IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特開2022-146708太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラム
<>
  • 特開-太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラム 図1
  • 特開-太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラム 図2
  • 特開-太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラム 図3
  • 特開-太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラム 図4
  • 特開-太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラム 図5
  • 特開-太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラム 図6
  • 特開-太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146708
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/00 20140101AFI20220928BHJP
【FI】
H02S50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047815
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇広
(72)【発明者】
【氏名】富田 修
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151KA08
5F151KA10
(57)【要約】
【課題】太陽光発電システムの設計性能に対する評価に適した太陽光発電性能評価装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る太陽光発電性能評価装置は、性能評価部および性能判定部を備える。性能評価部は、太陽光発電システムのサイトで計測された環境データに基づいて太陽光発電システムを発電シミュレーションする第1実測性能評価、太陽光発電システムで実際に計測された発電量に基づく第2実測性能評価、およびサイトで想定される環境データに基づいて太陽光発電システムを発電シミュレーションする設計性能評価のうちの少なくとも2つの評価を行う。性能判定部は、第1実測性能評価、第2実測性能評価、および設計性能評価のうちの少なくとも2つを比較した結果に基づいて、太陽光発電システムの性能を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電システムのサイトで計測された環境データに基づいて前記太陽光発電システムを発電シミュレーションする第1実測性能評価、前記太陽光発電システムで実際に計測された発電量に基づく第2実測性能評価、および前記サイトで想定される環境データに基づいて前記太陽光発電システムを発電シミュレーションする設計性能評価のうちの少なくとも2つの評価を行う性能評価部と、
前記第1実測性能評価、前記第2実測性能評価、および前記設計性能評価のうちの少なくとも2つを比較した結果に基づいて、前記太陽光発電システムの性能を判定する性能判定部と、
を備える太陽光発電性能評価装置。
【請求項2】
前記性能評価部は、前記第1実測性能評価および前記第2実測性能評価を行い、
前記性能判定部は、前記第1実測性能評価と前記第2実測性能評価との比較結果に基づいて前記太陽光発電システムの性能を判定する、請求項1に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項3】
前記性能評価部は、予め規定された基準値を満たさない環境データを除外する、請求項1または2に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項4】
前記サイトが複数の区域に分けられ、
前記性能判定部は、前記区域ごとに前記太陽光発電システムの性能を判定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項5】
前記性能評価部は、予め規定された時間単位で前記第1実測性能評価および前記設計性能評価を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項6】
複数の太陽光発電システムが、互いに離れた複数のサイトに設置され、
前記複数の太陽光発電システムを個別に発電シミュレーションするのに必要な固有データを前記複数のサイトに対応付けて格納するデータ記憶部をさらに備え、
前記性能評価部は、前記複数のサイトごとに前記データ記憶部から前記固有データを選択して前記第1実測性能評価および前記設計性能評価を行う、請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項7】
前記データ記憶部は、前記設計性能評価の結果から得られた第1システム出力係数を格納し、
前記性能判定部は、前記第1システム出力係数、前記第1実測性能評価の結果から得られた第2システム出力係数、および前記第2実測性能評価の結果から得られた第3システム出力係数のうちの少なくとも2つを比較する、請求項6に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項8】
太陽光発電システムのサイトで計測された環境データに基づいて前記太陽光発電システムを発電シミュレーションする第1実測性能評価、前記太陽光発電システムで実際に計測された発電量に基づく第2実測性能評価、および前記サイトで想定される環境データに基づいて前記太陽光発電システムを発電シミュレーションする設計性能評価のうちの少なくとも2つの評価を行い、
前記第1実測性能評価、前記第2実測性能評価、および前記設計性能評価のうちの少なくとも2つを比較し、
比較結果に基づいて前記太陽光発電システムの性能を判定する、
太陽光発電性能評価方法。
【請求項9】
太陽光発電システムのサイトで計測された環境データに基づいて前記太陽光発電システムを発電シミュレーションする第1実測性能評価、前記太陽光発電システムで実際に計測された発電量に基づく第2実測性能評価、および前記サイトで想定される環境データに基づいて前記太陽光発電システムを発電シミュレーションする設計性能評価のうちの少なくとも2つの評価を行い、
前記第1実測性能評価、前記第2実測性能評価、および前記設計性能評価のうちの少なくとも2つを比較し、
比較結果に基づいて前記太陽光発電システムの性能を判定する、処理をコンピュータに実行するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、太陽光発電性能評価システム、太陽光発電性能評価方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムの発電性能は、一般的にシステム出力係数PR(Performance Ratio)で示される。システム出力係数PRは、PV(Photovoltaics)パネルに照射される太陽光の日射強度を用いて算出することができる。このシステム出力係数PRは、太陽光発電システムの設計段階で性能保証の対象となる評価値として用いられている。
【0003】
しかし、PVパネルが、広範なサイトまたは平坦でないサイトに配置される太陽光発電システムでは、PVパネルに対する太陽光の照射方向が一様でなくなる場合がある。そのため、サイト内に設置された日射計で、PVパネルに照射される実際の日射強度を正確に計測することが困難になる。
【0004】
また、近年の太陽光発電システムの性能保証においては、予め発電量を計算可能なシミュレーションの結果を用いてシステム出力係数を計算し、その計算値との比較により設計性能に対する評価を行うことが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5576215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の実施形態は、太陽光発電システムの設計性能に対する評価に適した太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る太陽光発電性能評価装置は、性能評価部および性能判定部を備える。性能評価部は、太陽光発電システムのサイトで計測された環境データに基づいて太陽光発電システムを発電シミュレーションする第1実測性能評価、太陽光発電システムで実際に計測された発電量に基づく第2実測性能評価、およびサイトで想定される環境データに基づいて太陽光発電システムを発電シミュレーションする設計性能評価のうちの少なくとも2つの評価を行う。性能判定部は、第1実測性能評価、第2実測性能評価、および設計性能評価のうちの少なくとも2つを比較した結果に基づいて、太陽光発電システムの性能を判定する。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、太陽光発電システムの設計性能に対する評価に適した太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る太陽光発電システムおよび太陽光発電性能評価装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る性能評処理の手順を示すフローチャートである。
図3】第2実施形態に係る太陽光発電システムおよび太陽光発電性能評価装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図4】第2実施形態における実性能評価結果の一例を示すグラフである。
図5】第3実施形態に係る太陽光発電システムおよび太陽光発電性能評価装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図6】第3実施形態に係るデータ記憶部のデータ構造の一例を示す図である。
図7】第3実施形態に係る性能評処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る太陽光発電システムおよび太陽光発電性能評価装置の概略的な構成を示すブロック図である。本実施形態に係る太陽光発電性能評価装置100は、太陽光発電システム200の発電性能を評価する。
【0012】
まず、太陽光発電システム200の構成を説明する。図1に示すように、太陽光発電システム200は、PVパネル210と、PCS(Power Conditioning System)220と、計測器230と、データ収録部240と、を備える。なお、図1には、太陽光発電システム200の主要な機器のみが図示されているが、太陽光発電システム200は、図1に示す機器に加えて、一般的な太陽光発電システムで使用される機器(例えば、発電を制御する制御機器等)も備えている。また、日射や発電に関する記載に関しては、日射強度(W)や日射量(Wh)、電力(W)と電力量(Wh)のいずれの計測でもよい。
【0013】
PVパネル210には、複数の太陽電池がパネル状に配置されている。各太陽電池は、太陽光を光電変換する。その結果、PVパネル210で直流電力が発電される。
【0014】
PCS220は、例えばインバータ等を有する。このインバータによって、PVパネル210で発電された直流電力が、交流電力に変換される。この交流電力は、商用系統などの電力系統に供給される。
【0015】
計測器230は、環境計測器231および電力計測器232を有する。環境計測器231は、太陽光発電システム200のサイトで環境データを計測する。この環境データは、例えば、サイトの日射強度、風力、風向、気温、積雪量、および霜や影の状態などを含む気象データや、PVパネル210の温度データや汚れ量等である。そのため、環境計測器231は、日射強度を計測する日射計、風力および風向を計測する風況センサ、気温やPVパネル210の温度をそれぞれ計測する温度計などで構成される。環境計測器231は、予め設定された周期で環境データを計測してデータ収録部240へ送信する。
【0016】
一方、電力計測器232は、電力データを計測する。この電力データには、例えばPVパネル210の発電量やPCSの出力電力等が含まれる。電力計測器232は、予め設定された周期で電力データを計測してデータ収録部240へ送信する。電力データの計測周期は、環境データの計測周期と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
データ収録部240は、環境計測器231で計測された環境データと、電力計測器232で計測された電力データと、を収録する。データ収録部240は、環境データおよび電力データを有線で受信してもよいし、無線で受信してもよい。データ収録部240に収録された環境データおよび電力データは、ネットワーク300を介して太陽光発電性能評価装置100へ伝送される。
【0018】
次に、太陽光発電性能評価装置100の構成を説明する。太陽光発電性能評価装置100は、図1に示すように、データ取得部110と、データ記憶部120と、性能評価部130と、性能判定部140と、表示部150と、を備える。
【0019】
データ取得部110は、データ収録部240からネットワーク300を介して環境データおよび電力データを取得する。データ取得部110は、取得したデータを性能評価部130へ転送する。
【0020】
データ記憶部120は、太陽光発電システム200の固有データ等を格納するハードディスク等の記憶媒体で構成される。この固有データは、太陽光発電システム200の定格容量等、太陽光発電システム200の発電シミュレーションに必要なデータである。換言すると、固有データは、太陽光発電システム200の性能を示すシステム出力係数PRを計算するために必要なデータである。
【0021】
性能評価部130は、設計性能評価部131および実測性能評価部132を有する。本実施形態では、設計性能評価部131および実測性能評価部132の各処理は、性能評価部130内に記憶されたプログラムを実行するソフトウェアによって実現される。ただし、性能評価部130では、設計性能評価部131および実測性能評価部132の機能がハードウェアで実現されてもよいし、少なくとも一つの機能がソフトウェアで実現されてもよい。
【0022】
設計性能評価部131は、設計性能評価を行う。この設計性能評価では、太陽光発電システム200を設置予定のサイトで想定される想定環境データに基づいて太陽光発電システム200を発電シミュレーションする。想定環境データは、例えば、太陽光発電システム200を設置予定のサイトにおいて、環境計測器231とは別の機器で過去に計測されたデータである。この想定環境データは、外部のデータベース(不図示)またはデータ記憶部120に予め格納され、データ取得部110によって取得される。また、発電シミュレーションには、PVSyst、Helios3D、およびPVcaseに代表される既存のソフトウェアを用いることができる。
【0023】
設計性能評価の発電シミュレーションによって、設計段階の太陽光発電システム200で想定される想定発電量や、第1システム出力係数PR1が設計性能評価部131から出力される。第1システム出力係数PR1は、例えば、下記の式を用いて算出することができる。
【数1】
上記の数式において、アレイ定格出力は、太陽光発電システム200の定格出力に相当する定数である。第1システム出力係数PR1では、発電量は、PVパネル210と太陽の位置関係に基づいて発電シミュレーションによって算出される。また、アレイ面日射量には、太陽の日射量に相当する。第1システム出力係数PR1では、過去に計測された実績データが用いられる。設計性能評価部131は、第1システム出力係数PR1をデータ記憶部120へ格納する。
【0024】
実測性能評価部132は、実測性能評価(第1実測性能評価)を行う。この実測性能評価では、太陽光発電システム200が実際に設置されたサイトで環境計測器231によって計測された環境データに基づいて太陽光発電システム200を発電シミュレーションする。この環境データは、実測性能評価時点で最新のデータである。また、実測性能評価の発電シミュレーションにも、設計性能評価と同じく、上述したソフトウェアを用いる。
【0025】
実測性能評価の発電シミュレーションによって、実際の日射などの環境条件における設計条件の太陽光発電システム200の発電量や、第2システム出力係数PR2が実測性能評価部132から出力される。この第2システム出力係数PR2が、運転時の性能保証を行う基準となる。第2システム出力係数PR2も、上記の数式を用いて算出することができる。第2システム出力係数PR2でも、発電量は、PVパネル210と太陽の位置関係に基づいて発電シミュレーションによって算出される一方で、アレイ面日射量には、環境計測器231で計測された環境データが用いられる。実測性能評価部132は、第2システム出力係数PR2を性能判定部140へ送信する。
【0026】
性能判定部140は、設計性能評価から得られた第1システム出力係数PR1と、実測性能評価から得られた第2システム出力係数PR2とを比較し、比較結果に基づいて太陽光発電システム200の性能を判定する。また、性能判定部140は、判定結果を表示部150へ通知する。このとき、性能判定部140は、判定結果を太陽光発電システム200に送信してもよい。この場合、太陽光発電システム200では、制御機器(不図示)が性能判定部140の判定結果に応じてPCS210等をフィードバック制御する。
【0027】
表示部150は、性能判定部140の判定結果等の種々の画像を表示する。表示部150は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro‐Luminescence)ディスプレイ等の表示装置により構成される。
【0028】
以下、図2を参照して、本実施形態に係る太陽光発電性能評価装置100が太陽光発電システム200の性能を評価する処理を説明する。図2は、性能評処理の手順を示すフローチャートである。
【0029】
まず、データ取得部110が、外部のデータベースまたはデータ記憶部120から想定環境データを取得する(ステップS101)。データ取得部110は、取得した想定環境データを性能評価部130へ出力する。
【0030】
続いて、性能評価部130の設計性能評価部131が、想定環境データに基づいて上述した設計性能評価を行う(ステップS102)。続いて、設計性能評価部131は、設計性能評価で算出した第1システム出力係数PR1をデータ記憶部120へ格納する(ステップS103)。第1システム出力係数PR1は、設計段階の太陽光発電システム200の性能保証値に相当する。
【0031】
その後、太陽光発電システム200が完成すると、データ取得部110が、環境計測器231で計測された最新の環境データをデータ収録部240からネットワーク300を介して取得する(ステップS104)。データ取得部110は、取得した最新の環境データを性能評価部130へ出力する。
【0032】
続いて、性能評価部130の実測性能評価部132が、最新の環境データに基づいて上述した実測性能評価を行う(ステップS105)。続いて、性能評価部130は、実測性能評価で算出した第2システム出力係数PR2を性能判定部140へ送信する(ステップS106)。この第2システム出力係数PR2は、現状の太陽光発電システム200の理論性能値に相当する。
【0033】
性能判定部140は、データ記憶部120から読み出した第1システム出力係数PR1と、実測性能評価部132から入力された第2システム出力係数PR2とを比較して現状の太陽光発電システム200の性能を判定する。例えば、性能判定部140は、第1システム出力係数PR1と第2システム出力係数PR2との差が許容範囲であるか否かを判定する(ステップS107)。
【0034】
上記差が許容範囲外である場合、太陽光発電システム200の現状の理論性能値が、性能保証値を満たしていないため、性能判定部140は、性能低下していると判定する。この場合、性能判定部140は、性能低下している旨を表示部150へ通知する。表示部150は、太陽光発電システム200の性能が低下していることを示す画像を表示する(ステップS108)。
【0035】
以上説明した本実施形態では、サイトで実測された環境データに基づいて実測性能評価を行う際、設計性能評価と同様の発電シミュレーションを行っている。このように、太陽光発電システム200の設計段階における性能を評価するための手段を、実測データを用いた性能評価にも適用している。そのため、顧客に保証している設計性能と、実際の性能との差異が明確になる。
【0036】
本実施形態によれば、PVパネル210が広範または複雑な地形のサイトに配置されて、PVパネル210の日射強度の高精度な計測が困難であっても、太陽光発電システム200について、設計性能に対して現状の性能が問題ないか確認することが可能となる。
【0037】
(第1変形例)
【0038】
以下、第1変形例について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。第1実施形態と同様の点については説明を省略する。
【0039】
本変形例では、実測性能評価部132が、電力計測器232で計測された太陽光発電システム200の実際の発電量に基づいて、実際の第3システム出力係数PR3を算出する実測性能評価(第2実測性能評価)を行う。第3システム出力係数PR3も、第1システム出力係数PR1および第2システム出力係数PR2と同様に、上記の数式を用いて算出することができる。第3システム出力係数PR3では、発電量は、電力計測器232の計測値である。また、アレイ面日射量には、環境計測器231で計測された環境データが用いられる。
【0040】
本変形例では、実測性能評価部132が、第3システム出力係数PR3を算出すると、性能判定部140が、この第3システム出力係数PR3を、第2システム出力係数PR2と比較する。性能判定部140は、例えば、PR3≧PR2×k(k;マージンの係数。例えば0.9など)の条件を満たさない場合に太陽光発電システム200の性能が低下していると判定する。この場合、表示部150は、太陽光発電システム200の性能が低下していることを示す画像を表示する。
【0041】
以上説明した本変形例によれば、設計条件に実日射条件を入れた発電性能(第2システム出力係数PR2)と、実発電性能(第3システム出力係数PR3)とを比較しているため、より高精度に太陽光発電システム200の性能を評価することができる。
【0042】
また、第3システム出力係数PR3が第2システム出力係数PR2よりも低い場合には、早期に性能低下を発見し、その原因を究明することによって、速やかに保証条件に修復することができる。
【0043】
なお、本変形例では、性能判定部140は、第1システム出力係数PR1と第3システム出力係数PR3とを比較した結果に基づいて太陽光発電システム200の性能を判断してもよい。また、性能判定部140は、第1システム出力係数PR1、第2システム出力係数PR2、および第3システム出力係数PR3を比較した結果に基づいて太陽光発電システム200の性能を判断してもよい。すなわち、性能判定部140は、第1システム出力係数PR1、第2システム出力係数PR2、および第3システム出力係数PR3のうちの少なくとも2つを比較した結果に基づいて、太陽光発電システム200の性能を判断してもよい。
【0044】
(第2変形例)
以下、第2変形例について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。第1実施形態と同様の点については説明を省略する。
【0045】
本変形例では、設計性能評価(ステップS102)および実測性能評価(ステップS105)の処理内容が、上述した第1実施形態と異なる。
【0046】
太陽光発電システム200の性能保証に関し、日射強度が低い環境下の性能を、保証内容から除外することを契約条件に盛り込む場合がある。そこで、本変形例では、このような環境データに関する特約が存在する場合、設計性能評価部131は、想定環境データに含まれる日射強度の中で、予め規定された基準値を満たさない日射強度を除外して設計性能評価を行う。その結果、性能保証の実情に即した第1システム出力係数PR1が算出される。
【0047】
また、設計性能評価部131も、設計性能評価部131と同様に、最新の環境データに含まれる日射強度の中で、上記基準値を満たさない日射強度を除外して実測性能評価を行う。その結果、性能保証の実情に即した第2システム出力係数PR2が算出される。
【0048】
その後、ステップS107では、第1実施形態と同様に、性能判定部140が、第1システム出力係数PR1と第2システム出力係数PR2とを比較して現状の太陽光発電システム200の性能を判定する。なお、ステップS107では、第1変形例と同様に、性能判定部140が、第1システム出力係数PR1、第2システム出力係数PR2、および第3システム出力係数PR3のうちの少なくとも2つを比較して太陽光発電システム200の性能を判定してもよい。
【0049】
なお、低日射環境の性能を保証する場合には、予め規定された基準値よりも大きな日射強度を除外して設計性能評価および実測性能評価を行う。この場合も、性能保証の実情に即した第1システム出力係数PR1および第2システム出力係数PR2を求めることができる。
【0050】
また、環境データの除外条件は、日射強度に限定されず、気温またはPVパネル210の温度や積雪や霜などの環境条件であってもよい。また、装置の不具合によるデータ収集不具合や、発電所または一部装置が運転停止している場合や、パネルの一部の影や雪がかかっている場合に除外することも想定される。
【0051】
以上説明した本変形例によれば、性能判定部140が、実際の保証範囲に適合した第1システム出力係数PR1、第2システム出力係数PR2に基づいて太陽光発電システム200の性能を判定する。または、第2システム出力係数PR2と第3システム出力係数PR3とを比較することによって、太陽光発電システム200の想定性能や現状性能をより正当に評価することが可能となる。
【0052】
(第3変形例)
以下、第3変形例について説明する。ここでも、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の点については説明を省略する。
【0053】
太陽光発電システム200の性能保証に関し、計算する時間単位を契約に盛り込む場合がある。そこで、本変形例では、このような環境データに関する特約が存在する場合、設計性能評価部131は、予め規定された時間単位で想定環境データをサンプリングして、設計性能評価を行う。その結果、性能保証の対象となる時間単位に応じて第1システム出力係数PR1を算出することができる。
【0054】
また、実測性能評価部132も、設計性能評価部131と同様に、上記時間単位で最新の環境データをサンプリングして実測性能評価を行う。その結果、性能保証の対象となる時間単位に応じて第2システム出力係数PR2を算出することができる。
【0055】
その後、ステップS107では、第1実施形態と同様に、性能判定部140が、第1システム出力係数PR1と第2システム出力係数PR2とを比較して現状の太陽光発電システム200の性能を判定する。なお、ステップS107では、第1変形例と同様に、性能判定部140が、第1システム出力係数PR1、第2システム出力係数PR2、および第3システム出力係数PR3のうちの少なくとも2つを比較して太陽光発電システム200の性能を判定してもよい。
【0056】
以上説明した本変形例によれば、第2変形例と同様に、性能判定部140が、実際の保証範囲に適合した第1システム出力係数PR1および第2システム出力係数PR2に基づいて太陽光発電システム200の性能を判定する。よって、太陽光発電システム200の性能をより正当に評価することが可能となる。
【0057】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る太陽光発電システムおよび太陽光発電性能評価装置の概略的な構成を示すブロック図である。上述した第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0058】
太陽光発電システム200のサイトが広大である場合、太陽光発電システム200全体の性能を一括的に評価すると、性能低下のエリアを見落とす可能性がある。そこで、本実施形態では、図3に示すように、サイトが4つの区域A~区域Dに分けられている。各区域には、PVパネル210、PCS20、計測器230が設置されている。なお、区域の数は4つに限定されず、4つより少なくても多くてもよい。また、区域ではなく、個別のPCS毎やそれを連結した状態、またはパネルのストリングス毎に分けても良い。
【0059】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、ステップS101~ステップS108の手順で性能評価処理を行う。ただし、ステップS102では、設計性能評価部131は、区域ごとに設計性能評価を行う。また、ステップS105でも、実測性能評価部132は、区域ごとに実測性能評価を行う。
【0060】
さらに、ステップS107では、性能判定部140は、区域ごとに第1システム出力係数PR1と第2システム出力係数PR2とを比較した結果に基づいて性能を判定する。加えて、性能判定部140は、区域間でも第2システム出力係数PR2を比較して性能を判定する。なお、ステップS107では、第1変形例と同様に、性能判定部140が、第1システム出力係数PR1、第2システム出力係数PR2、および第3システム出力係数PR3のうちの少なくとも2つを比較して太陽光発電システム200の性能を判定してもよい。
【0061】
図4は、第2実施形態における実性能評価結果の一例を示すグラフである。図4では、各区域の第2システム出力係数PR2と、第2システム出力係数PR2の平均値とが、月別に示されている。例えば、7月および9月の第2システム出力係数PR2を参照すると、平均値の差はほとんどない。
【0062】
しかし、区域Cの第2システム出力係数PR2は、7月では他の区域よりも大幅に小さい一方で、9月では他の区域よりも大幅に大きくなっている。この場合、性能判定部140は、区域Cの性能が異常であると判定する。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、サイトを複数の区域に分け、設計性能評価および実測性能評価が区域ごとに行われる。さらに、性能判定も区域ごとに行われる。そのため、太陽光発電システム200のサイトが広大であっても、性能が異常なエリアを抽出することが可能となる。これにより、性能異常に対して迅速に対処することが可能となる。
【0064】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る太陽光発電システムおよび太陽光発電性能評価装置の概略的な構成を示すブロック図である。上述した第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、4台の太陽光発電システム200が、互いに離れた4つのサイトS1~サイトS4にそれぞれ設置されている。なお、サイトの数は、4つに限定されず、4つより少なくても多くてもよい。各太陽光発電システム200では、第1実施形態と同様に、計測器230が環境データおよび電力データを計測し、データ収録部240がこれらのデータを収録する。また、各データ収録部240は、ネットワーク300を介して太陽光発電性能評価装置101に接続されている。
【0066】
太陽光発電性能評価装置101には、操作部160が設けられている。操作部160は、ユーザによる操作の内容に応じた信号や情報を出力する。操作部160は、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイスにより構成される。
【0067】
図6は、本実施形態に係るデータ記憶部120のデータ構造の一例を示す図である。図6に示すように、データ記憶部120には、サイトS1~サイトS4にそれぞれ設置された太陽光発電システム200の固有データD1~固有データD4が、各サイトに対応付けて格納されている。
【0068】
以下、図7を参照して、本実施形態に係る太陽光発電性能評価装置101が太陽光発電システム200の性能を評価する処理を説明する。図7は、本実施形態に係る性能評処理の手順を示すフローチャートである。
【0069】
まず、サイトS1~サイトS4の中で性能評価対象のサイトを選択する(ステップS200)。この選択処理は、例えば、操作部160でユーザの操作を受け付けることによって実現される。
【0070】
続いて、データ取得部110が、ステップS200で選択された選択サイトに設置された太陽光発電システム200の想定環境データを取得する(ステップS201)。想定環境データは、外部のデータベースまたはデータ記憶部120に、各サイトに対応付けて格納されている。データ取得部110は、取得した想定環境データを性能評価部130へ出力する。
【0071】
続いて、性能評価部130の設計性能評価部131が、想定環境データに基づいて第1実施形態で説明した設計性能評価を行う(ステップS202)。このとき、設計性能評価部131は、データ記憶部120から、選択サイトに対応する固有データを読み出して発電シミュレーションを行う。続いて、設計性能評価部131は、設計性能評価で算出した第1システム出力係数PR1をデータ記憶部120へ格納する(ステップS203)。このとき、第1システム出力係数PR1は、選択サイトに対応付けてデータ記憶部120に格納される。
【0072】
その後、データ取得部110が、選択サイトに設置された環境計測器231で計測された最新の環境データをデータ収録部240からネットワーク300を介して取得する(ステップS204)。データ取得部110は、取得した最新の環境データを性能評価部130へ出力する。
【0073】
続いて、性能評価部130の実測性能評価部132が、最新の環境データに基づいて上述した実測性能評価を行う(ステップS205)。このときも、実測性能評価部132は、データ記憶部120から、選択サイトに対応する固有データを読み出して発電シミュレーションを行う。続いて、実測性能評価部132は、実測性能評価で算出した第2システム出力係数PR2を性能判定部140へ送信する(ステップS206)。
【0074】
性能判定部140は、データ記憶部120から選択サイトに対応する第1システム出力係数PR1を読み出し、読み出した第1システム出力係数PR1と、第2システム出力係数PR2との差に基づいて選択サイトに設置された太陽光発電システム200の現状の性能を判定する(ステップS207)。なお、ステップS207では、第1変形例と同様に、性能判定部140が、第1システム出力係数PR1、第2システム出力係数PR2、および第3システム出力係数PR3のうちの少なくとも2つを比較して太陽光発電システム200の性能を判定してもよい。
【0075】
上記差が許容範囲外である場合、太陽光発電システム200の現状の理論性能値が、性能保証値を満たしていないため、性能判定部140は、性能低下していると判定する。この場合、性能判定部140は、性能低下している旨を表示部150へ通知する。表示部150は、太陽光発電システム200の性能が低下していることを示す画像を表示する(ステップS208)。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、別々のサイトに設置された複数の太陽光発電システム200の性能を、1台の太陽光発電性能評価装置101で評価することができる。これにより、複数のサイトを簡易に管理することが可能となる。
【0077】
なお、本実施形態では、性能評価の対象となる太陽光発電システム200は、ユーザの操作によって選択されている。しかし、予め設定された順番に基づいて、複数の太陽光発電システム200を順次に性能評価してもよい。この場合も、複数の太陽光発電システム200の性能を1台の太陽光発電性能評価装置101に集約して評価できるため、サイト管理が簡便になる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
100、101:太陽光発電性能評価装置
120:データ記憶部
130:性能評価部
140:性能判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7