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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146663
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/10 20060101AFI20220928BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20220928BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220928BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20220928BHJP
【FI】
F16C17/10 Z
F16C33/20 A
C08L101/00
C08K3/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047742
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174182
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 広人
(72)【発明者】
【氏名】石田 淳之亮
(72)【発明者】
【氏名】三島 卓也
【テーマコード(参考)】
3J011
4J002
【Fターム(参考)】
3J011AA20
3J011BA07
3J011BA10
3J011DA01
3J011JA01
3J011KA04
3J011PA02
3J011QA05
3J011SA03
3J011SA04
3J011SA05
3J011SA06
3J011SC01
3J011SC04
3J011SC12
3J011SC13
3J011SC14
3J011SE05
3J011SE06
3J011SE07
3J011SE10
4J002BB031
4J002BD153
4J002BE022
4J002BG042
4J002BG052
4J002CB001
4J002CL001
4J002CL062
4J002CM041
4J002CN011
4J002DA016
4J002DA027
4J002DD068
4J002DE118
4J002DE238
4J002DG027
4J002DH048
4J002DJ008
4J002DJ048
4J002DJ058
4J002DK007
4J002DL006
4J002DM006
4J002FA042
4J002FA046
4J002FD018
4J002FD173
4J002FD177
4J002GM05
(57)【要約】
【課題】 摺動面の接触面積を減らして摺動抵抗を低減すること等が可能な軸受を提供する。
【解決手段】 摺動部材12の外周面における凹曲面の曲率半径と外輪11の内周面における凸曲面の曲率半径との関係は、凹曲面の曲率半径>凸曲面の曲率半径とし、摺動部材12の外周面における凹曲面の曲率半径と外輪11の内周面における凸曲面の曲率半径との差は、軸線方向中央部において最小で、軸線方向中央部から軸線方向両端部に向かって大きくすることで、摺動面同士が一部でしか接触せず、摺動面の接触面積が小さくなり、摺動抵抗を低減することができる。また、摺動部材12の外周面における凹曲面と外輪11の内周面における凸曲面との隙間は、軸線方向中央部から軸線方向両端部に向かって大きくなるため、摺動時に発生する摩耗粉の排出を促し、摺動面に侵入した異物を排出し易くすることができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の内輪および外輪と、樹脂製の摺動部材とからなり、前記内輪と前記外輪と前記摺動部材とは、それぞれ円筒形状に形成される軸受において、
前記摺動部材は、前記内輪の外周面に形成され、
前記摺動部材の外周面は、周方向全長にわたって、軸線方向の断面において凹曲面を有し、
前記摺動部材の外周面における凹曲面の曲率半径は、軸線方向中央部において最小で、軸線方向両端部に向かって大きくなり、
前記外輪の内周面は、周方向全長にわたって、軸線方向の断面において凸曲面を有し、
前記外輪の内周面における凸曲面の曲率半径は、軸線方向において一定であり、
前記摺動部材の外周面における凹曲面の曲率半径と前記外輪の内周面における凸曲面の曲率半径との関係は、凹曲面の曲率半径>凸曲面の曲率半径であり、
前記摺動部材の外周面における凹曲面の曲率半径と前記外輪の内周面における凸曲面の曲率半径との差は、軸線方向中央部において最小で、軸線方向両端部に向かって大きくなり、
前記摺動部材の外周面における凹曲面と前記外輪の内周面における凸曲面とは、対向接触して摺動することを特徴とする軸受。
【請求項2】
前記摺動部材は、ナイロン、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンから選択される1種以上の合成樹脂を主体とし、ガラス繊維粒子、セラミック繊維粒子、炭素繊維粒子、アラミド繊維粒子、アクリル繊維粒子、ポリビニルアルコール繊維粒子から選択される1種以上の繊維状粒子を1~15体積%含有する5~10%ことを特徴とする請求項1記載の軸受。
【請求項3】
前記摺動部材は、さらに、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化硼素、ポリテトラフルオロエチレンから選択される1種以上の固体潤滑剤を1~20体積%含有する5~10%ことを特徴とする請求項2記載の軸受。
【請求項4】
前記摺動部材は、さらに、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウム、チタン酸カリウム、MoCから選択される1種以上の充填材を1~10体積%含有する5~10%ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の軸受。CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウム、チタン酸カリウムおよびMoCのうちから選ばれる1種または2種以上の充填材1~10体積%を更に含む
【請求項5】
前記内輪および前記外輪は、鉄合金からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の内輪および外輪と、樹脂製の摺動部材とからなり、内輪と外輪と摺動部材とは、それぞれ円筒形状に形成される軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に代表される車両に適用されるスライドドアは、主に乗降時の利便性を考慮し、電動スライドドアが適用されているケースがある。この電動スライドドアのドア開閉機構は、ワイヤーケーブルがプーリー機構を介して開閉する構造となっている。そして、プーリーは主に樹脂から成り、プーリーの駆動には転がり軸受が適用されている(特許文献1)。
【0003】
一般に、転がり軸受は、対をなす軌道輪の間に介在させた転動体の転がり接触により、摩擦を減じるものであり、その優れた低トルク性から一般機械用の軸受として広く普及している。 しかしながら、転がり軸受は、内輪、外輪、転動体、保持器等の多数の部品から成ることから組立、製造コストが高騰する傾向にあり、また、転動体の収納スペースを要することから軸受の小型化にも一定の限度がある。さらに、低騒音化の為には、高精度加工を要し、製造コストが著しく増大するという欠点もあり、代替として滑り軸受を使用する場合が多い。
【0004】
上記した滑り軸受は、焼結含油金属や樹脂等からなる外周部材に軸受孔を設け、この軸受孔に微小な軸受隙間を介在させて軸等の内周部材を挿入することによって構成されるが、このような滑り軸受では、軸受隙間の大小によって軸受寿命、トルク、触れ精度等が大きな影響を受けるため軸受隙間を厳しく管理する必要がある。また、滑り軸受については、相手側部材が支軸等の別機能を併せ持つ場合が多いため、内周部材と外周部材とを別途製造するのが通常であるが、両部材について精密加工を施さなければならず、手間を要するため、軸受隙間の寸法、形状の管理が困難であり、軸受隙間の不良による機能性の低下を招きやすい。
【0005】
これらの課題を解決する手段として、外輪と内輪とから構成され、外輪の内周部に形成された環状突起または環状溝と、内輪の外周部に形成された環状溝または環状突起とが係合してなる滑り軸受が知られている(特許文献2)。また、外輪と内輪とから構成され、内輪が溶融硬化させた樹脂組成物からなり、内輪と外輪の軸受隙間が、内輪の硬化時の樹脂収縮によって形成してなる滑り軸受が知られている(特許文献3)。また、外輪と内輪とから構成され、軸方向の断面視にて、外周面が凸曲面の内輪と内周面が内輪の外周面の凸曲面に対応する凹曲面の外輪とからなる滑り軸受が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-112025号公報
【特許文献2】実開昭59-39316号公報
【特許文献3】特開平9-32856号公報
【特許文献4】特開2011-74975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2においては、内輪、外輪にそれぞれ環状溝、環状突起を有する構造であるが、環状突起部、環状溝部を除く部分は平坦部を有しており、摺動面積が増大することで相対的に摺動抵抗が増大し、また、環状溝と環状突起とが摩耗したとき、その摩耗粉が軸受外へ排出され難く、環状溝部に堆積され軸受摺動性の悪化が懸念される。
【0008】
また、特許文献3においては、溶融樹脂から成る内輪と、金属のほかセラミックや或いは内輪の射出成型時の温度に影響を受けない程度の部材から成る外輪とで形成される滑り軸受が提供されている。しかしながら、軸受と軸とを組み付ける際に締代を持たせることにより軸との抜けや回転を防止する役割を果たすが、内輪が樹脂の場合、金属製の軸との物性の差により軸受の組付時に内輪が拡大し、軸と内輪とに十分な締代が確保されず、組付運転時の抜けや回転が生じることによる軸受機能の低下が懸念される。また、軸との組付時に内輪が拡大し、外輪との隙間が狭まることによる軸受摺動性の悪化が懸念される。
【0009】
また、特許文献4においては、外輪の内周面における凹曲面と内輪の外周面における凸曲面とが互いの面に沿ってアキシャル方向への傾きや軸線方向への内輪、外輪の相対的なずれを生じさせ、その傾きやずれによって軸受摺動部への偏荷重の発生やそれによる偏摩耗を生じさせ、軸受機能の低下を招く恐れがある。
【0010】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、(1)軸との締代を確保することによる組付運転時の抜けや回転を防ぎ、(2)摺動面の接触面積を減らして摺動抵抗を低減することができ、(3)摺動時に発生する摩耗粉の排出を促すことが可能な軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、
金属製の内輪および外輪と、樹脂製の摺動部材とからなり、前記内輪と前記外輪と前記摺動部材とは、それぞれ円筒形状に形成される軸受において、
前記摺動部材は、前記内輪の外周面に形成され、
前記摺動部材の外周面は、周方向全長にわたって、軸線方向の断面において凹曲面を有し、
前記摺動部材の外周面における凹曲面の曲率半径は、軸線方向中央部において最小で、軸線方向両端部に向かって大きくなり、
前記外輪の内周面は、周方向全長にわたって、軸線方向の断面において凸曲面を有し、
前記外輪の内周面における凸曲面の曲率半径は、軸線方向において一定であり、
前記摺動部材の外周面における凹曲面の曲率半径と前記外輪の内周面における凸曲面の曲率半径との関係は、凹曲面の曲率半径>凸曲面の曲率半径であり、
前記摺動部材の外周面における凹曲面の曲率半径と前記外輪の内周面における凸曲面の曲率半径との差は、軸線方向中央部において最小で、軸線方向両端部に向かって大きくなり、
前記摺動部材の外周面における凹曲面と前記外輪の内周面における凸曲面とは、対向接触して摺動することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明においては、請求項1記載の軸受において、前記摺動部材は、ナイロン、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンから選択される1種以上の合成樹脂を主体とし、ガラス繊維粒子、セラミック繊維粒子、炭素繊維粒子、アラミド繊維粒子、アクリル繊維粒子、ポリビニルアルコール繊維粒子から選択される1種以上の繊維状粒子を1~15体積%含有する5~10%ことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明においては、請求項2記載の軸受において、前記摺動部材は、さらに、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化硼素、ポリテトラフルオロエチレンから選択される1種以上の固体潤滑剤を1~20体積%含有する5~10%ことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明においては、請求項2又は請求項3記載の軸受において、前記摺動部材は、さらに、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウム、チタン酸カリウム、MoCから選択される1種以上の充填材を1~10体積%含有する5~10%ことを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明においては、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の軸受において、前記内輪および前記外輪は、鉄合金からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、金属製の内輪および外輪と、樹脂製の摺動部材とからなる軸受において、摺動部材は内輪の外周面に形成され、摺動部材の外周面における凹曲面と外輪の内周面における凸曲面とが対向接触して摺動する。このような構成では、内輪を金属製とすることで、金属製の相手軸との物性の差による軸受の組付時の内輪の拡大を防ぎ、軸と内輪とに十分な締代が確保され、組付運転時の抜けや回転の発生による軸受機能の低下や、内輪と摺動部材との摺動面の隙間が狭まることへの摺動性悪化を防ぐことができる。
【0017】
また、摺動部材の外周面における凹曲面の曲率半径と外輪の内周面における凸曲面の曲率半径との関係は、凹曲面の曲率半径>凸曲面の曲率半径とし、摺動部材の外周面における凹曲面の曲率半径と外輪の内周面における凸曲面の曲率半径との差は、軸線方向中央部において最小で、軸線方向中央部から軸線方向両端部に向かって大きくすることで、摺動面同士が一部でしか接触せず、摺動面の接触面積が小さくなり、摺動抵抗を低減することができる。また、摺動部材の外周面における凹曲面と外輪の内周面における凸曲面との隙間は、軸線方向中央部から軸線方向両端部に向かって大きくなるため、摺動時に発生する摩耗粉の排出を促し、摺動面に侵入した異物を排出し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】軸受の斜視図である。
図2】軸受を半分に分割した断面斜視図である。
図3】軸受を構成する外輪の斜視図である。
図4】外輪を半分に分割した断面斜視図である。
図5】軸受を構成する摺動部材の斜視図である。
図6】摺動部材を半分に分割した断面斜視図である。
図7】軸受を構成する内輪の斜視図である。
図8】内輪を半分に分割した断面斜視図である。
図9】摺動部材の断面図である。
図10】内輪の断面図である。
図11】外輪、摺動部材、内輪から構成される軸受の軸受摺動部を示す断面図である。
図12】非摺動時における比較例1の軸受の断面図である。
図13】摺動時における比較例1の軸受の断面図である。
図14】比較例2の軸受の断面図である。
図15】比較例3の軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(軸受の構成)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本説明に用いられる図は、実施形態に係る軸受1の概略図であり、構成、構造等を理解し易くするために各箇所が誇張あるいは省略して描かれている。
【0020】
図1は、軸受1の斜視図であり、図2は、軸受1を半分に分割した断面斜視図である。図1及び図2に示すように、軸受1は、外輪11、摺動部材12、内輪13から構成され、内輪13の外周面13aに摺動部材12が形成され、摺動部材12の外周面における凹曲面12aと外輪11の内周面における凸曲面11cとが対向接触して摺動する。また、外輪11及び内輪13は、金属製であり、摺動部材12は、合成樹脂製である。
【0021】
図3は、軸受1を構成する外輪11の斜視図であり、図4は、外輪11を半分に分割した断面斜視図である。図3及び図4に示すように、外輪11は、外周に軸線方向と平行になされる外周面11aを有し、内周に内周面として凸曲面11cを有する円筒形状である。また、外輪11の外周面の軸線方向両端部には、圧入を容易にする目的や圧入時のカジリ等損傷の発生を緩和するために面取11dが設けられている。
【0022】
より詳細には、外輪11の内周面は、軸受1の軸線方向の断面において、周方向全長にわたって、軸受1の径方向の内側(中心側)に向かって凸形状からなる凸曲面11cを有している。また、外輪11の外周面11aは、軸受1の軸線方向から視認して円形状となっており、軸受1の軸線方向の断面において、周方向全長にわたって軸受1の軸線方向と平行になっているが、これに限定されない。外輪11の外周面11aは、外周面11a上に形成されるプーリー部材(図示しない)との接合を高めるため、断面視にて凹凸を有するようにしてもよい。
【0023】
図5は、軸受1を構成する摺動部材12の斜視図であり、図6は、摺動部材12を半分に分割した断面斜視図である。図5及び図6に示すように、摺動部材12は、内周に軸線方向と平行になされる内周面12cを有し、外周に外周面として凹曲面12aを有する円筒形状である。
【0024】
より詳細には、摺動部材12の外周面は、軸受1の軸線方向の断面において、周方向全長にわたって、軸受1の径方向の内側(中心側)に向かって凹形状からなる凹曲面12aを有している。また、摺動部材12の内周面12cは、軸受1の軸線方向から視認して円形状となっており、軸受1の軸線方向の断面において、周方向全長にわたって軸受1の軸線方向と平行になっている。
【0025】
図7は、軸受1を構成する内輪13の斜視図であり、図8は、内輪13を半分に分割した断面斜視図である。図7及び図8に示すように、内輪13は、外周、内周に共に軸線方向と平行になされる外周面13a、内周面13cを有する円筒形状である。
【0026】
より詳細には、内輪13の内周面13cは、軸受1の軸線方向から視認して円形状となっており、軸受1の軸線方向の断面において、周方向全長にわたって軸受1の軸線方向と平行になっている。また、摺動部材12が被覆される内輪13の外周面13aは、軸受1の軸線方向から視認して円形状となっており、軸受1の軸線方向の断面において、周方向全長にわたって軸受1の軸線方向と平行になっているが、これに限定されない。内輪13の外周面13aは、摺動部材12との接合を高めるため、断面視にて凹凸を有するようにしてもよい。
【0027】
次に、摺動部材12の外周面における凹曲面12aと外輪11の内周面における凸曲面11cとの関係について、図9乃至図11を参照して説明する。図9は、内輪13の断面図であり、図10は、摺動部材12の断面図であり、図11は、外輪11、摺動部材12、内輪13から構成される軸受1の軸受摺動部を示す断面図である。図9乃至図11はいずれも、軸受1の軸線方向の断面における図である。
【0028】
図9に示すように、外輪11の内周面における凸曲面11cは、軸線方向中央部CL11において外周面11aとの距離11xが最大であり、軸線方向両端部において外周面11aとの距離11yが最小である。また、外輪11の内周面における凸曲面11cは、軸線方向において曲率半径R11が一定である。
【0029】
また、外輪11の内周面における凸曲面11cは、軸線方向中央部CL11において外周面11aとの距離11xが最大となるが、その距離11xは、軸受機能の低下抑制や強度を保持するため、1.5mm以上であることが望ましい。また、外輪11の内周面における凸曲面11cは、軸線方向両端部において外周面11aとの距離11yが最小となるが、その距離11yは、軸線方向両端部において1.2mm以上であることが望ましい。
【0030】
図10に示すように、摺動部材12の外周面における凹曲面12aは、軸線方向中央部CL12において内周面12cとの距離12xが最小であり、軸線方向両端部において内周面12cとの距離12yが最大である。また、摺動部材12の外周面における凹曲面12aは、軸線方向中央部CL12において曲率半径R121が最小であり、軸線方向両端部において曲率半径R122が最大であり、その曲率半径R121,R122は、軸線方向中央部CL12から軸線方向両端部に向かって徐々に大きくなっている。つまり、摺動部材12の外周面における凹曲面12aにおいて、軸線方向中央部CL12における曲率半径R121と、軸線方向両端部における曲率半径R122との関係は、
R121<R122
となっている。
【0031】
また、摺動部材12の外周面における凹曲面12aは、軸線方向中央部CL12において内周面12cとの距離12xが最小となるが、その距離12xは、軸受機能の低下抑制や強度を保持するため、1.2mm以上であることが望ましい。また、摺動部材12の外周面における凹曲面12aは、軸線方向両端部において内周面12cとの距離12yが最大となるが、その距離12yは、軸線方向両端部において1.5mm以上であることが望ましい。
【0032】
図11に示すように、摺動部材12の外周面における凹曲面12aの曲率半径R121,R122は、外輪11の内周面における凸曲面11cの曲率半径R11よりも小さい。つまり、摺動部材12の外周面における凹曲面12aの曲率半径R121,R122と、外輪11の内周面における凸曲面11cの曲率半径R11との関係は、
R121,R122<R11
となっている。このように、摺動部材12の外周面における凹曲面12aの曲率半径R121,R122については、外輪11の内周面における凸曲面11cの曲率半径R11よりも小さくすることで、摺動部材12の外周面における凹曲面12aと、外輪11の内周面における凸曲面11cとが一部でしか接触せず、摺動面の接触面積が小さくなり、摺動抵抗を低減することができる。なお、摺動部材12の外周面における凹曲面12aの曲率半径R121,R122と、外輪11の内周面における凸曲面11cの曲率半径R11との関係は、
R121,R122=R11×(80~95%)
であることが望ましい。
【0033】
また、摺動部材12の外周面における凹曲面12aの曲率半径R121,R122と、外輪11の内周面における凸曲面11cの曲率半径R11との差は、軸線方向中央部において最小であり、軸線方向両端部において最大であり、その差は、軸線方向中央部から軸線方向両端部に向かって徐々に大きくなっている。つまり、摺動部材12の外周面における凹曲面12aと、外輪11の内周面における凸曲面11cとの隙間は、軸線方向中央部において最小であり、軸線方向両端部において最大であり、その隙間は、軸線方向中央部から軸線方向両端部に向かって徐々に大きくなっている。このように、摺動部材12の外周面における凹曲面12aと、外輪11の内周面における凸曲面11cとの隙間については、軸線方向中央部から軸線方向両端部に向かって大きくすることで、摺動時に発生する摩耗粉の排出を促し、摺動面に侵入した異物を排出し易くすることができる。
【0034】
本発明の軸受1において、外輪11、内輪13は、金属材料からなり、摺動部材12は、合成樹脂を主体とし、固体潤滑材等の充填剤を含む樹脂組成物からなるものを用いている。摺動部材12の具体例としては、ナイロン、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンから選択される1種以上の合成樹脂を主体とし、ガラス繊維粒子、セラミック繊維粒子、炭素繊維粒子、アラミド繊維粒子、アクリル繊維粒子、ポリビニルアルコール繊維粒子から選択される1種以上の繊維状粒子を1~15体積%含有することが挙げられる。これにより、好適な摺動特性を得ることができる。
【0035】
また、固体潤滑材としては、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化硼素、ポリテトラフルオロエチレンから選択される1種以上を1~20体積%含有する5~10%ことが望ましい。また、固体潤滑材以外の充填剤としては、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウム、チタン酸カリウム、MoCから選択される1種以上を1~10体積%含有することが望ましい。また、外輪11、内輪13は、鉄合金からなることが望ましい。これらにより、摺動特性の向上を図ることができる。
【0036】
以上、本発明の軸受1は、外輪11、摺動部材12、内輪13を備えてなるラジアル滑り軸受であり、外輪11および内輪13は金属からなり、摺動部材12は樹脂組成物の成形体からなり、摺動部材12は内輪13の外周面に形成され、摺動部材12の外周面における凹曲面12aと外輪11の内周面における凸曲面11cとが対向接触しながら摺動するものである。このような構成の軸受1は、外輪11、摺動部材12、内輪13の3部品で構成されており、ボールベアリング(転がり玉軸受)と比較して部品点数が少なく、構造が簡単である。また、軸受1は、内輪13を金属製とすることで、金属製の相手軸との物性の差による軸受1の組付時の内輪13の拡大を防ぎ、相手軸(図示しない)と内輪13とに十分な締代が確保され、組付運転時の抜けや回転の発生による軸受機能の低下や、内輪13と摺動部材12との摺動面隙間が狭まることへの摺動性悪化を防ぐことができる。
【0037】
また、本発明の軸受1は、摺動部材12の外周面における凹曲面12aと外輪11の内周面における凸曲面11cとが対向接触して摺動するので、相手軸と直接摺動する樹脂製の滑り軸受と異なり、摩擦トルクや摩耗量に関して相手軸の材質や表面粗さの影響を受けにくい。また、内輪13と摺動部材12の摺接面は、相補的な凹凸曲面にあるので、互いの軸方向の位置ずれを防止することができ、アキシャル方向への傾きを抑えることができる。
【0038】
また、本発明の軸受1における外輪11と摺動部材12は、凹凸曲面同士が接触する態様であり、摺動部材12の外周面における凹曲面12aの曲率半径R121,R122と、外輪11の内周面における凸曲面11cの曲率半径R11を非同一としているが、凹曲面12aの曲率半径R121,R122>凸曲面11cの曲率半径R11とし、摺動部材12の外周面における凹曲面12aの曲率半径R121,R122と、外輪11の内周面における凸曲面11cの曲率半径R11との差が軸線方向中央部において最小で、軸線方向中央部から軸線方向両端部に向かって大きくすることで、摺動面同士が一部でしか接触せず、摺動面の接触面積が小さくなり、従来の樹脂製の滑り軸受よりも摺動抵抗を低減することができる。また、摺動部材12の外周面における凹曲面12aと外輪11の内周面における凸曲面11cとの隙間は、軸線方向中央部から軸線方向両端部に向かって大きくなるため、摺動時に発生する摩耗粉の排出を促し、摺動面に侵入した異物を排出し易くすることができる。
【0039】
(比較例1の軸受の構成)
次に、比較例1の軸受111の構成について、図12及び図13を参照して説明する。図12は、非摺動時における比較例1の軸受111の断面図であり、図13は、摺動時における比較例1の軸受111の断面図である。
【0040】
図12に示すように、比較例1の軸受111は、外輪111a、摺動部材111b、内輪111cから構成され、本発明の軸受1と同じく摺動部材111bは、内輪111cの外周面に形成される。また、摺動部材111bは、外周面に凸曲面を有し、凸曲面は、軸線方向中央部において曲率半径が最大で、軸線方向両端部において曲率半径が最小となる点で、本発明の軸受1の構成とは異なる。一方、外輪111aは、内周面に凹曲面を有し、凹曲面は、軸線方向において曲率半径が一定である点で、本発明の軸受1の構成とは異なる。ただし、摺動部材111bの外周面における凸曲面と外輪111aの内周面における凹曲面との隙間は、軸線方向中央部から軸線方向両端部に向かって大きくなる点で、本発明の軸受1の構成と同じである。
【0041】
図13に示すように、摺動時における比較例1の軸受111は、摺動部材111bの外周面に凸曲面を有し、外輪111aの内周面に凸曲面を有するため、摺動部材111bと外輪111aとが互いの摺動面に沿ってアキシャル方向に傾きを生じさせる懸念があり、その傾きによって軸受摺動部への偏荷重の発生や、それによる偏摩耗を生じさせ、軸受機能の低下を招く恐れがある。
【0042】
(比較例2の軸受の構成)
次に、比較例2の軸受112の構成について、図14を参照して説明する。図14は、比較例2の軸受112の断面図である。
【0043】
図14に示すように、比較例2の軸受112は、外輪112a、摺動部材112b、内輪112cから構成され、本発明の軸受1と同様に摺動部材112bは、内輪112cの外周面に形成される。また、摺動部材112bは、外周面において、軸線方向中央部付近に部分的に凸曲面と、軸線方向両端部付近に平坦面とを有し、凸曲面は、軸線方向中央部において内周面との距離が最大となる点で、本発明の軸受1の構成とは異なる。一方、外輪112aは、内周面において、軸線方向中央部付近に部分的に凹曲面と、軸線方向両端部付近に平坦面とを有し、凹曲面は、軸線方向中央部において外周面との距離が最小となる点で、本発明の軸受1の構成とは異なる。
【0044】
上記した比較例2の軸受112は、軸線方向両端部付近の平坦部同士が略全面で接触するため、摺動抵抗を低減する効果が得られない。また、比較例2の軸受112は、外輪113aの内周面における凹曲面の端部が摺動部材113bに傷を付けたり局部的な摩耗を発生させることや、外輪113aの内周面における凹曲面部に摩耗粉や侵入異物等が堆積しやすく、平坦部での摺動面同士の隙間が一定であるため、摩耗粉や侵入異物が排出されにくい懸念がある。
【0045】
(比較例3の滑り軸受の構成)
次に、比較例3の軸受113の構成について、図15を参照して説明する。図15は、比較例3の軸受113の断面図である。
【0046】
図15に示すように、比較例3の軸受113は、外輪113a、摺動部材113b、内輪113cから構成され、本発明の軸受1と同様に摺動部材113bは。内輪113cの外周面に形成される。また、摺動部材113bは、外周面において、軸線方向中央部付近に部分的に凹曲面と、軸線方向両端部付近に平坦面とを有し、凹曲面は、軸線方向中央部において外周面との距離が最小となる点で、本発明の軸受1の構成とは異なる。一方、外輪113aは、内周面において、軸線方向中央部付近に部分的に凸曲面と、軸線方向両端部付近に平坦面とを有し、凸曲面は、軸線方向中央部において外周面との距離が最大となる点で、本発明の軸受1の構成とは異なる。
【0047】
上記した比較例3の軸受113は、軸線方向両端部付近の平坦部同士が略全面で接触するため、摺動抵抗を低減する効果が得られない。また、比較例3の軸受113は、摺動部材112bの外周面における凹曲面部に摩耗粉や侵入異物等が堆積しやすく、平坦部での摺動面同士の隙間が一定であるため、摩耗粉や侵入異物が排出されにくい懸念がある。
【符号の説明】
【0048】
1 軸受
11 外輪
11a 外周面
11c 凸曲面(内周面)
11d 面取
12 摺動部材
12a 凹曲面(外周面)
12c 内周面
13 内輪
13a 外周面
13c 内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15