(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146716
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】LED点灯回路およびLED照明装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/50 20220101AFI20220928BHJP
H05B 45/345 20200101ALI20220928BHJP
【FI】
H05B45/50
H05B45/345
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047825
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】田部 哲夫
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273AA02
3K273BA03
3K273BA34
3K273CA02
3K273DA08
3K273EA06
3K273EA22
3K273EA44
3K273EA45
3K273FA07
3K273FA14
3K273FA27
3K273FA30
3K273GA06
(57)【要約】
【課題】過大な電圧がかかった場合でも見栄えの製品品質が劣化しないLED点灯回路を提供すること。
【解決手段】LED点灯回路は、定電流回路と電流減少回路で構成されている。トランジスタQ1、抵抗R1、R2、ツェナーダイオードZD1は、定電流回路を構成している。電源電圧の変動に対してLED1、LED2の電流値を一定とするように動作する回路である。電流減少回路は、実施例1のLED点灯回路を駆動する電源電圧がしきい値を超えたときに、LED1、LED2の電流値を所定量減少させるように動作する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDを定電流で駆動する定電流回路を有したLED点灯回路において、
前記LED点灯回路を駆動する電源電圧が所定のしきい値を超えたときに、前記LEDの電流値を所定量減少させるように動作する電流減少回路を有し、
前記しきい値は、前記電源電圧の定格値よりも大きく、かつ定格値の2倍以下であり、
前記所定量は、前記電源電圧が前記しきい値以下の範囲における前記LEDの電流値の最大値をI0として、前記電源電圧が前記しきい値を超えた直後において前記LEDの電流がI0の1/5~2/3となる量である、
ことを特徴とするLED点灯回路。
【請求項2】
前記しきい値は、前記電源電圧の定格値の1.5倍以上2倍以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のLED点灯回路。
【請求項3】
前記所定量は、前記電源電圧が前記しきい値を超えた直後において前記LEDの電流がI0の1/4~1/2となる量である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のLED点灯回路。
【請求項4】
前記定電流回路は、
コレクタが前記LEDのカソードに接続され、エミッタが第1抵抗を介して電源の負極に接続された第1トランジスタを有し、
前記電流減少回路は、
アノードが第2抵抗を介して電源の負極に接続され、カソードが電源の正極に接続されたツェナーダイオードと、
コレクタが第3抵抗を介して前記第1トランジスタのベースに接続され、エミッタが電源の負極に接続され、ベースが前記ツェナーダイオードのアノードと前記第2抵抗とを接続する線路上の点と接続された第2トランジスタと、を有し、
前記しきい値は、前記ツェナーダイオードのツェナー電圧により設定され、
前記所定量は、前記第3抵抗の抵抗値により設定されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のLED点灯回路。
【請求項5】
LEDと、前記LEDの点灯を制御する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のLED点灯回路と、を有することを特徴とするLED照明装置。
【請求項6】
前記電源電圧の定格値は12~16Vであり、車載用であることを特徴とする請求項5に記載のLED照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDの点灯回路およびLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDの高輝度化に伴い、車載用照明装置においてLEDの消費電流を大きくしたいという要望が増えている。しかし、LEDの電流が大きくなると、温度の最大定格(通常150℃に設定される)を超えてしまう場合がある。
【0003】
この対策として、電源電圧が所定のしきい値、たとえば、車載バッテリーを2個直列に繋いだ電圧より少し小さな電圧値を超えたら、点灯回路を遮断してしまい、LEDに電流が流れないようにしてしまうことが考えられる。
【0004】
特許文献1には、LEDの駆動電圧が上昇した場合に、回路損失の増加を抑制し、光の減少幅を抑える制御をすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電源電圧が所定のしきい値を超えたときに点灯回路を遮断する方法では、数十μs~数msのサージ電圧に対しても反応してしまい、LEDが一瞬暗くなるのが目視で明確に分かり、見栄えの製品品質が劣化してしまうのが問題であった。
【0007】
また、特許文献1の方法では、複雑な制御回路が必要となり、コストが増大してしまう問題がある。
【0008】
そこで本発明の目的は、過大な電圧がかかった場合の見栄えの品質劣化が抑制されたLED点灯回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、LEDを定電流で駆動する定電流回路を有したLED点灯回路において、LED点灯回路を駆動する電源電圧が所定のしきい値を超えたときに、LEDの電流値を所定量減少させるように動作する電流減少回路を有し、しきい値は、電源電圧の定格値よりも大きく、かつ定格値の2倍以下であり、所定量は、電源電圧がしきい値以下の範囲におけるLEDの電流値の最大値をI0として、電源電圧がしきい値を超えた直後においてLEDの電流がI0の1/5~2/3となる量である、ことを特徴とするLED点灯回路である。
【0010】
本発明において、しきい値は、電源電圧の定格値の1.5倍以上2倍以下であるとよい。
【0011】
本発明において、所定量は、電源電圧がしきい値以下の範囲におけるLEDの電流値の最大値をI0として、電源電圧がしきい値を超えた直後においてLEDの電流がI0の1/5~2/3となる量であるとよい。
【0012】
本発明において、定電流回路は、コレクタがLEDのカソードに接続され、エミッタが第1抵抗を介して電源の負極に接続された第1トランジスタを有し、電流減少回路は、アノードが第2抵抗を介して電源の負極に接続され、カソードが電源の正極に接続されたツェナーダイオードと、コレクタが第3抵抗を介して第1トランジスタのベースに接続され、エミッタが電源の負極に接続され、ベースがツェナーダイオードのアノードと第2抵抗とを接続する線路上の点と接続された第2トランジスタと、を有し、しきい値は、ツェナーダイオードのツェナー電圧により設定され、所定量は、第3抵抗の抵抗値により設定されている、構成であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のLED点灯回路では、過大な電圧がかかった場合にLEDに流れる電流の電流値を減少させて消灯はしないため、見栄えの品質劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1のLED点灯回路の構成を示した図。
【
図2】実施例1のLED点灯回路の電源電圧-LED電流特性を示したグラフ。
【
図3】比較例1のLED点灯回路の構成を示した図。
【
図4】比較例1のLED点灯回路の電源電圧-LED電流特性を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例0016】
図1は、実施例1のLED点灯回路の構成を示した図である。
図1のように、実施例1のLED点灯回路は、2つの直列接続されたLED1、LED2の点灯を制御するための回路であり、トランジスタQ1、Q2と、ツェナーダイオードZD1、ZD2、と、抵抗R1~R5と、を有している。実施例1のLED点灯回路は、大きく分けて定電流回路と電流減少回路の2つで構成されている。
【0017】
まず、定電流回路について説明する。トランジスタQ1、抵抗R1、R2、ツェナーダイオードZD1は、定電流回路を構成している。電源電圧の変動に対してLED1、LED2の電流値を一定とするように動作する回路である。
【0018】
トランジスタQ1のエミッタは、抵抗R1を介して電源の負極に接続されている。また、トランジスタQ1のコレクタは、LED2のカソードが接続されている。また、トランジスタQ1のベースは、抵抗R2を介して電源の正極に接続され、ツェナーダイオードZD1のカソードに接続され、抵抗R5に接続されている。
【0019】
ツェナーダイオードZD1のアノードは、電源の負極に接続されている。また、ツェナーダイオードZD1のカソードは、トランジスタQ1のベースに接続されている。
【0020】
LED2のアノードはLED1のカソードに接続され、LED1のアノードは電源の正極に接続されている。
【0021】
トランジスタQ1の特性、抵抗R1、R2の抵抗値、ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧は、電源電圧が12Vの場合にLED1、LED2の電流が120mAとなるように設定されている。なお、電流値は必ずしもこの値に設定されている必要はなく、LED1、LED2の最大定格温度(通常150℃)を超えないように設定されていればよい。実施例1のLED点灯回路は、電源電圧の定格値においてLED1、LED2の電流を100mA以上とする場合に好適である。
【0022】
次に、電流減少回路について説明する。トランジスタQ2、抵抗R3~R5、ツェナーダイオードZD2は、電流減少回路を構成している。電源電圧が過大となったときにLED1、LED2の電流値を減少させる回路である。
【0023】
ツェナーダイオードZD2のアノードは、抵抗R3を介して電源の負極に接続されている。また、ツェナーダイオードZD2のカソードは、電源の正極に接続されている。
【0024】
トランジスタQ2のエミッタは、電源の負極に接続されている。また、トランジスタQ2のコレクタは、抵抗R5を介してトランジスタQ1のベースに接続されている。また、トランジスタQ2のベースは、抵抗R4を介してツェナーダイオードZD2のアノードと抵抗R3とを接続する線路上の点に接続されている。
【0025】
電流減少回路は、より具体的には、次のように動作する。電流減少回路は、実施例1のLED点灯回路を駆動する電源電圧がしきい値を超えたときに、LED1、LED2の電流値を所定量減少させるように動作する。
【0026】
その電源電圧のしきい値は、22Vである。しきい値はこの値に限るものではなく、電源電圧の定格値よりも大きく、かつ定格値の2倍以下の範囲に設定されていればよい。このような範囲にしきい値が設定されていれば、LED1、LED2の温度が最大定格温度を超えないように制御することが容易となる。実施例1では、電源電圧が12Vであるから、これよりも大きくかつ、2倍よりも小さい範囲として22Vに設定したものである。より好ましくは電源電圧の定格値の1.5倍以上2倍以下の範囲である。車載用のLED照明装置の場合、電源は12~16Vであるため、しきい値は18~24Vとするのがよい。
【0027】
また、減少させる電流量は、電源電圧がしきい値電圧以下の範囲におけるLED1、LED2の電流値の最大値をI0として、しきい値電圧を超えた直後においてLED1、LED2の電流がI0の1/3となる量、つまり減少量はI0の2/3である。
【0028】
I0の1/3となるまで減少させる理由は次の通りである。人間の明るさに対する感覚は、スチーブンス則によれば輝度の0.33乗である。LED1、LED2の電流が1/3になると、LED1、LED2の輝度もおよそ1/3となるが、人間の明るさの感覚の変化は、(1/3)の0.33乗であり、約70%である。つまり、LED1、LED2の電流が1/3になっても人間には明るさが70%になった程度の変化であり、それほど明るさが変化したようには感じない。そこで実施例1ではI0の1/3に設定している。
【0029】
なお、必ずしもI0の1/3である必要はなく、I0の1/5以上であればよい。1/5以上であれば、明るさの変化をさほど感じずに電流を減少させることができる。また、I0の2/3以下であることが好ましい。2/3以下であれば、LED1、LED2の発熱を十分に抑制することができる。より好ましくはI0の1/4以上1/2以下である。
【0030】
実施例1の電流減少回路では、電源電圧のしきい値電圧をツェナーダイオードZD2のツェナー電圧により設定している。また、LED1、LED2の電流値の減少量は、抵抗R5の抵抗値によって設定している。
【0031】
図2は、実施例1のLED点灯回路の電源電圧-LED電流特性を示したグラフである。
図2のように、電源電圧が7VでLED1、LED2に電流が流れ始め、22Vまでは定電流回路の動作によってなだらかにLED電流が増加していく。定格の12Vでは、LED電流は120mAである。22Vを超えると、電流減少回路が動作し、LED電流は1/3に急激に減少し、その後はなだらかにLED電流が増加していく。
【0032】
したがって、実施例1のLED点灯回路では、サージ電圧が印加された場合、電源電圧が22Vを超えた直後にLED電流が1/3となるため、LED1、LED2の輝度も1/3となる。ここで、前述のスチーブンス則により、輝度が1/3であっても人間の明るさの感覚としては70%の明るさであり、それほど大きく明るさが減少したようには感じない。よって、サージ電圧が印加された場合でもLED1、LED2のちらつきはあまり感じず、LED1、LED2の見栄えの品質劣化は抑制されている。
【0033】
また、電流が1/3となっているため、電源電圧が定格の2倍である24Vとなっても、定格の場合(12V、120mA)に比べて消費電力は2/3となっており、電子部品の発熱も問題とならない。
【0034】
比較例1として、
図3のLED点灯回路を示す。比較例1のLED点灯回路は、実施例1のLED点灯回路において、抵抗R4、R5を省き、ツェナーダイオードZD2を抵抗R9に替えた構成である。比較例1のLED点灯回路では、電源電圧が22Vを超えると、トランジスタQ2がオンとなって定電流回路をオフにし、LED1、LED2に電流が流れないように遮断する構成となっている。
【0035】
図4は、比較例1のLED点灯回路の電源電圧-LED電流特性を示したグラフである。
図4のように、電源電圧が7VでLED1、LED2に電流が流れ始め、22Vまでは定電流回路の動作によってLED電流は100~130mAの間であり、およそ一定の値となる。電源電圧が22Vを超えると、定電流回路は遮断されてLED1、LED2の電流は0となり、LED1、LED2は消灯する。
【0036】
比較例1のLED点灯回路では、サージ電圧が印加された場合にLED1、LED2は一瞬消灯し、ちらつきを感じる。したがって、比較例1のLED点灯回路は、実施例1のLED点灯回路に比べて見栄えの品質が劣る。
【0037】
以上、実施例1のLED点灯回路によれば、電源電圧が所定値を超えた場合にLED1、LED2に流れる電流値を所定割合減少させ、消灯はしないため、サージ電圧が印加された場合のLED1、LED2のちらつきを抑制することができ、見栄えの品質劣化を抑制することができる。
【0038】
なお、本発明における電流減少回路は、実施例1に示した構成に限るものではなく、電源電圧がしきい値を超えたときに、LED1、LED2の電流値を所定量減少させるように動作する構成であれば任意の構成とすることができる。ただし、実施例1によれば、このような動作を簡便な回路構成で低コストに実現することができる。
【0039】
また、本発明における定電流回路は、実施例1に示した構成に限るものではなく、従来知られている任意の低電流回路を用いてよい。
【0040】
たとえば、
図5のように、シャントレギュレータIC1を用いた定電流回路でもよい。
図5では、実施例1のツェナーダイオードZD1をシャントレギュレータIC1に置き換え、シャントレギュレータIC1のカソードを抵抗R6を介してトランジスタQ1のベースに接続し、アノードを電源の負極に接続し、リファレンス端子をトランジスタQ1のエミッタと抵抗R1とを結ぶ線路上の点と接続した構成である。このような定電流回路を用いれば、LED1、LED2の電流を実施例1よりも一定にすることができる。
【0041】
また、
図6のように、実施例1のツェナーダイオードZD1を抵抗R7に替えた構成としてもよい。このような定電流回路を用いれば、LED1、LED2の電流変動は実施例1よりも大きくなるが、材料コストを低減することができる。