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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146651
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】木質床版位置決め構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20220928BHJP
   E04B 5/08 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
E04B5/02 F
E04B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047726
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】花井 厚周
(72)【発明者】
【氏名】梁田 真史
(72)【発明者】
【氏名】川口 泰輝
(57)【要約】
【課題】梁に対して木質床版を容易に位置決めすることができる木質床版位置決め構造を得ることを目的とする。
【解決手段】木質床版位置決め構造は、梁20と、床版幅方向に積層された複数の長尺木質床版34,36を有し、梁20の梁天端22Uに載置される木質床版30と、長尺木質床版34,36の下端部34L,36Lを木質床版30の厚み方向にずらすことにより木質床版30の下面30Kに形成され、木質床版30を梁天端22Uに載置した状態で、梁20と接触し、又は当該梁20と対向する突出部40と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁と、
床版幅方向に積層された複数の長尺木質床版を有し、前記梁の梁天端に載置される木質床版と、
複数の前記長尺木質床版の下端部を前記木質床版の厚み方向にずらすことにより前記木質床版の下面に形成され、前記木質床版を前記梁天端に載置した状態で、前記梁と接触し、又は該梁と対向する係合部と、
を備える木質床版位置決め構造。
【請求項2】
前記梁と前記係合部との間の隙間を埋めるスペーサ部材を備える、
請求項1に記載の木質床版位置決め構造。
【請求項3】
前記係合部は、前記木質床版の下面から突出する突出部、又は前記木質床版の下面に形成された段差部とされる、
請求項1又は請求項2に記載の木質床版位置決め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質床版位置決め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木質床版と梁との接合構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、軽量気泡コンクリート(ALC)の床パネルと梁との接合構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-190102号公報
【特許文献2】特開2001-262756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、木質床版を梁の梁天端上に設置する際に、重機等によって木質床版を梁天端上に吊り降ろすことが考えられる。
【0006】
しかしながら、この場合、作業者は、例えば、揚重機等によって木質床版を梁天端から若干浮かせた状態で、梁に対して木質床版を位置決めしなければならず、木質床版の位置決めに手間がかかる。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、梁に対して木質床版を容易に位置決めすることができる木質床版位置決め構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の木質床版位置決め構造は、梁と、床版幅方向に積層された複数の長尺木質床版を有し、前記梁の梁天端に載置される木質床版と、複数の前記長尺木質床版の下端部を前記木質床版の厚み方向にずらすことにより前記木質床版の下面に形成され、前記木質床版を前記梁天端に載置した状態で、前記梁と接触し、又は該梁と対向する係合部と、を備える。
【0009】
請求項1に係る木質床版位置決め構造によれば、木質床版は、床版幅方向に積層された複数の長尺木質床版を有する。また、木質床版は、梁の梁天端に載置される。この木質床版の下面には、係合部が形成される。
【0010】
係合部は、長尺木質床版の下端部を木質床版の厚み方向にずらすことにより木質床版の下面に形成され、木質床版を梁天端に載置した状態で、梁と接触し、又は当該梁と対向する。この係合部を梁に係合させることにより、梁に対して木質床版を容易に位置決めすることができる。
【0011】
また、係合部は、長尺木質床版の下端部を木質床版の厚み方向にずらすことにより、木質床版の下面に形成される。したがって、木質床版の製作性が向上する。
【0012】
さらに、梁と係合部との間で応力を伝達可能にすることにより、例えば、梁と木質床版との接合構造を簡略化することができる。
【0013】
請求項2に記載の木質床版位置決め構造は、請求項1に記載の木質床版位置決め構造において、前記梁と前記係合部との間の隙間を埋めるスペーサ部材を備える。
【0014】
請求項2に係る木質床版位置決め構造によれば、梁と係合部との間の隙間をスペーサ部材で埋めることにより、梁と係合部との間の応力の伝達効率が高められる。したがって、梁と木質床版との接合構造をさらに簡略化することができる。
【0015】
請求項3に記載の木質床版位置決め構造は、請求項1又は請求項2に記載の木質床版位置決め構造において、前記係合部は、前記木質床版の下面から突出する突出部、又は前記木質床版の下面に形成された段差部とされる。
【0016】
請求項3に係る木質床版位置決め構造によれば、長尺木質床版の下端部を木質床版の厚み方向にずらすことにより、木質床版の下面から突出する突出部を形成し、又は木質床版の下面に段差部を形成する。これにより、木質床版の下面に係合部を容易に形成することができる。したがって、木質床版の製作性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、梁に対して木質床版を容易に位置決めすることができる木質床版位置決め構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第一実施形態に係る木質床版位置決め構造が適用された構造物の所定階を示す平面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図2に示される木質床版の突出部の製作過程を示す断面図である。
図4】第二実施形態に係る木質床版位置決め構造が適用された木質床版を示す図2に対応する断面図である。
図5図4に示される木質床版の段差部の製作過程を示す断面図である。
図6】第一実施形態に係る木質床版位置決め構造の変形例を示す図2に対応する断面図である。
図7】第一実施形態に係る木質床版位置決め構造の変形例を示す図1に対応する平面図である。
図8】第一実施形態に係る木質床版位置決め構造の変形例を示す図2に対応する断面図である。
図9】第一実施形態に係る木質床版位置決め構造の変形例を示す図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態に係る木質床版位置決め構造について説明する。
【0020】
(木質床版位置決め構造)
図1には、本実施形態に係る木質床版位置決め構造が適用された構造物10の所定階が示されている。構造物10は、複数の柱14と、複数の梁20と、一対の水平ブレース16と、木質床版30とを備えている。
【0021】
複数の柱14は、角形鋼管によって形成されており、水平二方向に配列されている。隣り合う柱14には、梁20がそれぞれ架設されている。なお、柱14は、鉄骨造に限らず、CFT造や、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等であっても良い。
【0022】
複数(4本)の梁20は、平面視にて、矩形状の平面架構12を構成している。この平面架構12は、一対の水平ブレース16によって補強されている。一対の水平ブレース16は、平面架構12の対角上に沿って配置されており、その両端部が柱14又は梁20の端部に接合されている。なお、水平ブレース16は、適宜省略可能である。
【0023】
図2に示されるように、梁20は、H形鋼によって形成されている。この梁20は、上下方向に互いに対向する上側フランジ部22及び下側フランジ部24と、上側フランジ部22及び下側フランジ部24を接続するウェブ部26とを有している。
【0024】
(木質床版)
木質床版30は、NLT(Nail Laminated Timber)によって版状に形成されている。なお、木質床版30は、NLTに限らず、DLT(Dowel Laminated Timber)によって版状に形成されても良い。
【0025】
木質床版30は、厚み方向から見て、全体として、矩形状に形成されている。この木質床版30の外周部は、4本の梁20に沿って配置されており、これらの梁20の梁天端22Uに載置されている。
【0026】
なお、木質床版30の各角部には、柱14との干渉を避けるための切欠き32(図1参照)が形成されている。また、木質床版30の上面は、現しでも良いし、例えば、コンクリートやセルフレベリング材等によって被覆しても良い。
【0027】
木質床版30は、複数の長尺木質床版34,36を有している。長尺木質床版34,36は、例えば、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)等で使用される規格化された木質の板材(ツーバイ材、ワンバイ材等)とされている。また、長尺木質床版34,36は、断面矩形状の長尺部材とされている。
【0028】
なお、各図に示される矢印Xは、長尺木質床版34,36の長手方向(以下、「板材長手方向」という)を示している。また、矢印Yは、木質床版30の幅方向(以下、「床版幅方向」という)を示している。さらに、矢印Tは、木質床版30の厚み方向を示している。
【0029】
図3に示されるように、複数の長尺木質床版34,36は、各々の板厚方向を木質床版30の床版幅方向(矢印Y方向)として配置されている。これらの長尺木質床版34,36は、木質床版30の床版幅方向に積層された状態で、複数の釘38によって接合されている。
【0030】
(突出部)
図1に示されるように、木質床版30の外周部の下面30K(図2参照)には、複数の突出部40,42が形成されている。なお、突出部40,42は、係合部の一例である。
【0031】
突出部40は、木質床版30の床版幅方向両側の端部30E1における下面30Kにそれぞれ設けられている。また、突出部40は、床版幅方向に互いに対向する梁20の間に配置されている。さらに、突出部40は、水平ブレース16と干渉しないように、木質床版30の端部30E1における板材長手方向の中間部に配置されている。
【0032】
突出部42は、木質床版30の板材長手方向両側の端部30E2における下面30Kにそれぞれ設けられている。また、突出部42は、板材長手方向に互いに対向する梁20の間に配置されている。さらに、突出部42は、木質床版30の端部30E2において、床版幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0033】
図2に示されるように、突出部40は、梁20に対して梁幅方向一方側(木質床版30の中央側)に配置されている。また、突出部40は、長尺木質床版34,36の長手方向に延びるとともに、木質床版30の下面30Kから下方へリブ状に突出している。
【0034】
突出部40は、複数の長尺木質床版34,36の下端部34L,36Lを、木質床版30の厚み方向(矢印T方向)にずらすことにより形成されている。具体的には、突出部40は、2枚の長尺木質床版36の下端部36Lによって形成されている。
【0035】
長尺木質床版36の幅W2は、木質床版30における突出部40以外の部位(以下、「一般部30A」という)を形成する長尺木質床版34の幅W1よりも広くされている。つまり、木質床版30は、幅W1,W2が異なる2種類の長尺木質床版34,36によって形成されている。
【0036】
図3に示されるように、長尺木質床版34,36は、各々の上端部34U,36Uを揃えた状態、すなわち各々の上端部34U,36Uを同じ高さにした状態で、床版幅方向に積層されている。これにより、長尺木質床版36の下端部36Lが、長尺木質床版34の下端部34Lよりも下方に位置している。換言すると、長尺木質床版36の下端部36Lは、長尺木質床版34の下端部34Lに対して下方にずらされている。これらの長尺木質床版36の下端部36Lによって、木質床版30の下面30Kに、リブ状の突出部40が形成されている。
【0037】
なお、長尺木質床版34,36の上端部34U,36Uは、必ずしも同じ高さに配置する必要はなく、木質床版30の厚み方向にずれて配置されても良い。
【0038】
図2に示されるように、突出部40の側面40Sは、木質床版30の端部30E1を梁20の梁天端22U上に載置した状態で、梁20の上側フランジ部22の端部(位置決め部)と接触される。このように突出部40の側面40Sを上側フランジ部22の端部に係合(接触)させることにより、梁20に対して木質床版30の端部30E1が位置決められる。
【0039】
なお、図1に示されるように、木質床版30の床版幅方向一方側の突出部40(図1の左側)を一方の梁20の上側フランジ部22の端部に接触させた場合、木質床版30の床版幅方向他方側の突出部40(図1の右側)と他方の梁20の上側フランジ部22の端部との間には、隙間が形成される。つまり、木質床版30の床版幅方向他方側の突出部40は、他方の梁20の上側フランジ部22(図2参照)の端部と対向する。
【0040】
図1に示されるように、突出部42は、突出部40と同様に、例えば、2枚の長尺木質床版36によって形成される。突出部42の長手方向の端部(端面)42Eは、木質床版30の端部30E2を梁20の梁天端22U上に載置した状態で、梁20の上側フランジ部22の端部と接触され、又は対向される。
【0041】
なお、突出部40,42を形成する長尺木質床版36の枚数や長さは、適宜変更可能である。また、突出部40,42は、少なくとも1枚の長尺木質床版36によって形成することができる。
【0042】
(作用)
次に、第一実施形態の作用について説明する。
【0043】
木質床版30の外周部を複数の梁20の梁天端22U上に設置する場合、重機等によって木質床版30を吊り上げ、木質床版30の外周部を、複数の梁20の梁天端22U上に吊り降ろすことが考えられる。
【0044】
しかしながら、この場合、作業者は、揚重機等によって木質床版30の外周部を、複数の梁20の梁天端22Uから若干浮かせた状態で、これらの梁20に対して木質床版30の外周部を位置決めしなければならず、木質床版30の位置決めに手間がかかる。
【0045】
この対策として本実施形態では、図1に示されるように、木質床版30の外周部の下面30Kに、複数の突出部40,42が形成されている。突出部40は、木質床版30の両側の端部30E1の下面30Kから下方へリブ状にそれぞれ突出している。これにより、一方の突出部40を、一方の梁20の上側フランジ部22の端部に接触させることにより、平面架構12に対して木質床版30を床版幅方向に位置決めすることができる。
【0046】
また、複数の突出部42は、木質床版30の両側の端部30E2の下面30Kから下方へリブ状に突出している。これにより、一方の突出部42を、一方の梁20の上側フランジ部22の端部に係合させることにより、平面架構12に対して木質床版30を板材長手方向に位置決めすることができる。したがって、木質床版30の施工性が向上する。
【0047】
さらに、図3に示されるように、木質床版30は、複数の長尺木質床版34,36を床版幅方向に積層した状態で、複数の釘38を打ち込むことにより形成される。したがって、例えば、現場において、各木質床版30のサイズ調整等を容易に行うことができる。さらに、長尺木質床版34,36として、ツーバイ材やワンバイ材の規格品を使用することにより、材料コストを削減することができる。
【0048】
また、突出部40は、幅W1,W2が異なる長尺木質床版34,36を、各々の上端部34U,36Uを揃えた状態で床版幅方向に積層することにより形成される。これと同様に、突出部42は、幅が異なる長尺木質床版34,36を、各々の上端部34U,36Uを揃えた状態で床版幅方向に積層することにより形成される。したがって、木質床版30の下面30Kに突出部40,42を容易に形成することができるため、木質床版30の製作性が向上する。
【0049】
さらに、梁20の上側フランジ部22の端部と突出部40との間で応力を伝達可能にすることにより、梁20に対する木質床版30の接合構造を簡略化することができる。
【0050】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、上記第一実施形態と同様の構成には、同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0051】
(段差部)
図4に示されるように、第二実施形態では、木質床版30の外周部の下面30Kに、段差部50が形成されている。段差部50は、例えば、木質床版30の端部30E1の下面30Kに形成されている。なお、段差部50は、係合部の一例である。
【0052】
段差部50は、木質床版30の端部の厚みを薄くすることにより、木質床版30の下面30Kに段状に形成されている。この段差部50は、複数の長尺木質床版54,56の下端部54L,56Lを、木質床版30の厚み方向(矢印T方向)にずらすことにより形成されている。
【0053】
具体的には、木質床版30の端部30E1には、薄版部30Bが形成されている。薄版部30Bは、木質床版30の端部30E1に沿って形成されている。この薄版部30Bの厚み(W3)は、薄版部30B以外の部位(以下、「一般部30A」という)の厚み(W4)よりも薄くされている。
【0054】
薄版部30Bは、複数の長尺木質床版56によって形成され、一般部30Aは、長尺木質床版54によって形成されている。長尺木質床版56の幅W4は、長尺木質床版56の幅W3よりも狭くされている。つまり、木質床版30は、幅W3,W4が異なる2種類の長尺木質床版54,56によって形成されている。
【0055】
図5に示されるように、長尺木質床版54,56は、各々の上端部54U,56Uを揃えた状態、すなわち各々の上端部54U,56Uを同じ高さにした状態で、床版幅方向に積層されている。これにより、長尺木質床版56の下端部56Lが、長尺木質床版54の下端部54Lよりも上方に位置している。換言すると、長尺木質床版56の下端部56Lは、長尺木質床版54の下端部54Lに対して上方にずらされている。これにより、薄版部30Bの下面と一般部30Aの下面との間に、段状の段差部50が形成されている。
【0056】
図4に示されるように、段差部50は、木質床版30の床版幅方向の端部30E1を梁20の梁天端22U上に載置した状態で、梁20の上側フランジ部22の端部と接触される。このように段差部50を梁20の上側フランジ部22の端部に係合(接触)させることにより、梁20に対して木質床版30の端部30E1が床版幅方向に位置決められる。
【0057】
なお、段差部50を形成する長尺木質床版54の枚数や長さは、適宜変更可能である。また、段差部50は、少なくとも1枚の長尺木質床版54によって形成することができる。
【0058】
(作用)
次に、第二実施形態の作用について説明する。
【0059】
図4に示されるように、本実施形態では、木質床版30の端部30E1の下面30Kに、段差部50が形成されている。段差部50は、木質床版30の端部30E1に沿って段状に形成されている。これにより、段差部50を、梁20の上側フランジ部22の端部に接触させることにより、梁20に対して木質床版30を床版幅方向に位置決めすることができる。したがって、木質床版30の施工性が向上する。
【0060】
また、木質床版30は、複数の長尺木質床版54,56を床版幅方向に積層した状態で、複数の釘38を打ち込むことにより形成される。したがって、例えば、現場において、各木質床版30のサイズ調整等を容易に行うことができる。
【0061】
また、例えば、木質床版30の一般部30Aを工場等において予め製作しておき、現場において、状況に応じて木質床版30の薄版部30Bを制作することも可能である。さらに、長尺木質床版54,56として、ツーバイ材やワンバイ材の規格品を使用することにより、材料コストを削減することができる。
【0062】
また、段差部50は、幅W3,W4が異なる長尺木質床版54,56を、各々の上端部54U,56Uを揃えた状態で床版幅方向に積層することにより、木質床版30の下面30Kに容易に形成することができる。したがって、木質床版30の製作性が向上する。
【0063】
さらに、梁20の上側フランジ部22の端部と段差部50との間で応力を伝達可能にすることにより、梁20に対する木質床版30の接合構造を簡略化することができる。
【0064】
(変形例)
次に、上記第一実施形態及び第二実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、上記第二実施形態にも適宜適用可能である。
【0065】
図6に示される変形例では、木質床版30の端部30E1を梁20の梁天端22U上に載置した状態で、突出部40の側面40Sが、梁20の上側フランジ部22の端部と対向している。そして、突出部40の側面40Sと上側フランジ部22の端部との間に形成された隙間62に、スペーサ部材60が配置されている。
【0066】
スペーサ部材60は、例えば、金属板や木質板等によって板状に形成されており、突出部40の側面40Sに図示しないビスや接着剤等によって接合されている。このスペーサ部材60によって隙間62を埋めることにより、梁20の上側フランジ部22と突出部40との間で応力が伝達可能になる。これにより、梁20と木質床版30との接合構造を簡略化することができる。
【0067】
なお、スペーサ部材60は、金属板や木質板等に限らず、例えば、隙間62に打ち込まれる楔状部材であっても良い。
【0068】
次に、図7に示される変形例では、木質床版30の端部30E1の下面30Kに、一対の突出部44が形成されている。一対の突出部44は、板材長手方向に間隔を空けて配置されている。なお、一対の突出部44は、突出部40(図2参照)と同様の構成とされている。また、一対の突出部44は、係合部の一例である。
【0069】
一方、梁20には、一対の受け部材70が設けられている。一対の受け部材70は、形鋼や鋼管鋼等の鋼材によって形成されており、梁20の上側フランジ部22の下面、又はウェブ部26(図2参照)に溶接等によって取り付けられている。なお、受け部材70は、梁(梁の位置決め部)の一例である。
【0070】
一対の受け部材70は、梁20の上側フランジ部22の端部よりも外側へそれぞれ延出し、一対の突出部44の間に配置されている。この一対の受け部材70に、突出部44の長手方向の端部44Eを接触させることにより、梁20に対して木質床版30が板材長手方向に位置決められる。
【0071】
なお、一対の受け部材70は、一対の突出部44の間に限らず、一対の突出部44の外側に配置しても良い。また、木質床版30の端部30E1の下面30Kに1つの突出部44を設け、当該突出部44の長手方向両側に、一対の受け部材70を配置しても良い。
【0072】
また、受け部材70は、形鋼等に限らず、鋼板等によって形成されても良い。また、受け部材70は、鋼材に限らず、木質材や樹脂材等によって形成しても良い。
【0073】
次に、図8に示される変形例では、木質床版30の突出部40は、梁20に対して梁幅方向一方側(図8の右側)に配置されている。また、木質床版30は、その端部30E1が梁20から梁幅方向他方側(図8の左側)へ跳ね出した状態で梁天端22Uに載置されている。つまり、突出部40は、木質床版30の端部30E1以外の部位に設けられている。
【0074】
このように突出部44は、木質床版30の端部30E1(外周部)に限らず、梁20と係合可能(接触可能)な位置に適宜設けることができる。なお、図8に示される変形例では、梁20の梁幅方向他方側(図8の左側)に突出部40を配置しても良い。
【0075】
次に、図9に示される変形例では、一対の木質床版30が、各々の端部(端面)30E1を対向させた状態で、梁20の梁天端22Uに載置されている。この場合、一対の木質床版30の端部30E1間に隙間80が形成される。
【0076】
これにより、一対の木質床版30の突出部40を、梁20の上側フランジ部22の端部にそれぞれ係合させ、梁20に対して各木質床版30を床版幅方向に位置決めすることができる。
【0077】
なお、一対の木質床版30の端部30E1間の隙間80には、例えば、モルタルやグラウト、コンクリート等の充填材を充填しても良い。
【0078】
次に、上記実施形態では、幅W1,W2が異なる2種類の長尺木質床版34,36の下端部34L,36Lを木質床版30の厚み方向にずらすことにより、突出部40,42を形成している。しかし、例えば、同じ幅の長尺木質床版34の下端部34Lを木質床版30の厚み方向にずらすことにより、突出部40,42を形成することも可能である。
【0079】
次に、上記実施形態では、梁20が鉄骨造とされている。しかし、梁は、例えば、鉄筋コンクリート造や、鉄骨鉄筋コンクリート造等であっても良い。
【0080】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0081】
20 梁
22U 梁天端
30 木質床版
30K 下面
34 長尺木質床版
34L 下端部
36 長尺木質床版
36L 下端部
40 突出部(係合部)
42 突出部(係合部)
44 突出部(係合部)
50 段差部
54 長尺木質床版
54L 下端部
56 長尺木質床版
56L 下端部
60 スペーサ部材
62 隙間
70 受け部材(梁)
矢印Y 床版幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9