特開 2022-146654 管路施工法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022146654

(43)【公開日】2022-10-05

(54)【発明の名称】管路施工法

(51)【国際特許分類】

   F16L 1/00 20060101AFI20220928BHJP

   B29C 63/34 20060101ALI20220928BHJP

   E03F 7/00 20060101ALI20220928BHJP

【ＦＩ】

F16L1/00 H

B29C63/34

E03F7/00

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021047730

(22)【出願日】2021-03-22

(71)【出願人】

【識別番号】590000916

【氏名又は名称】株式会社オカトク

(74)【代理人】

【識別番号】100197642

【弁理士】

【氏名又は名称】南瀬 透

(74)【代理人】

【識別番号】100099508

【弁理士】

【氏名又は名称】加藤 久

(74)【代理人】

【識別番号】100182567

【弁理士】

【氏名又は名称】遠坂 啓太

(74)【代理人】

【識別番号】100219483

【弁理士】

【氏名又は名称】宇野 智也

(72)【発明者】

【氏名】山内 修二

【テーマコード（参考）】

2D063

4F211

【Ｆターム（参考）】

2D063EA07

4F211AG08

4F211AH43

4F211SA17

4F211SC03

4F211SD04

4F211SJ11

4F211SJ21

(57)【要約】

【課題】汎用的な土木建設資材並びに土木建設機械を用いて既設管内に管路を形成することができ、施工が容易であり、工期の短縮化を図ることもできる管路施工法を提供する。
【解決手段】長さが発進側立坑１０の管取付壁１１の内径１１ｄより小さく、外径が施工対象既設管３０の内径３０ｄより小さい第一管状体１－１を伸縮ユニット５を内蔵させた状態で発進側立坑１０内に載置し、伸縮装置３の押圧部３ａで受圧部材７を押圧した反力により第一管状体１－１の先端開口部１ａ側を発進側開口部３０ａから施工対象既設管３０内に挿入し、次に、発進側立坑１０内に搬入した第二管状体に伸縮ユニット５を内蔵させて第一管状体１－１に連結し、伸縮装置３の押圧部３ａで受圧部材７を押圧した反力により第二管状体と第一管状体１－１との連結管状体を施工対象既設管３０内に挿入する作業を繰り返すことにより、施工対象既設管３０内に連続した管路を形成する。
【選択図】図６

【特許請求の範囲】

【請求項1】

発進側立坑と到達側立坑との間の地中に埋設された施工対象既設管の内部に前記発進側立坑内から前記到達側立坑に向かって前記施工対象既設管に沿った管路を形成する管路施工法であって、
長さが前記発進側立坑の内径より小さく、外径が前記施工対象既設管の内径より小さい第一管状体の内部に、前記第一管状体の基端側開口部から前記第一管状体の長手方向に沿って突出・後退可能な押圧部を有する伸縮装置を、前記基端側開口部に係合させた反力部材と連結した状態で収容する第一収容工程と、
前記発進側立坑内に開口する前記施工対象既設管の発進側開口部に前記第一管状体の先端側開口部を対向させた状態で前記第一管状体を前記発進側立坑内に配置する管状体配置工程と、
前記伸縮装置の押圧部を前記第一管状体の基端側開口部から突出させ前記発進側立坑内の壁部若しくは前記壁部と前記押圧部との間に配置された受圧部材を押圧し、その反力により前記第一管状体の先端開口部側を前記到達側立坑に向けた姿勢で前記発進側開口部から前記施工対象既設管内に挿入する第一管状体挿入工程と、
前記第一管状体の基端開口部が前記発進側開口部まで移動したら、前記伸縮装置の押圧部を後退させ前記反力部材及び前記伸縮装置を前記第一管状体から離脱させる第一離脱工程と、
長さが前記発進側立坑の内径より小さく、外径が前記施工対象既設管の内径より小さい第二管状体を前記発進側立坑内に搬入する第二管状体搬入工程と、
前記第二管状体の内部に、前記第二管状体の基端側開口部から前記第二管状体の長手方向に沿って突出・後退可能な押圧部を有する伸縮装置を装入し、前記基端側開口部に係合させた反力部材に前記伸縮装置を連結した状態で収容する第二収容工程と、
前記発進側立坑内に開口する前記施工対象既設管の発進側開口部に前記第二管状体の先端側開口部を対向させた状態で前記第二管状体を前記発進側立坑内に配置する工程と、
前記第二管状体の先端開口部を前記第一管状体の基端開口部に連結する第二管状体連結工程と、
前記第二管状体連結工程の完了後、前記伸縮装置の押圧部を前記第二管状体の基端側開口部から突出させ前記発進側立坑内の壁部若しくは前記壁部と前記押圧部との間に配置された受圧部材を押圧し、その反力により前記第二管状体及び前記第一管状体を前記施工対象既設管内に沿って前記到達側立坑に向かって移動させる連結管状体移動工程と、を備えた管路施工法。

【請求項2】

前記連結管状体移動工程を経て前記第二管状体の基端開口部が前記発進側開口部まで移動したら、前記第一離脱工程、前記第二管状体搬入工程、前記第二収容工程、前記第二管状体連結工程並びに前記連結管状体移動工程と同様の五つの工程を順次繰り返し、前記第一管状体の先端開口部を前記施工対象既設管の到達側開口部まで到達させる請求項１記載の管路施工法。

【請求項3】

前記反力部材が、長さが前記発進側立坑の内径より小さく、外径が前記施工対象既設管の内径より小さい管状体の開口部の周縁に係脱可能な係止部と、前記係止部から前記管状体内に挿入可能な形状に延設され前記伸縮装置を前記管状体内の一定位置に保持する保持部と、を備えた請求項１または２記載の管路施工法。

【請求項4】

前記第一管状体及び前記第二管状体が、前記先端開口部（または前記基端開口部）の外周に雄ネジ部を有し、前記基端開口部（または前記先端開口部）の内周に前記雄ネジ部と螺合可能な形状の雌ネジ部を有するものである請求項１～３の何れかの項に記載の管路施工法。

【請求項5】

前記伸縮装置が、前記発進側立坑の地上部分に配置したコンプレッサーから給油管を経由して供給される油体により突出・後退動作する押圧部を有する油圧ジャッキである請求項１～４の何れかの項に記載の管路施工法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、地中に埋設されている下水管、排水管、雨水管なその既設管の内部に管路を形成する管路施工法に関する。

【背景技術】

【0002】

地中に埋設されている既設管を掘り出すことなく、既設管の内部に管状体を形成する方法については、従来、数多くの提案がなされているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献１，２に記載された「既設管更生工法」あるいは特許文献３に記載された「既設管更生方法」などがある。

【0003】

特許文献１に記載された「既設管更生工法」は、既設管を補修する更生管を形成する管更生材を用いた管更生工法であって、
管更生材は、筒状の繊維布、繊維布に含浸される熱硬化性樹脂、繊維布の内周面を覆う筒状の内チューブ、繊維布の外周面を覆う筒状の外チューブからなり、筒状の外チューブ内に牽引紐を挿通配置すると共に筒状の繊維布内に筒状の内チューブを挿通配置する管更生材準備工程と、外チューブの一方端部と繊維布及び内チューブの一方端部とを牽引紐により縛着すると共に繊維布に熱硬化性樹脂を含浸する樹脂含浸工程と、樹脂含浸後、外チューブを内外に捲り反転して熱硬化性樹脂が含浸された繊維布の外周面を外チューブで覆設する外チューブ装着工程と、外チューブ、熱硬化性樹脂が含浸された繊維布及び内チューブからなる管更生材を牽引紐を牽引して既設管内に挿通する管更生材引込工程と、挿通後、内チューブ内に流体を送入して管更生材を流体圧力により拡径する管更生材拡径工程と、流体の送入を保持して管更生材の熱硬化性樹脂を硬化させる樹脂硬化工程と、樹脂硬化後、管更生材の余剰端部を処理する管口処理工程とを含むことを特徴としている。

【0004】

特許文献２に記載された「既設管更生工法」は、外表面が液密であり、硬化性樹脂組成物が含浸させてなる管状樹脂吸収基材と、管状樹脂吸収基材の内側に折り畳まれて配置され、管状樹脂吸収基材の内面を被覆可能な周長を有する管状シートとを備えた既設管更生用ライニング材で既設管の内壁を被覆する既設管の更生方法であって、
既設管更生用ライニング材を、既設管内に挿入する工程と、挿入したライニング材の折り畳まれた管状シート内に流体を導入し、その流体圧によって管状シートを拡径し、かつライニング材を既設管の内壁に押圧する工程と、ライニング材を既設管の内壁に押圧した状態で、含浸された硬化性樹脂組成物を硬化させて既設管の内壁を被覆する工程と、拡径された管状シートを反転しつつ引き剥がす工程とを含むことを特徴としている。

【0005】

特許文献３に記載された「既設管更生方法」は、マンホールの間に配置された下水管（下水道本管）内に、管状のライニング材を導入した後、その両端を閉塞部材で閉塞して形成された閉塞空間内に作業装置からホースを介して圧縮空気を導入し、管状ライニング材を拡径してその外周面を下水管の内周面に接触させ、その後、ライニング材の内側からライニング材に対してランプ連結体により光照射することより、ライニング材に含まれる硬化性樹脂組成物を硬化させ、下水管の内側にライニング材が硬化した更生管を形成する、というものである

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【特許文献1】特開２０１７－８０８９７号公報

【特許文献2】特開２０１７－８０９７２号公報

【特許文献3】特開２０１８－６５３５６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

特許文献１，２に記載された「既設管更生工法」並びに特許文献３に記載された「既設管更生方法」はそれぞれ長所を備えているのであるが、これらの更生工法（更生方法）を施工する場合、何れも一般に出回っていない専用の資材や機械を必要とするので、施工現場の状況や工事費の制約などにより、採用が困難となることがある。

【0008】

即ち、特許文献１に記載された「既設管更生工法」において使用される「筒状の繊維布、繊維布に含浸される熱硬化性樹脂、繊維布の内周面を覆う筒状の内チューブ、繊維布の外周面を覆う筒状の外チューブからなる管更生材」並びに「内チューブ内に流体を送入して流体圧力により拡径する装置」などは汎用的なものではなく、施工の際には特殊な技術を必要とする。

【0009】

また、特許文献２に記載された「既設管更生工法」において使用される「硬化性樹脂組成物が含浸させてなる管状樹脂吸収基材と、管状樹脂吸収基材の内側に折り畳まれて配置され、管状樹脂吸収基材の内面を被覆可能な周長を有する管状シートとを備えた既設管更生用ライニング材」並びに「管状シートを拡径するコンプレッサーや管状樹脂吸収基材に含侵された硬化性樹脂組成物を硬化させるボイラー」なども汎用的なものではなく、施工の際には特殊な技術を必要とする。

【0010】

さらに、特許文献３に記載された「既設管更生方法」において使用される「既設の下水道管内に導入される管状ライニング材」、「管状ライニング材の両端を閉塞して形成された閉塞空間内にホースを介して圧縮空気を導入して管状ライニング材を拡径する作業装置」並びに「ライニング材の内側からライニング材に対して光照射するランプ連結体」なども、前述と同様、汎用的なものではなく、施工の際には特殊な技術を必要とする。

【0011】

そこで、本発明が解決しようとする課題は、汎用的な土木建設資材並びに土木建設機械を用いて既設管内に管路を形成することができ、施工が容易であり、工期の短縮化を図ることもできる管路施工法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0012】

本発明に係る管路施工法は、発進側立坑と到達側立坑との間の地中に埋設された施工対象既設管の内部に前記発進側立坑内から前記到達側立坑に向かって前記施工対象既設管に沿った管路を形成する管路施工法であって、
長さが前記発進側立坑の内径より小さく、外径が前記施工対象既設管の内径より小さい第一管状体の内部に、前記第一管状体の基端側開口部から前記第一管状体の長手方向に沿って突出・後退可能な押圧部を有する伸縮装置を、前記基端側開口部に係合させた反力部材と連結した状態で収容する第一収容工程と、
前記発進側立坑内に開口する前記施工対象既設管の発進側開口部に前記第一管状体の先端側開口部を対向させた状態で前記第一管状体を前記発進側立坑内に配置する管状体配置工程と、
前記伸縮装置の押圧部を前記第一管状体の基端側開口部から突出させ前記発進側立坑内の壁部若しくは前記壁部と前記押圧部との間に配置された受圧部材を押圧し、その反力により前記第一管状体の先端開口部側を前記到達側立坑に向けた姿勢で前記発進側開口部から前記施工対象既設管内に挿入する第一管状体挿入工程と、
前記第一管状体の基端開口部が前記発進側開口部まで移動したら、前記伸縮装置の押圧部を後退させ前記反力部材及び前記伸縮装置を前記第一管状体から離脱させる第一離脱工程と、
長さが前記発進側立坑の内径より小さく、外径が前記施工対象既設管の内径より小さい第二管状体を前記発進側立坑内に搬入する第二管状体搬入工程と、
前記第二管状体の内部に、前記第二管状体の基端側開口部から前記第二管状体の長手方向に沿って突出・後退可能な押圧部を有する伸縮装置を装入し、前記基端側開口部に係合させた反力部材に前記伸縮装置を連結した状態で収容する第二収容工程と、
前記発進側立坑内に開口する前記施工対象既設管の発進側開口部に前記第二管状体の先端側開口部を対向させた状態で前記第二管状体を前記発進側立坑内に配置する工程と、
前記第二管状体の先端開口部を前記第一管状体の基端開口部に連結する第二管状体連結工程と、
前記第二管状体連結工程の完了後、前記伸縮装置の押圧部を前記第二管状体の基端側開口部から突出させ前記発進側立坑内の壁部若しくは前記壁部と前記押圧部との間に配置された受圧部材を押圧し、その反力により前記第二管状体及び前記第一管状体を前記施工対象既設管内に沿って前記到達側立坑に向かって移動させる連結管状体移動工程と、を備えたことを特徴とする。

【0013】

前記管路施工法においては、前記連結管状体移動工程を経て前記第二管状体の基端開口部が前記発進側開口部まで移動したら、前記第一離脱工程、前記第二管状体搬入工程、前記第二収容工程、前記第二管状体連結工程並びに前記連結管状体移動工程と同様の五つの工程を順次繰り返し、前記第一管状体の先端開口部を前記施工対象既設管の到達側開口部まで到達させることができる。

【0014】

前記管路施工法において、前記反力部材は、長さが前記発進側立坑の内径より小さく、外径が前記施工対象既設管の内径より小さい管状体の開口部の周縁に係脱可能な係止部と、前記係止部から前記管状体内に挿入可能な形状に延設され前記伸縮装置を前記管状体内の一定位置に保持する保持部と、を備えたものを使用することができる。

【0015】

前記管路施工法において、前記第一管状体及び前記第二管状体は、前記先端開口部（または前記基端開口部）の外周に雄ネジ部を有し、前記基端開口部（または前記先端開口部）の内周に前記雄ネジ部と螺合可能な形状の雌ネジ部を有するものを使用することができる。

【0016】

前記管路施工法において、前記伸縮装置は、前記発進側立坑の地上部分に配置したコンプレッサーから給油管を経由して供給される油体により突出・後退動作する押圧部を有する油圧ジャッキを使用することができる。

【発明の効果】

【0017】

本発明により、汎用的な土木建設資材並びに土木建設機械を用いて既設管内に管路を形成することができ、施工が容易であり、工期の短縮化を図ることもできる管路施工法を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0018】

【図1】本発明の実施形態である管路施工法において使用する伸縮装置及び反力部材を示す一部省略正面図である。

【図2】図１に示す伸縮装置及び反力部材の一部省略側面図である。

【図3】図１中のＡ－Ａ線における一部省略断面図である。

【図4】図３に示す押圧装置及び反力部材を管状体内に収容した状態を示す一部省略断面図である。

【図5】本発明の実施形態である管路施工法において使用する管状体を示す一部省略側面図である。

【図6】本発明の実施形態である管路施工法の作業工程を示す一部省略垂直断面図である。

【図7】図６中のＢ－Ｂ線における一部省略水平断面図である。

【図8】図７に示す作業後の作業工程を示す一部省略水平断面図である。

【図9】図８に示す作業後の作業工程を示す一部省略水平断面図である。

【図10】図９に示す作業後の作業工程を示す一部省略水平断面図である。

【図11】図１０に示す作業後の作業工程を示す一部省略水平断面図である。

【図12】図１１に示す作業後の作業工程を示す一部省略水平断面図である。

【図13】本実施形態に係る管路施工法によって形成した管路を示す一部省略垂直断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0019】

以下、図１～図１３に基づいて本発明の実施形態である管路施工法について説明する。初めに、図１～図５に基づいて、本実施形態において使用する伸縮装置３及び反力部材２について説明する。

【0020】

図１～図３に示すように、伸縮装置３は有底円筒形状の反力部材２の内部に互いに同軸心をなすように配置されている。伸縮装置３は油圧ジャッキであり、押圧部３ａ、ピストンロッド３ｂ及び油圧シリンダ３ｃなどによって形成され、油圧シリンダ３ｃに供給される油体により伸縮動作するピストンロッド３ｂとともに押圧部３ａが図３中の矢線方向に進退動作する。図３に示すように、伸縮装置３の油圧シリンダ３ｃの底部３ｄを反力部材２の底部２ｂに固着することによって伸縮部材３と反力部材２とが一体化された伸縮ユニット５が形成されている。

【0021】

反力部材２の開口部２ｃの外周にはフランジ２ａが設けられ、フランジ２ａの周縁にはその円周方向に沿って底部２ｂ方向に突出するリブ２ｄが設けられている。図３に示すように、反力部材２の開口部２ｃの外周部分にフランジ２ａ及びリブ２ｄを設けたことにより、フランジ２ａの裏側（底部２ｂ側）には、本体部２ｅ、フランジ２ａ及びリブ２ｄで囲まれた円形の周溝２ｆが形成されている。

【0022】

反力部材２の開口部２ａと底部２ｂとの間に位置する円筒形状の本体部２ｅの外径２Ｄは、後述する管状体１の内径１ｄ（図５）より小であり、反力部材２の長さ２Ｌ（図２参照）は管状体１の長さ１Ｌ（図５参照）より小である。従って、図３に示すように、伸縮ユニット５（伸縮装置３とこれを内蔵した反力部材２との構成部材）の底部２ｂ側を、図４に示すように、管状体１の基端開口部１ｂから管状体１内へ挿入すると、基端開口部１ｂの周縁１ｇが周溝２ｆ内に嵌入された状態で反力部材２の本体部２ｅ及び底部２ｂが管状体１内に同軸をなすように保持される。

【0023】

図４に示す状態において、反力部材２のフランジ２ａ及びリブ２ｄが、管状体１の基端開口部１ｂの周縁１ｇに係脱可能な係止部として機能し、前記係止部から管状体１内に挿入可能な形状に延設された本体部２ｅ及び底部２ｂが伸縮装置３を管状体１内の一定位置（軸心位置）に保持する保持部として機能する。

【0024】

次に、図５，図６，図１３に基づいて、本実施形態において使用する管状体１について説明する。図５に示す管状体１は、図１３に示すように、発進側立坑１０と到達側立坑２０との間の地中に埋設された施工対象既設管３０の内部に水密状態で連続した管路４０を形成するために使用するものであり、管状体１の長さ１Ｌが発進側立坑１０の管取付壁１１の内径１１ｄ（図６参照）より小さく、外径１Ｄが施工対象既設管３０の内径３０ｄより小さい。

【0025】

管状体１の先端開口部１ａの外周には雄ネジ部１ｍが形成され、基端開口部１ｂの内周には雌ネジ部１ｆが形成されている。雌ネジ部１ｆ並びに雄ネジ部１ｍは互いに螺合可能な形状をなしている。管状体１は、限定しないが、例えば、下水道推進工法用硬質塩化ビニル管（スパイラル継手付直管）などが好適である。なお、後述する第一管状体１－１、第二管状体１－２、第三管状体１－３（図１３参照）、図５中に示す管状体１と同じサイズ、形状を有する。

【0026】

次に、図６～図１３に基づいて、管路施工法の作業工程について説明する。管路施工法の作業を開始する場合、図１３に示す発進側立坑１０並びに到達側立坑２０（図１３参照）のインバートなどを斫って除去した後、施工対象既設管３０の内部を洗浄する。

【0027】

次に、図６，図７に示すように、発進側立坑１０の底部１０ｂに架台６を配置し、管取付壁１１の内周において施工対象既設管３０の発進側開口部３０ａの１８０度反対側に位置する部分に受圧部材７を配置する。この後、押圧部３ａを有する伸縮装置３を、管状体１－１の基端開口部１ｂに係合させた反力部材２と連結した状態で第一管状体１－１の内部に収容し（第一収容工程）、この第一管状体１－１（伸縮ユニット５を内蔵させた第一管状体１－１）を地上から発進側立坑１０内へ搬入し、架台６上に載置する。

【0028】

このとき、架台６上において、第一管状体１－１の先端開口部１ａを施工対象既設管３０の発進側開口部３０ａに対向させ、基端開口部１ｂ側に位置する反力部材２の開口部２ｃ及び伸縮装置３の押圧部３ａを受圧部材７に対向させる（管状体配置工程）。

【0029】

なお、管取付壁１１の内周面において、発進側開口部３０ａの１８０度反対側に位置する部分に、図７に示す既設管３１の開口部３１ａなどが存在せず、伸縮装置３の押圧部３ａが当接可能であれば、受圧部材７を省略することもできる。

【0030】

伸縮ユニット５を構成する伸縮装置３は油圧ジャッキであり、発進側立坑１０の地上部分に配置されたコンプレッサー４から給油管４ａ，４ｂを経由して供給される油体によって伸縮するピストンロッド３ｂとともに押圧部３ａが第一管状体１－１の基端開口部１ｂから第一管状体１－１の長手方向に沿って突出・後退する。

【0031】

図６に示すように、本実施形態においては、伸縮ユニット５を内蔵させた第一管状体１－１を地上から発進側立坑１０内へ搬入しているが、これに限定しないので、伸縮ユニット５並びに第一管状体１－１をそれぞれ個別に地上から発進側立坑１０内へ搬入し、発進側立坑１０の内部において伸縮ユニット５を第一管状体１－１内に挿入した後、第一管状体１－１を架台６上で横倒しにして、図６，図７に示す状態とすることもできる。

【0032】

次に、地上のコンプレッサー４（図６参照）を作動させて、図８に示すように、伸縮装置３の押圧部３ａを第一管状体１－１の基端側開口部から突出させ、発進側立坑１０内の壁部（管取付壁１１）と押圧部３ａとの間に配置された受圧部材７を押圧し、その反力により第一管状体１－１の先端開口部１ａ側を到達側立坑２０（図１３参照）に向けた姿勢で発進側開口部３０ａから施工対象既設管３０内に挿入する（第一管状体挿入工程）。

【0033】

図９に示すように、第一管状体１－１の基端開口部１ｂが発進側開口部３０ａまで移動したら伸縮装置３の押圧部３ａの突出動作を停止し、その後、図１０に示すように、伸縮装置３の押圧部３ａを後退させ反力部材２及び伸縮装置３（伸縮ユニット５）を第一管状体１－１から離脱させる（第一離脱工程）。

【0034】

次に、図１１に示すように、第一管状体１－１と同じサイズ、形状の第二管状体１－２を発進側立坑１０内に搬入し（第二管状体搬入工程）、第二管状体１－２の内部に伸縮ユニット５（伸縮装置３及び反力部材２）を収容し（第二収容工程）、発進側立坑１０内に開口する施工対象既設管３０の発進側開口部３０ａに第二管状体１－２の先端開口部１ａを対向させた状態で第二管状体１－２を発進側立坑１０内の架台６上に配置し、第二管状体１－２の先端開口部１ａを第一管状体１－１の基端開口部１ｂに連結する（第二管状体連結工程）。

【0035】

第二管状体１－２の先端開口部１ａを第一管状体１－１の基端開口部１ｂに連結する工程（第二管状体連結工程）においては、図５に示すように、第二管状体１－２の先端開口部１ａの雄ネジ部１ｍを第一管状体１－１の基端開口部１ｂの雌ネジ部１ｆに螺着することにより、第一管状体１－１の基端開口部１ｂに第二管状体１－２の先端開口部１ａを連結することができる。

【0036】

次に、図１２に示すように、伸縮装置３の押圧部３ａを第二管状体１－２の基端開口部１ｂから突出させ発進側立坑１０内に配置された受圧部材７を押圧し、その反力により第二管状体１－２及び第一管状体１－１を施工対象既設管３０内に沿って到達側立坑２０（図１３参照）に向かって移動させる（連結管状体移動工程）。

【0037】

前述した連結管状体移動工程において、第二管状体１－２の基端開口部１ｂが発進側開口部３０ａまで移動したら、伸縮装置３のピストンロッド３ｂを縮退させて、図６～図１２に示す、前記第一離脱工程、前記第二管状体搬入工程、前記第二収容工程、前記第二管状体連結工程並びに前記連結管状体移動工程と同様の五つの工程を順次繰り返し、図１３に示すように、第一管状体１－１の先端開口部１ａを施工対象既設管３０の到達側開口部３０ｂまで到達させる。

【0038】

この後、図６中に示す、架台６、伸縮ユニット５（反力部材２及び伸縮装置３）、コンプレッサー４並びに給油管４ａ，４ｂなどを撤収すると、図１３に示すように、施工対象既設管３０の内部に、施工対象既設管３０の長手方向に沿って水密状態で連続する管路４０が形成される。

【0039】

以上のように、本実施形態に係る管路施工法によれば、管状体１、反力部材２、伸縮装置（油圧ジャッキ）３、コンプレッサー４及び給油管４ａ，４ｂ、架台６，受圧部材７などの汎用的な土木建設資材並びに土木建設機械を用いて施工対象既設管３０内に管路４０を形成することができる。また、本実施形態に係る管路施工法は特殊な技術を要する作業が不要であるため、施工が容易であり、工期の短縮化を図ることもできる。

【0040】

また、図１１，図１２に示すように、複数の管状体１－１，１－２，・・・を複数連結した連結管状体を施工対象既設管３０内に沿って移動させる連結管状体移動工程においては、伸縮装置３の押圧部３ａの押圧力は個々の管状体１－１，１－２，・・・に対して、それぞれの長手方向の圧縮力となって加わるので、連結管状体の長さが比較的長くなった場合においても管状体１－１，１－２，・・・の損傷を防止することができる。

【0041】

なお、図１～図１３に基づいて説明した管路施工法は、本発明に係る管路施工法の一例を示すものであり、本発明に係る管路施工法は、前述した管路施工法に限定されない。

【産業上の利用可能性】

【0042】

本発明に係る管路施工法は、例えば、地中に埋設されている下水管、排水管、雨水管などの既設管の内部に管路を形成する工法として、土木建設業などの産業分野において広く利用することができる。

【符号の説明】

【0043】

１ 管状体
１－１ 第一管状体
１－２ 第二管状体
１－３ 第三管状体
１ａ 先端開口部
１ｂ 基端開口部
１ｄ，３０ｄ 内径
１ｆ 雌ネジ部
１ｇ 周縁
１ｍ 雄ネジ部
１Ｄ，２Ｄ 外径
１Ｌ，２Ｌ 長さ
２ 反力部材
２ａ フランジ
２ｂ，３ｄ，１０ｂ 底部
２ｃ，３１ａ 開口部
２ｄ リブ
２ｅ 本体部
２ｆ 周溝
３ 伸縮装置
３ａ 押圧部
３ｂ ピストンロッド
３ｃ 油圧シリンダ
４ コンプレッサー
４ａ，４ｂ 給油管
５ 伸縮ユニット
６ 架台
７ 受圧部材
１０ 発進側立坑
２０ 到達側立坑
３０ 施工対象既設管
３０ａ 発進側開口部
３０ｂ 到達側開口部
３１ 既設管
４０ 管路

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】