(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146575
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】電動機、および圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20220928BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20220928BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H02K3/46 C
H02K3/52 E
F04B39/00 106E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047613
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 朋記
【テーマコード(参考)】
3H003
5H604
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB04
3H003AC03
3H003CF06
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604QB17
(57)【要約】
【課題】軸方向におけるインシュレータの長さの増大を抑制すると共に異なる相の渡り線間の絶縁距離を保つ電動機、および圧縮機を提供する。
【解決手段】3相の電動機は、固定子鉄心とインシュレータと複数のコイルとを備える。固定子鉄心は、複数のティースを有する。インシュレータは、複数の巻胴部を有し、固定子鉄心の軸方向の端部に当接する。コイルは、ティースと巻胴部とに巻かれる。複数のコイルのうち、同相の各コイルは、直列結線によって結線され、渡り線を含む1本の導線によって形成される。インシュレータには、渡り線を通す複数のスリットが形成される。複数のスリットのうち最も深さが深い最深スリットは、少なくとも一部が、最深スリットを通る渡り線が引き出される深溝対応コイルが巻かれる深溝対応巻胴部を外径側に仮想的に延長した延長領域よりも周方向の外側に位置するように設けられる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の電動機であって、
円筒状の固定子鉄心と、
前記固定子鉄心の軸方向の端部に当接する円筒状のインシュレータと、
複数のコイルと、を備え、
前記固定子鉄心は、複数のティースを有するとともに、ティース数が3の倍数であり、
前記インシュレータは、複数の巻胴部を有し、
前記巻胴部は前記ティースと軸方向に対向し、
前記コイルは、対向する前記ティースと前記巻胴部とに巻かれており、
前記複数のコイルのうち、同相の各コイルは、直列結線によって結線され、渡り線を含む1本の導線によって形成され、
前記インシュレータには、前記渡り線を通す複数のスリットが形成され、
前記複数のスリットのうち最も深さが深いスリットを最深スリットとし、前記最深スリットを通る前記渡り線が引き出されるコイルを深溝対応コイルとし、前記深溝対応コイルが巻かれる前記巻胴部を深溝対応巻胴部としたとき、前記最深スリットは、同最深スリットの少なくとも一部が、前記深溝対応巻胴部を外径側に仮想的に延長した延長領域よりも周方向の外側に位置するように設けられる、電動機。
【請求項2】
前記最深スリットにおいて前記渡り線を保持する縁部は、前記渡り線の引き回し方向において前記延長領域の外側に設けられる、請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記最深スリットにおいて前記渡り線を保持する縁部は、前記渡り線が引き出される前記深溝対応コイルを外径側に仮想的に投影した投影領域の外側に設けられる、請求項1または2に記載の電動機。
【請求項4】
前記複数のコイルは、9つのコイルを有し、
前記9つのコイルが周方向の並び順に第1コイルから第9コイルとされた場合、第1コイル、第4コイル、および第7コイルを形成する導線は、
前記第1コイルと前記第4コイルとを接続する第1渡り線と、
前記第4コイルと前記第7コイルとを接続する第2渡り線と、を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の電動機。
【請求項5】
前記インシュレータには、
前記直列結線における前記渡り線が通る直列結線用スリットと、
並列結線における前記渡り線が通る並列結線用スリットと、
前記直列結線、および前記並列結線における前記渡り線が通る併用スリットと、が形成される、請求項1~4のいずれか1つに記載の電動機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の電動機と、
前記電動機によって駆動される圧縮部と、を備える圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機、および圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ステータとロータを備える電動機が知られている。また、ステータとしては、複数のティースを備えたステータコアと、このステータコアの軸方向の端面に取り付けられたインシュレータと、インシュレータを介してティースに巻かれる導線(以下、コイルともいう)とを備えたものが知られている。さらに、例えば3相の電動機において、異なるティースに巻かれたコイル同士を接続する導線や、コイルと3相電源につながる線(以下、電源線ともいう)を接続する導線をインシュレータに形成されたスリット状の保持部に保持させることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、直列結線によって同相のコイルが結線される場合、電源線と接続された導線は、例えば、最初にティースには巻かれずに、スリットからインシュレータの外側へ引き出されている。
【0005】
しかしながら、電源線と接続された導線が、最初にティースには巻かれずにインシュレータの外側へ引き出された場合、インシュレータの外周面に這わされる導線(以下、「渡り線」ともいう)の数が多い。具体的には、ステータのティース数が3N(N:自然数)の3相の電動機の場合、1相毎に渡り線がN箇所だけ必要になる。例えば特許文献1では、ティース数が9の電動機において、3つの渡り線が必要となっている。そのため、異なる相の渡り線における絶縁距離を確保するために、インシュレータの長さが電動機の軸方向に長くなるおそれがある。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、渡り線の数を減らすことにより、軸方向におけるインシュレータの長さの増大を抑制しつつ、異なる相の渡り線間の絶縁距離を保つことができる電動機、および圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する電動機の一態様は、3相の電動機であって、円筒状の固定子鉄心と、円筒状のインシュレータと、複数のコイルと、を備える。固定子鉄心は、複数のティースを有するとともに、ティース数が3の倍数である。インシュレータは、複数のティースに対向する複数の巻胴部を有し、固定子鉄心の軸方向の端部に当接して設けられる。複数のコイルは、ティース、および巻胴部に巻かれる。複数のコイルのうち、同相の各コイルは、直列結線によって結線され、渡り線を含む1本の導線によって形成される。インシュレータには、渡り線を通す複数のスリットが形成される。複数のスリットのうち、最も深さが深いスリットを最深スリットとし、最深スリットを通る渡り線が引き出されるコイルを深溝対応コイルとし、深溝対応コイルが巻かれる巻胴部を深溝対応巻胴部としたとき、最深スリットは、同最深スリットの少なくとも一部が、深溝対応巻胴部を外径側に仮想的に延長した延長領域よりも周方向の外側に位置するように設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する積層鉄心の一態様によれば、渡り線の数を減らすことができ、軸方向におけるインシュレータの長さの増大を抑制しつつ、異なる相の渡り線間の絶縁距離を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例の3相モータが設けられた圧縮機を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、下インシュレータを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、直列結線を行う場合の結線図である。
【
図5】
図5は、並列結線を行う場合の結線図である。
【
図6】
図6は、直列結線における複数の巻き線を示す展開図である。
【
図7】
図7は、並列結線における複数の巻き線を示す展開図である。
【
図8】
図8は、直列結線における第1U相巻き線の状態を示す概略図である。
【
図9】
図9は、比較例における第1U相巻き線の状態を示す図である。
【
図10】
図10は、直列結線における第1U相巻き線と、下インシュレータとを径方向内側から見た場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する電動機、および圧縮機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示す電動機、および圧縮機が限定されるものではない。
【0011】
以下に、本願が開示する実施例にかかる3相モータおよび圧縮機について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、実施例の3相モータ6(3相の電動機)が設けられた圧縮機1を示す縦断面図である。圧縮機1は、
図1に示されているように、容器2とシャフト3と圧縮機部5と3相モータ6とを備えている。容器2は、密閉された内部空間7を形成している。内部空間7は、概ね円柱状に形成されている。容器2は、水平面に縦置きされたときに、内部空間7の円柱の中心軸が鉛直方向に平行になるように、形成されている。容器2には、内部空間7の下部に油溜め8が形成されている。油溜め8には、圧縮機部5を潤滑させる冷凍機油が貯留される。容器2には、冷媒を吸入する吸入管11と圧縮された冷媒を吐出する吐出管12とが接続されている。シャフト3は、棒状に形成され、一端が油溜め8に配置されるように、容器2の内部空間7に配置されている。シャフト3は、内部空間7が形成する円柱の中心軸に平行である回転軸を中心に回転可能に容器2に支持されている。シャフト3は、回転することにより、油溜め8に貯留される冷凍機油を圧縮機部5に供給する。
【0013】
圧縮機部5は、内部空間7の下部に配置され、油溜め8の上方に配置されている。圧縮機1は、さらに、上マフラーカバー14と下マフラーカバー15とを備えている。上マフラーカバー14は、内部空間7のうちの圧縮機部5の上部に配置されている。上マフラーカバー14は、内部に上マフラー室16を形成している。下マフラーカバー15は、内部空間7のうちの圧縮機部5の下部に配置され、油溜め8の上部に配置されている。下マフラーカバー15は、内部に下マフラー室17を形成している。下マフラー室17は、圧縮機部5に形成されている連通路(図示されていない)を介して上マフラー室16に連通している。上マフラーカバー14とシャフト3との間には、圧縮冷媒吐出孔18が形成され、上マフラー室16は、圧縮冷媒吐出孔18を介して内部空間7に連通している。
【0014】
圧縮機部5は、いわゆるロータリー型の圧縮機であり、シャフト3が回転することにより吸入管11から供給される冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を上マフラー室16と下マフラー室17とに供給する。その冷媒は、冷凍機油と相溶性を有している。3相モータ6は、内部空間7のうちの圧縮機部5の上部に配置されている。3相モータ6は、ロータ21とステータ22とを備えている。ロータ21は、シャフト3に固定されている。ステータ22(ステータコア23)は、概ね円筒形に形成され、ロータ21を囲むように配置され、容器2に固定されている。ステータ22は、ステータコア23(固定子鉄心)と上インシュレータ24と下インシュレータ25(インシュレータ)と複数の巻き線26(コイル)を備えている。上インシュレータ24は、ステータコア23の上部に配置されている。下インシュレータ25は、ステータコア23の下部に配置されている。すなわち、上インシュレータ24は、ステータコア23の軸方向において、ステータコア23の一方の端部に配置される。なお、ステータコア23の軸方向は、3相モータ6における軸方向、すなわち、ロータ21の軸方向に一致する。下インシュレータ25は、ステータコア23の軸方向において、ステータコア23の他方の端部に配置される。上インシュレータ24と下インシュレータ25とは、ステータコア23と巻き線26とを絶縁する絶縁部の一例である。
【0015】
図2は、ステータコア23を示す下面図である。ステータコア23は、たとえば、ケイ素鋼板に例示される軟磁性体で形成された複数の板が積層されて形成され、
図2に示されているように、ヨーク部31と複数のステータコアティース部32-1~32-9(ティース)とを備えている。ヨーク部31は、概ね円筒形に形成されている。複数のステータコアティース部32-1~32-9は、周方向に沿って第1ステータコアティース部32-1から第9ステータコアティース部32-9まで9つのティースを含む。ステータコア23のティース数は、3の倍数である。複数のステータコアティース部32-1~32-9のうちの第1ステータコアティース部32-1は、概ね柱体状に形成されている。第1ステータコアティース部32-1は、一端がヨーク部31の内周面に連続して形成され、すなわち、ヨーク部31の内周面から突出するように、形成されている。複数のステータコアティース部32-1~32-9のうちの第1ステータコアティース部32-1と異なるステータコアティース部も、第1ステータコアティース部32-1と同様に、概ね柱体状に形成され、ヨーク部31の内周面から突出している。複数のステータコアティース部32-1~32-9は、さらに、ヨーク部31の内周面に40度ごとの等間隔に配置されるように、形成されている。
【0016】
図3は、下インシュレータ25を示す斜視図である。下インシュレータ25は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)に例示される絶縁体から形成され、
図3に示されているように、外周壁部41と複数のインシュレータ歯部42-1~42-9(巻胴部)と複数の鍔部43-1~43-9とを備えている。外周壁部41は、概ね円筒形に形成されている。外周壁部41は、複数のスリット44が形成される。複数のスリット44についての詳細は後述する。複数のインシュレータ歯部42-1~42-9は、対応するステータコアティース部32-1~32-9と軸方向に対向する。複数のインシュレータ歯部42-1~42-9のうちの第1インシュレータ歯部42-1は、断面が概ね半円である直柱体状に形成されている。第1インシュレータ歯部42-1は、一端が外周壁部41の内周面に連続して形成され、すなわち、外周壁部41の内周面から突出するように、形成されている。複数のインシュレータ歯部42-1~42-9のうちの第1インシュレータ歯部42-1と異なるインシュレータ歯部も、直柱体状に形成され、第1インシュレータ歯部42-1と同様に、外周壁部41の内周面から突出するように、形成されている。複数のインシュレータ歯部42-1~42-9は、外周壁部41の内周面に40度ごとの等間隔に配置されるように、形成されている。
【0017】
複数の鍔部43-1~43-9は、複数のインシュレータ歯部42-1~42-9に対応し、それぞれ、概ね半円形の板状に形成されている。複数の鍔部43-1~43-9のうちの第1インシュレータ歯部42-1に対応する第1鍔部43-1は、第1インシュレータ歯部42-1の他端に連続して形成されている。複数の鍔部43-1~43-9のうちの第1鍔部43-1と異なる鍔部も、第1鍔部43-1と同様に、複数のインシュレータ歯部42-1~42-9の他端に連続して形成されている。
【0018】
上インシュレータ24も、下インシュレータ25と同様に形成され、すなわち、絶縁体から形成され、外周壁部と複数のインシュレータ歯部と複数の鍔部とを備えている。
【0019】
9つのステータコアティース部32-1~32-9を有するステータコア23では、各相の巻き線26の結線方法は、
図4に示すように、各相の3つの巻き線(「1、4、7」、「2、5、8」、「3、6、9」)を直列に結線する直列結線(以下、直列スター結線ともいう。)と、
図5に示すように、各相の3つの巻き線(「1、4、7」、「2、5、8」、「3、6、9」)を並列に結線する並列結線(以下、並列スター結線ともいう。)とがある。本実施例では、上インシュレータ24、および下インシュレータ25は、各相の巻き線方法に関わらず、用いることが可能である。すなわち、上インシュレータ24、および下インシュレータ25は、各相の巻き線方法によらず共通部品として用いられる。
図4は、直列結線を行う場合の結線図である。
図5は、並列結線を行う場合の結線図である。
【0020】
図6は、直列結線における複数の巻き線26を示す展開図である。なお、
図6において「○」は、電源線との接続を意味する。また、
図6において、「△」は、中性点との接続を意味する。複数の巻き線26は、U相巻き線46-Uと、V相巻き線46-Vと、W相巻き線46-Wとを含む。
【0021】
U相巻き線46-Uは、第1U相巻き線46-U1と、第2U相巻き線46-U2と、第3U相巻き線46-U3と、第1U相渡り線47-U1と、第2U相渡り線47-U2とを含む。U相巻き線46-Uは、1本の導線によって形成される。
【0022】
第1U相巻き線46-U1(第1コイル)は、第1ステータコアティース部32-1に巻かれる。第2U相巻き線46-U2(第4コイル)は、第4ステータコアティース部32-4に巻回される。第3U相巻き線46-U3(第7コイル)は、第7ステータコアティース部32-7に巻回される。
【0023】
なお、第1U相巻き線46-U1(第1コイル)は、下インシュレータ25の第1インシュレータ歯部42-1(
図3参照)、第1ステータコアティース部32-1、および上インシュレータ24の第1インシュレータ歯部に巻かれる。他の巻き線についても、同様に、下インシュレータ25のインシュレータ歯部、ステータコアティース部、上インシュレータ24のインシュレータ歯部に巻かれる。詳しくは後述するが、本実施例において、第1U相巻き線46-U1(第1コイル)は、U相における深溝対応コイルであり、第1インシュレータ歯部42-1は、U相における深溝対応巻胴部である。
【0024】
第1U相巻き線46-U1、および第2U相巻き線46-U2は、第1U相渡り線47-U1によって接続される。第2U相巻き線46-U2、および第3U相巻き線46-U3は、第2U相渡り線47-U2によって接続される。
【0025】
U相巻き線46-Uは、第1ステータコアティース部32-1および第1インシュレータ歯部42-1に巻かれて第1U相巻き線46-U1を形成した後に、後述するU相の最深スリットである第1U相スリット44-U1を介して下インシュレータ25の外周側に引き出される。U相巻き線46-Uは、第2U相スリット44-U2を介して下インシュレータ25の内周側に引き出され、第4ステータコアティース部32-4に巻かれる。これにより、第2U相巻き線46-U2が形成される。また、第1U相巻き線46-U1と第2U相巻き線46-U2との間に第1U相渡り線47-U1が形成される。
【0026】
次に、U相巻き線46-Uは、第3U相スリット44-U3を介して下インシュレータ25の外周側に引き出された後に、第4U相スリット44-U4を介して下インシュレータ25の内周側に引き出され、第7ステータコアティース部32-7に巻かれる。これにより、第3U相巻き線46-U3が形成される。また、第2U相巻き線46-U2と第3U相巻き線46-U3との間に第2U相渡り線47-U2が形成される。U相巻き線46-Uは、第3U相巻き線46-U3を形成した後に、中性点に接続される。
【0027】
V相巻き線46-Vは、第1V相巻き線46-V1と、第2V相巻き線46-V2と、第3V相巻き線46-V3と、第1V相渡り線47-V1と、第2V相渡り線47-V2とを含む。V相巻き線46-Vは、1本の導線によって形成される。
【0028】
第1V相巻き線46-V1は、第5ステータコアティース部32-5に巻かれる。第2V相巻き線46-V2は、第8ステータコアティース部32-8に巻回される。第3V相巻き線46-V3は、第2ステータコアティース部32-2に巻回される。
【0029】
第1V相巻き線46-V1、および第2V相巻き線46-V2は、第1V相渡り線47-V1によって接続される。第2V相巻き線46-V2、および第3V相巻き線46-V3は、第2V相渡り線47-V2によって接続される。
【0030】
V相巻き線46-Vは、第5ステータコアティース部32-5に巻かれて第1V相巻き線46-V1を形成した後に、第1V相スリット44-V1を介して下インシュレータ25の外周側に引き出される。V相巻き線46-Vは、第2V相スリット44-V2を介して下インシュレータ25の内周側に引き出され、第8ステータコアティース部32-8に巻かれる。これにより、第2V相巻き線46-V2が形成される。また、第1V相巻き線46-V1と第2V相巻き線46-V2との間に第1V相渡り線47-V1が形成される。
【0031】
次に、V相巻き線46-Vは、第3V相スリット44-V3を介して下インシュレータ25の外周側に引き出された後に、第4V相スリット44-V4を介して下インシュレータ25の内周側に引き出され、第2ステータコアティース部32-2に巻かれる。これにより、第3V相巻き線46-V3が形成される。また、第2V相巻き線46-V2と第3V相巻き線46-V3との間に第2V相渡り線47-V2が形成される。V相巻き線46-Vは、第3V相巻き線46-V3を形成した後に、中性点に接続される。
【0032】
W相巻き線46-Wは、第1W相巻き線46-W1と、第2W相巻き線46-W2と、第3W相巻き線46-W3と、第1W相渡り線47-W1と、第2W相渡り線47-W2とを含む。W相巻き線46-Wは、1本の導線によって形成される。
【0033】
第1W相巻き線46-W1は、第3ステータコアティース部32-3に巻かれる。第2W相巻き線46-W2は、第6ステータコアティース部32-6に巻回される。第3W相巻き線46-W3は、第9ステータコアティース部32-9に巻回される。
【0034】
第1W相巻き線46-W1、および第2W相巻き線46-W2は、第1W相渡り線47-W1によって接続される。第2W相巻き線46-W2、および第3W相巻き線46-W3は、第2W相渡り線47-W2によって接続される。
【0035】
W相巻き線46-Wは、第3ステータコアティース部32-3に巻かれて第1W相巻き線46-W1を形成した後に、第1W相スリット44-W1を介して下インシュレータ25の外周側に引き出される。W相巻き線46-Wは、第2W相スリット44-W2を介して下インシュレータ25の内周側に引き出され、第6ステータコアティース部32-6に巻かれる。これにより、第2W相巻き線46-W2が形成される。また、第1W相巻き線46-W1と第2W相巻き線46-W2との間に第1W相渡り線47-W1が形成される。
【0036】
次に、W相巻き線46-Wは、第3W相スリット44-W3を介して下インシュレータ25の外周側に引き出された後に、第4W相スリット44-W4を介して下インシュレータ25の内周側に引き出され、第9ステータコアティース部32-9に巻かれる。これにより、第3W相巻き線46-W3が形成される。また、第2W相巻き線46-W2と第3W相巻き線46-W3との間に第2W相渡り線47-W2が形成される。W相巻き線46-Wは、第3W相巻き線46-W3を形成した後に、中性点に接続される。
【0037】
図7は、並列スター結線における複数の巻き線26を示す展開図である。なお、
図7において「○」は、電源線との接続を意味する。また、
図7において、「△」は、中性点との接続を意味する。複数の巻き線26は、U相巻き線50-Uと、V相巻き線50-Vと、W相巻き線50-Wとを含む。
【0038】
U相巻き線50-Uは、第1U相巻き線50-U1と、第2U相巻き線50-U2と、第3U相巻き線50-U3と、第1U相渡り線51-U1と、第2U相渡り線51-U2とを含む。
【0039】
第1U相巻き線50-U1は、第4ステータコアティース部32-4に巻かれる。第2U相巻き線50-U2は、第7ステータコアティース部32-7に巻かれる。第3U相巻き線50-U3は、第1ステータコアティース部32-1に巻かれる。
【0040】
第1U相巻き線50-U1の一方の端は、第1U相渡り線51-U1に接続される。第1U相渡り線51-U1は、電源線と、第1U相巻き線50-U1とを接続する。また、第1U相巻き線50-U1の他方の端は、中性点に接続される。
【0041】
第1U相巻き線50-U1を形成する導線は、電源線から下インシュレータ25の内周側を通り、第1U相スリット44-U1を介して下インシュレータ25の外周側に引き出される。第1U相巻き線46-U1を形成する導線は、第2U相スリット44-U2を介して下インシュレータ25の内周側に引き出され、第4ステータコアティース部32-4に巻かれる。これにより、第1U相巻き線50-U1が形成される。また、第1U相渡り線51-U1が形成される。第1U相巻き線50-U1を形成する導線は、第1U相巻き線50-U1を形成した後に、中性点に接続される。
【0042】
第2U相巻き線50-U2の一方の端は、中性点に接続される。第2U相巻き線50-U2の他方の端は、第2U相渡り線51-U2に接続される。第2U相渡り線51-U2は、第2U相巻き線50-U2と電源線とを接続する。
【0043】
第2U相巻き線50-U2を形成する導線は、中性点から第7ステータコアティース部32-7に巻かれる。これによって、第2U相巻き線50-U2が形成される。第2U相巻き線50-U2を形成する導線は、第2U相巻き線50-U2を形成した後に、第5U相スリット44-U5を介して下インシュレータ25の外周側に引き出される。第2U相巻き線50-U2を形成する導線は、第6U相スリット44-U6を介して下インシュレータ25の内周側に引き出され、電源線に接続される。これによって、第2U相渡り線51-U2が形成される。
【0044】
第3U相巻き線50-U3の一方の端は、電源線に接続される。第3U相巻き線50-U3の他方の端は、中性点に接続される。
【0045】
第3U相巻き線50-U3を形成する導線は、電源線から第1ステータコアティース部32-1に巻かれ、中性点に接続される。これによって、第3U相巻き線50-U3が形成される。
【0046】
V相巻き線50-Vは、第1V相巻き線50-V1と、第2V相巻き線50-V2と、第3V相巻き線50-V3と、第1V相渡り線51-V1と、第2V相渡り線51-V2とを含む。
【0047】
第1V相巻き線50-V1は、第8ステータコアティース部32-8に巻かれる。第2V相巻き線50-V2は、第2ステータコアティース部32-2に巻かれる。第3V相巻き線50-V3は、第5ステータコアティース部32-5に巻かれる。
【0048】
第1V相巻き線50-V1の一方の端は、第1V相渡り線51-V1に接続される。第1V相渡り線51-V1は、電源線と、第1V相巻き線50-V1とを接続する。また、第1V相巻き線50-V1の他方の端は、中性点に接続される。
【0049】
第1V相巻き線50-V1を形成する導線は、電源線から下インシュレータ25の内周側を通り、第1V相スリット44-V1を介して下インシュレータ25の外周側に引き出される。第1V相巻き線50-V1を形成する導線は、第2V相スリット44-V2を介して下インシュレータ25の内周側に引き出され、第8ステータコアティース部32-8に巻かれる。これによって、第1V相巻き線50-V1が形成される。また、第1V相渡り線51-V1が形成される。第1V相巻き線50-V1を形成する導線は、第1V相巻き線50-V1を形成した後に、中性点に接続される。
【0050】
第2V相巻き線50-V2の一方の端は、中性点に接続される。第2V相巻き線50-V2の他方の端は、第2V相渡り線51-V2に接続される。第2V相渡り線51-V2は、第2V相巻き線50-V2と電源線とを接続する。
【0051】
第2V相巻き線50-V2を形成する導線は、中性点から第2ステータコアティース部32-2に巻かれる。これによって、第2V相巻き線50-V2が形成される。第2V相巻き線50-V2を形成する導線は、第2V相巻き線50-V2を形成した後に、第5V相スリット44-V5を介して下インシュレータ25の外周側に引き出される。第2V相巻き線50-V2を形成する導線は、第6V相スリット44-V6を介して下インシュレータ25の内周側に引き出され、電源線に接続される。これによって、第2V相渡り線51-V2が形成される。
【0052】
第3V相巻き線50-V3の一方の端は、電源線に接続される。第3V相巻き線50-V3の他方の端は、中性点に接続される。
【0053】
第3V相巻き線50-V3を形成する導線は、電源線から第5ステータコアティース部32-5に巻かれ、中性点に接続される。これによって、第3V相巻き線50-V3が形成される。
【0054】
W相巻き線50-Wは、第1W相巻き線50-W1と、第2W相巻き線50-W2と、第3W相巻き線50-W3と、第1W相渡り線51-W1と、第2W相渡り線51-W2とを含む。
【0055】
第1W相巻き線50-W1は、第6ステータコアティース部32-6に巻かれる。第2W相巻き線50-W2は、第9ステータコアティース部32-9に巻かれる。第3W相巻き線50-W3は、第3ステータコアティース部32-3に巻かれる。
【0056】
第1W相巻き線50-W1の一方の端は、第1W相渡り線51-W1に接続される。第1W相巻き線50-W1の他方の端は、中性点に接続される。第1W相渡り線51-W1は、第1W相巻き線50-W1と電源線とを接続する。
【0057】
第1W相巻き線50-W1を形成する導線は、電源線から第1W相スリット44-W1を介して下インシュレータ25の外周側に引き出された後に、第2W相スリット44-W2を介して下インシュレータ25の内周側に引き出される。これによって、第1W相渡り線51-W1が形成される。第1W相巻き線50-W1を形成する導線は、第6ステータコアティース部32-6に巻かれる。これによって、第1W相巻き線50-W1が形成される。第1W相巻き線50-W1を形成する導線は、第1W相巻き線50-W1を形成した後に、中性点に接続される。
【0058】
第2W相巻き線50-W2の一方の端は、中性点に接続される。第2W相巻き線50-W2の他方の端は、第2W相渡り線51-W2に接続される。第2W相渡り線51-W2は、第2W相巻き線50-W2と電源線とを接続する。
【0059】
第2W相巻き線50-W2を形成する導線は、中性点から第9ステータコアティース部32-9に巻かれる。これによって、第2W相巻き線50-W2が形成される。第2W相巻き線50-W2を形成する導線は、第2W相巻き線50-W2を形成した後に、第5W相スリット44-W5から下インシュレータ25の外周側に引き出される。第2W相巻き線46-W2を形成する導線は、第6W相スリット44-W6から下インシュレータ25の内周側に引き出された後に、電源線に接続される。これによって、第2W相渡り線51-W2が形成される。
【0060】
第3W相巻き線50-W3の一方の端は、電源線に接続される。第3W相巻き線50-W3は、第3ステータコアティース部32-3に巻かれる。第3W相巻き線50-W3の他方の端は、中性点に接続される。
【0061】
第3W相巻き線50-W3を形成する導線は、電源線から第3ステータコアティース部32-3に巻かれる。これによって、第3W相巻き線50-W3が形成される。第3W相巻き線50-W3を形成する導線は、第3W相巻き線50-W3を形成した後に、中性点に接続される。
【0062】
図4、および
図5に示すように、下インシュレータ25には、第1U相スリット44-U1~第6U相スリット44-U6、第1V相スリット44-V1~第6V相スリット44-V6、および第1W相スリット44-W1~第6W相スリット44-W6が形成される。
【0063】
なお、巻き線26の線径は、例えば0.65~1.05mmであり、4mmよりも小さい。各スリット44の幅は、例えば4mm以上の幅、またはステータコア23の軸を中心とした5度以上の角度に対応する幅である。
【0064】
第1U相スリット44-U1、第2U相スリット44-U2、第1V相スリット44-V1、第2V相スリット44-V2、第1W相スリット44-W1、第2W相スリット44-W2は、直列結線時、および並列結線時において渡り線が通る併用スリットである。
【0065】
第3U相スリット44-U3、第4U相スリット44-U4、第3V相スリット44-V3、第4V相スリット44-V4、第3W相スリット44-W3、および第4W相スリット44-W4は、直列結線時のみにおいて渡り線が通る直列結線用スリットである。
【0066】
第5U相スリット44-U5、第6U相スリット44-U6、第5V相スリット44-V5、第6V相スリット44-V6、第5W相スリット44-W5、および第6W相スリット44-W6は、並列結線時のみにおいて渡り線が通る並列結線用スリットである。
【0067】
各スリット44は、異なる相の渡り線の絶縁距離を保つために、深さが調整されている。具体的には、第1U相スリット44-U1の深さは、第2U相スリット44-U2の深さよりも深い。第3U相スリット44-U3の深さは、第4U相スリット44-U4の深さよりも深い。第5U相スリット44-U5の深さは、第6U相スリット44-U6の深さよりも深い。V相に対応するスリット44、およびW相に対応するスリット44に関しても、同様である。
【0068】
複数のスリット44のうち、第1U相スリット44-U1、第1V相スリット44-V1、および第1W相スリット44-W1の深さが最も深い。以後、各相で最も深さが深いスリット44を最深スリットと呼称する場合がある。
【0069】
各相で最も深さが深いスリット44、例えば、U相における最深スリットである第1U相スリット44-U1は、
図8に示すように、第1U相スリット44-U1の少なくとも一部が、後述するU相の深溝対応巻胴部である第1インシュレータ歯部42-1を外径側(径方向の外側)に仮想的に延長した延長領域A1よりも周方向の外側に位置するように設けられる。
図8は、直列結線における第1U相巻き線46-U1の状態を示す概略図である。
【0070】
具体的には、複数のスリットのうちU相において最も深さが深い第1U相スリット44-U1をU相最深スリットとし、U相最深スリット(第1U相スリット44-U1)を通る渡り線(第1U相渡り線47-U1)が引き出される第1U相巻き線46-U1をU相深溝対応コイルとし、このU相深溝対応コイル(第1U相巻き線46-U1)が巻かれる第1インシュレータ歯部42-1をU相深溝対応巻胴部としたとき、第1U相巻き線46-U1(深溝対応コイル)から引き出される第1U相渡り線47-U1を保持するU相最深スリット(第1U相スリット44-U1)の縁部44-U1aが、U相深溝対応巻胴部(第1インシュレータ歯部42-1)を外径側に仮想的に延長した延長領域A1よりも周方向の外側に位置するように設けられる。第1U相スリット44-U1の縁部44-U1aは、第1U相渡り線47-U1を下インシュレータ25に沿って引き回す方向において、延長領域A1の外側に設けられる。第1V相スリット44-V1、および第1W相スリット44-W1も、同様である。
【0071】
ここで、比較例として、U相最深スリットとしての第1U相スリット64-U1の全体が、U相深溝対応巻胴部である第1インシュレータ歯部42-1を外径側に仮想的に延長した延長領域A1の範囲内にあり、かつU相巻き線46-Uが直列結線によって結線される場合には、第1U相渡り線67-U1を保持する縁部64-U1aが、
図9に示すように、第1U相巻き線46-U1を外径側に仮想的に投影した投影領域A2に重なる。そのため、U相最深スリットである第1U相スリット64-U1の底部付近が第1U相巻き線46-U1によって塞がれてしまう。このとき、第1U相スリット64-U1における第1U相渡り線67-U1の引き出し位置が、ステータコア23の軸方向において、下インシュレータ25の先端側となる。すなわち、第1U相渡り線67-U1の引き出し位置が浅くなる。そのため、3相モータ6は、異なる相の渡り線間の距離が短くなり、異なる相の渡り線間の絶縁距離を保つことが困難となる。ここでの渡り線とは、導線においてインシュレータの外周面に這わされる部分を意味する。
図9は、比較例における第1U相巻き線46-U1の状態を示す図である。
【0072】
なお、軸方向における下インシュレータ25の長さを長くすることで、3相モータ6は、異なる相の渡り線間の絶縁距離を保つことが可能となる。しかし、この場合、軸方向における下インシュレータ25の長さが長くなるため、3相モータ6は、軸方向に長くなり、大型化する。
【0073】
これに対し、実施例の下インシュレータ25は、複数のスリット44のうち各相で最も深さが深いスリットである最深スリット44、例えば、第1U相スリット44-U1において、第1U相渡り線47-U1を保持する縁部44-U1aは、
図10に示すように、第1U相巻き線46-U1を外径側に仮想的に投影した投影領域A2に重ならないよう、投影領域A2の外側に設けられる。そのため、第1U相渡り線47-U1は、第1U相スリット44-U1の最も深い箇所から下インシュレータ25の外周側に引き出される。このとき、第1U相渡り線47-U1は、最深スリットである第1U相スリット44-U1の最も深い箇所(底)によって、軸方向におけるステータコア23(
図1参照)側への移動が規制される。
図10は、直列結線における第1U相巻き線46-U1と、下インシュレータ25とを径方向内側から見た場合の概略図である。第1V相スリット44-V1、および第1W相スリット44-W1も、同様である。
【0074】
また、第1U相スリット44-U1において第1U相渡り線47-U1を保持する縁部44-U1aは、第1U相渡り線47-U1を引き回す方向における第1U相巻き線46-U1の端よりも第1インシュレータ歯部42-1側に設けられる。これにより、第1U相巻き線46-U1の緩みが抑制される。第1V相スリット44-V1、および第1W相スリット44-W1も、同様である。
【0075】
3相モータ6は、円筒状のステータコア23と、ステータコア23の軸方向の端部に当接する円筒状の下インシュレータ25と、複数のコイル(U相巻き線46-U1~46-U3、V相巻き線46-V1~46-V3、W相巻き線46-W1~46-W3)とを備える。ステータコア23は、複数のティース(ステータコアティース部32-1~32-9)を有し、ティース数が3の倍数である。下インシュレータ25は、複数の巻胴部(インシュレータ歯部42-1~42-9)を有する。巻胴部(インシュレータ歯部42-1~42-9)は、ティース(ステータコアティース部32-1~32-9)と軸方向に対向する。コイル(U相巻き線46-U1~46-U3、V相巻き線46-V1~46-V3、W相巻き線46-W1~46-W3)は、対向するティース(ステータコアティース部32-1~32-9)と巻胴部(インシュレータ歯部42-1~42-9)とに巻かれる。複数のコイルのうち、同相の各コイル、例えば、第1U相巻き線46-U1と第2U相巻き線46-U2と第3U相巻き線46-U3とは、直列結線によって結線され、第1U相渡り線47-U1、および第2U相渡り線47-U2を含む一本の導線によって形成される。下インシュレータ25には、渡り線を通す複数のスリット44が形成される。複数のスリット44のうち、各相で最も深さが深いスリット44、例えば、第1U相スリット44-U1(最深スリット)は、少なくとも一部が、第1U相渡り線47-U1が引き出される第1U相巻き線46-U1(深溝対応コイル)が巻かれる第1インシュレータ歯部42-1(深溝対応巻胴部)を外径側に仮想的に延長した延長領域A1よりも周方向の外側に位置するように設けられる。
【0076】
これにより、例えば直列スター結線によって同相の巻き線26が接続される場合に、3相モータ6は、巻き線が巻かれた後からであっても、渡り線をスリット44の所定位置(スリットの底)から引き出すことができる。具体的には、3相モータ6は、例えば下インシュレータ25のU相における最深スリットである第1U相スリット44-U1において、第1U相巻き線46-U1が巻き回された後からであっても、渡り線が引き出される位置を所定位置(スリット44-U1aの最深位置)にすることができる。そのため、3相モータ6は、渡り線の数を減らしつつ、渡り線の引き回しを最深位置から開始することができる。このため、3相モータ6は、軸方向における下インシュレータ25の長さを長くしなくても、異なる位相間の渡り線の距離を軸方向に広げることができ、絶縁距離を保つことができる。すなわち、3相モータ6は、軸方向における下インシュレータ25の長さの増大を抑制しつつ、異なる位相間の渡り線の絶縁距離を保つことができる。
【0077】
各相で最も深さが深いスリット44、例えば、第1U相スリット44-U1において第1U相渡り線47-U1を保持する縁部44-U1aは、第1U相渡り線47-U1の引き回し方向(周方向において第1インシュレータ歯部42-1から離れる方向)において、第1インシュレータ歯部42-1を外径側に仮想的に延長した延長領域A1よりも外側に設けられる。
【0078】
これにより、3相モータ6は、第1U相渡り線47-U1の引き出し位置を深くすることができる。そのため、3相モータ6は、異なる位相間の渡り線の絶縁距離を保つと共に、軸方向における下インシュレータ25の長さの増大を抑制することができる。
【0079】
各相で最も深さが深いスリット44、例えば、第1U相スリット44-U1において第1U相渡り線47-U1を保持する縁部44-U1aは、第1U相渡り線47-U1が引き出される第1U相巻き線46-U1を外径側に仮想的に投影した投影領域A2に重ならないよう、投影領域A2の外側に設けられる。
【0080】
これにより、最深スリットである第1U相スリット44-U1において、第1U相渡り線47-U1を保持する縁部44-U1aは、第1U相巻き線46-U1によって塞がれずにすむ。そのため、第1U相渡り線47-U1は、第1U相スリット44-U1の最も深い箇所から下インシュレータ25の外周側に引き出される。そのため、3相モータ6は、第1U相渡り線47-U1の引き出し位置を深くすることができ、異なる位相間の渡り線の絶縁距離を保つと共に、軸方向における下インシュレータ25の長さの増大を抑制することができる。また、3相モータ6は、第1U相渡り線47-U1が、軸方向におけるステータコア23側に移動することを防止することができる。
【0081】
複数の巻き線26は、第1U相巻き線46-U1~第3U相巻き線46-U3、第1V相巻き線46-V1~第3V相巻き線46-V3、および第1W相巻き線46-W1~第3W相巻き線46-W3の9つの巻き線を有する。同相の3つの巻き線が、直列結線によって結線される場合、例えば、U相巻き線46-Uは、第1U相渡り線47-U1と、第2U相渡り線47-U2とを含む。第1U相渡り線47-U1は、第1ステータコアティース部32-1に巻かれる第1U相巻き線46-U1と、第4ステータコアティース部32-4に巻かれる第2U相巻き線46-U2とを接続する。第2U相渡り線47-U2は、第2U相巻き線46-U2と、第7ステータコアティース部32-7に巻かれる第3U相巻き線46-U3とを接続する。直列結線の場合、同相の巻き線は、2つの渡り線によって、3つの巻き線を接続する。
【0082】
直列スター結線の場合、例えば、導線が第1ステータコアティース部32-1に巻かれずに、第1U相スリット44-U1を通る渡り線によって第4ステータコアティース部32-4まで引き回され、まず第4ステータコアティース部32-4に巻かれて、U相巻き線46-Uが形成されることも考えられる。
【0083】
しかし、この場合、同相の3つの巻き線は、3つの渡り線によって接続されることとなる。すなわち、ティース数が3N(N:自然数)の3相の電動機において、各相の渡り線の数がNとなる。そのため、異なる相の渡り線間の絶縁距離を保つためには、下インシュレータ25の軸方向における長さを長くする必要がある。従って、3相モータ6は、軸方向の長さが長くなる。また、3相の各相について、N箇所ずつ渡り線を形成する必要があり、巻き線の工数が増加する問題もある。
【0084】
これに対し、実施例の3相モータ6では、直列結線の場合、同相の3つのコイル(例えば、第1U相巻き線46-U1、第2U相巻き線46-U2、および第3U相巻き線46-U3)は、2つの渡り線(例えば、第1U相渡り線47-U1、第2U相渡り線47-U2)によって接続される。すなわち、ティース数が3N(N:自然数)の3相のモータ6において、各相の渡り線の数がN-1となる。これにより、3相モータ6は、渡り線の数を少なくすることができる。そのため、3相モータ6は、軸方向における下インシュレータ25の長さの増大を抑制しつつ、異なる相の渡り線間の絶縁距離を保つことができる。さらに、3相の各相について、形成する渡り線がN-1箇所ずつで済むため、巻き線の工数を削減できる。
【0085】
下インシュレータ25には、直列結線における渡り線が通る直列結線用スリットと、並列結線における渡り線が通る並列結線用スリットと、直列結線、および並列結線における渡り線が通る併用スリットとが形成される。本実施例では、各相における最深スリット44-U1、44-V1、44-W1が、併用スリットである。
【0086】
これにより、結線方法によらず、共通の下インシュレータ25が用いられる。そのため、3相モータ6は、コストを削減することができる。
【0087】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
1 圧縮機
6 3相モータ(3相の電動機)
23 ステータコア(固定子鉄心)
25 下インシュレータ(インシュレータ)
26 巻き線(コイル)
32-1~32-9 ステータコアティース部(ティース)
42-1~42-9 インシュレータ歯部(巻胴部)
42-1 第1インシュレータ歯部(深溝対応巻胴部)
43-1~43-9 鍔部
44 スリット
44-U1a 縁部
46-U U相巻き線
46-U1 第1U相巻き線(第1コイル、深溝対応コイル)
46-U2 第2U相巻き線(第4コイル)
46-U3 第3U相巻き線(第7コイル)
46-V V相巻き線
46-W W相巻き線
47-U1 第1U相渡り線
47-U2 第2U相渡り線
47-V1 第1V相渡り線
47-V2 第2V相渡り線
47-W1 第1W相渡り線
47-W2 第2W相渡り線
44-U1 第1U相スリット(最深スリット、併用スリット)
44-U2 第2U相スリット(併用スリット)
44-U3 第3U相スリット(直列結線用スリット)
44-U4 第4U相スリット(直列結線用スリット)
44-U5 第5U相スリット(並列結線用スリット)
44-U6 第6U相スリット(並列結線用スリット)
44-V1 第1V相スリット(最深スリット、併用スリット)
44-W1 第1W相スリット(最深スリット、併用スリット)
【手続補正書】
【提出日】2022-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の電動機であって、
円筒状の固定子鉄心と、
前記固定子鉄心の軸方向の端部に当接する円筒状のインシュレータと、
複数のコイルと、を備え、
前記固定子鉄心は、複数のティースを有するとともに、ティース数が3の倍数であり、
前記インシュレータは、複数の巻胴部を有し、
前記巻胴部は前記ティースと軸方向に対向し、
前記コイルは、対向する前記ティースと前記巻胴部とに巻かれており、
前記複数のコイルのうち、同相の各コイルは、直列結線によって結線され、渡り線を含む1本の導線によって形成され、
前記インシュレータには、前記渡り線を通す複数のスリットが形成され、
前記複数のスリットのうち最も深さが深いスリットを最深スリットとし、前記最深スリットを通る前記渡り線が引き出されるコイルを深溝対応コイルとし、前記深溝対応コイルが巻かれる前記巻胴部を深溝対応巻胴部としたとき、前記最深スリットは、同最深スリットの少なくとも一部が、前記深溝対応巻胴部を外径側に仮想的に延長した延長領域よりも周方向の外側に位置するように設けられ、
前記最深スリットにおいて前記渡り線を保持する縁部は、前記渡り線が引き回される方向における前記深溝対応コイルの端よりも、前記深溝対応巻胴部側に設けられる、電動機。
【請求項2】
前記最深スリットにおいて前記渡り線を保持する縁部は、前記渡り線の引き回し方向において前記延長領域の外側に設けられる、請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記最深スリットにおいて前記渡り線を保持する縁部は、前記渡り線が引き出される前記深溝対応コイルを外径側に仮想的に投影した投影領域の外側に設けられる、請求項1または2に記載の電動機。
【請求項4】
前記最深スリットの底は、前記軸方向において、前記深溝対応コイルの先端よりも前記固定子鉄心側に設けられる、請求項1~3のいずれか1つに記載の電動機。
【請求項5】
前記複数のコイルは、9つのコイルを有し、
前記9つのコイルが周方向の並び順に第1コイルから第9コイルとされた場合、第1コイル、第4コイル、および第7コイルを形成する導線は、
前記第1コイルと前記第4コイルとを接続する第1渡り線と、
前記第4コイルと前記第7コイルとを接続する第2渡り線と、を含む、請求項1~4のいずれか1つに記載の電動機。
【請求項6】
前記インシュレータには、
前記直列結線における前記渡り線が通る直列結線用スリットと、
並列結線における前記渡り線が通る並列結線用スリットと、
前記直列結線、および前記並列結線における前記渡り線が通る併用スリットと、が形成される、請求項1~5のいずれか1つに記載の電動機。
【請求項7】
前記最深スリットは、前記併用スリットである、請求項6に記載の電動機。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の電動機と、
前記電動機によって駆動される圧縮部と、を備える圧縮機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本願の開示する電動機の一態様は、3相の電動機であって、円筒状の固定子鉄心と、円筒状のインシュレータと、複数のコイルと、を備える。固定子鉄心は、複数のティースを有するとともに、ティース数が3の倍数である。インシュレータは、複数のティースに対向する複数の巻胴部を有し、固定子鉄心の軸方向の端部に当接して設けられる。複数のコイルは、ティース、および巻胴部に巻かれる。複数のコイルのうち、同相の各コイルは、直列結線によって結線され、渡り線を含む1本の導線によって形成される。インシュレータには、渡り線を通す複数のスリットが形成される。複数のスリットのうち、最も深さが深いスリットを最深スリットとし、最深スリットを通る渡り線が引き出されるコイルを深溝対応コイルとし、深溝対応コイルが巻かれる巻胴部を深溝対応巻胴部としたとき、最深スリットは、同最深スリットの少なくとも一部が、深溝対応巻胴部を外径側に仮想的に延長した延長領域よりも周方向の外側に位置するように設けられる。最深スリットにおいて渡り線を保持する縁部は、渡り線が引き回される方向における深溝対応コイルの端よりも、深溝対応巻胴部側に設けられる。