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特開2022-146624拡散反射体およびそれを用いた発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146624
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】拡散反射体およびそれを用いた発光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20220928BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02B5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047682
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】菊地 俊光
(72)【発明者】
【氏名】傳井 美史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 誉史
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA03
2H042BA18
2H042BA20
2H042DA02
2H042DA04
(57)【要約】
【課題】高出力の光源であっても、光の拡散性に優れ、光源からの照射により発生する熱に対する耐熱性を向上することができ、光源の高出力化および装置の小型化に寄与することができる拡散反射体およびそれを用いた発光装置を提供する。
【解決手段】拡散反射体10であって、アルミニウム、銀、またはこれらの少なくとも1つを含む合金により構成される反射層20と、前記反射層20上に形成され、結晶性を有する無機粒子31および前記無機粒子31同士を結合する非結晶性の透光性セラミックス32からなる、入射する光を拡散する拡散反射層30と、を備えることを特徴としている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散反射体であって、
アルミニウム、銀、またはこれらの少なくとも1つを含む合金により構成される反射層と、
前記反射層上に形成され、結晶性を有する無機粒子および前記無機粒子同士を結合する非結晶性の透光性セラミックスからなる、入射する光を拡散する拡散反射層と、を備え、
400nm以上800nm以下の波長範囲の入射光に対し、拡散反射率の平均値が75%以上、正反射率の平均値が1%以下であることを特徴とする拡散反射体。
【請求項2】
拡散反射体であって、
アルミニウム、銀、またはこれらの少なくとも1つを含む合金により構成される反射層と、
前記反射層上に形成され、結晶性を有する無機粒子および前記無機粒子同士を結合する非結晶性の透光性セラミックスからなる入射する光を拡散する拡散反射層と、を備え、
前記無機粒子は、酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、およびこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする拡散反射体。
【請求項3】
前記無機粒子は、酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、およびこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1に記載の拡散反射体。
【請求項4】
前記無機粒子の平均粒子径は2μm以下であり、
前記無機粒子の結晶化度は70%以上98%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の拡散反射体。
【請求項5】
前記拡散反射層の気孔率は、5%以上40%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の拡散反射体。
【請求項6】
前記拡散反射層の厚みは、20μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の拡散反射体。
【請求項7】
前記拡散反射層の表面粗さRaは、0.2μm以上1.6μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の拡散反射体。
【請求項8】
発光装置であって、
特定範囲の波長の光を発する発光素子と、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の拡散反射体と、を備えることを特徴とする発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散反射体およびそれを用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や照明装置といった発光装置において、光源からの光をより広範囲に照射させるため、光源近傍に拡散板を配置する方法が知られている。拡散板には、透過型と反射型があり、反射型の拡散板を拡散反射体という。
【0003】
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の透明樹脂中に酸化アルミニウムからなる無機粒子を散乱剤として分散させた光散乱層が反射層上に形成された拡散反射体が開示されている。
【0004】
特許文献2には、白色のセラミックスから構成される発光素子収容パッケージについて記載されており、パッケージの内壁を拡散反射体として使用する旨が開示されている。なお、特許文献1および2では、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を光源として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-250802号公報
【特許文献2】特開2004-207678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、エネルギー効率が高く、小型化、高出力化に対応しやすいレーザダイオード(LD:Laser Diode)を光源としたアプリケーションが増えている。LDはスペクトル幅が狭い単一の波長であり、指向性の高い光を照射することができる特徴を持つ一方、広範囲に均一な光度を要する用途にはあまり向いていない。
【0007】
特許文献1に記載の拡散反射体では、光源にLDを用いた場合、光散乱層が樹脂により構成されるため、使用時の発熱により変色や破損してしまう虞がある。また、特許文献2に記載の拡散反射体は、セラミックス焼結体を用いているため、樹脂と比較して耐熱性に優れる。しかしながら、入射光の一部が焼結体内に吸収されたり、入射面と反対側の面から透過したりすることで、ロスが生じてしまう。また、長時間の使用においては、蓄熱により発生する熱応力によって、破損してしまう虞がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高出力の光源であっても、光の拡散性に優れ、光源からの照射により発生する熱に対する耐熱性を向上することができ、光源の高出力化および装置の小型化に寄与することができる拡散反射体およびそれを用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の拡散反射体は、拡散反射体であって、アルミニウム、銀、またはこれらの少なくとも1つを含む合金により構成される反射層と、前記反射層上に形成され、結晶性を有する無機粒子および前記無機粒子同士を結合する非結晶性の透光性セラミックスからなる、入射する光を拡散する拡散反射層と、を備え、400nm以上800nm以下の波長範囲の入射光に対し、拡散反射率の平均値が75%以上、正反射率の平均値が1%以下であることを特徴としている。
【0010】
このように、アルミニウム、銀、またはこれらの少なくとも1つを含む合金により構成される反射層と、反射層上に形成され、結晶性を有する無機粒子および無機粒子同士を結合する非結晶性の透光性セラミックスからなる、入射する光を拡散する拡散反射層と、を備えることで、拡散反射層で入射光や反射光が拡散反射をすることができ、入射光に対して正反射する光の強度を低減でき、高出力の光源を使用してもスポットや色ムラが生じにくくなる。また、反射層の表面に形成される拡散反射層が、無機微粒子と透光性セラミックスにより形成されることにより、光源(特にLD)からの照射により発生する熱に対する耐熱性を向上することができ、光源の高出力化および発光装置の小型化に寄与することができる。
【0011】
また、400nm以上800nm以下の波長範囲の入射光に対し、拡散反射率の平均値が75%以上、正反射率の平均値が1%以下であることから、400nm以上800nm以下の波長範囲における光を効率よく拡散反射させることができ、高出力の光源を使用してもスポットや色ムラがより生じにくくなる。
【0012】
(2)また、本発明の拡散反射体は、拡散反射体であって、アルミニウム、銀、またはこれらの少なくとも1つを含む合金により構成される反射層と、前記反射層上に形成され、結晶性を有する無機粒子および前記無機粒子同士を結合する非結晶性の透光性セラミックスからなる入射する光を拡散する拡散反射層と、を備え、前記無機粒子は、酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、およびこれらの組み合わせから選択されることを特徴としている。
【0013】
このように、アルミニウム、銀、またはこれらの少なくとも1つを含む合金により構成される反射層と、反射層上に形成され、結晶性を有する無機粒子および無機粒子同士を結合する非結晶性の透光性セラミックスからなる、入射する光を拡散する拡散反射層と、を備えることで、拡散反射層で入射光や反射光が拡散反射をすることができ、入射光に対して正反射する光の強度を低減でき、高出力の光源を使用してもスポットや色ムラが生じにくくなる。また、反射層の表面に形成される拡散反射層が、無機微粒子と透光性セラミックスにより形成されることにより、光源(特にLD)からの照射により発生する熱に対する耐熱性を向上することができ、光源の高出力化および発光装置の小型化に寄与することができる。
【0014】
また、可視光波長域における吸光度が低い酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、およびこれらの組み合わせを無機微粒子として使用することで、光のロスを押さえることができ、拡散反射率を高くすることができる。
【0015】
(3)また、本発明の拡散反射体において、前記無機粒子は、酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、およびこれらの組み合わせから選択されることを特徴としている。
【0016】
このように、可視光波長域における吸光度が低い酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、およびこれらの組み合わせを無機微粒子として使用することで、光のロスを押さえることができ、拡散反射率を高くすることができる。
【0017】
(4)また、本発明の拡散反射体において、前記無機粒子の平均粒子径は2μm以下であり、前記無機粒子の結晶化度は70%以上98%以下であることを特徴としている。
【0018】
このように、無機微粒子の平均粒子径を2μm以下、結晶化度を70%以上98%以下とすることで、光源からの光を効率よく拡散反射させることができ、拡散反射率を高くすることができる。
【0019】
(5)また、本発明の拡散反射体において、前記拡散反射層の気孔率は、5%以上40%以下であることを特徴としている。
【0020】
このように、拡散反射層の気孔率を、5%以上40%以下とすることで、拡散性が向上し、反射により得られた光を広い視野に照射させることができる。また、気孔率を40%以下とすることで、拡散反射層の強度が高く、物理的損傷の虞を低減することができる。
【0021】
(6)また、本発明の拡散反射体において、前記拡散反射層の厚みは、20μm以上40μm以下であることを特徴としている。
【0022】
このように、前記拡散反射層の厚みを、20μm以上40μm以下とすることで、十分な拡散反射を得るために必要な厚みを持たせると共に、蓄熱による特性低下が生じる虞を低減でき、拡散反射層内で光が効率よく散乱し、スポットや色ムラの生じにくい反射光を得ることができる。
【0023】
(7)また、本発明の拡散反射体において、前記拡散反射層の表面粗さRaは、0.2μm以上1.6μm以下であることを特徴としている。
【0024】
このように、前記拡散反射層の表面粗さRaを、0.2μm以上1.6μm以下とすることで、入射した光をより散乱させることができ、拡散反射率に優れた拡散反射体とすることができる。
【0025】
(8)また、本発明の発光装置は、発光装置であって、特定範囲の波長の光を発する発光素子と、上記(1)から(7)のいずれかに記載の拡散反射体と、を備えることを特徴としている。
【0026】
このように、特定範囲の波長の光を発する発光素子と、上記(1)から(7)のいずれかに記載の拡散反射体と、を備えることで、高出力の光源を使用してもスポットや色ムラが生じにくい拡散反射体を備えた発光装置とすることができ、光の拡散性に優れた発光装置を構成することができる。特に、レーザダイオードのような指向性が高く、高出力な光源を用いる用途に好適に使用でき、光の拡散性、耐熱性に優れた発光装置とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高出力の光源であっても、光の拡散性に優れ、光源からの照射により発生する熱に対する耐熱性を向上することができ、光源の高出力化および装置の小型化に寄与することができる拡散反射体およびそれを用いた発光装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る拡散反射体の断面構造の一例を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る拡散反射体の断面構造の変形例を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る発光装置の一例の一部を表す概念図である。
図4】本発明の実施形態に係る拡散反射体の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図5】拡散反射体に対する照射像試験のための評価システムを示す模式図である。
図6】各試料における各種測定結果を表す表である。
図7】試料1および試料11について、波長域を横軸に取ったときの全反射率および拡散反射率を表すグラフである。
図8】試料1における照射像を示す図である。
図9】試料11における照射像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0030】
[拡散反射体の構成]
【0031】
図1は、本実施形態に係る拡散反射体の断面構造の一例を示す断面図である。本実施形態の拡散反射体10は、可視光の波長域において優れた正反射率を有する反射層20と、入射または反射する光を拡散する拡散反射層30とを備え、拡散反射層30へ入射する光源光を反射する、反射型の拡散反射体10である。拡散反射体10は、可視光の波長域である400nm以上800nm以下の波長範囲の入射光に対し、拡散反射率の平均値が75%以上、正反射率の平均値が1%以下であることが好ましい。拡散反射率の平均値が75%以上であることで、入射光を拡散反射させるときのロスを低減できる。また、正反射率の平均値が1%以下であることで、スポットの発生を抑えることができる。スポットとは、光源光と同程度の径の周囲の拡散光より明度の高い領域である。
【0032】
反射層20は、拡散反射層30側の表面にて、400nm以上800nm以下の波長域において優れた反射率を有する。反射層20は、アルミニウム、銀、またはこれらの少なくとも1つを含む合金により構成される。アルミニウムと銀は、400nm以上800nm以下の波長域における反射率が高いため、拡散反射層30から入射した光を透過または吸収されることが抑制される。これにより、光源からの光量を維持しつつ、拡散光として、照射することを可能にする。また、反射層20の拡散反射層30側の表面は滑らかであることが好ましく、表面粗さRaが0.2μm以下であることが好ましい。
【0033】
反射層20は、拡散反射層30側の表面において、高い反射性を有していればよく、1層であってもよいし、複数の層から構成されてもよい。以下では、基材21と反射膜22とから構成される場合について説明する。
【0034】
反射層20は、基材21と反射膜22とから構成されてもよい。基材21は、金属製の板状部材である。基材21の形状は、発光装置40に適用可能な形状であればよく、円形状、矩形状、楕円形状、多角形状など様々な形状であってよい。また、基材21の材料は、反射膜22が形成可能であり、放熱性に優れた部材であればよく、例えば、アルミニウムや銅、これらを主原料とした合金などを用いることができるが、アルミニウムであることが好ましい。アルミニウムから構成される基材21は、放熱性に優れ、コストを抑えることができる。基材21の材料が放熱性に優れた材料から構成されるから、耐熱性を向上可能であり、LDのような高出力の光源であっても、広範囲に拡散した光を照射可能である。
【0035】
反射膜22は、400nm以上800nm以下の波長域において優れた反射率を有する膜であり、基材21の表面上に形成される。反射膜22は、メッキや蒸着によって形成される。反射膜22は、アルミニウム、銀、またはこれらの少なくとも1つを含む合金により構成されることが好ましい。
【0036】
なお、上述した通り、図2に示されるように、反射層20は1層であってもよく、必ずしも反射膜22が形成される必要はない。図2は、本実施形態に係る拡散反射体の断面構造の変形例を示す断面図である。このとき、反射層20は、400nm以上800nm以下の波長域において高い反射率を有する材料から形成され、具体的には、アルミニウム、銀、またはこれらの少なくとも1つを含む合金により構成される。
【0037】
拡散反射層30は、反射層20上に形成され、入射する光を拡散する。拡散反射層30は、結晶性を有する無機粒子31と、無機粒子31同士を結合する非結晶性の透光性セラミックス32とから構成される。また、透光性セラミックス32に対する無機粒子31の体積比は、1.5倍以上10倍以下であることが好ましい。
【0038】
拡散反射層30の厚みは、20μm以上40μm以下であることが好ましく、25μm以上35μm以下であることがより好ましい。拡散反射層30の厚みが20μm以上であるから、散乱光を得るために十分な厚みを有している。一方、拡散反射層30の厚みが40μm以下であるから、蓄熱によって特性低下や変色、変形の虞を抑制できる。さらに、拡散反射層30の厚みが40μm以下であるから、表面が均一化され、表面粗さRaが小さくなりすぎることを抑えられ、拡散反射層30表面における正反射率の増加を抑制できる。
【0039】
拡散反射層30の表面粗さRaは、0.2μm以上1.6μm以下であることが好ましい。表面粗さRaが0.2μm以上であるから、拡散反射層30の表面における正反射成分を抑えられ、拡散反射体10から照射される光の色ムラやスポットが生じにくくなる。一方、1.6μm以下であるから、表面の粗さに起因した不均一な反射を抑制でき、色ムラの発生を抑制できる。
【0040】
拡散反射層30の気孔率は、5%以上40%以下であることが好ましい。拡散反射層30の気孔率が5%以上であるから、拡散反射層30が有する光拡散性を向上でき、より広範囲に反射光を照射することができる。これは、拡散反射層30を構成する無機粒子31や透光性セラミックス32と、拡散反射層30に含まれる気孔における屈折率に差があるため、その界面において散乱が生じるためである。一方、気孔率が40%以下であるから、光の拡散性を向上させながら拡散反射層30の機械的強度を確保できる。また、気孔率が大きすぎる場合、実効的な拡散反射層の厚みが小さくなるため、反射率低下の要因となる。気孔径については、平均値が2μm以下であることが望ましい。これにより、拡散反射層30の内部に細かな気孔が分散し、拡散反射層30における光の散乱性を向上可能である。
【0041】
拡散反射層30の気孔率や気孔径は、後述する無機バインダの配合比率や原料ペーストの混合時間によって、調整される。原料ペーストは、拡散反射層30を塗布する前の状態を指す。気孔率は、例えば、無機バインダにおいて、原料の固形分比率を小さくしたり、原料ペーストの混合時間を短くしたりすることによって、高くなる傾向にある。また、気孔径は、例えば、無機バインダと原料ペーストの混合時間や混合のタイミングを変えることで変化する。
【0042】
拡散反射層30は、無機粒子31、透光性セラミックス32、および気孔において、互いに異なる屈折率を有する材料の境界面にて散乱が生じることで、優れた光拡散性が得られる。そのため、無機粒子31、透光性セラミックス32、および気孔は、互いに異なる屈折率を有することが望ましく、無機粒子31、および透光性セラミックス32が互いに異なる材料からなることが望ましい。
【0043】
無機粒子31は、光源から照射された光を拡散反射層30内において散乱させるためのものであり、酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、およびこれらの組み合わせから選択されることが好ましい。より好ましくは、酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素から少なくとも1種類以上選択されることであり、さらに好ましくは酸化アルミニウムである。酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、および酸化ジルコニウムは、可視光波長域における吸光度が低いため、光のロスを抑えることが可能であり、なかでも酸化アルミニウムは可視光の全波長域において高い反射率を有するため、拡散反射性を高めることができる。
【0044】
無機粒子31は上述したような可視光波長域における吸光度が低い材料からなり、製造工程等における意図しない不純物の混入を除いて、他の材料を含まない。他の材料とは、例えば、蛍光体粒子である。蛍光体は、拡散反射体10に入射する光の波長を変換する性質を有するものであり、例えば、YAG系蛍光体、LAG系蛍光体の他、青色系蛍光体、黄色または緑色系蛍光体、黄色、橙色または赤色系蛍光体、赤色系蛍光体が挙げられる。このような蛍光体粒子が混入すると、入射光や反射光の吸収や波長の変換が起こるため、意図しない色ムラや熱の発生等が起こる虞が生じる。そのため、他の材料を極力含まないようにする。また、不純物としての混入とは、無機粒子31との重量比で0.1%以下に制御することをいう。不純物の混入が、無機粒子31との重量比で0.1%以下であるから、不純物によって与えられる拡散反射光への影響を抑えられ、品質の均一化を図ることができる。
【0045】
無機粒子31の結晶化度は、70%以上98%以下が好ましい。無機粒子31の結晶化度が70%以上であるから、短波長の光の吸収を抑えるとともに、拡散反射率を向上させることを可能にする。一方、結晶化度が98%以下であるから、正反射しやすい面の表出を抑制できる。結晶化度は、X線回折法による測定結果に基づいて、以下の式にて算出される。なお、無機粒子31は、1または2以上のいずれかであってもよい。屈折率が互いに異なる2以上の材料から無機粒子31が構成される場合には、まず各無機粒子の結晶化度を以下の式から算出し、次に算出した結晶化度に対して、各無機粒子の体積比による含有率を積算する。各無機粒子の結晶化度に対して含有率を積算した値を足し合わせることで全体の結晶化度が算出される。
【数1】
【0046】
無機粒子31の平均粒子径は、0.01μm以上2μm以下が好ましい。また、無機粒子31の平均粒子径は、値が小さくなるほど、結晶化度が低下する傾向にある。平均粒子径が0.01μm以上であるから、結晶化度の低下を抑制し、短波長の光の吸収を抑える。また、無機粒子31の平均粒子径が2μm以下であるから、分散性が高まり、光源からの光を効率よく拡散反射させることができる。これにより、400nm以上800nm以下の波長範囲における拡散反射率の平均値を75%以上、かつ正反射率の平均値を1%とすることが容易となる。
【0047】
透光性セラミックス32は、無機粒子31同士、および無機粒子31と反射層20とを固定する結合剤であり、無機バインダが加水分解または酸化されて形成されたものであり、透光性を有する無機材料により構成されている。透光性セラミックス32は、例えば、シリカ(SiO)、リン酸アルミニウムから構成される。また、透光性セラミックス32は透光性を有するので、吸収光や拡散反射光を透過させることができる。透光性セラミックス32は無機材料からなるので、耐熱性が向上し、LDなどの高エネルギー光を照射する用途であっても変質が起こりにくい。
【0048】
無機バインダとしては、例えば、エチルシリケート、リン酸アルミニウム水溶液等を用いることができる。
【0049】
なお、透光性を有する物質とは、0.5mmの対象物質に対して、可視光の波長領域(λ=380~780nm)で光を垂直に入射したとき、反対側から抜けた光の放射束が入射光の80%を超える特性を有する物質をいう。
【0050】
拡散反射層30の気孔率や厚み、透光性セラミックス32に対する無機粒子31の体積比、無機粒子31の平均粒子径については、SEM画像の解析で計測することもできる。SEM画像の解析における拡散反射層30の厚みは、反射層20の平面方向と垂直な方向における断面について、例えば、1000倍にて断面のSEM画像の取得を行なう。次に、得られたSEM画像に対して、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が開発したフリーソフト「ImageJ」を用いて2値化などの画像解析を行ない、画像から拡散反射層30と認められる画像の範囲を定め、その垂直方向の厚みを等間隔(例えば、20μm)に複数算出し、その平均値から拡散反射層30の厚みの平均値を求めることができる。なお、拡散反射層30の厚みの平均値を算出するときに用いる画像は、全体的な平均値となるように、拡散反射層30における複数個所の断面画像(例えば3枚以上)を取得することとする。
【0051】
また、透光性セラミックス32に対する無機粒子31の体積比は、反射層20の平面方向と垂直な方向における断面について、例えば、2000倍にて断面のSEM画像の取得を行ない、得られたSEM画像に対して、無機粒子31と気孔とで2値化し、画像から無機粒子31と認められる100個以上の断面積と、透光性セラミックス32の断面積とを算出し、算出した断面積から体積比を求めることができる。なお、このときに用いる画像は、拡散反射層30に含まれる無機粒子31および透光性セラミックス32の断面積について全体的な値となるように、拡散反射層30における複数個所の断面画像(例えば3枚以上)を取得することとする。
【0052】
また、SEM画像の解析における無機粒子31の平均粒子径は、反射層20の平面方向と垂直な方向における断面について、例えば、2000倍にて断面のSEM画像の取得を行ない、得られたSEM画像に対して、2値化などの画像解析を行ない、画像から無機粒子31と認められる100個以上の断面積を算出し、その累積分布から平均粒子径を求めることができる。なお、画像から無機粒子31と認められる100個以上の断面積を算出するときに用いる画像は、拡散反射層30に含まれる無機粒子31の粒径について全体的な平均粒子径となるように、拡散反射層30における複数個所の断面画像(例えば3枚以上)を取得することとする。このように求めた無機粒子31の平均粒子径は、断面画像の枚数および無機粒子31の個数を統計的に十分な数を算出し計測することで、拡散反射層30の製造時に規定した無機粒子31のメジアン径(D50)としての平均粒子径との差が十分に小さくなる。
【0053】
[発光装置の構成]
図3は、本発明の発光装置を表す模式図である。発光装置40は、光源50と拡散反射体10を備える。光源50は、特定範囲の波長の光源光を発生させる発光素子であり、例えば、LEDや、LDなどを用いることができる。拡散反射体10はハイパワーでも破損の虞を低減しつつ効率よく拡散反射させることができるので、光源50はLDであることが好ましい。
【0054】
[拡散反射体の製造方法]
拡散反射体の製造方法の一例を説明する。図4は、本発明の拡散反射体の製造方法を示すフローチャートである。最初に、金属板を加工し、所定の形状に形成された基材21を作成する(ステップS1)。このとき、基材21の表面に、反射膜22を形成して基材21および反射膜22を反射層20としてもよい。また、基材21の表面を磨いて、基材21を反射層20としてもよい。
【0055】
これらとは別に、無機粒子31と無機バインダとを混合して原料ペーストを作製する(ステップS2)。まず、所定の平均粒径を有する無機粒子31を準備する。無機粒子31は、設計に応じて、様々なものを用いることが可能であり、2種類以上を使用してもよい。次に、準備した無機粒子31を秤量し、溶剤に分散させ、無機バインダと混合し、印刷用の原料ペーストを作製する。混合にはボールミルやプロペラ撹拌などを用いることができる。混合時間は、ボールミルの場合、3分以上30分以下であることが好ましい。プロペラ撹拌の場合、5分以上120分以下であることが好ましい。これにより、拡散反射層の厚みのバラツキを低減できる。溶剤は、α-テルピネオール、ブタノール、イソホロン、グリセリン等の高沸点溶剤を用いることができる。
【0056】
次に、反射層作製工程において作製された反射層20の表面に原料ペーストを塗布してペースト層を形成する(ステップS3)。原料ペーストの塗布は、スクリーン印刷法、スプレー法、ディスペンサーによる描画法、インクジェット法を用いることができる。スクリーン印刷法を用いると、厚みの均一なペースト層を安定的に形成できるので好ましい。また、ペースト層の厚みは、焼成後に所定の厚みになるように調整する。ペースト層は、反射層20の形状に沿って形成されることが好ましい。
【0057】
そして、塗布した原料ペーストを、300℃以下の温度で熱処理することで拡散反射層30を形成する(ステップS4)。熱処理温度は、150℃以上300℃以下であることが好ましく、熱処理時間は、0.5時間以上2.0時間以下であることが好ましい。また、昇温速度は、50℃/h以上200℃/h以下であることが好ましい。また、熱処理前に乾燥工程を設けてもよい。乾燥温度は100℃以上150℃以下が好ましく、乾燥時間は20分以上60分以下であることが好ましい。
【0058】
[実施例および比較例]
(試料の作製)
(試料1)
基材21として打抜きプレス加工により直径φ30mm、厚みt0.5mmの円板状のアルミニウム基材を準備した。基材21の表面には、真空蒸着法により、銀からなる反射膜22を形成した。なお、反射膜22の膜厚は、0.1μmとなるように形成した。
【0059】
平均粒子径0.4μm、結晶化度96%の酸化アルミニウム(住友化学社:アドバンストアルミナAA-03)を無機粒子31とし、α‐テルピネオールを溶媒とし、エチルシリケートを無機バインダとして、拡散反射層30を作製した。まず、無機粒子31、溶媒、および無機バインダをそれぞれ秤量し、プロペラ撹拌で30分間混合することで、原料ペーストを作製した。このとき、無機粒子31と溶媒に対する無機バインダの重量比が、30%となるように秤量した。
【0060】
得られた原料ペーストを熱処理後の層の平均厚みが30μmとなるようにスクリーン印刷により基材21の反射膜22上に塗布し、塗布後の基材を100℃で20分乾燥した後、電気炉を用いて非酸化性雰囲気で150℃/hで150℃まで昇温し、60分熱処理をすることにより試料1の拡散反射体10を作製した。なお、拡散反射層30の表面粗さRaは、1.0μmであった。また、拡散反射層30の気孔率は、15%であった。
【0061】
(試料2)
無機粒子31として、平均粒子径0.08μm、結晶化度92%の酸化アルミニウムを用いたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0062】
(試料3)
無機粒子31として、平均粒子径2.0μm、結晶化度98%の酸化アルミニウムを用いたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0063】
(試料4)
無機バインダの配合比と混合時間を調整し、気孔率40%に変化させたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0064】
(試料5)
無機バインダの配合比と混合時間を調整し、気孔率5%に変化させたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0065】
(試料6)
基材21を銅基材としたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0066】
(試料7)
無機粒子31として、平均粒子径0.8μm、結晶化度80%の二酸化ケイ素を用いたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0067】
(試料8)
無機粒子31として、平均粒子径0.3μm、結晶化度98%の酸化チタンを用いたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0068】
(試料9)
無機粒子31として、平均粒子径0.04μm、結晶化度95%の酸化チタンを用いたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0069】
(試料10)
反射膜22を形成せず基材21を反射層20としたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0070】
(試料11)
無機粒子31として、平均粒子径3.0μm、結晶化度98%の酸化アルミニウムを用いたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0071】
(試料12)
無機粒子31として、平均粒子径1μm、結晶化度60%の二酸化ケイ素を用いたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0072】
(試料13)
無機粒子31として、平均粒子径0.8μm、結晶化度99%の二酸化ケイ素を用いたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0073】
(試料14)
無機バインダの配合比と混合時間を調整し、気孔率3%に変化させたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0074】
(試料15)
無機バインダの配合比と混合時間を調整し、気孔率50%に変化させたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0075】
(試料16)
拡散反射層30の厚みを10μmとしたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0076】
(試料17)
拡散反射層30の厚みを50μmとしたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0077】
(試料18)
拡散反射層30の表面粗さRaを2.0μmとしたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0078】
(試料19)
拡散反射層30の表面粗さRaを0.1μmとしたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0079】
(試料20)
拡散反射層30の表面粗さRaを0.2μmとしたことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体10を作製した。
【0080】
(比較例)
バインダを有機バインダ(シリコーン樹脂)に変更したことを除き、試料1と同様の条件で拡散反射体を作製した。
【0081】
[試料の評価]
(反射率の測定および平均値の算出)
作製したそれぞれの試料および比較例の試料について、反射率測定によって得られた全反射率および拡散反射率から、拡散反射率および正反射率の平均値をそれぞれ算出した。反射率測定は、積分球が取り付けられた紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社)を用いた相対反射測定であり、標準となる白板にはスペクトラロンを用いた。反射率測定によって、少なくとも400nm以上800nm以下の波長域における全反射率および拡散反射率を測定した。
【0082】
拡散反射率の平均値は、400nm以上800nm以下の波長域における拡散反射率の平均値である。正反射率の平均値は、400nm以上800nm以下の波長域における全反射率の平均値から、拡散反射率の平均値を減算することで算出される。算出した平均値を各試料における拡散反射率(%)および正反射率(%)として評価した。
【0083】
(照射像におけるスポットの評価)
図5に記載の評価システムを用いて、照射像の確認を行なった。波長445nmのLDを光源50とし、レーザ入力0.5Wのレーザ光を拡散反射体10に照射し、スクリーン60に投影される照射像を確認した。なお、拡散反射体10は、光源50に対して45°傾けられ、拡散反射層30にレーザ光が入射するように配置された。そして、スクリーン60に投影された照射像におけるスポットの有無により評価した。
【0084】
図6は、各試料および比較例の試料における各種測定結果である。なお、図6における「粒径」とは平均粒子径(μm)のことである。
【0085】
比較例の試料は、照射像におけるスポットの評価においてレーザ光を照射したところ、しばらくして拡散反射層の樹脂が焼けて使用できなくなった。一方、拡散反射層の形成に無機バインダを試料1~20は、レーザ光の照射によって破損することはなかった。
【0086】
次に、図6に示すように、試料1~10および20においては、拡散反射率の平均値が75%以上、かつ正反射率が1%以下であり、照射像におけるスポットも確認されないことが認められた。一方、試料11~19では、拡散反射率の平均値が75%以上、かつ正反射率が1%以下という条件を満たさなかった。また、正反射率が1%より大きかった試料11、13~19では、照射像におけるスポットが確認された。これにより、正反射率は、1%以下が好ましいことが確かめられた。
【0087】
平均粒子径が2μmより大きい試料11では、拡散反射率が75%未満であり、正反射率が1%より大きいだけでなく、照射像においてスポットも確認された。また、結晶化度が70%未満である試料12では、拡散反射率が75%未満であった。一方、結晶化度が98%以上である試料13では、正反射率が1%より大きく、照射像においてスポットが確認された。
【0088】
また、気孔率5%未満である試料14では、拡散反射率が75%未満であり、正反射率が1%より大きいだけでなく、照射像においてスポットも確認された。一方、気孔率が40%より大きい試料15では、また、気孔率が40%より大きい試料15も、拡散反射率が75%未満であり、正反射率が1%より大きいだけでなく、照射像においてスポットも確認された。さらに、長時間の使用や接触等の外的刺激により、反射膜が剥離する様子が観察された。
【0089】
また、拡散反射層の平均厚みが20μm未満である試料16では、正反射率が1%より大きく、照射像においてスポットが確認された。また、40μmより大きい試料17であっても、正反射率が1%より大きく、照射像においてスポットが確認された。
【0090】
図7は、試料1および試料11における、反射率測定の結果を示すグラフである。なお、縦軸は反射率を表し、横軸は波長域を表している。試料1の拡散反射率は、400nmから500nmにかけて80%から90%を越えた値まで上昇し、90%を越えた値を800nmまで維持していた。また、試料1における全反射率は、拡散反射率と重なっているように見えることから、400nm以上800nm以下の波長範囲において、拡散反射率との差が小さいことが分かる。
【0091】
一方、試料11の拡散反射率は、400nmにおける値をピークとして、800nmにかけて低下し続けた。また、試料11の全反射率は、800nmに近づくにつれて、拡散反射率との開きが大きくなったことから、試料1と比べて拡散反射率との差が大きいことが分かる。
【0092】
図8および図9は、それぞれスクリーン60に投影された照射像の画像である。図8は、試料1における照射像であり、図9は、試料11における照射像である。図9に示される照射像には、矢印先端の近傍において、光の凝集であるスポットが見受けられた。一方、図8では、図9で見られたスポットは観察されなかった。
【0093】
以上の結果によって、本発明の拡散反射体および発光装置は、光源(発光素子)にLDを使用しても、破損の虞が少ないことが確かめられた。また、400nm以上800nm以下の波長範囲における光を効率よく拡散反射させることができ、高出力の光源を使用してもスポットや色ムラがより生じにくくなることが確かめられた。
【0094】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0095】
10 拡散反射体
20 反射層
21 基材
22 反射膜
30 拡散反射層
31 無機粒子
32 透光性セラミックス
40 発光装置
50 光源
60 スクリーン
S1 反射層作製工程
S2 ペースト作製工程
S3 ペースト塗布工程
S4 熱処理工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9