(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146644
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】配管溶接部の検査方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/02 20060101AFI20220928BHJP
G01M 3/12 20060101ALI20220928BHJP
G01M 3/28 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G01M3/02 C
G01M3/12
G01M3/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047718
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日並 一幸
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA16
2G067BB04
2G067BB26
2G067BB34
2G067DD02
2G067DD27
2G067EE08
(57)【要約】
【課題】配管溶接部の検査方法および装置において、装置の簡素化を図る。
【解決手段】第1配管の端面と第2配管の端面との間にリング形状をなすシール部を介して接合された配管の溶接部を検査する配管溶接部の検査方法において、シール部と溶接部との間の空間部に検査用気体を供給する工程と、空間部の圧力の変動に応じて溶接部の欠陥を検出する工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配管の端面と第2配管の端面との間にリング形状をなすシール部を介して接合された配管の溶接部を検査する配管溶接部の検査方法において、
前記シール部と前記溶接部との間の空間部に検査用気体を供給する工程と、
前記空間部の圧力の変動に応じて前記溶接部の欠陥を検出する工程と、
を有する配管溶接部の検査方法。
【請求項2】
前記シール部は、前記第1配管および前記第2配管の径方向に所定間隔を空けて配置される第1シール部および第2シール部を有し、
まず、前記第1シール部と前記第2シール部との間の第1空間部に前記検査用気体を供給し、前記第1空間部の圧力の変動に応じて前記第1シール部および前記第2シール部の無欠陥を検出し、
次に、前記第1シール部と前記溶接部との間の第2空間部に前記検査用気体を供給し、前記第2空間部の圧力の変動に応じて前記溶接部の欠陥を検出する、
請求項1に記載の配管溶接部の検査方法。
【請求項3】
前記溶接部の欠陥を検出すると、前記溶接部に検出液を塗布し、前記検出液の形態の変化に応じて前記溶接部の欠陥位置を検出する、
請求項1または請求項2に記載の配管溶接部の検査方法。
【請求項4】
遠隔監視用カメラにより前記検出液の形態の変化を視認することで、前記溶接部の欠陥位置を検出する、
請求項3に記載の配管溶接部の検査方法。
【請求項5】
前記検出液が浸透した塗布部材を前記溶接部に押し付けた状態で、前記塗布部材を周方向に移動することで前記溶接部に検出液を塗布する、
請求項3または請求項4に記載の配管溶接部の検査方法。
【請求項6】
前記第1配管および前記第2配管は、原子炉格納容器に設けられるペネトレーションであり、前記原子炉格納容器の外部から機器の遠隔操作により前記溶接部の検査を行う、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の配管溶接部の検査方法。
【請求項7】
前記第1配管と前記第2配管の少なくともいずれか一方に検査用気体を供給する供給ラインを設ける工程を有する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の配管溶接部の検査方法。
【請求項8】
第1配管の端面と第2配管の端面との間にリング形状をなすシール部を介して接合された配管の溶接部を検査する配管溶接部の検査装置において、
前記シール部と前記溶接部との間の空間部に検査用気体を供給する検査用気体供給装置と、
前記空間部の圧力の変動を検出する検出装置と、
前記溶接部に検出液を塗布する検出液塗布装置と、
を備える配管溶接部の検査装置。
【請求項9】
前記検出液の形態の変化を撮影する遠隔監視用カメラが設けられる、
請求項8に記載の配管溶接部の検査装置。
【請求項10】
前記検出液塗布装置は、前記第1配管および前記第2配管の周方向および径方向に移動自在に支持される塗布装置本体と、前記塗布装置本体に設けられて前記検出液を吸水可能な塗布部材と、前記塗布装置本体に対して前記塗布部材を前記溶接部に押圧させる付勢部材とを有する、
請求項8または請求項9に記載の配管溶接部の検査装置。
【請求項11】
溶接ヘッドは、長手方向の一方側に溶接トーチが設けられ、長手方向の他方側に前記検出液塗布装置が設けられる、
請求項10に記載の配管溶接部の検査装置。
【請求項12】
前記第1配管および前記第2配管は、原子炉格納容器に設けられるペネトレーションである、
請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の配管溶接部の検査装置。
【請求項13】
第1配管の端面と第2配管の端面の接合部の漏えい検査方法であって、
前記第1配管と前記第2配管の少なくともいずれか一方に検査用気体を供給する供給ラインを設ける工程を有する、配管溶接部の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、原子炉格納容器のペネトレーションに用いられる配管の溶接部を検査する配管溶接部の検査方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉格納容器は、多数のペネトレーション(貫通路)が設けられる。例えば、原子炉格納容器の内部に配置される各種の機器の点検や調査などは、ペネトレーションを用いて実施される。ペネトレーションは、複数の配管が接続されて構成される。従来の原子炉格納容器のペネトレーションとしては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、ペネトレーションは、複数の配管が溶接により接続されて構成される。この場合、配管の溶接部に対して欠陥の検出検査を実施する必要がある。従来、配管の溶接部における欠陥検出検査は、浸透探傷法により実施していた。ところが、浸透探傷法による配管の溶接部の欠陥検出検査装置を具体化する場合、浸透液塗布装置、現像液塗布装置、清掃装置などが必要となり、装置が大掛かりなものとなってしまうという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、装置の簡素化を図る配管溶接部の検査方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の配管溶接部の検査方法は、第1配管の端面と第2配管の端面との間にリング形状をなすシール部を介して接合された配管の溶接部を検査する配管溶接部の検査方法において、前記シール部と前記溶接部との間の空間部に検査用気体を供給する工程と、前記空間部の圧力の変動に応じて前記溶接部の欠陥を検出する工程と、を有する。
【0007】
また、本開示の配管溶接部の検査装置は、第1配管の端面と第2配管の端面との間にリング形状をなすシール部を介して接合された配管の溶接部を検査する配管溶接部の検査装置において、前記シール部と前記溶接部との間の空間部に検査用気体を供給する検査用気体供給装置と、前記空間部の圧力の変動を検出する検出装置と、前記溶接部に検出液を塗布する検出液塗布装置と、前記検出液の形態の変化を撮影する遠隔監視用カメラと、を備える。
【0008】
配管溶接部の検査方法は、第1配管の端面と第2配管の端面の接合部の漏えい検査方法であって、前記第1配管と前記第2配管の少なくともいずれか一方に検査用気体を供給する供給ラインを設ける工程を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の配管溶接部の検査方法および装置によれば、装置の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態の配管溶接システムの機能を表すブロック構成図である。
【
図5】
図5は、配管の溶接方法および溶接部の検査方法を表すフローチャートである。
【
図6】
図6は、既設配管に対する接続配管の位置決め状態を表す説明図である。
【
図7】
図7は、溶接装置の移動状態を表す説明図である。
【
図8】
図8は、移動装置による接続配管のクランプ状態を表す説明図である。
【
図9】
図9は、溶接トーチの教示状態および倣い状態を表す説明図である。
【
図10】
図10は、既設配管に対する接続配管の溶接状態を表す説明図である。
【
図11】
図11は、既設配管と接続配管との間の空間部への窒素ガス供給状態を表す説明図である。
【
図12】
図12は、塗布部材の教示状態および倣い状態を表す説明図である。
【
図13】
図13は、塗布部材による検出液の塗布状態を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
<配管溶接システム>
図1は、本実施形態の配管溶接システムを表す概略構成図である。
【0013】
本実施形態の配管溶接システムは、原子炉格納容器に設けられるペネトレーションを構成する配管に適用される。ペネトレーションを構成する配管は、高放射線環境下に配置される。そのため、配管溶接システムは、原子炉格納容器の外部から遠隔操作により溶接装置や検査装置などを作動制御可能である。
【0014】
図1に示すように、配管溶接システム10は、ペネトレーションを構成する既設の既設配管(第1配管)P1に接続配管(第2配管)P2を溶接により接合するものである。配管溶接システム10は、溶接装置11と、検査装置(配管溶接部の検査装置)12と、制御装置13と、操作装置14と、表示装置15とを備える。
【0015】
溶接装置11は、溶接ヘッド21と、軸方向移動装置22と、周方向移動装置23と、径方向移動装置24とを有する。軸方向移動装置22は、配管P1,P2の内部で、溶接ヘッド21を配管P1,P2の軸方向(長手方向)に沿って移動可能である。周方向移動装置23は、配管P1,P2の内部で、溶接ヘッド21を配管P1,P2の周方向に沿って移動可能である。径方向移動装置24は、溶接ヘッド21に設けられ、ヘッド本体25を配管P1,P2の径方向に沿って移動可能である。
【0016】
溶接ヘッド21は、ヘッド本体25と、溶接トーチ26とを有する。ヘッド本体25は、配管P1,P2の径方向に沿って配置され、長手方向の一端部に溶接トーチ26が装着され、長手方向の他端部に後述する検出液塗布装置30が装着される。ヘッド本体25と溶接トーチ26と検出液塗布装置30の詳細構造については後述する。
【0017】
検査装置12は、検出液塗布装置30と、窒素供給装置(検査用気体供給装置)31と、第1圧力センサ32と、第2圧力センサ(検出装置)33と、カメラ(遠隔監視用カメラ)34とを有する。既設配管P1は、軸方向の端部にフランジ部P1aが設けられる。接続配管P2は、軸方向の端部にフランジ部P2aが設けられる。既設配管P1に接続配管P2を接合するとき、既設配管P1のフランジ部P1aの端面と接続配管P2のフランジ部P2aの端面の間にリング形状をなすシール部(例えば、Oリング)S1,S2を装着する。第1シール部S1と第2シール部S2は、既設配管P1および接続配管P2の径方向所定間隔を空けて配置される。すなわち、第1シール部S1は、直径が第2シール部S2の直径よりも小さい。そのため、第1シール部S1は、既設配管P1および接続配管P2の内面側に配置される。第2シール部S2は、第1シール部S1より既設配管P1および接続配管P2の外面側に配置される。
【0018】
本実施形態では、接続配管P2のフランジ部P2aの端面に2個の周方向溝を形成し、2個の周方向溝にシール部S1,S2を装着している。このとき、シール部S1,S2は、周方向溝から突出する。なお、既設配管P1のフランジ部P1aの端面に2個の周方向溝を形成し、2個の周方向溝にシール部S1,S2を装着してもよい。
【0019】
接続配管P2は、フランジ部P2aの端面が既設配管P1のフランジ部P1aの端面に密着するように位置決めされ、クランプされる。このとき、第1シール部S1および第2シール部S2は、接続配管P2のフランジ部P2aの端面と既設配管P1のフランジ部P1aの端面との間で押しつぶされることでシール機能が確保される。このとき、接続配管P2のフランジ部P2aの端面と既設配管P1のフランジ部P1aの端面との間で、第1シール部S1と第2シール部S2との間に第1空間部R1が形成される。また、第1シール部S1と溶接部Bとの間に第2空間部R2が形成される。
【0020】
窒素供給装置31は、第1空間部R1と第2空間部R2に対して検査用気体である窒素を供給可能である。なお、検査用気体は、窒素に限定されるものではなく、他の不活性ガスや空気であってもよい。第1圧力センサ32は、窒素供給装置31により窒素が供給された第1空間部R1の圧力を計測する。第2圧力センサ33は、窒素供給装置31により窒素が供給された第2空間部R2の圧力を計測する。検査装置12は、第1圧力センサ32が計測した第1空間部R1の圧力変動に基づいてシール部S1,シール部S2のシール性能(欠陥または無欠陥)を検出する。また、検査装置12は、第2圧力センサ33が計測した第2空間部R2の圧力変動に基づいて溶接部Bの欠陥を検出する。
【0021】
溶接ヘッド21のヘッド本体25に装着された検出液塗布装置30は、溶接部Bに対して検出液を塗布する。検出液は、例えば、スヌーブ(商品名/スウェージロック社)が好ましい。カメラ34は、溶接部Bに塗布された検出液の形態の変化を撮影可能である。作業者は、カメラ34の画像から、溶接部Bに塗布された検出液の形態の変化に基づいて溶接部Bにおける欠陥の位置を特定する。
【0022】
制御装置13は、溶接装置11と検査装置12に接続される。制御装置13は、溶接装置11および検査装置12を作動制御可能である。
【0023】
操作装置14は、制御装置13に接続される。作業者は、操作装置14を用いて各種の指令信号を制御装置13に入力可能である。表示装置15は、制御装置13に接続される。表示装置15は、制御装置13を介して溶接装置11による溶接状態や検査装置12による検査状態を表示可能である。また、表示装置15は、検査装置12による検査結果を表示可能である。
【0024】
なお、操作装置14と表示装置15を一体に設けてもよい。制御装置13により溶接装置11と検査装置12と表示装置15を作動制御可能としたが、溶接装置11と検査装置12と表示装置15を異なる制御装置により作動制御可能としてもよい。
【0025】
<溶接装置>
図2は、溶接装置を表す概略図である。
【0026】
図1および
図2に示すように、溶接装置11は、溶接ヘッド21と軸方向移動装置22と周方向移動装置23と径方向移動装置24に加えて、装置本体51と、移動装置52と、ガイド筒53と、クランプ装置54と、作動軸55とを有する。装置本体51は、前後に移動装置52としての走行体が設けられ、移動装置52により前進および後退が可能であり、左右にも移動可能である。装置本体51は、前部にガイド筒53が固定される。装置本体51は、ガイド筒53の外側に複数のクランプ装置54が配置される。クランプ装置54は、接続配管P2をクランプ可能である。
【0027】
作動軸55は、装置本体51の中心部に前後方向に沿って配置される。作動軸55は、装置本体51に回転自在であると共に、軸方向に移動自在に支持される。作動軸55は、先端部に溶接ヘッド21が装着される。溶接ヘッド21は、ガイド筒53の内部に位置する。軸方向移動装置22と周方向移動装置23は、装置本体51に搭載される。軸方向移動装置22は、作動軸55を介して溶接ヘッド21を軸方向に移動可能である。周方向移動装置23は、作動軸55を介して溶接ヘッド21を周方向に移動可能である。径方向移動装置24は、溶接ヘッド21に搭載される。径方向移動装置24は、作動軸55に対してヘッド本体25を径方向に移動可能である。
【0028】
<溶接ヘッド>
図3は、溶接ヘッドを表す斜視図、
図4は、溶接ヘッドを表す断面図である。
【0029】
図3および
図4に示すように、溶接ヘッド21は、作動軸55の先端部に装着される。作動軸55は、先端部に直交するように取付ベース61が固定され、取付ベース61にスライド装置62を介して支持ベース63が連結される。スライド装置62は、ケース62aと、ねじ軸62bと、移動体62cと、駆動装置62dと、歯車機構62eを有する。ケース62aは、取付ベース61に固定される。ねじ軸62bは、ケース62aの内部に回転自在に支持される。移動体62cは、ねじ軸62bが螺合し、ねじ軸62bの軸方向に沿って移動自在に支持される。駆動装置62dは、歯車機構62eを介してねじ軸62bを駆動回転可能である。そして、支持ベース63は、移動体62cが固定されると共に、ヘッド本体25が固定される。
【0030】
そのため、駆動装置62dを駆動すると、駆動力が歯車機構62eを介してねじ軸62bに伝達され、ねじ軸62bが駆動回転する。ねじ軸62bが回転すると、ねじ軸62bに螺合する移動体62cが軸方向に沿って移動し、移動体62cに支持ベース63を介して連結されたヘッド本体25を移動することができる。ここで、径方向移動装置24は、スライド装置62などにより構成される。
【0031】
ヘッド本体25は、下部にねじ軸64が回動自在に支持され、ねじ軸64は、下端部に駆動歯車65が一体回転可能に連結される。また、取付ベース61は、駆動装置66が配置される。駆動装置66は、減速機(図示略)を介して駆動歯車65を駆動回転可能である。また、ヘッド本体25は、下部に溶接トーチ26が装着されると共に、側部にワイヤノズル67が装着される。
【0032】
ヘッド本体25は、移動軸68が回転不能で、且つ、軸方向に沿って移動自在に支持される。移動軸68は、下部にねじ軸64の上部が螺合し、上部にピストン69が連結される。ヘッド本体25は、上部にシリンダ部70が設けられる。ピストン69は、シリンダ部70の内部に配置され、移動自在に支持される。シリンダ部70は、内部に検出液が充填される。シリンダ部70は、上部に検出液塗布装置30が装着される。検出液塗布装置30は、塗布装置本体71と、塗布部材72と、圧縮コイルばね(付勢部材)73とを有する。塗布装置本体71は、シリンダ部70の上部に移動自在に支持される。塗布部材72は、塗布装置本体71の先端部に固定される。塗布部材72は、検出液を吸水可能なフェルトやスポンジなどである。圧縮コイルばね73は、シリンダ部70と塗布装置本体71との間に配置され、シリンダ部70に対して塗布装置本体71が離間する方向、つまり、塗布部材72が溶接部B(
図1参照)押圧する方向に付勢力を作用させる。また、シリンダ部70と塗布部材72との間に連通路74が設けられ、連通路74にチェック弁75が設けられる。チェック弁75は、シリンダ部70からの検出液の漏洩を防止する。
【0033】
そのため、ヘッド本体25が移動すると、溶接トーチ26および検出液塗布装置30を既設配管P1および接続配管P2の径方向に移動することができる。また、駆動装置66を駆動すると、駆動力が駆動歯車65に伝達され、駆動歯車65およびねじ軸64が一方方向に回転する。すると、ねじ軸64に螺合する移動軸68が上昇し、ピストン69がシリンダ部70を上昇し、内部に充填された検出液を昇圧する。そのため、検出液が連通路74およびチェック弁75を通して塗布部材72に供給される。一方、ねじ軸64が他方方向に回転すると、ねじ軸64に螺合する移動軸68が下降し、ピストン69がシリンダ部70を下降する。このとき、チェック弁75の機能を無効化することで、シリンダ部70の内部の圧力の低下を防止する。
【0034】
なお、溶接ヘッド21は、溶接トーチ26の近傍に溶接カメラ76が配置される。また、溶接ヘッド21は、塗布装置本体71の近傍に位置してカメラ34と照明77が配置される。
【0035】
<配管の溶接方法および溶接部の検査方法>
図5は、配管の溶接方法および溶接部の検査方法を表すフローチャート、
図6は、既設配管に対する接続配管の位置決め状態を表す説明図、
図7は、溶接装置の移動状態を表す説明図、
図8は、移動装置による接続配管のクランプ状態を表す説明図、
図9は、溶接トーチの教示状態および倣い状態を表す説明図、
図10は、既設配管に対する接続配管の溶接状態を表す説明図、
図11は、既設配管と接続配管との間の空間部への窒素ガス供給状態を表す説明図、
図12は、塗布部材の教示状態および倣い状態を表す説明図、
図13は、塗布部材による検出液の塗布状態を表す説明図である。
【0036】
本実施形態の配管溶接部の検査方法は、第1シール部S1と溶接部Bとの間の第2空間部R2に窒素を供給する工程と、第2空間部R2の圧力の変動に応じて溶接部Bの欠陥を検出する工程とを有する。
【0037】
図5および
図6に示すように、ステップS11にて、既設配管P1に接続配管P2を位置決めし、複数のクランプ81により仮固定する。このとき、既設配管P1のフランジ部P1aの端面と接続配管P2のフランジ部P2aの端面の間にシール部S1,S2を装着する。
図5および
図7に示すように、ステップS12にて、作業配管100の内部に配置された溶接装置11を前進させ、接続配管P2に接近させる。ステップS13にて、溶接装置11の位置調整を行い、複数のクランプ装置54が接続配管P2をクランプできるように位置合わせする。
【0038】
図5および
図8に示すように、ステップS14にて、溶接装置11により接続配管P2をクランプする。すなわち、クランプ装置54が接続配管P2のフランジ部をクランプすると共に、接続配管P2をガイド筒53の端部に押し付ける。既設配管P1および接続配管P2に対して溶接装置11が位置決めされると、
図5および
図9に示すように、ステップS15にて、溶接ヘッド21のヘッド本体25を軸方向および径方向に移動することで、溶接トーチ26の先端部を既設配管P1と接続配管P2との開先部に接近させる。そして、溶接トーチ26を周方向に移動して教示を行い、必要に応じて溶接ヘッド21の軸方向の位置を調整する。ステップS16にて、ヘッド本体25を周方向に沿って移動することで、溶接トーチ26の倣い確認を行う。
【0039】
図5および
図10に示すように、ステップS17にて、ヘッド本体25を周方向に沿って移動することで、溶接トーチ26により既設配管P1に接続配管P2を溶接する。すると、既設配管P1と接続配管P2とが接合された内周面に周方向に連続する溶接部Bが形成される。この場合、溶接部個の溶接ビードは、1層でもよいし、複数層でもよい。
【0040】
図5および
図11に示すように、ステップS18以降で、既設配管P1と接続配管P2とが接続された空間部R1,R2に窒素を供給し、シール検査およびリーク検査を実施する。この場合、空間部R1,R2は、窒素供給装置31が接続される。窒素供給装置31は、図示しない配電盤およびその近傍に配置され、操作装置14により作動可能である。
【0041】
既設配管P1と接続配管P2とは、各フランジ部P1a,P2aの端面の間に第1シール部S1および第2シール部S2が装着され、内周面に溶接部Bが形成される。そのため、既設配管P1および接続配管P2は、各フランジ部P1a,P2aの端面の間で、第1シール部S1と第2シール部S2との間に第1空間部R1が形成されると共に、第1シール部S1と溶接部Bとの間に第2空間部R2が形成される。
【0042】
接続配管P2は、第1空間部R1に連通する第1ポート91と、第2空間部R2に連通する第2ポート92が設けられる。第1ポート91は、配電盤から延びた第1供給ライン93の一端部が接続される。第2ポート92は、配電盤から延びた第2供給ライン94の一端部が接続される。なお、第1空間部R1と第1ポート91とは、第1供給路93aにより連通され、第2空間部R2と第2ポート95とは、第2供給路94aにより連通される。第1供給ライン93は、第1開閉弁95が設けられ、第2供給ライン94は、第2開閉弁96が設けられる。開閉弁95,96は、電磁弁である。第1供給ライン93および第2供給ライン94は、それぞれの他端部が窒素供給源97に接続される。また、第1供給ライン93は、第1圧力センサ32が設けられ、第2供給ライン94は、第2圧力センサ33が設けられる。第1圧力センサ32は、第1供給ライン93を通して第1空間部R1の圧力を計測する。第2圧力センサ33は、第2供給ライン94を通して第2空間部R2の圧力を計測する。なお、圧力センサ32,33、開閉弁95,96は、配電盤に設けられる。また、窒素供給源97は、窒素ボンベであり、配電盤の近傍に設けられる。
【0043】
ステップS18にて、第1空間部R1に窒素を供給する。すなわち、第1開閉弁95を開放し、第2開閉弁96を閉止する。すると、窒素供給源97の窒素が第1供給ライン93を通して第1ポート91に供給され、第1ポート91から第1空間部R1に窒素が供給される。ステップS19にて、シール部S1,S2のシール検査を行う。第1シールS1および第2シールS2に欠陥がなくシール性能が確保されていれば、第1空間部R1から窒素がほとんど漏れることがなく、圧力が上昇する。第1圧力センサ32は、第1供給ライン93を通して第1空間部R1における窒素の圧力を計測し、制御装置13(
図1参照)に出力する。制御装置13は、第1空間部R1の圧力を表示装置15に表示する。作業者は、表示装置15から第1供給ライン93における窒素の圧力に変動がないことを確認し、第1シールS1および第2シールS2が健全であると判定する。
【0044】
第1シールS1および第2シールS2が健全であると判定されると、ステップS20にて、第2空間部R2に窒素を供給する。すなわち、第1開閉弁95を閉止し、第2開閉弁96を開放する。すると、窒素供給源97の窒素が第2供給ライン94を通して第2ポート92に供給され、第2ポート92から第2空間部R2に窒素が供給される。ステップS21にて、溶接部Bのリーク検査を行う。溶接部Bに欠陥がなければ、第2空間部R2から窒素がほとんど漏れることがなく、圧力が上昇する。第2圧力センサ33は、第2供給ライン94を通して第2空間部R2における窒素の圧力を計測し、制御装置13(
図1参照)に出力する。制御装置13は、第2空間部R2の圧力を表示装置15に表示する。作業者は、表示装置15から第2供給ライン94における窒素の圧力に変動がないことを確認し、溶接部Bに欠陥がなく健全であると判定する。
【0045】
ステップS22にて、溶接部Bにリークがあったかどうかを判定する。ここで、溶接部Bに欠陥がなくリークしていないと判定(No)されると、溶接検査作業を終了する。一方、溶接部Bに欠陥があってリークしていると判定(Yes)されると、ステップS23に移行する。
図5および
図12に示すように、ステップS23にて、溶接ヘッド21のヘッド本体25を軸方向および径方向に移動することで、検出液塗布装置30の塗布部材72を既設配管P1と接続配管P2との溶接部Bに接近させる。そして、塗布部材72を周方向に移動して教示を行い、必要に応じての塗布部材72の軸方向の位置を調整する。ステップS24にて、ヘッド本体25を周方向に沿って移動することで、塗布部材72の倣い確認を行う。
【0046】
図5および
図13に示すように、ステップS25にて、検出液塗布装置30により溶接部Bに検出液を塗布する。すなわち、径方向移動装置24によりヘッド本体25を径方向に移動することで、塗布部材72を溶接部Bに押し付ける。そして、ピストン69を上昇させることで、シリンダ部70の内部にある検出液を塗布部材72に供給する。同時に、周方向移動装置23によりヘッド本体25を周方向に沿って移動することで、塗布部材72を溶接部Bに押し付けたままで、塗布部材72を溶接部Bに沿って移動する。すると、塗布部材72により溶接部Bに検出液が塗布される。
【0047】
ステップS26にて、溶接欠陥位置を検出する。カメラ34は、塗布部材72が溶接部Bに沿って移動することで検出液が塗布された溶接部Bを撮影している。
図1に示すように、制御装置13は、カメラ34が撮影した映像を表示装置15に表示する。作業者は、表示装置15を見ながら、検出液の形態の変化に応じて溶接部Bの欠陥位置を検出する。第2空間部R2は、窒素の供給により圧力が上昇していることから、溶接部Bに欠陥があると、第2空間部R2の窒素は、溶接部Bの欠陥から漏洩する。窒素が溶接部Bの欠陥から漏洩すると、溶接部Bに塗布された検出液が泡状に変化する。そのため、作業者は、溶接部Bに塗布された検出液が泡状に変化した位置を溶接欠陥位置に特定する。なお、溶接部Bに塗布された検出液の形態変化による溶接欠陥位置の特定処理を自動化してもよい。
【0048】
溶接部Bにおける溶接欠陥位置が特定されると、
図5に示すように、ステップS27にて、溶接部Bにおける溶接欠陥位置を再溶接する。その後、ステップS21に戻り、溶接部Bのリーク検査を行う。
【0049】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る配管溶接部の検査方法は、既設配管(第1配管)P1の端面と接続配管(第2配管)P2の端面との間にリング形状をなす第1シール部S1を介して接合された配管の溶接部Bを検査する配管溶接部の検査方法において、シール部S1と溶接部Bとの間の第2空間部R2に窒素(検査用気体)を供給する工程と、第2空間部R2の圧力の変動に応じて溶接部Bの欠陥を検出する工程とを有する。
【0050】
第1の態様に係る配管溶接部の検査方法によれば、シール部S1と溶接部Bとの間の第2空間部R2に窒素を供給し、第2空間部R2の圧力の変動を検出するだけで、溶接部Bの欠陥を検出することができ、装置の簡素化を図ることができる。
【0051】
第2の態様に係る配管溶接部の検査方法は、既設配管P1および接続配管P2の径方向に所定間隔を空けて配置される第1シール部S1および第2シール部S2を設け、まず、第1シール部S1と第2シール部S2との間の第1空間部R1に窒素を供給し、第1空間部R1の圧力の変動に応じて第1シール部S1および第2シール部S2の無欠陥を検出し、次に、第1シール部S1と溶接部Bとの間の第2空間部R2に窒素を供給し、第2空間部R2の圧力の変動に応じて溶接部Bの欠陥を検出する。これにより、第1シール部S1および第2シール部S2の無欠陥を検出した後に溶接部Bの欠陥を検出することとなり、検出精度を向上することができる。
【0052】
第3の態様に係る配管溶接部の検査方法は、溶接部Bの欠陥を検出すると、溶接部Bに検出液を塗布し、検出液の形態の変化に応じて溶接部Bの欠陥位置を検出する。これにより、溶接部Bに塗布した検出液の形態の変化を確認することで、溶接欠陥位置を高精度に特定することができる。
【0053】
第4の態様に係る配管溶接部の検査方法は、カメラ(遠隔監視用カメラ)34により検出液の形態の変化を視認することで、溶接部Bの欠陥位置を検出する。これにより、溶接部Bに塗布した検出液の形態の変化をカメラ34の撮影画像により視認することで、溶接欠陥位置を容易に特定することができる。
【0054】
第5の態様に係る配管溶接部の検査方法は、検出液が浸透した塗布部材72を溶接部Bに押し付けた状態で、塗布部材72を周方向に移動することで溶接部Bに検出液を塗布する。これにより、溶接部Bに対して検出液を適切に塗布することができる。
【0055】
第6の態様に係る配管溶接部の検査方法は、既設配管P1および接続配管P2は、原子炉格納容器に設けられるペネトレーションであり、原子炉格納容器の外部から機器の遠隔操作により溶接部Bの検査を行う。これにより、高放射線環境下であっても、安全にペネトレーションの検査を実施することができる。
【0056】
第7の態様に係る配管溶接部の検査装置は、既設配管P1の端面と接続配管P2の端面との間にリング形状をなす第1シール部S1を介して接合された配管の溶接部Bを検査する配管溶接部の検査装置において、第1シール部S1と溶接部Bとの間の第2空間部R2に窒素を供給する窒素供給装置(検査用気体供給装置)31と、第2空間部R2の圧力の変動を検出する第2圧力センサ(検出装置)33と、溶接部Bに検出液を塗布する検出液塗布装置30とを備える。
【0057】
第8の態様に係る配管溶接部の検査装置は、第1配管P1と第2配管P2の少なくともいずれか一方に窒素を供給する供給ラインとしての第1供給路93aおよび第2供給路94aを設ける工程を有する。これにより、第1供給路93aおよび第2供給路94aにより第1配管P1と第2配管P2の接合部に適正に窒素を供給することができる。
【0058】
第9の態様に係る配管溶接部の検査装置によれば、窒素供給装置31によりシール部S1と溶接部Bとの間の第2空間部R2に窒素を供給し、第2圧力センサ33により第2空間部R2の圧力の変動を検出することで、溶接部Bの欠陥を検出することができる。また、検出液塗布装置30により溶接部Bに検出液を塗布し、検出液の形態の変化を撮影して確認することで、溶接欠陥位置を特定することができる。その結果、装置の簡素化を図ることができる。
【0059】
第10の態様に係る配管溶接部の検査装置は、検出液の形態の変化を撮影するカメラ(遠隔監視用カメラ)34が設けられる。これにより、カメラ34により検出液の形態の変化を撮影して確認することで、溶接欠陥位置を特定することができる。
【0060】
第9の態様に係る配管溶接部の検査装置は、検出液塗布装置30は、既設配管P1および接続配管P2の周方向および径方向に移動自在に支持される塗布装置本体71と、塗布装置本体71に設けられて検出液を吸水可能な塗布部材72と、塗布装置本体71に対して塗布部材72を溶接部Bに押圧させる圧縮コイルばね(付勢部材)73とを有する。これにより、塗布装置本体71に対して圧縮コイルばねにより塗布部材72を溶接部Bに押圧させることで、溶接部Bに検出液を適切に塗布することができる。
【0061】
第11の態様に係る配管溶接部の検査装置は、溶接ヘッド21は、ヘッド本体25の長手方向の一方側に溶接トーチ26が設けられ、ヘッド本体25の長手方向の他方側に検出液塗布装置30が設けられる。これにより、既設配管P1に対する接続配管P2の溶接作業と溶接部Bの検査作業を効率良く実施することができる。
【0062】
第12の態様に係る配管溶接部の検査装置は、既設配管P1および接続配管P2は、原子炉格納容器に設けられるペネトレーションである。これにより、高放射線環境下であっても、安全にペネトレーションの検査を実施することができる。
【0063】
なお、上述した実施形態では、検査装置12を溶接装置11の溶接ヘッド21に配置したが、検査装置12を溶接装置11とは別体に配置してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 配管溶接システム
11 溶接装置
12 検査装置(配管溶接部の検査装置)
13 制御装置
14 操作装置
15 表示装置
21 溶接ヘッド
22 軸方向移動装置
23 周方向移動装置
24 径方向移動装置
25 ヘッド本体
26 溶接トーチ
30 検出液塗布装置
31 窒素供給装置(検査用気体供給装置)
32 第1圧力センサ
33 第2圧力センサ(配管溶接部の検査装置)
34 カメラ(遠隔監視用カメラ、配管溶接部の検査装置)
51 装置本体
52 移動装置
53 ガイド筒
54 クランプ装置
55 作動軸
61 取付ベース
62 スライド装置
63 支持ベース
64 ねじ軸
65 駆動歯車
66 駆動装置
67 ワイヤノズル
68 移動軸
69 ピストン
70 シリンダ部
71 塗布装置本体
72 塗布部材
73 圧縮コイルばね(付勢部材)
74 連通路
75 チェック弁
76 溶接カメラ
77 照明
81 クランプ
91 第1ポート
92 第2ポート
93 第1供給ライン
93a 第1供給路
94 第2供給ライン
94a 第2供給路
95 第1開閉弁
96 第2開閉弁
97 窒素供給源
100 作業配管
P1 既設配管(第1配管)
P2 接続配管(第2配管)
P1a,P2a フランジ部
S1 第1シール部
S2 第2シール部
R1 第1空間部
R2 第2空間部