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  • 特開-送風機および換気扇 図1
  • 特開-送風機および換気扇 図2
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  • 特開-送風機および換気扇 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146539
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】送風機および換気扇
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/54 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
F04D29/54 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047546
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小見山 嘉浩
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC26
3H130BA66A
3H130BA97A
3H130CA06
3H130CA21
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DG03X
3H130EA07A
3H130EA08A
(57)【要約】
【課題】送風機本体の奥行の薄肉化と、送風性能低下の抑制と、を両立化できる送風機および換気扇を提供する。
【解決手段】本体枠101と、本体枠101に装着される化粧パネル103と、本体枠101に支持される電動機105と、電動機105の回転軸Sに取り付けられる軸流ファン1と、を備え、軸流ファン1は、筒状の中心枠体10と、中心枠体10の外周部に配置され、中心枠体10の径方向外側へ放射状に突出した複数の羽根11と、を有する。化粧パネル103は、軸流ファン1の前方に対向して配置され、本体枠101には、一方が化粧パネル103に連結されると共に他方が軸流ファン1の外周を囲んで配置され、軸流ファン1の回転によって吸い込まれる空気を、吸込口としての化粧パネル103側から吹出口としての電動機105側へ案内するベルマウス3が設けられ、軸流ファン1の先端から化粧パネル3までの距離をL、羽根11の高さをH、としたときに、0.24<L/H<0.15である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体枠と、前記本体枠に装着される化粧パネルと、前記本体枠に支持される電動機と、前記電動機の回転軸に取り付けられる軸流ファンと、を備え、
前記軸流ファンは、
筒状の中心枠体と、
前記中心枠体の外周部に配置され、前記中心枠体の径方向外側へ放射状に突出した複数の羽根と、を有し、
前記化粧パネルは、前記軸流ファンの前方に対向して配置され、
前記本体枠には、
一方が前記化粧パネルに連結されると共に他方が前記軸流ファンの外周を囲んで配置され、前記軸流ファンの回転によって吸い込まれる空気を、吸込口としての前記化粧パネル側から吹出口としての前記電動機側へ案内するベルマウスが設けられ、
前記軸流ファンの先端から前記化粧パネルまでの距離をL、前記羽根の高さをH、としたときに、0.24<L/H<0.15である、送風機。
【請求項2】
前記軸流ファンの外径をDとしたときに、D/H=1.87である、請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記ベルマウスの内径をFとしたときに、F/H=1.96である、請求項1または2に記載の送風機。
【請求項4】
前記軸流ファンと、前記ベルマウスと、の間に形成される隙間をBとしたときに、B/H=0.04である、請求項1~3のいずれか一項に記載の送風機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の送風機を備え、室内の空気を室外へ排気する用途、または室外の空気を室内へ送り込む用途に用いられる、換気扇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、送風機および換気扇に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から送風機は、電動機の回転軸に羽根部が取り付けられた軸流ファンと、羽根部に対向して配置され、当該羽根部の前方を覆うパネルと、を備えている。羽根部は、筒状の中心枠体と、中心枠体の外周部に配置され、中心枠体の径方向外側へ放射状に突出した複数の羽根と、を有する。また、送風用の軸流ファンの周囲には、吸込側の空気を吹出側へとスムーズにガイドし、空気の漏れ量を少なくするベルマウスが設けられている。
【0003】
このような軸流ファンを用いた送風機は、空気調和機や換気扇等の送風機として幅広く使用されている。そして、かかる送風機では、近年、高性能化や低騒音化に対する様々な性能改善案が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-253123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の送風機では、送風機の送風性能を優先すべく、軸流ファンとパネルとの間の距離を広く確保すると、送風機本体の奥行に厚みが生じるため、広い設置スペースが必要であった。そのため、従来の送風機では、軸流ファンとパネルとの間の距離を縮め、送風機本体の奥行の薄肉化を図ることで、設置スペースの省スペース化を実現することが望まれている。
【0006】
しかしながら、軸流ファンとパネルとの間の距離を縮めすぎると、吸込み抵抗が低減するため、送風機の送風性能が低下する虞があった。そこで、送風機本体の奥行の薄肉化と、送風性能低下の抑制と、の両立を図ることを実現する技術の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、送風機本体の奥行の薄肉化と、送風性能低下の抑制と、を両立化できる送風機および換気扇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る送風機は、本体枠と、前記本体枠に装着される化粧パネルと、前記本体枠に支持される電動機と、前記電動機の回転軸に取り付けられる軸流ファンと、を備え、前記軸流ファンは、筒状の中心枠体と、前記中心枠体の外周部に配置され、前記中心枠体の径方向外側へ放射状に突出した複数の羽根と、を有し、前記化粧パネルは、前記軸流ファンの前方に対向して配置され、前記本体枠には、一方が前記化粧パネルに連結されると共に他方が前記軸流ファンの外周を囲んで配置され、前記軸流ファンの回転によって吸い込まれる空気を、吸込口としての前記化粧パネル側から吹出口としての前記電動機側へ案内するベルマウスが設けられ、前記軸流ファンの先端から前記化粧パネルまでの距離をL、前記羽根の高さをH、としたときに、0.24<L/H<0.15である。
【0009】
また、本発明の実施形態に係る換気扇は、前記送風機を備え、室内の空気を室外へ排気する用途、または室外の空気を室内へ送り込む用途に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る送風機の分解斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る送風機の断面図。
図3】本発明の実施形態に係る送風機の各種パラメーターの説明に供する表。
図4】本発明の実施形態に係る送風機の抵抗増減割合の説明に供するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る送風機の実施形態について図1から図4を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号を付している。
【0012】
本発明に係る送風機の一実施形態について、図1から図4を参照して説明する。なお、本実施形態では、送風機の一例として換気扇を例に挙げて説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る送風機の分解斜視図である。
【0014】
図2は、本発明の実施形態に係る送風機の断面図である。なお、図2では、図面の見やすさを重視し、部分的に実線を破線で示している。
【0015】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る送風機100は、本体枠101と、本体枠101に装着される化粧パネル103と、本体枠101に支持される電動機105と、電動機105の回転軸Sに取り付けられる軸流ファン1と、を備えている。電動機105は、軸流ファン1へ回転駆動力を伝達する回転軸Sを備えている。回転軸Sは、軸流羽根車2の回転中心である。回転軸Sは、出力軸とも呼ばれる。
【0016】
本実施形態に係る軸流ファン1は、いわゆるプロペラファンである。軸流ファン1は、軸流羽根車、いわゆるプロペラファンの羽根車(軸流インペラー、Axial flow impeller)を構成する筒状の中心枠体10と、中心枠体10の外周部に配置され、中心枠体10の径方向外側へ放射状に突出した複数の羽根11と、を有している。軸流羽根車は、単にプロペラとも呼ばれる。なお、軸流ファン1は、不図示の取付機構を介して電動機105の回転軸Sに着脱可能に取り付けられるようにしても良い。
【0017】
軸流ファン1は、図1に実線矢印で示す回転方向Rへ回転して同図に実線矢印で示す流れ方向F1へ流体、もっぱら空気を流動させる。なお、軸流ファン1を回転方向Rとは反対の逆転方向Qへ回転させると、流体は流れ方向F1の反対方向へ流動する。本実施形態の場合、送風機100は、換気扇に適用されて、室内の空気を室外へ排気する用途、または室外の空気を室内へ送り込む用途に用いられる。
【0018】
化粧パネル103は、軸流ファン1の前方に対向して配置されている。すなわち、化粧パネル103は、本体枠101に対して軸流ファン1の前面に配置され、吸込口側を覆うように取り付けられている。本実施形態の場合、化粧パネル103は、複数の格子状の開口部103aを有している。化粧パネル103と軸流ファン1とは、向かい合う位置に配置されている。電動機105は、軸流ファン1を境に化粧パネル103の反対側、すなわち軸流ファン1の流れ方向F1の下流側に配置されている。
【0019】
本体枠101には、一方が化粧パネル103に連結されると共に他方が軸流ファン1の外周を囲んで配置され、軸流ファン1の回転によって吸い込まれる空気を、吸込口としての化粧パネル103側から吹出口としての電動機105側へ案内するベルマウス3が設けられている。
【0020】
ベルマウス3は、樹脂成型などによって形成され、軽量化および所望な形状が実現可能となっている。ベルマウス3は、吹出開口3Aと、この吹出開口3Aよりも拡径した吸込開口3Bとを備えて筒状に形成されている。ベルマウス3は、吹出開口3Aに連通して軸流ファン1の軸方向に沿って延びる吹出壁部30と、この吹出壁部30に連なり吸込開口3Bに向かって徐々に拡径するように傾斜する傾斜壁部31とを備える。
【0021】
吹出壁部30は、軸流ファン1で送風される空気を吹出開口3Aに案内する。また、吹出壁部30の上流側端部(傾斜壁部31側端部)は、外方に環状に曲げ形成されることで吹き抜け時の通風抵抗を抑制している。また、傾斜壁部31は、軸流ファン1が運転する際に、化粧パネル103と本体枠101との間に取り込まれた空気をベルマウス3内にスムーズに送るものであり、吹出壁部30と一体に連結されている。傾斜壁部31は、吸込開口3Bに向かうにつれ外側に広がり、この吸込開口3B面に対する傾斜角度で環状に屈曲されて形成されている。また、傾斜壁部31の下流側端部(吹出壁部30側端部)は、吸込開口3B面に沿って外側に屈曲されている。
【0022】
このように構成される送風機100では、電動機105が通電されることにより、回転軸Sが回転する。回転軸Sの回転力は、回転軸Sに固定された軸流ファン1へ伝達され、軸流ファン1が回転方向Rに回転する。
【0023】
軸流ファン1は、側面視でベルマウス3と完全にオーバーラップする位置に配置されており、軸流ファン1が動作する領域をベルマウス3で覆っている。このため、軸流ファン1で送風される空気を全てベルマウス3で案内することができ、軸流ファン1の送風量を向上できる。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係る送風機の各種パラメーターの説明に供する表である。
【0025】
図4は、本発明の実施形態に係る送風機の抵抗増減割合の説明に供するグラフである。
【0026】
ここで、本発明者らは、軸流ファン1の回転数と電動機105の負荷の軽減を同時に満足させるためのベルマウス3の形状因子をシミュレーションにより導き出した。図3において、まず、軸流ファン1の先端から化粧パネル103までの距離(以下、これをパネル-ファン距離と称す)をL、羽根11の高さをH、軸流ファン1とベルマウス3とのラップ代延長を0mm、吹出口におけるベルマウス3の内径であるFを91.28mmとした場合に、これら形状値の変化が、軸流ファン1の回転数と電動機105の負荷の軽減にどのように作用するかをつき止めた。
【0027】
図4は、横軸に、パネル-ファン距離Lと羽根11の高さHとの比率L/H、左側の縦軸に、L/H=0.24のときを基準とする通風抵抗の増減割合(%)を示す。L/H=0.24となるパネル-ファン距離Lを11mmとして運転した場合、送風機100の風量Qが(75.0m3/h)、静圧が(5.68Pa)となる。これを基準として、軸流ファン1の回転数と電動機105の負荷とがどのように変化するかをシミュレーションした。
【0028】
このシミュレーションによると、パネル-ファン距離Lが7mm、L/H=0.15のとき、送風機100の風量Qが(75.1m3/h)となり、0.1%増加し、静圧が(5.45Pa)となり、4.0%低減した。また、パネル-ファン距離Lが3mm、L/H=0.07のとき、送風機100の風量Qが(72.9m3/h)となり、2.8%低減し、静圧が(6.03Pa)となり、6.2%増加した。これにより、0.24<L/H<0.15である場合、送風機100本体の奥行を薄肉化でき、且つ、軸流ファン1の回転数および電動機105の負荷が最小で最も高い性能を備えることが判明した。
【0029】
また、本実施形態の送風機100は、軸流ファン1の外径をD、羽根11の高さをH、としたときに、D/H=1.87であることが好ましいことがわかった。
【0030】
さらに、本実施形態の送風機100は、ベルマウス3の内径をF、羽根11の高さをH、としたときに、F/H=1.96であることが好ましいことがわかった。また、軸流ファン1とベルマウス3との間に形成される隙間をB、羽根11の高さをH、としたときに、B/H=0.04であることが好ましいことがわかった。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る送風機100は、本体枠101と、本体枠101に装着される化粧パネル103と、本体枠101に支持される電動機105と、電動機105の回転軸Sに取り付けられる軸流ファン1と、を備え、軸流ファン1は、中心枠体10と、中心枠体の径方向外側へ放射状に突出して配置された複数の羽根11と、を有する。化粧パネル103は、軸流ファン1の前方に対向して配置され、本体枠101には、一方が化粧パネル103に連結されると共に他方が軸流ファン1の外周を囲んで配置され、軸流ファン1の回転によって吸い込まれる空気を、吸込口としての化粧パネル103側から吹出口としての電動機105側へ案内するベルマウス3が設けられている。そして、軸流ファン1の先端から化粧パネル103までの距離をL、羽根11の高さをH、としたときに、0.24<L/H<0.15で設計することにより、送風機100本体の奥行の薄肉化を図ることができる。これと共に、軸流ファン1の回転数および電動機105の負荷が最小で最も高い性能、すなわち、送風機100本体の奥行の薄肉化に伴う送風機100の送風性能低下を抑制できる。かくして、本実施形態に係る送風機100は、送風機100本体の奥行の薄肉化と、送風性能低下の抑制と、の両立を図ることができる。
【0032】
また、本実施形態の送風機100は、軸流ファン1の外径をD、羽根11の高さをH、としたときに、D/H=1.87であることが好ましい。さらに、本実施形態の送風機100は、ベルマウス3の内径をF、羽根11の高さをH、としたときに、F/H=1.96であることが好ましい。さらに、軸流ファン1とベルマウス3との間に形成される隙間をB、羽根11の高さをH、としたときに、B/H=0.04であることが好ましい。このように、構成される送風機100では、送風機100本体の奥行の薄肉化と、送風性能低下の抑制と、の両立を図ることができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1…軸流ファン、3…ベルマウス、10…中心枠体、11…羽根、100…送風機、101…本体枠、103…化粧パネル、103a…開口部、105…電動機、S…回転軸。
図1
図2
図3
図4