吐出される。
【0034】
リンス液供給源52dは、リンス液を供給する供給源である。ここでは、リンス液供給源52dは、例えば、純水やDIW(脱イオン水)を、リンス液として供給する。リンス液供給源52dは、開閉弁54dが介挿された配管53dを介して、ノズル56に接続されている。したがって、開閉弁54dが開放されると、リンス液供給源52dから供給されるリンス液が、ノズル56から吐出される。なお、リンス液として、純水、温水、オゾン水、磁気水、還元水(水素水)、各種の有機溶剤(イオン水、IPA(イソプロピルアルコール)、機能水(CO2水など)、などが用いられてもよい。
【0035】
処理液供給部51は、SC-1、DHF、SC-2、および、リンス液を選択的に供給する。処理液供給部51から処理液(SC-1、DHF、SC-2、あるいは、リンス液)がノズル5a~5dのうち対応するノズルに供給されると、回転している基板Wの上面周縁部の処理領域に当たるように、当該ノズルは当該処理液の液流を吐出する。ただし、処理液供給部51が備える開閉弁54a~54dの各々は、制御部10と電気的に接続されている図示省略のバルブ開閉機構によって、制御部10の制御下で開閉される。つまり、ノズルヘッド50のノズルからの処理液の吐出態様(具体的には、吐出される処理液の種類、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出流量、等)は、制御部10によって制御される。すなわち、処理液吐出機構51Aは、制御部10の制御によって、回転軸a1を中心に回転している基板Wの上面周縁部の回転軌跡のうち位置に当たるように処理液の液流を吐出する。
【0036】
ノズル移動機構6は、ノズルヘッド44、45、50をそれぞれの処理位置と退避位置との間で独立して移動させる機構である。ノズル移動機構6は、水平に延在するアーム61~63、ノズル基台64~66、駆動部67~69を備える。ノズルヘッド44、45、50は、それぞれアーム61~63の先端部分に取り付けられている。
【0037】
アーム61~63の基端部は、それぞれノズル基台64~66の上端部分に連結されている。ノズル基台64~66は、その軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢でケーシング24の周りに分散して配置されている。ノズル基台64~66は、その軸線に沿って鉛直方向に延在し、軸線周りに回転可能な回転軸をそれぞれ備えている。ノズル基台64~66の軸線と各回転軸の軸線とは一致する。各回転軸の上端には、ノズル基台64~66の上端部分がそれぞれ取り付けられている。各回転軸が回転することにより、ノズル基台64~66の各上端部分は各回転軸の軸線、すなわちノズル基台64~66の軸線を中心に回転する。ノズル基台64~66には、それぞれの回転軸を軸線周りに回転させる駆動部67~69が設けられている。駆動部67~69は、例えば、ステッピングモータなどをそれぞれ備えて構成される。
【0038】
駆動部67~69は、ノズル基台64~66の回転軸を介してノズル基台64~66の上端部分をそれぞれ回転させる。各上端部分の回転に伴って、ノズルヘッド44、45、50もノズル基台64~66の軸線周りに回転する。これにより、駆動部67~69は、ノズルヘッド44、45、50をそれぞれの処理位置と、退避位置との間で水平に移動させる。
【0039】
ノズルヘッド44が処理位置に配置されると、ノズル46の吐出口は、回転保持機構2が回転させる基板Wの周縁部の回転軌跡の一部に対向し、ノズル47の吐出口は、当該回転軌跡の他の一部に対向する。
【0040】
ノズルヘッド45が処理位置に配置されると、ノズル48は、基板Wの中心c1の上方に位置し、ノズル48の軸線は、スピンチャック21の回転軸a1に一致する。ノズル48の吐出口(下側の開口)は、基板Wの中心部に対向する。また、遮断板90の下面は、基板Wの上面と平行に対向する。遮断板90は、基板Wの上面と非接触状態で近接する。
【0041】
ノズルヘッド50が処理位置に配置されると、ノズル5a~5dが処理位置に配置される。ノズルヘッド44、45、50の各待避位置は、これらが基板Wの搬送経路と干渉せず、かつ、これらが相互に干渉しない各位置である。各退避位置は、例えば、スプラッシュガード31の外側、かつ、上方の位置である。
【0042】
基板Wの下面周縁部の下方には、加熱機構7が設けられている。加熱機構7は、基板Wの下面周縁部に沿って基板Wの周方向に延在する環状のヒーター(図示省略)と、ヒーターへの電力の供給を制御部10の制御に従って行う図示省略の電気回路を備えている。ヒーターが基板Wの下面周縁部の直下位置に配置された状態でヒーターに電力が供給されると、ヒーターは発熱して基板Wの周縁部を加熱する。
【0043】
膜厚推定機構8は撮像ヘッド81を備えている。撮像ヘッド81には、
図3に示すように、基板Wに対して所定の入射角θ(例えば30゜)で波長λの観察光L(λ)を照射して照明する照明部82と、基板Wにより反射された反射光RLを受光して基板Wの最上層L1を撮像して最上層L1の像(
図7中の符号IM)を取得する撮像部83とが設けられている。本実施形態では、撮像部83はモノクロの2次元カメラで構成されている。この撮像ヘッド81は、
図2に示すように、アーム84の先端に取り付けられている。アーム84は水平面に沿って延在する。アーム84の基端部はヘッド基台85の上端部分に連結されている。ヘッド基台85は、その軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢でケーシング24の周りに配置されている。ヘッド基台85は、その軸線に沿って鉛直方向に延在し、軸線周りに回転可能な回転軸を備えている。ヘッド基台85の軸線と回転軸の軸線とは一致する。各回転軸の上端には、ヘッド基台85の上端部分が取り付けられている。各回転軸が回転することにより、ヘッド基台85の上端部分は回転軸の軸線、すなわちヘッド基台85の軸線を中心に回転する。ヘッド基台85には、それぞれの回転軸を軸線周りに回転させる駆動部86が設けられている。駆動部86は、例えば、ステッピングモータなどを備えて構成される。
【0044】
膜厚推定機構8は、制御部10からの膜厚推定指令に応じて、照明部82、撮像部83および駆動部86を制御して基板Wの最上層L1の膜厚d1を求め、膜厚d1に関する情報を制御部10に出力する膜厚推定制御部87を有している。膜厚推定制御部87は、制御部10と同様に、各種演算処理を行うCPU871と、膜厚推定プログラムや各種情報を記憶する記憶部872と、を備えている。そして、CPU871は、膜厚推定プログラムにしたがって制御部10と協働しながら、ベベルエッチング処理前の膜厚推定に必要な関連情報、校正値および最上層L1の直前膜厚の取得、およびベベルエッチング処理中での最上層L1の膜厚d1の推定などを行う。つまり、CPU871および記憶部872がそれぞれ本発明の「膜厚推定部」および「記憶部」として機能する。なお、本実施形態では、制御部10から独立して膜厚推定制御部87を設けているが、膜厚推定制御部87の機能を制御部10に組み込み、制御部10のCPUおよび磁気ディスクをそれぞれ本発明の「膜厚推定部」および「記憶部」として機能させてもよい。
【0045】
次に、上記のように構成された基板処理装置1によるベベルエッチング動作について
図4ないし
図9を参照しつつ説明する。
図4は
図1および
図2に示す基板処理装置によるベベルエッチング動作の一例を示すフローチャートである。
【0046】
基板処理装置1では、ベベルエッチング処理を実行する前に、ベベルエッチング処理の対象となる被処理基板Wの関連情報が取得され、記憶部872に記憶される(ステップS1)。ここで、関連情報とは、波長λにおける基板Wの各層L1~Lqの屈折率n(λ,1)、n(λ,2)、…、n(λ,q)および消光係数k(λ,1)、k(λ,2)、…、k(λ,q)と、多層構造のうち最上層L1を除く各層の膜厚d2~dqと、入射角θと、波長λとである。このような関連情報を予め取得し、記憶部872に記憶しておく主たる目的は、本実施形態における膜厚推定原理と密接に関連している。
【0047】
本実施形態における膜厚推定は、「光学薄膜の分光特性シミュレーション」、栗山桂司、表面技術 vol. 48, No. 9, 1997(以下、「非特許文献」と称する)に記載された反射率の算出方法をベースとしている。つまり、非特許文献では、ある波長λにおける任意の多層膜の反射率R(λ)は、例えば
図3に示すように、多層構造の層数q、各層L1~Lqの屈折率n(λ,1),n(λ,2),…,n(λ,q)、各層L1~Lqの消光係数k(λ,1),k(λ,2 ),…,k(λ,q)、膜厚d1,d2,…,dqおよび観察光Lの基板Wに対する入射角θにより決定される。このとき、反射率R(λ)と最上層L1の膜厚d1の関係をR(λ)=f(d1)と関数で定義すると、最上層L1の膜厚d1は、撮像部83により取得された最上層L1の像を構成する画素の輝度値I(λ)から、上記関数の逆関数、より詳しくは、次式
d1=f
-1(I(λ)-Ioff)/A) … (1)式
ただし、Aは、撮像部83のゲイン、
Ioffは、輝度値オフセット、
により求めることができる。ここで、輝度値オフセットIoffは、照明部82による照明を行わない環境、つまり暗環境における撮像部83で取得した像を構成する画素の輝度値に相当する。また、例えばシリコンウエハ上にシリコン酸化膜が形成された2層構造の基板Wについては、ゲインAを以下のようにして求めることができる。ベアシリコン基板を基準サンプル(本発明の「校正用基板」に相当)とし、これを観察光L(λ)で照明しつつ撮像部83で取得したベアシリコン基板の表面像の輝度値I(λ,Bare-Si)およびベアシリコン基板の反射率R(λ,Bare-Si)から次式、
A=(I(λ,Bare-Si)-Ioff)/R(λ,Bare-Si) … (2)式
として求めることができる。
【0048】
そこで、本実施形態では、ステップS2において、校正値が既に取得されているか否かが判定される。ここで、既にベベルエッチング処理の対象となる被処理基板Wの校正値が取得されている場合には、校正値の取得処理(ステップS3)を実行することなく、ステップS4に進む。一方、校正値を未取得である(ステップS2で「NO」)とき、校正値の取得処理が実行された後で、ステップS4に進む。
【0049】
図5はベルエッチング処理前に実行される校正値の取得動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、校正値の取得動作の理解を容易とするために、上記したように被処理基板Wがシリコンウエハ上にシリコン酸化膜を積層した2層構造基板を例示して説明する。校正値の取得動作(ステップS3)では、照明部82を消灯した状態で撮像部83が撮像する。これにより、暗環境下での画像の取得が実行される(ステップS31)。そして、膜厚推定制御部87のCPU871が上記画像を構成する画素の輝度値の平均値を算出し、これを輝度値オフセットIoffとして記憶部872に記憶する(ステップS32)。
【0050】
それに続いて、基板Wのうち最上層L1のみが形成されていない基準サンプルがスピンチャック21に載置される。ここでは、2層構造基板のうち最上層(SiO2)L1が形成されていない基板、つまりベアシリコン基板が基準サンプルとして用いられる。また、基準サンプルの載置は基板処理装置1の外部からアクセスする搬送ロボット(図示省略)で行ってもよいし、作業者のマニュアル操作により行ってもよい。そして、スピンチャック21上に基準サンプルが載置されると、ポンプがスピンチャック21上に負圧を供給する。これにより、基準サンプルがスピンチャック21に吸着保持される。こうして、基準サンプルのローディングが完了する(ステップS33)。
【0051】
次に、照明部82が点灯して波長λの観察光L(λ)が基準サンプルの表面に照射されるとともに撮像部83が基準サンプルの表面で反射された反射光を受光し、基準サンプルの像(例えば、後で説明する
図7の左下図面中の符号IM)を取得する(ステップS34)。そして、CPU871は基準サンプルの像を構成する画素の輝度値の平均値を輝度値I(λ,Bare-Si)として取得する(ステップS35)。これと並行して、CPU871は、記憶部872から波長λでのシリコンの屈折率n(λ,2)、波長λでの消光係数k(λ,2)、基準サンプルの層数=1および第2層L2の厚みd2(ここでは、ベアシリコン基板の厚み)を読み出す。また、CPU871は、これらの値と、観察光L(λ)の基準サンプルに対する入射角θ(例えば30゜)とに基づいて、基準サンプルの反射率R(λ,Bare-Si)を算出する(ステップS36)そして、これらを上記(1)式に代入し、CPU871はゲインAを算出する(ステップS37)。
【0052】
こうして求められた輝度値オフセットIoffおよびゲインAを校正値として記憶部872に記憶した後で、スピンチャック21による吸着保持が解除される。そして、基準サンプル(ベアシリコン基板)は搬送ロボットや作業者などによりスピンチャック21からアンローディングされる(ステップS38)。これにより校正値の取得処理が完了する。
【0053】
図4に戻って説明を続ける。最上層L1の膜厚を推定するにあたって使用される校正値が準備された段階では、スピンチャック21は空の状態であり、そこに被処理基板Wが搬送ロボットなどの搬送手段により搬入され、載置される。そして、ポンプがスピンチャック21上に負圧を供給し、これにより基準サンプルがスピンチャック21に吸着保持される。こうして、基準サンプルのローディングが完了する(ステップS4)。一方、搬送ロボットは基板処理装置1から退避する。
【0054】
スピンチャック21に保持された基板Wは基本的には各層とも予め設計された値で製造されており、ローディング直後の基板Wにおいても最上層L1の膜厚は設計値d1dあるいはそれに近似した値であると可能性が高い。しかしながら、基板処理装置1としては、最上層L1が形成されてからの時間経過や処理工程などの基板履歴に関する情報を有していない。したがって、この時点で本発明の特徴部分である「最上膜の膜厚推定」により最上層L1の膜厚d1を求めておくのが望ましい。そこで、本実施形態では、後で説明するようにベベルエッチング処理中に一定の時間間隔(サンプリング周期)で行われる最上層L1の膜厚推定と同じシーケンスで、ローディング直後の最上層L1の膜厚d1を求めている。より詳しくは、膜厚推定直前の最上層L1の膜厚(以下「直前膜厚d1_pre」という)として上記設計値d1dを設定し(ステップS5)、これを用いてCPU871は
図6に示す膜厚推定処理を実行して最上層L1の膜厚d1を推定する(ステップS6)。そして、ステップS6で得られた膜厚d1をベベルエッチング処理の開始直前の直前膜厚d1_preとして設定する(ステップS7)。
【0055】
図6は最上層の膜厚推定動作を示すフローチャートである。
図7および
図8は最上層の膜厚推定動作を説明するための図である。基板処理装置1はベベルエッチング処理を行う装置であり、最上層L1の周縁部が選択的にエッチング除去される。したがって、最上層L1の膜厚d1を正確に求めるべき部位も周縁部およびその周囲である。そこで、最上層L1の膜厚推定動作時においては、撮像ヘッド81は
図2に示すようにスピンチャック21に保持されている基板Wの周縁部上方に配置される。その後で、照明部82が点灯して波長λの観察光L(λ)が射出される。観察光L(λ)は、入射角θ(
図3)で、
図7に示すように基板Wの周縁部およびその周囲に照射され、これにより最上層L1の一部が照明される。
【0056】
撮像部83は最上層L1ないし基板層Lqで多重反射された光を受光する。これにより、例えば
図7の左下拡大図面に示すような2次元画像IMが取得される(ステップS61)。なお、同図中の右下拡大図は後で説明するベベルエッチング処理中において取得される2次元画像IMの一例を示している。また、同図において、ハッチングを付している領域はエッチング処理を行わない領域を示し、ドットを付している領域はエッチング処理を受けている領域を示している。さらに、同図において、2次元画像を構成する画素PXをそれぞれ特定するために、x座標およびy座標を付している。つまり、2次元画像は、画素PX(0,0)から画素PX(m,n)までの画素群によって構成されている。そして、画素毎にステップS62~S66を実行して膜厚推定値d1(x,y)を求める。
【0057】
ステップS62では、CPU871は、上記(1)式に基づいて画素PX(x,y)での最上層L1の膜厚d1(x,y)を導出する。しかしながら、(1)式における逆関数は複数の解を持ち得る。すなわち、反射率R(λ)と膜厚d1とは、
図8中の曲線で示す関係を有しており、当該曲線と測定された反射率R(λ)との交点が上記した複数の解に相当し、膜厚の候補(以下「膜厚候補値」という)として取得される。
【0058】
ここで、安定して確からしい膜厚d1を得るためには、複数の膜厚候補値から効率的な解の絞り込みが必要である。例えばエリプソメーターでは、複数の波長で輝度値の測定と反射率の予測・フィッティングを行って解の絞り込みを行っている。しかしながら、本実施形態では、観察光Lの波長λを変化させる機構を有していない。したがって、本実施形態では、そのようなアルゴリズムが適用できない。
【0059】
そこで、本実施形態では、CPU871は直前膜厚d1_preを利用することで解の絞り込みを実行する。より詳しくは、最上層L1での干渉縞の位相差φ(=4・π・n(λ,1)・d1・cosθ/λ)が半周期πをとるとき、d1=λ/(4・n(λ,1)・cosθ)となることを用いて、
図8に示すように、
【数1】
の範囲に含まれる膜厚候補値を抽出し、これを解とすることができる(ステップS63)。ただし、上記範囲に膜厚候補値が1個のみ含まれる場合と、2個含まれる場合とが存在する。そこで、CPU871は、上記範囲に含まれる膜厚候補値が1個であるか、2個であるかを判定する。そして、膜厚候補値が1個である場合(ステップS64で「1個(d1a)」)、CPU871は当該膜厚候補値を膜厚推定値d1(x,y)と認定する(ステップS65)。一方、膜厚候補値が2個である場合(ステップS64で「2個(d1a、d1b)」)、CPU871は膜厚候補値の決定処理を実行する(ステップS66)。
【0060】
図9は膜厚候補値の決定処理を示すフローチャートである。この決定処理(ステップS66)では、2個の膜厚候補値の一方を膜厚候補値d1aとし、他方を膜厚候補値d1bとしている。また、推定ループにおける1ループ前の膜厚推定値d1を直前推定値d1_pre(x,y)としている。なお、推定ループにおける直前推定値d1_pre(x,y)の初期値として、設計値d1dが設定されている。
【0061】
ステップS661では、次式、
d1a’=d1a-d1_pre(x,y)
d1b’=d1b-d1_pre(x,y)
に基づいて膜厚候補値の微分量d1a'、d1b'が算出される(ステップS661)。そして、微分量の変化量Ca、Cbがそれぞれ次式、
Ca=d1a’-d1’(x,y)
Cb=d1b’-d1’(x,y)
に基づいて算出される(ステップS662)。ここで、d1’(x,y)は推定ループにおける1ループ前の膜厚推定値d1の微分量(以下「直前微分量」という)であり、推定ループにおける直前微分量d1’(x,y)の初期値として、ゼロが設定されている。
【0062】
次のステップS663で変化量Ca、Cbが比較される。変化量Caの方が小さい場合(ステップS663で「NO」)、膜厚推定値d1(x,y)は膜厚候補値d1aに決定される(ステップS664)。また、次ループのため、直前推定値d1_pre(x,y)および直前微分量d1’(x,y)は、それぞれ
d1_pre(x,y)=d1a
d1’(x,y)=d1a’
に書き換えられ、記憶部872に記憶される(ステップS665)。
【0063】
一方、変化量Cbの方が小さい場合(ステップS663で「YES」)、膜厚推定値d1(x,y)は膜厚候補値d1bに決定される(ステップS666)。また、次ループのため、直前推定値d1_pre(x,y)および直前微分量d1’(x,y)は、それぞれ
d1_pre(x,y)=d1b
d1’(x,y)=d1b’
に書き換えられ、記憶部872に記憶される(ステップS667)。
【0064】
上記した膜厚候補値の決定処理(ステップS66)の実行により、膜厚候補値が2個である場合であっても、安定して確からしい膜厚推定値d1を取得することができる。
【0065】
図6に戻って説明を続ける。膜厚の推定ループは全画素PXについて実行される。その結果、以下の示すデータが得られ、記憶部872に記憶されている。
―――――――――――――――――――――――――――
画素PX(0,0) 輝度値I(0,0) 膜厚推定値d1(0,0)
画素PX(1,0) 輝度値I(1,0) 膜厚推定値d1(1,0)
…
画素PX(m,p) 輝度値I(m,p) 膜厚推定値d1(m,p)
…
画素PX(m,n) 輝度値I(m,n) 膜厚推定値d1(m,n)
―――――――――――――――――――――――――――
【0066】
CPU871はそれらのデータのうちベベルエッチング領域に相当する画素PX(0,0)から画素PX(m,p)に関する膜厚推定値d1(0,0)~d1(m、p)を抽出する。そして、CPU871は、それらの膜厚推定値d1(0,0)~d1(m、p)から膜厚d1を決定する(ステップS67)。例えば膜厚推定値d1(0,0)~d1(m、p)の平均値を膜厚d1としてもよいし、画素毎に重み付け係数を付与した上で膜厚推定値d1(0,0)~d1(m、p)の重み付け平均値を膜厚d1としてもよい。また、現時点では、ベベルエッチング処理が開始されていないため、全画素の膜厚推定値d1(0,0)~d1(m、n)から膜厚d1を決定してもよい。
【0067】
さらに、
図4に戻って説明を続ける。上記のようにしてベベルエッチング処理の直前において最上層L1の膜厚d1が求められると、CPU871は当該膜厚推定値d1を最上層L1の直前膜厚d1_preとして設定し、記憶部872に記憶する(ステップS7)。
【0068】
直前膜厚d1_preの設定に続いて、ベベルエッチング処理が開始される(ステップS8)。つまり、ノズルヘッド44、45、50が、ノズル移動機構6によって処理位置に配置され、スプラッシュガード31がガード駆動機構によって上方位置に配置される。こうして、基板処理の準備が完了すると、基板処理装置1の回転機構231が、基板Wを保持するスピンチャック21の回転を開始する。また、適当なタイミングで加熱機構7のヒーターに電力が供給され、基板Wの周縁部の加熱が開始される。また、ガス吐出機構41、42がノズルヘッド44のノズル46、47から不活性ガスのガス流の吐出を開始するとともに、ガス吐出機構43が、ノズルヘッド45のノズル48から不活性ガスのガス流の吐出を開始する。そして、時間の経過によって基板Wの周縁部の温度が上昇した後、処理液吐出機構51Aは、基板Wの上面周縁部に当たるように処理液(薬液)の液流を吐出して上面周縁部の処理を開始する。
【0069】
ベベルエッチング処理の開始後においては、ステップS9で一定時間が経過したことが確認される毎に、ステップS6と同様の処理により、最上層L1の膜厚d1が求められる(ステップS10)。つまり、ベベルエッチング処理の進行により最上層L1の厚みは時々刻々と減少し、一定時間経過毎に膜厚推定機構8により最上層L1の膜厚d1がサンプリングされる。そこで、本実施形態では、サンプリングされた膜厚d1がゼロに到達したかについて判定される(ステップS11)。この判定は制御部10で行われ、膜厚d1がゼロに達していない、つまりベベルエッチング処理が完了していない(ステップS11で「NO」)間、直前膜厚d1_preをステップS10で求められた膜厚d1に書き換えた(ステップS12)後で、ステップS9に戻る。このように最上層L1の膜厚d1を一定間隔で求めながら、ベベルエッチング処理が継続される。
【0070】
一方、ステップS11で膜厚d1がゼロに達して最上層L1の周縁部が全てエッチング除去されたことを確認すると、制御部10は装置各部を制御してベベルエッチング処理を終了する(ステップS13)。すなわち、ヒーターへの電力供給の停止により基板Wの加熱が停止されるとともに、ガス流の吐出も停止される。さらに、スピンチャック21の回転が停止される。その後で、図示を省略する搬送ロボットのハンドが基板処理装置1に進入し、処理済の基板Wを受け取ると、スピンチャック21による基板Wの保持が解除される。そして、搬送ロボットは受け取った基板Wを次の基板処理装置に搬出する(ステップS14:アンローディング)。
【0071】
以上のように、本実施形態では、特定の波長λの観察光L(λ)で照明された基板Wを撮像して取得される基板Wの最上層L1の像(例えば
図7中の符号IM)から当該最上層L1の膜厚d1を推定している。このように従来技術のように観察光の波長走査を必要とせず、特定の波長λの観察光L(λ)のみを用いて最上層L1の膜厚d1を求めている。このように、本実施形態によれば、多層構造を有する基板Wの最上層L1の膜厚d1を低コストかつリアルタイムで求めることができる。
【0072】
また、上記実施形態では、ベベルエッチング処理の開始直前に最上層L1の薄膜推定処理(ステップS6)を実行して直前膜厚d1_preの設定を行っている(ステップS7)。したがって、ベベルエッチング処理の直前における最上層L1の膜厚d1を高い精度で求めることができ、ベベルエッチング処理中においても最上層L1の膜厚d1を安定して求めることができる。その結果、ベベルエッチング処理の終了タイミングを正確に検出することができ、ベベルエッチングの過不足が発生するのを効果的に防止することができる。
【0073】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば実施形態では、本発明に係る膜厚推定方法および膜厚推定装置がベベルエッチング処理を施す基板処理装置1に適用されているが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、基板Wの最上層L1全体あるいは一部をエッチングするエッチング装置に対しても本発明を適用可能である。また、エッチングエンドを検出する以外に、膜厚d1の変化量をサンプリング周期で割ることで最上層L1のエッチングレートを算出してもよい。また、エッチングレートからエッチングレートの維持やエッチングエンドポイントの予測や推定に用いることも可能である。さらに、最上層L1を成長させて膜厚d1を増加させる基板処理装置に対しても本発明を適用可能である。
【0074】
また、上記実施形態では、シリコンウエハ上にシリコン酸化膜が形成された2層構造の基板Wを例示したことに対応し、ベアシリコン基板を基準サンプル(本発明の「校正用基板」に相当)として用いている。ただし、多層構造は(SiO2/Si)構造に限定されるものではなく、任意である。例えばシリコン以外の酸化膜、窒化膜、金属膜、有機膜などが最上層L1として設けられた基板を処理する基板処理装置にも本発明を適用可能である。
【0075】
また、多層構造に応じた校正用基板を用いることができる。例えば上記実施形態と同様に第2層L2を構成する材料のみで構成された基準サンプルを本発明の「校正用基板」として用いてもよい。また、多層構造を有する基板から最上層のみを除去した基準サンプルを本発明の「校正用基板」として用いてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、ベベルエッチング処理の開始直前に最上層L1の薄膜推定処理(ステップS6)を実行して直前膜厚d1_preの設定を行っている(ステップS7)が、これらを省略してもよい。この場合、最上層L1の設計値d1dがベベルエッチング処理の直前における直前膜厚d1_preとなる。
【0077】
また、上記実施形態では、撮像部83をモノクロの2次元カメラで構成しているが、その他のカメラを用いることができる。例えばモノクロのラインカメラを用いて回転する基板Wを撮像して2次元画像を取得してもよい。また、カラーの2次元カメラで構成してもよい。この場合、複数の波長の光成分を有する観察光を射出する光源、例えば白色光源などで照明部82を構成すると、撮像部83により波長毎の像を取得することができる。そして、波長毎に上記処理を実行することで互いに異なる波長で膜厚を求めることができる。したがって、これら複数の膜厚推定結果を比較・補正することで簡易的な分光計測が可能となり、測定精度および信頼性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明は、基材層上に少なくとも1層以上の薄膜が積層された多層構造を有する基板に対して処理を施した後の当該基板の最上層の膜厚を推定する膜厚推定技術全般および当該膜厚推定技術を用いるエッチング方法全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…基板処理装置
8…膜厚推定機構(膜厚推定装置)
82…照明部
83…撮像部
87…膜厚推定制御部
871…CPU
872…記憶部
A…ゲイン
d1…(最上層の)膜厚
d1a,d1b…膜厚候補値
d1d…設計膜厚
IM…(最上層の)像
k…消光係数
L…観察光
L1…(基板の)最上層
L2…(基板の)第2層
Lq…基材層
n…屈折率
PX…画素
q…層数
R…反射率
RL…反射光
W…基板
λ…波長
θ…入射角