(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146737
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電装置及びワイヤレス給電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20220928BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20220928BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047860
(22)【出願日】2021-03-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.発行者名:山梨大学 刊行物名:2020年度 山梨大学 工学部 電気電子工学科 卒業論文発表会 予稿集 発行年月日:2021年(令和3年)2月16日 2.集会名:2020年度 山梨大学 工学部 電気電子工学科 卒業論文発表会 開催日:2021年(令和3年)2月17日 資料名:3次元フリーアクセスワイヤレス電力伝送のための送電コイルの研究
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】關谷 尚人
(57)【要約】
【課題】コストアップを抑制することができるワイヤレス給電装置及びワイヤレス給電方法を提供することを目的としている。
【解決手段】高周波電源と、励振器と、給電共振器と、を備え、前記励振器は、第1励振コイルを有し、前記第1励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、前記給電共振器は、第1及び第2給電コイルを有し、前記第1及び第2給電コイルは、同一の共振周波数を有し,それらを結合させることで異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成され、前記高周波電源は、前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに供給して前記給電共振器を励振させ、前記第1及び第2給電コイルを前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードで共振させるように構成される、ワイヤレス給電装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源と、励振器と、給電共振器と、を備え、
前記励振器は、第1励振コイルを有し、
前記第1励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、
前記給電共振器は、第1及び第2給電コイルを有し、
前記第1及び第2給電コイルは、同一の共振周波数を有し,それらを結合させることで異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成され、
前記高周波電源は、前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに供給して前記給電共振器を励振させ、前記第1及び第2給電コイルを前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードで共振させるように構成される、ワイヤレス給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記給電共振器は、第3及び第4給電コイルを更に有し、
前記第1励振コイルの正面には、前記第1~第4給電コイルのうちのいずれかの給電コイルが配置され、
前記第1~第4給電コイルは、同一の共振周波数を有し,それらを結合させることで異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成され、
前記高周波電源は、前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに供給して前記給電共振器を励振させ、前記第1~第4給電コイルを前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードで共振させる、ワイヤレス給電装置。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記複数の振動モードのうちの2つの振動モードは、発生させる磁界の向きが互い異なっており、且つ、前記複数の振動モードのうちの残りの振動モードと比較して、前記給電共振器を通る水平面内の磁界の分布が均一である、ワイヤレス給電装置。
【請求項4】
請求項1に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記励振器は、第2励振コイルを更に有し、
前記第2励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、
前記給電共振器は、第3及び第4給電コイルを更に有し、
前記第1~第4給電コイルは、同一の共振周波数を有し,それらを結合させることで異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成され、
前記高周波電源は、前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を、前記第1及び第2励振コイルのうちの少なくとも一方供給して前記給電共振器を励振させ、前記第1~第4給電コイルを前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードで共振させる、ワイヤレス給電装置。
【請求項5】
請求項2~請求項4の何れか1つに記載のワイヤレス給電装置であって、
前記第1~第4給電コイルは、囲いをなすように配置されている、ワイヤレス給電装置。
【請求項6】
請求項5に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記第1及び第3給電コイルは、互いに対向するように配置され、第2及び第4給電コイルは、互いに対向するように配置され、
前記第1給電コイルは、前記第2及び第4給電コイルに対して直交又は略直交するように配置され、前記第3給電コイルは、前記第2及び第4給電コイルに対して直交又は略直交するように配置されている、ワイヤレス給電装置。
【請求項7】
請求項4を引用する請求項5を引用する請求項6に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記第1励振コイルは、前記第1及び第4給電コイルが交差する部分を第1角領域としたとき、前記第1角領域に配置され、
前記第2励振コイルは、前記第3及び第4給電コイルが交差する部分を第2角領域としたとき、前記第2角領域に配置されている、ワイヤレス給電装置。
【請求項8】
請求項2~請求項7の何れか1つに記載のワイヤレス給電装置であって、
前記第1~第4給電コイルは、スパイラルコイルで構成されている、ワイヤレス給電装置。
【請求項9】
請求項2~請求項8の何れか1つに記載のワイヤレス給電装置であって、
前記第1~第4給電コイルは、平面視形状が矩形状である、ワイヤレス給電装置。
【請求項10】
請求項2~請求項9の何れか1つに記載のワイヤレス給電装置であって、
前記給電共振器は、第1~第4側面部を有する誘電体筐体部を有し、
前記第1~第4給電コイルは、それぞれ、前記第1~第4側面部に設けられている、ワイヤレス給電装置。
【請求項11】
請求項10に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記第1~第4給電コイル及び前記第1~第4側面部は、平面視形状が矩形状であり、
前記第1~第4給電コイルは、前記第1~第4側面部より略小さく形成され、
前記第1~第4給電コイルの外縁部は、前記第1~第4側面部の各辺と略平行、かつ近接するように配置されている、ワイヤレス給電装置。
【請求項12】
請求項4に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記高周波電源は、前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を、前記第1及び第2励振コイルに選択的に供給して前記給電共振器を励振させる、ワイヤレス給電装置。
【請求項13】
請求項4に記載のワイヤレス給電装置であって、
前記高周波電源は、前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を、前記第1及び第2励振コイルに同時に供給して前記給電共振器を励振させる、ワイヤレス給電装置。
【請求項14】
高周波電源、励振器、及び給電共振器を用いたワイヤレス給電方法であって、
共振ステップを備え、
前記励振器は、第1励振コイルを有し、
前記第1励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、
前記給電共振器は、第1~第4給電コイルを有し、
前記第1~第4給電コイルは、同一の共振周波数を有し,それらを結合させることで異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成され、
前記第1励振コイルの正面には、前記第1~第4給電コイルのうちのいずれかの給電コイルが配置され、
前記共振ステップでは、前記高周波電源が、前記複数の振動モードのうち1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに対して供給して前記給電共振器を励振させ、前記第1~第4給電コイルを前記複数の振動モードのうち1つの振動モードで共振させる、方法。
【請求項15】
高周波電源、励振器、及び給電共振器を用いたワイヤレス給電方法であって、
共振ステップを備え、
前記励振器は、第1及び第2励振コイルを有し、
前記第1及び第2励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、
前記給電共振器は、第1~第4給電コイルを有し、
前記第1~第4給電コイルは、同一の共振周波数を有し,それらを結合させることで異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成され、
前記共振ステップでは、前記高周波電源が、前記複数の振動モードのうち1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1及び第2励振コイルのうちの少なくとも一方に供給して前記給電共振器を励振させ、前記第1~第4給電コイルを前記複数の振動モードのうち1つの振動モードで共振させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電装置及びワイヤレス給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノのインターネット(IoT: Internet of Things)の普及に伴い、様々な機器がインターネットに接続されるようになってきている。これらの機器には定期的な充電や電池交換を要し、電力供給のコストの問題が顕在化している。そこで、近年、3次元空間のあらゆる位置にある機器へのワイヤレス電力伝送(WPT: Wireless Power Transfer)が注目されている。WPTの中には、マイクロ波送電方式があるが、この方式は、3次元空間を介して電力を供給することが可能である一方、効率が非常に悪く、大きな電力を供給することができないという問題がある。これに対して、マイクロ波フィルタ等によく用いられる空洞共振器を部屋サイズに拡張し、部屋内(空洞共振器内)の広範囲にわたって大きな電力を送電する方式が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】T. Sasatani et el "Multimode quasistatic cavity resonators for wireless power transfer," IEEE Antennas and wireless propagation letters, vol. 16, pp. 2746-2749, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載の技術は、金属で構成される空洞共振器のサイズを大型して、ワイヤレス給電を実現したい空間を空洞共振器で囲む必要があり、コスト面での課題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、コストアップを抑制することができるワイヤレス給電装置及びワイヤレス給電方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、高周波電源と、励振器と、給電共振器と、を備え、前記励振器は、第1励振コイルを有し、前記第1励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、前記給電共振器は、第1及び第2給電コイルを有し、前記第1及び第2給電コイルは、同一の共振周波数を有し,それらを結合させることで異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成され、前記高周波電源は、前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに供給して前記給電共振器を励振させ、前記第1及び第2給電コイルを前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードで共振させるように構成される、ワイヤレス給電装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、第1及び第2給電コイルを複数の振動モードのうちの1つの振動モードで共振させることで磁界を発生させてワイヤレス給電行う方式であり、部屋サイズまで大型化したような空洞共振器が必要なく、コイルを対象となる空間に設ければ足りるため、コストアップを抑制することができる。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記給電共振器は、第3及び第4給電コイルを更に有し、前記第1励振コイルの正面には、前記第1~第4給電コイルのうちのいずれかの給電コイルが配置され、前記第1~第4給電コイルは、同一の共振周波数を有し,それらを結合させることで異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成され、前記高周波電源は、前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに供給して前記給電共振器を励振させ、前記第1~第4給電コイルを前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードで共振させる、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記複数の振動モードのうちの2つの振動モードは、発生させる磁界の向きが互い異なっており、且つ、前記複数の振動モードのうちの残りの振動モードと比較して、前記給電共振器を通る水平面内の磁界の分布が均一である、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記励振器は、第2励振コイルを更に有し、前記第2励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、前記給電共振器は、第3及び第4給電コイルを更に有し、前記第1~第4給電コイルは、同一の共振周波数を有し,それらを結合させることで異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成され、前記高周波電源は、前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を、前記第1及び第2励振コイルのうちの少なくとも一方供給して前記給電共振器を励振させ、前記第1~第4給電コイルを前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードで共振させる、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記第1~第4給電コイルは、囲いをなすように配置されている、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記第1及び第3給電コイルは、互いに対向するように配置され、第2及び第4給電コイルは、互いに対向するように配置され、前記第1給電コイルは、前記第2及び第4給電コイルに対して直交又は略直交するように配置され、前記第3給電コイルは、前記第2及び第4給電コイルに対して直交又は略直交するように配置されている、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記第1励振コイルは、前記第1及び第4給電コイルが交差する部分を第1角領域としたとき、前記第1角領域に配置され、前記第2励振コイルは、前記第3及び第4給電コイルが交差する部分を第2角領域としたとき、前記第2角領域に配置されている、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記第1~第4給電コイルは、スパイラルコイルで構成されている、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記第1~第4給電コイルは、平面視形状が矩形状である、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記給電共振器は、第1~第4側面部を有する誘電体筐体部を有し、前記第1~第4給電コイルは、それぞれ、前記第1~第4側面部に設けられている、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記第1~第4給電コイル及び前記第1~第4側面部は、平面視形状が矩形状であり、前記第1~第4給電コイルは、前記第1~第4側面部より略小さく形成され、前記第1~第4給電コイルの外縁部は、前記第1~第4側面部の各辺と略平行、かつ近接するように配置されている、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記高周波電源は、前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を、前記第1及び第2励振コイルに選択的に供給して前記給電共振器を励振させる、ワイヤレス給電装置が提供される。
好ましくは、前記高周波電源は、前記複数の振動モードのうちの1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を、前記第1及び第2励振コイルに同時に供給して前記給電共振器を励振させる、ワイヤレス給電装置が提供される。
本発明の実施形態の別の観点によれば、高周波電源、励振器、及び給電共振器を用いたワイヤレス給電方法であって、共振ステップを備え、前記励振器は、第1励振コイルを有し、前記第1励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、前記給電共振器は、第1~第4給電コイルを有し、前記第1~第4給電コイルは、同一の共振周波数を有し,それらを結合させることで異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成され、前記第1励振コイルの正面には、前記第1~第4給電コイルのうちのいずれかの給電コイルが配置され、前記共振ステップでは、前記高周波電源が、前記複数の振動モードのうち1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1励振コイルに対して供給して前記給電共振器を励振させ、前記第1~第4給電コイルを前記複数の振動モードのうち1つの振動モードで共振させる、方法が提供される。
本発明の実施形態の別の観点によれば、高周波電源、励振器、及び給電共振器を用いたワイヤレス給電方法であって、共振ステップを備え、前記励振器は、第1及び第2励振コイルを有し、前記第1及び第2励振コイルは、前記高周波電源に電気的に接続され、前記給電共振器は、第1~第4給電コイルを有し、前記第1~第4給電コイルは、同一の共振周波数を有し,それらを結合させることで異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成され、前記共振ステップでは、前記高周波電源が、前記複数の振動モードのうち1つの振動モードの前記モード周波数に対応する周波数の電力を前記第1及び第2励振コイルのうちの少なくとも一方に供給して前記給電共振器を励振させ、前記第1~第4給電コイルを前記複数の振動モードのうち1つの振動モードで共振させる、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るワイヤレス給電装置100の全体構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、励振器2及び給電共振器3の斜視図である。
【
図3】
図3は、励振器2及び給電共振器3の上面視図である。
【
図4】
図4Aは、
図2に示す励振器2及び給電共振器3から誘電体筐体部を取り除いた状態を示す斜視図である。
図4Bは、給電コイル31及び給電コイル33の斜視図である。
【
図5】
図5は、給電コイル(各給電コイル31~34)の正面視図である。
【
図6】
図6は、電磁界シミュレータの計算結果であって、本振動モードにおける磁界の強さ及び磁界の方向を示す分布図である。
図6では、矢印の方向が各箇所の磁界の方向を示しており、矢印の色が濃いほど、磁界が強いことを示している。
図6は、
図7に示す高さ位置Z=0における水平面の磁界の分布を示している。
図6において、符号Sg1は、
図5に示すコイル部分X1を通る電流の向きを示し、符号Sg2は、
図5に示すコイル部分X2を通る電流の向きを示している。
【
図7】
図7は、電磁界シミュレータの計算結果であって、
図6の振動モードにおける磁界の強さを示す分布図である。
図7では、各高さ位置(Z=h1,Z=h2,Z=h3,Z=h4,Z=h5)における水平面ごとに分布図を示している。Z=h1における水平面は、給電コイルの中心を通り、Z=h5における水平面は、給電コイルの最上部を通る。Z=h2の水平面、Z=h3の水平面、及びZ=h4の水平面は、Z=h1における水平面とZ=h5における水平面との間に等間隔に配置されている。
【
図8】
図8は、電磁界シミュレータの計算結果であって、本振動モードにおける磁界の強さ及び磁界の方向を示す分布図である。
図8では、矢印の方向が各箇所の磁界の方向を示しており、矢印の色が濃いほど、磁界が強いことを示している。
図8は、
図9に示す高さ位置Z=0における水平面の磁界の分布を示している。
【
図9】
図9は、電磁界シミュレータの計算結果であって、
図8の振動モードにおける磁界の強さを示す分布図である。
図9では、各高さ位置(Z=h1,Z=h2,Z=h3,Z=h4,Z=h5)における水平面ごとに分布図を示している。
【
図10】
図10は、電磁界シミュレータの計算結果であって、本振動モードにおける磁界の強さ及び磁界の方向を示す分布図である。
図10では、矢印の方向が各箇所の磁界の方向を示しており、矢印の色が濃いほど、磁界が強いことを示している。
図10に示す分布図の高さ位置は、
図7に示す高さ位置と同様である。
【
図11】
図11は、電磁界シミュレータの計算結果であって、本振動モードにおける磁界の強さ及び磁界の方向を示す分布図である。
図11では、矢印の方向が各箇所の磁界の方向を示しており、矢印の色が濃いほど、磁界が強いことを示している。
図11に示す分布図の高さ位置は、
図7に示す高さ位置と同様である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1 実施の形態
1-1 全体構成説明
図1に示すように、実施形態に係るワイヤレス給電装置100は、高周波電源1と、励振器2と、給電共振器3と、を備えている。ワイヤレス給電装置100は、充電対象である各種装置(受電側の装置)に対して、3次元空間を隔てて充電可能な磁界結合方式を採用している。充電対象である各種装置は、例えば、電化製品(携帯電話、パソコン、照明等)や、工場の電動工具の給電に好適である。その他に、実施形態は、IoT社会に欠かせない各種センサ類への非接触給電や、カプセル内視鏡等の体内医療機器の非接触給電にも適用することが可能である。また、オフィスの空間を区画するためのパーテーション(仕切板)に給電共振器3を配置することにより、オフィスに配置され電化製品(例えば、パソコン等)の非接触給電を実現可能である。
【0012】
ワイヤレス給電装置100は、複数の給電コイル(後述する給電コイル31~34)を結合(電磁界結合)させることが可能となっており、複数の給電コイルが結合することで、複数の給電コイルには、異なるモード周波数をもつ複数の振動モードが生成される。
【0013】
具体的には、ワイヤレス給電装置100は、励振コイル21を使用することで
図10及び
図11に示すような2つの振動モードを生成することができ、励振コイル22を使用しても、
図10及び
図11に示すような2つの振動モードを生成することができる。ここで、励振コイル21及び励振コイル22の位置は、互いにずれているため、励振コイル21を使用して
図10に対応する振動モードを発生させている場合には、
図6に示すような磁界の向きとなる。つまり、
図10に対応する振動モードを発生させるために励振コイル21を使用している場合と、
図10に対応する振動モードを発生させるために励振コイル22を使用している場合とでは、発生させている振動モードは同じであるが、励振コイルの位置が異なるので、磁界の向きが異なっている(励振コイル21は
図6に示す向き参照及び励振コイル22は
図10に示す向き参照)。充電対象である各種装置の向きによっては、当該装置内のコイルを適切に磁束が貫かず、伝送効率を低下させてしまう。このため、実施形態では、励振コイル21及び励振コイル22を使い分けることで、使用する周波数を変えないで磁界の向きを変えることができ、充電対象である各種装置の向きによって伝送効率が低下してしまうことを抑制可能となっている。
【0014】
また、ワイヤレス給電装置100は、励振コイル23を駆動することで、
図6、
図8、
図10及び
図11に示すような4つの振動モードを生成することができる。励振コイル23の正面には、給電コイルのうちの1つが向かい合うように配置されている。つまり、励振コイル21,22は、給電コイル31,34に対して所定の角度(実施形態では45度)をなすように給電共振器3の角部に配置されているが、励振コイル23は、給電コイル32に平行に配置され、且つ、励振コイル23の正面には給電コイル32が配置されている。励振コイル23を駆動する場合には、励振コイル21,22を駆動する場合よりも発生可能な振動モードの数が増える。
以下に、実施形態に係るワイヤレス給電装置100の構成について具体的に説明する。
【0015】
1-2 高周波電源1
高周波電源1は、励振器2を介して給電共振器3を励振するように構成されている。つまり、高周波電源1は、その出力信号を励振器2に出力し、励振器2は、給電共振器3に電磁的に結合する。高周波電源1は、励振器2の後述する励振コイル21~23にそれぞれ接続されている。そして、実施形態では、高周波電源1は、励振器2の励振コイル21~23に選択的に交流電力を供給可能となっている。換言すると、高周波電源1は、励振コイル21に交流電力を供給するときには、励振コイル22,23に交流電力を供給せず、励振コイル22に交流電力を供給するときには、励振コイル21,23に交流電力を供給せず、励振コイル23に交流電力を供給するときには、励振コイル21,22に交流電力を供給しない。高周波電源1の制御は、不図示の制御装置によって制御される。
【0016】
1-3 励振器2
図2~
図4Aに示すように、励振器2は、励振コイル21~23を備えている。励振コイル21~23は、高周波電源1に電気的に接続されており、高周波の交流電力が供給されるように構成されている。励振コイル21~23の構成(形状)は、同じである。励振コイル21~23の形状は特に限定されるものではないが、後述する給電コイル31~34と電磁界結合を形成しやすい形状や大きさであることが好ましい。実施形態では、励振コイル21~23の形状は、円形状である。
なお、励振コイル21及び励振コイル22のうちの一方は、第1励振コイルの一例であり、他方が第2励振コイルの一例である。また、励振コイル23は、第1励振コイルの一例である。
【0017】
励振コイル21は、給電コイル31~34を励振させるように配置されている。つまり、高周波電源1が、複数の振動モードのうちの1つの振動モードのモード周波数に対応する周波数の電力を励振コイル21に供給すると、給電コイル31~34が励振される。
また、励振コイル22も、給電コイル31~34を励振させるように配置されている。つまり、高周波電源1が、複数の振動モードのうちの1つの振動モードのモード周波数に対応する周波数の電力を励振コイル22に供給すると、給電コイル31~34が励振される。
更に、励振コイル23も、給電コイル31~34を励振させるように配置されている。つまり、高周波電源1が、複数の振動モードのうちの1つの振動モードのモード周波数に対応する周波数の電力を励振コイル23に供給すると、給電コイル31~34が励振される。
【0018】
励振コイル22は、励振コイル22によって給電共振器3が励振されているときにおける振動モードの磁界の向きが、励振コイル21によって給電共振器3が励振されているときにおける振動モードの磁界の向きとは異なるように、配置されている。具体的には、励振コイル21,22の配置は、第1及び第2角領域Rg1,Rg2を用いて規定することができる。第1角領域Rg1は、給電コイル31と給電コイル34とが交差する部分に対応する領域である。第2角領域Rg2は、給電コイル33と給電コイル34とが交差する部分に対応する領域である。実施形態では、励振コイル21は、第1角領域Rg1に配置され、励振コイル22は、第2角領域Rg2に配置されている。
【0019】
1-4 給電共振器3
図2~
図4に示すように、給電共振器3は、給電コイル31~34と、誘電体筐体部35とを備えている。なお、給電コイル31~34は、第1~第4給電コイルの一例である。
【0020】
1-4-1 給電コイル
図4Aに示すように、各給電コイル31~34の構成(形状)は、同じである。このため、各給電コイル31~34は、同一の共振周波数を有する。また、ワイヤレス給電装置100は、給電コイル31~34を結合(電磁界結合)させることが可能となっており、給電コイル31~34が結合することで、給電コイル31~34には、異なる共振周波数をもつ4つの振動モードが生成される。
【0021】
図5に示すように、各給電コイル31~34は、平面視形状が矩形状又は略矩形状(実施形態では、略正方形)となっている。各給電コイル31~34は、スパイラルコイルで構成されている。すなわち、各給電コイル31~34は、導線が平面的にスパイラル状に巻かれて形成されたコイルで構成されている。
図4A~
図5に示すように、各給電コイル31~34は、内側端部s及び外側端部tを有する非環状のコイルである。なお、各給電コイル31~34の巻数は、特に限定されるものではない。
【0022】
図4に示すように、給電コイル31~34は、囲いをなすように配置されている。これにより、ワイヤレス給電装置100は、給電コイル31~34の内側の空間Spに形成される磁界のムラを抑制することができ、空間Spに配置される充電対象となる装置の位置によらず、効果的に給電することができる。ワイヤレス給電装置100は、複数の振動モードを実行可能に構成されており、その中の特に
図6に示す振動モード及び
図10に示す振動モードでは、先述したような、空間Spに形成される磁界のムラを抑制する効果が高い。
【0023】
図3に示すように、給電コイル31と給電コイル33とは、第1方向Dr1において対向するように配置されている。また、給電コイル32と給電コイル34とは、第2方向Dr2において対向するように配置されている。実施形態において、第1方向Dr1と第2方向Dr2とは直交又は略直交しており、また、第1方向Dr1及び第2方向Dr2は、水平面に平行な方向である。
【0024】
図3に示すように、給電コイル31は、給電コイル32,34に対して直交又は略直交するように配置されている。具体的には、給電コイル31が配置される面を延長した仮想面と、給電コイル32,34が配置される面を延長した仮想面とは、直交又は略直交するように交差している。なお、給電コイル31が配置される面を延長した仮想面と、給電コイル34が配置される面を延長した仮想面とが交差する部分が、上述した第1角領域Rg1に対応している。同様に、給電コイル33は、給電コイル32,34に対して直交又は略直交するように配置されている。具体的には、給電コイル33が配置される面を延長した仮想面と、給電コイル32,34が配置される面を延長した仮想面とは、直交又は略直交するように交差している。なお、給電コイル33が配置される面を延長した仮想面と、給電コイル32が配置される面を延長した仮想面とが交差する部分が、上述した第2角領域Rg2に対応している。
【0025】
1-4-2 誘電体筐体部35
図2に示すように、誘電体筐体部35は、側面部35a~35dを有する。給電コイル31~34は、それぞれ、側面部35a~35dに設けられている。側面部35a~35dのそれぞれが、誘電体としての機能を有する。給電コイル31~34は、金属体に固定することができないため、誘電体としての側面部35a~35dに取り付けられる。また、誘電体筐体部35は、給電コイル31~34の形状を保持する機能を有する。つまり、給電コイル31~34の径が細い場合には、給電コイル31~34の剛性が低くなるため、誘電体筐体部35が無いと、給電コイル31~34が重みで撓んでしまう可能性がある。このため、給電共振器3が誘電体筐体部35を備えることで、給電コイル31~34の形状を保持することができる。
【0026】
側面部35a~35dは、平面視形状が矩形状である。また、給電コイル31~34は、側面部35a~35dより略小さく形成されている。給電コイル31の外縁部3t(
図5参照)は、側面部35aの各辺35t(
図2参照)に平行又は略平行に配置されている。また、給電コイル31の外縁部3tは、側面部35aの各辺35tに対して近接するように配置されている。給電コイル32~34についても、同様の構成である。
【0027】
1-5 その他構成:受電側の装置
受電側の装置(充電対象である各種装置)は、不図示のコイル(共振器)を備えている。受電側の装置が、空間Spに配置されると、受電側の装置のコイルが、給電共振器3の給電コイル31~34によって形成される磁界と結合する。これにより、高周波電源1の電力が、励振コイル及び給電コイルを介して受電側の装置に伝えられる。
【0028】
2 振動モードの説明
ワイヤレス給電装置100は、共振ステップを実行可能に構成されている。共振ステップでは、高周波電源1が、複数の振動モードのうち1つの振動モードのモード周波数に対応する周波数の電力を励振コイル21,22に対して供給して給電共振器3を励振させ、給電コイル31~34を複数の振動モードのうち1つの振動モードで共振させる動作である。
複数の振動モードは、互いに異なるモード周波数をもっている。
【0029】
2-1 駆動する励振コイルと発生可能な振動モードとの関係について
発生させることが可能な振動モードの種類は、駆動する励振コイルに応じて異なっている。換言すると、発生させることが可能な振動モードの種類は、駆動する励振コイルの配置に応じて異なっている。具体的には、下記の通りである。
【0030】
(1)励振コイル23を駆動する場合には、
図6、
図8、
図10及び
図11に示す4つの振動モードを発生可能である。
(2)励振コイル21又は励振コイル22を駆動する場合には、
図10及び
図11に示す2つの振動モードを発生可能である。(但し、励振コイル21を駆動して
図10に対応する振動モードを発生させる場合、磁界の向きは、
図6に示す方向である。)
以下に、
図6、
図8、
図10及び
図11に示す各振動モードの特徴について説明する。
【0031】
2-2 各振動モードについて
2-2-1 斜め方向に磁界を発生させるモード(
図6)
図6に示す振動モードにおいて、空間Spの中央部及びその近傍における磁界の向きは、X軸に対して鈍角をなしている。
図6に示す振動モードは、4つの給電コイルの磁界が強め合うように合成されることにより、
図6及び
図7に示すように、本振動モードの水平面における磁界分布は、角部において磁界強度が高く、4つの角部より内側の領域全体においても、高い磁界強度の分布となっている。また、この傾向は、水平面の高さ方向が変わっても同様である。このようなことから、
図6に示す振動モードは、3次元的に磁界の分布の均一性が高く、且つ、磁界強度自体も全体的に高いモードであることがわかる。
【0032】
2-2-2 四方の角部及びその近傍に集中的に磁界を発生させるモード(
図8)
図8に示す振動モードでは、
図8及び
図9に示すように、中心部では低い磁界強度分布となっており、中心部の周囲領域においては高い磁界強度分布となっている。この振動モードは、周囲領域にだけ限定的に電力を送電したい場合に有効なモードである。
【0033】
2-2-3 斜め方向に磁界を発生させるモード(
図10)
図10に示す振動モードにおいて、空間Spの中央部及びその近傍における磁界の向きは、X軸に対して鋭角をなしている。
図10に示す振動モードは、
図6に示す振動モードと同様に、特に角部において磁界強度が高いことに加え、4つの角部の内側の領域全体においても、高い磁界強度の分布となっている。一方、
図10に示す振動モードの磁界の向きは、水平面内において、
図6に示す振動モードの磁界の向きとは90度ずれていることが特徴である。このようなことから、
図10に示す本振動モードは、3次元的に磁界の分布の均一性が高く、且つ、磁界強度自体も全体的に高いモードであることに加え、
図6に示す振動モードとは磁界の向きが異なっているため、
図6に示す振動モードと
図10に示す振動モードとを使い分けることで、空間Spに異なる方向の磁界を発生させることができる。
【0034】
2-2-4 四方の角部に集中的に磁界を発生させるモード(
図11)
図11に示す振動モードでは、角部の局所的な領域において高い磁界強度分布となっているが、それ以外の領域(中央部や、隣接する角部の間の領域)においては低い磁界強度分布となっている。つまり、この振動モードでは、
図8に示す振動モードよりも、更に限定的な領域に送電が可能なモードである。
なお、
図11では、給電コイル31~34における高さ方向の中心における水平面領域の磁界の分布を示している。ここで、本振動モードでは、給電コイル31~34における高さ方向の最上部や最下部の水平面領域の磁界の分布は、給電コイル31~34における高さ方向の中心の水平面領域の磁界の分布(
図11)よりも、均一性が向上している。このため、本振動モードは、空間Spの床面側や天井面側等のような領域にも限定的に磁界を発生させることができ、当該領域に限定的に送電が可能である。
【0035】
2-3 振動モードの活用方法について
2-3-1 磁界の向きの制御その1
ここでは、励振コイル23を駆動する場合について説明する。励振コイル23を駆動する場合には、
図6、
図8、
図10及び
図11に示す4つの振動モードを発生可能である。
図6に示す振動モード及び
図10に示す振動モードは、3次元的に磁界の分布の均一性が高いモードである。このため、空間Spの各所に配置された複数の装置に対して送電したい場合に有効である。なお、装置が配置される向き(装置に内蔵される共振用のコイルの向き)によっては、
図6に示す振動モード及び
図10に示す振動モードのうちの一方を実行しているときにおける送電効率が落ちる可能性がある。このような場合には、振動モードを、
図6に示す振動モード及び
図10に示す振動モードのうちの一方のモードから他方のモードへ切り替えることで、送電効率が低下することを抑制することができる。
【0036】
2-3-2 磁界の向きの制御その2
ここでは、励振コイル21,22を駆動する場合について説明する。励振コイル21,22を駆動する場合には、
図10及び
図11に示す2つの振動モードを発生可能である。
上述した通り、
図6の振動モード及び
図10の振動モードは、磁界の向きが異なっているが、ワイヤレス給電装置100は、振動モードを変える以外にも、磁界の向きを変えることができる。すなわち、高周波電源1が駆動する励振コイルを切り替えることでも磁界の向きを変えることができる。例えば、励振コイル21を使用して
図10に対応する振動モードを発生させている場合には、
図6に示すような磁界が発生するが、励振コイル22を使用して
図10に対応する振動モードを発生させている場合には、
図10に示すような磁界が発生している。つまり、同じ振動モードを発生させているが磁界の向きが異なっている。励振コイル21を用いて発生させる
図10に対応する振動モードのモード周波数は、励振コイル22を用いて発生させる
図10に対応する振動モードのモード周波数と同じなので、受電側の装置において、共振用のコイルの構成等が複雑化することを回避できる点で有効である。
【0037】
2-3-3 強い磁界の形成箇所の制限
また、
図8の振動モード及び
図11の振動モードは、
図6の振動モード及び
図10の振動モードと比較すると磁界強度自体が低く、且つ、均一性も高くはない。しかし、
図8の振動モード及び
図11の振動モードは、上述した通り、限定的な箇所に磁界を発生させることが可能であり、換言すると、強い磁界の形成箇所を制限することができるので、例えば、強い磁界に晒したくない機器が空間Spに存在する場合に有効である。
【0038】
3 実施形態の作用・効果
3-1 コスト抑制
実施形態では、複数の給電コイルを複数の振動モードのうちの1つの振動モードで共振させることで磁界を発生させてワイヤレス給電行う方式を採用しており、原理的に広範囲に大きな電力を伝送することができる。従来技術(非特許文献1)では、部屋サイズまで大型化したような空洞共振器が必要であるのに対し、実施形態では、このような大掛かりな装置は不要であるため、コストアップを抑制することができる。
【0039】
送電効率の低下を抑制する観点から、発生する磁界の向きを変更できることは重要である。それに対し磁界の向きが変更されたときに、同時に、磁界の周波数(モード周波数)が変わると、受電側の装置において、この磁界の周波数が変わったことに対応する必要がある。それに対し、本実施形態では、例えば、使用するモード周波数を固定しておき、駆動する励振コイルを切り替えることで、磁界の向きを変えることができる。つまり、本実施形態の例で言えば、駆動する励振コイルを、励振コイル21と励振コイル22との間で切り替えることで、
図10に対応する振動モードを発生させているときの磁界の向きを変えることができる。これにより、受電側の装置における構成等の複雑化を回避することができ、システム全体としてのコストを抑制することができる。
【0040】
3-2 磁界の均一性
実施形態は、給電コイル31~34及び励振コイル23を備えているので、特に、
図6の振動モード及び
図10の振動モードを生成可能である。これらの振動モードは、磁界の分布の均一性が高くなっている。このため、空間Spのどの箇所に受電側の装置を配置しても、効率的に送電が可能である。なお、従来技術(非特許文献1)における空洞共振器を用いたワイヤレス給電では、2つの共振モードを組み合わせなければ、空間的に均一な磁界分布を形成することができず、動作や構成が煩雑化する。本実施形態では、このような煩雑化を回避することが可能である。
【0041】
なお、給電コイル31~34の平面視形状が、円形状よりも矩形状である方が、空間の角部の領域の磁界強度の低下を抑制しやすい。このため、実施形態のように、給電コイル31~34の平面視形状を矩形状とすることで、磁界の分布の均一性をより効果的に高めることが可能である。
【0042】
3-3 電力の送電効率
実施形態では、磁界の向きを変えることが可能に構成されている。
つまり、ワイヤレス給電装置100は、励振コイル23を使用する場合において、
図6の振動モードと
図10の振動モードとを切り替えることで空間Spに形成される磁界の向きを変更することができる。
また、ワイヤレス給電装置100は、励振コイル21,22を使用する場合において、駆動するコイルを励振コイル21と励振コイル22との間で切り替えることで空間Spに形成される磁界の向きを変更することができる。
これにより、受電側の装置の向きに応じて磁界の向きを制御することができるので、受電側の装置の向きに起因して電力の送電効率が低下することを抑制することができる。
【0043】
3-4 磁界形成領域の選択性
実施形態では、
図6の振動モード及び
図10の振動モードに加えて、
図8の振動モード及び
図11の振動モードも生成可能である。
図8の振動モード及び
図11の振動モードは、
図6の振動モード及び
図10の振動モードと比較すると、限定的な箇所に磁界を発生させることができるため、空間Spに磁界に晒したくない対象が存在する場合に有効である。例えば、空間Spがオフィスである場合において、オフィスの中央部を居室空間とし、オフィスの角部をサーバー等の受電側の装置が配置される空間とすることができる。これにより、オフィスの中央部に居室する人体は、磁界に晒されず、例えば、ペースメーカーの医療機器等をつけている人がいても、当該機器に影響を与えることを回避することができる。
【0044】
4 その他の実施形態
4-1 給電コイルが4つ+励振コイルが1つの形態
実施形態では、給電コイルが4つあり、励振コイルが3つある形態を例に説明したが、この形態に限定されるものではない。励振コイルについては、1つであってもよい。例えば、ワイヤレス給電装置100は、励振コイル23のみを備える形態であってもよい。この形態であっても、
図6の振動モードと
図10の振動モードとを切り替えることで、磁界の向きを変更することができる。
【0045】
4-2 給電コイルが4つ+励振コイルが2つの形態
また、励振コイルについては、2つであってもよい。例えば、ワイヤレス給電装置100は、励振コイル21,22のみを備える形態であってもよい。この形態であっても、駆動する励振コイルを、励振コイル21と励振コイル22との間で切り替えることで、磁界の向きを変更することができる。
【0046】
4-3 給電コイルが2つ+励振コイルが1つの形態
また、給電コイルが2つであり、励振コイルが1つである形態であってもよい。例えば、給電コイル31,34及び励振コイル21を備える形態であってもよい。この形態である場合には、2つの振動モードが生成されるが、この2つの振動モードを切り替えることで、磁界の向きを変更することができる。
【0047】
4-4 電力の供給方法等について
励振コイルの個数に制限はなく、ワイヤレス給電装置100は、実施形態のように、3つ有していてもよいし、4つ以上有していてもよい。この場合、これらの励振コイルは、給電コイルの周方向に配置することができる。また、同じモード周波数の電力を、これらの励振コイルへ、同時または選択的に供給してもよく、異なるモード周波数の電力を、これらの励振コイルに同時または選択的に供給してもよい。
例えば、選択的に供給することで、高周波電源1から供給する電力の周波数を変えないで、磁界の向きを変更することが可能である。また、同時に供給することで各励振コイルに対応するモードの磁界が合成されるため、同時に供給するときにおける磁界の向きが、1つの励振コイルを駆動するときの磁界の向きとはずれる結果となり、磁界の向きをより細かく調整する効果が期待できる。
【符号の説明】
【0048】
100 :ワイヤレス給電装置
1 :高周波電源
2 :励振器
21 :励振コイル
22 :励振コイル
3 :給電共振器
31 :給電コイル
32 :給電コイル
33 :給電コイル
34 :給電コイル
3t :外縁部
35 :誘電体筐体部
35a :側面部
35b :側面部
35c :側面部
35d :側面部
35t :辺
Dr1 :第1方向
Dr2 :第2方向
Rg1 :第1角領域
Rg2 :第2角領域
Sp :空間