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  • 特開-環境情報通信装置の取付構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014676
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】環境情報通信装置の取付構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20220113BHJP
   E02D 29/14 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
E02D29/12 Z
E02D29/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117158
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591147719
【氏名又は名称】中部精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博文
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正道
(72)【発明者】
【氏名】平田 恭也
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147BA00
2D147BB26
(57)【要約】
【課題】環境情報通信装置を取り付けるためにマンホール内において面倒で危険な事前の工事が要求されず、またマンホール内において梯子を使用する必要性が無く容易且つ極めて安全にマンホール内に環境情報通信装置を取り付けることができる新規な環境情報通信装置の取付構造を提供する。
【解決手段】水位データ通信装置(環境情報通信装置)本体2には、側面の全体形状がコ字状に成形された1又は複数の係止部材6が固定され、上記係止部材6が、マンホール本体10の上部に固定されたマンホール蓋用受枠12の内周に形成された把手14(又は把手13)に係止されてなる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール内の環境情報をセンサー又は接点スイッチその他の検出手段が先端に配置されたケーブルの基端が固定された環境情報通信装置を、該マンホール内に取り付ける環境情報通信装置の取付構造であって、
上記環境情報通信装置には、1又は複数の係止部材が固定され、
上記係止部材が、マンホール本体の上部に固定されたマンホール蓋用受枠の内周に形成された把手に係止されてなることを特徴とする環境情報通信装置の取付構造。
【請求項2】
マンホール内の環境情報をセンサー又は接点スイッチその他の検出手段が先端に配置されたケーブルの基端が固定された環境情報通信装置を、該マンホール内に取り付ける環境情報通信装置の取付構造であって、
上記環境情報通信装置には、1又は複数の係止部材が固定され、
上記係止部材が、マンホール本体の上部に固定されたマンホール蓋用受枠の内側に配置された梯子を構成する複数のステップの何れかに係止されてなることを特徴とする環境情報通信装置の取付構造。
【請求項3】
前記係止部材は、前記環境情報通信装置に直接的又は間接的に固定された固定板部と、この固定板部の上端からL字状又は円弧状に折曲され前記把手の上部に支持される被支持板部と、この被支持板部の先端から下方にL字状に折曲され又は円弧状に折曲され前記把手の内側に挿通される挿通板部と、を備えてなることを特徴とする請求項1又は2記載の何れかの環境情報通信装置の取付構造。
【請求項4】
前記係止部材を構成する固定板部の全部又は一部は、前記環境情報通信装置の背面又は該背面に固定された固定板に固定され、前記係止部材を構成する被支持板部は、上記固定板部の上端からL字状に折曲され、前記係止部材を構成する挿通板部は、上記被支持板部の先端からL字状に折曲され上記固定板部と平行とされてなるとともに、該挿通板部の長さは、マンホール蓋の下面近傍まで水位が上昇して該環境情報通信装置が浮遊し上記被支持板部と挿通板部との間に形成された角部が該マンホール蓋の下面に当接した際において、上記角部から把手までの距離よりも長尺とされ、又は、該挿通板部の長さは、マンホール蓋が閉塞された状態における前記梯子を構成するステップから該マンホール蓋までの距離よりも長尺とされてなることを特徴とする請求項3記載の環境情報通信装置の取付構造。
【請求項5】
前記環境情報通信装置には、先端側が前記把手に係止され又は巻き付けられて固定される線状体の基端が固定され、この線状体の長さは、該把手近傍から該環境情報通信装置を地上にまで搬出し得る長さとされてなることを特徴とする請求項1又は3若しくは4記載の何れかのマンホール内の環境情報通信装置の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール内における水位、ph、温度その他該マンホール内の環境情報を検出するセンサー又は接点スイッチその他の検出手段に接続され、該検出手段により検出された検出情報を外部に送信するとともに外部からの制御信号その他の情報を受信する環境情報通信装置をマンホール内に取り付けるために使用される環境情報通信装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで道路の地下に埋められた下水道管渠には、清掃又は修理等を行う際における作業者の出入口として、マンホールが配置されている。このマンホールは、コンクリート等により略筒状に成形されたマンホール本体と、このマンホール本体の上端側に固定された受枠と、この受枠に対して着脱自在で且つ開閉自在に取り付けられたマンホール蓋とから概ね構成されている。
【0003】
ところで、上記下水道管渠やこれに連通したマンホール内の環境は、季節や天候状態により刻々と変化する。例えば、台風や集中豪雨等の発生により該下水道管渠内を流れる下水の水位は変化し、また、上記下水のph、マンホール内の温度等も上記天候状態の変化ばかりではなく、地震等の地殻変動や火山活動等によっても変化し、場合によっては、工場からの廃液の不法投棄によっても変化する。すなわち、こうした天候や地殻変動等を起因とした自然環境の変化や不法投棄等は、上記下水道管渠内を流れる下水の水量、水位その他種々の状態の変化として顕在化される場合が多い。そして、こうした下水の変化の状態を把握・分析等することにより、自然災害の発生を未然に防止することができたり、違法状態を早期に停止させたりすることができる。そこで、これまで下水を管理する管理者は、こうした下水の水位その他マンホール内における環境情報をセンサー等の検出手段をマンホール内に配置し、この検出手段により検出された検出情報(検出データ)を、上記マンホールに取り付けた通信装置を介して外部に送信等している。例えば、上記下水の水位を検出する水位センサーにケーブルを介して接続された水位データ通信装置は、良好な通信状態を確保することを目的として上記マンホール本体の上端側の内周に取り付けられている。ここで、これまでの水位データ通信装置の取付構造の一例を具体的に説明すると、該取付構造は、上記マンホール本体の内周にアンカーボルトを介して固定レールを固定し、この固定レールに上記水位データ通信装置を固定するものである(以下、こうした取付構造を第1の取付構造と言う。)。また、他の取付構造は、上記水位データ通信装置に係止片を固定し、この係止片を上記マンホール本体の内周において上下方向に並んで固定された足場(ステップ)に係止するものである(特許文献1参照/以下、こうした取付構造を第2の取付構造と言う。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-249453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記第1の取付構造では、先ず、上記マンホール本体の内周面に対して、上記アンカーボルトを固定する穴を、ハンマードリル等の工具を用いて複数開設する必要性がある。こうした第1の取付構造では、マンホール本体の深さ(全長)が長い場合には、該マンホール本体内に梯子を設置し、この梯子に作業者が乗って上記作業を行うこととなるので、作業者が梯子から転落する危険性も否めない。さらに、上記水位データ通信装置は、随時点検が必要となるとともに、電池を電源として駆動するものが多く、電池の消耗により適宜電池の交換作業等の各種のメンテナンス作業が発生するところ、こうしたメンテナンス作業においても、上記梯子を利用する等してマンホール本体内に作業者が入る必要性があり、作業者の転落も危惧される極めて面倒な作業であるとともに、マンホール内において作業者が酸欠状態に陥る可能性も憂慮される。
【0006】
他方、上記第2の取付構造では、マンホール本体の内周に上記足場(ステップ)が固定されていない場合には、上記水位データ通信装置を取り付けることは不可能であり、仮に該足場(ステップ)が固定されている場合であっても、最も上方に固定された足場が地上から相当程度離れている場合には、梯子を使用する必要性があり、上記第1の取付構造と同じ問題点を有している。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来の水位データ通信装置等の環境情報通信装置の取付構造が有する課題を解決するために提案されたものであって、該環境情報通信装置を取り付けるためにマンホール内において面倒で危険な事前の工事・作業が要求されず、またマンホール内において梯子を使用する必要性が無く容易且つ極めて安全にマンホール内に環境情報通信装置を取り付けることができる新規な環境情報通信装置の取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、マンホール内の環境情報をセンサー又は接点スイッチその他の検出手段が先端に配置されたケーブルの基端が固定された環境情報通信装置を、該マンホール内に取り付ける環境情報通信装置の取付構造であって、上記環境情報通信装置には、1又は複数の係止部材が固定され、上記係止部材が、マンホール本体の上部に固定されたマンホール蓋用受枠の内周に形成された把手に係止されてなることを特徴とするものである。
【0009】
この第1の発明に係る環境情報通信装置の取付構造では、上記環境情報通信装置に固定された係止部材が上記マンホール蓋用受枠の内周に形成された把手に係止されたものである。この把手は、マンホール内で作業をする作業者の足又は手を掛けるために使用される部位であり、この発明ではこうした把手を利用して環境情報通信装置を取り付けるものである。そして、上記係止部材は、少なくとも上記把手に係止することができるものであれば良く、例えば、側面の全体形状がコ字状に成形されてなるものである場合の他、一部又は全体が円弧状に成形されたものであっても良い(請求項3参照)。
【0010】
したがって、この第1の発明に係る環境情報通信装置の取付構造によれば、作業者はマンホール蓋を回動操作(開蓋操作)することにより上記マンホール蓋用受枠の開口を開放することにより、地上から上記把手に対して環境情報通信装置を容易に取り付けることができ、従来のように、マンホール本体にアンカーボルトを固定するという面倒で危険な作業は不要となるばかりか、該環境情報通信装置に内蔵される電池を交換する等のメンテナンス作業も、マンホール内に梯子を設置する必要性もなく、極めて安全且つ容易に行うことができる。
【0011】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、マンホール内の環境情報をセンサー又は接点スイッチその他の検出手段が先端に配置されたケーブルの基端が固定された環境情報通信装置を、該マンホール内に取り付ける環境情報通信装置の取付構造であって、上記環境情報通信装置には、1又は複数の係止部材が固定され、上記係止部材が、マンホール本体の上部に固定されたマンホール蓋用受枠の内側に配置された梯子を構成する複数のステップの何れかに係止されてなることを特徴とするものである。
【0012】
この第2の発明に係る環境情報通信装置の取付構造は、上記第1の発明とは異なり、上記係止部材が、マンホール本体の上部に固定されたマンホール蓋用受枠の内側に配置された梯子を構成する複数のステップの何れかに係止されたものである。
【0013】
こうした第2の発明に係る環境情報通信装置の取付構造であっても、上記第1の発明と同じ作用効果を奏することができる。
【0014】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の発明の何れかにおいて、前記係止部材は、前記環境情報通信装置に直接的又は間接的に固定されてなる固定板部と、この固定板部の上端からL字状又は円弧状に折曲され前記把手の上部に支持される被支持板部と、この被支持板部の先端から下方にL字状に折曲され又は円弧状に折曲され前記把手の内側に挿通される挿通板部と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0015】
この第3の発明は、前記係止部材の形状を限定したものであり、固定板部、被支持板部及び挿通板部を備えてなるものである。そして、この第3の発明では、前記係止部材は、前記環境情報通信装置に直接的又は間接的に固定されてなる固定板部と、この固定板部の上端からL字状に折曲され前記把手の上部に支持される被支持板部と、この被支持板部の先端から下方にL字状に折曲され前記把手の内側に挿通される挿通板部と、を備えてなるもの、すなわち、側面の全体形状がコ字状に成形されたものを含む。また、この第3の発明には、前記係止部材は、前記環境情報通信装置に直接的又は間接的に固定されてなる固定板部と、この固定板部の上端から円弧状に折曲され前記把手の上部に支持される被支持板部と、この被支持板部の先端から下方に円弧状に折曲され前記把手の内側に挿通される挿通板部と、を備えてなるものも含まれる。
【0016】
上記形状に成形された係止部材は、側面の全体形状が略コ字状に成形され、固定板部と挿通板部との間には所定の空間が形成されていることから、作業者は地上から上記把手に対して環境情報通信装置を一層容易に取り付けることができる。
【0017】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第3の発明において、前記係止部材を構成する固定板部の全部又は一部は、前記環境情報通信装置の背面又は該背面に固定された固定板に固定され、前記係止部材を構成する被支持板部は、上記固定板部の上端からL字状に折曲され、前記係止部材を構成する挿通板部は、上記被支持板部の先端からL字状に折曲され上記固定板部と平行とされてなるとともに、該挿通板部の長さは、マンホール蓋の下面近傍まで水位が上昇して該環境情報通信装置が浮遊し上記被支持板部と挿通板部との間に形成された角部が該マンホール蓋の下面に当接した際において、上記角部から把手までの距離よりも長尺とされ、又は、該挿通板部の長さは、前記マンホール蓋が閉塞された状態における前記梯子を構成するステップから該マンホール蓋までの距離よりも長尺とされてなることを特徴とするものである。
【0018】
この第4の発明に係る環境情報通信装置の取付構造は、先ず、上記係止部材の形状を限定したものである。すなわち、この係止部材は、前記係止部材を構成する固定板部の中途部から下端側は、前記環境情報通信装置の背面又は該背面に固定された固定板に固定され、前記係止部材を構成する被支持板部は、上記固定板部の上端からL字状に折曲され、前記係止部材を構成する挿通板部は、上記被支持板部の先端からL字状に折曲され上記固定板部と平行とされている。そして、上記挿通板部の長さは、マンホール蓋の下面近傍まで水位が上昇して該環境情報通信装置が浮遊し上記被支持板部と挿通板部との間に形成された角部が該マンホール蓋の下面に当接した際において、上記角部から把手までの距離よりも長尺とされている(以下、前者の発明と言う。)か、或いは、該挿通板部の長さは、前記マンホール蓋が閉塞された状態における前記梯子を構成するステップから該マンホール蓋までの距離よりも長尺とされている(以下、後者の発明と言う。)。
【0019】
そして、マンホール内の水位がマンホール蓋近傍にまで上昇し、上記環境情報通信装置が浮遊するとともに、該環境情報通信装置が、上記受枠の内周に形成された把手若しくは上記梯子を構成するステップを中心に回動された場合、前者の発明では、必ず上記係止部材を構成する挿通板部の中途部は把手に当接し、また後者の発明では、該挿通板部の中途部は上記梯子を構成するステップに当接し、それ以上回動されることがなく、ひいてはそれまで上記把手やステップに係止されていた環境情報通信装置が把手又はステップから脱落することを有効に防止することができる。
【0020】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第1の発明又は第3の発明若しくは第4の発明の何れかにおいて、前記環境情報通信装置には、先端側が前記把手に係止され又は巻き付けられて固定される線状体の基端が固定され、この線状体の長さは、該把手近傍から該環境情報通信装置を地上にまで搬出し得る長さとされてなることを特徴とするものである。
【0021】
この第5の発明に係る環境情報通信装置の取付構造では、上記環境情報通信装置には線状体の基端が固定されている。この線状体は、先端側が前記ステップ又は把手に係止され又は巻き付けられて固定されるものである。また、この線状体の長さは、該把手近傍から上記環境情報通信装置を地上にまで搬出し得る長さとされている。
【0022】
したがって、この第5の発明に係る環境情報通信装置の取付構造によれば、環境情報通信装置に内蔵された電池を交換する等のメンテナンス作業の際において、上記把手から取り外した後や電池の交換が終了し再び該把手に取り付けるとき、誤って作業者がこの環境情報通信装置を手指から落下させてしまったとしても、上記線状体により吊り下げられた状態となり、紛失する危険性を有効に防止することができる。また、上記線状体の長さは、該把手近傍から上記環境情報通信装置を地上にまで搬出し得る長さとされていることから、この線状体を上記把手から取り外す必要性は無く、作業者は地上において上記メンテナンス作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)や第2の発明(請求項2記載の発明)に係る環境情報通信装置の取付構造によれば、作業者はマンホール蓋を回動操作(開蓋操作)することにより上記マンホール蓋用受枠の開口を開放することにより、地上から上記把手又は梯子を構成するステップに対して環境情報通信装置を容易に取り付けることができ、従来のように、マンホール本体にアンカーボルトを固定するという面倒で危険な作業は不要となるばかりか、該環境情報通信装置に内蔵される電池を交換する等のメンテナンス作業も、マンホール内に梯子を設置する必要性もなく、極めて安全且つ容易に行うことができる。
【0024】
また、上記第3の発明(請求項3記載の発明)に係る環境情報通信装置の取付構造では、上記係止部材は、側面の全体形状が略コ字状に成形され、固定板部と挿通板部との間には所定の空間が形成されていることから、作業者は地上から上記把手に対して環境情報通信装置を一層容易に取り付けることができる。
【0025】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)に係る環境情報通信装置の取付構造によれば、マンホール内の水位がマンホール蓋近傍にまで上昇し、上記環境情報通信装置が浮遊するとともに、該環境情報通信装置が、上記受枠の内周に形成された把手若しくは上記梯子を構成するステップを中心に回動された場合、必ず上記係止部材を構成する挿通板部の下端角部は、マンホール蓋用受枠の内周に当接し、それ以上回動されることがなく、ひいてはそれまで上記把手やステップに係止されていた環境情報通信装置が把手又はステップから脱落することを有効に防止することができる。
【0026】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)に係る環境情報通信装置の取付構造によれば、環境情報通信装置に内蔵された電池を交換する等のメンテナンス作業の際において、上記把手から取り外した後や電池の交換が終了し再び該把手に取り付けるとき、誤って作業者がこの環境情報通信装置を手指から落下させてしまったとしても、上記線状体により吊り下げられた状態となり、紛失する危険性を有効に防止することができ、また、上記線状体を上記把手から取り外すことなく、作業者は地上において上記電池の交換等のメンテナンス作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係る水位データ通信装置の構成を示す斜視図である。
図2】水位データ通信装置がマンホール蓋用受枠の把手に係止された状態を示す斜視図である。
図3】水により水位データ通信装置が浮上しやや回転した状態を示す側面図である。
図4】水位データ通信装置が梯子に係止された状態を示す平面図である。
図5図4に示す状態から梯子が起立された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態は、下水道管渠を流れる下水の水位に関する水位データを外部に送信等する水位データ通信装置の取付構造に本発明を適用したものである。すなわち、この水位データ通信装置は、環境情報通信装置の一種(下位概念)であり、以下は、該水位データ通信装置の取付構造を具体的に説明するものである。
【0029】
先ず、この実施の形態に係る水位データ通信装置1の構成について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、この水位データ通信装置(以下、通信端末と言う。)1は、通信端末本体2と、この通信端末本体2に基端が取り付けられ先端にはセンサー3が固定されているケーブル4と、上記通信端末2の背面に固定された固定板5と、この固定板5の背面に固定された一方及び他方の係止部材6と、上記通信端末2に基端が固定されたワイヤー7と、を備えている。
【0030】
上記通信端末2は、図示しない回路基板に中央演算処理装置、ROM、RAM等の各種のメモリー、送受信装置等の各種デバイスが内蔵されているとともに、これらのデバイスを駆動する駆動電源としての電池が収納され、この電池は交換可能とされている。また、上記センサー3は、マンホール内又はマンホールの下端に連通した下水道暗渠内を流れる下水の水位を音波や圧力等により検出するものであり、本発明を構成する検出手段である。このセンサー3によりセンシングされた信号は上記ケーブル4を介して上記通信端末2に入力され、上記中央演算処理装置により上記送受信装置を介して外部に送信等される。
【0031】
そして、上記固定板5はステンレススチールその他の金属材料又は樹脂材料により方形状に成形された板体であり、ネジ又は接着剤等により上記通信端末2の筐体の背面に固定されている。また、上記一方及び他方の係止部材6は、それぞれステンレススチールその他の金属材料又は樹脂材料からなるものであるとともに、全体の側面形状は、下方が開放されたコ字状に成形されてなるものであり、上記固定板5の背面に固定された固定板部6aと、この固定板部6aの上端からL字状に折曲されてなる被支持板部6bと、この被支持板部6bの先端から下方にL字状に折曲され、背面は上記固定板部6aに面対向してなる挿通板部6cとから構成されている。そして、上記挿通板部6cは上記固定板部6aの長さと同等以上に長いものとされ、該固定板部6aと挿通板部6cとの長さの比は、1:1~1:4程度とされている。また、この実施の形態に係る係止部材6は、後述するマンホール蓋用受枠12の内周に並んで形成された一方又は他方の把手13,14に上記被支持板部6bが支持・係止されるものであり、上記挿通板部6cの長さ(上記被支持板部6bと該挿通板部6cとの間に形成された角部から該挿通板部6cの端部までの長さ)は、後述するように、マンホール蓋15の下面近傍まで水位が上昇して上記通信端末2が浮遊し上記被支持板部6bと挿通板部6cとの間に形成された角部が該マンホール蓋15の下面に当接した際において、上記角部から一方又は他方の把手13,14までの距離よりも長尺とされている(図3参照)。
【0032】
また、上記ワイヤー7は、本発明を構成する線状体である。そして、このワイヤー7は、上記通信端末(の筐体)2に基端が固定されてなるものであり、本実施の形態においては、先端にフック8が取り付けられている。また、上記ワイヤー7の全長は、上記一方又は他方の把手13,14からマンホール蓋用受枠12の外周側までの距離よりも若干長い長さとされている。換言すれば、後述するように、上記係止部材6により上記一方又は他方の把手13,14に係止された通信端末2を取り外し、地上において電池を交換する等のメンテナンス作業を行い得る長さとされている。
【0033】
また、上記マンホール蓋用受枠12は、図2又は図3に示すように、コンクリートにより筒状に成形されたマンホール本体10の上部に固定されるものであるとともに、マンホール蓋15を支持するものであって、鋳鉄により略円筒状に成形された枠部12aと、この枠部12aの下端から外周方向に幅を有するフランジ部12bと、を備えている。また、この枠部12aの内周には、マンホール蓋を開閉する際に使用される図示しない蝶番の一部が挿通される枠部12cが形成され、この枠部12cの左側には一方の把手13が形成され、該枠部12cの右側には他方の把手14が形成されている。これら一方及び他方の把手13,14は、それぞれ作業者がこのマンホール本体10内で作業する際に手を掛ける部位である。
【0034】
そして、図2及び図3は、それぞれ上記通信端末2が上記マンホール蓋用受枠12に形成された他方の把手14に係止された状態を示す斜視図であり、上記それぞれ係止部材6の被支持板部6bの下面が該他方の把手14に当接・支持されている。また、上記ワイヤー7の先端側中途部は、上記一方の把手13に一部巻回され上記フック8がワイヤー7の中途部に係止されている。
【0035】
したがって、上述した実施の形態で説明した通信端末(水位データ通信装置)2の取付構造によれば、上記係止部材6を上記他方の把手14に係止する作業は、地上からでも簡単に行うことができ、従来のように、該通信端末2を係止するレールを固定する際に図示しないレールをマンホール本体10内に設置する必要性はないとともに、該マンホール本体10内において危険で面倒な作業は一切不要となる。また、一旦係止した通信端末2を上記他方の把手14から取り外して電池を交換する等のメンテナンス作業の際には、やはり作業者はマンホール本体10内に入ることなく地上においてその作業が可能であるとともに、こうしたメンテナンス作業中に誤って手元から落下させてしまった場合であっても、この通信端末2は別途上記ワイヤー7やフック8を介して上記一方の把手13に連結されていることから、マンホール本体10内に水没する危険性も回避することができる。
【0036】
他方、上記マンホール本体10内に水が充満し、上記通信端末本体2が浮上した場合には、図3に示すように、上記係止部材6を構成する被支持板部6bと挿通板部6cとの間の角部がマンホール蓋15の下面に当接し、また該挿通板部6cの長さは、先に記載した長さとされていることから、上記他方の把手14に係止した場合には、該他方の把手14を中心に通信端末2が回動した場合であっても、必ず上記挿通板部6cの中途部は他方の把手14に当接し、該他方の把手14から脱落することを防止でき、さらに該他方の把手14から脱落した場合においても上記ワイヤー7の先端は上記一方の把手13に係止されていることから、マンホール内の水位が低下しても通信端末2が紛失されることはない。
【0037】
なお、上述した実施の形態は、上記係止部材6を介して通信端末2を他方の把手14に係止した例であり、上記一方の把手13に係止しても良いばかりではなく、マンホール蓋用受枠12の種類によっては、図4に示すように、梯子22が配置されているものがあり、こうした場合には、該梯子22を構成する複数のステップ23の内の何れかに、上記係止部材6を係止させるとともに、上記ワイヤー7の先端側を他のステップ23に係止させても良い。すなわち、この場合における上記挿通板部の長さは、前記マンホール蓋15によりマンホール蓋用受枠12が閉塞された状態における前記梯子22を構成するステップ23から該マンホール蓋15までの距離よりも長尺とされている。
【0038】
こうした梯子22のステップ23に係止部材6を係止した構成に係る通信端末本体2の取付構造(水位データ通信装置の取付構造)による場合であっても、先に説明した取付構造と同じ作用効果を奏する。特に、この梯子22を利用した構成に係る通信端末本体2の取付構造による場合には、図5に示すように、上記マンホール蓋15を回動(開蓋)し、それまでマンホール蓋用受枠12内に水平に配置された梯子22を起立操作することにより、上記通信端末本体2も上昇し、地上よりもやや上方に移動することから、作業者が該通信端末本体2を上記ステップ23から取り外す作業はより一層容易なものとなり、先に説明した電池の交換作業その他のメンテナンス作業は、マンホール蓋用受枠12上ではなく、そこから離れた地上においてその作業を行うことが可能となる。
【0039】
なお、上記実施の形態は、冒頭で説明したように、下水道管渠を流れる下水の水位に関する水位データを外部に送信等する水位データ通信装置の取付構造に本発明を適用したものであるが、他のセンサー又は接点スイッチ等の検出手段により、上記マンホール内において、下水のph、マンホール内の温度等の環境情報を検出し、この検出情報を外部に送信等するph情報通信装置や温度情報通信装置等に適用したものであっても良い。また、上記実施の形態の説明では、本発明を構成する線状体としてワイヤー7を使用したが、本発明は、こうしたワイヤー7に限定されるものではなく、例えば紐や綱等の他の線状体であっても良い。また、上記実施の形態においては、本発明を構成する係止部材6を、上記通信端末2の背面に固定された固定板5の背面に固定されたものを図示して説明したが、本発明を構成する係止部材6の固定板部6aは、上記通信端末2の背面に直接固定したものであっても良い。また、上記係止部材6を構成する被支持板部6bは、上記固定板部6aの上端からL字状に折曲されているものばかりではなく、該固定板部6aの上端から円弧状に湾曲してなり、上記挿通板部6cは、この湾曲した被支持板部6bの先端から垂下し固定板部6aと対向してなるものであっても良い。さらに上記被支持板部6bから挿通板部6cは、全体と円弧状に湾曲してなるものであっても良い。またさらに、上述した係止部材6を構成する挿通板部6cの下端には、先端が上記固定板部6a又は通信端末本体2の背面に接近した図示しない折り返し板部が形成されたものであっても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 水位データ通信装置(通信端末)
2 通信端末本体
3 センサー
4 ケーブル
6 係止部材
6a 固定板部
6b 被支持板部
6c 挿通板部
7 ワイヤー
10 マンホール本体
12 マンホール蓋用受枠
13 一方の把手
14 他方の把手
22 梯子
23 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5