(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146594
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】電気炉タップホールれんがの補修構造及び補修方法
(51)【国際特許分類】
F27D 1/16 20060101AFI20220928BHJP
F27B 3/19 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F27D1/16 F
F27D1/16 W
F27B3/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047637
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】595131374
【氏名又は名称】大阪製鐵株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000253226
【氏名又は名称】濱田重工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 栄一
(72)【発明者】
【氏名】南 誠
(72)【発明者】
【氏名】河野 敏則
(72)【発明者】
【氏名】川野 慎也
(72)【発明者】
【氏名】寺本 恵
(72)【発明者】
【氏名】吉光 洋幸
【テーマコード(参考)】
4K045
4K051
【Fターム(参考)】
4K045AA04
4K045BA02
4K045DA09
4K045RA09
4K045RA19
4K045RC12
4K051AA05
4K051AB05
4K051LC01
4K051LC06
4K051LJ01
(57)【要約】
【課題】タップホールれんがの補修材が剥離しにくい、電気炉タップホールれんがの補修構造及び補修方法を提供する。
【解決手段】補修構造2は、タップホールれんが14の内周壁と対向するように配置された鉄管21と、鉄管21の外周面とタップホールれんが14の内周壁との間に配置されたキャスタブル施工体22とを備える。キャスタブル施工体22は粗粒を含み、かつ30mm以上の厚さを有する。補修方法は、タップホールれんが14の内周側に鉄管21を挿入し、タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間に30mm以上の隙間を確保して粗粒を含むキャスタブル材を流し込む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気炉の炉底部のタップホールの内周に配置されたタップホールれんがの補修構造であって、
前記タップホールれんがの内周壁と対向するように配置された鉄管と、
前記鉄管の外周面と前記タップホールれんがの内周壁との間に配置されたキャスタブル施工体とを備え、
前記キャスタブル施工体は粗粒を含み、かつ30mm以上の厚さを有する、電気炉タップホールれんがの補修構造。
【請求項2】
前記キャスタブル施工体は、アルミナの粗粒とマグネシアの微粒とを含み、前記アルミナの粗粒の最大粒子径は5mm以上である、請求項1に記載の電気炉タップホールれんがの補修構造。
【請求項3】
電気炉の炉底部のタップホールの内周に配置されたタップホールれんがの補修方法であって、
前記タップホールの下端部に受冶具を設置する第1工程と、
前記タップホールれんがの上端側から前記タップホールれんがの内周側に鉄管を挿入し、前記タップホールれんがの内周壁と前記鉄管の外周面との間に30mm以上の隙間を設けて前記受冶具に前記鉄管を載置する第2工程と、
前記タップホールれんがの内周壁と前記鉄管の外周面との間の隙間に粗粒を含むキャスタブル材を流し込む第3工程と、
前記キャスタブル材の硬化後に前記受冶具を取り外す第4工程と、を含む、
電気炉タップホールれんがの補修方法。
【請求項4】
前記受冶具は位置決め部を有し、
前記第2工程では、前記鉄管の内側に前記位置決め部を挿入して前記鉄管を前記受冶具に載置することで、前記タップホールれんがの内周壁と前記鉄管の外周面との間に前記隙間を形成する、請求項3に記載の電気炉タップホールれんがの補修方法。
【請求項5】
前記第1工程の前に、前記タップホールれんがの内周壁と前記鉄管の外周面との間の少なくとも一部に50mm以上の隙間ができるように前記タップホールれんがの内周壁を切削する工程を含む、請求項3又は4に記載の電気炉タップホールれんがの補修方法。
【請求項6】
前記タップホールから溶鋼を出鋼後、前記キャスタブル材の施工体であるキャスタブル施工体の下部から前記タップホールの内周側に向けて傾斜角度θが30~60°の間になるように斜めに切削する第5工程と、
前記タップホールの下端部に受冶具を設置する第6工程と、
前記キャスタブル施工体の上端側から前記キャスタブル施工体の内周側に鉄管を挿入し、前記キャスタブル施工体の内周壁と前記鉄管の外周面との間に30mm以上の隙間を設けて前記受冶具に前記鉄管を載置する第7工程と、
前記キャスタブル施工体の内周壁と前記鉄管の外周面との間の隙間に粗粒を含むキャスタブル材を流し込む第8工程と、
前記キャスタブル材の硬化後に前記受冶具を取り外す第9工程と、を含む
請求項3から5のいずれか一項に記載の電気炉タップホールれんがの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炉の炉底部のタップホールの内周に配置されたタップホールれんがの補修構造と補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気炉から溶鋼を取鍋に移す際、溶鋼は電気炉の炉底部のタップホールより出鋼される。タップホールの内周にはタップホールれんがが配置されており、タップホールれんがは溶鋼との接触により溶損する。そのため、所定回数使用するごとにタップホールれんがを交換する必要があった。
タップホールれんがの交換には時間がかかるため、特許文献1では、モルタルを補修材としてタップホールれんがの補修をして寿命を延長することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにモルタルを補修材としてタップホールれんがを補修した場合、出鋼時に溶鋼による摩擦や熱の影響によって補修材が剥離するという問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、タップホールれんがの補修材が剥離しにくい、電気炉タップホールれんがの補修構造及び補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、次の電気炉タップホールれんがの補修構造及び補修方法が提供される。
1.
電気炉の炉底部のタップホールの内周に配置されたタップホールれんがの補修構造であって、
前記タップホールれんがの内周壁と対向するように配置された鉄管と、
前記鉄管の外周面と前記タップホールれんがの内周壁との間に配置されたキャスタブル施工体とを備え、
前記キャスタブル施工体は粗粒を含み、かつ30mm以上の厚さを有する、電気炉タップホールれんがの補修構造。
2.
前記キャスタブル施工体は、アルミナの粗粒とマグネシアの微粒とを含み、前記アルミナの粗粒の最大粒子径は5mm以上である、前記1に記載の電気炉タップホールれんがの補修構造。
3.
電気炉の炉底部のタップホールの内周に配置されたタップホールれんがの補修方法であって、
前記タップホールの下端部に受冶具を設置する第1工程と、
前記タップホールれんがの上端側から前記タップホールれんがの内周側に鉄管を挿入し、前記タップホールれんがの内周壁と前記鉄管の外周面との間に30mm以上の隙間を設けて前記受冶具に前記鉄管を載置する第2工程と、
前記タップホールれんがの内周壁と前記鉄管の外周面との間の隙間に粗粒を含むキャスタブル材を流し込む第3工程と、
前記キャスタブル材の硬化後に前記受冶具を取り外す第4工程と、を含む、
電気炉タップホールれんがの補修方法。
4.
前記受冶具は位置決め部を有し、
前記第2工程では、前記鉄管の内側に前記位置決め部を挿入して前記鉄管を前記受冶具に載置することで、前記タップホールれんがの内周壁と前記鉄管の外周面との間に前記隙間を形成する、前記3に記載の電気炉タップホールれんがの補修方法。
5.
前記第1工程の前に、前記タップホールれんがの内周壁と前記鉄管の外周面との間に30mm以上の隙間ができるように前記タップホールれんがの内周壁を切削する工程を含む、前記3又4に記載の電気炉タップホールれんがの補修方法。
6.
前記タップホールから溶鋼を出鋼後、前記キャスタブル材の施工体であるキャスタブル施工体の下部から前記タップホールの内周側に向けて傾斜角度θが30~60°の間になるように斜めに切削する第5工程と、
前記タップホールの下端部に受冶具を設置する第6工程と、
前記キャスタブル施工体の上端側から前記キャスタブル施工体の内周側に鉄管を挿入し、前記キャスタブル施工体の内周壁と前記鉄管の外周面との間に30mm以上の隙間を設けて前記受冶具に前記鉄管を載置する第7工程と、
前記キャスタブル施工体の内周壁と前記鉄管の外周面との間の隙間に粗粒を含むキャスタブル材を流し込む第8工程と、
前記キャスタブル材の硬化後に前記受冶具を取り外す第9工程と、を含む
前記3から5のいずれか一項に記載の電気炉タップホールれんがの補修方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、タップホールれんがを補修したキャスタブル施工体が剥離しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本発明の一実施形態である電気炉タップホールれんがの補修構造の概念的な断面図。
【
図3】補修前の電気炉タップホールれんがを示す概念的な断面図。
【
図4】本発明の他の実施形態である電気炉タップホールれんがの補修方法の第1工程及び第2工程を示す概念的な断面図。
【
図6】電気炉タップホールれんがの補修方法の第3工程を示す概念的な断面図。
【
図7】電気炉タップホールれんがの補修方法の第5工程を示す概念的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に、電気炉の炉底部を断面により概念的に示している。
電気炉1の炉底部11の中央には炉底電極12が設置されている。そして、炉底部11の一端側に出鋼口としてタップホール13が設けられている。タップホール13の内周にはタップホールれんが14が円筒形状に配置されている。また、タップホール13の下端部には、タップホール開閉蓋15が設置されている。タップホール開閉蓋15は水平方向及び鉛直方向に移動可能である。
図1ではタップホール開閉蓋15がタップホール13の下端部を閉止している状態を示している。なお、
図1中、符号16は炉底耐火物、符号17は鉄皮である。
電気炉1から溶鋼を取鍋に移す際には、タップホール13のある一端側へ電気炉1を傾動させる。また、タップホール開閉蓋15を鉛直下方向に移動させた後に水平方向に移動させる。そうすると、電気炉1内の溶鋼はタップホール13より出鋼される。このとき、タップホールれんが14は溶鋼との接触により溶損する。タップホールれんが14の溶損に伴い、タップホール13が拡大する。そのため、タップホール13の補修が必要となる。
【0009】
図2に、本発明の一実施形態である電気炉タップホールれんがの補修構造(以下、単に「補修構造」という。)を断面により概念的に示している。
補修構造2は、タップホールれんが14の内周壁と対向するように配置された鉄管21と、鉄管21の外周面とタップホールれんが14の内周壁との間に配置されたキャスタブル施工体22とを備える。キャスタブル施工体22は、キャスタブル材の流し込み施工により得られるものであり、キャスタブル材及びキャスタブル施工体22は粗粒を含む。この点で、後述する比較例4及び比較例5で使用しているモルタルとは異なる。ここで、モルタルとは粗粒を含まず、骨材を構成する粒子の60~80%質量が75μm以下で、かつ最大粒子径が0.3~0.5mmの範囲に調整された微粉と結合剤と水などの溶媒とを練り混ぜて作るものである。
ここで、明細書において「粗粒」とは粒径3mm以上のものをいう。粗粒の粒径の上限は特に限定されず技術常識に基づくが、概ね8mm以下である。
【0010】
キャスタブル材は粗粒を含むことで、流し込み施工の際に空気が含まれにくく充填しやすい。また、乾燥中に施工体からガスが抜けやすくなるので、キャスタブル施工体22は組織が緻密になりやすい。そのため、剥離が起きにくい。
これに対して、モルタルは粗粒を含まないから、流し込み施工の際に空気が巻き込まれやすい。しかも乾燥中に施工体からガスが抜けにくいので、モルタル施工体は組織が緻密になりにくい。
【0011】
キャスタブル材及びキャスタブル施工体22の材質はアルミナ・マグネシア質であることが好ましい。具体的にはキャスタブル材及びキャスタブル施工体22は、アルミナの粗粒とマグネシアの微粒とを含み、かつアルミナの粗粒の最大粒子径は5mm以上であることが好ましい。このように、アルミナの粗粒とマグネシアの微粒を主成分として含むことで、乾燥時又は出鋼時にスピネルを生成してキャスタブル施工体22が膨張する。そのため、乾燥時又は出鋼時、キャスタブル施工体22に収縮による亀裂が入りにくくなり、剥離が起きにくくなる。例えば、1000℃乾燥後のアルミナ・マグネシア質のキャスタブル施工体22の気孔率は18~20%となり、組織がより緻密であるので剥離が起きにくい。ここで、本明細書において「微粒」とは粒径1mm未満のものをいう。
これに対してモルタル施工体は前述の通り組織が緻密になりにくい。しかも、モルタル施工体は乾燥時又は出鋼時に収縮する。そのため、モルタル施工体には乾燥時又は出鋼時に収縮による亀裂が入りやすく、剥離が起きやすい。なお、1000℃乾燥後のモルタル施工体の気孔率は25~30%となり、組織が粗いので剥離が起きやすい。
【0012】
キャスタブル材及びキャスタブル施工体22の材質はアルミナ・マグネシア質には限定されず、例えばアルミナ・シリカ質やマグネシア質とすることもできる。また、いずれの材質のおいても、耐火原料粉末のほかにアルミナセメント等の結合剤を適宜含有し、有機繊維、金属繊維等の繊維材を含有することもできる。
【0013】
キャスタブル施工体22は、30mm以上の厚さを有する。キャスタブル施工体22の厚さは、タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間の隙間に対応し、これはキャスタブル材を流し込み施工する際の施工幅に対応する。すなわち、キャスタブル施工体22の少なくとも一部が50mm以上の厚さを有するということは、タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間に30mm以上の施工幅があるということである。このように30mm以上の施工幅を確保してキャスタブル材を流し込むことで、キャスタブル材がタップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間に充填されやすくなる。この点からも、キャスタブル施工体22は組織が緻密になりやすい。そのため、剥離が起きにくい。
【0014】
キャスタブル材の平均施工幅、すなわちキャスタブル施工体22の平均厚さは30mm以上であることが好ましい。これは、キャスタブル施工体22の平均厚さが30mm未満である場合は、キャスタブル施工体22の強度が足りず剥離が起こりやすくなるためである。ここで、本明細書においてキャスタブル施工体22の平均厚さとは、タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間の隙間の総体積Vから算出するものをいう。具体的には、鉄管21の外径を内径r、施工高さをhとする仮想的な円筒体において、その円筒体の体積が前記隙間の総体積Vとなるときの外径Rを求める。そして、(R-r)/2をキャスタブル施工体22の平均厚さとする。
キャスタブル施工体22は粗粒を含むので表面付近に凹凸が発生することが通常であるから、その一部が部分的に30mm未満となることは許容される。
なお、一般的に鉄管21の外径は、タップホール13の初期径とする。タップホール13の初期径は、例えば180mm程度である。
【0015】
次に、本発明の他の実施形態である電気炉タップホールれんがの補修方法(以下、単に「補修方法」という。)について説明する。
図3に、補修前の電気炉タップホールれんがを断面により概念的に示してしている。なお、
図3では、タップホール13の初期径の位置を仮想的に一点鎖線で示している。同図に示すように、タップホール13の内周に配置されているタップホールれんが14は、溶鋼との接触により溶損する。その溶損はタップホールれんが14の下端部の出鋼口近傍で特に大きくなる。このようなタップホールれんが14の溶損に伴い、タップホール13が拡大する。本実施形態では、タップホール13が初期径より概ね100mm程度大きくなった時に補修を行う。以下、本実施形態の補修方法の各工程について説明する。
【0016】
<第1工程>
タップホール13の下端部に受冶具を設置する。具体的には
図4に概念的に示しているように、タップホール開閉蓋15とタップホール13の下端部との間に受冶具3を挟んで支持する。
【0017】
<第2工程>
タップホールれんが14の上端側からタップホールれんが14の内周側に鉄管21を挿入する。このとき
図4に概念的に示すように、タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間に30mm以上の隙間を設けるようにして受冶具3に鉄管21を載置する。
本実施形態において受冶具3は
図5に示すように、基板部31、位置決め部32及び側壁部33を有する。位置決め部32は基板部31の中央部に円形凸状に設けられている。そして、この円形凸状の位置決め部32の下端の外径は、鉄管21の内径と略同じになっている。
本実施形態の第2工程では、鉄管21の内側に位置決め部32を挿入して鉄管21を受冶具3に載置する。これにより、鉄管21をタップホール13の中央部に位置決めすることができると共に、タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間に30mm以上の隙間を形成することができる。またこのとき、側壁部33の内周面をタップホール13の鉄皮17の外周面に当接させることで、タップホール13に対する受冶具3の位置決めを行うことができる。
側壁部33には切欠き331が円周方向に等間隔で3箇所に設けられている。これらの切欠き331は受冶具3と鉄皮17との間に隙間がないか確認するために設けられている。
なお、本実施形態においてタップホールれんが14の内周側に鉄管21を挿入するだけでは、タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間に30mm以上の隙間を設けることができない場合、前記第1工程の前に、タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間に30mm以上の隙間ができるように、タップホールれんが14の内周壁を切削する。
【0018】
<第3工程>
タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間の隙間に粗粒を含むキャスタブル材を流し込む。本実施形態では、タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間に30mm以上の隙間があるから、キャスタブル材がタップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間に充填されやすい。また、キャスタブル材は粗粒を含むから、流し込み施工の際に空気が含まれにくく充填しやすい。
さらに本実施形態では、タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間に30mm以上の隙間があるから、例えば
図6に示すように、タップホールれんが14の内周壁と鉄管21の外周面との間の隙間にバイブレーター4の先端部を挿入することもできる。このようにバイブレーター4の先端部を挿入して振動をかけながらキャスタブル材Cを流し込むことで、キャスタブル材Cがさらに充填されやすくなる。
なお、流し込み施工の際、鉄管21の上端部は、
図6に示すようにキャップ5で覆うこともできる。
【0019】
<第4工程>
キャスタブル材Cの硬化後に受冶具3及びキャップ5を取り外す。これにより、
図2に示したような補修構造2が得られる。すなわち、第4工程までで1回目の補修が完了する。
【0020】
<第5工程>
1回目の補修完了後、タップホール13から溶鋼を出鋼する。補修後のタップホール13から溶鋼を出鋼すると、その補修構造2において鉄管21は溶融して消失し、その後はキャスタブル施工体22が溶鋼と接触する。そして、キャスタブル施工体22は溶鋼との接触により溶損する。そこで、本実施形態では2回目の補修を実施する。
2回目の補修では、第5工程として
図7に示すように、キャスタブル施工体22の下部を切削する。具体的には、元々配置されているタップホールれんが14から10mm程度離れた位置にあるキャスタブル施工体22を下端部からタップホール13の内周側に向けて斜めに切削する。斜めに切削する際の傾斜角度θは30~60°程度が適当である。
【0021】
<第6工程>
第6工程では、前述の第1工程と同様に、タップホール13の下端部に受冶具3を設置する。
【0022】
<第7工程>
第7工程では、前述の第2工程と同様に、キャスタブル施工体22の上端側からキャスタブル施工体22の内周側に鉄管21を挿入し、キャスタブル施工体22の内周壁と鉄管21の外周面との間に30mm以上の隙間を設けて受冶具5に鉄管21を載置する。なお、この第7工程を実施する際、タップホールれんが14の内周側の少なくとも一部には1回目の補修によるキャスタブル施工体22が残存しているので、キャスタブル施工体22の内周側に鉄管21を挿入することになる。
【0023】
<第8工程>
第8工程では、前述の第3工程と同様に、キャスタブル施工体22の内周壁と鉄管21の外周面との間の隙間に第2の粗粒を含むキャスタブル材を流し込む。この第8工程で使用する第2のキャスタブル材は、前述の第3工程で使用したキャスタブル材と同じ材質とすることができる。
【0024】
<第9工程>
第9工程では、前述の第4工程と同様に、第2のキャスタブル材の硬化後に受冶具3及びキャップ5を取り外す。これにより2回目の補修が完了する。なお、3回目以降の補修は、前述の第5~第9工程を繰り返すことで実施することができる。このように第5~第9工程を繰り返すことで、タップホールれんが14の交換を行うことなく、電気炉を使用し続けることができる。
【0025】
本実施形態では2回目以降の補修において、第5工程としてキャスタブル施工体22の下部を切削する。2回目以降の補修においてキャスタブル施工体22の下部を切削しないと、第8工程で新たに施工するキャスタブル施工体の下端部が剥離する現象が起きやすくなる。言い換えれば、第5工程としてキャスタブル施工体22の下部を切削することにより、第8工程で新たに施工するキャスタブル施工体の下端部が剥離することを抑制できる。これは、第5工程としてキャスタブル施工体22の下部を切削することにより、第8工程で新たに施工するキャスタブル施工体の下端部の厚さを増大させることができるからである。
【実施例0026】
表1に、本発明の実施例及び比較例を示している。
実施例及び比較例では、それぞれタップホールれんがの内周壁と鉄管の外周面との間に表1中「施工体の平均厚さ」に相当する隙間を設けて、表1中「耐火原料」に「添加水分量」に相当する水分を添加した材料を流し込み施工して1回目の補修を実施した。1回目の補修を実施した後50~60回の出鋼を実施し、50~60回の出鋼後に、タップホールの中間部及び下端部を目視観察し、施工体の剥離の程度を評価した。具体的には、剥離がない場合を◎(良)、小さな剥離がある場合を〇(可)、大きな剥離がある場合を×(不可)とした。
【0027】
【0028】
実施例1~5は、いずれも粗粒を含むキャスタブル材を施工したものであり、そのキャスタブル施工体の平均厚さは30mm以上である。50~60回の出鋼後の施工体の剥離の程度は◎(良)又は〇(可)であり良好であった。このうち、実施例1~3は、アルミナの粗粒とマグネシアの微粒とを含み、アルミナの粗粒の最大粒子径が5mm以上であるキャスタブル材を施工したものであり、50~60回の出鋼後の施工体の剥離の程度は◎(良)であり特に良好であった。
【0029】
比較例1~3は、粗粒を含むキャスタブル材を施工したものであるが、そのキャスタブル施工体の平均厚さが10~20mmである。50~60回の出鋼後の施工体の剥離の程度は×(不可)になった。
比較例4、5は、粗粒を含まないモルタルを施工したものである。施工体の平均厚さは50~60mmであるが、50~60回の出鋼後の施工体の剥離の程度は×(不可)になった。