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特開2022-146563インクカートリッジの製造方法及び印刷装置
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  • 特開-インクカートリッジの製造方法及び印刷装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146563
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】インクカートリッジの製造方法及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
B41J2/175 131
B41J2/175 119
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047595
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 圭輔
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA19
2C056KC02
2C056KC30
(57)【要約】
【課題】外装体の劣化度や再充填インクの粘度に合わせて最適な製造工程を選択・実行できるインクカートリッジの製造方法を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ1は、外装体20と、インク容器10と、外装体の内部に設けられてインク容器の後端を持ち上げる支持部材22を備えている。インクカートリッジをリサイクルする工程(図5、S2、再利用)では、インクカートリッジの装着回数に基づいて外装体の変更の可否を決定し(図5、S3~S6)、インク容器に再充填するインクの粘度に基づいて支持部材の再利用の有無を決定し(図5、S7~S10)、その決定の組み合わせに対応した製造方法を選択して実行する(図5、S11)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体と、インクが充填されて前記外装体の内部に収納されるインク容器と、前記インク容器の一部を持ち上げるために前記外装体の内部に設けられた支持部材を備え、印刷装置に装着して使用されるインクカートリッジを対象とし、インクが消費された後の前記インク容器にインクを再充填するインクカートリッジの製造方法であって、
前記支持部材が配置された前記外装体内に前記インク容器を収納する第1の製造方法と、交換した前記外装体内に前記支持部材を配置したのち前記インク容器を収納する第2の製造方法と、前記外装体内に前記支持部材を配置しないで前記インク容器を収納する第3の製造方法と、交換した前記外装体内に前記支持部材を配置しないで前記インク容器を収納する第4の製造方法を含む製造方法群から、
前記インク容器に再充填するインクのインク種と、前記インクカートリッジを印刷装置に装着した装着回数とに基づいて、いずれかの製造方法を選択して行なうインクカートリッジの製造方法。
【請求項2】
前記装着回数と前記外装体の劣化度を対応付ける第1情報と、前記インク種と前記支持部材の要否を対応付ける第2情報とを参照して、前記製造方法群からいずれかの製造方法を選択して行なう請求項1に記載のインクカートリッジの製造方法。
【請求項3】
前記第2情報は、前記インク種と、前記支持部材の要否と、前記支持部材が前記インク容器の一部を持ち上げる角度が互いに対応付けられた情報を含んでおり、
前記第1または第2の製造方法において、前記インク種に対応する前記角度の前記支持部材として、再充填前の前記支持部材又は交換した前記支持部材を使用する請求項2に記載のインクカートリッジの製造方法。
【請求項4】
前記インク容器の劣化度に応じて、インクが消費された後の前記インク容器又は交換した前記インク容器の何れかを選択して使用する請求項1乃至3の何れか一つに記載のインクカートリッジの製造方法。
【請求項5】
前記外装体の底部には、前記インクカートリッジを印刷装置に装着し、または取り外すための操作部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のインクカートリッジの製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載されたインクカートリッジの製造方法において選択されたインクカートリッジの製造方法をユーザに表示できる印刷装置であって、
前記インクカートリッジの装着を検知する検知部と、
前記第1情報および前記第2情報と前記製造方法群を記憶する記憶部と、
前記インク種を入力する入力部と、
前記検知部の検知に基づき前記装着回数を更新して前記記憶部に記憶させ、前記第1情報と前記第2情報と前記装着回数と前記インク種に基づいて前記製造方法群から前記製造方法を選択する制御部と、
前記制御部が選択した前記製造方法を表示する表示部と、
を備える印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装体の内部にインク容器が収納され、印刷装置に装着して使用されるインクカートリッジを対象としており、インクを消費した後のインク容器にインクを再充填するインクカートリッジの製造方法に係り、特に使用後の外装体の劣化度や新規に充填するインクの種類に合わせて最適な製造工程を選択・実行できるインクカートリッジの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、インクジェット印刷装置への着脱性が容易で、且つ安価な製作が可能なインクカートリッジの発明が開示されている。このインクカートリッジは、印刷装置に接続されるインク供給部と、このインク供給部と一体になった樹脂製のインク容器を、箱型の外装体に収納した構造となっている。
【0003】
このインクカートリッジの外装体の底面には、インクカートリッジを印刷装置に対して着脱する際にユーザが指を掛けるための孔部が設けられている。ユーザは、この孔部に指を差し入れてインクカートリッジを印刷装置に対して着脱する操作を行うことができるため、着脱の作業性が向上し、またインク容器に直接触れなくて済むため、インク容器が樹脂製のパック袋のように柔らかい場合であっても、その損傷を防止することができる。また、外装体の内部には、インク容器の後端部を持ち上げるように支持する支持部材が設けられており、インク容器内のインクが残り少なくなった場合に、後端部に残ったインクを前端部のインク供給部に自重で流れるように促して、使用しきれずにインク容器内に残存するインクができるだけ少なくなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-140771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境保全や資源保護等の観点から種々の工業製品について再利用(リサイクル)が行われるようになっており、家庭用及び事業所用等の印刷装置(プリンタ)の普及で消費が増大しているインクカートリッジについても、そのインク容器を再利用したいとの要望が社会的に高まっている。例えば、上述のインクカートリッジを再利用する場合には、インクカートリッジのインクを消費した後、空となったインク容器を外箱である外装体から取り出し、このインク容器に同じインクを再充填した後、インク容器を外装体に収納して元のインクカートリッジの形態に戻し、印刷装置に再度装着できるようにしている。
【0006】
ところが、リサイクルを繰り返し行うと、インクカートリッジの印刷装置に対する着脱操作を、外装体の孔部を掴んで繰り返し行うこととなる。その場合、インクカートリッジの外装体が紙等の比較的柔らかい素材で構成されていると、外装体の孔部周辺の素材が劣化し、孔部の形状が変形するなど、外装体の品質が劣化することが考えられる。このように劣化した外装体をそのまま再使用してインクカートリッジをリサイクルすると、例えばインクカートリッジを印刷装置に正規の状態で装着できないという不具合、また装着した外装体が正規の姿勢から傾いた状態になるという不具合、さらに外装体内でインク容器が正規の位置からずれる等の原因によりインクの供給が適正に行われないという不具合等、種々の問題が発生する場合が考えられる。
【0007】
また、インクカートリッジのインク容器にインクを再充填する場合に、前に(又は最初に)充填されていたインクの特性と、今回再充填するインクの特性が異なる場合がありうる。例えば、前に充填されていたインクが、粘度が高めで流動性が低いインクであった場合には、インクを残さずに使い切るために、インク容器の後端部を持ち上げて支持するために前述した支持部材を設ける必要があるが、このインクカートリッジをリサイクルする際に再充填するインクが、粘度が低めで流動性が良いインクであるとすると、リサイクル時には支持部材は必須とは言えない。
ここで、外装体内に支持部材が入った状態でインク容器を挿入しようとすると、外装体に支持部材が入っていない状態に比べて、インク容器の後端を支持部材にうまく乗せる必要がある。このため、再充填するインクが、粘度が低めで流動性が良いインクの場合、支持部材が必要でないのに、インク容器の後端を支持部材にうまく乗せる必要が生じ、外装体に挿入する作業の手間が増えて、インクカートリッジの再生産の作業効率が良くないという問題がある。
また、外装体からインク容器を取り出すときに、支持部材の位置がずれている可能性があり、そのような場合には、外装体内で支持部材を正規の位置に配置し直してからインク容器を外装体内に挿入して外装体の再組立てを行う必要があり、このような場合にも、インクカートリッジの再生産の作業効率が良くないという問題がある。
【0008】
本発明は、以上説明したインクカートリッジをリサイクルするための製造方法における従来の課題に鑑みてなされたものであり、インク容器のインク残量低減を実現しつつ、インクカートリッジの再生産の作業効率を向上させるインクカートリッジの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインクカートリッジの製造方法は、
外装体と、インクが充填されて前記外装体の内部に収納されるインク容器と、前記インク容器の一部を持ち上げるために前記外装体の内部に設けられた支持部材を備え、印刷装置に装着して使用されるインクカートリッジを対象とし、インクが消費された後の前記インク容器にインクを再充填するインクカートリッジの製造方法であって、
前記支持部材が配置された前記外装体内に前記インク容器を収納する第1の製造方法と、交換した前記外装体内に前記支持部材を配置したのち前記インク容器を収納する第2の製造方法と、前記外装体内に前記支持部材を配置しないで前記インク容器を収納する第3の製造方法と、交換した前記外装体内に前記支持部材を配置しないで前記インク容器を収納する第4の製造方法を含む製造方法群から、
前記インク容器に再充填するインクのインク種と、前記インクカートリッジを印刷装置に装着した装着回数とに基づいて、いずれかの製造方法を選択して行なうことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インク容器にインクを再充填するインクカートリッジのリサイクルにおいて、このインクカートリッジを印刷装置に装着して過去に使用した回数に基づいて、外装体をそのまま使用するか又は新品に交換するかを判断し、また再充填するインクのインク種に基づいて仕切り部材の要否を判断することにより、インクカートリッジの製造方法を適切に選択して実行することができるので、リサイクルにより製造されたインクカートリッジにおいて使用時に消耗しきれないインクの残量を減らしつつ、その耐久性及び印刷装置に対する着脱の作業性を向上させることができる。従って、インク容器のインク残量低減を実現しつつ、インクカートリッジの再生産の作業効率を向上させるインクカートリッジの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】分図(a)は実施形態においてインクカートリッジが装着されるインクジェット印刷装置の構成を示した概略平面図であり、分図(b)は同装置の概略正面図であり、分図(c)は同装置の概略側面図である。
図2】実施形態においてインクカートリッジが装着されるインクジェット印刷装置の機能ブロック図である。
図3】分図(a)は実施形態のカートリッジを上面側から透視して見た概略斜視図であり、分図(b)は同カートリッジを下面側から見た概略斜視図である。
図4】実施形態におけるインクカートリッジの製造方法を決定するための判断に使用されるテーブル形式のデータを示す図であって、分図(a)はインクカートリッジを印刷装置に装着した装着回数と外装体の劣化度を対応付ける第1情報を示す第1テーブルを示しており、(b)はインク種と支持部材の要・不要を対応付ける第2情報を示す第2テーブルを示している。
図5】実施形態におけるインクカートリッジの製造方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。この実施形態によって本発明が限定されるものではなく、この実施形態に基づいて当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれるものとする。
【0013】
なお、本明細書において、添付する各図を参照した以下の説明において、方向乃至位置を示すために上、下、左、右の語を使用した場合、これはユーザが各図を図示の通りに見た場合の上、下、左、右に一致する。
【0014】
また、実施形態の説明において、インクカートリッジ1を印刷装置100に対して水平に着脱する2つの方向を「着脱方向A」とし、インクカートリッジ1を印刷装置100に挿入して装着させる方向を「装着方向A1」、 インクカートリッジ1を印刷装置100から離脱させ取り外す方向を「離脱方向A2」とする。なお、「装着方向A1」と「離脱方向A2」は互いに逆向きである。
【0015】
さらに、装着方向A1は、インクカートリッジ1に充填されたインクが印刷装置100に流出する方向(以下、「インク流出方向B」という)と同方向となり、外箱である外装体20(図3参照)にインク容器10を収容する際に挿入する方向は、離脱方向A2と同方向となる。
【0016】
[1.印刷装置の全体構成]
図1(a)~(c)の何れかに示すように、本形態に係るインクカートリッジ1が装填される印刷装置100は、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備えており、それぞれのインクヘッドから異なる色のインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルトで搬送される印刷媒体(用紙)上に複数の画像を互いに重なり合うように形成してフルカラーの画像を生成するインクジェット方式のラインカラープリンタであり、これを一例として説明する。
【0017】
なお、本形態では、ライン型のインクヘッドが4つ設けられ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクを各インクヘッドから吐出して画像形成を行うが、インクヘッドの数やインクの色数・種類については特に限定されない。
【0018】
図1(a)、(c)に示すように、印刷装置100における装置本体100aの上部には、インクカートリッジ1を取り付けるカートリッジ取付機構130が、インクヘッド毎に複数(図中ではインクヘッドの数に合わせて4つ)に設けられている。
【0019】
また、カートリッジ取付機構130の上方を覆うように上面装置140が配設されている。インクカートリッジ1を装着する際は、この上面装置140の下面と印刷装置100の本体100aの上面との間にインクカートリッジ1を水平方向(装着方向A1)に挿入する。この上面装置140には、例えば、ADF(auto document feeder)にセットした原稿を搬送に伴い光学的に読み取ってディジタルデータ化する画像読取装置(スキャナ)や、後述する入力部120が配設されている。
【0020】
さらに、カートリッジ取付機構130には、インクカートリッジ1を印刷装置100に装着した際に、後述するインクカートリッジ1の係合部30と嵌合するホルダ部131が設けられている。
【0021】
図1(b)に示すように、印刷装置100には、該装置を構成する各部を統括的に制御して印刷ジョブに応じた印刷処理を実行させるための制御部110が具備されている。
図2に示すように、この制御部110は、インクカートリッジ1が印刷装置100に装着されたことを検知する検知部170と、印刷装置100の制御に必要な情報、指令を入力する操作キーや入力パネルなどから構成される前記入力部120(図1も参照)と、印刷装置100の制御に必要な情報その他の情報を表示により出力する表示パネル等からなる表示部160と、印刷装置100の制御に必要な制御プログラム及び情報を格納する記憶部150を備えている。入力部120と表示部160は、入出力パネルとして一体に構成されてもよい。
【0022】
この制御部110は、インクカートリッジ1のインクが消費された後、空となったインクカートリッジ1のリサイクルをユーザが希望し、ユーザが指定された必要な操作を行った場合、当該インクカートリッジ1の外箱である外装体20(図3参照)の劣化度や、新規に充填するインクの種類に合わせて、当該インクカートリッジ1をリサイクルするために最適な製造工程を選択・実行するための案内(情報提供)をユーザに提示する機能を備えている。その機能及びこの機能を利用したインクカートリッジ1の製造方法(リサイクル方法)については、後に詳述する。
【0023】
[2.インクカートリッジの全体構成]
次に、本発明に係るインクカートリッジ1の構成について説明する。
図3に示すように、インクカートリッジ1は、印刷装置100に対する水平方向である着脱方向Aに沿って着脱される略直方体形状をなす細長の筐体である。インクカートリッジ1は、所定のインクが充填される熱可塑性フィルム材料からなる可撓性のインク収納体であるインク容器10と、インク容器10が挿入される外箱である外装体20と、係合部30とで構成されている。係合部30は、インク容器10の長手方向における一方の端部に設けられるとともに、外装体20の一端部20a(第1の端部)に取り付けられ、印刷装置100への装着時には前記カートリッジ取付機構130に係合する部分となる。
【0024】
<2-1.インク容器>
図3(a)中に一点鎖線で示すインク容器10は、インクが封入される袋体である。詳細は図示しないが、本実施形態では、長方形状の熱可塑性フィルムを2枚重ね、長手方向の一端にインクの出口である管状のインク供給部(図示せず)を介在させた状態で、長方形状の周囲を熱溶着により接合して形成されている。前述したインクの出口であるインク供給部は、パネル状の係合部30に対し、これを貫通するように組み付けられている。実施形態のインクカートリッジ1は、後述する外装体20の一端部20aの開口部からインク容器10を挿入し、外装体20の一端部20aの開口部に係合部30を嵌合することにより構成されている。
【0025】
なお、図示はしないが、インク容器10のインク出口であるインク供給部は、インク容器10の内部と外部を連通する管路と、この管路に設けられて連通を開放又は閉止する中栓と、中栓をインク流出方向Bに付勢してインクの出口を閉止する付勢手段を有している。インクカートリッジ1を前述した印刷装置100に装着し、インク供給部が開口している係合部30が、印刷装置100のカートリッジ取付機構130に結合されると、付勢手段の付勢力に抗して中栓が移動し、インク供給部が開放されて印刷装置100のインク供給系と接続連通し、インクカートリッジ1のインク容器20内にあるインクをインク流出方向Bに沿って印刷装置100に供給することができる状態となる。
【0026】
<2-2.係合部>
図3に示すように、係合部30は、樹脂又は金属などの硬質材料で形成された略パネル状の部材であり、印刷装置100のホルダ部131(図1参照)との突当面30aが装着方向A1に向けられ、インクカートリッジ1を印刷装置100に装着した際に、ホルダ部131に係合される着脱機構として機能する。また、係合部30は、後述する外装体20の一端部20aの開口部と嵌合するため、該開口部の寸法と略同等の大きさで成形されている。
【0027】
図3に示すように、係合部30は、外装体20の開口部に嵌合した状態で、裏面に粘着性を有する第1のシート体31で外装体20に固定されている。このシート体31は、外装体20と等しい幅寸法を有する基部31aと、基部31aから間隔をおいて平行に延出する2本の帯部31b,31bからなる。外装体20の一端部20aの開口部に係合部30を嵌合させた状態で、外装体20の一端部20aに近い上面の全体に基部31aを貼着し、2本の帯部31b,31bを、係合部30の前面である突当面30aの両側に貼着するとともに、外装体20の一端部20aに近い下面に渡って巻き回して貼着すれば、係合部30は第1のシート体31で外装体20の開口部に確実に固定される。
【0028】
<2-3.外装体>
図3に示すように、外装体20は、紙製(例えば、段ボール)のシート部材に折り線、糊代、フラップ等が設けられた展開シート体を折り曲げて箱型に組み立て、その糊代部分を貼り合わせた中空直方体の部材である。
【0029】
図3に示すように、外装体20の他端部20bは、第1のシート体31を用いた一端部20aと同様の組立構造で、第2のシート体32により固定されている。すなわち、この第2のシート体32は、外装体20の他端部20bに近い上面の全体に一部を貼着し、外装体20の他端部20bの端面に渡って巻き回して貼着することにより、外装体20の他端部20bを箱型の構造に固定している。
【0030】
次に、インクカートリッジ1の外装体20には、例えばインクカートリッジ1をリサイクルする場合、又は廃棄する場合等の便宜のために、外装体20に貼り付けられた第1及び第2のシート体31,32を容易に剥がして分別できるようにするための構造が設けられている。
【0031】
すなわち、図3(a)に示すように、外装体20の上面には、前述した第1及び第2のシート体31,32の端部と一部が重なるように、シート体剥がし用の切り込みである第1及び第2の小片部41,42が、それぞれ形成されている。
【0032】
図3(a)に示すように、第1及び第2の小片部41,42は、外力により破断する破断部41a,42aと、外力により折れる折れ部41b,42bにより区画された小領域として、外装体20の上面に作り込まれており、破断部41a,42aを破断させて折れ部41b,42bを折ることにより、小片部41,42を外装体20の内方に押し込むことができるようになっている。
【0033】
図3(a)に示すように、破断部41a,42aは、略半円形状のような曲線を含む形状に形成した断続状の切り込みからなる。なお、破断部41a,42aの切り込みは、通常の使用時には容易には破断せず使用に支障はないが、相応の力を加えれば破断するような構造であればよい。また、折れ部41b,42bは、外装体20に対して接続されている部分であって、破断部41a,42aに比べて破断しにくく、押した際には折れ曲がり易いように、断続状の切り込みが破断部41a,42aよりも少ない直線状の部分である。
【0034】
図3(a)に示すように、第1及び第2の小片部41,42は、シート体31,32で覆われた外装体20の表面と、シート体31,32で覆われていない外装体20の表面との間に、破断部41a,42aの少なくとも一部が連続して配されるように設けられている。
【0035】
図3(b)に示すインクカートリッジ1には、印刷装置100に連結される係合部30とは反対側である外装体20の端部の下面に、外装体20の表面を貫通する孔部21が形成されている。この孔部21は、インクカートリッジ1を印刷装置100に対して着脱方向Aに沿って着脱するためにユーザが指を掛けるための操作部である。この孔部21は、外装体20の所定箇所に所定の切り込みを入れ、外装体20の部材表面において、切り込まれた部分を内面側に、且つ終端側に向けて折り曲げることで形成できる。
【0036】
ユーザがインクカートリッジ1の着脱操作をする際には、外装体20の他端部20bの孔部21を手で掴んでインクカートリッジ1を引き出し、または押し込むことができるので、インクカートリッジ1の着脱が容易であり、作業性が向上する。
【0037】
<2-4.支持部材>
図3(a)に示すように、外装体20の他端部20bの内部には、側断面が三角形であり、インク容器10の後端部を持ち上げる支持部材22が配置されている。この支持部材22によれば、インク容器10の後端部を持ち上げることにより、インク容器10内のインクが残り少なくなった場合に、後端部に残ったインクをインク流出方向Bに沿って前端部の係合部30の方に自重で流れるように促すことができるので、使用しきれずにインク容器10内に残存するインクをできるだけ少なくできる。
【0038】
なお、支持部材22は、外装体20の内部において、前記孔部21の裏面に対応した位置に設けられている。このため、ユーザが孔部21を掴んでインクカートリッジ1を着脱する際に、ユーザの手が直接インク容器10に触れることがないため、カートリッジ着脱時にユーザの爪や装身具等によってインク容器10が損傷することは未然に防止される。
【0039】
[3.インクカートリッジの再度の製造(リサイクル)について]
本実施形態のインクカートリッジ1のインクを使用し切った後に、これにインクを再び充填してインクカートリッジ1を製造(リサイクル)する手法について説明する。
【0040】
実施形態の印刷装置100によれば、ユーザが必要なデータを入力する等の必要な操作を行うことにより、リサイクルしようとするインクカートリッジ1の外装体20の劣化度や、リサイクルして新規に充填するインクの種類等に合わせて最適な製造方法を選択し、これをユーザに提示することができるので、ユーザは印刷装置100の提示に従って選択された製造方法を実行することで、所望のインクカートリッジ1のリサイクルを容易に行うことができる。
【0041】
まず、図4及び図5を参照して、インクカートリッジ1をリサイクルするための複数種類の製造方法の中から、所望のリサイクル条件に技術的に最も適したインクカートリッジ1の製造方法を選択する方法乃至制御部110における制御手順の基本的手法を説明する。
【0042】
まず技術的な要素としては、インクカートリッジ1の外装体20と支持部材22を対象部品とし、これらを再利用するか、新規部品を用いるか、それぞれ判断指標を設けて判断する。外装体20についての上記判断の指標は、インクカートリッジ1の印刷装置100への着脱回数であり、支持部材22についての上記判断の指標は、インクカートリッジ1に再充填するインクのインク種である。
【0043】
判断の結果、選択されるインクカートリッジ1の製造方法は、外装体20の再利用又は新規品への交換の二つの選択肢と、支持部材22の再利用の有無の二つの選択肢とを組み合わせた4種類となる。すなわち、外装体20を再利用し、支持部材22を再利用する第1の製造方法と、外装体20を交換し、支持部材22を再利用する第2の製造方法と、外装体20を再利用し、支持部材22を再利用しない第3の製造方法と、外装体20を交換し、支持部材22を再利用しない第4の製造方法である。これらの4つの製造方法をまとめて製造方法群と総称する。
【0044】
そして、印刷装置100の制御部110は、インクカートリッジ1の着脱回数と、再充填するインクのインク種等に基づき、製造方法群の中から最適な製造方法を選択し、表示部160に提示し、ユーザの実行を促す。
【0045】
図4は、リサイクルしようとするインクカートリッジ1の対象部品の状況を技術的・客観的に評価するための技術的情報の一例を示すものであり、制御部110が制御する記憶部150に格納されるものである。予め行った実験や過去の経験則に基づいて取得した知見をテーブル形式のデータとしてまとめたものである。
【0046】
図4(a)は、インクカートリッジ1を印刷装置100に装着した装着回数(装着を行った回数)と、外装体20の劣化度を対応付ける第1情報を示す第1テーブルを示している。この判断指標は、インクカートリッジ1の印刷装置100に対する装着回数が多くなると、例えば、孔部21の周辺の素材の劣化や、これに基づく外装体20の全体の剛性の低下などが発生することに基づいて採用したものである。装着回数が1回や2回では、劣化度の評価は「良好」(記号○で示す。)であるが、ある回数nになると劣化度は許容範囲を越え、評価は「劣化」(記号×で示す。)となる。回数nが具体的にいくつになるかは、外装体20の材質や構造等によって決まる製品としての堅牢度に因るので一概には言えず、実験等によって得られる技術的な知見に基づいて定めるべきである。実験の結果は、インクカートリッジ1を印刷装置100へ装着したときの外装体20の実際の安定度等を考慮してユーザが適切に評価し、上述したテーブル形式に整理すればよい。なお、第1テーブルは、外装体20の材質ごとに作成してもよい。すなわち、これは例示であるが、相対的に強い材質の外装体20であれば、装着回数が10回までは劣化度は「良好」の判定であるが、相対的に弱い強い材質の外装体20であれば、装着回数が5回で劣化度が「劣化」の判定となる場合があるからである。また、第1情報は、テーブル形式以外の形式で保持してもよく、要するに外装体20の装着回数と劣化度の関係を示すものであればよい。
【0047】
図4(b)は、インク種と支持部材22の要・不要を対応付ける第2情報を示す第2テーブルを示している。ここで、インク種は、符号Xと添え数字1~yで示しているが、添え数字が大きくなるほど、インクの粘度は高くなっていく。従って、添え数字が大きく粘度が高めで流動性が低いインクであるほど、インクを残さずに使い切るため、インク容器の後端部を持ち上げて支持する必要性が高く、支持部材22を使用する必要性も高くなる。第2テーブルの第2情報は、予めユーザにより、インクカートリッジ1を印刷装置100へ装着したときに、インク容器10内のインク残量が少なくなったときでも、インク容器10からインクを流出方向Bに流動させ、印刷装置100へ供給できるか否かを考慮して、実験的に定めればよい。なお、第2テーブルのインク種に替えて、インクの流動性を示す他の特性を指標としてもよい。他の指標としては、第2テーブル中にかっこ書きで並記したように粘度でもよい。また、第2情報は、テーブル以外の形式でもよく、要するにリサイクルで再充填するインクの流動性を決める何らかの物性値と、インク残留の許容度を考慮した支持部材22の要・不要との関係を示すものであればよい。
【0048】
なお、上述した第1情報及び第2情報を実験的に求める場合において、外装体20の劣化度の許容度、インク容器10内のインク残留の許容度は、印刷装置100に求められる印刷品質等に基づいて変化するものであるから、カートリッジをリサイクルしようとするユーザごとに異なると考えられる。従って、交換又はリサイクルの判断指標としての情報は、ユーザ毎に異なっていてもよい。
【0049】
次に、実施形態の印刷装置100は、インクカートリッジ1のインクが消費されて空となり、このインクカートリッジ1のリサイクルを行う場合に、上述した外装体20の劣化度や、新規に充填するインクのインク種等に合わせて、インクカートリッジ1の最適なリサイクル工程をユーザに提示するため、以下に説明するような構成を備えている。
【0050】
図2に示すように、制御部110には記憶部150が接続されている。記憶部150には、第1テーブル(図4(a))および第2テーブル(図4(b))と、前記製造方法群についての情報と、インクカートリッジ1の装着回数が記憶されている。制御部110は、インクカートリッジ1が装着される毎に、当該インクカートリッジ1の印刷装置100に対する装着を検知する検知部170からの信号を受け、当該インクカートリッジ1の装着回数をカウントして記憶部150のデータを更新する。また、リサイクルに使用するインクのインク種は、ユーザが入力部120から入力し、記憶部150に記憶される。そして、制御部110は、ユーザが指定された操作を行い、必要に応じてデータを入力した場合に、記憶部150に記憶している第1テーブルと第2テーブルと装着回数とインク種に基づき、記憶している製造方法群から最適の製造方法を選択し、表示部160に表示してユーザに提示する。そして、ユーザは、この表示を見てインクを再充填し、インク容器10を外装体20に戻してカートリッジを組み立て、印刷装置100に装着して印刷を行うことになる。
【0051】
図5は、インクカートリッジ1の外装体20と支持部材22を対象部品とし、これらについて再利用することが可能か否かの技術的な観点から、最適な製造方法を選択してユーザに提示し、ユーザが当該製造方法でインクカートリッジ1を製造する場合の手順を示すフローチャートである。
【0052】
図5に示すリサイクルの製造工程において、ユーザは、印刷装置100で使用中のインクカートリッジ1のインクが切れたことを表示部160の表示から知得すると、インクカートリッジ1を印刷装置100から取り出す(S1)。これを新規のインクカートリッジ1に交換するか、又は現在のインクカートリッジ1にインクを再充填して再利用(リサイクル)するかをユーザが判断する(S2)。この時点以降、インク容器10に再び充填するインク(再充填インク)と第2テーブルの比較を、制御部110が行うS7までの適当なタイミングで、ユーザは、再充填インクのインク種(又は当該再充填インクの粘度)を入力部120から入力するものとする。
【0053】
新規のインクカートリッジ1に交換する場合(S2、新規交換)は、新規のインクカートリッジ1が印刷装置100に装着されると、当該インクカートリッジ1が前回と同じものであるか否かを制御部110が判断する(S13)。この場合は同じものではないため(S13、NO)、記憶部150にある装着回数のカウンタがリセットされ(S16)、制御は終了する(S15)。
【0054】
インクカートリッジ1を再利用(リサイクル)する場合(S2、再利用)は、制御部110は、記憶部150に格納された当該インクカートリッジ1の装着回数と、記憶部150にある第1テーブルとを比較し(S3)、装着回数が所定の値であるn回を越えるか否かを判断する(S4)。装着回数が所定の値であるn回を越える場合(S4、YES)、外装体20を変更(交換)するとの判断となり、その旨を表示部160に表示する(S5)。装着回数が所定の値であるn回を越えない場合(S4、NO)、外装体20を変更(交換)しないとの判断となり、その旨を表示部160に表示する(S6)。
【0055】
次に、制御部110は、再充填インクの粘度と、第2テーブルを比較し(S7)、再充填するインクのインク種の粘度が、所定の粘度値であるXyを越えるか否かを判断する(S8)。再充填インクのインク種の粘度が、所定の粘度値であるXyを越える場合(S8、YES)、支持部材22を再利用(リサイクル)するとの判断となり、その旨を表示部160に表示する(S9)。再充填するインクのインク種の粘度が、所定の粘度値であるXyを越えない場合(S8、NO)、支持部材22を再利用しないとの判断となり、その旨を表示部160に表示する(S10)。
【0056】
このように、ユーザは、現在のインクカートリッジ1にインクを再充填して再利用(リサイクル)することを決定し(S2、YES)、再充填インクのインク種(又はその粘度)を制御部110に入力するだけで、「外装体20を変更する」(S5)又は「外装体20を変更しない」(S6)との判断と、「支持部材22を再利用する」(S9)又は「支持部材22を再利用しない」(S10)との判断の提示を受けることができる。
【0057】
ユーザは、上記提示に従い、製造方法群の中から該当する一つの製造方法を選択し、実際の作業を行って目的とするインクカートリッジ1の製造を行う(S11)。
【0058】
実際の製造手順(S11)は概ね次の通りである。まず第1のシート体31を外装体20から剥がし、係合部30を外装体20から取り外し、外装体20の一端部20aから係合部30及びインク容器10を取り出す。支持部材22を外装体20の外に取り出したいが、外装体20の一端部20aから取り出せない場合は、第2のシート体32を外装体20から剥がし、外装体20の他端部20bから支持部材22を取り出す。インク容器10については、その内部を必要に応じて洗浄した後、指定した同一又は異なる再充填インクをインク容器10に充填する。その後、ユーザは、選択した製造方法に基づき、支持部材22が設けられた又は除去されたままの外装体20に対し、インクを再充填したインク容器10を収納する。支持部材22を再利用する場合は、外装体20の内部に収納したインク容器10の底部(係合部30と反対側)が支持部材22の上に載り、やや持ちあがった状態となっていることを確認する。そして、外装体20の一端部20aに係合部30を嵌合させ、第1のシート体31で外装体20と係合部30を一体化し、リサイクルしたインクカートリッジ1を完成させる。
【0059】
なお、リサイクルを繰り返すことで外装体20が損傷するのは、ユーザが孔部21に指を入れて印刷装置100に対する抜き差しを繰り返し行うからだけではなく、リサイクルでは、上述のように第1のシート体31及び第2のシート体32を外装体20から剥がす工程があるため、外装体20が損傷しやすいという事情がある。
【0060】
次に、ユーザはリサイクルしたインクカートリッジ1を印刷装置100に装着する(S12)。
【0061】
制御部110は、印刷装置100に装着されたインクカートリッジ1が前回と同じものか否かを判断する(S13)。リサイクルした場合のように同じものであれば(S13、YES)、記憶部150に記憶されている当該インクカートリッジ1の装着回数のカウント値に1を加算し(S14)、制御を終了する。印刷装置100に装着されたインクカートリッジ1が前回と異なる場合(S13、NO)は、記憶部150に記憶されているインクカートリッジ1の装着回数のカウント値をリセットし(S16)、制御を終了する。
印刷を行う場合は、この状況で開始することが可能である。
なお、インク種の入力は、入力部12からの入力に限られず、印刷装置に挿入されたインクカートリッジに設けられたタグ(インク種等の情報が格納されたもの)から、制御部がインク種を読み取ることで、入力されるようにしてもよい。
【0062】
[4.変形例について]
以上説明した実施形態のリサイクル工程では、インク容器10は交換しなかった。しかし、リサイクルの回数が嵩んでインク容器10が痛んできた場合には交換してもよい。
【0063】
また、実施形態では、外装体20には孔部21が設けられていたが、孔部21が設けられていない外装体20であっても、本発明を有効に適用することは可能である。孔部21がなくても、繰り返して使用すればインクカートリッジ1の外装体20は次第に劣化するからである。
【0064】
また、実施形態では、支持部材22は使用するか(リサイクルする)、又は使用しないかの2つの選択しかなかった。しかしながら、支持部材22については、単に支持部材22の再利用の要・不要を判断するだけでなく、リサイクルによって異なる粘度のインク種を使用する場合には、リサイクル前の支持部材22を廃棄して、新たな支持部材22を使用してもよい。これは、元のインクよりも粘度の高いインクを再充填する場合には、インク流出方向Bに沿って、より安定してインクを流出させるためには、元の支持部材22よりも傾斜角度が大きい新たな支持部材22に交換した方が好ましい場合がありうるからである。
【0065】
具体的には、前記支持部材22は側断面が三角形であったが、この三角形の斜面の傾斜角度が元の支持部材22よりも大きい複数種類の支持部材を予め用意しておき、リサイクルしようとするインクカートリッジ1の支持部材22の代わりに、リサイクルで使用するインクのインク種に適合した、より傾斜角度の大きい支持部材を選択すればよい。この場合、インク種の粘度が大きいほど、傾斜角度が大きい支持部材22を選択することになる。
【0066】
さらに具体的には、再充填インクのインク種と、支持部材22の要・不要だけでなく、さらに、これらの要素と、支持部材22の必要な傾斜角度とを対応付けた第3テーブルを用意するとよい。この第3テーブルを参照すれば、再充填するインクの流動性に応じ、既存の支持部材22の使用又は不使用、さらに既存の支持部材22を越えた傾斜角度を有する新規の支持部材22の採用の可否を判断することができる。
【0067】
以上説明した実施形態では、印刷装置100に対してユーザが必要なデータを入力する等の操作を行うことにより、インクカートリッジ1の外装体20の劣化度や、再充填インクのインク種等に適合した製造方法を印刷装置100が選択・提示し、ユーザは印刷装置100の提示に従って選択された製造方法を実行していた。
【0068】
しかしながら、このような案内機能を備えた印刷装置100は、本発明の一実施形態に過ぎず、印刷装置100を用いない他の実施形態も可能である。すなわち、ユーザは、印刷装置100に対するインクカートリッジ1の現在の装着回数、再充填するインク種を決定乃至把握しておき、また第1情報、第2情報等の技術情報を予め実験等に基づき取得、把握しておく。第1情報と第2情報は、先に説明した通り、必ずしもテーブル形式でなくてもよい。そして、ユーザは、これらの技術情報を参照して、外装体20を変えるか否か、また支持部材22を使用するか否か、さらに必要であれば新たな支持部材を使用するか否かを判断し、前述した製造方法群からリサイクル条件に適した一の製造方法を選択し、これを実行すればよい。以上の手順は、図5に示したフローと実質的に同等である。
【0069】
《実施形態における各態様とその効果について》
第1態様のインクカートリッジ1の製造方法は、
外装体20と、インクが充填されて前記外装体20の内部に収納されるインク容器10と、前記インク容器10の一部を持ち上げるために前記外装体20の内部に設けられた支持部材22を備え、印刷装置100に装着して使用されるインクカートリッジ1を対象とし、インクが消費された後の前記インク容器10にインクを再充填するインクカートリッジ1の製造方法であって、
前記支持部材22が配置された前記外装体20内に前記インク容器10を収納する第1の製造方法と、交換した前記外装体20内に前記支持部材22を配置したのち前記インク容器10を収納する第2の製造方法と、前記外装体20内に前記支持部材22を配置しないで前記インク容器10を収納する第3の製造方法と、交換した前記外装体20内に前記支持部材22を配置しないで前記インク容器10を収納する第4の製造方法を含む製造方法群から、
前記インク容器10に再充填するインクのインク種と、前記インクカートリッジ1を印刷装置100に装着した装着回数とに基づいて、いずれかの製造方法を選択して行なうことを特徴している。
【0070】
第1態様のインクカートリッジ1の製造方法によれば、
インク容器10にインクを再充填するインクカートリッジ1のリサイクルにおいて、このインクカートリッジ1を印刷装置100に装着した回数に基づいて、外装体20をそのまま使用するか又は新品に交換するかを判断し、また再充填するインクのインク種に基づいて、仕切り部材の要否を判断することにより、インクカートリッジ1の製造方法を適切に選択して実行することができる。このため、リサイクルにより製造されたインクカートリッジ1において使用時に消耗しきれないインクの残量を減らしつつ、その耐久性及び印刷装置100に対する着脱の作業性を向上させることができる。従って、インク容器のインク残量低減を実現しつつ、インクカートリッジの再生産の作業効率を向上させるインクカートリッジの製造方法を提供することが可能となる。
また、従来のインクカートリッジのリサイクルに比べて、本実施形態では、支持部材の要否を再充填するインクの種類に応じて適切に判断し、インクの粘度からみて必要のない支持部材をそのまま使用していたり、必要があるのに支持部材が除去されていたりすることがないため、適切なインクカートリッジの再生産を行える。
【0071】
第2態様のインクカートリッジ1の製造方法は、第1態様のインクカートリッジ1の製造方法において、
前記装着回数と前記外装体20の劣化度を対応付ける第1情報と、前記インク種と前記支持部材22の要否を対応付ける第2情報とを参照して、前記製造方法群からいずれかの製造方法を選択して行なうことを特徴している。
【0072】
第2態様のインクカートリッジ1の製造方法によれば、
第1情報においては、装着回数と外装体20の劣化度が対応付けられており、第2情報においては、インク種と支持部材22の要否が対応付けられているため、製造方法群からいずれかの製造方法を選択する判断を適格かつ速やかに行うことができる。
【0073】
第3態様のインクカートリッジ1の製造方法は、第2態様のインクカートリッジ1の製造方法において、
前記第2情報は、前記インク種と、前記支持部材22の要否と、前記支持部材22が前記インク容器10の一部を持ち上げる角度が互いに対応付けられた情報を含んでおり、
前記第1または第2の製造方法において、前記インク種に対応する前記角度を備えた前記支持部材22として、再充填前の前記支持部材22又は交換した前記支持部材22を使用することを特徴としている。
【0074】
第3態様のインクカートリッジ1の製造方法によれば、
第2情報は、インク種と支持部材22の要否の他に、支持部材22がインク容器10の一部を持ち上げる角度も含んでおり、これらの情報が互いに対応付けられているため、第1または第2の製造方法において、種々のインク種に対応して角度の異なる交換した新規の支持部材22を使用することができ、インク残量をより適切に減らすことができる。
【0075】
第4態様のインクカートリッジ1の製造方法は、第1乃至第3態様の何れか一つのインクカートリッジ1の製造方法において、
前記インク容器10の劣化度に応じて、インクが消費された後の前記インク容器10又は交換した前記インク容器10の何れかを選択して使用することを特徴としている。
【0076】
第4態様のインクカートリッジ1の製造方法によれば、
リサイクルしようとするインクカートリッジ1のインク容器10の劣化の状態に応じて再利用の可否を判断し、必要に応じて新規のインク容器10を採用することができる。
【0077】
第5態様のインクカートリッジ1の製造方法は、第1乃至第4態様の何れか一つのインクカートリッジ1の製造方法において、
前記外装体20の底部には、前記インクカートリッジ1を印刷装置100に装着し、または取り外すための操作部(孔部21)が設けられていることを特徴としている。
【0078】
第5態様のインクカートリッジ1の製造方法によれば、
ユーザは、外装体20の底部のある操作部(孔部21)に指を掛けてインクカートリッジ1を印刷装置100に装着し、または取り外すことができる。
【0079】
第6態様の印刷装置100は、
第2態様のインクカートリッジ1の製造方法において選択されたインクカートリッジ1の製造方法をユーザに表示できる印刷装置100であって、
前記インクカートリッジ1の装着を検知する検知部170と、
前記第1情報および前記第2情報と前記製造方法群を記憶する記憶部150と、
前記インク種を入力する入力部120と、
前記検知部170の検知に基づき前記装着回数を更新して前記記憶部150に記憶させ、前記第1情報と前記第2情報と前記装着回数と前記インク種に基づいて前記製造方法群から前記製造方法を選択する制御部110と、
前記制御部110が選択した前記製造方法を表示する表示部160と、
を備えることを特徴としている。
【0080】
第6態様の印刷装置100によれば、
ユーザが必要なデータを入力する等の必要な操作を行うことにより、リサイクルしようとするインクカートリッジ1の外装体20の劣化度や、リサイクルして新規に充填するインクの種類等に合わせた最適な製造方法を選択し、これをユーザに提示することができるので、ユーザは印刷装置100の提示に従って選択された製造方法を実行することで、所望のインクカートリッジ1のリサイクルを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
1…インクカートリッジ
10…インク容器
20…外装体
21…操作部としての孔部
22…支持部材
30…係合部
31…第1のシート体
32…第2のシート体
100…印刷装置
110…制御部
120…入力部
150…記憶部
160…表示部
170…検知部
A…着脱方向
A1…装着方向
A2…離脱方向
B…インク流出方向
図1
図2
図3
図4
図5