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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146763
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】植物ステロールを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/11 20160101AFI20220928BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220928BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220928BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 38/01 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220928BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20220928BHJP
【FI】
A23L33/11
A61K31/575
A61K8/63
A61K8/64
A61Q19/08
A61Q19/00
A61K38/01
A61P17/00
A23L33/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047896
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】三澤 江里子
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 万里江
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD10
4B018MD14
4B018MD20
4B018MD32
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF02
4C083AB032
4C083AB212
4C083AB242
4C083AB352
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC692
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD172
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD491
4C083AD492
4C083CC02
4C083CC19
4C083DD31
4C083EE12
4C083EE17
4C084AA02
4C084BA44
4C084DA40
4C084MA02
4C084MA28
4C084MA52
4C084MA63
4C084NA05
4C084ZA891
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA28
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA89
(57)【要約】
【課題】コラーゲン合成促進作用、ヒアルロン酸分解抑制作用を有する組成物を提供する。
【解決手段】ロフェノール化合物及びシクロラノスタン化合物からなる群から選択される1又は複数の化合物と構造中にヒドロキシプロリンを含むペプチドとを組み合わせて有効成分とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロフェノール化合物及びシクロラノスタン化合物からなる群から選択される1又は複数の化合物と、構造中にヒドロキシプロリンを含むペプチドを含む、組成物。
【請求項2】
前記ロフェノール化合物が、4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オール、及び4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記シクロラノスタン化合物が、9,19-シクロラノスタン-3-オール、及び24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オールからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ロフェノール化合物及びシクロラノスタン化合物からなる群から選択される1又は複数の化合物の総含有量が、0.00001質量%以上である、請求項1~3の何れかに記載の組成物。
【請求項5】
飲食品組成物又は化粧品組成物である、請求項1~4の何れかに記載の組成物。
【請求項6】
コラーゲン合成促進用又はヒアルロン酸分解抑制用である、請求項1~5の何れかに記載の組成物。
【請求項7】
皮膚の抗老化用、シワ抑制用、タルミ抑制用、保湿用又はバリア機能向上用、皮膚弾力性向上用、皮膚機能改善用、光老化防止用である、
請求項1~6の何れかに記載の組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物ステロールとコラーゲンを加水分解して得られるペプチドを含む、飲食品、化粧品、医薬品として利用できる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、生体の約30%を含む主要タンパク質であり、皮膚、結合組織、骨に存在している。生体のコラーゲンは、加齢とともに減少し、皮膚や結合組織の老化現象を引き起こすことが知られている。
コラーゲンの減少を抑制する目的で、種々のコラーゲン合成促進剤が提案されている。例えば、3-ヒドロキシピリジニウム誘導体を有効成分として含有するコラーゲン合成促進剤が開示されている(特許文献1)。
【0003】
ヒアルロン酸は、保水性に優れるムコ多糖類の一種であり、皮膚や結合組織に存在している。ヒアルロン酸も、コラーゲンと同様、加齢とともに減少し、皮膚や結合組織の老化現象を引き起こすことが知られている。
ヒアルロン酸の減少を抑制する目的で、種々のヒアルロン酸合成促進剤が提案されている。例えば、レバン組成物を含有するヒアルロン酸合成促進剤が提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、クラゲムチンに、コラーゲン合成促進作用及びヒアルロン酸合成促進作用があることが報告されている(特許文献3)。
【0005】
ところで、植物ステロールのうち、シクロラノスタン骨格を有する化合物やロフェノール骨格を有する化合物には、線維芽細胞賦活作用(特許文献4)やマトリックスメタロプロテアーゼ産生阻害作用(特許文献5)があることが知られている。
【0006】
また、コラーゲン成分を分解して得られるトリペプチドは、コラーゲン合成促進作用を有することが知られている(特許文献6、特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-019129号公報
【特許文献2】特開2019-006725号公報
【特許文献3】特開2018-145106号公報
【特許文献4】国際公開第2015/015816号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2015/083476号パンフレット
【特許文献6】特開2002-255847号公報
【特許文献7】特開2003-137807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記先行技術のあるところ、本発明は、新規な組成物を提供することを課題とする。
特に、本発明は、コラーゲン合成促進能、ヒアルロン酸分解抑制能を有する組成物を提供すること、さらに、皮膚、結合組織、骨の老化現象に対して有効な組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、構造中にヒドロキシプロリンを含むペプチドと、ロフェノール化合物及びシクロラノスタン化合物からなる群から選択される1又は複数の化合物とを組み合わせることにより、コラーゲン合成促進作用、及びヒアルロン酸分解抑制作用が顕著に増大することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、ロフェノール化合物及びシクロラノスタン化合物からなる群から選択される1又は複数の化合物と、コラーゲンを加水分解して得られる、構造中にヒドロキシプロリンを含むペプチドとを含む、組成物である。
本発明の組成物は、コラーゲン合成促進作用、及びヒアルロン酸分解抑制作用を有する。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記ロフェノール化合物が、4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オール、及び4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オールからなる群から選択される。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記シクロラノスタン化合物が、9,19-シクロラノスタン-3-オール、及び24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オールからなる群から選択される。
【0013】
本発明の好ましい形態では、ロフェノール化合物及びシクロラノスタン化合物からなる群から選択される1又は複数の化合物の総含有量が、0.00001質量%以上である。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記組成物は、飲食品組成物又は化粧品組成物である。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記組成物は、コラーゲン合成促進用又はヒアルロン酸分解抑制用である。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記組成物は、皮膚の抗老化用、シワ抑制用、タルミ抑制用、保湿用又はバリア機能向上用、皮膚弾力性向上用、皮膚機能改善用、光老化防止用である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の組成物は、コラーゲン合成促進作用又はヒアルロン酸分解抑制作用を有する。本発明の組成物は、皮膚の抗老化用、シワ抑制用、タルミ抑制用、保湿用又はバリア機能向上用、皮膚弾力性向上用、皮膚機能改善用、光老化防止用に、好適である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好ましい形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
【0019】
本発明の組成物は、ロフェノール化合物(化合物1)及びシクロラノスタン化合物(化合物2)からなる群から選択される1又は複数の化合物と、構造中にヒドロキシプロリンを含むペプチドを有効成分として含有する。
以下、各有効成分について説明する。
【0020】
ロフェノール化合物(化合物1)は、以下の一般式(1)で表される。
【0021】
【化1】
【0022】
一般式(1)中、R1は、炭素数5~16の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は2重結合を1つ若しくは2つ含むアルケニル基である。また、前記アルキル基又はアルケニル基は、1又は2の水素原子がヒドロキシル基及び/又はカルボニル基に置換された置換アルキル基又は置換アルケニル基であってもよい。
また、R2、R3は各々独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。ここで、前記炭素原子数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基等が好ましく、メチル基が特に好ましい。また、前記アルキル基は、少なくとも1の水素原子がヒドロキシル基及び/又はカルボニル基に置換された置換アルキル基であってもよい。
【0023】
【化2】
【0024】
また、R4は環を構成する炭素原子とともにC=Oを形成するか、又は-OH、-OCOCHの何れかである。
【0025】
前記一般式(1)中、R1は、下記式で表される基の何れかであることが好ましい。
【0026】
【化3】
【0027】
また、前記一般式(1)中、R2及びR3の一方が水素原子であり、他方がメチル基であることが好ましく、R4が水素基であることが好ましい。
【0028】
化合物1として、好ましくは、4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オール及び4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オールが挙げられる。各化合物は、それぞれ、以下の式で表される構造を有する。
【0029】
【化4】
【0030】
【化5】
【0031】
【化6】
【0032】
化合物1は、公知の製造方法に準じて化学的に製造することができる。
例えば、Vitali Matyash et al., PLOS BIOLOGY, Volume 2, Issue 10, e280, 2004に記載されたサプリメントデータに準じて、合成することが可能である。
【0033】
また、化合物1が植物に含まれていることは知られており、公知のロフェノールの製造方法に準じて、化合物1を製造することができる(生物化学実験法24、脂肪脂質代謝実験法、山田晃弘著、学会出版センター、第174ページ、1989年)。
例えば、化合物1が含まれている植物より、熱水抽出法、有機溶媒抽出法、超臨界抽出法又は亜臨界抽出法などの方法を用いて抽出することが可能である(例えば、特許第3905913号公報参照)。化合物1は、例えばユリ科、マメ科、イネ科、ナス科及びバショウ科の植物から抽出することができる。
前記のようにして製造した化合物1は、例えば、マススペクトル(MS)法、及び核磁気共鳴スペクトル(NMR)法等によって、その分子量や構造等を決定又は確認することができる。
【0034】
また、化合物1は、医薬品組成物に許容される塩であってもよい。医薬品組成物に許容される塩として、金属塩(無機塩)と有機塩との両方が含まれ、それらのリストは「レミントン・ファーマシューティカル・サイエンシーズ(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第17版、1985年、第1418貢」に掲載されているものが例示される。
具体的には塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、及び臭化水素酸塩などの無機酸塩や、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩、サリチル酸塩、及びステアリン酸塩などの有機酸塩が非限定的に含まれる。
また、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属の塩、リジン等のアミノ酸との塩とすることもできる。また、前記化合物若しくはその医薬品組成物に許容される塩の水和物等の溶媒和物も使用できる。
【0035】
シクロラノスタン化合物(化合物2)は、以下の一般式(2)で表される。
【0036】
【化7】
【0037】
一般式(2)中、R5は、炭素数6~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、2重結合を1つ又は2つ含むアルケニル基である。また、前記アルキル基又はアルケニル基は、1又は2の水素原子がヒドロキシル基及び/又はカルボニル基に置換された置換アルキル基又は置換アルケニル基であってもよい。
また、R6,R7は各々独立に水素原子又はメチル基である。また、R8は環を構成する炭素原子とともにC=Oを形成するか、又は下記式の何れかである。
【0038】
【化8】
【0039】
前記一般式(2)中、R5は、下記式で表される基の何れかであることが好ましい。
【0040】
【化9】
【0041】
また、前記一般式(2)中、R6及びR7の一方が水素原子であり、他方がメチル基であることが好ましく、R8が水酸基であることが好ましい。
【0042】
化合物2としては、好ましくは、9,19-シクロラノスタン-3-オール及び24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オールが挙げられる。各化合物は、それぞれ、以下の式で表される構造を有する。
【0043】
【化10】
【0044】
【化11】
【0045】
化合物2は、公知の製造方法に準じて化学的に製造することができる。例えば、24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オール(慣用名:24-メチレンシクロアルタノール)は、特開昭57-018617号公報や国際公開第2012/023599号(γ-オリザノールから合成する方法)に開示される方法にて製造することが可能である。また、化合物2は、特開2003-277269号公報に開示される方法にて、シクロアルテノールフェルレートの加水分解物を出発物質として製造することが可能である。
【0046】
【化12】
【0047】
また、化合物2も、ユリ科、マメ科、イネ科、ナス科及びバショウ科などの植物に含まれていることが知られている([フィトケミストリー(Phytochemistry),米国、1977年、第16巻、第140~141ページ]、[ハンドブック・オブ・フィトケミカル・コンスティチュエンツ・オブ・GRAS・ハーブ・アンド・アザー・エコノミック・プランツ(Handbook of phytochemical constituents of GRAS herbs and other economic plants),1992年、米国、シーアールシープレス]、又は[ハーゲルス・ハントブーフ・デア・ファルマツォイティシェン・プラクシス(Hager’s Handbuch der Pharmazeutischen Praxis)、第2~6巻、1969~1979年、ドイツ、シュプリンガー・フェアラークベルリン]参照)。よって、化合物2は、これらの植物より、有機溶媒抽出法又は熱水抽出法などの公知の方法を用いて抽出することが可能である(例えば、特許第3924310号公報参照)。化合物2は、ユリ科アロエ属の植物から抽出することが好ましい。
前記のようにして製造した化合物は、例えば、マススペクトル(MS)法、及び核磁気共鳴スペクトル(NMR)法等によって、その分子量や構造等を決定又は確認することができる。
【0048】
また、化合物2は、医薬品組成物に許容される塩であってもよい。このような塩は化合物1について例示したとおりである。
【0049】
本発明の組成物は、化合物1及び化合物2から選ばれる1又は複数の化合物を有効成分として含有する。また、化合物1及び化合物2のそれぞれについて、1又は複数を有効成分とすることができる。有効成分は、化合物1又は化合物2のいずれか単独であっても化合物1及び化合物2の混合物であってもよいが、化合物1及び化合物2の混合物がより好ましい。すなわち、好ましい態様において、化合物1から選ばれる1又は複数と、化合物2から選ばれる1又は複数の混合物を有効成分として含有する。
化合物1又は化合物2を単独で用いる場合としては、化合物1(主に、4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オール、若しくは4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オール)、又は化合物2(主に、9,19-シクロラノスタン-3-オール若しくは24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オール)の何れかであることが好ましい。
中でも溶解性等の物性の点で、化合物1としては4-メチルコレスト-7-エン-3-オールが特に好ましく、化合物2としては9,19-シクロラノスタン-3-オールが特に好ましい。
また、化合物1と化合物2を対比した場合では、化合物1(主に、4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オール又は4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オール)であることがより好ましい。
また、化合物1又は化合物2各々においても、1種の化合物を用いてもよいし、複数の化合物を混合して用いてもよい。
本発明の組成物は、好ましくは、4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オール、4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オール、9,19-シクロラノスタン-3-オール、24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オールからなる群から選択される1又は複数の化合物を有効成分として含有する。
【0050】
化合物1及び化合物2の両者を組み合わせる場合(化合物1と化合物2との混合物)において、化合物1及び化合物2の質量比の範囲は、例えば以下が挙げられる。
化合物1:化合物2は、好ましくは5:1~1:5、さらに好ましくは3:1~1:3、特に好ましくは2:1~1:2である。
【0051】
本発明の組成物における前記化合物の含有量は、症状等に応じて適宜選択することができるが、総量で、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上、さらに好ましくは0.0005質量%以上、特に好ましくは0.001質量%以上である。また本発明の組成物における当該量の上限は特に制限されないが、総量で、90質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下が例示される。
【0052】
また、本発明の組成物は、化合物1及び化合物2からなる群から選択される1又は複数の化合物を0.00001質量%以上含む組成物を、有効成分として含有する形態とすることもできる。
このような組成物としては、例えば、前述した化合物1を含む植物から得られた抽出物、化合物2を含む植物から得られた抽出物、及び化合物1及び化合物2の両者を含む植物から得られた抽出物、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
ここで、化合物1、化合物2を含む植物としては、例えば、ユリ科、マメ科、イネ科、ナス科及びバショウ科などの植物を挙げることができる。
【0054】
天然の植物に含まれる例として、アロエ・ベラ中には、化合物1(主に、4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オール及び4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オール)、及び化合物2(主に、9,19-シクロラノスタン-3-オール及び24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オール)が含まれていることが知られている。
【0055】
そのため、アロエ・ベラを原料として、4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オール、若しくは4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オール(化合物1)の何れか、又は9,19-シクロラノスタン-3-オール、若しくは24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オール(化合物2)の何れかをそれぞれ精製して、化合物1:化合物2が5:1~1:5、好ましくは3:1~1:3、特に好ましくは2:1~1:2で含む混合物を得ることが可能である。このようにして得られた混合物は、本発明の組成物の有効成分として好適である。
【0056】
本発明には、構造中にヒドロキシプロリンを含むペプチド(以下、単にコラーゲンペプチドとも表記する)を使用する。
【0057】
本発明に使用されるコラーゲンペプチドとしては、2~4個のアミノ酸からなるペプチドを好ましく挙げることができる。
【0058】
ここで、本発明に使用されるコラーゲンペプチドはコラーゲン・トリペプチド及び/又はコラーゲン・ジペプチドであることが好ましい。
【0059】
コラーゲン・トリペプチドとしては、Gly-Hyp-X若しくは、Gly-X-Hypで表されるアミノ酸配列からなるコラーゲン・トリペプチドを好ましく挙げることができる。 中でも、本発明に使用されるコラーゲン・トリペプチドは、そのアミノ酸配列がPro-Hyp-Glyで表されるものであることが好ましい。
【0060】
また、コラーゲン・ジペプチドとしては、Hyp-Y若しくは、Y-Hypで表されるアミノ酸配列からなるコラーゲン・ジペプチドを好ましく挙げることができる。 中でも、本発明に使用されるコラーゲン・ジペプチドは、そのアミノ酸配列がPro-Hyp、Hyp-Glyで表されるものであることが好ましい。
【0061】
なお、上記のアミノ酸配列において、X及びYは任意のアミノ酸残基を示す。
【0062】
本発明に使用するコラーゲンペプチドは、市販のコラーゲン・トリペプチドやコラーゲン・ジペプチドを用いることができる。 また、本発明に使用するコラーゲンペプチドとしては、コラーゲン成分またはゼラチン成分を、コラゲナーゼ酵素を用いて特異的に分解することで得られるものを使用することもできる。
【0063】
コラーゲンペプチドの出発原料である、コラーゲン成分またはゼラチン成分は、牛、豚、鳥、鯨その他の鳥獣類の骨、軟骨、皮、腱、または鮭、鮫その他の魚類の魚皮を原料として調製されたものを用いることができ、本発明においては、原料のタイプは問わない。
【0064】
コラーゲンペプチドの調製方法としては、特開平7-82299号公報、特開平9-176196号公報、特開平11-12196号公報、特開2006-160654号公報、特開2009-57327号公報、特許第6075656号に詳述されている方法等を適用することができる。これらの調製方法により調製したものが、本発明に用いられるコラーゲンペプチドである。
【0065】
具体的には、特開平7-82299号公報に記載の以下の(i)~(iii)の方法で、コラーゲンペプチドを調製することができる。(i) コラーゲン(ゼラチン、宮城化学工業)をpH7.0の緩衝液に溶解させた後、冷却し、コラーゲン溶液を調製する。(ii) コラゲナーゼ酵素(コスモ・バイオ 社製、ABC Form III)を含む酵素溶液を、コラーゲン溶液にすばやく加えて撹拌・加温し、コラゲナーゼ酵素によるコラーゲン分解液を製造する。(iii)コラーゲン分解液を濾過・精製し、本発明に用いられるコラーゲンペプチドを得る。
【0066】
コラゲナーゼ酵素としては、Clostridium histolyticum, Bacillusなどの細菌、Streptomyces parvulus などの放線菌、乳酸菌、酵母または真菌などの由来であって、コラーゲン特有のアミノ酸配列:(Gly-X-Y )n におけるグリシンのアミノ基側を特異的に切断する酵素を用いる。また、コラゲナーゼ酵素は、これらの酵素遺伝子を遺伝子工学的に特定のベクターに組み込んで、乳酸菌や酵母などの他の菌体または動物に産生させて得られた遺伝子組み替えによる酵素であって、コラゲナーゼ酵素と類似の基質特異性を有するコラゲナーゼ様酵素であってもよい。
【0067】
これらの調製方法により調製したコラーゲンペプチドを用いる場合には、トリペプチド及び/又はジペプチドを10%以上、より好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、含んで構成されていることが好ましい。
【0068】
本発明の組成物において、コラーゲンペプチドの含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。
また本発明の組成物における当該量の上限は特に制限されないが、80質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が例示される。
【0069】
従って、本発明の組成物は、コラーゲンの減少若しくはヒアルロン酸の減少、これらの両者により引き起こされる状態や疾患の改善の用途に用いることができる。
前記状態や疾患としては、加齢による老化、シワ、タルミ、乾燥、バリア機能低下、皮膚弾力性の低下、皮膚機能の低下、光老化、関節痛、関節の変形、骨疾患、骨粗しょう症が挙げられる。
【0070】
すなわち、本発明の組成物は、抗老化用、シワ抑制用、タルミ抑制用、保湿用、バリア機能向上用、皮膚弾力性向上用、皮膚機能改善用、又は光老化防止用に好適である。
【0071】
また、本発明の組成物は、飲食品組成物とすることができる。本発明において、「飲食品組成物」には、人間が摂取する飲食品の他、人間以外の動物が摂取する飼料も含まれる。
【0072】
また、飲食品組成物における前記化合物1及び化合物2から選ばれる化合物の総量は、その形態に応じて、前記化合物を、総量で、好ましくは0.0001~100mg/日、より好ましくは0.001~50mg/日、特に好ましくは0.01~10mg/日の範囲で摂取するのに適した量とすることもできる。従って、本発明の飲食品組成物は、前記化合物を、総量で、好ましくは0.0001~100mg/日、より好ましくは0.001~50mg/日、特に好ましくは0.01~10mg/日摂取するように用いられることが好ましい。
【0073】
飲食品組成物における、コラーゲンペプチドの投与量は、用法、投与対象の年齢、性別、栄養状態又は疾患の程度、その他の条件等により適宜選択される。通常有効成分としてのコラーゲンペプチドの量は、10~100mg/日、好ましくは100~1000mg/日、特に好ましくは1000~10000mg/日の範囲となる量を目安とするのが良く、1日1回又は複数回に分けて投与することができる。
【0074】
前記飲食品は、好ましくは保健機能食品である。「保健機能食品」とは、疾患の予防効果、又は疾患の発生リスクの低減効果が、直接的又は間接的に表示された食品、及び事業者の責任で科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品を意味する。例えば、現在、日本において、特定保健用食品、機能性表示食品、健康補助食品等の態様で販売される食品が挙げられる。
【0075】
前記飲食品の形態としては特に制限されないが、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調製用粉末を含む)が、前記化合物を効率よく摂取する観点から特に好ましい。
【0076】
また、機能性飲食品の形態としては、顆粒状、タブレット状又は液状のサプリメントであることも、摂取者が有効成分の摂取量を把握しやすいという点で好ましい。
【0077】
また、このような機能性飲食品には、「コラーゲン合成促進のため」、「ヒアルロン酸分解抑制のため」の用途の表示が付された形態とすることも好ましい。
【0078】
前記「表示」は、需要者に対して前記用途を知らしめる機能を有するすべての表示を含む。すなわち、前記用途を想起・類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、すべて前記「表示」に該当する。
また、前記「表示が付された」とは、前記表示と飲食品(製品)を関連付けて認識させようとする表示行為が存在していることをいう。
表示行為は、需要者が前記用途を直接的に認識できるものであることが好ましい。具体的には、本発明の飲食品に係る商品又は商品の包装への前記用途の記載行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類(電磁的方法により提供されるものを含む)への前記用途の記載行為が例示できる。
【0079】
一方、表示される内容(表示内容)としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)であることが好ましい。
例えば、健康食品、機能性飲食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬品組成物用部外品等の表示を例示することができる。特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品制度、これに類似する制度にて認可される表示を例示できる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示等を例示することができ、詳細にいえば、健康増進法施行規則(平成15年4月30日日本国厚生労働省令第86号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、及びこれに類する表示が、典型的な例として列挙することが可能である。
【0080】
前記用途を表す文言は、コラーゲン合成促進又はヒアルロン酸分解抑制を表現する文言であれば、本発明の範囲に包含されることは言うまでもない。
また、本発明の飲食品は、前記用途の表示に加え、前記有効成分の表示、さらには、前記用途と前記有効成分の関連性を示す表示を含むことも好ましい。
【0081】
前記飲食品は、化合物1及び化合物2から選ばれる化合物と、コラーゲンペプチドとを、有効成分として配合することで製造することができる。本発明の飲食品は、例えば、前記化合物と、コラーゲンペプチドとを、飲食品原料に混合して、加工することで製造することができる。
また、前記飲食品は、前記化合物を含む公知の植物等を原料として、熱水や各種溶媒を用いた抽出、超臨界抽出、亜臨界抽出することにより得た抽出物を、飲食品原料とともに加工することで製造することもできる。
【0082】
また、前記飲食品の形態を、顆粒状、タブレット状又は液状のサプリメントとする場合には、有効成分である前記化合物とコラーゲンペプチドとを、例えば、ラクチュロース、マルチトール、及びラクチトール等の糖類、及びそれ以外の糖類、例えばデキストリン、デンプン等;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中性脂肪酸トリグリセリド等の油脂類等とともに、製剤化することも好ましい。
【0083】
また、本発明の組成物は、化粧品組成物とすることができる。
「化粧品組成物」には、薬事法における化粧品および医薬部外品が含まれ、皮膚に使用する化粧品、浴用剤、芳香品等が挙げられる。
【0084】
化粧品組成物には、通常用いられる成分を適宜配合することができる。また、化粧品組成物の形態も特に制限されない。
本発明の化粧品組成物としては、例えば、せっけん、合成化粧せっけん、液状ボディ洗浄料(ボディーソープ)、洗顔料等の洗浄料、クレンジングクリーム、洗浄用化粧水、化粧水、乳液、美容液、ローション、液状パック、ペースト状パック等のパック、粉白粉、水白粉、練白粉等の白粉、打粉、ファンデーション、口紅、頬紅等の化粧品、アイライナー、アイシャドウ等の目のまわりの化粧料、日焼け止め化粧料、サンタン化粧料、除毛化粧料等の化粧料、或いはシェービングローション、アフターシェービングローション等のひげそり用化粧料等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本発明の化粧品組成物は、上記化合物を有効量含んでなるものであり、使用により、コラーゲン合成促進作用又はヒアルロン酸分解抑制作用の少なくとも何れかの作用を発揮できるものである。
【0086】
また、化粧品組成物には前記化合物の他、化粧品に通常用いられる成分を本発明の目的、作用、効果を損なわない範囲で適宜選択して添加して使用することができる。このような成分としては例えば界面活性剤、油分、保湿剤、柔軟剤、感触向上剤、油性剤、乳化剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、エモリエント剤、pH調整剤、キレート剤、安定化剤、紫外線吸収剤、アルコール類、シリコン化合物、増粘剤、粘度調整剤、可溶化剤、パール化剤、香料、清涼剤、殺菌剤、抗菌剤、天然抽出物、着色剤、褪色防止剤、精製水その他の溶剤、噴射剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
本発明の組成物は、医薬品組成物とすることができる。
本発明の医薬品組成物は、経口的、又は非経口的にヒトを含む哺乳動物に投与することができる。
【0088】
また、本発明の医薬品組成物において、化合物1及び化合物2からなる群から選択される1又は複数の化合物の総含有量は、好ましくは0.0001質量%以上、さらに好ましくは0.0005質量%以上、特に好ましくは0.001質量%以上である。
【0089】
本発明の医薬品組成物において、コラーゲンペプチドの含有量は、好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは5.0質量%以上である。
【0090】
本発明の医薬品組成物の形態は特に限定されず、用法に応じて適宜選択できる。具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、点鼻剤等を例示できる。
【0091】
本発明の医薬品組成物の投与時期は特に限定されず、対象となる疾患に応じて、適宜選択することが可能である。また、投与量は製剤形態、用法、患者の年齢、性別、その他の条件、症状の程度等に応じて決定されることが好ましい。
本発明の医薬品組成物の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件等により適宜選択される。通常、有効成分の量に換算して、好ましくは0.0001~100mg/日、より好ましくは、0.001~50mg/日、特に好ましくは0.01~10mg/日の範囲を目安とする。
【0092】
本発明の医薬品組成物は、医薬品組成物に汎用される添加剤を含有してもよい。添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、注射剤用溶剤等が挙げられる。
【0093】
本発明の医薬品組成物は、前記化合物とコラーゲンペプチドとを有効成分として医薬品組成物用担体に配合することで製造することができる。本発明の医薬品組成物は、例えば、前記化合物を、前述した添加剤とともに製剤化することで製造することができる。
また、本発明の医薬品組成物は、前記化合物を含む公知の植物等を原料として、熱水や各種溶媒を用いた抽出、超臨界抽出、亜臨界抽出することにより得た抽出物を、前述した添加剤とともに製剤化することで製造することもできる。
【実施例0094】
<1>被験試料の調製
(1)化合物1及び化合物2を含む試料の調製
4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オール、4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オール、9,19-シクロラノスタン-3-オール、及び24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オールのモル比1:1:1:1:1の混合物(以下、単に植物ステロールと表記する)を、用時、Dimethyl Sulfoxide(DMSO)によって希釈して、各種濃度の被験試料を調製した。
【0095】
(2)コラーゲンペプチドの調製
本実施例では、コラーゲン・トリペプチド(株式会社ペプチド研究所 商品番号:4032)(以下、単にCTPと表記する)をdeionized water filtered with 0.22μm(MILLEX(登録商標)GV,Cat No.R5DA82310,Millipore DW)で用時希釈することで3μg/mLの被験試料を調製し、以下の(3)組成物の調製に用いた。
【0096】
(3)組成物の調製
下記表に従い、参考例1、参考例2、実施例1および実施例2の構成を含む被験物質を調製し、試験に供した。併せて、陰性対照を調製し、試験に供した。
【0097】
<2>遺伝子の発現試験
以下の方法により、各被験試料が、ヒト皮膚線維芽細胞のコラーゲン合成酵素遺伝子、ヒアルロン酸分解酵素遺伝子の発現に与える影響を解析した。
【0098】
(1)ヒト皮膚線維芽細胞の培養
10.0%(v/v)Fetal Bovine Serum(FBS,Hyclone,UK)を用いて、ヒト新生児由来の真皮線維芽細胞 NR1RGB細胞(RIKEN BRC,Japan)を35mmディッシュに2.0×105cells/2mL播種し、5%CO2、37℃環境下で24時間培養した。
24時間後、35mmディッシュの培地を除去して、表1に記載の各被験物質および陰性対照培地を加え、5%CO2、37℃環境下で、24時間、または48時間培養した後、PureLinkTMRNA Mini Kit(Cat No.12183018A,Invitrogen,USA)を用いてRNAを回収した。
【0099】
(2)遺伝子発現変化の解析
得られたRNAをSuperScriptTMIV VILOTMMasterMix with ezDNase(Cat No.11766050,Invitrogen,USA)を用いて、逆転写を行った。
8連チューブ(AB1182,Thermo Scientific,USA)に10×ezDNase Buffer、ezDNase enzyme、Nuclease-free Water、10μg/mL RNAを加え、37℃で2分間インキュベートした。2分後、8連チューブにSuperScriptTMIVVILOTM Master Mix、およびNuclease-free Waterを添加し、リアルタイムPCR(QuantStudio(登録商標)3,Applied Biosystems,USA)を用いて25℃で10分間、50℃で10分間、85℃で5分間加熱して、cDNAを合成した。PCRプレート(Cat No.N8010560,Thermo Scientific,USA)にTaqMan(登録商標)Fast Advanced MasterMix(Cat No.4444557,Applied Biosystems,USA)、TaqMan Gene Expressior、UltraPureTM Distilled Water(Invitrogen,Cat No.10977-015,USA)およびcDNAを加え、プレートシールにより密封した。リアルタイムPCRシステムを用いてReal-Time qPCRを行い、陰性対象及び被験物質における各遺伝子のThreshold Cycle(Ct)値を算出した。内部標準遺伝子によりCt値を補正し、ΔΔCt法によって陰性対照の遺伝子発現量を1として被験物質の遺伝子発現量を解析した。遺伝子のプローブは下記を用いた。
遺伝子発現量について、実施例と、参考例(単独添加群)又は陰性対照群の間で、Dunnet法にて有意差検定を行った。
【0100】
・内部標準遺伝子:HumanGlyceraldehyde 3 Phosphate Dehydrogenase (GAPDH, Assay ID. s02786624_g1)
・コラーゲン合成酵素遺伝子:HumanCollagen Type 1 Alpha 1 (COL1A1, Assay ID. Hs00164004_m1)
・ヒアルロン酸分解酵素遺伝子:Human Hyaluronidase 1 (HYAL1, Assay ID. Hs00201046_m1)
【0101】
<3>結果
(1)コラーゲン合成酵素遺伝子(COL1A)
【0102】
【表1】
【0103】
表1より、参考例1、参考例2と比較し、実施例1(植物ステロール 2.0μM+CTP 3.0μg/mL)及び実施例2(植物ステロール 0.2μM+CTP 3.0μg/mL)は、有意にコラーゲン合成酵素遺伝子の発現を促進することがわかった。
【0104】
(2)ヒアルロン酸分解酵素遺伝子(HYAL1)
【0105】
【表2】
【0106】
表2より、参考例1、参考例2と比較し、実施例1(植物ステロール 2.0μM+CTP 3.0μg/mL)及び実施例2(植物ステロール 0.2μM+CTP 3.0μg/mL)は、有意にヒアルロン酸分解酵素遺伝子の発現を低減させることがわかった。
【0107】
以上の結果から、ロフェノール化合物及びシクロラノスタン化合物から選ばれる化合物と、コラーゲンペプチド(構造中にヒドロキシプロリンを含むペプチド)を組み合わせることで、コラーゲン合成促進作用、及びヒアルロン酸分解抑制作用が得られることがわかった。
【0108】
[製造例1]
次の組成からなる医薬品組成物を、以下の方法により製造した。
ロフェノール化合物とシクロラノスタン化合物とを、ロフェノール化合物:シクロラノスタン化合物=1:1の質量比で含有した混合物に、カルボキシメチルセルロース(CMC:第一工業製薬株式会社製)を添加し分散させて調製した前記混合物を0.001質量%含有する組成物を2質量%、コラーゲンペプチドを0.1質量%、中鎖脂肪酸(MCT:理研ビタミン株式会社製)2質量%、グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製)を4質量%、サポニン(丸善製薬株式会社製)を0.5質量%、エタノール(日本アルコール産業株式会社製)を0.2質量%、マルチトール(株式会社林原製)を1.3質量%、グリセリン(日油株式会社製)を78質量%、さらに水を添加して全量が100質量%、となるように混合して、ロフェノール化合物(化合物1)及びシクロラノスタン化合物(化合物2)の混合物が最終濃度で0.00002質量%、コラーゲンペプチドを0.1質量%以上含有するシロップ状の製剤を製造した。
製造例1の医薬品組成物は、コラーゲン合成促進作用、及びヒアルロン酸分解抑制作用を有する。
【0109】
[製造例2]
次の組成からなる飲食品組成物を、以下の方法により製造した。
ロフェノール化合物とシクロラノスタン化合物とを、ロフェノール化合物:シクロラノスタン化合物=6.1:3.9の質量比で含有した混合物を4質量%含有し、コラーゲンペプチドを1.0質量%、その他に中鎖脂肪酸(MCT:理研ビタミン株式会社製)2質量%、グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製)4質量%、サポニン(丸善製薬株式会社製)0.5質量%、エタノール(日本アルコール産業株式会社製)0.2質量%、マルチトール(株式会社林原製)1.3質量%、グリセリン(日油株式会社製)78質量%、水9質量%を混合して、シクロラノスタン化合物及びロフェノール化合物の混合物を含有する食品添加剤を製造した。
【0110】
製造した食品添加剤を飲料に加えて均一に混合することにより、ロフェノール化合物(化合物1)及びシクロラノスタン化合物(化合物2)の混合物が最終濃度で0.00002質量%、コラーゲンペプチドが1.0質量%含有する飲食品組成物を製造した。
製造例2の飲食品組成物は、コラーゲン合成促進作用、ヒアルロン酸分解抑制作用を有する。
【0111】
[製造例3]
<クリーム>
以下に示す処方でクリームを製造した。
(処方)
(1)ステアリン酸 5.0質量%
(2)ステアリルアルコール 4.0質量%
(3)イソプロピルミリステート 18.0質量%
(4)グリセリンモノステアリン酸エステル 3.0質量%
(5)プロピレングリコール 10.0質量%
(6)シクロラノスタン化合物およびロフェノール化合物混合物 0.0002質量%
(7)苛性カリ 0.2質量%
(8)亜硫酸水素ナトリウム 0.01質量%
(9)防腐剤 適量
(10)香料 適量
(11)コラーゲン・トリペプチド10質量%含有コラーゲン溶液 10質量%
(12)イオン交換水 残余
【0112】
(製法)
イオン交換水に(5)~(7)を加えて溶解し、加熱して70℃に保って水相部を調製した。さらに前記水相部とは別に、残りの成分をすべて混合し、加熱融解して70℃に保って油相部を調製した。次に、水相部に油相部を徐々に加え、全部加え終わってからしばらくその温度に保った後、ホモミキサーで均一に乳化し、よく混合しながら30℃まで冷却してクリームを調製した。
【0113】
[製造例4]
<乳液>
以下に示す処方で、乳液を製造した。
(処方)
(1)ステアリン酸 2.5質量%
(2)セチルアルコール 1.5質量%
(3)ワセリン 5.0質量%
(4)流動パラフィン 10.0質量%
(5)ポリオキシエチレン(10モル)モノオレイン酸エステル 2.0質量%
(6)ポリエチレングリコール1500 3.0質量%
(7)トリエタノールアミン 1.0質量%
(8)カルボキシビニルポリマー 0.05質量%
(9)シクロラノスタン化合物およびロフェノール化合物混合物 0.00002質量%
(10)亜硫酸水素ナトリウム 0.01質量%
(11)エチルパラベン 0.3質量%
(12)香料 適量
(13)コラーゲン・トリペプチド10質量%含有コラーゲン溶液 10質量%
(14)イオン交換水 残余
【0114】
(製法)
イオン交換水の一部に(8)を溶解して1液とした。さらに前記1液とは別に、残りのイオン交換水に(6)と(7)を加え、加熱溶解して70℃に保ち2液とした。また、前記1液および2液とは別に、残りの成分をすべて混合し、70℃で溶解して3液とした。次いで、2液に3液を加えた後、さらに、これに1液を加えてホモミキサーで均一乳化し、乳化後よくかき混合しながら30℃まで冷却して乳液を調製した。
【0115】
[製造例5]
以下に示す処方で、サンスクリーン剤を製造した。
<サンスクリーン剤>
(処方)
(1)環状シリコン 21.9質量%
(2)酸化亜鉛 10.0質量%
(3)酸化チタン 10.0質量%
(4)ジメチコン 5.5質量%
(5)メトキシケイヒ酸オクチル 5.5質量%
(6)グリセリン 3.0質量%
(7)クオタニウム-18ベントナイト 1.0質量%
(8)ジグリセリン 1.0質量%
(9)フェノキシエタノール 0.1質量%
(10)シクロラノスタン化合物およびロフェノール化合物混合物 0 . 0 0 0 0 2 質量%
(11)香料 適量
(12)コラーゲン・トリペプチド10質量%含有コラーゲン溶液 10質量%
(13)メチルパラベン 0.1質量%
(14)エタノール 1.0質量%
(15)1,3-ブチレングリコール 3.0質量%
(16)イオン交換水 残余
【0116】
(製法)
(1)~(12)を室温で撹拌しながら分散し、A相とした。水と1,3-ブチレングリコールを室温で撹拌溶解し、B相とした。メチルパラベンとエタノールを室温で撹拌溶解し、C相とした。A相をディスパーでかき混ぜながら、B相とC相を加えて乳化した(1000rpm、3分間)。その後パドルでかき混ぜながら35℃まで冷却した。
【0117】
製造例3~5の化粧品組成物は、コラーゲン合成促進作用、ヒアルロン酸分解抑制作用を有する。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、抗老化や美容を目的とした、飲食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物に利用できる。