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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146761
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】電子部品ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/02 20060101AFI20220928BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20220928BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20220928BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20220928BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01F27/02 N
H01F37/00 G
H01F37/00 S
H01F37/00 T
H01F27/08 101
H01F27/06 101
H01F27/02 150
H01F27/28 176
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047894
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】和藤 勇太
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 勝也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 仁
(72)【発明者】
【氏名】白石 和洋
(72)【発明者】
【氏名】平野 真彦
(72)【発明者】
【氏名】多田 佳史
【テーマコード(参考)】
5E043
5E059
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AA01
5E043AB01
5E043DA01
5E059BB23
5E059LL13
5E059LL18
5E070AA01
5E070AB02
5E070BA14
5E070DA02
5E070DA18
5E070DB02
5E070DB04
(57)【要約】
【課題】コイルの熱をハウジングに伝導させやすくすること。
【解決手段】電子部品ユニット30は、基板31と、コモンモードチョークコイル41と、樹脂ホルダ61と、を備える。コモンモードチョークコイル41は、コア42と、2つの巻線51,52と、を備える。2つの巻線51,52は、それぞれ、巻線端部55を備える。コモンモードチョークコイル41は、樹脂ホルダ61に固定されている。樹脂ホルダ61は、当接壁67と、周壁71と、を備える。当接壁67は、壁部62と、当接部91,92と、を備える。当接部91,92は、基板31に当接する。周壁71は、視認用スリット84を備える。視認用スリット84は、周壁端部76から当接壁67側に向かって形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に実装され、巻線を備えるコイルと、
前記コイルが固定された樹脂ホルダと、を備え、
ハウジングの冷却面と前記基板の実装面との間に前記コイル及び前記樹脂ホルダが位置するとともに、前記巻線の前記冷却面に向かい合う巻線端部と前記冷却面との間に熱伝導部材が介在するように前記ハウジングに収容される電子部品ユニットであって、
前記樹脂ホルダは、
前記基板に当接して前記基板に対する位置を規定する当接壁と、
前記当接壁から前記冷却面に向かって延在して、前記コイルを覆う筒状の周壁と、を備え、
前記周壁は、
前記周壁の前記冷却面に向かい合う周壁端部から前記当接壁側に向かって形成され、前記巻線端部の位置を確認する視認用スリットを備える電子部品ユニット。
【請求項2】
前記冷却面から前記巻線端部までの最短距離が、前記冷却面から前記周壁端部までの最短距離以上、かつ、前記冷却面から前記視認用スリットの前記当接壁側の端部までの最短距離以下となるように前記視認用スリットによって前記コイルは前記樹脂ホルダ内に配置されている請求項1に記載の電子部品ユニット。
【請求項3】
前記コイルは、前記巻線の巻回軸方向に前記周壁が位置するように配置されており、
前記視認用スリットは、前記巻回軸方向の両側から前記巻線を挟むように設けられている請求項1又は請求項2に記載の電子部品ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の電子部品ユニットは、コイルと、ホルダと、を備える。コイルは、巻線を備える。ホルダは、コイルを収容している。ホルダには、熱伝導部材が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-114359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルは巻線への通電により発熱する。コイルの放熱のため、電子部品ユニットを収容するハウジングにコイルが発した熱を伝導させる場合がある。この場合、巻線とハウジングとの間に熱伝導部材を設けて、熱伝導部材を介して巻線からハウジングに熱を伝導させる。巻線とハウジングとの離間距離が長いと、コイルの熱をハウジングに伝導させにくくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電子部品ユニットは、基板と、前記基板に実装され、巻線を備えるコイルと、前記コイルが固定された樹脂ホルダと、を備え、ハウジングの冷却面と前記基板の実装面との間に前記コイル及び前記樹脂ホルダが位置するとともに、前記巻線の前記冷却面に向かい合う巻線端部と前記冷却面との間に熱伝導部材が介在するように前記ハウジングに収容される電子部品ユニットであって、前記樹脂ホルダは、前記基板に当接して前記基板に対する位置を規定する当接壁と、前記当接壁から前記冷却面に向かって延在して、前記コイルを覆う筒状の周壁と、を備え、前記周壁は、前記周壁の前記冷却面に向かい合う周壁端部から前記当接壁側に向かって形成され、前記巻線端部の位置を確認する視認用スリットを備える。
【0006】
視認用スリットを介して人が巻線端部の位置を確認することができる。これにより、巻線端部が冷却面から過剰に離れる電子部品ユニットを除外することができる。巻線端部が冷却面から過剰に離れることを抑制することができる。従って、コイルの熱をハウジングに伝導させやすくなる。
【0007】
上記電子部品ユニットについて、前記冷却面から前記巻線端部までの最短距離が、前記冷却面から前記周壁端部までの最短距離以上、かつ、前記冷却面から前記視認用スリットの前記当接壁側の端部までの最短距離以下となるように前記視認用スリットによって前記コイルは前記樹脂ホルダ内に配置されていてもよい。
【0008】
視認用スリットによって、冷却面から巻線端部までの最短距離が視認用スリットの範囲内になるようにコイルの位置を規定することができる。巻線端部が冷却面に過剰に近くなることを抑制できる。巻線端部が冷却面から過剰に離れることを抑制できる。
【0009】
上記電子部品ユニットについて、前記コイルは、前記巻線の巻回軸方向に前記周壁が位置するように配置されており、前記視認用スリットは、前記巻回軸方向の両側から前記巻線を挟むように設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コイルの熱をハウジングに伝導させやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電動圧縮機の断面図。
図2】電子部品ユニットの分解斜視図。
図3】ハウジングに収容された状態の電子部品ユニットを示す断面図。
図4】コモンモードチョークコイルを収容した樹脂ホルダの周壁端部を周壁の軸線方向から見た図。
図5】高さ方向の巻線端部の位置が視認用スリットの範囲内である場合に、周壁の軸線方向に直交する方向から視認用スリットを見た図。
図6】高さ方向の巻線端部の位置が視認用スリットの範囲外である場合に、周壁の軸線方向に直交する方向から視認用スリットを見た図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、電子部品ユニットの一実施形態について説明する。
図1に示すように、電動圧縮機10は、圧縮部11と、電動モータ12と、インバータ13と、ハウジング20と、電子部品ユニット30と、ネジ102と、熱伝導部材110と、を備える。圧縮部11は、流体を圧縮する。圧縮部11としては、例えば、スクロール式、ベーン式、及びピストン式のものを挙げることができる。電動モータ12は、圧縮部11を駆動させる。インバータ13は、直流電力を交流電力に変換して電動モータ12に供給する。
【0013】
ハウジング20は、第1ハウジング21と、第2ハウジング26と、ボス28と、を備える。
第1ハウジング21は、金属製である。第1ハウジング21は、例えば、アルミニウム合金製である。第1ハウジング21は、樹脂製であってもよい。第1ハウジング21は、モータ収容室A1を区画している。モータ収容室A1には、電動モータ12が収容されている。圧縮部11は、モータ収容室A1に収容されていてもよいし、モータ収容室A1とは異なる領域に収容されていてもよい。第1ハウジング21は、第1ハウジング壁部22を備える。第1ハウジング壁部22は、板状である。第1ハウジング壁部22は、第1面23と、第2面24と、を備える。第1面23と第2面24とは、第1ハウジング壁部22の厚み方向に互いに反対となる面である。第1ハウジング壁部22の第1面23は、モータ収容室A1を区画している面の1つである。
【0014】
第2ハウジング26は、金属製である。第2ハウジング26は、例えば、アルミニウム合金製である。第2ハウジング26は、樹脂製であってもよい。第2ハウジング26は、第1ハウジング壁部22の第2面24に向かい合う状態で、第1ハウジング21に固定されている。第2ハウジング26は、ボルトによって第1ハウジング21に固定されていてもよいし、溶接によって第1ハウジング21に固定されていてもよい。即ち、第2ハウジング26は、第1ハウジング21に固定できれば、どのように固定されていてもよい。第2ハウジング26は、第2ハウジング26と第1ハウジング壁部22の第2面24に囲まれる領域に電子部品収容室A2を区画している。第1ハウジング壁部22の第2面24は、電子部品収容室A2を区画している面の1つである。電子部品収容室A2には、電子部品ユニット30が収容されている。電子部品ユニット30は、ハウジング20に収容されているといえる。
【0015】
ボス28は、電子部品収容室A2に設けられている。本実施形態において、ボス28は、第1ハウジング21と一体に設けられている。ボス28は、第2面24から第1ハウジング壁部22の厚み方向に延びている。ボス28は、複数設けられている。
【0016】
図2及び図3に示すように、電子部品ユニット30は、基板31と、コイルとしてのコモンモードチョークコイル41と、樹脂ホルダ61と、接着剤100と、導電接合材101と、を備える。
【0017】
図2に示すように、基板31は、第1基板面32と、第2基板面33と、貫通孔画定面34と、貫通孔35と、を備える。第1基板面32と第2基板面33とは、基板31の厚み方向に互いに反対となる面である。貫通孔画定面34は、4つ設けられている。貫通孔画定面34は、第1基板面32と第2基板面33との間で延在する環状の面である。貫通孔画定面34は、貫通孔35を画定している。貫通孔35は、基板31を厚み方向に貫通している。貫通孔35は、基板31にコモンモードチョークコイル41を実装するための孔である。本実施形態において、基板31には、インバータ13が実装されている。コモンモードチョークコイル41は、フィルタの一部を構成している。コモンモードチョークコイル41及びインバータ13は、第1基板面32に実装されている。従って、本実施形態において、第1基板面32が実装面である。実装面とは、コモンモードチョークコイル41が実装される面である。本実施形態のフィルタは、インバータ13に入力されるノイズを低減するものである。フィルタは、例えば、コモンモードチョークコイル41と、コンデンサと、を備える。
【0018】
コモンモードチョークコイル41は、コア42と、2つの巻線51,52と、を備える。
コア42は、環状である。環状には、円形、楕円形、及び、丸い角を有する多角形が含まれるが、これらに限定されない。本実施形態のコア42は、円形である。コア42は、第1端面43と、第2端面44と、を備える。第1端面43と、第2端面44とは、コア42の軸線方向に互いに反対となる面である。
【0019】
2つの巻線51,52は、コア42に巻回されている。2つの巻線51,52は、互いに離れている。2つの巻線51,52は、それぞれ、巻回部53と、端子部54と、を備える。巻回部53は、コア42に巻回されている部分である。本実施形態において、巻回部53の巻き数は、2である。端子部54は、巻回部53の両端に設けられている。端子部54は、2つの巻線51,52毎に、2つ設けられているといえる。端子部54は、コア42から離れる方向に延びている。本実施形態において、全ての端子部54は、コア42の軸線方向のうち第2端面44から第1端面43に向かう方向に延びている。端子部54は、基板31に接合される部分である。
【0020】
図4に示すように、2つの巻線51,52は、それぞれ、巻線端部55,56を備える。巻線端部55,56は、巻回部53の一部であってコア42の第2端面44に沿う部分である。巻回部53の巻き数が多いほど、コア42の第2端面44に沿う部分、即ち、巻線端部55,56は多くなる。本実施形態では、巻回部53の巻き数が2であり、巻回部53の2箇所が第2端面44に沿って設けられている。従って、2つの巻線51,52は、それぞれ、2つの巻線端部55,56を備える。2つの巻線端部55,56は、巻線51,52の巻回軸方向に互いに離間している。巻線51,52の巻回軸方向は、巻回部53の中心軸が延びる方向ともいえる。巻線端部55,56は、コア42の軸線方向のうち第1端面43から第2端面44に向かう方向に最も端子部54から離間した部分ともいえる。適宜、巻線51,52の1つを第1巻線51、巻線51,52のうち第1巻線51とは異なる巻線52を第2巻線52と称する。適宜、巻線端部55,56の1つを第1巻線端部55、巻線端部55,56のうち第1巻線端部55とは異なる巻線端部56を第2巻線端部56と称する。
【0021】
図2及び図3に示すように、樹脂ホルダ61は、樹脂製である。樹脂ホルダ61は、当接壁67と、周壁71と、を備える。当接壁67は、壁部62と、当接部91,92と、を備える。
【0022】
壁部62は、板状である。本実施形態において、壁部62は、四角板状である。壁部62は、第1壁面63と、第2壁面64と、端子孔画定面65と、端子孔66と、を備える。第1壁面63と第2壁面64とは、壁部62の厚み方向に互いに反対となる面である。端子孔画定面65は、貫通孔画定面34と同数設けられる。本実施形態において、壁部62は、4つの端子孔画定面65を備える。端子孔画定面65は、第1壁面63と第2壁面64との間で延在する面である。端子孔画定面65は、端子孔66を画定している。端子孔66は、端子部54が挿入される孔である。4つの端子孔66同士の間隔と、4つの貫通孔35同士の間隔とは互いに同一である。なお、本実施形態において、「同一」及び「一致」とは、公差を許容するものである。
【0023】
図3及び図4に示すように、周壁71は、筒状である。本実施形態において、周壁71は、四角筒状である。周壁71は、壁部62から壁部62の厚み方向に延在している。詳細にいえば、周壁71は、壁部62の厚み方向のうち第2壁面64から第1壁面63に向かう方向に延在している。延在とは、延びるように存在することを意味する。周壁71は、第1樹脂壁部72と、第2樹脂壁部73と、第3樹脂壁部74と、第4樹脂壁部75と、を備える。第1樹脂壁部72、第2樹脂壁部73、第3樹脂壁部74、及び第4樹脂壁部75は、それぞれ、四角板状である。第1樹脂壁部72と、第2樹脂壁部73とは第1樹脂壁部72の厚み方向に互いに向かい合う。第3樹脂壁部74と、第4樹脂壁部75とは第3樹脂壁部74の厚み方向に互いに向かい合う。
【0024】
周壁71は、周壁端部76と、4つのスリット画定面77,78,79,80と、4つの視認用スリット84と、孔画定面87と、孔88と、を備える。
周壁端部76は、周壁71の軸線方向において壁部62から最も離間した部分である。周壁端部76は、周壁71の軸線方向のうち第2壁面64から第1壁面63に向かう方向に位置する周壁71の端部である。周壁端部76に囲まれる領域は、開口部である。周壁71の軸線方向の一端は壁部62により閉塞されており、周壁71の軸線方向の他端は開口している。
【0025】
4つのスリット画定面77,78,79,80は、それぞれ、第1画定面81と、第2画定面82と、第3画定面83と、を備える。第1画定面81及び第2画定面82は、周壁端部76に連続する面である。第1画定面81及び第2画定面82は、周壁端部76から壁部62に向けて延在する面である。第1画定面81と第2画定面82とは、間隔を空けて互いに向かい合っている。第3画定面83は、第1画定面81と第2画定面82との間で延在する面である。第3画定面83は、周壁71の軸線方向において周壁端部76と壁部62との間に位置している。スリット画定面77,78,79,80は、第1樹脂壁部72及び第2樹脂壁部73に2つずつ設けられている。4つのスリット画定面77,78,79,80のうち、2つのスリット画定面77,78は第1樹脂壁部72に設けられている。4つのスリット画定面77,78,79,80のうち、2つのスリット画定面79,80は第2樹脂壁部73に設けられている。適宜、第1樹脂壁部72に設けられたスリット画定面77,78を第1スリット画定面77,78、第2樹脂壁部73に設けられたスリット画定面79,80を第2スリット画定面79,80とする。第1スリット画定面77,78は、第1樹脂壁部72の厚み方向の両面の間で延在する面である。2つの第1スリット画定面77,78は、互いに間隔を空けて配置されている。第2スリット画定面79,80は、第2樹脂壁部73の厚み方向の両面の間で延在する面である。2つの第2スリット画定面79,80は、互いに間隔を空けて配置されている。
【0026】
第1スリット画定面77,78は、それぞれ、視認用スリット84を画定している。第2スリット画定面79,80は、それぞれ、視認用スリット85を画定している。本実施形態の視認用スリット84,85は、四角状のスリットである。視認用スリット84,85は、周壁71の軸線方向に直交する方向に周壁71を貫通し、かつ、周壁端部76に開口している。視認用スリット84,85は、周壁端部76から当接壁67側に向かって形成されている。適宜、視認用スリット84,85のうち、第1スリット画定面77,78によって画定される視認用スリット84を第1視認用スリット84、第2スリット画定面79,80によって画定される視認用スリット85を第2視認用スリット85と称する。
【0027】
孔画定面87は、第3樹脂壁部74及び第4樹脂壁部75に1つずつ設けられている。孔画定面87と、スリット画定面77,78,79,80とは、互いに異なる樹脂壁部72,73,74,75に設けられているといえる。孔画定面87は、周壁71の内面と外面との間で延在する面である。孔画定面87は、孔88を画定している。孔88は、周壁71の軸線方向に直交する方向に周壁71を貫通している。
【0028】
当接部91,92は、第2壁面64から壁部62の厚み方向に突出している。当接部91,92は、2つの第1当接部91と、1つの第2当接部92と、を含む。本実施形態において、当接部91,92は、周壁71の周方向に互いに間隔を空けて設けられている。第1当接部91は、壁部62の4つの角部のうち2つの角部に設けられており、角部の形状に倣って曲がっている。第2当接部92は、壁部62を囲む四辺のうち一辺に設けられている。この一辺は、壁部62の四辺のうち2つの第1当接部91同士の間で延びる辺の対辺である。
【0029】
コモンモードチョークコイル41は、樹脂ホルダ61に収容された状態で樹脂ホルダ61に固定されている。コモンモードチョークコイル41は、コア42の軸線方向と周壁71の軸線方向とが一致する態様で樹脂ホルダ61に収容されている。コモンモードチョークコイル41は、コア42の第1端面43と壁部62の第1壁面63とが互いに向かい合うように樹脂ホルダ61に収容されている。端子部54は、端子孔66を貫通して、樹脂ホルダ61の外部に突出している。巻線51,52は、巻線51,52の巻回軸方向の両側から第1樹脂壁部72と第2樹脂壁部73とに挟まれている。第1樹脂壁部72から第1巻線端部55までの距離は、第1樹脂壁部72から第2巻線端部56までの距離よりも短い。第2樹脂壁部73から第2巻線端部56までの距離は、第2樹脂壁部73から第1巻線端部55までの距離よりも短い。第1視認用スリット84は、第1巻線端部55に向かい合って設けられている。詳細にいえば、2つの第1視認用スリット84の一方は第1巻線51の第1巻線端部55に向かい合っており、2つの第1視認用スリット84の他方は第2巻線52の第1巻線端部55に向かい合っている。第2視認用スリット85は、第2巻線端部56に向かい合って設けられている。詳細にいえば、2つの第2視認用スリット85の一方は第1巻線51の第2巻線端部56に向かい合っており、2つの第2視認用スリット85の他方は第2巻線52の第2巻線端部56に向かい合っている。視認用スリット84,85は、巻線51,52の巻回軸方向の両側から巻線51,52を挟むように設けられているといえる。コモンモードチョークコイル41は、接着剤100によって樹脂ホルダ61に固定されている。接着剤100は、例えば、壁部62とコモンモードチョークコイル41との間に設けられている。
【0030】
コモンモードチョークコイル41及び樹脂ホルダ61は基板31に固定されている。樹脂ホルダ61は、第2壁面64と基板31の第1基板面32とが向かい合うように配置されている。3つの当接部91,92は、第1基板面32に当接している。壁部62の第2壁面64と、第1基板面32とは互いに離れている。基板31と壁部62との間には、空間A3が画定されている。
【0031】
樹脂ホルダ61を貫通した端子部54は、基板31の貫通孔35に挿入されている。端子部54は、基板31に接合されている。端子部54は、導電接合材101によって基板31に接合されている。これにより、コモンモードチョークコイル41は、基板31に実装されている。導電接合材101としては、例えば、半田、及び銀ナノペーストを挙げることができる。導電接合材101は、貫通孔35の内部に充填されている。また、導電接合材101は、基板31の厚み方向の両面に設けられている。
【0032】
電子部品ユニット30は、基板31の第1基板面32と第1ハウジング壁部22の第2面24とが向かい合うようにハウジング20に取り付けられている。電子部品ユニット30は、基板31の第1基板面32と第1ハウジング壁部22の第2面24との間に樹脂ホルダ61及びコモンモードチョークコイル41が位置するように取り付けられているといえる。図1に示すように、基板31は、ボス28に支持されることで、第1ハウジング壁部22の第2面24と間隔を空けて設けられている。基板31は、ネジ102によってハウジング20に取り付けられている。本実施形態において、ネジ102は、ボス28に締結されている。
【0033】
巻線端部55,56は、巻線端部55,56と第2面24との間に熱伝導部材110が介在するように配置されている。熱伝導部材110は、巻線端部55,56及び第2面24の両方に接している。熱伝導部材110は、空気より熱伝導率の高い部材である。熱伝導部材110としては、例えば、樹脂に金属粉末やフィラーを配合したものが用いられる。熱伝導部材110としては、未硬化タイプの部材、硬化タイプの部材、あるいは、シート状の部材を用いることができる。図1に示すように、視認用スリット84,85は、熱伝導部材110に埋まっている。
【0034】
第2面24は、冷却面として機能している。冷却面とは、電子部品ユニット30の熱をハウジング20に伝導させるための経路となる面である。冷却面は、熱伝導部材110を介して巻線端部55,56と接触することで、電子部品ユニット30の熱をハウジング20に伝導させるための経路となる。
【0035】
基板31と第2面24とが向かい合う方向を高さ方向とする。図3に示すように、高さ方向、基板31の厚み方向、コア42の軸線方向、壁部62の厚み方向、及び周壁71の軸線方向は互いに一致している。電子部品ユニット30がハウジング20に取り付けられた状態で、巻線端部55,56は、第2面24に向かい合う。詳細にいえば、巻線端部55,56は、熱伝導部材110を介して第2面24に向かい合う。
【0036】
電子部品ユニット30がハウジング20に取り付けられた状態で、巻線端部55,56は、巻線51,52の高さ方向の端部であって第2面24に最も近い端部でもある。巻線端部55,56と第1ハウジング壁部22の第2面24とは互いに離れている。
【0037】
図5に示すように、第2面24から巻線端部55,56までの最短距離D1は、第2面24から周壁端部76までの最短距離D11以上、かつ、第2面24から視認用スリット84,85の当接壁67側の端部までの最短距離D12以下である。図5に示す例では、第2面24から巻線端部55,56までの最短距離D1は、最短距離D11に一致している。高さ方向の巻線端部55,56の位置は、視認用スリット84,85の範囲R1内であるともいえる。視認用スリット84,85の範囲R1は、周壁71の軸線方向における視認用スリット84,85の寸法である。周壁71の軸線方向に直交する方向から視認用スリット84,85を介して周壁71の内部を見た場合、巻線端部55,56と視認用スリット84,85とが互いに重なり合っている。
【0038】
電子部品ユニット30がハウジング20に取り付けられた状態で、周壁71は、当接壁67から第2面24に向かって延在して、コモンモードチョークコイル41を覆っている。電子部品ユニット30がハウジング20に取り付けられた状態で、周壁端部76は、第2面24に向かい合っている。なお、周壁端部76は、間接的に第2面24に向かい合っていてもよいし、直接的に第2面24に向かい合っていてもよい。本実施形態においては、周壁端部76と第2面24との間に熱伝導部材110が介在している。このため、周壁端部76と第2面24とは、熱伝導部材110を介して間接的に向かい合っている。このように、周壁端部76と第2面24との間に存在する部材を介して、間接的に周壁端部76が第2面24に向かい合っていてもよい。周壁端部76と第2面24との間に熱伝導部材110が介在していない場合には、周壁端部76は第2面24に直接的に向かい合う。このように、周壁端部76と第2面24との間に部材が介在しない状態で、直接的に周壁端部76が第2面24に向かい合っていてもよい。
【0039】
電子部品ユニット30がハウジング20に取り付けられた状態で、周壁端部76は、周壁71の軸線方向の端部であって第2面24に最も近い端部でもある。周壁端部76と第2面24とは互いに離れている。
【0040】
本実施形態の作用について説明する。
樹脂ホルダ61にコモンモードチョークコイル41を固定する際には、周壁71の軸線方向において、周壁端部76と巻線端部55,56とが同一位置となるように位置合わせを行う。位置合わせを行った状態で、孔88から接着剤100が注入される。接着剤100が硬化することで、樹脂ホルダ61にコモンモードチョークコイル41が固定される。接着剤100は、硬化することで収縮するため、接着剤100の硬化により巻線端部55,56の位置がずれる場合がある。例えば、巻線端部55,56は、接着剤100の硬化により、壁部62に近付くように位置がずれる場合がある。視認用スリット84,85を設けることで、周壁71の軸線方向における巻線端部55,56の位置が、視認用スリット84,85の範囲R1内にあるかを確認することができる。この確認作業は、人が視認用スリット84,85を介して巻線端部55,56を視認することで行われる。視認用スリット84,85は人が巻線端部55,56の位置を確認するために設けられているといえる。周壁71の軸線方向における巻線端部55,56の位置が視認用スリット84,85の範囲R1外のものを除外することで、周壁71の軸線方向における巻線端部55,56の位置が視認用スリット84,85の範囲R1内であるコモンモードチョークコイル41を得ることができる。例えば、図6に示すように、周壁71の軸線方向における巻線端部55,56の位置が視認用スリット84,85と壁部62との間に位置しているものは除外される。このようなコモンモードチョークコイル41をハウジング20に取り付けた場合、第2面24から巻線端部55,56までの最短距離D1は、最短距離D12より長くなる。同様に、周壁71の軸線方向における巻線端部55,56の位置が視認用スリット84,85を超えて周壁71の外部に位置しているものは除外される。このようなコモンモードチョークコイル41をハウジング20に取り付けた場合、第2面24から巻線端部55,56までの最短距離D1は、最短距離D11より短くなる。
【0041】
コモンモードチョークコイル41を基板31に実装する際には、当接部91,92を基板31に当接させる。当接とは、当たり接することを意味する。本実施形態において、当接部91,92は、コモンモードチョークコイル41を基板31に実装する際に基板31に当たり、これにより基板31に接する。当接部91,92が基板31に当接することによって、基板31に対する樹脂ホルダ61の位置が規定される。この状態で、端子部54を導電接合材101で基板31に接合することで、コモンモードチョークコイル41が基板31に実装される。基板31と壁部62との間に空間A3が区画されていることで、導電接合材101は、貫通孔35を介して基板31と壁部62との間にも流れ込む。これにより、導電接合材101は、基板31の厚み方向の両面に設けられる。
【0042】
基板31をハウジング20に固定する際には、熱伝導部材110が第2面24に配置される。ボス28に基板31を支持させることで、基板31と第2面24との相対位置を定める。この状態でネジ102によって基板31を固定する。
【0043】
コモンモードチョークコイル41を基板31に実装する際には、当接部91,92により、基板31と樹脂ホルダ61との相対位置が規定される。高さ方向の巻線端部55,56の位置は、視認用スリット84,85の範囲R1内である。このため、基板31と樹脂ホルダ61との相対位置が定まることで、基板31と巻線端部55,56との相対位置が定まる。高さ方向の巻線端部55,56の位置を、視認用スリット84,85の範囲R1内とすると、電子部品ユニット30がハウジング20に取り付けられた状態で、第2面24から巻線端部55,56までの最短距離D1が、最短距離D11以上、かつ、最短距離D12以下となる。視認用スリット84,85によって巻線端部55,56の位置を定めることで、コモンモードチョークコイル41は、上記した位置となるように樹脂ホルダ61内に配置されているといえる。高さ方向の巻線端部55,56の位置のばらつきは、樹脂ホルダ61の寸法のばらつきと、視認用スリット84,85の寸法と、に依存する。視認用スリット84,85の高さ方向の寸法が長いほど高さ方向の巻線端部55,56の位置は、ばらつく。基板31と巻線端部55,56との相対位置は、基板31と樹脂ホルダ61との相対位置によって定まるため、樹脂ホルダ61の高さ方向の寸法のばらつきが大きいほど高さ方向の巻線端部55,56の位置は、ばらつく。
【0044】
仮に、電子部品ユニット30が樹脂ホルダ61を備えていない場合、基板31に対する巻線端部55,56の高さ方向の位置のばらつきは、コモンモードチョークコイル41の高さ方向の寸法のばらつきに依存する。
【0045】
樹脂ホルダ61の高さ方向の寸法のばらつきは、コモンモードチョークコイル41の高さ方向の寸法のばらつきよりも少ない。このため、視認用スリット84,85の高さ方向の寸法を調整することで、巻線端部55,56の高さ方向の位置のばらつきを、コモンモードチョークコイル41の高さ方向の寸法のばらつきよりも少なくすることができる。
【0046】
本実施形態の効果について説明する。
(1)樹脂ホルダ61は、視認用スリット84,85を備える。視認用スリット84,85を介して人が巻線端部55,56の位置を確認することができる。巻線端部55,56が第2面24から過剰に離れる電子部品ユニット30を除外することができる。実施形態であれば、巻線端部55,56が最短距離D12よりも離れて位置する電子部品ユニット30を除外することができる。巻線端部55,56が第2面24から過剰に離れることを抑制することができる。従って、コモンモードチョークコイル41の熱をハウジング20に伝導させやすくなる。
【0047】
(2)第2面24から巻線端部55,56までの最短距離D1は、最短距離D11以上、最短距離D12以下である。即ち、視認用スリット84,85を用いて、巻線端部55,56が範囲R1内となるようにコモンモードチョークコイル41を位置決めすることができる。巻線端部55,56の位置を規定することができるため、巻線端部55,56が第2面24に過剰に近付くことを抑制できる。また、巻線端部55,56が第2面24から過剰に離れることを抑制できる。従って、巻線端部55,56と第2面24との接触を抑制することができる。また、巻線端部55,56が第2面24から過剰に離れることを更に抑制することができる。
【0048】
(3)視認用スリット84,85は、巻線51,52の巻回軸方向の両側から巻線51,52を挟むように設けられている。巻線51,52が複数の巻線端部55,56を備える場合、複数の巻線端部55,56同士が巻回軸方向に互いに隣り合い、視認用スリット84,85を介した巻線端部55,56の位置の確認を行いにくい場合がある。巻線51,52の巻回軸方向の両側から巻線51,52を挟むように視認用スリット84,85を設けることで、複数の巻線端部55,56の位置を確認しやすい。実施形態であれば、第1視認用スリット84を介して第1巻線端部55の位置を確認することができる。第2視認用スリット85を介して第2巻線端部56の位置を確認することができる。
【0049】
(4)当接部91,92は、壁部62から壁部62の厚み方向に突出している。当接部91,92が基板31に接することで、壁部62と基板31との間には空間A3が画定される。これにより、導電接合材101を基板31の厚み方向の両面に設けることができる。導電接合材101が、基板31の厚み方向の一方の面にのみ設けられる場合に比べて、コモンモードチョークコイル41の振動を抑制することができる。
【0050】
(5)視認用スリット84,85が設けられる樹脂壁部72,73と、孔88が設けられる樹脂壁部74,75とを異ならせている。視認用スリット84,85と孔88を同一の樹脂壁部72~75に設けた場合、当該樹脂壁部72~75の変形を招くおそれがある。これに対し、視認用スリット84,85と孔88とを異なる樹脂壁部72~75に設けて、視認用スリット84,85と孔88とを分散させることで、樹脂ホルダ61の変形を抑制できる。
【0051】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○樹脂ホルダ61は、第1視認用スリット84及び第2視認用スリット85のいずれか一方のみを備えていてもよい。
【0052】
○樹脂ホルダ61が備える視認用スリット84,85は、1つであってもよい。
○視認用スリット84,85は、第3樹脂壁部74及び第4樹脂壁部75に設けられていてもよい。この場合、視認用スリット84,85は、巻線51,52の巻回軸方向に直交する方向の両側から巻線51,52を挟むように設けられているといえる。視認用スリット84,85を、第3樹脂壁部74及び第4樹脂壁部75に設ける場合、孔88は、第1樹脂壁部72及び第2樹脂壁部73に設けられるようにしてもよい。
【0053】
○樹脂ホルダ61は、コモンモードチョークコイル41を収容していればよく、樹脂ホルダ61とコモンモードチョークコイル41との位置関係は適宜変更してもよい。例えば、コア42の軸線方向と周壁71の軸線方向とが直交するようにコモンモードチョークコイル41は配置されていてもよい。コモンモードチョークコイル41は、巻線51,52の巻回軸方向に壁部62が位置するように配置されていてもよい。
【0054】
○樹脂ホルダ61には、孔88が設けられていなくてもよい。この場合、周壁端部76に囲まれる開口部から接着剤100を注入してもよい。
○コイルは、コモンモードチョークコイル41とは異なるコイルであってもよい。例えば、コア42に1つの巻線が巻かれたコイルであってもよいし、コア42を備えないコイルであってもよい。
【0055】
○巻線端部55,56は、第2面24に接しないように設けられていればよく、第2面24から巻線端部55,56までの最短距離D1が最短距離D11より短くてもよい。巻線端部55,56は、第2面24から過剰に離れないように設けられていればよく、第2面24から巻線端部55,56までの最短距離D1が最短距離D12より長くてもよい。
【0056】
○巻回部53の巻き数は、単数であってもよいし、3以上であってもよい。
○当接壁67は、壁部62のみであってもよい。この場合、壁部62の第2壁面64を基板31に接触させることで、樹脂ホルダ61と基板31との相対位置を定める。
【0057】
○基板31は、第2面24との相対位置が定まるように固定されていればよく、例えば、第2ハウジング26に固定されていてもよい。
○コモンモードチョークコイル41は、接着剤100とは異なる部材によって樹脂ホルダ61に固定されていてもよい。例えば、樹脂ホルダ61及びコモンモードチョークコイル41に、互いに固定し合う固定具を設けてもよい。この場合であっても、固定具の公差や、コモンモードチョークコイル41を樹脂ホルダ61に固定する際の精度によって、巻線端部55,56の高さ方向の位置のばらつきは生じ得る。
【0058】
○電子部品ユニット30は、電動圧縮機10とは異なる装置に設けられていてもよい。例えば、本実施形態のように、電子部品ユニット30をフィルタの一部として用いる場合であれば、電子部品ユニット30は、充電器に設けられていてもよい。また、電子部品ユニット30は、電動モータによって駆動するポンプ部を備える電動ポンプに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
20…ハウジング、24…冷却面としての第2面、30…電子部品ユニット、31…基板、32…実装面としての第1基板面、41…コイルとしてのコモンモードチョークコイル、51,52…巻線、55,56…巻線端部、61…樹脂ホルダ、67…当接壁、71…周壁、76…周壁端部、84,85…視認用スリット、110…熱伝導部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6