(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146557
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/20 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
A61M39/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047584
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前迫 文男
(72)【発明者】
【氏名】向山 貴和
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066CC04
4C066FF01
4C066NN04
(57)【要約】
【課題】接続端に対して容易に取り付けることが可能なキャップを提供する。
【解決手段】キャップ100は、ねじ部を備える接続端に取り付けられるキャップであって、ねじ部と接触して変形することでねじ部と羅合する凹形状が形成される変形部36を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ部を備える接続端に取り付けられるキャップにおいて、
前記ねじ部と接触して変形することで前記ねじ部と羅合する凹形状が形成される変形部を備えることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記変形部は、前記ねじ部の周方向において断続的に設けられることを特徴とするキャップ。
【請求項3】
請求項2に記載のキャップにおいて、
前記変形部は、前記ねじ部の軸方向に連続する複数の突条から構成され、
前記複数の突条は、自身の前記ねじ部の周方向に占める範囲よりも大きい間隔で前記ねじ部の周方向に配列されることを特徴とするキャップ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のキャップにおいて、
前記変形部は、前記ねじ部の径方向に前記ねじ部と重複するオーバーラップ代が前記ねじ部の谷底からねじ山の頂までの高さの30%以上80%以下であることを特徴とするキャップ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のキャップにおいて、
前記接続端への取付時に使用者に把持される把持部を備え、
前記把持部は、前記ねじ部の軸方向において互いに離間して配置される第1基部および第2基部と、前記第1基部および前記第2基部を接続する複数の板状部と、を有し、
前記複数の板状部は、前記ねじ部の軸方向と直交する第1方向に延出するように構成されると共に、前記ねじ部の軸方向および前記第1方向と直交する第2方向において間隔を空けて配列されることを特徴とするキャップ。
【請求項6】
請求項5に記載のキャップにおいて、
前記複数の板状部は、前記使用者が接触可能な位置に前記第1方向の端部が配置されることを特徴とするキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ部を備える接続端に取り付けられるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食物を口から摂取することが困難な患者に栄養補給を行う方法として、患者の消化管内に挿入したカテーテルを通じて栄養剤を消化管内に直接投入する経腸栄養法が行われている。この方法では、栄養剤を貯留する栄養ボトルの接続端にチューブの一端側が接続され、チューブの他端側には例えば延長チューブを介して患者に取り付けられたカテーテルが接続される。そして、栄養ボトルに貯留された栄養剤がチューブを介して患者に投与される。
【0003】
このような経腸栄養ラインを構成する各機器の接続端には、例えばISO80369-3等の規格に準拠したコネクタが設けられている。これにより、各機器は、容易に接続および分離することが可能となっている。また、このようなコネクタは、一般に接続を外された後にキャップが取り付けられるようになっており、これにより手指等の接触による汚染や、コネクタの開口からの液だれ等が防止されるようになっている(例えば特許文献1参照)。このキャップは、コネクタのルアーテーパ部と嵌合するルアーテーパ部と共に、コネクタのねじ部に対応したねじ部を備えており、ルアーテーパ部同士を篏合させると共に、ねじ部同士を羅合させることで、コネクタから容易に脱落しないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、キャップのねじ部をコネクタのねじ部に羅合させるには、まず一方のねじ山と他方のねじ溝の開始位置を一致させる必要がある。経腸栄養法は、患者の自宅にて医療従事者以外の者が行う場合もあるところ、手袋を装着した手で小さいキャップを把持して(撮んで)行う位置合わせ作業は、慣れていない者にとっては困難であり、取り付けの容易なキャップが望まれていた。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑み、接続端に対して容易に取り付けることが可能なキャップを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のキャップは、ねじ部を備える接続端に取り付けられるキャップにおいて、前記ねじ部と接触して変形することで前記ねじ部と羅合する凹形状が形成される変形部を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のキャップによれば、接続端のねじ部に対する位置合わせ作業が不要となるため、接続端に容易に取り付けることができる。
【0009】
また、本発明のキャップにおいて、前記変形部は、前記ねじ部の周方向において断続的に設けられることが好ましい。
【0010】
これによれば、接続端のねじ部におけるねじ山の開始端を変形部に対して縦方向、すなわちねじ山の連続する方向に当接させることが可能となるため、凹形状を容易に形成することができる。
【0011】
また、本発明のキャップにおいて、前記変形部は、前記ねじ部の軸方向に連続する複数の突条から構成され、前記複数の突条は、自身の前記ねじ部の周方向に占める範囲よりも大きい間隔で前記ねじ部の周方向に配列されることが好ましい。
【0012】
これによれば、変形部とねじ部の接触開始を容易化すると共に、凹形状の形成範囲を減少させて凹形状の形成に必要な力を軽減することが可能となるため、より容易に凹形状を形成することができる。
【0013】
また、本発明のキャップにおいて、前記変形部は、前記ねじ部の径方向に前記ねじ部と重複するオーバーラップ代が前記ねじ部の谷底からねじ山の頂までの高さの30%以上80%以下であることが好ましい。
【0014】
これによれば、接続端のねじ部との係止代を十分に確保してキャップの接続端からの脱落を確実に防止しつつ、ねじ部の谷底と変形部との接触を回避して凹形状の形成に必要な力が過大とならないようにすることができる。すなわち、キャップの脱落防止と取り付けやすさを両立させることができる。
【0015】
また、本発明のキャップにおいて、前記接続端への取付時に使用者に把持される把持部を備え、前記把持部は、前記ねじ部の軸方向において互いに離間して配置される第1基部および第2基部と、前記第1基部および前記第2基部を接続する複数の板状部と、を有し、前記複数の板状部は、前記ねじ部の軸方向と直交する第1方向に延出するように構成されると共に、前記ねじ部の軸方向および前記第1方向と直交する第2方向において間隔を空けて配列されることが好ましい。
【0016】
これによれば、把持部の厚さを低減して樹脂成形時のヒケやボイドといった成形不良を防止しつつ、把持部を力の加えやすい大きさおよび形状に構成することが可能となるため、キャップの取り付けやすさを向上させることができる。
【0017】
また、本発明のキャップにおいて、前記複数の板状部は、前記使用者が接触可能な位置に前記第1方向の端部が配置されることが好ましい。
【0018】
これによれば、板状部の端部を滑り止めとして機能させることが可能となるため、キャップの取り付けやすさを向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のキャップによれば、接続端に対して容易に取り付けることが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るキャップの斜視図である。
【
図8】
図1のキャップが被保持部材を介してコネクタに保持された状態を示す正面図である。
【
図9】
図8のコネクタに保持されたキャップのキャップ本体をコネクタに取り付けた状態を示す正面図である。
【
図10】
図9の一部を中心軸Xを含む断面で示した部分断面図である。
【
図11】
図9のキャップ本体のコネクタから取り外し後の状態を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るキャップ100の斜視図である。
図2~
図5は、それぞれキャップ100の正面図、平面図、底面図、および右側面図である。また、
図6および
図7は、それぞれ
図5におけるV-V線断面図およびVI-VI線断面図である。キャップ100は、経腸栄養法において経腸栄養ラインを構成する各機器の接続端であるコネクタ200(
図8~
図11参照)に取り付けられ、コネクタ200を手指等の接触による汚染から保護すると共に、コネクタ200からの液だれを防止するものである。
【0022】
これらの図に示されるように、キャップ100は、コネクタ200の先端部に取り付けられてコネクタの開口を閉塞して保護するキャップ本体10と、コネクタ200の基端側に接続されてキャップ本体10の取り外し後もキャップ100をコネクタ200に保持させるための被保持部材40と、キャップ本体10と被保持部材40を連結する連結部材50と、を備えている。
【0023】
キャップ本体10は、第1部材20と、第1部材20に固定されている第2部材30と、を有している。キャップ本体10はまた、第1部材20と第2部材30の両方を貫通し、第2部材30側が開口している中心穴11を有している。
【0024】
まず、第1部材20について説明する。第1部材20は、コネクタ200へのキャップ本体10の取付時に使用者の指で撮まれて(把持されて)キャップ本体10を回転させる部分である。すなわち、第1部材20は、本発明の把持部を構成している。第1部材20は、互いに離間して配置された第1基部21および第2基部22と、第1基部21および第2基部22の間に配置された筒状部24および複数の板状部23a~23gと、を有している。
【0025】
第1基部21および第2基部22は、それぞれ円盤状に形成された部材である。第1基部21および第2基部22は、キャップ本体10の中心軸X方向(キャップ本体10の軸方向)において互いに離間して平行に配置されている。筒状部24は、内径および外径が一定に形成されており、中心穴11を画定する円筒形状に構成されている。筒状部24は、第1基部21と第2基部22に挟まれて配置されており、筒状部24の中心軸は第1基部21と第2基部22とのそれぞれの中心を結ぶ中心軸Xと同軸である。
【0026】
複数の板状部23a~23gは、筒状部24と同様に、第1基部21と第2基部22に挟まれて配置されている。複数の板状部23a~23gは、中心軸Xに対して平行な板状に構成されている。すなわち、筒状部24および板状部23a~23gは、中心軸Xに平行に配置されて、第1基部21と第2基部22を接続している。
【0027】
図7に示されるように、板状部23a~23gは、中心軸Xを含む平面Aに対して、対称形に配置されている。平面Aの両側に配置されているそれぞれの側の板状部23a、23bおよび23cは、筒状部24の外周面32から平面Aに対して垂直方向(第1方向)に延出して形成されている。
【0028】
また、板状部23dおよび23eは、板状部23aおよび23cの外側であり、且つ円盤状の第1基部21および第2基部22のそれぞれの外周端の近傍に配置され、第1方向に延出するように形成されている。なお、板状部23dおよび23eのそれぞれの外側面23d1および23e1は、中心軸X方向から見て、円盤状の第1基部21、および第2基部22の外周円の円弧形状にほぼ一致した曲面に形成されている。
【0029】
板状部23a~23eは、平面A内で中心軸Xと直交する方向(第2方向)において互いに平行に間隔を空けて配列されている。それぞれの板状部23a~23eの間には、中空部25a~25dが設けられている。また、板状部23a~23eのそれぞれの端部26a~26eは、第1部材20の外周端の近傍、すなわち使用者の指が接触可能な位置に配置されている。
【0030】
板状部23d、23eのそれぞれの内側面には、筒状部24の外周面32から延びている板状部23f、23gがそれぞれ接続されている。この構造により、板状部23d、23eが他の部位と接続されずに単独で設けられている場合に比べ、第1部材20の剛性を向上させることができる。
【0031】
次に、板状部23a~23gの効果について説明する。樹脂材料は、成形後に収縮する際に、いわゆるヒケやボイド等の成形不良を生じることがある。ヒケ等の大きさは、使われた材料の量に比例するため、部材に厚みの有るものほど大きなヒケ等を生じやすい。本実施形態では、使用者が撮みやすいように第1部材20を大きめに形成しているため、第1部材20を大きな塊として成形した場合にはヒケ等の成形不良を生じやすい。
【0032】
従って、本実施形態では、第1部材20に生じるヒケ等を極力少なくするために、肉盗みとして中空部25a~25dを設けると共に、板状部23a~23gを薄く形成している。また、板状部23a~23gを円筒部24に連結する構造を採用することで、板状部23a~23gおよび円筒部24の厚さを薄く形成しながらも、第1部材20全体として剛性を向上させている。
【0033】
また、板状部23a~23eのそれぞれの端部26a~26eは、第1部材20の外周端の近傍に配置されている。このため、端部26a~26eのエッジ効果により、第1部材20を指で回す際の滑り止め効果を得ることができる。第1部材20は、撮みやすくするために大きめに形成されている。
【0034】
すなわち、第1部材20は、撮みやすく、且つ滑りにくい構造に形成されている。第1部材20がこのように構成されていることにより、手や指の動きに問題ない健常者はもちろん、手や指を動かしにくい者にとっても、扱いやすいキャップ100を実現している。なお、第1部材20の直径は15mm程度、第1部材20の厚さ、すなわち中心軸X方向寸法は10mm程度が好ましい。
【0035】
次に、第2部材30について説明する。第2部材30は、キャップ本体10において、コネクタ200の先端部に篏合すると共にコネクタ200の備えるめねじ部213(
図10参照)と羅合する部分である。第2部材30は、中心穴11を有して円筒状に形成されており、外周面32と、第1部材20に固定されている基端部33と、前記基端部33の反対側の先端部34とを有している。
【0036】
第2部材30は、自身の中心軸を、キャップ本体10の中心軸Xと同軸にして配置されている。中心穴11は、キャップ本体10をコネクタ200に取り付けた時に、コネクタ200の備える内筒部材216(
図10参照)と篏合する部分であり、先端部34側が開口している。
【0037】
第2部材30の外周面32上には、複数の突条36が設けられている。突条36は、コネクタ200に取り付けられた時に、コネクタ200の備えるめねじ部213のねじ山214(
図10参照)に対応した凹形状が形成される部分である。すなわち、突条36は、本発明の変形部を構成している。突条36は、外周面32上において、周方向に断続的、且つ第2部材30の中心軸X方向に連続するように設けられている。
【0038】
具体的に本実施形態では、突条36は外周面32上に中心軸X周りに90°間隔で合計4つ設けられており、自身の周方向に占める範囲よりも大きい間隔を空けて周方向に配列されている。また、それぞれの突条36は、外周面32から一定の高さで、基端部33から先端部34まで連続して設けられている。
【0039】
なお、突条36は、中心軸Xに対して平行でなくてもよい。例えば、突条36は、第2部材30の中心軸Xに対し角度を有して配置されていてもよい。また、外周面32上に設けられる突条36の数は、突条36が安定してねじ込めて、確実にキャップ本体10をコネクタ200に締結できれば、適宜変更されてもよい。例えば、突条36は1本~6本の任意の数としてもよい。また、突条36は、中心軸X方向に沿って高さ、幅方向寸法または横断面形状等が変化するものであってもよい。
【0040】
キャップ本体10は、適宜の樹脂で一体的に形成されている。キャップ本体10は、指で撮んで回転させる際に必要な強度と、凹形状の形成しやすさとを両立できる適度な硬度の材料であることが好ましい。キャップ100の材料は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)である。本実施形態では、板状部23a~23eの延出方向を揃えると共に、突条36を中心軸X方向に連続するように構成することで、樹脂成形用の金型の構成および分離を容易化している。
【0041】
次に、被保持部材40および連結部材50について説明する。被保持部材40は、コネクタ200に接続しやすいように、両端を有するC字状部材から形成されている。被保持部材40は、一方端41および他方端42と、C字状に形成された被保持部材40の内側の中空部43と、一方端41と他方端42の間に設けられた開口44と、を有している。
【0042】
被保持部材40のコネクタ200への接続は、開口44をコネクタ200の保持部220(
図9または
図10参照)にあて、被保持部材40を押し込むことにより行われる。この結果、コネクタ200の保持部220が被保持部材40の中空部43に滑り込み、被保持部材40がコネクタ200に回動自在に保持される。
【0043】
連結部材50は、キャップ本体10と被保持部材40を連結する部材である。連結部材50は、帯状に形成された屈曲自在の部材であり、一端部51と、他端部52とを有している。一端部51は、キャップ本体10の第1基部21の外周端に固定されている。また、他端部52は、被保持部材40に固定されている。被保持部材40および連結部材50は、キャップ本体10と一体的に形成されており、安価に作製することができる。
【0044】
なお、被保持部材40の外側面に互いに平行な平面部を少なくとも2つ設ける、または、被保持部材40の外周部に取手部を付与する等して持ちやすさを向上させるようにしてもよい。また、連結部材50は帯状のものに限定されず、例えば矩形断面または円形断面の棒状に連結部材50を構成することで、曲折方向が限定されないようにしてもよい。
【0045】
次に、キャップ100の使用方法について説明する。本実施形態のキャップ100は、経腸栄養法用のコネクタの規格であるISO80369-3に準拠したオスルアーコネクタであるコネクタ200に適合するように構成されている。
図8は、キャップ100が被保持部材40を介してコネクタ200に保持された状態を示す正面図である。
図9は、コネクタ200に保持されたキャップ100のキャップ本体10をコネクタ200に取り付けた状態を示す正面図である。
図10は、
図9の一部を中心軸Xを含む断面で示した部分断面図である。また、
図11は、キャップ本体10のコネクタ200から取り外し後の状態を示した正面図である。
【0046】
コネクタ200は、対応する円筒状のメスルアーコネクタと接続される接続部210を先端側に備えている。接続部210は、円筒状の外筒部材211と、メスルアーコネクタが挿入される開口212と、ねじ山214および谷底215を含むめねじ部213と、円筒状の内筒部材216と、を有している。めねじ部213は、メスルアーコネクタの備えるおねじ部と羅合するように構成されている。なお、めねじ部213は、コネクタ200の中心軸Yを中心とする二条ねじとして形成されている。
【0047】
内筒部材216は、先細のテーパ形状に形成されており、外周面がメスルアーコネクタの内周面と嵌合するように構成されている。また、内筒部材216および外筒部材211は、それぞれの中心軸をコネクタ200の中心軸Yと同軸にして設けられている。すなわち、接続部210は、内筒部材216および外筒部材211からなる二重円筒構造になっている。
【0048】
コネクタ200はまた、被保持部材40が接続される保持部220と、チューブが接続されるチューブ接続部230と、を基端側に備えている。保持部220は、被保持部材40が回動自在となるように円筒状に構成されている。また、保持部220の基端側には、被保持部材40の基端側への移動を規制するフランジ部221が設けられている。チューブ接続部230は、保持部220と同様の円筒状に構成され、チューブが内部に挿入されて接着されるように構成されている。
【0049】
キャップ本体10をコネクタ200に取り付ける場合、使用者は第1部材20を撮み、キャップ本体10の中心軸Xをコネクタ200の中心軸Yと略一致させた上でキャップ本体10を平面視で時計回りに回転させながら軸方向に押圧する。すなわち、使用者はキャップ本体10をコネクタ200にねじ込むようにして取り付ける。これにより、中心穴11が内筒部材216と嵌合し、内筒部材216が覆われると共にその開口が閉塞される。
【0050】
また、第2部材30のねじ込みにつれて、ねじ山214が突条36と接触して塑性変形させることで、突条36に凹部37a~37cが次々に形成され、形成された複数の凹部37a~37cからなる凹形状がねじ溝となって、突条36とめねじ部213が羅合する。これにより、キャップ本体10は、ねじ締結により容易に脱落しない状態でコネクタ200に取り付けられる。
【0051】
次に、第2部材34に形成される凹部37a~37cについて、
図11を参照して詳細に説明する。まず、キャップ本体10がコネクタ200にねじ込まれた時の作用が容易に理解されるように、二条ねじのいずれか一方のねじ山214と、その近隣に位置した突条36に着目して説明する。第2部材30がコネクタ200の開口212内に挿入されて回転すると、コネクタ200の開口212付近に存在するめねじ部213のねじ山214の開始端が直近に位置する突条36の側面に接触し、さらに回転することでねじ山214が突条36を押圧して塑性変形させ、これにより凹部37aが形成される。さらに回転すると、ねじ山214が形成された凹部37aを通過すると共に、ねじ山214の開始端が隣接する突条36に到達し、押圧して凹部37bが形成される。さらに回転すると、ねじ山214が形成された凹部37bを通過すると共に、ねじ山214の開始端が隣接する突条36に到達し、押圧して凹部37cが形成される。
【0052】
このようにして、隣接する3つの突条36に凹部37a~37cがそれぞれ形成される。2条ねじの他方のねじ山214についても、回転方向に90度ずれた突条36において上記と同様な状況が同時に起こる。従って、
図11には示されない第2部材30の背面側に位置するもう1つの突条36にも、正面側の突条36と同様に凹部37aおよび37cが形成されている。
【0053】
本実施形態では、突条36を周方向において断続的に設けることで、ねじ山214を突条36の側面に対して縦方向(ねじ山214の連続する方向)に接触させるようにしている。これにより、ねじ山214の変形を抑制し、突条36を容易に塑性変形させることが可能となる。本実施形態ではまた、突条36の幅方向寸法(周方向に占める範囲)よりも大きい間隔で突条36を周方向に配列することで、ねじ山214と突条36の最初の接触を容易化すると共に、突条36の変形量を低減して凹部37a~37cの形成に要する力を軽減することを可能としている。
【0054】
なお、4つめ以降の凹部が突条36に形成されるか否かは、めねじ部213の中心軸Y方向の長さおよびピッチ等に対する第2部材30の中心軸X方向の長さの設定によって決まることとなる。脱落防止の観点からは、各突条36にはそれぞれ少なくとも1つの凹部が形成されることが好ましく、全ての突条36に複数の凹部が形成されることがより好ましいが、取り付けやすさの観点からは、凹部の数は少ない方が好ましい。本実施形態では、4つの突条36のうち、2つの(すなわち、半数の)突条36に2つの凹部37aおよび37cが形成され、残りの突条36に1つの凹部37bが形成されるようにすることで、脱落防止と取り付けやすさを両立させている。
【0055】
また、突条36の外周面32からの突出量(高さ)は、キャップ本体10がコネクタ200に取り付けられた状態において、めねじ部213のねじ山214に十分に係止し、且つ谷底215とは接触しない寸法に設定されている。突条36とめねじ部213(ねじ山214)の径方向に重複するオーバーラップ代は、小さい程小さい回転力でねじ込むことができる反面、凹部37a~37cのねじ山214への係止代が不足すると、脱落防止効果が十分に奏されないこととなる。一方、突条36とめねじ部213のオーバーラップ代が大きい場合、脱落防止効果は確実に奏されるものの、ねじ込みに必要な回転力が増大することとなる。特に、突条36がめねじ部213の谷底215に接触する場合、ねじ込みに必要な回転力が過大となってコネクタ200へのキャップ本体10の取り付けが困難となることがある。
【0056】
従って、コネクタ200に対するキャップ本体10の取り付けやすさと脱落しにくさを両立させるためには、突条36とめねじ部213(ねじ山214)の径方向に重複するオーバーラップ代は、めねじ部213の谷底215からねじ山214の頂までの高さ(径方向における距離)の30%以上80%以下であることが好ましく、40%以上70%以下であればより好ましい。
【0057】
このように本実施形態では、コネクタ200のめねじ部213と羅合するおねじ部に代えて、めねじ部213と接触して変形することでめねじ部213と羅合する凹形状が形成される変形部(突条36)を設けることで、めねじ部213の開始位置に対するキャップ本体10の回転方向の位置合わせ作業を不要とし、コネクタ200への取付を容易なものとしている。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のキャップは、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、キャップ100の各部の形状および配置は、上述の実施形態において示した形状および配置に限定されるものではなく、既知の種々の形状および配置を採用することができる。
【0059】
特に、変形部は、上述した突条36の構成に限定されるものではなく、例えば中心軸X方向において断続的に設けられるものや、周方向に連続して設けられるもの等、任意の種々の構成を採用することができる。また、変形部は、凹形状の形成の際に塑性変形と共に破断を生じるものであってもよいし、弾性変形のみによって凹形状が形成されるものであってもよい。さらに、変形部は、キャップ本体10のその他の部分とは別の材料から構成されるものであってもよく、この場合、例えば二色成形によって変形部を設けるようにしてもよい。
【0060】
また、キャップ100は、おねじ部を備える接続端に取り付けられるものであってもよく、この場合にも、接続端のおねじ部と対向する面に変形部を設けるようにすればよい。また、キャップ100は、コネクタ200の開口を閉塞しないものであってもよく、被保持部40および連結部50を備えないものであってもよい。また、コネクタ200は、めねじ部213を備える外筒部材211が、中心軸Y周りに回転自在にコネクタ本体に遊嵌された別部材から構成されるものであってもよい。
【0061】
また、上述の実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0062】
10 キャップ本体
20 第1部材
21 第1基部
22 第2基部
23a~23e 板状部
26a~26e 板状部の端部
36 突条
37a~37c 凹部
100 キャップ
200 コネクタ
213 めねじ部