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特開2022-146717解析装置、解析方法及び解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146717
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法及び解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20120101AFI20220928BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047827
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】円谷 信一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】解析対象の状態の遷移をより詳細に解析することができる。
【解決手段】時間軸上での状態の遷移を解析する解析装置であって、属性情報と状態の変動を含む観測データである複数の個別データと記憶する記憶部と、状態を複数のステージに分割し、ステージとステージの遷移とを含む遷移モデルを作成するモデル作成部と、属性情報を仮定した仮想データと遷移モデルを用いて、ステージの遷移に関する予測結果を算出し、予測結果に基づいて遷移モデルに対して遷移確率を設定し、設定した遷移モデル及び遷移確率と、個別データの情報とを比較して、ステージの遷移の遷移確率を推定する確率推定部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間軸上での状態の遷移を解析する解析装置であって、
属性情報と前記状態の変動を含む観測データである複数の個別データとを記憶する記憶部と、
前記状態を複数のステージに分割し、ステージとステージの遷移とを含む遷移モデルを作成するモデル作成部と、
属性情報を仮定した仮想データと前記遷移モデルを用いて、前記ステージの遷移に関する予測結果を算出し、前記予測結果に基づいて前記遷移モデルに対して遷移確率を設定し、設定した前記遷移確率と、前記個別データの情報とを比較して、前記ステージの遷移の遷移確率を推定する確率推定部と、を含む解析装置。
【請求項2】
前記遷移確率は、前記属性情報毎に設定される請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記遷移モデルは、1つの状態に対して状態の悪化と状態の良化で別々のステージが設定されたステージを含み、
前記ステージの遷移は、1方向に設定される請求項1または請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記確率推定部は、予め設定した関数に基づいて、初期値の遷移確率を設定する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項5】
前記確率推定部は、前記遷移確率の関数の時間軸を平行移動させる請求項4に記載の解析装置。
【請求項6】
前記確率推定部は、前記遷移確率の関数のピーク値を変化させる請求項4または請求項5に記載の解析装置。
【請求項7】
前記確率推定部は、モンテカルロ法を用いて個別データに相当するデータを複数作成して、推定した遷移確率に基づいて演算を行い、演算結果に基づいて予測結果を算出し、算出した予測結果と、個別データの遷移とが一致するかを判定する処理を繰り返し、前記遷移確率を推定する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項8】
前記確率推定部は、時間軸を分割して、時間軸毎に遷移確率を推定する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項9】
前記遷移モデルと推定した遷移確率を取得し、対象の個別データの状態の遷移を予測する予測部を備える請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項10】
前記推定モデルは、ステージの遷移方向の数が、前記個別データの症状の遷移の対象よりも多い請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項11】
時間軸上での状態の遷移を解析する解析方法であって、
属性情報と状態の変動を含む観測データである複数の個別データと記憶する記憶ステップと、
前記状態を複数のステージに分割し、ステージとステージの遷移とを含む遷移モデルを作成するモデル作成ステップと、
属性情報を仮定した仮想データと前記遷移モデルを用いて、前記ステージの遷移に関する予測結果を算出し、前記予測結果に基づいて前記遷移モデルに対して遷移確率を設定し、設定した遷移モデル及び前記遷移確率と、前記個別データの情報とを比較して、前記ステージの遷移の遷移確率を推定する確率推定ステップと、を含む解析方法。
【請求項12】
時間軸上での状態の遷移を解析する解析プログラムであって、
属性情報と状態の変動を含む観測データである複数の個別データと記憶する記憶ステップと、
前記状態を複数のステージに分割し、ステージとステージの遷移とを含む遷移モデルを作成するモデル作成ステップと、
属性情報を仮定した仮想データと前記遷移モデルを用いて、前記ステージの遷移に関する予測結果を算出し、前記予測結果に基づいて前記遷移モデルに対して遷移確率を設定し、設定した遷移モデル及び前記遷移確率と、前記個別データの情報とを比較して、前記ステージの遷移の遷移確率を推定する確率推定ステップと、をコンピュータに実行させる解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析装置、解析方法及び解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
時系列で状態が遷移する事象を評価するために各種シミュレーションが用いられている。状態の遷移を評価する装置としては、特許文献1にアクション可能なエージェントが行うアクションによって、状態が状態遷移する、アクションごとの状態遷移確率と、状態から、所定の観測値が観測される観測確率とで規定される状態遷移確率モデルの学習を、エージェントが行うアクションと、エージェントがアクションを行ったときにエージェントにおいて観測される観測値とを用いて行うことにより得られる状態遷移確率モデルに基づき、エージェントが現在の状況に至るための状態系列である現況状態系列の候補を算出する算出手段と、現状状態系列の候補を用い、所定のストラテジに従って、エージェントが次に行うべきアクションを決定する決定手段と、を備える情報処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-287028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、評価対象の事象は、種々の要因で状態の遷移が変動する。また、個人データに含まれる状態の遷移の情報をそのまま解析しても、状態の遷移を適切に評価できない場合がある。そのため、状態の遷移を適切に評価することが困難である。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上記課題を解決するために、解析対象の状態の遷移をより詳細に解析することができる解析装置、解析方法及び解析プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、時間軸上での状態の遷移を解析する解析装置であって、属性情報と状態の変動を含む観測データである複数の個別データと記憶する記憶部と、前記状態を複数のステージに分割し、ステージとステージの遷移とを含む遷移モデルを作成するモデル作成部と、属性情報を仮定した仮想データと前記遷移モデルを用いて、前記ステージの遷移に関する予測結果を算出し、前記予測結果に基づいて前記遷移モデルに対して遷移確率を設定し、設定した遷移モデル及び前記遷移確率と、前記個別データの情報とを比較して、前記ステージの遷移の遷移確率を推定する確率推定部と、を含む解析装置を提供する。
【0007】
本開示は、時間軸上での状態の遷移を解析する解析方法であって、属性情報と状態の変動を含む観測データである複数の個別データと記憶する記憶ステップと、前記状態を複数のステージに分割し、ステージとステージの遷移とを含む遷移モデルを作成するモデル作成ステップと、属性情報を仮定した仮想データと前記遷移モデルを用いて、前記ステージの遷移に関する予測結果を算出し、前記予測結果に基づいて前記遷移モデルに対して遷移確率を設定し、設定した遷移モデル及び前記遷移確率と、前記個別データの情報とを比較して、前記ステージの遷移の遷移確率を推定する確率推定ステップと、を含む解析方法を提供する。
【0008】
本開示は、時間軸上での状態の遷移を解析する解析プログラムであって、属性情報と状態の変動を含む観測データである複数の個別データと記憶する記憶ステップと、前記状態を複数のステージに分割し、ステージとステージの遷移とを含む遷移モデルを作成するモデル作成ステップと、属性情報を仮定した仮想データと前記遷移モデルを用いて、前記ステージの遷移に関する予測結果を算出し、前記予測結果に基づいて前記遷移モデルに対して遷移確率を設定し、設定した遷移モデル及び前記遷移確率と、前記個別データの情報とを比較して、前記ステージの遷移の遷移確率を推定する確率推定ステップと、をコンピュータに実行させる解析プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成とすることで、解析対象の状態の遷移をより詳細に解析することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、解析装置の一例を示すブロック図である。
図2図2は、個別データの一例を示す説明図である。
図3図3は、遷移モデルの一例を示す説明図である。
図4図4は、解析装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、遷移確率の一例を示す説明図である。
図6図6は、解析方法の一例を示す説明図である。
図7図7は、解析装置の予測処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、遷移確率の調整方法の一例を示す説明図である。
図9図9は、遷移確率の調整方法の一例を示す説明図である。
図10図10は、遷移確率の調整方法の一例を示す説明図である。
図11図11は、解析装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0012】
本実施形態では、解析対象の事象として、所定のウイルスに感染した人間(感染症)の状態の遷移を解析対象としている。状態の遷移としては、無症状、軽症、重症を例とする。また、本実施形態の解析対象は、無症状(感染しているが症状がない)、軽症、重症の順で状態が悪化していることを示す。また、解析対象は、事象が悪化する方向、良化する方向の双方に遷移する。なお、本実施形態は、感染症を例としたが、これに限定されない。解析対象は、人間に限定されず例えば、産業機械の故障や異常にも適用することができる。なお、解析対象は、時間軸で状態が変化するものが対象である。
【0013】
図1は、解析装置の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る解析装置10は、解析対象について、個別の患者の属性データと症状の遷移の情報を含む個別データを取得し、個別データを解析することで、解析対象の状態の遷移の遷移確率を推定する。
【0014】
解析装置10は、入力部12と、出力部14と、通信部16と、演算部18と、記憶部20と、を含む。入力部12は、キーボード及びマウス、タッチパネル、またはオペレータからの発話を集音するマイク等の入力装置を含み、オペレータが入力装置に対して行う操作に対応する信号を演算部18へ出力する。出力部14は、ディスプレイ等の表示装置を含み、演算部18から出力される表示信号に基づいて、処理結果や処理対象の画像等、各種情報を含む画面を表示する。また、出力部14は、データを記録媒体で出力する記録装置を含んでもよい。通信部16は、通信インターフェースを用いて、データの送信を行う。通信16は、外部機器と通信を行い取得した各種データ、プログラムを記憶部20に送り、保存する。通信部16は、有線の通信回線で外部機器と接続しても、無線の通信回線で外部機器と接続してもよい。
【0015】
演算部18は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の集積回路(プロセッサ)と、作業領域となるメモリとを含み、これらのハードウェア資源を用いて各種プログラムを実行することによって各種処理を実行する。具体的に、演算部18は、記憶部20に記憶されているプログラムを読み出してメモリに展開し、メモリに展開されたプログラムに含まれる命令をプロセッサに実行させることで、各種処理を実行する。
【0016】
演算部18は、統計処理部30と、モデル作成部32と、確率推定部34と、予測部36と、を含む。なお、解析装置10は、統計処理部30と、モデル作成部32と、確率推定部34と、予測部36と、通信網で接続して処理を実行しても、1つの処理装置で処理を実行してもよい。各部の機能については後述する。
【0017】
記憶部20は、磁気記憶装置や半導体記憶装置等の不揮発性を有する記憶装置からなり、各種のプログラムおよびデータを記憶する。記憶部20は、個別データ40と、テンプレートエータ42と、統計データ44と、処理プログラム46と、予測プログラム48と、を含む。
【0018】
記憶部20に記憶されるデータとしては、個別データ40と、テンプレートデータ42と、統計データ44と、が含まれる。図2は、個別データの一例を示す説明図である。図2に示すように、個別データ40は、個人識別データ102と、各人の属性データ104と、症状変遷データ106を含むデータである。個別情報40は、人間の1回の感染症ごとに、つまり解析対象の毎に作成される。個人識別データ102は、個別データ40を識別するためのデータであり、ID等が付与される。個人識別データ102は、個別データを識別できればよく、氏名等である必要はない。属性データ104は、個別データ40の対象者が、解析対象に影響を与える因子を備えているか否かを示す情報である。本実施形態の属性データ104は、基礎疾患や、既往歴、年齢、性別、身長、体重、生活習慣等、感染症の症状の遷移に影響を与える可能性がある各種情報である。症状変遷データ106は、個別データの対象者の症状の変遷、つまり、無症状、軽症、重症の各状態になったタイミング(日付)が含まれている。
【0019】
なお、本実施形態では、個別データのそれぞれに属性情報と症状の遷移を対応付けたが、属性情報と、症状の遷移を別のデータとしてもよい。例えば、個人の属性データの情報と、属性情報毎に症状の遷移を示したデータと、を設け、個人の症状の遷移が特定できない情報でもよい。また、属性情報毎に症状の遷移を示したデータと、全体での症状の遷移を示したデータとを、個別データとして用いてもよい。
【0020】
テンプレートデータ42は、個別データのテンプレート、解析モデルのテンプレート、統計データのテンプレート、解析結果を表示させるテンプレート等のデータを含む。個別データのテンプレートは、図2に示す各項目や症状変遷のデータを入力する項目、具体的には、症状の変遷と変化が生じた日時の情報を含む。また、テンプレートデータ42は、解析モデルを作成するためのステージと遷移規則を設定する情報が含まれる。
【0021】
図3は、遷移モデルの一例を示す説明図である。図3に示す遷移モデル110は、症状を0から4の5段階に分け、各ステージから良化、悪化する方向の遷移規則を設定したモデルある。遷移モデル110は、ステージ112a、112b、114a、114b、116a、116b、118a、118b、120を備える。遷移モデル110は、ステージ112a、112b、ステージ114a、114b、ステージ116a、116b、ステージ118a、118b、ステージ120の順で、症状が悪化する。つまり、ステージ112a、112bが最も症状が軽い状態(症状がない状態も含む)であり、ステージ120が最も症状が重い状態である。遷移モデル110は、ステージ112a、112bが、無症状グループ130、ステージ114a、114b、ステージ116a、116bが、軽症グループ132、ステージ118a、118b、ステージ120が重傷グループ134となる。ステージ112aとステージ112bは、解析対象の状態が同程度の状態となる。ステージ112aは、症状が悪化する状態である場合に分類される。ステージ112bは、症状が良化する場合に分類される。ステージ114aとステージ114bとの関係、ステージ116aとステージ116bの関係、ステージ118aとステージ118b、との関係も同様である。
【0022】
遷移モデル110は、隣接するステージとの間に遷移規則が設定される。ステージ112aは、ステージ114aに遷移する遷移規則121が設定される。遷移規則121は、状態が悪化する遷移である。ステージ114aは、ステージ116aに遷移する遷移規則122が設定される。遷移規則122は、状態が悪化する遷移である。ステージ114aは、ステージ112bに遷移する遷移規則124が設定される。遷移規則124は、状態が良化する遷移である。遷移規則124は、悪化する方向から良化する方向に切り替わる設定であり、悪化する方向に設定されるステージ114aから良化する方向に設定されるステージ112bに遷移する。ステージ114bは、ステージ112bに遷移する遷移規則126が設定される。遷移規則126は、状態が良化する遷移である。他のステージにも同様の遷移規則が設定される。このように、遷移モデル110は、ステージを繋げる症状の遷移が設定される。
【0023】
無症状から重症化して症状が改善したケースは、ステージ112a、ステージ114a、ステージ116a、ステージ118a、ステージ120a、ステージ118b、ステージ116b、ステージ114b、ステージ112bの順に遷移する。また、軽症で改善したケースは、ステージ112a、ステージ114a、ステージ116a、ステージ114b、ステージ112bの順に遷移する。
【0024】
なお、図3の遷移モデルは、各ステージを遷移し、ステージ120のみを最終ステップとしているが、これに限定されない。本実施形態の感染症の場合、各ステージで人間が死亡することをモデルに組み込んでもよい。つまり、各ステージの分岐に、フローの終了となる分岐を設けてもよい。また、本実施形態の遷移モデルは、隣接するステージのみに遷移規則を設定し、隣接するステージの間のみを移動可能としたが、これに限定されない。遷移モデルは、1つ以上のステップを飛ばした遷移規則を設定してもよい。例えば、ステージ112aからステージ116a、ステージ112aからステージ118aに遷移する遷移規則を設定してもよい。
【0025】
統計データ30は、統計処理部30で個別データを処理して作成されるデータである。統計データ30は、個別データ40の属性毎に統計処理を行い、各属性について、遷移の状態の統計を示すデータである。統計データ30は、確率推定部34で比較処理に用いるできる項目で作成されたデータである。統計データ30は、各属性について、基準日(本実施形態では感染日)を基準として症状が遷移する確率を示すデータである。なお、統計データ30は、統計処理部30が、外部で計算された結果を取得してもよい。また、本実施形態では基準日を感染日としているが、本開示はこれに限られるものではない。発症日(例えば、本人が発症を自覚した日)を基準日としてもよいし、最新(最後)の症状遷移日を基準日としてもよい。最新の症状遷移日を基準日とする場合、例えば、軽症から重症になった日を基準日として、重症から軽症に良化する確率を検討することになる。
【0026】
記憶部20に記憶されるプログラムとしては、処理プログラム46と、予測プログラム48と、がある。本実施形態の解析装置10は、処理プログラム46と、予測プログラム48とで解析プログラムとなる。なお、予測処理を実行しない解析の場合、処理プログラム46が解析プログラムとなる。
【0027】
処理プログラム46は、統計処理部30、モデル作成部32、確率推定部34で実行されるプログラムである。処理プログラム46は、個別データから統計データを作成する処理、遷移モデルを作成する処理、遷移モデルの遷移規則の遷移確率を推定する処理を実行する。
【0028】
予測プログラム48は、予測部36で実行されるプログラムである。予測プログラム48は、処理プログラム46で作成した遷移モデルと入力された個別データに基づいて、入力された個別データを評価する。
【0029】
記憶部20は、記録媒体に記録された処理プログラム46と、予測プログラム48と、を読み込むことで、処理プログラム46と、予測プログラム48と、がインストールされてもよいし、ネットワーク上で提供される処理プログラム46と、予測プログラム48と、を読み込むことで、処理プログラム46と、予測プログラム48と、がインストールされてもよい。
【0030】
演算部18の各部の機能について説明する。演算部18の各部は、記憶部20に記憶されるプログラムを実行することで、実行することができる。統計処理部30は、個別データ40のデータを読み出し、遷移モデル110の症状の情報に基づいて、属性情報毎に、状態が移行する累積データを作成する。累積データは、0を最少、1を最大とする無次元数で算出してもよい。
【0031】
モデル作成部32は、図3に示すような遷移モデルを作成する。モデル作成部32は、遷移方向のステージの数を決定し、最も悪化したステージ以外は、悪化する場合に通過するステージと、良化する場合に通過するステージを設定する。また、モデル作成部32は、隣接するステージに遷移する遷移規則を設定する。モデル作成部32は、より悪化する遷移規則と、より良化する遷移規則と、悪化から良化に切り替わる遷移規則が設定される。モデル作成部32は、ステージの遷移方向の数が、前記個別データの症状の遷移の対象よりも多い遷移モデルを作成する。
【0032】
確率推定部34は、遷移モデルに基づいて、統計データを解析し、遷移規則を移動する遷移確率を推定する。
【0033】
予測部36は、遷移モデルと、確率推定部34で遷移規則に設定した遷移確率とを用いて、予測対象の個別データの遷移を予測する。
【0034】
次に、図4から図7を用いて、解析装置の処理について説明する。図4は、解析装置の処理の一例を示すフローチャートである。図5は、遷移確率の一例を示す説明図である。図6は、解析方法の一例を示す説明図である。図7は、解析装置の予測処理の一例を示すフローチャートである。
【0035】
図4を用いて、処理の一例を説明する。図4に示す処理は、解析装置10の各部で動作を実行することで、実現される。解析装置10は、個別データを取得する(ステップS12)。具体的には、記憶部20の個別データ40を読み込む。解析装置10は、遷移モデルを作成する(ステップS14)。具体的には、モデル作成部32でステージと遷移規則を設定した遷移モデルを作成する。
【0036】
解析装置10は、属性及び遷移毎に遷移確率を推定する(ステップS18)。遷移確率は、図5に示すように、横軸を時間軸、縦軸を遷移の確率とした所定の関数の確率分布である。図5に示す確率分布は、最小値aから中間値bまで発生確率が単調増加して、ピーク値vとなり、中間値bから最小値cまで単調減少する分布である。図6は、時間軸の最小値a以前、最大値c以降は、遷移が発生せず、中間値bで遷移する確率が最も高くなる。なお、確率の分布形状はこれに限定されない。
【0037】
解析装置10は、モンテカルロ法を用いて、模擬計算を実行する(ステップS20)。解析装置10は、モンテカルロ法を用いて、属性情報をランダムサンプリングし、その結果と、ステップS18に作成した遷移確率とに基づいて、感染者の症状の遷移を推定する。解析装置10は、複数の仮想の属性情報の組み合わせに基づいて、感染者の症状の推定を実行し、感染者の推移の統計データを作成する。なお、解析装置10は、属性情報についても、統計データを作成し、モンテカルロ法で属性のランダムサンプリングを行う際に、属性の有無の情報の発生確率を制御するようにしてもよい。具体的には、属性毎に保有確率や、保有の相関係数を設定し、その情報に基づいて、推定の感染者の属性情報を作成する。また、解析装置10は、統計データに、個人データの属性に誤った情報が入力されている可能性を誤り率で設定し、誤り率も含めて、仮想の属性情報の組み合わせ(仮想の患者のデータ)を作成する。
【0038】
解析装置10は、模擬計算の結果と統計データとを比較する(ステップS22)。解析装置10は、模擬計算の結果と統計データとを比較する。ここで、模擬計算の結果は、統計データの情報に合わせて算出する。つまり、統計データが全体の人数の情報のみの場合、全体の人数で比較する。統計データが、個別の属性毎のデータである場合、属性ごとに比較する。ここで、統計データに人数のデータがある属性と、人数のデータがない属性がある場合、データがある属性の比較を行って、評価を行う。
【0039】
解析装置10は、終了条件を達成したかを判定する(ステップS24)。終了条件は、種々の条件とすることができる。例えば、終了条件は、ステップS22の比較結果が閾値以下である場合としてもよい。また、終了条件は、ステップS18からステップS22の処理の繰り返し回数が閾値となったかとしてもよい。解析装置10は、終了条件を達成していない(ステップS24でNo)と判定した場合、ステップS18に戻る。解析装置10は、遷移確率を調整して、ステップS18からステップS24の処理を実行する。
【0040】
解析装置10は、終了条件を達成している(ステップS24でYes)と判定した場合、遷移モデルに対する遷移係数を決定し(ステップS26)、処理を終了する。解析装置10は、統計データに最も近い遷移係数を、遷移モデルに対する遷移係数をする。
【0041】
図6に示すグラフ140は、属性Iについて、横軸を時間、縦軸を症状とした場合の例である。グラフ142は、属性IIについて、横軸を時間、縦軸を症状とした場合の例である。症状の0がステージ112a、112bに対応し、症状の1がステージ114a、114bに対応し、症状の2がステージ116a、116bに対応し、症状の3がステージ118a、118bに対応し、症状の4がステージ120に対応する。個別データから属性ごとに、基準日からのステージの変化の情報を集積すると、グラフ140、142の情報となる。個人データに基づいて属性ごとに症状の進行をまとめると、属性毎にグラフ140、142のグラフを作成できる。また、属性の人数分の遷移の情報が含まれる。グラフ140、142のデータを用いることで、ステージを遷移する確率を算出することができる。グラフ144は、横軸を症状が1になった日を0日目とした場合に症状の2に遷移する確率を示した図である。グラフ144は、線152が属性Iの遷移確率であり、線154が属性IIの遷移確率である。また、解析装置10は、グラフ146のように、個別データから全体の患者のうち、軽症者の数、重症者の数の遷移のデータを作成する。グラフ146は、軽症者が、症状の1と2の合計、重症者の数が、症状の3、4の合計となる。
【0042】
本実施形態の解析装置10は、上述したように、個人データと属性との関係から統計データに対応するグラフ144を作成できる関係を用いて、遷移モデルを作成し、属性ごとに遷移確率を推定し、その設定に基づいて、グラフ140、142に相当するデータを作成してその情報に基づいて、グラフ144、グラフ146の情報を作成する。解析装置10は、模擬計算で算出したデータと、実際のグラフ144及びグラフ146の情報とを比較して、一致度を評価する処理を行う。解析装置10は、グラフ144、146の結果が一致する様に、属性ごとに遷移確率を調整することで、実際の結果に沿った結果が算出sれる遷移モデル及び遷移規則の遷移確率を算出することができる。
【0043】
次に、図7を用いて、図4で作成したモデルを用いた解析方法について説明する。図7は、解析装置の予測処理の一例を示すフローチャートである。図7に示す処理は、予測部36で、各処理を実行する。予測部36は、解析モデルと、遷移係数を読み出す(ステップS32)。つまり、図4で作成した解析結果の情報を読み出す。次に、予測部36は、推定対象のデータを読み出す(ステップS34)。ここで、推定対象のデータは、1つの仮想の個別データでも、複数の個別データでもよい。
【0044】
予測部36は、演算処理を実行する(ステップS36)。予測部は、推定対象のデータを遷移モデルに入力し、推定対象の症状の遷移の予測処理を実行する。予測部36は、遷移の予測結果を出力する(ステップS38)。出力部14から予測結果を出力する。
【0045】
解析装置10は、遷移モデルを作成し、属性情報の影響を評価する解析処理を行い、実際の個別データの情報を比較して、遷移モデルの遷移規則ごとに遷移係数を設定することで、解析対象の症状の遷移を高い精度で解析することができる。これにより、個別データによって異なる属性が症状に与える影響を評価することができる。これにより、解析対象の感染症に対して属性が与える影響をより高い精度で把握することができる。
【0046】
解析装置10は、同じ症状の状態を、症状の悪化と症状の良化で別のステージに遷移する遷移モデルを用いることで、解析対象の状況をより高い精度で解析することができる。また、上記実施形態では、症状が悪化から良化に切り替わった場合、症状が軽い方向のみに遷移するモデルとしたが、一旦良化してから再度悪化する遷移モデルとしてもよい。この場合、良化から悪化に遷移するステージは、悪化する方向に設定されるステージとは別のステージとする。具体的には、ステージ144bからステージ146aへの遷移規則を設定せず、ステージ146aと同程度の症状の新しいステージを設定するモデルとする。
【0047】
また、解析装置10は、モンテカルロ法等のランダムサンプリングで仮想の個別データを作成して、遷移モデルを評価し、遷移係数を調整することで、属性の影響を高い精度で把握することができる。具体的には、ランダムサンプリングで評価を行うことで、実際に発生していない属性の組み合わせの個別データの症状の遷移についても評価することができる。
【0048】
また、解析装置10は、作成した遷移モデルを用いて、推定対象の評価を行うことで、推定対象の症状の遷移を予測することができる。また、推定対象として複数の個別データを用いることで、全体として、現状からの状態の遷移を予測することもできる。
【0049】
また、解析装置10は、遷移係数を時間軸の関数で設定することで、症状の遷移をより高い精度で解析することができる。また、解析装置10は遷移確率を調整することで、症状の遷移をより高い精度で解析することができる。
【0050】
解析装置10は、遷移確率の調整方法としては、ピーク値のvを調整する方法、最小値a、最大値bの値を調整する方法がある。最小値a、最大値bの値を調整する方法としては、最小値a、最大値bを同じ方向に同じ距離、平行移動させる方法や、最小値a、最大値bの一方を調整する方法がある。図8から図10は、それぞれ遷移確率の調整方法の一例を示す説明図である。図8は、遷移確率を平行移動させる場合を示している。図8は、確率分布160を、最大値と最小値の距離、ピークの高さを変更させずに、時間軸方向に平行移動させた確率分布160aや、確率分布160bに変更する一例である。確率分布160aは、確率分布160よりも前に遷移が発生する状態に変更している。確率分布160bは、確率分布160よりも後に遷移が発生する状態に変更している。解析装置10は、特徴的な位置のタイミングに差がある場合に、図8に示す調整を行う。
【0051】
図9は、遷移する期間を調整する場合を示している。図9は、最大値と最小値の距離を変更している。具体的には、確率分布160を確率分布162a、162bに変更する。確率分布162aは、確率分布160よりも短い期間で遷移が発生する状態に変更している。確率分布162bは、確率分布160よりも長い期間で遷移が発生する状態に変更している。なお、確率分布162a、162bは、確率分布160と、ピークの高さを変更し、ピークの時期を変更せず、全体の面積も変更していない。このため、全期間内で症状が遷移する確率は同じとなる。
【0052】
図10は、ピークの高さを調整する場合を示している。図10は、最大値と最小値の距離を変更せずにピークの高さを変更している。具体的には、確率分布160を、確率分布164a、164bに変更する。確率分布164aは、確率分布160よりもピークが高くなり、面積が大きくなっており、期間内で症状が遷移する確率が確率分布160より高くなっている。確率分布164bは、確率分布160よりもピークが低くなり、面積が小さくなっており、期間内で症状が遷移する確率が低くなっている。このように、ピークの位置を調整することで、全体の遷移確率を調整することができる。
【0053】
ピークの調整方法は、上記を組み合わせて実行してもよい。また、解析装置10は、確率分布を1のピークとせず、複数のピークを備える関数としてもよい。また、関数の形状、つまり分布の形状は特に限定されず、適用する関数を変更してもよい。
【0054】
また、解析装置10は、発症からの時間軸ではなく、全体の時間軸に基づいて、同じ属性に異なる確率分布を適用してもよい。つまり、全体の時間軸、つまり発症した期間により、適用する確率分布を異なる確率分布として、1つの属性に対して、複数の確率分布を設定してもよい。これにより、より高い精度の解析を行うことができる。また、全体の時間軸、季節要因を含んで、季節ごとの傾向を分析することもできる。
【0055】
また、解析装置10は、解析時に遷移モデルを変更してもよい。図11は、解析装置の処理の一例を示すフローチャートである。図11に示す処理のうち、図4と同様の処理については、詳細な説明を省略する。解析装置10は、個別データを取得する(ステップS12)。解析装置10は、遷移モデルを作成する(ステップS14)。
【0056】
次に、解析装置10は、遷移モデルに対応した統計データを作成する(ステップ16)。解析装置10は、属性及び遷移毎に遷移確率を推定する(ステップS18)。解析装置10は、モンテカルロ法を用いて、模擬計算を実行する(ステップS20)。解析装置10は、モンテカルロ法を用いて、属性情報をランダムサンプリングし、その結果と、ステップS18に作成した遷移確率とに基づいて、感染者の症状の遷移を推定する。
【0057】
解析装置10は、模擬計算の結果と統計データとを比較する(ステップS22)。解析装置10は、模擬計算の結果と統計データとを比較する。具体的には、グラフ144、146に相当するデータを比較する。
【0058】
解析装置10は、終了条件を達成したかを判定する(ステップS24)。終了条件は、種々の条件とすることができる。例えば、終了条件は、ステップS22の比較結果が閾値以下である場合としてもよい。
【0059】
解析装置10は、終了条件を達成していない(ステップS24でNo)と判定した場合、繰り返し回数が閾値以上であるかを判定する(ステップS62)。解析装置10は、繰り返し回数が閾値以上ではない(ステップS62でNo)と判定した場合、ステップS18に戻る。解析装置10は、遷移確率を調整して、ステップS18からステップS24の処理を実行する。
【0060】
解析装置10は、繰り返し回数が閾値以上である(ステップS62でYes)と判定した場合、ステップS14に戻る。解析装置10は、遷移モデルを変更して、ステップS14からステップS24の処理を行う。ここで、遷移モデルは、上述したように、良化から悪化する遷移規則とステージを追加する変更や、一部の遷移規則の追加、削除、症状の遷移方向のステージの数の増減がある。
【0061】
解析装置10は、終了条件を達成している(ステップS24でYes)と判定した場合、遷移モデルに対する遷移係数を決定し(ステップS26)、処理を終了する。解析装置10は、統計データに最も近い遷移係数を、遷移モデルに対する遷移係数をする。
【0062】
解析装置10は、一定回数繰り返し遷移係数を調整しても、終了条件を満たさない場合、遷移モデルを変更することで、解析対象をより正確に模擬した遷移モデルを作成し、より精度の高い解析を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
10 解析装置
12 入力部
14 出力部
16 通信部
18 演算部
20 記憶部
30 統計処理部
32 モデル作成部
34 確率推定部
36 予測部
40 個別データ
42 テンプレートデータ
44 統計データ
46 処理プログラム
48 予測プログラム
102 個人識別データ
104 属性データ
106 症状変遷データ
110 遷移モデル
112a、112b、114a、114b、116a、116b、118a、118b、120 ステージ
121、122、124 遷移規則
130 無症状グループ
132 軽症グループ
134 重症グループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11