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特開2022-146645半導体装置、メモリシステム及び半導体記憶装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146645
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】半導体装置、メモリシステム及び半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 16/34 20060101AFI20220928BHJP
   G11C 16/04 20060101ALI20220928BHJP
   G11C 16/08 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G11C16/34 113
G11C16/04 170
G11C16/08 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047719
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 克彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 真司
【テーマコード(参考)】
5B225
【Fターム(参考)】
5B225BA01
5B225CA19
5B225DA03
5B225DA09
5B225DE16
5B225EA05
5B225EB10
5B225EH04
5B225EJ10
5B225FA01
(57)【要約】
【課題】リードディスターブの影響を早期に発見することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】本実施形態の半導体装置は、送受信回路と、制御回路とを有する。送受信回路は、半導体記憶装置と信号の送受信を行う。制御回路は、読み出し動作時に読み出し対象のワード線に隣接する隣接ワード線に印加する第1の電圧よりも高い第2の電圧が印加されるリードディスターブ検出用のワード線に接続された記憶素子の閾値分布情報を取得し、閾値分布情報に基づきリードディスターブの影響を判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体記憶装置と信号の送受信を行う送受信回路と、
読み出し動作時に読み出し対象のワード線に隣接する隣接ワード線に印加する第1の電圧よりも高い第2の電圧が印加されるリードディスターブ検出用のワード線に接続された記憶素子の閾値分布情報を取得し、前記閾値分布情報に基づきリードディスターブの影響を判定する制御回路と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記半導体記憶装置が備える複数のワード線のうち任意のワード線を前記リードディスターブ検出用のワード線に設定する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記半導体記憶装置が備える既存のダミーワード線を前記リードディスターブ検出用のワード線に設定する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記読み出し動作時に前記リードディスターブ検出用のワード線に前記第2の電圧を複数回印加するように制御する請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記読み出し動作時に前記隣接ワード線に前記第1の電圧を印加する第1の時間よりも前記リードディスターブ検出用のワード線に前記第2の電圧を印加する第2の時間を長くするように制御する請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
リードディスターブ検出用のワード線を備える半導体記憶装置と、
前記半導体記憶装置と信号の送受信を行う送受信回路と、読み出し動作時に読み出し対象のワード線に隣接する隣接ワード線に印加する第1の電圧よりも高い第2の電圧が印加される前記リードディスターブ検出用のワード線に接続された記憶素子の閾値分布情報を取得し、前記閾値分布情報に基づきリードディスターブの影響を判定する制御回路と、を備える半導体装置と、
を有するメモリシステム。
【請求項7】
リードディスターブ検出用のワード線と、
読み出し動作時に読み出し対象のワード線に隣接する隣接ワード線に印加する第1の電圧よりも高い第2の電圧を前記リードディスターブ検出用のワード線に印加するロウデコーダと、
前記リードディスターブ検出用のワード線に接続された記憶素子の閾値分情報を取得し、前記閾値分布情報に基づきリードディスターブの影響を判定するシーケンサと、
を有する半導体記憶装置。
【請求項8】
前記記憶素子は、メモリセルトランジスタ又はダミーセルトランジスタであって、
前記リードディスターブ検出用のワード線は、選択トランジスタと前記メモリセルトランジスタとの間、または、複数のメモリセルトランジスタのうち任意の2つの前記メモリセルトランジスタの間に配置された前記ダミーセルトランジスタに接続されたダミーワード線である請求項7に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記リードディスターブの影響を判定した判定結果を保持するレジスタを有する請求項7に記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置、メモリシステム及び半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性メモリは、読み出し動作を繰り返すことでメモリセルが意図しない電荷を保持し、同一ブロック内のワード線の電位が上昇するリードディスターブという現象が発生する。リードディスターブの影響の発見が遅れると、データの復元に失敗したり、データの復元の処理時間が増大したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-351399号公報
【特許文献2】特許第4952137号公報
【特許文献3】米国特許第9646709号明細書
【特許文献4】特許第4510060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、リードディスターブの影響を早期に発見することができる半導体装置、メモリシステム及び半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の半導体装置は、送受信回路と、制御回路とを有する。送受信回路は、半導体記憶装置と信号の送受信を行う。制御回路は、読み出し動作時に読み出し対象のワード線に隣接する隣接ワード線に印加する第1の電圧よりも高い第2の電圧が印加されるリードディスターブ検出用のワード線に接続された記憶素子の閾値分布情報を取得し、閾値分布情報に基づきリードディスターブの影響を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に関わるメモリシステムの構成を説明するためのブロック図である。
図2】第1の実施形態に関わるメモリセルアレイの構成を説明するための回路図である。
図3】読み出し動作時のリードディスターブの影響について説明するための図である。
図4】データ読み出し時の基本的なコマンドシーケンス及びダミーワード線へアクセスする際のコマンドシーケンスを示す図である。
図5】第1の実施形態の読み出し動作の一例を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態のリードディスターブの検知処理の一例を示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態に関わるメモリセルアレイの構成を説明するための回路図である。
図8】第2の実施形態の読み出し動作の一例を示すフローチャートである。
図9】第2の実施形態のリードディスターブの検知処理の一例を示すフローチャートである。
図10】第3の実施形態に関わるメモリセルアレイの構成を説明するための回路図である。
図11】第4の実施形態の読み出し動作の一例を示すフローチャートである。
図12】第5の実施形態に関わるメモリシステムの構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るメモリシステムについて説明する。以下では、半導体記憶装置として不揮発性メモリを備えたメモリシステムを例に挙げて説明する。
【0008】
[メモリシステムの全体構成]
まず、第1の実施形態に係るメモリシステムの大まかな全体構成について、図1を用いて説明する。
【0009】
図1は、第1の実施形態に関わるメモリシステムの構成を説明するためのブロック図である。図1に示すように、メモリシステム1は、不揮発性メモリ100とメモリコントローラ(以下、単にコントローラともいう)200とを備えている。不揮発性メモリ100とコントローラ200とは、例えば1枚の基板上に形成された半導体装置であり、その半導体装置は、例としてはSDカードのようなメモリカードや、SSD(ソリッドステートドライブ)等に使用される。
【0010】
不揮発性メモリ100は複数のメモリセルを備え、データを不揮発に記憶する半導体記憶装置であり、例えば、NANDフラッシュメモリを備えている。本実施形態では、不揮発性メモリ2は、メモリセルあたり2bit(4値)を記憶可能なメモリセルを有するNANDメモリ、すなわち2bit/Cell(MLC:Multi Level Cell)のNANDメモリであるとして説明するが、これに限定されるものではない。不揮発性メモリ2は、3次元化されている。
【0011】
コントローラ200は、メモリバスによって不揮発性メモリ100に接続され、ホストバスによってホスト機器300に接続される。そしてコントローラ200は、不揮発性メモリ100を制御し、またホスト機器300から受信した要求に応答して、不揮発性メモリ100にアクセスするメモリコントローラである。ホスト機器300は、例えばデジタルカメラやパーソナルコンピュータ等であり、ホストバスは、例えばSDインターフェースに従ったバスである。メモリバスは、メモリインターフェースに従った信号の送受信を行うバスである。
【0012】
メモリインターフェース(I/F)回路250を介して、不揮発性メモリ100とコントローラ200間で各種信号が送受信される。チップイネーブル信号CEn、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号WEn、及びリードイネーブル信号REnが、コントローラ200から不揮発性メモリ100へ供給される。レディ/ビジー信号RBnは、不揮発性メモリ100からコントローラ200へ供給される。入出力信号I/Oは、コントローラ200と不揮発性メモリ100間で送受信される。
【0013】
チップイネーブル信号CEnは、不揮発性メモリ100をイネーブルにするための信号であり、lowレベルでアサートされる。コマンドラッチイネーブル信号CLE及びアドレスラッチイネーブル信号ALEは、入出力信号I/Oがそれぞれコマンド及びアドレスであることを不揮発性メモリ100に通知する信号である。ライトイネーブル信号WEnは、lowレベルでアサートされ、入出力信号I/Oを不揮発性メモリ100に書き込むことを不揮発性メモリ100に通知する信号である。リードイネーブル信号REnも、lowレベルでアサートされ、不揮発性メモリ100からの読み出しデータを入出力信号I/Oに出力させるための信号である。レディ/ビジー信号RBnは、不揮発性メモリ100がレディ状態(コントローラ200からの命令を受信出来る状態)であるか、それともビジー状態(コントローラ200からの命令を受信出来ない状態)であるかを示す信号であり、lowレベルがビジー状態を示す。入出力信号I/Oは、例えば8ビットの信号である。そして入出力信号I/Oは、不揮発性メモリ100とコントローラ200との間で送受信されるデータの実体であり、コマンド、アドレス、書き込みデータ、及び読み出しデータ等である。
【0014】
[コントローラの構成]
次に、コントローラ200の構成の詳細について説明する。図1に示すようにコントローラ200は、ホストインターフェース(I/F)回路210、内蔵メモリであるランダムアクセスメモリ(以下、RAMという)220、中央処理装置(CPU)を有するプロセッサ230、バッファメモリ240、メモリインターフェース回路250、及びECC(Error Checking and Correcting)回路260を備えた回路である。
【0015】
ホストインターフェース回路210は、ホストバスを介してホスト機器300と接続され、ホスト機器300から受信した要求及びデータを、それぞれプロセッサ230及びバッファメモリ240に転送する。またプロセッサ230のコマンドに応答して、バッファメモリ240内のデータをホスト機器300へ転送する。
【0016】
RAM220は、例えばDRAMやSRAM等の半導体メモリであり、プロセッサ230の作業領域として使用される。そしてRAM220は、不揮発性メモリ100を管理するためのファームウェアや、管理情報MIを保持する。管理情報MIは、ルックアップテーブル(LUT)、シフトテーブル情報(TBL)等である。シフトテーブル情報TBLは、シフト情報を含む。シフト情報は、コントローラ200がデータの読み出し処理を実行するときに、データの読み出しレベルをシフトするための情報である。なお、RAM220は、内蔵メモリとして説明しているが、これに限定されるものではなく、外部の記憶装置(外付けメモリ)であってもよい。
【0017】
制御回路を構成するプロセッサ230は、コントローラ200全体の動作を制御する。例えばプロセッサ230は、ホスト機器300からデータ要求を受信した際には、それに応答して、メモリインターフェース回路250に対して読み出しコマンドを発行する。ホスト機器300からのデータ書き込み要求及びデータ消去要求を受信した際も、プロセッサ230は、受信した要求に対応するコマンドをメモリインターフェース回路250に対して同様に発行する。また、プロセッサ230は、ウェアレベリング等、不揮発性メモリ100を管理するための様々な処理を実行する。
【0018】
バッファメモリ240は、書き込みデータや読み出しデータを一時的に保持する。
【0019】
メモリインターフェース回路250は、メモリバスを介して不揮発性メモリ100と接続され、不揮発性メモリ100との通信を司る。そしてメモリインターフェース回路250は、プロセッサ230から受信したコマンドに基づき、コマンド、データなどを含む種々の信号を、不揮発性メモリ100へ送信し、また不揮発性メモリ100から各種信号及びデータを受信する。
【0020】
送受信回路を構成するメモリインターフェース回路250は、プロセッサ230から受信したコマンドに基づき、チップイネーブル信号CEn、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号WEn、及びリードイネーブル信号REnを不揮発性メモリ100へ出力する。また、データの書き込み時には、メモリインターフェース回路250は、プロセッサ230で発行された書き込みコマンド、及びバッファメモリ240内の書き込みデータを、入出力信号I/Oとして不揮発性メモリ100へ転送する。更に、データの読み出し時には、メモリインターフェース回路250は、プロセッサ230で発行された読み出しコマンドを、入出力信号I/Oとして不揮発性メモリ100へ転送し、更に不揮発性メモリ100から読み出されたデータを入出力信号I/Oとして受信し、これをバッファメモリ240へ転送する。
【0021】
ECC回路260は、不揮発性メモリ100に記憶されるデータに関するエラー検出及びエラー訂正処理を行う。すなわちECC回路260は、データの書き込み時にはエラー訂正符号を生成して、これを書き込みデータに付与し、データの読み出し時には、エラー訂正をしながらデータを復号する。
【0022】
[不揮発性メモリの構成]
次に、不揮発性メモリ100の構成について説明する。図1に示すように、不揮発性メモリ100は、メモリセルアレイ110、ロウデコーダ120、ドライバ回路130、カラムデコーダ140、アドレスレジスタ150、コマンドレジスタ160、及びシーケンサ170を備える。
【0023】
メモリセルアレイ110は、ロウ及びカラムに対応付けられた複数の不揮発性のメモリセルを含む複数のブロックBLKを備えている。図1では一例として4つのブロックBLK0~BLK3が図示されている。そしてメモリセルアレイ110は、コントローラ200から与えられたデータを不揮発に記憶する。
【0024】
ロウデコーダ120は、アドレスレジスタ150内のブロックアドレスBAに基づいてブロックBLK0~BLK3のいずれかを選択し、更に選択したブロックBLKにおけるワード線WLを選択する。
【0025】
ドライバ回路130は、アドレスレジスタ150内のページアドレスPAに基づいて、選択されたブロックBLKに対して、ロウデコーダ120を介して電圧を供給する。
【0026】
カラムデコーダ140は、複数のデータラッチ回路及び複数のセンスアンプを含む。各センスアンプは、データの読み出し時には、メモリセルアレイ110から読み出されたデータをセンスし、必要な演算を行う。そして、カラムデコーダ140は、データラッチ回路を介してこのデータDATをコントローラ200に出力する。カラムデコーダ140は、データの書き込み時には、コントローラ200から受信した書き込みデータDATを、データラッチ回路において受けた後に、メモリセルアレイ110に対する書き込み動作を実行する。
【0027】
アドレスレジスタ150は、コントローラ200から受信したアドレスADDを保持する。このアドレスADDには、前述のブロックアドレスBAとページアドレスPAとが含まれる。コマンドレジスタ160は、コントローラ200から受信したコマンドCMDを保持する。
【0028】
シーケンサ170は、コマンドレジスタ160に保持されたコマンドCMDに基づき、不揮発性メモリ100全体の動作を制御、例えば、書き込み動作、読み出し動作、消去動作等を実行する。
【0029】
次に、上記ブロックBLKの構成について図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に関わるメモリセルアレイの構成を説明するための回路図である。図示するように、1つのブロックBLKは例えば4つのストリングユニットSU(SU0~SU3)を含む。また各々のストリングユニットSUは、複数のNANDストリング6を含む。
【0030】
NANDストリング6の各々は、例えば8個のメモリセルトランジスタMT(MT0~MT7)、1個のダミーセルトランジスタDT、及び、2個の選択トランジスタST1、ST2を含んでいる。なお、NANDストリングNSに含まれるメモリセルトランジスタMTの個数は、ここでは8個であるが、8個に限られず、例えば、32個、48個、64個、96個でもよいし、他の任意の個数でもよい。選択トランジスタST1,ST2は、電気回路上は1つのトランジスタとして示しているが、構造上はメモリセルトランジスタMTと同じでもよい。また、例えばカットオフ特性を高めるために、選択トランジスタST1,ST2として、それぞれ複数の選択トランジスタを用いてもよい。
【0031】
各メモリセルトランジスタMTは、制御ゲートと電荷蓄積層とを備え、データを不揮発に保持する。ダミーセルトランジスタDTは、メモリセルトランジスタMTと同じ構造を有しているが、ホスト機器300からの要求に応じてメモリコントローラ200から送信されたデータの保持には使用されない。ダミーセルトランジスタDTは、リードディスターブの影響を検出するために用いられる。また、ダミーセルトランジスタDTには、該当ブロックBLKに初めてデータを書き込むプログラム動作を実行する際に、任意のダミーデータを書き込んでおくことができる。後述するように、ダミーセルトランジスタDTには、読み出し動作時にダミーワード線DWLを介して所定の電圧(VREADK+)が印加される。そして複数(例えば8個)のメモリセルトランジスタMT及びダミーセルトランジスタDTは、選択トランジスタST1のソースと選択トランジスタST2のドレインとの間に直列接続されている。
【0032】
なお、図2の例では、ダミーセルトランジスタDTは、メモリセルトランジスタMT2とMT3との間に配置(直列接続)されているが、これに限定されることなく、選択トランジスタT2とメモリセルトランジスタMT0との間、メモリセルトランジスタMT7と選択トランジスタST1との間、あるいは、メモリセルトランジスタMT0~MT7のうち、任意の2つのメモリセルトランジスタMTの間に配置(直列接続)されていればよい。
【0033】
ストリングユニットSU0~SU3の各々における選択トランジスタST1のゲートは、それぞれセレクトゲート線SGD0~SGD3に接続される。これに対してストリングユニットSU0~SU3の各々における選択トランジスタST2のゲートは、例えばセレクトゲート線SGSに共通接続される。もちろん、ストリングユニットSU0~SU3の各々における選択トランジスタST2のゲートは、ストリングユニット毎に異なるセレクトゲート線SGS0~SGS3に接続されても良い。また、同一のブロックBLK内にあるメモリセルトランジスタMT0~MT7の制御ゲートはそれぞれワード線WL0~WL7に共通接続される。
【0034】
同様に、同一のブロックBLK内にあるダミーセルトランジスタDTの制御ゲートはダミーワード線DWLに共通接続される。すなわち、ワード線WL0~WL7、ダミーワード線DWL及びセレクトゲート線SGSは、同一ブロックBLK内の複数のストリングユニットSU0~SU3間で共通に接続されているのに対し、セレクトゲート線SGDは、同一ブロックBLK内であってもストリングユニットSU0~SU3毎に独立している。
【0035】
また、メモリセルアレイ110内において同一列にある複数のNANDストリング6の選択トランジスタST1のドレインは、ビット線BL(BL0~BL(K-1)、但しKは2以上の自然数)に共通接続される。すなわちビット線BLは、複数のブロックBLK間で複数のNANDストリング6を共通に接続する。更に、複数の選択トランジスタST2のソースは、ソース線SLに共通に接続されている。
【0036】
つまり、各ストリングユニットSUは、互いに異なる複数のビット線BLに接続され、且つ同一のセレクトゲート線SGDに接続された複数のNANDストリング6を複数含む。また、各ブロックBLKは、各ワード線WLを共通にする複数のストリングユニットSUを複数含む。そしてメモリセルアレイ110は、各ビット線BLが共通に接続された複数のブロックBLKの集合体である。
【0037】
(読み出し動作)
次に、読み出し動作時のリードディスターブの影響について説明する。リードディスターブは、読み出し動作時に、読み出し非対象のワード線WLに高い電圧がかかることによりメモリセルトランジスタMTの閾値分布が崩れてデータが変化する現象である。
【0038】
図3は、読み出し動作時のリードディスターブの影響について説明するための図である。なお、図3では、ワード線WL0~WL7のうち、読み出し対象のワード線をワード線WLnとして説明する。
【0039】
メモリセルトランジスタMTが2ビットのデータを保持(記憶)する場合、メモリセルトランジスタMTは、4つの閾値電圧のうちのいずれかを有する。4つの閾値電圧を、低い方から順に、Er、A、B及びCレベルと呼ぶ。Er、A、B及びCレベルの各々に属する複数のメモリセルトランジスタMTの閾値は、複数の分布を形成する。Er、A、B及びCレベルの閾値分布にはそれぞれ、例えば、"11"データ、"01"データ、"00"データ、及び、"10"データが割り当てられる。閾値分布とデータとの割り当ては、任意に設定可能である。
【0040】
多値化されたメモリセルトランジスタMTからのデータの読み出しは、ロウデコーダ120によって、読み出し対象のワード線WLnに読み出し電圧Vcgを印加すると共に、カラムデコーダ140のセンスアンプによって、ビット線BLに読み出されたデータをセンスして、読み出したデータが"0"であるか"1"であるかを判定することで行われる。
【0041】
読み出し非対象のワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTを導通させるために、ロウデコーダ120は、読み出し非対象のワード線WLには各メモリセルトランジスタMTをオンにするために必要な十分に高い電圧VREADを与える。このとき、ロウデコーダ120は、読み出し非対象のワード線WLのうち、読み出し対象のワード線WLnに隣接しているリード非対象の隣接ワード線WLn-1、WLn+1については、読み出し電圧Vcgの昇圧を助けて高速な読み出しを実現するために、電圧VREADよりも若干高い電圧VREADKを与える。
【0042】
すなわち、読み出し対象のワード線WLnに隣接していないワード線WLn-2、LWn+2等には電圧VREADが印加され、読み出し対象のワード線WLnに隣接しているワード線WLn-1、WLn+1には電圧VREADよりも若干高い電圧VREADKが印加される。このため、読み出し対象のワード線WLnに隣接しているワード線WLn-1、WLn+1に接続されているメモリセルトランジスタMTがリードディスターブの影響を最も受けることになる。
【0043】
本実施形態では、リードディスターブの検出用のダミーワード線DWLを設け、ダミーワード線DWLに第1の電圧である電圧VREADKよりも若干高い第2の電圧である電圧VREADK+を印加する。これにより、ダミーワード線DWLに接続されているダミーセルトランジスタDTには、読み出し対象のワード線WLnに隣接しているワード線WLn-1、WLn+1に接続されているメモリセルトランジスタMTよりも高い電圧が印加される。そのため、ダミーワード線DWLに接続されているダミーセルトランジスタDTは、読み出し対象のワード線WLnに隣接しているワード線WLn-1、WLn+1に接続されているメモリセルトランジスタMTよりもリードディスターブの影響を受けることなる。
【0044】
コントローラ200は、プリコマンドを用いて不揮発性メモリ100のダミーワード線DWLに任意の時点でアクセスし、ダミーワード線DWLに接続された記憶素子を構成するダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報を取得する。
【0045】
コントローラ200は、ダミーワード線DWLにアクセスしてダミーワード線DWLに接続されたダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報を取得すると、取得した閾値分布情報を確認し、リードディスターブの影響を判定する。具体的には、コントローラ200は、消去レベル(Erレベル)から書き込みレベル(Aレベル)まで電位が上昇しているセル数を所定の閾値と比較し、電位が上昇しているセル数が所定の閾値未満の場合、リードディスターブの影響が小さいと判定し、電位が上昇しているセル数が所定の閾値以上の場合、リードディスターブの影響が大きいと判定する。
【0046】
コントローラ200は、リードディスターブの影響が小さいと判定した場合、処理を行わず、リードディスターブの影響が大きいと判定した場合、該当ブロックBLKのデータを新たなブロックBLKにコピーするように不揮発性メモリ100を制御し、リードディスターブの影響を初期化する。
【0047】
図4は、データ読み出し時の基本的なコマンドシーケンス及びダミーワード線へアクセスする際のコマンドシーケンスを示す図である。
【0048】
通常の読み出しでは、コマンドシーケンスSQ1に示すように、コントローラ200は、読み出し予約を行うコマンド"c01"を、入出力信号I/Oに出力する。コマンド"c01"に続いて、コントローラ200は、コマンド"c02"を入出力信号I/Oに出力することが示されている。コントローラ200は、コマンド"c02"に続いて、カラムアドレス及びロウアドレスを含む5サイクルのアドレスを入出力信号I/Oに出力する。
【0049】
5つのアドレスに続いて、コントローラ200は、コマンド"c30"を入出力信号I/Oに出力する。コマンド"c30"は、データの読み出しの実行を指示するコマンドである。よって、シーケンサ170は、指定されたアドレスからデータの読み出しを実行する。
【0050】
読み出されたデータは、カラムデコーダ140の各センスアンプによってセンスされ、各データラッチ回路に格納される。そして、カラムデコーダ140は、データラッチ回路に格納されたデータDATをコントローラ200に出力する。
【0051】
一方、ダミーワード線DWLにアクセスする場合、コマンドシーケンスSQ2に示すように、コントローラ200は、コマンド"c01"の前にプリコマンド"cd01"を入出力信号I/Oに出力する。プリコマンド"cd01"後のコマンド及びアドレスは、通常の読み出しのコマンドシーケンスSQ1と同様である。
【0052】
プリコマンド"cd01"は、ダミーワード線DWLにアクセスし、ダミーワード線DWLに接続されたダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報を取得するためのコマンドである。よって、シーケンサ170は、ダミーワード線DWLに接続されたダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報を取得してコントローラ200に出力する。
【0053】
図5は、第1の実施形態の読み出し動作の一例を示すフローチャートである。
コントローラ200は、不揮発性メモリ100に読み出しコマンドを発行する(S1)。不揮発性メモリ100のシーケンサ170は、読み出しコマンドを受けると、リードディスターブ検出用のダミーワード線DWLがあるか否かを判定する(S2)。シーケンサ170は、リードディスターブ検出用のダミーワード線DWLがあると判定した場合、ダミーワード線DWLに電圧VREADK+を印加する(S3。)
一方、S2の処理において、シーケンサ170がリードディスターブ検出用のダミーワード線DWLがないと判定した場合、または、S3の処理において、ダミーワード線DWLに電圧VREADK+が印加されると、不揮発性メモリ100が読み出し動作を実行する(S4)。最後に、不揮発性メモリ100は、読み出したデータDATをコントローラ200に出力し(S5)、読み出し動作を終了する。
【0054】
図6は、第1の実施形態のリードディスターブの検知処理の一例を示すフローチャートである。なお、リードディスターブの検知処理を実行するタイミングは任意でよい。例えば、同一のブロックBLKにおいて、読み出し動作が行われる度に実行してもよいし、読み出し動作が所定の回数行われる毎に実行してもよいし、所定の時間が経過する毎に実行してもよい。
【0055】
コントローラ200は、不揮発性メモリ100にプリコマンドを含むコマンドを発行し、ダミーワード線DWLにアクセスする(S11)。これにより、コントローラ200は、ダミーワード線DWLに接続されたダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報を取得する(S12)。次に、コントローラ200は、ダミーワード線DWLに接続されたダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報に問題があるか否かを判定する(S13)。
【0056】
コントローラ200は、ダミーワード線DWLに接続されたダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報に問題があると判定した場合、該当ブロックBLKのデータを他のブロックBLKにコピーし(S14)、処理を終了する。一方、コントローラ200は、ダミーワード線DWLに接続されたダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報に問題がないと判定した場合、そのまま処理を終了する。
【0057】
以上のように、不揮発性メモリ100は、リードディスターブの影響を早期に検出するためのダミーワード線DWL及びダミーセルトランジスタDTを新たに設け、読み出し動作を行う際に、読み出し対象のワード線WLnに隣接するワード線WLn-1、WLn+1に印加する電圧VREADKよりも若干高い電圧VREADK+をダミーワード線DWLに印加するようにした。これにより、当該ブロック内では、新たに設けたダミーワード線DWLに接続されたダミーセルトランジスタDTがリードディスターブの影響を最も受けることになる。
【0058】
コントローラ200は、不揮発性メモリ100のダミーワード線DWLに任意の時点でアクセス、ダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報を取得することで、リードディスターブの影響を早期に検出することができる。よって、本実施形態のコントローラ200によれば、リードディスターブの影響を早期に発見することができる。
【0059】
一般的に、リードディスターブの影響を最も受けるワード線WLは、ブロックBLK内の同じワード線WLが何度も読み出される、あるいは、ブロックBLK内のワード線WLがシーケンシャルに読み出される等の読み出し状況によって変わるため、一意に定めることができない。そのため、リードディスターブの影響を確認する際には、ブロックBLK内の全てのワードWLに接続されたメモリセルトランジスタMTの閾値分布情報を確認する必要がある。
【0060】
これに対して、本実施形態では、ブロックBLK内でリードディスターブの影響を最も受けているのがダミーワード線DWLに接続されたダミーセルトランジスタDTであるため、リードディスターブの影響を確認する際にアクセスするワード線WLをダミーワード線DWLに一意に定めることができる。
【0061】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に関わるメモリセルアレイの構成を説明するための回路図である。なお、図7において、図2と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図7に示すように、第2の実施形態のブロックBLKは、図2に示すブロックBLKからダミーワード線DWL及びダミーワード線DWLに接続されているダミーセルトランジスタDTが削除されて構成されている。そして、本実施形態では、ワード線WL0~WL7のうち、任意のワード線WLをリードディスターブ検出用に設定することができる。この設定は、不揮発性メモリ100を制御するコントローラ200及びコントローラ200が実行するソフトウエアによって実行される。これにより、本実施形態では、ダミーワード線DWLを新規に設けることなく、既存のワード線WL0~WL7のうち、設定された任意のワードWLをリードディスターブの影響を検出するために用いることができる。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0063】
不揮発性メモリ100を制御するコントローラ200及びコントローラ200が実行するソフトウエアによって、例えば、ワード線WL2がリードディスターブ検出用に設定された場合、コントローラ200は、ワード線WL2には通常のデータの書き込み動作及び読み出し動作は行わないように制御する。そして、読み出し動作時に、読み出し対象のワード線WLnに隣接するワード線WLn-1、WLn+1に印加される電圧VREADKよりも若干高い電圧VREADK+をワード線WL2に印加する。
【0064】
本実施形態では、不揮発性メモリ100を制御するコントローラ200及びコントローラ200が実行するソフトウエアにおいて、ワード線WL0~WL7のうち、任意のワード線WLをリードディスターブ検出用に設定する。コントローラ200は、リードディスターブ検出用のワード線WLを設定すると、読み出し動作時にプリコマンドを使用して、リードディスターブ検出用のワード線WLに電圧VREADK+を印加するように制御する。
【0065】
また、コントローラ200は、プリコマンドを使用して不揮発性メモリ100のリードディスターブ検出用に設定されたワード線WLにアクセスし、そのワード線WLに接続された記憶素子を構成するメモリセルトランジスタMTの閾値分布情報を任意の時点で確認することで、リードディスターブの影響を早期に検出する。コントローラ200は、リードディスターブ検出用に設定されたワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTの閾値分布情報に問題があると判断すると、該当ブロックBLKのデータを他のブロックBLKにコピーし、リードディスターブの影響を初期化する。
【0066】
図8は、第2の実施形態の読み出し動作の一例を示すフローチャートである。なお、図8において、図5と同様の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
コントローラ200は、ワード線WL0~WL7のうち、任意のワード線WLをリードディスターブ検出用に設定する(S21)。コントローラ200は、不揮発性メモリ100に読み出しコマンドを発行する(S22)。不揮発性メモリ100のシーケンサ170は、読み出しコマンドを受けると、読み出しコマンドにプリコマンドが含まれているか否かを判定する(S23)。シーケンサ170は、読み出しコマンドにプリコマンドが含まれていると判定した場合、リードディスターブ検出用に設定されたワード線WLに電圧VREADK+を印加する(S24。)
一方、S23の処理において、シーケンサ170が読み出しコマンドにプリコマンドが含まれていないと判定した場合、または、S24の処理において、リードディスターブ検出用に設定されたワード線WLに電圧VREADK+が印加されると、S4の処理において、不揮発性メモリ100が読み出し動作を実行する。その後、S5の処理において、不揮発性メモリ100が読み出したデータDATをコントローラ200に出力し、読み出し動作を終了する。
【0068】
図9は、第2の実施形態のリードディスターブの検知処理の一例を示すフローチャートである。なお、リードディスターブの検知処理を実行するタイミングは任意でよい。また、図9において、図6と同様の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
コントローラ200は、リードディスターブ検出用に設定されたワード線WLへアクセスするプリコマンドを出力する(S31)。これにより、コントローラ200は、リードディスターブ検出用に設定されたワード線WLに接続されたメモリセルトランジスタMTの閾値分布情報を取得する(S32)。
【0070】
コントローラ200は、S12の処理において、閾値分布情報に問題がないと判定すると、そのまま処理を終了する。一方、コントローラ200は、S12の処理において、閾値分布情報に問題があると判定すると、S13の処理において、該当ブロックBLKのデータを他のブロックBLKにコピーし、処理を終了する。
【0071】
以上のように、コントローラ200及びコントローラ200が実行するソフトウエアにおいて、ワード線WL0~WL7のうち、任意のワード線WLをリードディスターブ検出用に設定する。そして、コントローラ200は、プリコマンドを用いてリードディスターブ検出用に定めたワード線WLにアクセスするようにした。この結果、本実施形態のコントローラ200は、不揮発性メモリ100がリードディスターブ検出用のダミーワード線DWLを有していない場合であっても、リードディスターブの影響を早期に発見することができる。
【0072】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に関わるメモリセルアレイの構成を説明するための回路図である。なお、図10において、図7と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
通常、NANDストリング6の各々は、選択トランジスタST2とメモリセルトランジスタMT0との間に既存のダミーセルトランジスタが設けられ、選択トランジスタST1とメモリセルトランジスタMT7との間に既存のダミーセルトランジスタが設けられている。既存のダミーセルトランジスタは、データを記憶するためのものではなく、書き込み動作や消去動作中に、メモリセルトランジスタや選択トランジスタが受けるディスターブを緩和する機能を有する。
【0074】
図10に示すように、NANDストリング6の各々は、選択トランジスタST2とメモリセルトランジスタMT0との間に既存のダミーセルトランジスタDT1が直列に接続されて構成されている。また、NANDストリング6の各々は、選択トランジスタST1とメモリセルトランジスタMT7との間に既存のダミーセルトランジスタDT2が直列に接続されて構成されている。
【0075】
同一のブロックBLK内にあるダミーセルトランジスタDT1の制御ゲートは、ダミーワード線DWL1に共通接続される。同様に、同一のブロックBLK内にあるダミーセルトランジスタDT2の制御ゲートは、ダミーワード線DWL2に共通接続される。
【0076】
なお、本実施形態では、選択トランジスタST2とメモリセルトランジスタMT0との間に1個のダミーセルトランジスタDT1が直列に接続されているが、選択トランジスタST2とメモリセルトランジスタMT0との間に2個以上のダミーセルトランジスタが直列に接続されていてもよい。同様に、選択トランジスタST1とメモリセルトランジスタMT7との間に1個のダミーセルトランジスタDT2が直列に接続されているが、選択トランジスタST1とメモリセルトランジスタMT7との間に2個以上のダミーセルトランジスタが直列に接続されていてもよい。
【0077】
コントローラ200は、既存のダミーワード線DWL1又はDWL2のうち、いずれか1つの既存のダミーワード線をリードディスターブ検出用のワード線に設定する。シーケンサ170は、コントローラ200からのコマンドに基づき、リードディスターブ検出用のワード線に設定された既存のダミーワード線DWL1又はDWL2にアクセスすることができる。すなわち、読み出し動作時には、シーケンサ170は、コントローラ200からのコマンドに基づき、既存のダミーワード線DWL1又はDWL2に電圧VREADK+を印加する。その他の構成及び動作は、第1又は第2の実施形態と同様である。
【0078】
コントローラ200は、既存のダミーワード線DWL1又はDWL2に接続された既存のダミーセルトランジスタDT1又はDT2の閾値分布情報を取得することで、リードディスターブの影響を早期に検出することができる。
【0079】
以上のように、コントローラ200は、既存のダミーワード線DWL1又はDWL2をリードディスターブ検出用のワード線に設定し、既存のダミーワード線DWL1又はDWL2に接続された既存のダミーセルトランジスタDT1又はDT2の閾値分布情報に基づき、リードディスターブの影響を検出する。この結果、本実施形態のコントローラ200は、不揮発性メモリ100にリードディスターブ検出用のダミーワード線DWLを新たに設けることなく、リードディスターブの影響を早期に発見することができる。
【0080】
(第4の実施形態)
第4の実施形態のハードウェア構成は、第1の実施形態と同様である。本実施形態では、読み出し動作時にダミーワード線DWLに電圧VREADKよりも若干高い電圧VREADK+を複数回印加する。なお、本実施形態のハードウェア構成は、第2の実施形態と同様であってもよい。すなわち、本実施形態は、ダミーワード線DWLを備えず、ワード線WL0~WL7のうち、リードディスターブ検出用に設定された任意のワード線WLに対して、電圧VREADKよりも若干高い電圧VREADK+を複数回印加してもよい。
【0081】
図11は、第4の実施形態の読み出し動作の一例を示すフローチャートである。なお、図11において、図5と同様の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
S2の処理において、リードディスターブ検出用のダミーワード線DWLがあると判定されると、シーケンサ170は、ダミーワード線DWLに電圧VREADK+を複数回印加し(S41)、S3の処理に進む。その他の処理は、図5と同様である。
【0083】
以上の処理により、電圧VREADKよりも高い電圧VREADK+をダミーワード線DWLに意図的に複数回印加することで、ダミーワード線DWLのリードディスターブの影響が他のワード線WLのリードディスターブの影響よりも大きくなる。これにより、ダミーワード線DWLに接続されたダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報を確認することで、該当ブロックBLKのリードディスターブの影響を早期に検出することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、ダミーワード線DWLに電圧VREADK+を複数回印加してダミーワード線DWLのリードディスターブの影響を他のワード線WLのリードディスターブの影響よりも大きくしているが、これに限定されるものではない。例えば、シーケンサ170は、コントローラ200からのコマンドに基づいて読み出し動作を実行する際に、隣接ワード線WLn-1、LWn+1に第1の電圧である電圧VREADKを印加する第1の時間よりも、リードディスターブ検出用のダミーワード線DWLに電圧VREADK+を印加する第2の時間を長くするように制御してもよい。
【0085】
(第5の実施形態)
図12は、第5の実施形態に関わるメモリシステムの構成を説明するためのブロック図である。なお、メモリセルアレイ110の構成は、ダミーワード線DWLを有する図2の構成と同様である。また、メモリセルアレイ110の構成は、図2の構成に限定されるものではなく、図7の構成の構成であってもよい。すなわち、本実施形態は、ダミーワード線DWLを備えず、ワード線WL0~WL7のうち、任意のワード線WLをリードディスターブ検出用に設定する構成であっても適用することができる。
【0086】
図12に示すように、メモリシステムは、不揮発性メモリ100に代わり、不揮発性メモリ100Aを有して構成されている。不揮発性メモリ100Aは、不揮発性メモリ100に対してレジスタ180が追加されて構成されている。
【0087】
シーケンサ170は、ダミーワード線DWLに任意の時点でアクセスし、ダミーワード線DWLに接続されたダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報を取得する。そして、シーケンサ170は、閾値分布情報に問題があるか否かを判定し、判定結果をフラグとしてレジスタ180に格納する。例えば、シーケンサ170は、閾値分布情報に問題があると判定した場合、フラグとして"1"をレジスタ180に格納し、閾値分布情報に問題がないと判定した場合、フラグとして"0"をレジスタ180に格納する。
【0088】
コントローラ200は、読み出し動作時にプリコマンドによりレジスタ180に格納されたフラグ情報を取得し、閾値分布情報に問題があると判断すると、該当ブロックBLKのデータを他のブロックBLKにコピーし、リードディスターブの影響を初期化する。
【0089】
以上のように、不揮発性メモリ100Aがリードディスターブの影響を検出し、その検出結果をフラグとしてレジスタ180に格納する。コントローラ200は、ダミーワード線DWLにアクセスし、ダミーセルトランジスタDTの閾値分布情報を判定することなく、レジスタ180のフラグを確認することでリードディスターブの影響を初期化するか否かを容易に判定することができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、一例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1…メモリシステム、6…ストリング、100,100A…不揮発性メモリ、110…メモリセルアレイ、120…ロウデコーダ、130…ドライバ回路、140…カラムデコーダ、150…アドレスレジスタ、160…コマンドレジスタ、170…シーケンサ、180…レジスタ、200…メモリコントローラ、210…ホストインターフェース回路、220…RAM、230…プロセッサ、240…バッファメモリ、250…メモリインターフェース回路、260…ECC回路、300…ホスト機器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12