(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146715
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F15B 11/08 20060101AFI20220928BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20220928BHJP
F15B 3/00 20060101ALI20220928BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F15B11/08 A
F15B11/00 H
F15B3/00 F
E02F9/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047824
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 佳史
(72)【発明者】
【氏名】森本 稔
(72)【発明者】
【氏名】秋山 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高桑 貞一
【テーマコード(参考)】
2D003
3H086
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003BA05
2D003CA02
2D003DA02
2D003DB08
3H086BA03
3H086BA14
3H086BA19
3H086BC01
3H086BC11
3H089AA05
3H089AA60
3H089BB01
3H089BB27
3H089CC01
3H089DA03
3H089DB03
3H089DB43
3H089DB55
3H089EE04
3H089EE16
3H089EE17
3H089EE36
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】作業の待機中に、パイロットポンプを用いずに制御弁を駆動可能なパイロット圧を確保しつつエネルギ消費を抑制することができる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、油圧ポンプ31から油圧アクチュエータ32に供給される圧油の流れを制御する油圧パイロット式の制御弁33を含むメイン回路30と、油圧ポンプ31から供給された圧油から制御弁33を駆動するパイロット圧を生成するパイロット回路40とを備える。パイロット回路40は、油圧ポンプ31から供給された圧油を減圧してパイロット圧として出力する減圧弁41、42と、油圧ポンプ31から供給された圧油を増圧して減圧弁41、42に出力する増圧器45と、油圧ポンプ31からの圧油を増圧器45に出力する第1状態と油圧ポンプ31からの圧油を増圧器45を介さずに減圧弁41、42に出力する第2状態とに切換可能な切換弁46とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される圧油により駆動される油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータにより駆動されるフロント作業装置と、
前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する油圧パイロット式の制御弁を含むメイン回路と、
前記油圧ポンプから供給された圧油から前記制御弁を駆動するパイロット圧を生成するパイロット回路とを備える作業機械において、
前記パイロット回路は、
前記油圧ポンプから供給された圧油を減圧して前記パイロット圧として出力する減圧弁と、
前記油圧ポンプから供給された圧油を増圧して前記減圧弁に出力する増圧器と、
前記油圧ポンプからの圧油を前記増圧器に出力する第1状態と前記油圧ポンプからの圧油を前記増圧器を介さずに前記減圧弁に出力する第2状態とに切換可能な切換弁とを備える
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記増圧器は、
前記油圧ポンプからの圧油が入力される第1室及び第2室を有するシリンダと、
前記第1室内に配置された第1ピストン部及び前記第2室内に配置され前記第1ピストン部よりも受圧面積が小さな第2ピストン部を有するピストンとを備え、
前記増圧器の前記第1室は、第1パイロットラインを介して作動油タンクに接続され、
前記増圧器の前記第2室は、第2パイロットラインを介して前記減圧弁に接続され、
前記パイロット回路は、前記第1パイロットライン上に設置され、前記第1パイロットラインを連通状態にする開位置と前記第1パイロットラインを遮断状態にする閉位置とに切換可能な開閉弁を含む
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記油圧アクチュエータの駆動を指示する操作装置と、
前記増圧器の前記第2室内に貯留されている油量を検出する油量検出器と、
コントローラとを更に備え、
前記メイン回路は、前記油圧ポンプから前記作動油タンクに戻る圧油の流れを遮断可能な閉弁位置を有するアンロード弁を更に含み、
前記開閉弁は、前記油圧ポンプからの圧油が入力されるパイロット室を有し、前記パイロット室に入力される圧油の圧力上昇に応じて前記閉位置から前記開位置に切り換わるように構成されており、
前記コントローラは、前記操作装置の操作が行われない待機状態が所定時間以上経過し、かつ、前記油量検出器の検出値が閾値以下であると判定した場合には、前記アンロード弁を前記閉弁位置に切り換える制御を実行する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記切換弁は、前記油圧ポンプからの圧油が入力されるパイロット室を有し、前記パイロット室に入力される圧油の圧力上昇に応じて前記第1状態から前記第2状態に切り換わるように構成されている
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、
前記切換弁は、前記第2状態のときに前記油圧ポンプからの圧油が通過する絞りを有し、
前記絞りは、その開口面積が前記パイロット室に入力される圧油の圧力変化に応じて変更されるように構成されている
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に係り、更に詳しくは、油圧パイロット式の制御弁を用いて油圧アクチュエータの動作を制御する作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやホイールローダ、クレーン等の作業機械では、油圧ポンプから供給される圧油によって油圧シリンダや油圧モータなどの油圧アクチュエータが駆動される。油圧アクチュエータの動作の制御は、油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する制御弁によって行われる。制御弁の操作方法として、油圧パイロット式のものがある。油圧パイロット式の制御弁の駆動は、パイロット油圧源からの圧油を適宜減圧して生成されたパイロット圧により制御される。パイロット油圧源として、一般的に、油圧アクチュエータを駆動させるための圧油を吐出するメインポンプとは異なるパイロットポンプが用いられる。すなわち、パイロットポンプから吐出される圧油を元にパイロット圧が生成される。
【0003】
それに対して、制御弁を駆動させるためのパイロット圧をメインポンプから吐出された圧油を元に生成するものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の流体圧制御装置は、ポンプの吐出口に接続された供給通路から分岐したパイロット通路を通じて導かれるポンプからの作動油がソレノイド式の減圧弁により減圧されて制御弁の一対のパイロット圧室に導かれるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の流体圧制御装置では、所定の開弁圧で開弁する背圧弁(チェック弁)が供給通路上におけるパイロット通路の接続部よりも下流側に設けられている。この構成により、ポンプ始動の際に、ポンプの吐出圧が背圧弁の開弁圧まで直ちに上昇するので、パイロット通路内の圧力も同様に上昇することになる。このため、パイロットポンプから吐出された圧油を元にパイロット圧を生成する構成でなくとも、ポンプの始動時において、制御弁を駆動するために必要な圧力のパイロット圧を確保することができ、制御弁の応答性の低下を防止している。
【0006】
ところで、作業機械は、作業が行われない待機状態では、通常、油圧アクチュエータに圧油を供給するメインポンプの出力を低下させることで無駄なエネルギ消費を抑制している。特許文献1に記載の流体圧制御装置でも、作業が行われない待機中、エネルギ消費の抑制の観点からポンプの出力を低下させることが望ましい。しかし、特許文献1に記載の流体圧制御装置では、所定の開弁圧以上でしか開弁しない背圧弁が供給通路上に設けられているので、作業の待機中においても、ポンプの吐出圧が背圧弁の開弁圧以上になるようにポンプの出力を維持しなければならず、エネルギ消費を低減することは難しい。
【0007】
本発明は、上記の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、作業の待機中において、パイロットポンプを用いることなく制御弁を駆動可能なパイロット圧を確保しつつエネルギ消費を抑制することができる作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される圧油により駆動される油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータにより駆動されるフロント作業装置と、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する油圧パイロット式の制御弁を含むメイン回路と、前記油圧ポンプから供給された圧油から前記制御弁を駆動するパイロット圧を生成するパイロット回路とを備える作業機械において、前記パイロット回路は、前記油圧ポンプから供給された圧油を減圧して前記パイロット圧として出力する減圧弁と、前記油圧ポンプから供給された圧油を増圧して前記減圧弁に出力する増圧器と、前記油圧ポンプからの圧油を前記増圧器に出力する第1状態と前記油圧ポンプからの圧油を前記増圧器を介さずに前記減圧弁に出力する第2状態とに切換可能な切換弁とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一例によれば、作業の待機中にパイロット回路に供給された油圧ポンプの圧油がパイロット回路で要求される圧力よりも低い場合であっても、油圧ポンプからの圧油を切換弁の第1状態への切換により増圧器を介して増圧することで、油圧ポンプの出力を上昇させることなく要求される圧力を生成して減圧弁に入力することができる。すなわち、作業の待機中において、パイロットポンプを用いることなく制御弁を駆動可能なパイロット圧を確保しつつエネルギ消費を抑制することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の作業機械の一実施の形態を適用した油圧ショベルを示す外観図である。
【
図2】本発明の作業機械の一実施の形態に搭載された油圧システムを示す回路図である。
【
図3】
図2に示す本発明の作業機械の一実施の形態の油圧システムにおける切換弁の理想的な開口特性を示す特性図である。
【
図4】本発明の作業機械の一実施の形態の一部を構成するコントローラの機能を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示す本発明の作業機械の一実施の形態のコントローラの油量判定部による判定に関する説明図である。
【
図6】
図2に示す本発明の作業機械の一実施の形態の油圧システムにおける作業の待機状態から操作開始の移行時の初期状態を示す回路図である。
【
図7】
図2に示す本発明の作業機械の一実施の形態の油圧システムにおける作業の待機状態から操作開始の初期状態を経過した後の状態を示す回路図である。
【
図8】本発明の作業機械の一実施の形態におけるコントローラによる増圧器の油量補充の制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の作業機械の実施の形態について図面を用いて説明する。本実施の形態では、作業機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0012】
[一実施の形態]
まず、本発明の作業機械の一実施の形態を適用する油圧ショベルの構成について
図1を用いて説明する。
図1は本発明の作業機械の一実施の形態を適用した油圧ショベルを示す外観図である。ここでは、油圧ショベルの運転席に着座したオペレータから見た方向を用いて説明する。
【0013】
図1において、作業機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体1と、下部走行体1上に旋回可能に搭載された上部旋回体2と、上部旋回体2の前部に俯仰動可能に設けられたフロント作業装置3とで大略構成されている。
【0014】
下部走行体1は、例えば、左右にクローラ式の走行装置6を備えている。左右の走行装置6はそれぞれ、油圧アクチュエータとしての走行油圧モータ6aによって駆動される。
【0015】
上部旋回体2は、油圧アクチュエータとしての旋回油圧モータ(図示せず)によって下部走行体1に対して旋回する。上部旋回体2は、下部走行体1上に旋回可能に搭載された支持構造体としての旋回フレーム8と、旋回フレーム8上の左前側に設置されたキャブ9と、旋回フレーム8の後端部に設けられたカウンタウェイト10と、キャブ9とカウンタウェイト10の間に設けられた機械室11とを含んで構成されている。キャブ9内には、オペレータが着座する運転席(図示せず)や後述の操作装置61(後述の
図2参照)などが配置されている。カウンタウェイト10は、フロント作業装置3と重量バランスをとるためのものである。機械室11は、原動機や後述の油圧ポンプ31(後述の
図2参照)などの各種機器を収容している。
【0016】
フロント作業装置3は、掘削作業等を行うための多関節型の作動機構であり、例えば、ブーム13、アーム14、アタッチメントとしてのバケット15を備えている。ブーム13の基端側は、上部旋回体2の前部に回動可能に結合されている。ブーム13の先端部には、アーム14の基端部が回動可能に結合されている。アーム14の先端部には、バケット15の基端部が回動可能に結合されている。ブーム13、アーム14、バケット15はそれぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18によって駆動される。
【0017】
次に、本発明の作業機械の一実施の形態における油圧システムの構成について
図2および
図3を用いて説明する。
図2は本発明の作業機械の一実施の形態に搭載された油圧システムを示す回路図である。
【0018】
図2において、油圧ショベルは、下部走行体1や上部旋回体2、フロント作業装置3(
図1を参照)を油圧によって駆動させる油圧システム20を備えている。油圧システム20は、原動機(図示せず)により駆動される油圧ポンプ31と、油圧ポンプ31から供給される圧油により駆動される油圧アクチュエータ32と、油圧ポンプ31から油圧アクチュエータ32に供給される圧油の流れ(方向及び流量)を制御する制御弁33を含むメイン回路30(
図2中、太い実線で接続されている部分)と、油圧ポンプ31が吸い込む作動油を貯留する作動油タンク36とを備えている。なお、
図2は、複数の油圧アクチュエータのうち1つの油圧アクチュエータを駆動するための回路部分を代表的に抜き出して示したものである。実際の油圧システムでは、
図2で示されていない他の油圧アクチュエータを駆動する回路部分も、
図2に示す回路部分と同様に構成されている。
【0019】
油圧ポンプ31は、例えば、可変容量型のポンプであり、油圧ポンプ31のポンプ容積を調整するレギュレータ31aを有している。レギュレータ31aは、コントローラ70からの指令信号に基づきポンプ容積を調整する。油圧ポンプ31は、吐出ライン37を介して制御弁33に接続されている。
【0020】
油圧アクチュエータ32は、ブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18、左右の走行油圧モータ6a、旋回油圧モータ(図示せず)のいずれかによって構成される。
図2では、例示的に油圧シリンダが図示されている。
【0021】
制御弁33は、例えば、センタバイパスライン38上に配置されている。センタバイパスライン38は、油圧ポンプ31から吐出された圧油を作動油タンク36に導くものであり、一端側(上流側)が油圧ポンプ31の吐出側である吐出ライン37に接続されると共に、他端側(下流側)が作動油タンク36に接続されている。制御弁33は、アクチュエータライン39を介して油圧アクチュエータ32に接続されている。
【0022】
制御弁33は、油圧パイロット式の制御弁であり、両端部に一対のパイロット室33a、33b及び一対のバネ33c、33dを有している。制御弁33は、ノーマル位置が一対のバネ33c、33dの付勢力によって中立位置となるように構成されている。中立位置(ノーマル位置)の制御弁33は、油圧ポンプ31と作動油タンク36とを連通状態(センタバイパスライン38が連通状態)にする一方、油圧ポンプ31と油圧アクチュエータ32との連通を遮断状態にする。制御弁33は、後述のパイロット回路40からのパイロット二次圧が一対のパイロット室33a、33bのいずれかに作用することで切換方向とストローク量(駆動)が制御される。制御弁33は、切換方向とストローク量に応じて、油圧ポンプ31からの圧油を油圧アクチュエータ32と作動油タンク36とに分流させる。
【0023】
センタバイパスライン38上における制御弁33と作動油タンク36との間には、アンロード弁34が設けられている。アンロード弁34は、センタバイパスライン38を連通状態又は遮断状態に切換可能に構成されている。すなわち、アンロード弁34は、油圧ポンプ31からセンタバイパスライン38を介して作動油タンク36に戻る圧油の流れの許容又は遮断を切換可能とするものである。
【0024】
アンロード弁34は、例えば、油圧パイロット式の弁であり、一方側にパイロット室34aを他方側にバネ34bを有している。アンロード弁34は、センタバイパスライン38を連通状態にする(油圧ポンプ31と作動油タンク36とを連通状態にする)位置がバネ34bの付勢力によってノーマル位置Xとなるように設定されている。アンロード弁34は、後述のパイロット回路40からのパイロット二次圧がパイロット室34aに作用することでバネ34bの付勢力に抗して、センタバイパスライン38を遮断状態にする作動位置(閉弁位置)Yに切り換わる。アンロード弁34は、ノーマル位置Xにおいて、圧油が絞り34cを通過するように構成されている。アンロード弁34の絞り34cは、油圧ポンプ31から作動油タンク36に戻る作動油が通過することで、絞り34cよりも上流側に背圧(油圧ポンプ31の吐出圧)を立ち上げるものである。
【0025】
センタバイパスライン38上の制御弁33及びアンロード弁34に対して、リリーフ弁35が並列に接続されている。リリーフ弁35は、メイン回路30の最高圧を制限するものであり、メイン回路30の圧力(油圧ポンプ31の吐出圧)が所定の設定圧に達した場合に開弁することで、油圧ポンプ31から吐出された圧油を作動油タンク36に逃がす。
【0026】
油圧アクチュエータ32に対するオペレータの操作は、操作装置61を介して行われる。操作装置61は、オペレータの操作(操作方向や操作量)に応じて油圧アクチュエータ32の駆動を指示するものである。操作装置61は、例えば、操作レバー61aを有する電気式のものであり、電気配線を介してコントローラ70に接続されている。操作装置61は、操作レバー61aの操作(操作方向及び操作量)を電気的に検出する検出装置(図示せず)を備えており、検出した操作レバー61aの操作(操作方向及び操作量)を操作信号としてコントローラ70へ出力する。
【0027】
油圧システム20は、油圧パイロット式の制御弁33及びアンロード弁34の駆動を制御するためのパイロット回路40(
図2中、破線で接続されている部分)を更に備えている。パイロット回路40は、メイン回路30における油圧ポンプ31と制御弁33との間の位置(例えば、吐出ライン37)から分岐した第1パイロットライン51を介して供給された油圧ポンプ31からの圧油をパイロット油圧源として用いるものである。パイロット回路40は、油圧ポンプ31から供給された圧油を元に制御弁33及びアンロード弁34を駆動するためのパイロット圧(以下、パイロット二次圧と称することがある)を生成する。
【0028】
パイロット回路40は、入力された圧油の圧力(以下、パイロット一次圧と称することがある)から制御弁33を駆動するパイロット二次圧を生成する一対の第1電磁弁41、42と、入力された圧油の圧力(以下、パイロット一次圧と称することがある)からアンロード弁34を駆動するパイロット二次圧を生成する第2電磁弁43と、一対の第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43に入力する圧油の圧力(パイロット一次圧)の最高圧を規定するパイロットリリーフ弁44とを備えている。また、パイロット回路40は、一対の第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43よりも上流側に配置され、入力される圧油を増圧して一対の第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43に出力する増圧器45と、一対の第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43よりも上流側かつ増圧器45よりも上流側に配置され、油圧ポンプ31から第1パイロットライン51を介して供給された圧油を増圧器45に出力する第1状態と油圧ポンプ31から第1パイロットライン51を介して供給された圧油を増圧器45を介さずに一対の第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43に出力する第2状態とに切換可能な切換弁46とを備えている。制御弁33及びアンロード弁34を高精度に駆動するためには、パイロット二次圧を生成するための元圧であるパイロット一次圧を略一定に維持することが好ましい。
【0029】
第1パイロットライン51は、例えば、メイン回路30の吐出ライン37を切換弁46に接続する油路である。切換弁46の出力側には、第2パイロットライン52及び第3パイロットライン53が接続されている。切換弁46は、第3パイロットライン53を介して増圧器45に接続されている。第2パイロットライン52の下流側及び増圧器45の出力側には、第4パイロットライン54が接続されている。第4パイロットライン54は、第5パイロットライン55を介して制御弁33の一方のパイロット室33aに、第6パイロットライン56を介して制御弁33の他方のパイロット室33bに、第7パイロットライン57を介してアンロード弁34のパイロット室34aに接続されている。第4パイロットライン54には、作動油タンク36に連通するパイロットリリーフライン58が接続されている。第2パイロットライン52上には、第1チェック弁48が設けられている。第1チェック弁48は、切換弁46側から第4パイロットライン54側へ向かう圧油の流れを許容する一方、第4パイロットライン54側から切換弁46側へ向かう圧油の流れを阻止するものである。
【0030】
一対の第1電磁弁41、42は、第5パイロットライン55及び第6パイロットライン56上に設けられており、制御弁33の一対のパイロット室33a、33bに入力するパイロット二次圧を生成するものである。一対の第1電磁弁41、42は、例えば、2位置3ポートの弁であり、一方側にソレノイド41a、42aを他方側にバネ41b、42bを有している。一対の第1電磁弁41、42は、ノーマル位置がバネ41b、42bの付勢力によって設定されている。一対の第1電磁弁41、42は、ソレノイド41a、42aが電気配線を介してコントローラ70に電気的に接続されており、コントローラ70からの指令信号に応じてノーマル位置からの変位(作動位置)が制御される。ノーマル位置の第1電磁弁41、42は、制御弁33のパイロット室33a、33bと第4パイロットライン54との連通を遮断状態にする一方、制御弁33のパイロット室33a、33bと作動油タンク36とを連通状態にする。作動位置の第1電磁弁41、42は、制御弁33のパイロット室33a、33bと第4パイロットライン54とを連通状態にする一方、制御弁33のパイロット室33a、33bと作動油タンク36との連通を遮断状態にする。一対の第1電磁弁41、42は、入力されたパイロット一次圧を減圧して制御弁33を駆動するパイロット二次圧を生成する第1減圧弁として機能するものであり、コントローラ70から出力された指令信号に応じた圧力のパイロット二次圧を生成する。
【0031】
第2電磁弁43は、第7パイロットライン57上に設けられており、アンロード弁34のパイロット室34aに入力するパイロット二次圧を生成するものである。第2電磁弁43は、例えば第1電磁弁41、42と同様に、2位置3ポートの弁であり、一方側にソレノイド43aを他方側にバネ43bを有している。第2電磁弁43は、ノーマル位置がバネ43bの付勢力によって設定されている。第2電磁弁43は、ソレノイド43aが電気配線を介してコントローラ70に電気的に接続されており、コントローラ70からの指令信号に応じてノーマル位置からの変位(作動位置)が制御される。ノーマル位置の第2電磁弁43は、アンロード弁34のパイロット室34aと第4パイロットライン54との連通を遮断状態にする一方、アンロード弁34のパイロット室34aと作動油タンク36とを連通状態にする。作動位置の第2電磁弁43は、アンロード弁34のパイロット室34aと第4パイロットライン54とを連通状態にする一方、アンロード弁34のパイロット室34aと作動油タンク36との連通を遮断状態にする。第2電磁弁43は、入力されたパイロット一次圧を減圧してアンロード弁34を駆動するパイロット二次圧を生成する減圧弁として機能するものであり、コントローラ70から出力された指令信号に応じた圧力のパイロット二次圧を生成する。
【0032】
パイロットリリーフ弁44は、パイロットリリーフライン58上に設けられている。パイロットリリーフ弁44は、第4パイロットライン54の圧力(パイロット一次圧)が予め設定されたリリーフ圧に達すると開弁してリリーフ圧以上の過剰な圧油を作動油タンク36へ逃がす一方、リリーフ圧未満であれば閉弁状態を維持するものである。パイロット一次圧Piは、例えば、制御弁33のバネ33c、33d及びアンロード弁34のバネ34bに抗して、制御弁33及びアンロード弁を最大に変位させるのに十分な圧力として定められる。
【0033】
増圧器45は、メイン回路30の油圧ポンプ31の吐出圧が要求されるパイロット一次圧Piよりも低い場合に、油圧ポンプ31から供給された圧油の圧力を増幅させるものである。増圧器45は、断面積が相対的に大きな大径室451a及び断面積が大径室451aよりも相対的に小さな小径室451bを有するシリンダ451と、シリンダ451の大径室451a内に配置された第1ピストン部452a及び小径室451b内に配置された第2ピストン部452bを有するピストン452とを有している。ピストン452は、第2ピストン部452bの受圧面積が第1ピストン部452aの受圧面積よりも小さくなるように構成されている。増圧器45は、ピストン452がシリンダ451の延在方向に移動可能に構成されている。増圧器45は、圧油を一時的に貯留可能なアキュムレータよりも単純な構造を有しており、メンテナンスがアキュムレータよりも容易である。
【0034】
増圧器45の大径室451a及び小径室451bの両室には第3パイロットライン53が接続されており、増圧器45は第3パイロットライン53の圧油が大径室451a及び小径室451bに導入されるように構成されている。また、小径室451bには第4パイロットライン54が接続されていると共に、大径室451aは排出パイロットライン59を介して作動油タンク36に接続されている。増圧器45は、大径室451a内の油圧によりピストン452の第1ピストン部452aに作用する力と小径室451b内の油圧により第2ピストン部452bに作用する力がバランスするようになっている。増圧器45の大径室451a及び小径室451bには第3パイロットライン53を介して同じ圧力が入力されるので、受圧面積が相対的に小さな第2ピストン部452b側の小径室451b内の油圧が第1ピストン部452a側の大径室451a内の油圧よりも大きくなる。すなわち、増圧器は、第3パイロットライン53を介して供給される圧油を増圧して小径室451bに接続されている第4パイロットライン54側へ出力するものである。
【0035】
第3パイロットライン53上の増圧器45の小径室451b側に接続される部分には、第2チェック弁49が設けられている。第2チェック弁49は、小径室451b側から切換弁46側への圧油の流れを阻止する一方、切換弁46側から小径室451b側への流れを許容するものである。すなわち、増圧器45の小径室451b内で増圧された圧油の切換弁46側へ逆流を防止するものである。
【0036】
排出パイロットライン59上には、開閉弁47が設けられている。開閉弁47は、排出パイロットライン59の連通又は遮断を切換可能に構成されている。開閉弁47は、例えば、2位置2ポートの弁であり、一方側にパイロット室47aを他方側にバネ47bを有している。開閉弁47は、パイロット室47aに第2パイロットライン52を流れる圧油が導入されるように構成されている。開閉弁47のノーマル位置Xは、バネ47bの付勢力によって設定されており、排出パイロットライン59(大径室451aと作動油タンク36との連通)を遮断状態にする閉位置である。一方、作動位置Yは、排出パイロットライン59(大径室451aと作動油タンク36)を連通状態にする開位置である。開閉弁47は、パイロット室47aに作用する第2パイロットライン52の圧油の圧力の上昇によって、バネ47bの付勢力に抗して自動的に作動位置Yに切り換わる。
【0037】
増圧器45には、小径室451b内の油量を検出する油量検出器62が設置されている。油量検出器62として、例えば、ピストン452の位置(変位)を検出する変位センサの使用が想定される。この場合、小径室451bの断面積が既知なので、変位センサ62より検出されたピストン452の変位xを小径室451bの油量と等価に扱うことが可能である。油量検出器62は、電気配線を介してコントローラ70に電気的に接続されており、検出信号をコントローラ70へ出力する。
【0038】
切換弁46は、メイン回路30の油圧ポンプ31から第1パイロットライン51を介して供給された圧油を第2パイロットライン52又は第3パイロットライン53のいずれか一方に導入するように切り換えるものである。切換弁46は、例えば、2位置3ポートの弁であり、一方側にパイロット室46aを他方側にバネ46bを有している。切換弁46は、パイロット室46aに第1パイロットライン51の圧油が導入されるように構成されている。切換弁46は、ノーマル位置Xがバネ46bの付勢力によって設定されている。ノーマル位置Xの切換弁46は、第1パイロットライン51と第3パイロットライン53とを接続状態にする一方、第1パイロットライン51と第2パイロットライン52との接続を遮断状態にする。一方、作動位置Yの切換弁46は、第1パイロットライン51と第3パイロットライン53との接続を遮断状態にする一方、第1パイロットライン51と第2パイロットライン52とを接続状態にする。
【0039】
切換弁46は、パイロット室46aに作用する第1パイロットライン51の圧油の圧力の上昇によって、バネ46bの付勢力に抗して自動的に作動位置Yに切り換わる。すなわち、切換弁46は、メイン回路30の油圧ポンプ31からの圧油の圧力がバネ46bの付勢力に応じた所定値よりも低い場合には増圧器45を介してパイロット一次圧Piを生成するように切り換える一方、油圧ポンプ31からの圧油の圧力がバネ46bの付勢力に応じた所定値よりも高い場合には増圧器45を介さずに油圧ポンプ31からの圧油を元にパイロット一次圧Piを生成するように切り換わる。
【0040】
切換弁46は、作動位置Yにおいて圧油が通過する絞り46cを有している。絞り46cは、油圧ポンプ31の吐出圧P2が要求されるパイロット一次圧よりも高い場合において、油圧ポンプ31の変動する吐出圧P2を元に略一定のパイロット一次圧Piを生成するものである。そのため、絞り46cは、例えば、以下に示す理想的な開口特性に近似した特性を備えるように構成されている。
【0041】
絞り46cを流れる圧油の流量をQi、絞り46cの開口面積をAc、流量係数をCd、作動油の密度をρとする。この場合、一般的に、以下の式(1)が成立する。
【0042】
【0043】
式(1)を開口面積Acについて変形すると、以下の式(2)になる。
【0044】
【0045】
ここで、Qiは、設計上の観点から設定される値である。例えば、Qiを少量に設定すると、パイロットリリーフ弁44を介して作動油タンク36へ流出する油量が少なくて済み、エネルギ消費を抑制することができる。しかし、Qiを非常に少量に設定しすぎると、急な操作が行われた場合に制御弁33のパイロット室33a、33b及びアンロード弁34のパイロット室34aに対して供給すべき油量が不足し、制御弁33及びアンロード弁34の応答性が低下する恐れがある。Qiは、それらの兼ね合いにより決定することができる。また、パイロット一次圧Piは、パイロットリリーフ弁44の設定圧として決定される値である。また、Cd及びρは、弁形状や絞り46cの流れなどにより定められる定数及び作動油の温度などにより定められる物性値である。以上より、開口面積Acは、任意に設定できないパラメータである油圧ポンプ31の吐出圧P2の関数と見なすことができる。
【0046】
また、切換弁46(弁体)の変位に関してパイロット室46a及びバネ46bに着目すると、切換弁46(弁体)に作用する力の釣り合いについて、以下の式(3)が成り立つ。
【0047】
【0048】
ここで、Adはパイロット室46aの受圧面積(スプール弁の場合にはスプールの断面積)、kはバネ46bのバネ定数、xaは弁体の変位、x0はバネ46bの初期変位である。
【0049】
式(3)を油圧ポンプ31の吐出圧P2について変形して式(2)に代入すると、以下の式(4)になる。
【0050】
【0051】
ここで、受圧面積Ad、バネ定数k、初期変位x0はそれぞれ、設計上の観点から設定可能な値である。以上より、開口面積Acは、任意に設定できないパラメータである切換弁46の変位xaの関数と見なすことができる。横軸を切換弁46の変位xa、縦軸を切換弁46の開口面積Acとすると、式(4)は
図3に示す特性図となる。
【0052】
本実施の形態においては、絞り46cの開口面積は上限が実際上あるので、
図3に示す特性図を理想の開口特性とし、絞り46cが当該特性図に近い特性を備えるように切換弁46を構成する。これにより、油圧ポンプ31の変動する吐出圧P2を略一定のパイロット一次圧Piに減圧することができる。
【0053】
コントローラ70は、操作装置61からの操作信号に基づき、油圧ポンプ31のレギュレータ31a、一対の第1電磁弁41、42、第2電磁弁43を制御することで、油圧アクチュエータ32の動作を制御するものである。また、コントローラ70は、油量検出器62からの検出信号に基づき第2電磁弁43を制御することで、増圧器45の小径室451bへの圧油補充を行うものである。
【0054】
次に、本発明の作業機械の一実施の形態の一部を構成するコントローラのハード構成及び機能構成について
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は本発明の作業機械の一実施の形態の一部を構成するコントローラの機能を示すブロック図である。
図5は
図4に示す本発明の作業機械の一実施の形態のコントローラの油量判定部による判定に関する説明図である。
【0055】
図4において、コントローラ70は、例えば、マイクロコンピュータにより構成されており、RAMやROM等からなる記憶装置71と、CPUやMPU等からなる処理装置72とを備えている。記憶装置71には、油圧アクチュエータ32の駆動制御や小径室451bの圧油補充の制御に必要なプラグラムを含む各種情報が予め記憶されている。処理装置72は、記憶装置71からプログラムや各種情報を適宜読み込み、当該プログラムに従って処理を実行することで次の機能を含む各種機能を実現する。
【0056】
コントローラ70は、処理装置72により実行される機能として、ポンプ制御部81、第1電磁弁制御部82、第2電磁弁制御部83、待機時間判定部84、油量判定部85を備えている。
【0057】
ポンプ制御部81は、操作装置61の操作方向及び操作量に応じて、油圧ポンプ31のポンプ容積をレギュレータ31aを介して制御するものである。ポンプ制御部81は、操作装置61の操作が行われない待機状態のときには、油圧ポンプ31のポンプ容積を小さくしてポンプ出力を低下させる制御を行うことで、エネルギ消費の抑制を図っている。
【0058】
第1電磁弁制御部82は、操作装置61の操作方向及び操作量に応じて、一対の第1電磁弁41、42の駆動を制御する指令を一対の第1電磁弁41、42へ出力する。一対の第1電磁弁41、42の駆動に応じて制御弁33のパイロット室33a、33bに入力されるパイロット二次圧の減圧調整が行われ、制御弁33のストローク量に応じて油圧アクチュエータ32の駆動が制御される。
【0059】
図2に示すパイロット回路40では、操作装置61の操作が行われない待機状態が長時間継続されると、第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43からの圧油の漏れ及び増圧器45からの圧油の漏れにより、増圧器45の小径室451b内の油量が減少してしまう。小径室451bの油量の減少が進むと、操作装置61が操作されて待機状態が解除されたときに、制御弁33やアンロード弁34に対して必要なパイロット圧油の流量を確保することができない懸念がある。
【0060】
そこで、待機時間判定部84は、待機状態の経過時間を待機時間Tとして計測し、計測した待機時間Tが予め設定されている時間閾値T0以上か否かを判定する。計測方法としては、例えば、コントローラ70に内蔵された時刻歴記録機能を用いる。時間閾値T0は、例えば、記憶装置71に予め記憶されている。待機時間判定部84は、待機時間Tが時間閾値T0以上になると、判定結果を油量判定部85に出力する。
【0061】
油量判定部85は、油量検出器62からの検出信号(検出値)に基づき、増圧器45の小径室451b内の油量が第1閾値以下か否かを判定する。また、油量検出器62からの検出信号(検出値)に基づき、増圧器45の小径室451b内の油量が第2閾値以上か否かを判定する。第1閾値及び第2閾値は、例えば、記憶装置71に予め記憶されている。
【0062】
油量検出器62として変位センサを用いる場合、第1閾値及び第2閾値として、例えば
図5に示すように、ピストン452の基準位置(
図5中、左端)からの変位xが所定の大きさの第1変位x1及び第1変位x1よりも変位が大きい第2変位x2が設定されている。第1閾値x1は、例えば、1つの制御弁33を駆動可能な油量に対応して設定されている。第2閾値x2は、例えば、複合操作のときに駆動する全ての制御弁を初動時に駆動可能な油量に対応して設定されている。
【0063】
第2電磁弁制御部83は、操作装置61の操作に応じて、第2電磁弁43の駆動を制御する指令を第2電磁弁43へ出力する。第2電磁弁43の駆動に応じてアンロード弁34のパイロット室34aに入力されるパイロット二次圧の減圧調整が行われ、アンロード弁34のストローク量に応じて油圧ポンプ31から作動油タンク36への圧油の流れが制御される。
【0064】
また、第2電磁弁制御部83は、待機時間Tが時間閾値T0以上経過し、かつ、増圧器45の小径室451bの油量が第1閾値よりも少ない場合に、第2電磁弁43を制御することで当該小径室451bに必要な油量を補充する制御を行う。具体的には、第2電磁弁制御部83は、待機時間Tが時間閾値T0以上であると待機時間判定部84により判定され、かつ、油量検出器(変位センサ)62の検出値xが第1閾値x1以下であると油量判定部85により判定された場合に、第2電磁弁43(ソレノイド43a)に対して開弁指令を出力する。これにより、アンロード弁34が閉弁状態の作動位置Yに切り換えられ、油圧ポンプ31の吐出圧が上昇し、小径室451bへの油量補充が可能となる。この油量補充の制御における油圧システム20の動作の詳細は後述する。
【0065】
次に、本発明の作業機械の一実施の形態における油圧システムの動作について説明する。まず、メイン回路30の油圧ポンプ31を駆動する原動機(図示せず)が始動した直後で、かつ、操作装置61の操作レバー61aが操作されていない無操作の状態を想定する。この場合、油圧システム20の各要素は、
図2に示す状態となる。
【0066】
油圧ポンプ31が原動機によって駆動されると、油圧ポンプ31が作動油タンク36から作動油を吸い込んでメイン回路30の吐出ライン37に圧油を吐出する。操作装置61が無操作状態であるので、メイン回路30の制御弁33及びアンロード弁34は、ノーマル位置にある。このため、油圧ポンプ31から吐出された圧油は、センタバイパスライン38上の制御弁33及びアンロード弁34をこの順に通過して作動油タンク36に戻る。
【0067】
このとき、油圧ポンプ31は、コントローラ70からの無操作状態に応じた指令により、例えば、油圧ポンプ31の吐出流量が最小となるようにポンプ容積が制御される。このため、油圧ポンプ31の吐出圧は、当該油圧ポンプ31の最小流量状態におけるアンロード弁34の絞り34cの圧損やセンタバイパスライン38上の各種の圧損などに応じた圧力値P1となる。この吐出圧P1が大きいほど、無操作時の無駄なエネルギ消費が多くなる。無操作時における実際の吐出圧P1は、エネルギ消費の抑制の観点から極力低い方が望ましいが、作動油タンク36内の圧力よりも大きくなっている(P1>0)。
【0068】
また、油圧ポンプ31から吐出された圧油は、メイン回路30から分岐したパイロット回路40にも導かれる。無操作時の油圧ポンプ31の吐出圧P1は低くなっており、切換弁46はノーマル位置Xとなっている。したがって、メイン回路30の吐出ライン37は切換弁46を介して第3パイロットライン53と連通している。このため、メイン回路30から第1パイロットライン51を介して導かれた油圧ポンプ31の吐出圧P1が、切換弁46を介して増圧器45の大径室451a及び小径室451bの両方に作用する。なお、無操作時には、パイロット回路40の一対の第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43はノーマル位置にあり、第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43により、制御弁33の一対のパイロット室33a、33b及びアンロード弁34のパイロット室34aと第4パイロットライン54との連通が遮断されている。
【0069】
これにより、増圧器45のピストン452は、大径室451a側の第1ピストン部452aと小径室451b側の第2ピストン部452bの受圧面積の差により、小径室451bの容積が縮小し大径室451aの容積が拡張する方向(
図2中、左方向)に変位する。第1ピストン部452aに作用する力と第2ピストン部452bに作用する力(ピストン452に作用する左右の力)が最終的に釣り合い、ピストン452の変位は
図2に示す状態に落ち着く。
【0070】
ここで、第1ピストン部452aの受圧面積をAa、第2ピストン部452bの受圧面積をAb、小径室451b側の圧力をPb(すなわち、パイロット一次圧Pi)とすると、P1×Aa=Pb×Abが成立する。Aa>Abであるので、小径室451b側の圧力Pbが大径室451a側の圧力P1よりも大きくなることがわかる。すなわち、増圧器45の小径室451bから一対の第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43に対して、無操作時の油圧ポンプ31から供給された圧油の圧力P1を増幅させた圧力Pbをパイロット一次圧Piとして出力する。
【0071】
このように、本実施形態においては、油圧ポンプ31の無操作時の吐出圧P1が要求されるパイロット一次圧Piよりも低い場合(P1<Piの場合)であっても、油圧ポンプ31からパイロット回路40に供給された圧油を増圧器45により増圧することで、要求されるパイロット一次圧Piを生成することが可能となっている。増圧器45のピストン452に作用する力の釣り合い式を変形すると、Pb(Pi)=P1×Aa/Abとなる。無操作時におけるエネルギ消費の抑制の観点から無操作時の吐出圧P1を更に低値に設定する場合には、増圧器45の第1ピストン部452aと第2ピストン部452bの受圧面積比Aa/Abを調整することで、要求されるパイロット一次圧Piを確保することができる。
【0072】
次に、本発明の作業機械の一実施の形態の油圧システムにおける操作装置による作業機械の操作開始後の初動状態について
図6を用いて説明する。
図6は
図2に示す本発明の作業機械の一実施の形態の油圧システムにおける作業の待機状態から操作開始の移行時の初期状態を示す回路図である。
【0073】
図6において、操作装置61の操作レバー61aが操作されると、操作装置61は操作方向及び操作量に応じた操作信号をコントローラ70に出力する。
【0074】
この場合、コントローラ70は、油圧ポンプ31の吐出流量を無操作状態のときよりも増加するように制御する。具体的には、コントローラ70のポンプ制御部81は、操作装置61からの操作信号を基に、油圧ポンプ31のレギュレータ31aに指令を出力する。これにより、油圧ポンプ31のポンプ容積が増加され、油圧ポンプ31の吐出流量が増加する。なお、操作開始後の初動状態では、油圧ポンプ31の吐出圧はパイロット回路40で要求されるパイロット一次圧Piよりも低い状態である。
【0075】
同時に、コントローラ70は、操作装置61からの操作信号を基に、第2電磁弁43のソレノイド43aに対して駆動指令を出力する。これにより、第2電磁弁43は、ソレノイド43aの電磁力によりバネ43bの付勢力に抗って駆動指令の大きさに応じた変位で開弁する。これにより、無操作時において第4パイロットライン54側で立ち上がっているパイロット一次圧Piが第2電磁弁43によってパイロット二次圧Pi2に減圧される。第2電磁弁43により生成されたパイロット二次圧Pi2がアンロード弁34のパイロット室34aに入力され、アンロード弁34がバネ34bの付勢力に抗って閉弁位置Yに切り換えられる。アンロード弁34の閉弁により、油圧ポンプ31の吐出圧が上昇して初動状態の終了後にはパイロット一次圧Piよりも高い圧力P2(P2>Pi)となる。
【0076】
また、コントローラ70は、第2電磁弁43の制御と同時に、操作された操作レバー61aに対応するパイロット回路40の電磁弁を制御する。本説明においては、操作された操作レバー61aに対応する電磁弁が他方側の第1電磁弁42とする。
【0077】
コントローラ70は、操作装置61からの操作信号を基に、他方側の第1電磁弁42のソレノイド42aに対して駆動指令を出力する。これにより、他方側の第1電磁弁42は、ソレノイド42aの電磁力によりバネ42bの付勢力に抗って駆動指令の大きさに応じた変位で開弁する。これにより、無操作時において第4パイロットライン54側で立ち上がっているパイロット一次圧Piが他方側の第1電磁弁42によってパイロット二次圧Pi3へと減圧される。他方側の第1電磁弁42により生成されたパイロット二次圧Pi3が制御弁33の他方側のパイロット室33bに入力され、他方側のパイロット室33bの反対側に位置するバネ33cの付勢力に抗って制御弁33が変位する。これにより、吐出ライン37が制御弁33を介してアクチュエータライン39と連通し、油圧ポンプ31からの圧油が制御弁33を介して油圧アクチュエータ32に供給される。この結果、油圧アクチュエータ32が操作装置61の操作に応じて駆動する。
【0078】
このとき、増圧器45の小径室451bで生成されたパイロット一次圧Piの圧油は、他方側の第1電磁弁42及び第2電磁弁43によって減圧されてから制御弁33の他方側パイロット室33b及びアンロード弁34のパイロット室34aに入力されている。したがって、増圧器45のピストン452は、
図6に示すように、無操作時の位置(
図2参照)よりも、小径室451bの容積が縮小され大径室451aの容積が拡大する方向(
図3中、左方向)に変位している。増圧器45のこの状態は、その後に操作レバー61aが中立に操作されたときに、パイロット一次圧Piを生成するための小径室451bの油量が不足することを意味している。
【0079】
操作開始後の各電磁弁41、42、43の初動期間(油圧ポンプ31の吐出圧が低く、パイロット回路40のパイロット一次圧Piを増圧器45を介さずに生成不能である期間)は、制御弁33及びアンロード弁34の駆動を継続可能な油量を増圧器45の小径室451b内に確保する必要がある。つまり、操作開始後の各電磁弁41、42、43の初動前に、増圧器45の小径室451bの容積(油量)を、パイロット二次圧の供給先である制御弁33のパイロット室33a、33b及びアンロード弁34のパイロット室34aやそれらと増圧器45の小径室451bとを接続するパイロットライン54、55、56、57の全ての容積よりも大きくしておく必要がある。本実施の形態の油圧システム20においては、増圧器45の小径室451bの油量の不足状態を初動状態の終了後の開閉弁47の開閉により解消するように構成されている。油圧システム20の当該動作については、後述する。
【0080】
次に、本発明の作業機械の一実施の形態の油圧システムにおける操作開始の初動状態の終了後の動作について
図7を用いて説明する。
図7は
図2に示す本発明の作業機械の一実施の形態の油圧システムにおける作業の待機状態から操作開始の初期状態を経過した後の状態を示す回路図である。
【0081】
図7において、切換弁46のパイロット室46aには、メイン回路30の油圧ポンプ31の吐出圧が入力される。操作開始の初動状態の終了後には、油圧ポンプ31の吐出圧がアンロード弁34の閉弁や油圧アクチュエータ32の駆動によって上昇してパイロット一次圧Piよりも高い圧力値P2となっている。このため、切換弁46は、パイロット室46aに入力されるメイン回路30からの圧油によりバネ46bの付勢力に抗って、ノーマル位置Xから作動位置Yへと切り換わる。
【0082】
これにより、メイン回路30の吐出ライン37は切換弁46を介してパイロット回路40の第2パイロットライン52と連通する。すなわち、メイン回路30の吐出ライン37は、増圧器45を介さずに、第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43に接続される。
【0083】
切換弁46が作動位置Yに切り換わると、メイン回路30からの圧油が切換弁46の絞り46cを通過する。当該絞り46cは、切換弁46の変位xaと絞り46cの開口面積Acとの関係が
図3に示す特性図に近似する特性を備えるように構成されている。したがって、吐出圧P2の圧油が絞り46cを通過することで、要求されるパイロット一次圧Piの近傍に減圧される。
【0084】
切換弁46の絞り46cを通過して減圧されてパイロット一次圧Piになった圧油は、第2パイロットライン52上の第1チェック弁48を介して、一対の第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43に入力される。なお、他方側の第1電磁弁42及び第2電磁弁43は、コントローラ70からの駆動指令の継続により開弁状態が維持されている。
【0085】
したがって、第2電磁弁43によりパイロット一次圧Piから減圧されたパイロット二次圧Pi2がアンロード弁34のパイロット室34aに作用し続けるので、アンロード弁34の閉弁状態が維持されている。また、他方側の第1電磁弁42によりパイロット一次圧Piから減圧されたパイロット二次圧Pi3が制御弁33の他方のパイロット室33bに作用し続けるので、制御弁33の変位が維持されている。したがって、油圧アクチュエータ32の駆動が維持される。
【0086】
このとき、パイロットリリーフ弁44の設定圧がパイロット一次圧Piに設定されているので、切換弁46の絞り46cを通過した油量のうちの余剰油量は、パイロットリリーフ弁44を介して常に作動油タンク36に排出されている。
【0087】
また、同時に、切換弁46の絞り46cを通過した圧油のパイロット一次圧Piが開閉弁47のパイロット室47a及び増圧器45の小径室451bに作用する。これにより、開閉弁47がバネ47bの付勢力に抗って開位置Yに切り換えられる。開閉弁47が開弁すると、増圧器45の大径室451aが作動油タンク36と連通するので、大径室451aの圧力は、作動油タンク36のタンク圧と略同じ、例えば、0.1MPaになる。これに対して、小径室451bには、パイロット一次圧Piが作用している。したがって、増圧器45のピストン452は、
図7に示すように、第1ピストン部452aに作用する力と第2ピストン部452bに作用する力の差によって、小径室451bの容積が拡大し大径室451aの容積が縮小する方向(
図7中、右方向)に変位する。
【0088】
このように、本実施の形態においては、メイン回路30の油圧ポンプ31の吐出圧が無操作時よりも上昇してパイロット回路40の要求されるパイロット一次圧Piを生成可能な圧力になると、切換弁46が作動位置Yに切り換わることで、油圧ポンプ31からの圧油を増圧器45を介さずに一対の第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43に入力することができる。
【0089】
また、本実施の形態においては、油圧ポンプ31の吐出圧の上昇による切換弁46の切換によって、油圧ポンプ31からの圧油が開閉弁47のパイロット室47aに入力されることで、開閉弁47が開弁する。これにより、増圧器45の大径室451aは作動油タンク36に連通することで圧力が低下するので、操作開始の初動時にパイロット一次圧を供給することで不足状態となっている小径室451bの油量を補充することができる。
【0090】
上述したように、本実施の形態においては、メイン回路30の油圧ポンプ31の吐出圧がパイロット回路40において要求されるパイロット一次圧Piよりも低い場合、例えば、操作装置61が操作されていない待機状態のとき、油圧ポンプ31からの圧油をパイロット回路40の切換弁46を介して増圧器45に供給することで増圧させてパイロット一次圧Piを生成する一方、油圧ポンプ31の吐出圧が要求されるパイロット一次圧Piよりも高い場合、例えば、操作装置61が操作されている操作状態のとき、油圧ポンプ31からの圧油を切換弁46の切換により増圧器45を介さずにパイロット一次圧Piを生成する。
【0091】
また、本実施の形態の油圧システム20においては、操作装置61の操作が行われていない待機状態から操作が実行されて再び待機状態になるまでの一連の操作サイクルにおいて、メイン回路30の油圧ポンプ31とは別のパイロットポンプや圧油を一時的に貯留可能なアキュムレータを用いることなく、パイロット回路40の要求されるパイロット一次圧Piを常時確保することができる。したがって、一連の操作サイクルにおいて、制御弁33の駆動を高精度に制御することができるので、油圧アクチュエータ32の応答性の低下を防ぐことができる。
【0092】
また、本実施の形態の油圧システム20においては、待機状態のときに、パイロット回路40で要求されるパイロット一次圧Piを確保するために、油圧ポンプ31の出力を増加させる必要がないので、エネルギ消費を抑制することができる。
【0093】
さらに、本実施の形態においては、増圧器45がアキュムレータによりも簡素な構造であるので、アキュムレータと比べてメンテナンスが容易であり、ランニングコストを低減することができる。
【0094】
次に、待機状態が長時間続いた場合のコントローラによる油圧システムの制御について
図8を用いて説明する。
図8は本発明の作業機械の一実施の形態におけるコントローラによる増圧器の油量補充の制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0095】
前述したように、待機状態が長時間続いた場合、パイロット回路40では、第1電磁弁41、42及び第2電磁弁43からの圧油の漏れ及び増圧器45からの圧油の漏れによって、増圧器45の小径室451b内の圧油が流出して小径室451bの油量が減少してしまう。小径室451bの油量減少が進んだ場合、小径室451bに必要な油量を補充する必要がある。そこで、コントローラ70は、以下のように油圧システム20を制御することで小径室451bに必要な油量を補充する。なお、油圧システム20は、待機状態では、
図2に示す状態となっている。
【0096】
まず、コントローラ70は、操作装置61の操作が行われない待機状態の経過時間を待機時間Tとして計測し(
図8に示すステップS10)、計測した待機時間Tが時間閾値T0以上か否かを判定する(
図8に示すステップS20)。具体的には、
図4に示す待機時間判定部84が、操作装置61からの操作信号に基づき待機時間Tをカウントする(ステップS10)。次に、カウントした待機時間Tが記憶装置71に予め記憶されている時間閾値T0以上かを判定する(ステップS20)。
【0097】
待機時間Tが時間閾値T0より小さい(NO)と判定した場合、リターンしてステップS10に戻って待機時間Tを再びカウントし、待機時間Tが時間閾値T0を経過するまでステップS10~S20の処理を繰り返す。一方、待機時間Tが時間閾値T0以上である(YES)と判定した場合、ステップS30に進む。
【0098】
次いで、コントローラ70は、油量検出器62からの検出値を取得し(
図8に示すステップS30)、取得した検出値が第1閾値以下か否かを判定する(
図8に示すステップS40)。具体的には、
図4に示す油量判定部85が、油量検出器62としての変位センサの検出値である増圧器45のピストン452の変位xを取得する(ステップS30)。次に、取得した油量検出器62の検出値であるピストン452の変位xが記憶装置71に予め記憶されている第1閾値x1以下であるか否かを判定する(ステップS40)。ピストン452の変位の第1閾値x1は、例えば、
図5に示す位置関係である。
【0099】
油量検出器62の検出値xが第1閾値x1より大きい(NO)と判定した場合、リターンして油量検出器62の検出値xが第1閾値x1以下になるまで、ステップS10~S40の処理を繰り返す。一方、油量検出器62の検出値xが第1閾値x1以下である(YES)と判定した場合、ステップS50に進む。
【0100】
ステップS50において、コントローラ70は、パイロット回路40の第2電磁弁43に対して開弁指令を出力し続ける。具体的には、
図4に示す第2電磁弁制御部83が、第2電磁弁43のソレノイド43aに対して指令を出力し続ける。これにより、
図2に示す第2電磁弁43が閉弁状態から開弁状態に切り換えられて維持される。
【0101】
したがって、第2電磁弁43により生成されたパイロット二次圧がアンロード弁34のパイロット室34aに作用するので、
図2に示すアンロード弁34が開位置Xから閉弁位置Yに切り換えられる。待機状態であっても、アンロード弁34の閉弁によってメイン回路30の油圧ポンプ31の吐出圧が上昇してパイロット回路40の切換弁46をノーマル位置Xから作動位置Yへ切換可能な圧力に到達する。これにより、
図2に示す切換弁46がノーマル位置Xから作動位置Yに切り換わるので、油圧ポンプ31からの圧油が切換弁46の絞り46cを通過して生成されたパイロット一次圧Piが開閉弁47のパイロット室47a及び増圧器45の小径室451bに作用する。これにより、待機状態であっても、操作装置61が操作状態の場合(
図7参照)と同様に、開閉弁47が作動位置Yに切り換わり開弁することで、増圧器45の大径室451aから圧油が作動油タンク36に流出する一方、小径室451bにパイロット一次圧Piの圧油が補充される。
【0102】
次に、コントローラ70は、油量検出器62からの検出値を取得し(
図8に示すステップS60)、取得した検出値が第2閾値以上か否かを判定する(
図8に示すステップS70)。具体的には、油量判定部85が、変位センサ62の検出値であるピストン452の変位xを取得する(ステップS60)。次に、取得した油量検出器62の検出値であるピストン452の変位xが記憶装置71に予め記憶されている第2閾値x2以上であるか否かを判定する(ステップS70)。ピストン452の変位の第2閾値x2は、例えば、
図5に示す位置関係である。
【0103】
油量検出器62の検出値xが第2閾値x2よりも小さい(NO)と判定した場合、ステップS60に戻って油量検出器62の検出値xを取得し、当該検出値xが第2閾値x2以上になるまで、ステップS60~S70の処理を繰り返す。一方、油量検出器62の検出値xが第2閾値x2以上である(YES)と判定した場合には、ステップS80に進む。
【0104】
ステップS80において、コントローラ70は、第2電磁弁43に対して閉弁指令を出力する。具体的には、第2電磁弁制御部83が、第2電磁弁43のソレノイド43aに対する指令信号の出力を停止する。これにより、
図2に示すように、第2電磁弁43が開弁状態から閉弁状態(ノーマル位置)に切り換えられる。
【0105】
これにより、アンロード弁34のパイロット室34aへのパイロット二次圧の入力が遮断されるので、アンロード弁34がノーマル位置Xの開弁状態になる。このため、油圧ポンプ31の吐出圧が待機状態の元の圧力まで低下するので、パイロット回路40の切換弁46がノーマル位置Xに切り換わる。したがって、開閉弁47が閉位置(ノーマル位置)Xに切り換わって閉弁することで、小径室451bの圧油補充が終了する。
【0106】
このように、本実施の形態においては、待機状態が長時間経過した場合、増圧器45の小径室451bにパイロット一次圧Piの圧油を補充しつつ、油圧ポンプ31の出力増加によるエネルギ消費を可能な限り抑制している。
【0107】
上述したように、本発明の一実施の形態に係る油圧ショベル(作業機械)は、油圧ポンプ31と、油圧ポンプ31から供給される圧油により駆動される油圧アクチュエータ32と、油圧アクチュエータ32により駆動されるフロント作業装置3と、油圧ポンプ31から油圧アクチュエータ32に供給される圧油の流れを制御する油圧パイロット式の制御弁33を含むメイン回路30と、油圧ポンプ31から供給された圧油から制御弁33を駆動するパイロット圧を生成するパイロット回路40とを備える。パイロット回路40は、油圧ポンプ31から供給された圧油を減圧してパイロット圧として出力する第1電磁弁41、42(減圧弁)と、油圧ポンプ31から供給された圧油を増圧して第1電磁弁41、42(減圧弁)に出力する増圧器45と、油圧ポンプ31からの圧油を増圧器45に出力する第1状態と油圧ポンプ31からの圧油を増圧器45を介さずに第1電磁弁41、42(減圧弁)に出力する第2状態とに切換可能な切換弁46とを備える。
【0108】
この構成よれば、作業の待機中にパイロット回路40に供給された油圧ポンプ31の圧油がパイロット回路40で要求される圧力(パイロット一次圧Pi)よりも低い場合であっても、油圧ポンプ31からの圧油を切換弁46の第1状態への切換により増圧器45を介して増圧することで、油圧ポンプ31の出力を上昇させることなく要求される圧力(パイロット一次圧Pi)を生成して第1電磁弁41、42(減圧弁)に入力することができる。すなわち、作業の待機中において、パイロットポンプを用いることなく制御弁33を駆動可能なパイロット圧を確保しつつエネルギ消費を抑制することができる。
【0109】
また、本実施の形態においては、増圧器45が、油圧ポンプ31からの圧油が入力される大径室451a(第1室)及び小径室451b(第2室)を有するシリンダ451と、大径室451a(第1室)内に配置された第1ピストン部452a及び小径室451b(第2室)内に配置され第1ピストン部452aよりも受圧面積が小さな第2ピストン部452bを有するピストン452とを備えている。増圧器45の大径室451a(第1室)は排出パイロットライン59(第1パイロットライン)を介して作動油タンク36に接続され、増圧器45の小径室451b(第2室)は第4パイロットライン54(第2パイロットライン)を介して第1電磁弁41、42(減圧弁)に接続されている。パイロット回路40は、排出パイロットライン59(第1パイロットライン)上に設置され、排出パイロットライン59(第1パイロットライン)を連通状態にする開位置と排出パイロットライン59(第1パイロットライン)を遮断状態にする閉位置とに切換可能な開閉弁47を含む。
【0110】
この構成によれば、開閉弁47を閉位置から開位置に切り換えることで、増圧器45の大径室451a(第1室)が作動油タンク36に連通して圧力が低下する一方、小径室451b(第2室)の圧力がそのまま維持される。これにより、大径室451a(第1室)の圧油が作動油タンク36へ排出される一方、第4パイロットライン54(第2パイロットライン)の圧油が小径室451b(第2室)に補充される。したがって、操作装置61が操作されない待機状態から操作状態に移行することで、小径室451b(第2室)内の圧油が第1電磁弁41、42(減圧弁)に入力されて小径室451b(第2室)内の油量が減少しても、その後に、小径室451b(第2室)内に圧油を補充することができる。
【0111】
また、本実施の形態に係る油圧ショベル(作業機械)は、油圧アクチュエータ32の駆動を指示する操作装置61と、増圧器45の小径室451b(第2室)内に貯留されている油量を検出する油量検出器62と、コントローラ70とを更に備えている。メイン回路30は、油圧ポンプ31から作動油タンク36に戻る圧油の流れを遮断可能な閉弁位置を有するアンロード弁34を含む。開閉弁47は、油圧ポンプ31からの圧油が入力されるパイロット室47aを有し、パイロット室47aに入力される圧油の圧力上昇に応じて閉位置(ノーマル位置)Xから開位置(作動位置)Yに切り換わるように構成されている。また、コントローラ70は、操作装置61の操作が行われない待機状態が所定時間T0以上経過し、かつ、油量検出器62の検出値xが第1閾値x1(閾値)以下であると判定した場合には、アンロード弁34を閉弁位置Yに切り換える制御を実行する。
【0112】
この構成によれば、待機状態が継続した場合にコントローラ70の制御によりアンロード弁34を閉弁させることで、油圧ポンプ31の吐出圧が上昇するので、開閉弁47のパイロット室47aに入力される圧油の圧力上昇により、開閉弁47を開位置Yに切り換えることができる。したがって、待機状態が継続して第1電磁弁41、42(減圧弁)などから圧油が漏出して増圧器45の小径室451b(第2室)内の油量が減少してしまっても小径室451b(第2室)内に圧油を補充することができる。
【0113】
また、本実施の形態においては、切換弁46が、油圧ポンプ31からの圧油が入力されるパイロット室46aを有し、パイロット室46aに入力される圧油の圧力上昇に応じて第1状態から第2状態に切り換わるように構成されている。
【0114】
この構成によれば、油圧ポンプ31の吐出圧が上昇すると、油圧ポンプ31の吐出圧によって第1状態から第2状態になるように切換弁46を自動的に切り換えることができる。したがって、コントローラ70の制御によらずに油圧ポンプ31の吐出圧の大きさに応じて切換弁46の切換を行うことができるので、コントローラ70の制御負荷を低減することが可能である。
【0115】
また、本実施の形態においては、切換弁46が第2状態のときに油圧ポンプ31からの圧油が通過する絞り46cを有し、絞り46cはその開口面積Acがパイロット室46aに入力される圧油の圧力変化に応じて変更されるように構成されている。
【0116】
この構成によれば、油圧ポンプ31の吐出圧が上昇したときに、油圧ポンプ31からパイロット回路40に供給される圧油を当該絞り46cを通過させることで、圧力変動がある圧油を元に減圧してパイロット回路40に要求される圧力(パイロット一次圧)を生成することが可能となる。
【0117】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は本実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0118】
例えば、上述した一実施の形態においては、本発明を油圧ショベルに適用した例を示したが、本発明は油圧クレーンやホイールローダ等の各種の作業機械に広く適用することができる。
【0119】
また、上述した一実施の形態においては、切換弁46を油圧ポンプ31から供給される圧油の入力により作動する構成の例を示した。しかし、切換弁は、油圧ポンプ31の吐出圧の大きさに応じてコントローラ70の制御により第1状態と第2状態とに切り換える構成も可能である。切換弁として、例えば、コントローラ70からの制御電流により作動する電磁弁を用いることも可能である。ただし、上述した一実施の形態の方がコントローラ70の制御負荷が少なくなる。
【0120】
また、上述した一実施の形態においては、切換弁46が第2状態においてメイン回路30からの圧油が通過する絞り46cを有するように構成されている例を示した。しかし、当該絞り46cを切換弁46ではなく、第2パイロットライン上に配置する構成も可能である。ただし、上述した一実施の形態の方がパイロット回路の構成が簡素である。
【0121】
また、上述した一実施の形態においては、開閉弁47を油圧ポンプ31から供給される圧油の入力により作動する構成の例を示した。しかし、開閉弁は、油圧ポンプ31の吐出圧の大きさに応じてコントローラ70の制御により閉位置(ノーマル位置)X又は開位置(作動位置)Yに切換可能に構成することも可能である。開閉弁として、例えば、コントローラ70からの制御電流により作動する電磁弁を用いることも可能である。ただし、上述した一実施の形態の方がコントローラ70の制御負荷が少なくなる。
【0122】
また、上述した一実施の形態においては、アンロード弁34をパイロット油圧式の弁で構成した例を示した。しかし、アンロード弁として、例えば、コントローラ70からの制御電流により作動する電磁弁を用いることも可能である。
【0123】
また、上述した一実施の形態においては、操作装置61が電気式の操作レバー装置である構成の例を示した。しかし、操作装置として、減圧式のパイロット弁を備えた操作装置を用いることが可能である。この場合、パイロット回路40の一対の第1電磁弁41、42を操作装置のパイロット弁に置き換える。さらに、操作装置のパイロット弁に対して、油圧ポンプ31からの圧油を元に増圧器45を介して又は増圧器45を介さずに生成したパイロット一次圧を供給するように構成する。
【符号の説明】
【0124】
3…フロント作業装置、 16…ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)、 17…アームシリンダ(油圧アクチュエータ)、 18…バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)、 30…メイン回路、 31…油圧ポンプ、 32…油圧アクチュエータ、 33…制御弁、 34…アンロード弁、 36…作動油タンク、 40…パイロット回路、 41、42…第1電磁弁(減圧弁)、 45…増圧器、 451…シリンダ、 451a…大径室(第1室)、 451b…小径室(第2室)、 452…ピストン、 452a…第1ピストン部、 452b…第2ピストン部、 46…切換弁、 46a…パイロット室、 46c…絞り、 47…開閉弁、 47a…パイロット室、 54…第4パイロットライン(第2パイロットライン)、 59…排出パイロットライン(第1パイロットライン)、 61…操作装置、 62…油量検出器、 70…コントローラ