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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146753
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ガス遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/915 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
H01H33/915
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047881
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】玉井 耕太郎
【テーマコード(参考)】
5G001
【Fターム(参考)】
5G001AA06
5G001BB03
5G001CC03
5G001DD03
5G001EE03
(57)【要約】
【課題】消弧性能のより確実な向上を期待できるガス遮断器を提供する。
【解決手段】パッファ機構13は、熱パッファ動作時において、仕切壁部17によるパッファ室18の仕切りが機能するように構成される。仕切壁部17の仕切りにより、第1噴出部25からパッファ室18の第1室18a、蓄圧室20、パッファ室18の第2室18b、第2噴出部27までの絶縁ガスGの流路が確立する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスの雰囲気中に固定接点と可動接点とが配置され、遮断動作に伴い前記固定接点から前記可動接点が離間動作し、各接点間で生じたアークを消弧して電流遮断を図るものであり、
互いに連通するパッファ室と蓄圧室とを有し、前記可動接点の離間動作と連動する前記パッファ室の容積減少に伴い前記パッファ室及び前記蓄圧室内の前記絶縁ガスを消弧ガスとして噴出させる機械パッファ動作と、前記アークによる熱膨張にて前記パッファ室及び前記蓄圧室内の前記絶縁ガスを高圧としその高圧の前記絶縁ガスを消弧ガスとして噴出させる熱パッファ動作とを行うパッファ機構を備えるガス遮断器であって、
前記絶縁ガスの噴出部として第1及び第2噴出部を設けるとともに、
前記パッファ機構は、前記パッファ室と前記蓄圧室とを第1及び第2開口部を通じて連通し、前記パッファ室を前記第1開口部及び前記第1噴出部と連通する第1室と、前記第2開口部及び前記第2噴出部と連通する第2室とに仕切ることが可能な仕切部を備え、
前記機械パッファ動作時には、前記可動接点の離間動作と連動する前記パッファ室の容積減少を駆動源として前記パッファ室及び前記蓄圧室内の前記絶縁ガスを前記第1噴出部から噴出させ、
前記熱パッファ動作時には、前記仕切部による前記パッファ室の仕切りを機能させ、前記アークにより熱膨張した前記絶縁ガスを駆動源として前記第1噴出部から導入し、前記パッファ室の前記第1室、前記蓄圧室、前記パッファ室の第2室を通って前記パッファ室及び前記蓄圧室内の前記絶縁ガスを前記第2噴出部から噴出させるように構成されている、ガス遮断器。
【請求項2】
前記パッファ機構は、シリンダとピストンとを有し、前記可動接点の離間動作と連動する前記ピストンの前記シリンダへの相対的な押込動作にて前記シリンダ内に設けた前記パッファ室の容積を可変するように構成されており、
前記仕切部は、前記ピストンに向けて延びるように前記シリンダに対して設けられている、請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記パッファ機構は、前記ピストンの先端部の押圧面部に前記第1及び第2開口部を設けるとともに、前記押圧面部の前記パッファ室との反対側に前記蓄圧室を設け、
前記仕切部は、自身の先端部が前記押圧面部の前記第1及び第2開口部間に設けた挿入隙間に前記遮断動作の途中から挿入されて前記蓄圧室内に突出するように構成されている、請求項2に記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記第1及び第2噴出部は、前記第2噴出部の開口面積を前記第1噴出部の開口面積よりも小さく設定されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記第2噴出部は、自身が設けられる周囲部材よりも前記アークによる損耗が低損耗に構成されている、請求項4に記載のガス遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
パッファ形ガス遮断器において、パッファ室の容積を可変とするピストンを有し、電流遮断動作と連動したピストンの押込動作によりパッファ室内の絶縁ガスを固定接点と可動接点との間に生じたアークに吹き付けるパッファ機構を備えるものが周知である。
【0003】
このようなガス遮断器において更に、ピストンに開口部を設け、開口部を通じてパッファ室と連通する蓄圧室を設けているものがある(例えば特許文献1参照)。蓄圧室内の絶縁ガスは、パッファ室内の絶縁ガスよりもアークの熱影響を受け難いため、低温で存在可能である。蓄圧室内の低温の絶縁ガスをアークに吹き付ければ、アークの消弧性能の向上が図れるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-171747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄圧室内の絶縁ガスをパッファ室内を通過させてアークに吹き付ける構成の場合、蓄圧室から吐出された低温の絶縁ガスがパッファ室内の高温の絶縁ガス雰囲気内を通過する際に混ざり合う。つまり、アークに到達するまでに絶縁ガスがある程度温度上昇してしまうことが懸念としてある。
【0006】
特許文献1に開示の技術では、上記懸念に対する工夫が見られる。特許文献1の技術では、蓄圧室の開口部として入口部と出口部とを設け、入口部には蓄圧室内に向けて先細りする形状の絞り部が、出口部にはパッファ室内に向けて先細りする形状の絞り部が設けられている。蓄圧室に対して入出する絶縁ガスは整流されるとともに、出口部から吐出する絶縁ガスは勢いが付いてパッファ室内の高温の絶縁ガスを掻き分けて速やかに進むようになる。このようにパッファ室内の高温の絶縁ガスからの影響を受け難くすることで、ある程度低温に維持された絶縁ガスをアークまで到達させることが期待できるが、未だ改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するガス遮断器は、絶縁ガスの雰囲気中に固定接点と可動接点とが配置され、遮断動作に伴い前記固定接点から前記可動接点が離間動作し、各接点間で生じたアークを消弧して電流遮断を図るものであり、互いに連通するパッファ室と蓄圧室とを有し、前記可動接点の離間動作と連動する前記パッファ室の容積減少に伴い前記パッファ室及び前記蓄圧室内の前記絶縁ガスを消弧ガスとして噴出させる機械パッファ動作と、前記アークによる熱膨張にて前記パッファ室及び前記蓄圧室内の前記絶縁ガスを高圧としその高圧の前記絶縁ガスを消弧ガスとして噴出させる熱パッファ動作とを行うパッファ機構を備えるガス遮断器であって、前記絶縁ガスの噴出部として第1及び第2噴出部を設けるとともに、前記パッファ機構は、前記パッファ室と前記蓄圧室とを第1及び第2開口部を通じて連通し、前記パッファ室を前記第1開口部及び前記第1噴出部と連通する第1室と、前記第2開口部及び前記第2噴出部と連通する第2室とに仕切ることが可能な仕切部を備え、前記機械パッファ動作時には、前記可動接点の離間動作と連動する前記パッファ室の容積減少を駆動源として前記パッファ室及び前記蓄圧室内の前記絶縁ガスを前記第1噴出部から噴出させ、前記熱パッファ動作時には、前記仕切部による前記パッファ室の仕切りを機能させ、前記アークにより熱膨張した前記絶縁ガスを駆動源として前記第1噴出部から導入し、前記パッファ室の前記第1室、前記蓄圧室、前記パッファ室の第2室を通って前記パッファ室及び前記蓄圧室内の前記絶縁ガスを前記第2噴出部から噴出させるように構成されている。
【0008】
上記態様によれば、パッファ機構の熱パッファ動作時において、仕切部によるパッファ室の仕切りが機能する。仕切部の仕切りにより、第1噴出部からパッファ室の第1室、蓄圧室、パッファ室の第2室、第2噴出部までの絶縁ガスの流路が確立する。熱パッファ動作はアークにより熱膨張する高温高圧の絶縁ガスを駆動源として第1噴出部から逆流により導入するが、導入された高温の絶縁ガスがその先にあるパッファ室及び蓄圧室内の低温の絶縁ガスを押し出しながら流路を進む。パッファ室では仕切部の仕切りにより、蓄圧室に向かう高温の絶縁ガスと蓄圧室から出た低温の絶縁ガスとの混ざり合いがより確実に抑制される。そのため、第2噴出部から低温の良質な絶縁ガスをより確実にアークに噴出でき、アークの消弧性を高めることが可能である。
【0009】
上記ガス遮断器において、前記パッファ機構は、シリンダとピストンとを有し、前記可動接点の離間動作と連動する前記ピストンの前記シリンダへの相対的な押込動作にて前記シリンダ内に設けた前記パッファ室の容積を可変するように構成されており、前記仕切部は、前記ピストンに向けて延びるように前記シリンダに対して設けられている。
【0010】
上記態様によれば、パッファ機構を構成するシリンダに仕切部が設けられるため、パッファ機構の動作と連動して仕切部の仕切りを機能させる構成を容易に実現することが可能である。
【0011】
上記ガス遮断器において、前記パッファ機構は、前記ピストンの先端部の押圧面部に前記第1及び第2開口部を設けるとともに、前記押圧面部の前記パッファ室との反対側に前記蓄圧室を設け、前記仕切部は、自身の先端部が前記押圧面部の前記第1及び第2開口部間に設けた挿入隙間に前記遮断動作の途中から挿入されて前記蓄圧室内に突出するように構成されている。
【0012】
上記態様によれば、仕切部は、自身の先端部がピストンの押圧面部の挿入隙間に遮断動作の途中から挿入されて蓄圧室内に突出する構成である。仕切部の先端部がピストンの押圧面部に到達することで、仕切部によるパッファ室の仕切りが機能する。換言すれば、仕切部の先端部までの長さを極力短くできるため、蓄圧室への仕切部の突出を小さくできる。つまり、蓄圧室の大型化の抑制、ひいてはガス遮断器の大型化の抑制に貢献することが可能である。
【0013】
上記ガス遮断器において、前記第1及び第2噴出部は、前記第2噴出部の開口面積を前記第1噴出部の開口面積よりも小さく設定されている。
上記態様によれば、第2噴出部の開口面積が第1噴出部の開口面積よりも小さく設定されるため、熱パッファ動作に駆動源として第1噴出部から導入する高温の絶縁ガスを第2噴出部側から導入されることを抑制することが可能である。熱パッファ動作の円滑な動作に貢献することが可能である。
【0014】
上記ガス遮断器において、前記第2噴出部は、自身が設けられる周囲部材よりも前記アークによる損耗が低損耗に構成されている。
上記態様によれば、第2噴出部は自身の周囲部材よりもアークによる損耗が低損耗となるように構成されるため、例えば第2噴出部の開口面積を第1噴出部の開口面積よりも小さくする設定を長期にわたり維持できる等の効果が期待できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガス遮断器によれば、消弧性能のより確実な向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態におけるガス遮断器の閉極状態を示す断面図。
図2】一実施形態におけるガス遮断器の遮断動作初期を示す断面図。
図3】一実施形態におけるガス遮断器の遮断動作中期を示す断面図。
図4】一実施形態におけるガス遮断器の遮断動作後期を示す断面図。
図5】変更例におけるガス遮断器の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、ガス遮断器の一実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態のガス遮断器10は、例えば電力系統の遮断対象電路(図示略)に設置される。ガス遮断器10は、電路上に生じた過大な故障電流を遮断する際に動作するものである。ガス遮断器10は、絶縁ガスGが充填される収容タンクT内に収容され、絶縁ガスGの雰囲気中に配置されている。絶縁ガスGには、電流遮断動作時に生じるアークの消弧に適した周知のガス、例えばSFガス(六フッ化硫黄ガス)やCOガス(二酸化炭素ガス)等が用いられる。
【0018】
ガス遮断器10は、固定接点11と可動接点12とを備えている。固定接点11は、二分する電路の一方側と電気的に接続されている。固定接点11は、例えば丸棒状をなし、不動に設けられている。可動接点12は、二分する電路の他方側と電気的に接続されている。可動接点12は、例えば円筒状をなし、固定接点11と同軸上で軸方向に移動可能に設けられている。可動接点12は、操作器(図示略)の駆動にて固定接点11に対して軸方向に進退動作する。すなわち、可動接点12は、軸方向の進退動作にて固定接点11に対して接離動作する。
【0019】
なお、図1は、固定接点11と可動接点12との先端部同士が接触状態にあるガス遮断器10の閉極状態を示している。これに対し、図2図3及び図4は、固定接点11から可動接点12が離間動作する開極時のガス遮断器10の一連の電流遮断動作を示している。図2は遮断動作初期、図3は遮断動作中期、図4は遮断動作後期である。
【0020】
固定接点11と可動接点12とは、可動接点12が固定接点11から離間する際にアークA(図2等参照)が生じ得る。本実施形態のガス遮断器10は、パッファ形ガス遮断器であり、各接点11,12間に生じ得るアークAの消弧のためのパッファ機構13を備えている。パッファ機構13は、可動接点12周りに設けられている。
【0021】
パッファ機構13は、シリンダ14とピストン15とを備えている。シリンダ14は、端面部14aと外周壁部14bとを有している。端面部14aは、可動接点12の先端部の外側面に対して径方向に延び、可動接点12の先端部周りに円環状をなしている。外周壁部14bは、端面部14aの外周縁部から軸方向に可動接点12の基端側に向けて延び、可動接点12の外周面から径方向に距離を有する円筒状をなしている。シリンダ14は、端面部14aと外周壁部14bと可動接点12によって囲まれた凹状をなし、基端側が開口する空間を有して構成されている。シリンダ14は、可動接点12と一体的に軸方向に動作する。
【0022】
シリンダ14の端面部14aには、自身を軸方向に貫通してシリンダ14内の空間と連通する第1連通孔16aと第2連通孔16bとが設けられている。第1連通孔16aは、端面部14aの径方向内側位置に設けられている。第2連通孔16bは、端面部14aの径方向外側位置に設けられている。さらに、端面部14aには、軸方向に延びる仕切壁部17が設けられている。仕切壁部17は、可動接点12とシリンダ14の外周壁部14bと径方向にそれぞれ距離を有する円筒状をなしている。仕切壁部17は、第1連通孔16aと第2連通孔16bとの間に設けられている。仕切壁部17の軸方向長さL1は、例えば図3に示す遮断動作中期のシリンダ14とピストン15との相対位置となったときに、ピストン15に到達する長さに設定されている。仕切壁部17は、その遮断動作中期以降において、シリンダ14内の空間、すなわち後述のパッファ室18を、第1連通孔16aが設けられる側の第1室18aと第2連通孔16bが設けられる側の第2室18bとに仕切るものである。
【0023】
ピストン15は、シリンダ14内に配置され、不動に設けられている。ピストン15は、シリンダ14の開口を閉塞するような円環状をなしている。ピストン15は、シリンダ14内の空間を仕切ってパッファ室18を形成している。ピストン15は、シリンダ14側の動作によりシリンダ14内を軸方向に相対動作し、パッファ室18内の容積を変化させる。ピストン15の先端面は、パッファ室18の容積を可変する押圧面部15aである。
【0024】
ピストン15の押圧面部15aには、第1開口部19aと第2開口部19bとが設けられている。第1開口部19aは、押圧面部15aの径方向内側位置に設けられている。第2開口部19bは、押圧面部15aの径方向外側位置に設けられている。また、ピストン本体部15bには、蓄圧室20が設けられている。蓄圧室20は、押圧面部15aに設けた第1開口部19aと第2開口部19bとを通じてパッファ室18と連通している。第1開口部19aには、蓄圧室20内に向けて先細りする形状の絞り部21が設けられている。さらに、押圧面部15aには、第1開口部19aと第2開口部19bとの間に挿入隙間22が設けられている。挿入隙間22は、シリンダ14側に設けた仕切壁部17を先端部17a側から挿入可能である。挿入隙間22には、仕切壁部17がピストン15に到達する図3に示す遮断動作中期に仕切壁部17の挿入が開始される。遮断動作中期以降においては、仕切壁部17の先端部17aが蓄圧室20内に次第に突出する態様となる。なお、図4に示す遮断動作後期となって遮断動作が終了しても、仕切壁部17の先端部17aが蓄圧室20の奥底部20aに到達しない設定となっている。
【0025】
パッファ機構13には、ノズル23が並設されている。ノズル23は、パッファ室18とは反対側で、シリンダ14の端面部14aに当接するようにして設けられている。ノズル23は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の絶縁樹脂材にて略円筒状に形成されている。ノズル23の内側通路23aには、固定接点11が相対的に入出するようになっている。ノズル23は、パッファ室18から噴出する絶縁ガスGの吹付方向を、固定接点11と可動接点12との間に生じ得るアークAに向けて案内する機能を有する。また、ノズル23は、相対的に入出する固定接点11と協働して、パッファ室18への絶縁ガスGの充填と充填した絶縁ガスGの噴出とを行わせる機能を有する。
【0026】
ノズル23は、内側通路23aの軸方向略中央部に小径部24を有している。内側通路23aの基端側部位は、基端部から小径部24に向かって次第に径方向内側に傾斜する第1噴出部25として構成されている。第1噴出部25は、シリンダ14の端面部14aに設けた第1連通孔16aと連通し、第1連通孔16aから噴出されるパッファ室18内の絶縁ガスGをノズル23の径方向内側に向けて案内する。内側通路23aの先端側部位は、小径部24から先端部に向かって次第に径方向外側に傾斜する拡散部26として構成されている。拡散部26は、ノズル23の先端部から排出する絶縁ガスGの流速を下げて拡散させる。
【0027】
また、ノズル23の小径部24には、第2噴出部27が設けられている。第2噴出部27は、ノズル23の内側通路23aの径方向内側に向けて開口する。第2噴出部27は、ノズル23の内部に設けられる連通通路28と連通する。第2噴出部27は、連通通路28を通じて、シリンダ14の端面部14aに設けた第2連通孔16bと連通している。第2噴出部27は、第2連通孔16bから噴出されるパッファ室18内の絶縁ガスGを連通通路28を通じてノズル23の径方向内側に向けて案内する。第2噴出部27には、ノズル23の径方向内側に向けて先細りする形状の絞り部29がノズル23の本体部に一体に組み込まれて設けられている。
【0028】
なお、絶縁ガスGの流路上にある第1及び第2開口部19a,19b、第2連通孔16b、連通通路28、第2噴出部27については、それぞれ周方向に複数点在して設けられている。第1連通孔16a、第1噴出部25については、それぞれ周方向に連続して設けられている。第1及び第2開口部19a,19b、第1及び第2連通孔16a,16b、連通通路28、第1及び第2噴出部25,27については、周方向に複数点在する態様、周方向に連続する態様のいずれかに統一してもよく、また各態様の組み合わせを適宜変更してもよい。
【0029】
本実施形態のガス遮断器10の動作(作用)について説明する。
図1に示すガス遮断器10の閉極状態においては、固定接点11と可動接点12とが接触している。ノズル23の内側通路23aは、挿通状態にある固定接点11により略閉塞状態となっている。そして、ガス遮断器10の遮断動作が開始されると、固定接点11から可動接点12の速やかな後退動作が開始される。また同時に、パッファ機構13ではピストン15のシリンダ14内への相対的な押込動作が開始され、パッファ室18の容積減少による圧力上昇が次第に進む。
【0030】
図2に示す遮断動作初期では、固定接点11から可動接点12が僅かに離間し、両接点11,12間にアークAが生じ得る。また、可動接点12の後退により、ノズル23の第1噴出部25は開放状態となる。第1噴出部25の開放により、アークAの発生箇所であるノズル23の内側通路23aとパッファ室18とが連通する。しかしながら、発生初期のアークAは発熱量が小さいため、アークAの周囲の絶縁ガスGの熱膨張は未だ小さい。そのため、絶縁ガスGの熱膨張によるアークAの周囲の圧力上昇よりも、ピストン15の押込動作による蓄圧室20も含めたパッファ室18の圧力上昇が勝る状態である。パッファ機構13の主たるパッファ動作は、ピストン15の押込動作を駆動源とした機械パッファ動作である。
【0031】
また、ノズル23においては、固定接点11により内側通路23aが依然として小径部24にて略閉塞状態である一方で隙間も存在するため、機械パッファ動作時の小流量の絶縁ガスGの流れは十分に許容される。これにより、パッファ室18内の絶縁ガスGは第1連通孔16aに向かい、第1連通孔16aを通って第1噴出部25から噴出される。機械パッファ動作では、α1矢印にて示すガス流が絶縁ガスGの主たる流れである。第1噴出部25からは、パッファ室18及び蓄圧室20等の低温の良質な絶縁ガスGが消弧ガスとしてアークAに吹き付けられ、アークAの消弧性は高いものである。
【0032】
なお、この図2の遮断動作初期では、仕切壁部17の先端部17aはピストン15にさほど近くなく、仕切壁部17によるパッファ室18の仕切りは依然生じていない。しかしながら、この遮断動作初期においては、アークAの熱により高温高圧化された絶縁ガスGの第1噴出部25からパッファ室18への逆流が主たる流れではないため、パッファ室18内の絶縁ガスGは低温に維持されている。
【0033】
図3に示す遮断動作中期になると、固定接点11に対する可動接点12の離間は進み、両接点11,12間に引き続きアークAが生じる場合、そのアークAは長くなる。すると、アークAの発熱量も大きくなり、それに比してアークAの周囲の絶縁ガスGの熱膨張も大きくなる。そのため、ピストン15の押込動作による蓄圧室20も含めたパッファ室18の圧力上昇よりも、絶縁ガスGの熱膨張によるアークAの周囲の圧力上昇が勝り、遮断動作初期とは逆転状態となる。つまり、α2矢印にて示すように、アークAの熱により高温高圧化された絶縁ガスGの第1噴出部25を通じたパッファ室18への逆流が主たる流れとなる。パッファ機構13の主たるパッファ動作は、アークAによる絶縁ガスGの熱膨張を駆動源とした熱パッファ動作に切り替わる。
【0034】
また、仕切壁部17においては、先端部17aがピストン15に到達する。仕切壁部17により、パッファ室18が第1室18aと第2室18bとに仕切られた状態となる。また、可動接点12の後退が進むことで、固定接点11の先端部がノズル23の小径部24と拡散部26との境界付近まで相対的に移動する。第2噴出部27は開放状態となる。これにより、第1噴出部25から逆流する絶縁ガスGは、第1連通孔16aからパッファ室18の第1室18a、第1開口部19a、蓄圧室20へ向かう。次いで、蓄圧室20内の絶縁ガスGは、第2開口部19bからパッファ室18の第2室18b、第2連通孔16b、連通通路28を通る流路で第2噴出部27から噴出される。
【0035】
なお、ノズル23の内側通路23aが固定接点11にて略閉塞状態であるものの隙間も存在することから、第2噴出部27から絶縁ガスGが噴出されるが、熱パッファ動作時の大流量の絶縁ガスGの流れは十分に許容できない。つまり、パッファ室18や蓄圧室20を含む上記流路上での絶縁ガスGの圧力上昇が勝り、絶縁ガスGがより高圧となっていく。
【0036】
図4に示す遮断動作後期まで進むと、固定接点11がノズル23の小径部24から完全に抜けた状態となる。すると、高圧となっていた絶縁ガスGが一気に第2噴出部27から噴出される。熱パッファ動作では、図3及び図4のα2,α3矢印にて示すガス流が絶縁ガスGの主たる流れとなる。熱パッファ動作では、高温高圧化された絶縁ガスGの逆流が駆動源であるが、蓄圧室20に向かうその高温の絶縁ガスGと蓄圧室20から出た低温の絶縁ガスGとがパッファ室18にて混ざり合わないように、仕切壁部17によりパッファ室18が仕切られる。絶縁ガスGは、上記流路を順に押し出されて進む。したがって、第2噴出部27からは、低温の良質な絶縁ガスGが先行して消弧ガスとしてアークAに吹き付けられる。このように熱パッファ動作時においても、アークAの消弧性は高いものとなっている。
【0037】
なお、第2噴出部27に設けた絞り部29は、アークAにより高温高圧化された絶縁ガスGの第2噴出部27から連通通路28に向かう逆流を抑制している。換言すると、アークAにより高温高圧化された絶縁ガスGが第1噴出部25から導入されるように、第2噴出部27の絞り部29の出口側の開口面積は第1噴出部25の開口面積よりも小さい設定としている。また、この絞り部29はアークAに近い位置に設置されるため、絞り部29の周囲部材であるノズル23の本体部よりも低損耗の樹脂材又はセラミック材を用いることが好ましい。また、第1開口部19aに設けた絞り部21は、熱パッファ動作時の絶縁ガスGの主流とは逆方向である蓄圧室20から第1開口部19aに向かう逆流の抑制効果が期待できる。ただし、蓄圧室20から第1開口部19aに向かう逆流の発生が少ないようであれば、効果との兼ね合いで絞り部21を省略することもできる。
【0038】
上記したガス遮断器10の遮断動作過程のいずれかでアークAは消弧に至る。その時々の遮断電流の大きさによってアークAの消弧時期は異なる。遮断電流が小さいと、遮断動作過程の比較的早い時期にアークAが消弧する傾向にあり、遮断電流が大きくなるほど、遮断動作過程が比較的遅い時期にアークAが消弧する傾向にある。アークAの消弧に吹き付ける絶縁ガスGを低温に保つことが可能なため、ガス遮断器10の消弧性能のより確実な向上が期待できるものとなっている。
【0039】
本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態では、パッファ機構13の熱パッファ動作時において、仕切壁部17によるパッファ室18の仕切りが機能する。仕切壁部17の仕切りにより、第1噴出部25からパッファ室18の第1室18a、蓄圧室20、パッファ室18の第2室18b、第2噴出部27までの絶縁ガスGの流路が確立する。熱パッファ動作はアークAにより熱膨張する高温高圧の絶縁ガスGを駆動源として第1噴出部25から逆流により導入するが、導入された高温の絶縁ガスGがその先にあるパッファ室18及び蓄圧室20内の低温の絶縁ガスGを押し出しながら流路を進む。パッファ室18では仕切壁部17の仕切りにより、蓄圧室20に向かう高温の絶縁ガスGと蓄圧室20から出た低温の絶縁ガスGとの混ざり合いがより確実に抑制される。そのため、第2噴出部27から低温の良質な絶縁ガスGをより確実にアークAに噴出でき、アークAの消弧性を高めることができる。ガス遮断器10の消弧性能のより確実な向上が期待できる。
【0040】
(2)パッファ機構13を構成するシリンダ14に仕切壁部17が設けられるため、パッファ機構13の動作と連動して仕切壁部17の仕切りを機能させる構成を本実施形態のように容易に実現することができる。
【0041】
(3)仕切壁部17は、自身の先端部17aがピストン15の押圧面部15aの挿入隙間22に遮断動作の途中から挿入されて蓄圧室20内に突出する構成である。仕切壁部17の先端部17aがピストン15の押圧面部15aに到達することで、仕切壁部17によるパッファ室18の仕切りが機能する。換言すれば、仕切壁部17の先端部17aまでの軸方向長さL1を極力短くできるため、蓄圧室20への仕切壁部17の突出を小さくできる。つまり、蓄圧室20の大型化の抑制、ひいてはガス遮断器10の大型化の抑制に貢献することができる。
【0042】
(4)第2噴出部27の開口面積が第1噴出部25の開口面積よりも小さく設定されるため、熱パッファ動作に駆動源として第1噴出部25から導入する高温の絶縁ガスGを第2噴出部27側から導入されることを抑制することができる。熱パッファ動作の円滑な動作に貢献することができる。
【0043】
(5)第2噴出部27は自身の周囲のノズル23の本体部よりもアークAによる損耗が低損耗となるように構成すれば、例えば第2噴出部27の開口面積を第1噴出部25の開口面積よりも小さくする設定を長期にわたり維持できる等の効果が期待できる。
【0044】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第2噴出部27の設ける位置を適宜変更してもよい。
【0045】
・第2噴出部27においてノズル23の本体部に絞り部29を一体に組み込んで設けたが、例えば図5に示すようにノズル23の連通通路28の出口に絞り部28aを一体に形成してもよい。またこの場合、ノズル23の作製にあたり、例えば適量のセラミック充填剤を添加する等してノズル23自体を低損耗に構成するとなおよい。ノズル23に一体に形成した絞り部28aの開口形状が長期にわたり維持できる。
【0046】
・仕切部として仕切壁部17をシリンダ14に一体に形成したが、また仕切部を別で作製してシリンダ14等に組み付けてもよい。
・仕切壁部17の軸方向長さL1を図3の遮断動作中期でピストン15に到達する長さに設定したが、長さは適宜変更してもよい。仕切壁部17の軸方向長さを、例えば図2の遮断動作初期でピストン15に到達する長さとしてもよく、また図1の閉極状態でピストン15に到達する長さとしていてもよい。
【0047】
・第1開口部19aにおいて絞り部21を省略して構成してもよい。
・固定接点11と可動接点12とは1つずつであったが、固定接点と可動接点とのそれぞれに主接点とアーク接点とを備えるものであってもよい。
【0048】
・絶縁ガスGにSFガスやCOガス以外のガスを用いてもよい。
・上記以外でガス遮断器10の構成を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0049】
A…アーク
G…絶縁ガス
10…ガス遮断器
11…固定接点
12…可動接点
13…パッファ機構
14…シリンダ
15…ピストン
15a…押圧面部
17…仕切壁部(仕切部)
18…パッファ室
18a…第1室
18b…第2室
19a…第1開口部
19b…第2開口部
20…蓄圧室
22…挿入隙間
25…第1噴出部
27…第2噴出部
図1
図2
図3
図4
図5