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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146777
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】自動変速機の油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20220928BHJP
   F16H 59/08 20060101ALI20220928BHJP
   F16H 59/68 20060101ALI20220928BHJP
   F16H 61/68 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H59/08
F16H59/68
F16H61/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047917
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 雅英
(72)【発明者】
【氏名】日浦 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓介
(72)【発明者】
【氏名】杉野 拓眞
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA02
3J552MA12
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA03
3J552PA51
3J552PB02
3J552PB06
3J552QA06B
3J552QA06C
3J552QA10A
3J552QA26B
3J552QA26C
3J552QB05
3J552RA21
3J552RB02
3J552SA07
3J552SA51
3J552SB04
3J552VA07W
3J552VA51W
3J552VA65W
(57)【要約】
【課題】自動変速機の油圧制御装置において、全てのソレノイドバルブが非通電状態になったときの退避走行を可能にしつつ、ガレージ時に発生するショックを抑制できる装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置100は、ブレーキB2の油圧サーボSVb2の油圧)が、ソレノイドバルブSRからの信号圧Psrによりフェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替えられず、正常位置に維持される所定油圧Pb2rであることを条件にしてソレノイドバルブSRの通電を遮断するため、切替過渡期にフェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替わることが抑制される。これより、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替わることによるショックを抑制できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の油圧式摩擦係合装置の係合状態により後進段および複数の前進段を形成する自動変速機の、油圧制御装置であって、
前記複数個の油圧式摩擦係合装置のそれぞれの油圧サーボにそれぞれ通電状態で係合圧を出力する複数個のノーマリクローズ式ソレノイドバルブと、
非通電状態で油圧を出力するノーマリオープン式ソレノイドバルブと、
レンジ操作位置が前進レンジ位置にされたときに前進レンジ圧を出力し、前記レンジ操作位置が後進レンジ位置にされたときに後進レンジ圧を出力するマニュアルバルブと、
前記複数個の油圧サーボのうちの第1の油圧サーボからの油圧と付勢部材の付勢力とにより正常位置に向けて付勢され、前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブからの油圧によりフェール位置に向けて付勢されるスプール弁子を有し、前記レンジ操作位置が前進レンジ位置にあり、すべてのソレノイドバルブが非通電状態となる場合、前記スプール弁子が前記フェール位置に切り替えられ、前記複数個の油圧サーボのうちの第2の油圧サーボに前記前進レンジ圧を供給して所定の前進段を形成する切替バルブと、を備えた油圧回路と、
前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブの通電を制御する制御装置と、を備え、
前記油圧回路は、前記レンジ操作位置が前記後進レンジ位置から中立レンジ位置に切り替えられたときに、前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブからの油圧を、前記後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボに係合圧を出力するノーマリクローズ式ソレノイドバルブの元圧として供給可能に構成され、
前記制御装置は、前記レンジ操作位置が前記後進レンジ位置から前記中立レンジ位置に切り替えられたときに、前記第1の油圧サーボの油圧が、前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブからの油圧により前記切替バルブにおける前記スプール弁子が前記フェール位置に切り替えられず、前記正常位置に維持される所定油圧であることを条件にして、前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブの通電を遮断するように構成されている
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、さらに、前記レンジ操作位置が前記後進レンジ位置から前記中立レンジ位置に切り替えられたときに、前記後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボの油圧が、該油圧サーボの油圧制御が必要になる第2の所定油圧であることを条件にして、前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブの通電を遮断するように構成されている
ことを特徴とする請求項1の自動変速機の油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられる自動変速機を制御する油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の油圧式摩擦係合装置のそれぞれの油圧サーボにそれぞれ通電状態で係合圧を出力する複数個のノーマリクローズ式ソレノイドバルブと、非通電状態で油圧を出力するノーマリオープン式ソレノイドバルブと、レンジ操作位置が前進レンジ位置にされたときに前進レンジ圧を出力し、レンジ操作位置が後進レンジ位置にされたときに後進レンジ圧を出力するマニュアルバルブと、レンジ操作位置が前進レンジ位置にあり、すべてのソレノイドバルブが非通電状態となる場合に、スプール弁子がフェール位置に切り替えられ、複数個の油圧サーボのうちの所定の油圧サーボに前進レンジ圧を供給して所定の前進段を形成する切替バルブと、を備え、これにより、全てのソレノイドバルブが非通電状態となるオールオフフェール時に退避走行を可能にしたものが知られている。特許文献1に記載の自動変速機の油圧制御装置がそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-177933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レンジ操作位置が後進レンジ位置から中立レンジ位置に切り替えられたとき、所謂ガレージ時に、後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボの係合圧を調整するうえで、上述したノーマリオープン式ソレノイドバルブからの油圧を、この油圧サーボに係合圧を出力するノーマルクローズ式ソレノイドバルブの元圧として供給するようにした場合、レンジ操作位置が中立レンジから前進レンジに素早く切り替えられると、切替バルブから所定の油圧サーボに前進レンジ圧が供給され、ショックが発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、自動変速機の油圧制御装置において、全てのソレノイドバルブが非通電状態になったときの退避走行を可能にしつつ、ガレージ時に発生するショックを抑制できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、(a)複数個の油圧式摩擦係合装置の係合状態により後進段および複数の前進段を形成する自動変速機の、油圧制御装置であって、(b)前記複数個の油圧式摩擦係合装置のそれぞれの油圧サーボにそれぞれ通電状態で係合圧を出力する複数個のノーマリクローズ式ソレノイドバルブと、(c)非通電状態で油圧を出力するノーマリオープン式ソレノイドバルブと、(d)レンジ操作位置が前進レンジ位置にされたときに前進レンジ圧を出力し、前記レンジ操作位置が後進レンジ位置にされたときに後進レンジ圧を出力するマニュアルバルブと、(e)前記複数個の油圧サーボのうちの第1の油圧サーボからの油圧と付勢部材の付勢力とにより正常位置に向けて付勢され、前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブからの油圧によりフェール位置に向けて付勢されるスプール弁子を有し、前記レンジ操作位置が前進レンジ位置にあり、すべてのソレノイドバルブが非通電状態となる場合、前記スプール弁子が前記フェール位置に切り替えられ、前記複数個の油圧サーボのうちの第2の油圧サーボに前記前進レンジ圧を供給して所定の前進段を形成する切替バルブと、を備えた油圧回路と、(f)前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブの通電を制御する制御装置と、を備え、(g)前記油圧回路は、前記レンジ操作位置が前記後進レンジ位置から中立レンジ位置に切り替えられたときに、前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブからの油圧を、前記後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボに係合圧を出力するノーマリクローズ式ソレノイドバルブの元圧として供給可能に構成され、(h)前記制御装置は、前記レンジ操作位置が前記後進レンジ位置から前記中立レンジ位置に切り替えられたときに、前記第1の油圧サーボの油圧が、前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブからの油圧により前記切替バルブにおける前記スプール弁子が前記フェール位置に切り替えられず、前記正常位置に維持される所定油圧であることを条件にして、前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブの通電を遮断するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記制御装置は、さらに、前記レンジ操作位置が前記後進レンジ位置から前記中立レンジ位置に切り替えられたときに、前記後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボの油圧が、その油圧サーボの油圧制御が必要になる第2の所定油圧であることを条件にして、前記ノーマリオープン式ソレノイドバルブの通電を遮断するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、レンジ操作位置が前進レンジ位置にあるときに全てのソレノイドバルブが非通電状態になると、ノーマリオープン式ソレノイドバルブからの油圧によって、切替バルブのスプール弁子がフェール位置に切り替えられ、切替バルブから第2の油圧サーボに前進レンジ圧が供給されることで所定の前進段が形成される。これより、所定の前進段による退避走行が可能になる。また、レンジ操作位置が後進レンジ位置から中立レンジ位置に切り替えられたとき、ノーマリオープン式ソレノイドバルブからの油圧が、後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボに係合圧を出力するノーマリクローズ式ソレノイドバルブの元圧として供給されることで、後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボの油圧制御が可能になり、切替過渡期に発生するショックが抑制される。このとき、第1の油圧サーボの油圧が、ノーマリオープン式ソレノイドバルブからの油圧により切替バルブのスプール弁子がフェール位置に切り替えられず、正常位置に維持される所定油圧であることを条件にしてノーマリオープン式ソレノイドバルブの通電が遮断されるため、切替過渡期に切替バルブのスプール弁子がフェール位置に切り替わることが抑制される。これより、レンジ操作位置が後進レンジ位置から中立レンジ位置を経由して前進レンジ位置に素早く切り替えられた場合であっても、切替バルブがフェール位置に切り替えられて切替バルブから前進レンジ圧が第2の油圧サーボに供給されることが抑制され、前進レンジで第2の油圧サーボに前進レンジ圧が供給されることによるショックを防止することができる。
【0009】
第2発明によれば、レンジ操作位置が後進レンジ位置から中立レンジ位置に切り替えられたとき、後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボの油圧が、油圧制御が必要となる第2の所定油圧であることを条件にして、ノーマリオープン式ソレノイドバルブの通電が遮断されるため、ノーマリオープン式ソレノイドバルブからの油圧を元圧にして後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボの油圧制御が不要な場合には、ノーマリオープン式ソレノイドバルブの通電が維持されることで、ノーマリオープン式ソレノイドバルブの不要な通電の遮断をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明が適用された車両の概略構成図を示すと共に、車両に搭載された制御装置すなわち電子制御装置の制御機能の要部を例示する機能ブロック線図である。
図2図1の自動変速機において複数の前進段および後進段をそれぞれ成立させる際の油圧式摩擦係合装置の係合作動表である。
図3】自動変速機およびトルクコンバータの作動を制御する油圧回路の一部を示す油圧回路図である。
図4】RポジションからNポジションへの切替に当たって、ソレノイドバルブの通電領域および非通電領域を示す図である。
図5】電子制御装置の制御作動の要部、すなわちレンジ操作ポジションがRポジションからNポジションに切り替えられたときの制御作動を説明するフローチャートである。
図6】レンジ操作ポジションがRポジションからNポジションに切り替えられたときの制御状態を示すタイムチャートである。
図7】本発明の他の実施例に対応する電子制御装置の制御作動の要部、すなわちレンジ操作ポジションがRポジションからNポジションに切り替えられたときの制御作動を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例0012】
図1は、本発明が適用された車両10の概略構成図を示すと共に、車両10に搭載された制御装置すなわち電子制御装置100の制御機能の要部を例示する機能ブロック線図を示す。車両10は、エンジン12、動力伝達装置50、左右一対の駆動輪52L、52R、油圧回路70、および電子制御装置100を備える。エンジン12は駆動力源である。動力伝達装置50は、トルクコンバータ14、車両用自動変速機20(以下、自動変速機20という)および差動歯車装置40等を備える。エンジン12および動力伝達装置50により車両用駆動装置60が構成される。図1では、トルクコンバータ14および自動変速機20は骨子図で示されている。
【0013】
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸30に連結されたポンプ翼車14pと、トルクコンバータ14の出力側部材に相当する入力軸32を介して自動変速機20に連結されたタービン翼車14tと、を備える。ポンプ翼車14pとタービン翼車14tとの間にはロックアップクラッチLUが設けられ、このロックアップクラッチLUが完全係合させられることでポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tが一体的に回転させられる。
【0014】
自動変速機20は、サンギヤS1、ピニオンP1、およびキャリアCA2から構成されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置22と、サンギヤS2、互いに噛み合う複数対のピニオンP2とP1、キャリアCA2、およびリングギヤR2から構成されたダブルピニオン型の第2遊星歯車装置24と、サンギヤS3、ピニオンP3、キャリアCA3、およびリングギヤR3から構成されたシングルピニオン型の第3遊星歯車装置26と、サンギヤS4、ピニオンP4、キャリアCA4、およびリングギヤR4から構成されたシングルピニオン型の第4遊星歯車装置28と、を備え、入力軸32の回転を変速して出力軸34から出力する。なお、第1遊星歯車装置22および第2遊星歯車装置24は、一部が互いに連結され、所謂ラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
【0015】
自動変速機20には、油圧式摩擦係合装置である複数個のクラッチC1、クラッチC2、クラッチC3、クラッチC4、ブレーキB1、およびブレーキB2が備えられている。自動変速機20は、これら複数個のクラッチC1~C4、ブレーキB1、B2の係合状態が切り替えられることにより、前進10速の前進段および後進段が形成される。上記油圧式摩擦係合装置は、それぞれに設けられる油圧サーボ(油圧アクチュエータ)により押圧される湿式多板型のクラッチやブレーキ、油圧サーボによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される。自動変速機20は、クラッチC1、クラッチC2、クラッチC3、クラッチC4、ブレーキB1、およびブレーキB2が解放状態とされることにより、エンジン12と駆動輪52L、52Rとの間の動力伝達を遮断してニュートラル状態とすることができる。
【0016】
自動変速機20から出力軸34に出力された駆動力は、差動歯車装置40および左右一対の車軸36L、36Rを介して左右一対の駆動輪52L、52Rに伝達される。
【0017】
油圧回路70は、エンジン12によって回転駆動されたオイルポンプ18から送られた作動油を用いて、トルクコンバータ14や自動変速機20に送る作動油を制御するように構成されている。
【0018】
車両10は、車両10の走行に関わる各部を制御する制御装置である電子制御装置100を備えている。電子制御装置100は、たとえばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。この電子制御装置100および油圧回路70を含んで、油圧制御装置72が構成される。
【0019】
電子制御装置100には、車両10が備える各種センサにより検出される各種入力信号が供給されるようになっている。たとえば、エンジン回転速度センサ80、入力軸回転速度センサ82、出力軸回転速度センサ84、アクセル開度センサ86、スロットル開度センサ88、レンジ操作ポジションセンサ90、作動油温センサ92、ブレーキ操作量センサ94などによる検出信号に基づく、エンジン回転速度Ne(rpm)、タービン回転速度Nt(rpm)である入力軸回転速度Nin(rpm)、車速V(km/h)に対応する出力軸回転速度Nout(rpm)、アクセル開度θacc(%)、スロットル弁開度θth(%)、車両10に備えられたシフトレバー74によって切り替えられるレンジ操作ポジションPOSsh、作動油温Toil(℃)、運転者の減速操作の大きさを表すブレーキ操作量θbrk(%)などが、それぞれ供給される。
【0020】
また、電子制御装置100からは、エンジン12の出力制御のためのエンジン出力制御信号Se、自動変速機20の変速などの油圧制御のための油圧制御指令信号Spなどが、それぞれ出力される。油圧制御指令信号Spは、たとえば自動変速機20の各油圧式摩擦係合装置の油圧サーボに供給される作動油の油圧を制御するための信号、ロックアップクラッチLUの係合状態を制御するための信号などである。油圧制御指令信号Spは、油圧回路70に備えられる各ソレノイドバルブに出力される。
【0021】
電子制御装置100は、エンジン出力制御手段としてのエンジン出力制御部102、AT変速制御手段としてのAT変速制御部104、およびガレージ制御手段としてのガレージ制御部106を機能的に備えている。
【0022】
エンジン出力制御部102は、予め実験的又は設計的に求められて記憶された関係である駆動力マップに、アクセル開度θaccおよび車速V等の駆動力関連値を適用することで要求駆動力Fdemを算出する。エンジン出力制御部102は、その要求駆動力Fdemが得られる目標エンジントルクTetgtを設定し、その目標エンジントルクTetgtが得られるようにエンジン12を制御する指令をエンジン制御装置96へ出力する。
【0023】
AT変速制御部104は、予め実験的または設計的に求められて記憶された関係である変速マップを用いて自動変速機20の変速判断を行い、変速の実行を判断すると自動変速機20の変速制御を実行するための油圧制御指令信号Spを油圧回路70へ出力する。上記変速マップは、例えば車速Vおよび要求駆動力Fdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機20の変速が判断されるための変速線を有する所定の関係である。上記変速マップにおける各変速線は、アップシフトが判断されるためのアップシフト線、および、ダウンシフトが判断されるためのダウンシフト線である。
【0024】
ガレージ制御部106は、レンジ操作ポジションPOSshが例えば前進レンジ位置であるDポジションまたは後進レンジ位置であるRポジションから、中立レンジ位置であるNポジションに切り替えられたとき、あるいは、レンジ操作ポジションPOSshが、NポジションからDポジションまたはRポジションに切り替えられたとき、切替過渡期に解放または係合される油圧式摩擦係合装置の油圧サーボの油圧を適切に制御することで、切替過渡期に発生するショックを抑制するガレージ制御を実行する。例えば、ガレージ制御部106は、レンジ操作ポジションPOSshがDポジションまたはRポジションからNポジションに切り替えられた場合には、切替過渡期に解放される油圧式摩擦係合装置の油圧サーボの油圧を、ショックを抑制しつつ解放されるように制御する。また、ガレージ制御部106は、レンジ操作ポジションPOSshがNポジションからDポジションまたはRポジションに切り替えられた場合には、切替過渡期に係合される油圧式摩擦係合装置の油圧サーボの油圧を、ショックを抑制しつつ係合されるように制御する。
【0025】
図2は、図1の自動変速機20において複数の前進段および後進段をそれぞれ成立させる際の油圧式摩擦係合装置の係合状態を示す係合作動表である。図2に示す、「POSITION」は、運転者によって切り替えられる各レンジ操作ポジション(レンジ操作位置)POSshを示し、「P」は車両停車レンジ(Pレンジ)に切り替えるためのPポジション、「R」は後進走行される後進レンジ(Rレンジ)に切り替えるためのRポジション(後進レンジ位置)、「N」は動力伝達が遮断される中立レンジ(Nレンジ)に切り替えるためのNポジション(中立レンジ位置)、「D」は前進走行される前進レンジ(Dレンジ)に切り替えるためのDポジション(前進レンジ位置)を示している。「1ST」~「10TH」は、Dレンジにおける1速前進段1ST~10速前進段10THを示している。「R→N」は、レンジ操作ポジションPOSshのRポジションからNポジションへの切替を示している。また、「SORENOID ALL OFF」は、全てのソレノイドバルブへの通電が遮断される異常が発生した場合の状態を示している。なお、レンジ操作ポジションPOSshが本発明のレンジ操作位置に対応し、Dポジションが本発明の前進レンジ位置に対応し、Rポジションが本発明の後進レンジ位置に対応し、Nポジションが本発明の中立レンジ位置に対応している。
【0026】
また、図2において、SL1~SL6、SR(SORENOID)は、油圧回路70に備えられるリニアソレノイドバルブSL1~SL6、ソレノイドバルブSRの作動状態を示している。SL1~SL6、SRにおける「○」は通電状態(ON状態)を示し、「×」は非通電状態を示し、「△」は、供給電流が制御される制御状態を示している。また、C1~C4(CLUTCH)およびB1、B2(BRAKE)は、クラッチC1~C4、およびブレーキB1、B2の作動状態を示している。クラッチC1~C4、ブレーキB1、B2における「○」は係合状態を示し、「×」は解放状態(非係合状態)を示し、「△」はクラッチ、ブレーキのトルク容量がそれぞれ調整される制御状態を示している。電子制御装置100、図2の係合作動表に従ってリニアソレノイドバルブSL1~SL6、ソレノイドバルブSRの通電を制御することで、複数の前進段および後進段に切り替える。
【0027】
本実施例では、クラッチC1~C4およびブレーキB1、B2のそれぞれの油圧サーボSVc1~SVc4、SVb1、SVb2(図3参照)の各係合圧Pc1~Pb2が、それぞれ独立したリニアソレノイドバルブSL1~SL6(図3参照)によって制御されるように構成されている。具体的には、クラッチC1の油圧サーボSVc1の油圧がリニアソレノイドバルブSL1によって制御される。すなわち、リニアソレノイドバルブSL1によって調圧された油圧が係合圧Pc1としてクラッチC1の油圧サーボSVc1に供給されるように構成されている。また、クラッチC2の油圧サーボSVc2の油圧(係合圧Pc2)がリニアソレノイドバルブSL2によって制御され、クラッチC3の油圧サーボSVc3の油圧(係合圧Pc3)がリニアソレノイドバルブSL3によって制御され、クラッチC4の油圧サーボSVc4の油圧(係合圧Pc4)がリニアソレノイドバルブSL4によって制御され、ブレーキB1の油圧サーボSVb1の油圧(係合圧Pb1)がリニアソレノイドバルブSL5によって制御され、ブレーキB2の油圧サーボSVb2の油圧(係合圧Pb2)がリニアソレノイドバルブSL6によって制御されるように構成されている。
【0028】
また、リニアソレノイドバルブSL1~SL6は、通電状態おいて油圧が出力される一方で非通電状態で油圧が出力されないように構成される、ノーマリクローズ式ソレノイドバルブから構成されている。従って、リニアソレノイドバルブSL1~SL6の通電状態では、各リニアソレノイドバルブSL1~SL6から対応するクラッチC1~C4、ブレーキB1、B2のそれぞれの油圧サーボSVc1~SVb2に油圧(係合圧)が供給されて係合状態になり、非通電状態では対応するクラッチC1~C4、ブレーキB1、B2に油圧が供給されず解放状態となる。例えば、Dレンジにおける5速前進段5THでは、図2に示すようにクラッチC2、クラッチC4、ブレーキB1が係合されるが、これに関連して、リニアソレノイドバルブSL2、SL4、SL5が通電状態「○」となっている。
一方、ソレノイドバルブSRは、通電状態に油圧が出力されない一方で非通電状態に油圧が出力されるように構成される、ノーマリオープン式ソレノイドバルブから構成されている。また、ソレノイドバルブSRが、本発明のノーマリオープン式ソレノイドバルブに対応している。
【0029】
ここで、図2の係合作動表に示す全てのリニアソレノイドバルブSL1~SL6、ソレノイドバルブSRの通電が遮断される、すなわち非通電状態となるフェール状態(「SORENOID ALL OFF」)では、図2に示されるように全てのリニアソレノイドバルブSL1~SL6、ソレノイドバルブSRが非通電状態となる。また、フェール状態における「R(Rポジション)」に示されるように、後進走行中に前記フェール状態に切り替わると、クラッチC2、C3、ブレーキB2が係合される。また、フェール状態における「1ST-4TH→4TH」は、1速前進段1ST~4速前進段4THの何れかの前進段で走行中にフェール状態に切り替わると、4速前進段4THに切り替わることを示している。また、フェール状態における「5TH-10TH→8TH」は、5速前進段5TH~10速前進段10THの何れかの前進段で走行中にフェール状態に切り替わると、8速前進段THに切り替わることを示している。このように、前進走行中にフェール状態に切り替わっても、所定の前進段が形成されることで退避走行が可能になる。なお、全てのリニアソレノイドバルブSL1~SL6、ソレノイドバルブSRの通電が遮断される状態になっても、所定の変速段が形成される構造については後述するものとする。
【0030】
図3は、自動変速機20およびトルクコンバータ14の作動を制御する油圧回路70の一部を示す油圧回路図である。図3にあっては、油圧回路70を構成する、クラッチC1~C4およびブレーキB1、B2をそれぞれ制御するリニアソレノイドバルブSL1~SL6、ソレノイドバルブSR、マニュアルバルブ110、第1チェックバルブ120、第2チェックバルブ130、第3チェックバルブ140、クラッチコントロールバルブ150、およびフェールセーフバルブ160が示されている。
【0031】
リニアソレノイドバルブSL1は、第1入力ポートSL1aと、出力ポートSL1cと、フィードバックポートSL1dと、を備えている。第1入力ポートSL1aは、第1チェックバルブ120の後述する出力ポート120cに接続されている。出力ポートSL1cは、フィードバックポートSL1dおよびクラッチC1の油圧サーボSVc1に接続されている。従って、出力ポートSL1cから出力された油圧が、係合圧Pc1 としてクラッチC1の油圧サーボSVc1に供給される。リニアソレノイドバルブSL1は、通電状態において、第1入力ポートSL1aから入力された油圧を元圧にしてクラッチC1の油圧サーボSVc1に供給される油圧に調圧し、調圧された油圧をクラッチC1の係合圧Pc1として出力ポートSL1cから出力する。
【0032】
リニアソレノイドバルブSL2は、第1入力ポートSL2aと、第2入力ポートSL2bと、出力ポートSL2cと、フィードバックポートSL2dと、を備えている。第1入力ポートSL2aは、図示しないモジュレータバルブの出力ポートに接続されている。第2入力ポートSL2bは、フェールセーフバルブ160の後述する第3出力ポート160lに接続されている。出力ポートSL2cは、フィードバックポートSL2dおよびクラッチC2の油圧サーボSVc2に接続されている。従って、出力ポートSL2cから出力された油圧が、係合圧Pc2としてクラッチC2の油圧サーボSVc2に供給される。
【0033】
リニアソレノイドバルブSL2は、通電状態において、第1入力ポートSL2aから入力された油圧、すなわちモジュレータバルブから出力されるモジュレータ圧Pmodを、元圧にしてクラッチC2の油圧サーボSVc2に供給される油圧に調圧し、調圧された油圧をクラッチC2の係合圧Pc2として出力ポートSL2cから出力する。また、リニアソレノイドバルブSL2は、非通電状態において、第1入力ポートSL2aと出力ポートSL2cとの連通が遮断され、第2入力ポートSL2bと出力ポートSL2cとが連通されるように構成されている。
【0034】
リニアソレノイドバルブSL3は、第1入力ポートSL3aと、第2入力ポートSL3bと、出力ポートSL3cと、フィードバックポートSL3dと、を備えている。第1入力ポートSL3aは、第2チェックバルブ130の後述する出力ポート130dに接続されている。第2入力ポートSL3bは、第3チェックバルブ140の第1出力ポート140cに接続されている。出力ポートSL3dは、フィードバックポートSL3dおよびクラッチC3の油圧サーボSVc3に接続されている。従って、出力ポートSL3cから出力された油圧が、係合圧Pc3としてクラッチC3の油圧サーボSVc3に供給される。
【0035】
リニアソレノイドバルブSL3は、通電状態において、第1入力ポートSL3aから入力された油圧を元圧にしてクラッチC3の油圧サーボSVc3に供給される油圧に調圧し、調圧された油圧をクラッチC3の係合圧Pc3として出力ポートSL3cから出力する。また、リニアソレノイドバルブSL3は、非通電状態において、第1入力ポートSL3aと出力ポートSL3cとの連通が遮断され、第2入力ポートSL3bと出力ポートSL3cとが連通されるように構成されている。
【0036】
リニアソレノイドバルブSL4は、第1入力ポートSL4aと、第2入力ポートSL4bと、出力ポートSL4cと、フィードバックポートSL4dと、を備えている。第1入力ポートSL4aは、第1チェックバルブ120の後述する出力ポート120cに接続されている。第2入力ポートSL4bは、フェールセーフバルブ160の後述する第2出力ポート160kに接続されている。出力ポートSL4cは、フィードバックポートSL4dおよびクラッチC4の油圧サーボSVc4に接続されている。従って、出力ポートSL4cから出力された油圧が、係合圧Pc4としてクラッチC4の油圧サーボSVc4に供給される。
【0037】
リニアソレノイドバルブSL4は、通電状態において、第1入力ポートSL4aから入力された油圧を元圧にしてクラッチC4の油圧サーボSVc4に供給される油圧に調圧し、調圧された油圧をクラッチC4の係合圧Pc4として出力ポートSL4cから出力する。また、リニアソレノイドバルブSL4は、非通電状態において、第1入力ポートSL4aと出力ポートSL4cとの連通が遮断され、第2入力ポートSL4bと出力ポートSL4cとが連通されるように構成されている。
【0038】
リニアソレノイドバルブSL5は、第1入力ポートSL5aと、第2入力ポートSL5bと、出力ポートSL5cと、フィードバックポートSL5dと、を備えている。第1入力ポートSL5aは、第1チェックバルブ120の出力ポート120cに接続されている。第2入力ポートSL5bは、クラッチコントロールバルブ150の後述する第2出力ポート150gに接続されている。出力ポートSL5cは、フィードバックポートSL5dおよびブレーキB1の油圧サーボSVb1に接続されている。従って、出力ポートSL5cから出力された油圧が、係合圧Pb1としてブレーキB1の油圧サーボSVb1に供給される。
【0039】
リニアソレノイドバルブSL5は、通電状態において、第1入力ポートSL5aから入力された油圧を元圧にしてブレーキB1の油圧サーボSVb1に供給される油圧に調圧し、調圧された油圧をブレーキB1の係合圧Pb1として出力ポートSL5cから出力する。また、リニアソレノイドバルブSL5は、非通電状態において、第1入力ポートSL5aと出力ポートSL5cとの連通が遮断され、第2入力ポートSL5bと出力ポートSL5cとが連通されるように構成されている。
【0040】
リニアソレノイドバルブSL6は、第1入力ポートSL6aと、第2入力ポートSL6bと、出力ポートSL6cと、フィードバックポートSL6dと、を備えている。第1入力ポートSL6aは、図示しないモジュレータバルブの出力ポートに接続されている。第2入力ポートSL6bは、クラッチコントロールバルブ150の後述する第5出力ポート150jに接続されている。出力ポートSL6cは、フェールセーフバルブ160を介してブレーキB2の油圧サーボSVb2に接続されている。従って、出力ポートSL6cから出力された油圧が、フェールセーフバルブ160を介して係合圧Pb2としてブレーキB2の油圧サーボSVb2に供給される。
【0041】
リニアソレノイドバルブSL6は、通電状態において、第1入力ポートSL6aから入力された油圧、すなわちモジュレータバルブから出力されるモジュレータ圧Pmodを、元圧にしてブレーキB2の油圧サーボSVb2に供給される油圧に調圧し、調圧された油圧をブレーキB2の係合圧Pb2として出力ポートSL6cから出力する。また、リニアソレノイドバルブSL6は、非通電状態において、第1入力ポートSL6aと出力ポートSL6cとの通電が遮断され、第2入力ポートSL6bと出力ポートSL6cとが連通されるように構成されている。
【0042】
ソレノイドバルブSRは、入力ポートSRaと出力ポートSRbとを備えている。入力ポートSRaは、図示しないモジュレータバルブの出力ポートに接続されており、モジュレータバルブによって調圧されたモジュレータ圧Pmodが入力されるように構成されている。ソレノイドバルブSRは、非通電状態で出力ポートSRbから油圧(モジュレータ圧Pmod)を出力するノーマリオープン式ソレノイドバルブが使用されている。出力ポートSRbは、第2チェックバルブ130の後述する第1入力ポート130aおよびフェールセーフバルブ160の後述する第1油室160aに接続されている。
【0043】
マニュアルバルブ110は、レンジ操作ポジションPOSshが前進レンジ位置であるDポジションにされたときに前進レンジ圧PDを出力し、レンジ操作ポジションPOSshが後進レンジ位置であるRポジションにされたとき後進レンジ圧PRを出力するように構成されている。マニュアルバルブ110は、ライン圧PLが入力されるライン圧入力ポート110aと、前進レンジ圧出力ポート110bと、後進レンジ圧出力ポート110cと、ドレンポートEXと、各ポートの連通状態を切り替えるためのスプール弁子110sとを備えている。なお、図3では、各ポート110a~110cおよびスプール弁子110sが、符号a~符号cおよび符号sでそれぞれ示されている。
【0044】
スプール弁子110sは、運転者によってシフトレバー74が操作されることで、レンジ操作ポジションPOSshに応じた位置に切り替えられる。図3は、マニュアルバルブ110が、中立レンジ位置であるNポジションに切り替えられた状態を示している。このとき、ライン圧入力ポート110aが何れもポートにも連通されず、さらに前進レンジ圧出力ポート110bおよび後進レンジ圧出力ポート110cがそれぞれドレンポートEXに連通された状態となる。従って、前進レンジ圧PDおよび後進レンジ圧PRは、何れも出力されない。また、マニュアルバルブ110が車両停車レンジ位置であるPポジションに切り替えられた場合も同様の状態となる。なお、ライン圧PLは、図示しないレギュレータバルブによって調圧された油圧である。
【0045】
マニュアルバルブ110が前進レンジ位置であるDポジションに切り替えられると、ライン圧入力ポート110aと前進レンジ圧出力ポート110bとが連通され、後進レンジ圧出力ポート110cとドレンポートEXとが連通される。このとき、前進レンジ圧出力ポート110bからライン圧PLが前進レンジ圧PDとして出力される。また、マニュアルバルブ110が後進レンジ位置であるRポジションに切り替えられると、ライン圧入力ポート110aと後進レンジ圧出力ポート110cとが連通され、前進レンジ圧出力ポート110bとドレンポートEXとが連通される。このとき、後進レンジ圧出力ポート110cからライン圧PLが後進レンジ圧PRとして出力される。
【0046】
第1チェックバルブ120は、第1入力ポート120aと、第2入力ポート120bと、出力ポート120cと、を備え、第1入力ポート120aおよび第2入力ポートの何れかから油圧が入力されると、その油圧を出力ポート120cから出力するように構成されている。なお、図3では、各ポート120a~120cが、符号a~符号cでそれぞれ示されている。
【0047】
第1入力ポート120aは、マニュアルバルブ110の前進レンジ圧出力ポート110bに接続されている。レンジ操作ポジションPOSshがDポジションに切り替えられると、前進レンジ圧PDが第1入力ポート120aに入力されて出力ポート120cから出力される。第2入力ポート120bは、図示しないリニアソレノイドバルブSLUの出力ポートに接続されている。リニアソレノイドバルブSLUから制御圧Psluが出力されると、その制御圧Psluが第2入力ポート120bに入力されて出力ポート120cから出力される。出力ポート120cは、第2チェックバルブ130の後述する第3入力ポート130c、リニアソレノイドバルブSL1の第1入力ポートSL1a、リニアソレノイドバルブSL4の第1入力ポートSL4a、およびリニアソレノイドバルブSL5の第1入力ポートSL5aに接続されている。
【0048】
第2チェックバルブ130は、第1入力ポート130aと、第2入力ポート130bと、第3入力ポート130cと、出力ポート130dと、を備え、第1入力ポート130a、第2入力ポート130b、および第3入力ポート130cの何れかから油圧が入力されると、その油圧を出力ポート130dから出力するように構成されている。なお、図3では、各ポート130a~130dが、符号a~符号dでそれぞれ示されている。
【0049】
第1入力ポート130aは、ソレノイドバルブSRの出力ポートSRbに接続されている。ソレノイドバルブSRの出力ポートSRbから信号圧Psrが出力されると、その信号圧Psrが第1入力ポート130aから入力されて出力ポート130dから出力される。第2入力ポート130bは、マニュアルバルブ110の後進レンジ圧出力ポート110cに接続されている。レンジ操作ポジションPOSshがRポジションに切り替えられると、後進レンジ圧PRが第2入力ポート130bから入力されて出力ポート130dから出力される。第3入力ポート130cは、第1チェックバルブ120の出力ポート120cに接続されている。出力ポート120cから出力された油圧が出力されると、その油圧が第3入力ポート130cに入力されて出力ポート130dから出力される。出力ポート130dは、リニアソレノイドバルブSL3の第1入力ポートSL3aに接続されている。
【0050】
第3チェックバルブ140は、第1入力ポート140aと、第2入力ポート140bと、第1出力ポート140cと、第3入力ポート140dと、第4入力ポート140eと、第2出力ポート140fと、を備えている。なお、図3では、各ポート140a~140fが、符号a~符号fでそれぞれ示されている。第3チェックバルブ140は、第1入力ポート140aおよび第2入力ポート140bの何れかから油圧が入力されると、その油圧が第1出力ポート140cから出力されるとともに、第3入力ポート140dおよび第4入力ポート140eの何れかから油圧が入力されると、その油圧が第2出力ポート140fから出力されるように構成されている。
【0051】
第3チェックバルブ140において、第1入力ポート140aは、クラッチコントロールバルブ150の後述する第2出力ポート150gに接続され、第2入力ポート140bは、フェールセーフバルブ160の後述する第3出力ポート160lに接続されている。第1出力ポート140cは、リニアソレノイドバルブSL3の第2入力ポートSL3bに接続されている。また、第3入力ポート140dは、クラッチコントロールバルブ150の後述する第3出力ポート150hに接続され、第4入力ポート140eは、フェールセーフバルブ160の後述する第3出力ポート160lに接続されている。また、第2出力ポート140fは、フェールセーフバルブ160の後述する第4入力ポート160fに接続されている。
【0052】
クラッチコントロールバルブ150(以下、コントロールバルブ150)は、第1油室150aと、第2油室150bと、受圧ポート150cと、第1入力ポート150dと、第2入力ポート150eと、第1出力ポート150fと、第2出力ポート150gと、第3出力ポート150hと、第4出力ポート150iと、第5出力ポート150jと、第1連絡ポート150kと、第2連絡ポート150lと、第2油室150bに収容されているスプリング150spと、第1スプール弁子150s1と、第2スプール弁子150s2と、を備えている。なお、図3では、各油室150a、150b、各ポート150c~150l、スプリング150sp、各スプール弁子150s1、150s2が、それぞれ符号a~符号l、符号sp、符号s1~符号s2でそれぞれ示されている。
【0053】
第1油室150aは、クラッチC3の油圧サーボSVc3に接続されている。第2油室150bは、ブレーキB2の油圧サーボSVb2に接続されている。受圧ポート150cは、ブレーキB1の油圧サーボSVb1に接続されている。第1入力ポート150dは、フェールセーフバルブ160の後述する第2出力ポート160kに接続されている。第2入力ポート150eは、マニュアルバルブ110の前進レンジ圧出力ポート110bに接続されている。第1出力ポート150fは、図示しないコントロールバルブに接続されている。第2出力ポート150gは、第3チェックバルブ140の第1入力ポート140aおよびリニアソレノイドバルブSL5の第2入力ポートSL5bに接続されている。第3出力ポート150hは、第3チェックバルブ140の第3入力ポート140dに接続されている。第4出力ポート150iは、フェールセーフバルブ160の後述する第6入力ポート160hに接続されている。第5出力ポート150jは、リニアソレノイドバルブSL6の第2入力ポートSL6bに接続されている。第1連絡ポート150kと第2連絡ポート150lとは互いに接続されている。
【0054】
コントロールバルブ150において、第1油室150aにクラッチC3の油圧サーボSVc3の油圧(係合圧Pc3)が供給され、第2油室150bにブレーキB2の油圧サーボSVb2の油圧(係合圧Pb2)が供給され、受圧ポート150cにブレーキB1の油圧サーボSVb1の油圧(係合圧Pb1)が供給されるように構成されている。第1油室150aにクラッチC3の油圧サーボSVc3の油圧が供給されると、第1スプール弁子150s1が紙面下側(第2油室150b側)に付勢され、受圧ポート150cにブレーキB1の油圧サーボSVb1の油圧が供給されると、第1スプール弁子150s1が紙面下側に付勢される。また、第2油室150bにブレーキB2の油圧サーボSVb2の油圧が供給されると、第2スプール弁子150s2が紙面上側(第1油室150a側)に付勢される。なお、スプリング150spによって第2スプール弁子150s2が紙面上側に常時付勢されている。
【0055】
1速前進段1ST~4速前進段4TH、Pレンジ、Nレンジ、Rレンジの状態では、第2油室150bに供給される油圧サーボSVb2の油圧、および、スプリング150spに基づく、第2スプール弁子150s2を紙面上側に付勢する付勢力が、第1油室150aに供給される油圧サーボSVc3の油圧、および、受圧ポート150cに供給される油圧サーボSVb1の油圧に基づく、第1スプール弁子150s1を紙面下側に付勢する付勢力よりも大きくなる。このとき、コントロールバルブ150が、図3に示すコントロールバルブ150の中心線CLに対して紙面左側の状態になる。
【0056】
一方、5速前進段5TH~10速前進段10THの状態では、第1油室150aに供給される油圧サーボSVc3の油圧、および、受圧ポート150cに供給される油圧サーボSVb1の油圧に基づく、第1スプール150弁子s1を紙面下側に付勢する付勢力が、第2油室150bに供給される油圧サーボSVb2の油圧、および、スプリング150spに基づく、第2スプール弁子150s2を紙面上側に付勢する付勢力よりも大きくなる。従って、第1スプール弁子150s1および第2スプール弁子150s2が紙面下側に移動するが、このとき、前進レンジ圧PDが第2入力ポート150e、第1連絡ポート150kを経由して第2連絡ポート150lに入力される。第2連絡ポート150lに前進レンジ圧PDが入力されると、前進レンジ圧PDによって第1スプール弁子150s1と第2スプール弁子150s2とが乖離させられる。従って、5速前進段1ST~10速前進段10THの状態では、コントロールバルブ150が、図3のコントロールバルブ150の中心線CLに対して紙面右側の状態になる。
【0057】
フェールセーフバルブ160は、走行中にすべてのソレノイドバルブの通電が遮断される異常(以下、オールオフフェールと称す)が発生したとき、所定の変速段を形成して退避走行を実行するために設けられている。フェールセーフバルブ160は、第1油室160aと、第2油室160bと、第1入力ポート160cと、第2入力ポート160dと、第3入力ポート160eと、第4入力ポート160fと、第5入力ポート160gと、第6入力ポート160hと、第7入力ポート160iと、第1出力ポート160jと、第2出力ポート160kと、第3出力ポート160lと、スプール弁子160sと、スプリング160spと、ドレンポートEXと、を備えている。なお、図3では、各油室160a、160b、各ポート160c~160l、スプリング160sp、スプール弁子160sが、それぞれ符号a~符号l、符号sp、符号sでそれぞれ示されている。なお、フェールセーフバルブ160が本発明の切替バルブに対応し、スプリング160spが本発明の付勢部材に対応している。
【0058】
第1油室160aは、ソレノイドバルブSRの出力ポートSRbに接続されている。第2油室160bは、ブレーキB2の油圧サーボSVb2に接続されている。第1入力ポート160cは、図示しないソレノイドバルブSLTの出力ポートに接続され、ソレノイドバルブSLTから出力される制御圧Psltが供給される。第2入力ポート160dは、ソレノイドバルブSRの出力ポートSRbに接続されている。第3入力ポート160eは、リニアソレノイドバルブSL6の出力ポートSL6cに接続されている。第4入力ポート160fは、第3チェックバルブ140の第2出力ポート140fに接続されている。第5入力ポート160gは、マニュアルバルブ110の前進レンジ圧出力ポート110bに接続されている。第6入力ポート160hは、コントロールバルブ150の第4出力ポート150iに接続されている。第7入力ポート160iは、マニュアルバルブ110の後進レンジ圧出力ポート110cに接続されている。第1出力ポート160jは、ブレーキB2の油圧サーボSVb2に接続されている。第2出力ポート160kは、リニアソレノイドバルブSL4の第2入力ポートSL4b、および、コントロールバルブ150の第1入力ポート150dに接続されている。第3出力ポート160lは、リニアソレノイドバルブSL2の第2入力ポートSL2b、第3チェックバルブ140の第2入力ポート140bおよび第4入力ポート140eに接続されている。
【0059】
フェールセーフバルブ160では、第1油室160aにソレノイドバルブSRの信号圧Psrが供給され、第2油室160bにブレーキB2の油圧サーボSVb2の油圧すなわち係合圧Pb2が供給される。また、第2油室160bに収容されているスプリング160spによって、スプール弁子160sが図3において紙面上側(第1油室160a側)に付勢されている。これより、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sが、ブレーキB2の係合圧Pb2およびスプリング160spによって第1油室160a側(図3において紙面上側、後述する正常位置側)に向けて付勢され、ソレノイドバルブSRの信号圧Psrによって第2油室160b側(図3において紙面下側、後述するフェール位置側)に向けて付勢される。従って、第1油室160aに供給される信号圧Psrに基づくスプール弁子160sを第2油室160b側に付勢する付勢力が、第2油室160bに供給される係合圧Pb2およびスプリング160spに基づく、スプール弁子160sを第1油室160a側に付勢する付勢力よりも大きくなると、スプール弁子160sが第2油室160b側に移動させられる。
【0060】
ここで、ソレノイドバルブSRは、通電されると信号圧Psrを出力しないため、通電状態でスプール弁子160sが紙面上側に移動させられ、図3に示すフェールセーフバルブ160の中心線CLよりも紙面左側の状態となる。以下、この状態をフェールセーフバルブ160の正常状態と称し、正常状態におけるスプール弁子160sの位置を正常位置と称する。なお、図2の係合作動表に示すように、通常の走行状態ではソレノイドバルブSRが通電状態となるため、基本的にはフェールセーフバルブ160は正常状態となる。
【0061】
一方で、例えば走行中にオールオフフェールが発生した場合には、ソレノイドバルブSRから信号圧Psrが出力されて第1油室160aに供給されることで、スプール弁子160sが第2油室160b側に移動させられ、図3に示すフェールセーフバルブ160の中心線CLよりも紙面右側の状態となる。以下、この状態をフェールセーフバルブ160のフェール状態と称し、フェール状態におけるスプール弁子160sの位置をフェール位置と称する。
【0062】
以下、走行中において全てのソレノイドバルブの通電が遮断されるオールオフフェールが発生したときの油圧回路70の作動について説明する。先ず、1速前進段1ST~4速前進段4THで走行中に、オールオフフェールが発生した場合について説明する。
【0063】
1速前進段1ST~4速前進段4THで走行中は、コントロールバルブ150が図3の中心線CLに対して紙面左側の状態になる。また、正常時ではソレノイドバルブSRが通電状態にあり、ソレノイドバルブSRから信号圧Psrが出力されないため、フェールセーフバルブ160は、図3の中心線CLに対して紙面左側に示す正常状態となる。
【0064】
この状態からオールオフフェールが発生すると、全てのソレノイドバルブが非通電状態となるため、図2の係合作動表に示す「SORENOID ALL OFF」の状態になる。このときリニアソレノイドバルブSL1~SL6については、油圧が出力されなくなる。一方、ソレノイドバルブSRについては、ノーマリオープン式ソレノイドバルブであることから、信号圧Psrが出力される。ソレノイドバルブSRから信号圧Psrが出力されると、フェールセーフバルブ160の第1油室160aに信号圧Psrが入力されるため、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sが図3の中心線CLより紙面右側に示すフェール位置に切り替えられる。このとき、第4入力ポート160fと第1出力ポート160jとが連通され、第5入力ポート160gと第2出力ポート160kとが連通される。
【0065】
また、第5入力ポート160gに前進レンジ圧PDが入力されることから、第2出力ポート160kから前進レンジ圧PDが出力される。第2出力ポート160kとリニアソレノイドバルブSL4の第2入力ポートSL4bとが接続されているため、第2入力ポートSL4bに前進レンジ圧PDが入力される。ここで、リニアソレノイドバルブSL4は、非通電状態で第2入力ポートSL4bと出力ポートSL4cとが連通されるため、出力ポートSL4cから前進レンジ圧PDが出力されてクラッチC4の油圧サーボSVc4に供給される。また、フェールセーフバルブ160の第2出力ポート160kは、コントロールバルブ150の第1入力ポート150dに接続されているため、第1入力ポート150dに前進レンジ圧PDが入力される。コントロールバルブ150は、1速前進段1ST~4速前進段4THの状態で、第1入力ポート150dと第3出力ポート150hとが連通されることから、前進レンジ圧PDが第3出力ポート150hから出力される。さらに第3出力ポート150hは、第3チェックバルブ140の第3入力ポート140dに接続されているため、第2出力ポート140fから前進レンジ圧PDが出力される。この前進レンジ圧PDがフェールセーフバルブ160の第4入力ポート160fに入力され、第1出力ポート160jから出力されることで、ブレーキB2の油圧サーボSVb2に前進レンジ圧PDが供給される。その結果、1速前進段1ST~4速前進段4THで走行中にオールオフフェールが発生すると、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替えられ、クラッチC4の油圧サーボSVc4およびブレーキB2の油圧サーボSVb2に前進レンジ圧PDが供給されることで、4速前進段4THが形成されて退避走行が可能になる。なお、クラッチC4の油圧サーボSVc4が本発明の第2の油圧サーボに対応している。
【0066】
次に、5速前進段5TH~10速前進段10THで走行中に、オールオフフェールが発生した場合について説明する。5速前進段5TH~10速前進段10THで走行中は、コントロールバルブ150が、図3のコントロールバルブ150の中心線CLに対して紙面右側に示す状態になる。また、正常時では、フェールセーフバルブ160は、図3のフェールセーフバルブ160の中心線CLに対して紙面左側に示す正常状態となる。
【0067】
この状態から全てのソレノイドバルブの通電が遮断されると、リニアソレノイドバルブSL1~SL6から油圧が出力されない一方で、ソレノイドバルブSRから信号圧Psrが出力されるため、フェールセーフバルブ160が図3の中心線CLより紙面右側に示すフェール状態に切り替わる。このとき、第4入力ポート160fと第1出力ポート160jとが連通され、第5入力ポート160gと第2出力ポート160kとが連通される。
【0068】
また、第5入力ポート160gに前進レンジ圧PDが入力され、第2出力ポート160kからその前進レンジ圧PDが出力される。第2出力ポート160kがリニアソレノイドバルブSL4の第2入力ポートSL4bに接続されているため、第2入力ポートSL4bに前進レンジ圧PDが入力されて出力ポートSL4cから出力されることで、前進レンジ圧PDがクラッチC4の油圧サーボSVc4に供給される。また、第2出力ポート160kから出力された前進レンジ圧PDが、コントロールバルブ150の第1入力ポート150dに入力される。ここで、5速前進段5TH~10速前進段10THの状態では、第1入力ポート150dと第2出力ポート150gとが連通されるため、第2出力ポート150gから前進レンジ圧PDが出力される。第2出力ポート150gはリニアソレノイドバルブSL5の第2入力ポートSL5bに接続され、非通電時において第2入力ポートSL5bと出力ポートSL5cとが連通されため、出力ポートSL5cから前進レンジ圧PDが出力されてブレーキB1の油圧サーボSVb1に供給される。さらに、第2出力ポート150gが第3チェックバルブ140の第1入力ポート140aに接続されているため、第1出力ポート140cから前進レンジ圧PDが出力される。第1出力ポート140cはリニアソレノイドバルブSL3の第2入力ポートSL3bに接続され、非通電時において第2入力ポートSL3bと出力ポートSL3cとが連通されるため、出力ポートSL3cから前進レンジ圧PDが出力されてクラッチC3の油圧サーボSVc3に供給される。その結果、5速前進段5TH~10速前進段10THで走行中にオールオフフェールが発生すると、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替えられ、クラッチC3、クラッチC4、およびブレーキB1の各油圧サーボSVc3、SVc4、SVb1に前進レンジ圧PDが供給されることで、8速前進段8THが形成されて退避走行が可能になる。
【0069】
次に、後進走行中すなわち後進段で走行中に、オールオフフェールが発生した場合について説明する。後進走行中は、コントロールバルブ150が、図3のコントロールバルブ150の中心線CLに対して紙面左側に示す状態になる。また、正常時では、フェールセーフバルブ160は、図3のフェールセーフバルブ160の中心線CLに対して紙面左側に示す正常状態となる。
【0070】
この状態から全てのソレノイドバルブの通電が遮断されると、リニアソレノイドバルブSL1~SL6から油圧が出力されなくなる一方で、ソレノイドバルブSRが信号圧Psrが出力されるため、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替わる。このとき、第4入力ポート160fと第1出力ポート160jとが連通され、第5入力ポート160gと第2出力ポート160kとが連通され、第7入力ポート160iと第3出力ポート160lとが連通される。
【0071】
後進走行中は、第7入力ポート160iに後進レンジ圧PRが入力され、この後進レンジ圧PRが第3出力ポート160lから出力される。第3出力ポート160lは、リニアソレノイドバルブSL2の第2入力ポートSL2bに接続されていることから、後進レンジ圧PRが、第2入力ポートSL2bに入力され、非通電時に第2入力ポートSL2bと連通する出力ポートSL2cから出力される。これより、クラッチC2の油圧サーボSVc2に後進レンジ圧PRが供給される。また、第3出力ポート160lは第3チェックバルブ140の第2入力ポート140bおよび第4入力ポート140eに接続されているため、後進レンジ圧PRが、第1出力ポート140cおよび第2出力ポート140fから出力される。第1出力ポート140cは、リニアソレノイドバルブSL3の第2入力ポートSL3bに接続されているため、後進レンジ圧PRが第2入力ポートSL3bに入力され、さらに非通電時に第2入力ポートSL3bと連通する出力ポートSL3cから出力される。これより、クラッチC3の油圧サーボSVc3に後進レンジ圧PRが供給される。また、後進レンジ圧PRが出力される第2出力ポート140fは、フェールセーフバルブ160の第4入力ポート160fに接続されているため、フェール状態において第4入力ポート160fと連通する第1出力ポート160jから後進レンジ圧PRが出力される。これより、ブレーキB2の油圧サーボSVb2に後進レンジ圧PRが供給される。その結果、後進段で走行中にオールオフフェールが発生すると、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替えられ、クラッチC2、クラッチC3、ブレーキB2の各油圧サーボSVc2、SVc3、SVb2に後進レンジ圧PRが供給されることで、後進段が形成されて退避走行が可能になる。
【0072】
次に、レンジ操作ポジションPOSshが、Rポジション(後進レンジ位置)からNポジション(中立レンジ位置)に切り替えられたときの油圧回路70の作動について説明する。レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられると、図2の係合作動表に示すように、切替過渡期においてソレノイドバルブSRが通電状態から非通電状態に切り替えられる(「○→×」)。これは、RポジションからNポジションへの切替時(ガレージ時ともいう)において、後進段を形成するクラッチC3の解放制御(ドレン制御)を実行するため、リニアソレノイドバルブSL3の元圧としてソレノイドバルブSRの信号圧Psrを供給するためである。レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられると、ソレノイドバルブSRが非通電状態に切り替えられ、ソレノイドバルブSRから信号圧Psrが出力される。この信号圧Psrが、第2チェックバルブ130を介してリニアソレノイドバルブSL3の第1入力ポートSL3aに入力されるため、クラッチC3の油圧サーボSVc3に油圧(係合圧Pc3)を出力するリニアソレノイドバルブSL3に信号圧Psrが元圧として供給され、ガレージ時の係合圧Pc3を調整するドレン制御が可能になる。このように、切替過渡期にリニアソレノイドバルブSL3にソレノイドバルブSRの信号圧Psrが元圧として供給されることで、クラッチC3の解放制御(ドレン制御)が可能になるため、切替過渡期に発生するショックが抑制される。
【0073】
ここで、ソレノイドバルブSRの出力ポートSRbがフェールセーフバルブ160の第1油室160aに接続されているため、例えばレンジ操作ポジションPOSshが、RポジションからNポジションを経由してDポジションに素早く切り替えられると、フェールセーフバルブ160の第1油室160aに信号圧Psrが入力されることで、Dレンジに切り替わる過渡期にフェールセーフバルブ160がフェール状態に切り替わり、過渡的にオールオフフェールの発生時の変速段が形成されることでショックが発生する虞がある。
【0074】
これに対して、ガレージ制御部106は、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられたとき、ブレーキB2の油圧サーボSVb2に供給される係合圧Pb2が、ノーマリオープン式ソレノイドバルブであるソレノイドバルブSRからの信号圧Psrによりフェールセーフバルブ160におけるスプール弁子160sがフェール位置に切り替えられず、正常位置に維持される所定油圧Pb2rであることを条件にして、ソレノイドバルブSRの通電が遮断されるように構成されている。上記条件が成立した場合には、切替過渡期にソレノイドバルブSRの通電が遮断されてもフェールセーフバルブ160が正常位置で維持される。従って、RポジションからNポジションへの切替過渡期にソレノイドバルブSRから信号圧Psrが出力されても、フェールセーフバルブ160がフェール状態に切り替わることがなく、RポジションからNポジションを経由して素早くDポジションに切り替えられても、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替わることによるショックが防止される。なお、ブレーキB2の油圧サーボSVb2が本発明の第1の油圧サーボに対応し、所定油圧Pb2rが本発明の所定油圧に対応している。
【0075】
上記条件が成立する所定油圧Pb2rは、フェールセーフバルブ160のスプリング160spおよびブレーキB2の係合圧Pb2に基づくスプール弁子160sを正常位置に付勢する付勢力が、ソレノイドバルブSRからの信号圧Psrに基づくフェールセーフバルブ160のスプール弁子160sをフェール位置に付勢する付勢力よりも大きくなる範囲の値となる。図4は、レンジ操作ポジションPOSshのRポジションからNポジションへの切替に当たって、ソレノイドバルブSRの通電領域および非通電流域を示す図である。図4において、横軸がクラッチC3の係合圧Pc3[kPa]に対応し、縦軸がブレーキB2の係合圧Pb2[kPa]に対応している。ここでは、ブレーキB2の係合圧Pb2についてのみ説明する。
【0076】
図4に示す領域Aおよび領域Bは、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられたとき、ブレーキB2の係合圧Pb2が低いためにフェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替わる領域(FSV誤作動領域)に対応している。すなわち、領域Aおよび領域Bでは、ブレーキB2の係合圧Pb2およびスプリング160spに基づくスプール弁子160sを正常位置側に付勢する付勢力F1が、信号圧Psrに基づくスプール弁子160sをフェール位置側に付勢する付勢力F2よりも小さく、ソレノイドバルブSRの信号圧Psrがフェールセーフバルブ160の第1油室160aに入力されると、スプール弁子160sがフェール位置に移動させられる。
【0077】
一方、領域Cおよび領域Dは、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられたとき、ソレノイドバルブSRから信号圧Psrが出力されても、スプール弁子160sが正常位置で維持される領域に対応している。領域Cおよび領域Dでは、ブレーキB2の係合圧Pb2およびスプリング160spに基づくスプール弁子160sを正常位置側に付勢する付勢力F1が、ソレノイドバルブSRから信号圧Psrが出力されたときの信号圧Psrに基づくスプール弁子160sをフェール位置側に付勢する付勢力F2よりも大きくなり、ソレノイドバルブSRの信号圧Psrが第1油室160aに入力されても、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sが正常位置で維持される。
【0078】
ここで、ソレノイドバルブSRから信号圧Psrが出力されてもスプール弁子160sが正常位置で維持されるブレーキB2の係合圧Pb2の下限閾値α(境界値)は、ソレノイドバルブSRの信号圧Psrに基づくフェール位置側への付勢力F2と、ブレーキB2の係合圧Pb2およびスプリング160spに基づく正常位置側への付勢力F2と、が等しいまたは略等しくなる値となる。これより、下限閾値αは、ソレノイドバルブSRが入力される第1油室160aの受圧面積A1、ソレノイドバルブSRの信号圧Psr(すなわちモジュレータ圧Pmod)、ブレーキB2が入力される第2油室160bの受圧面積A2、スプリング160spの付勢力Fspに基づいて算出される。具体的には、下式(1)に基づいて下限閾値αを算出することができる。前記所定油圧Pb2rは、下限閾値αよりも高圧の油圧値に対応する。
Psr×A1=α×A2+Fsp・・・(1)
【0079】
ガレージ制御部106は、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションへの切替を判断すると、ブレーキB2の係合圧Pb2が前記所定油圧Pb2rであるか否か、具体的には、ブレーキB2の係合圧Pb2が下限閾値αよりも高いか否かを判定する。ガレージ制御部106は、ブレーキB2の係合圧Pb2が下限閾値αよりも高い場合にソレノイドバルブSRの通電を遮断し、係合圧Pb2が下限閾値α以下の場合にソレノイドバルブSRを維持する。これより、切替過渡期にフェールセーフバルブ160がフェール状態に切り替えられる場合にはソレノイドバルブSRの通電が維持され、切替過渡期にフェールセーフバルブ160が正常状態に維持される場合にソレノイドバルブSRの通電が遮断されるため、切替過渡期にフェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替えられることが防止される。
【0080】
ブレーキB2の係合圧Pb2は、例えば、電子制御装置100から油圧回路70に出力されるブレーキB2の指示圧Pb2*(指令圧)に基づいて推定された油圧値が適用される。または、ブレーキB2の油圧サーボSVb2の油圧を検出する油圧センサを取り付け、その油圧センサによって検出された係合圧Pb2を適用するものであっても構わない。また、下限閾値αに部品のばらつき等を考慮した余裕値X1を加算した値を判断値に設定し、ブレーキB2の係合圧Pb2がその判断値よりも高いか否かに基づいて、ソレノイドバルブSRの通電を遮断するか否かを判断するものであっても構わない。
【0081】
また、ブレーキB2の係合圧Pb2が下限閾値αよりも高いことを確実に判定するため、ガレージ制御部106は、係合圧Pb2が下限閾値αよりも高い状態が予め設定されている所定時間tk経過したか否かに基づいて、ソレノイドバルブSRの通電を遮断するか否かを判定することもできる。所定時間tkは、実験的または設計的に求められ、係合圧Pb2が下限閾値αよりも高いことが担保される値に設定されている。また、所定時間tkは、油圧の応答性を考慮して油温などに応じて変更されても構わない。
【0082】
また、ガレージ制御部106は、ソレノイドバルブSRの通電を遮断した後も係合圧Pb2が下限閾値αよりも高いか否かを継続して判定し、ガレージ制御中に係合圧Pb2が下限閾値α以下になると、ソレノイドバルブSRの通電の遮断を終了して通電状態に切り替える。これより、ガレージ制御中にフェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に移動することが防止される。ガレージ制御部106は、ガレージ制御によって解放される油圧式摩擦係合装置の解放が完了したことでガレージ制御の終了を判断すると、ソレノイドバルブSRを通電状態に切り替える。また、ガレージ制御部106は、リニアソレノイドバルブSL6の異常が検出された場合、指示圧Pb2*に対する実圧の追従性が担保されないため、ソレノイドバルブSRを通電状態に切り替える。
【0083】
図5は、電子制御装置100の制御作動の要部、すなわちレンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられたときの制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、車両運転中において繰り返し実行される。
【0084】
先ず、ガレージ制御部106の制御機能に対応するステップ(以下、ステップを省略)S10において、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられたことに伴うガレージ制御を実行中であるか否かが判定される。レンジ操作ポジションPOSshの切替が実行されていない場合、または、ガレージ制御が終了した場合には、S10の判定が否定され、ガレージ制御部106の制御機能に対応するS40において、ソレノイドバルブSRが通電される(SRソレノイドをON)。S10の判定が肯定される場合、ガレージ制御部106の制御機能に対応するS20において、ブレーキB2の係合圧Pb2が下限閾値αよりも高いか否かが判定される。S20の判定が否定される場合、S40においてソレノイドバルブSRが通電される。一方、S20の判定が肯定される場合、ガレージ制御部106の制御機能に対応するS30において、ソレノイドバルブSRの通電が遮断される(SRソレノイドをOFF)。このとき、ブレーキB2の係合圧Pb2が下限閾値αよりも高いことから、ソレノイドバルブSRの通電が遮断されてソレノイドバルブSRから信号圧Psrが出力されても、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替わることが防止される。従って、レンジ操作ポジションPOSshがNポジションからDポジションに素早く切り替えられた場合であっても、Dレンジでフェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に過渡的に切り替わることが防止され、切替過渡期のショックが防止される。
【0085】
図6は、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられたときの制御状態を示すタイムチャートである。図6において左側のタイムチャートが従来制御に基づくタイムチャートに対応し、右側のタイムチャートが本実施例におけるタイムチャートに対応している。また、図6において横軸が時間t[sec]に対応し、縦軸が、上から順番にレンジ操作ポジションPOSsh、ソレノイドバルブSRの信号圧Psrの通電指示、クラッチC3の指示圧Pc3*、ブレーキB2の指示圧Pb2*にそれぞれ対応している。
【0086】
t1時点において、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられると、クラッチC3およびブレーキB2の解放制御(ガレージ制御)が開始される。クラッチC3およびブレーキB2ともに、t1時点において指示圧が所定値だけ低下させられ、その後指示圧が一時的に待機された後、所定の勾配でゼロに向かって低下させられている。また、t1時点において、クラッチC3の解放制御を実行するための元圧を確保するため、ソレノイドバルブSRの通電が遮断(OFF)されている。t2時点において、ブレーキB2の指示圧Pb2*が下限閾値αになると、本実施例では、ソレノイドバルブSRが通電(ON)に切り替えられている。従って、ガレージ制御中にフェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替わることが防止される。t3時点では、ブレーキB2の指示圧Pb2*がゼロになったことで、ガレージ制御の終了が判断され、従来制御ではt3時点でソレノイドバルブSRが通電(ON)に切り替えられる。
【0087】
上述のように、本実施例によれば、レンジ操作ポジションPOSshがDポジションにあるときに全てのソレノイドバルブが非通電状態になると、ソレノイドバルブSRからの信号圧Psrによって、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替えられ、フェールセーフバルブ160からクラッチC4の油圧サーボSVc4に前進レンジ圧PDが供給されることで所定の前進段が形成される。これより、所定の前進段による退避走行が可能になる。また、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられたとき、ソレノイドバルブSRからの信号圧Psrが、後進段を形成するクラッチC3の油圧サーボSVc3に係合圧Pc3を出力するリニアソレノイドバルブSL3の元圧として供給されることで、後進段を形成するクラッチC3の油圧サーボSVc3の油圧制御が可能になり、切替過渡期に発生するショックが抑制される。このとき、ブレーキB2の油圧サーボSVb2の油圧(係合圧Pb2)が、ソレノイドバルブSRからの信号圧Psrによりフェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替えられず、正常位置に維持される所定油圧Pb2rであることを条件にしてソレノイドバルブSRの通電が遮断されるため、切替過渡期にフェールセーフバルブ160のスプール弁子160sがフェール位置に切り替わることが抑制される。これより、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションを経由してDポジションに素早く切り替えられた場合であっても、フェールセーフバルブ160がフェール位置に切り替えられてフェールセーフバルブ160から前進レンジ圧PDがクラッチC4の油圧サーボSVc4に供給されることが抑制され、Dレンジで油圧サーボSVc4に前進レンジ圧PDが供給されることによるショックを防止することができる。
【0088】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例0089】
前述の実施例では、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられたとき、ブレーキB2の油圧サーボSVb2の油圧(係合圧Pb2)が所定油圧Pb2rであることを条件にしてソレノイドバルブSRの通電が遮断されるものであった。本実施例では、さらに、後進段を形成するクラッチC3の油圧サーボSVc3の油圧(係合圧Pc3)が、クラッチC3の油圧サーボSVc3の解放制御(ドレン制御)が必要になる所定油圧Pc3rであることを条件にして、ソレノイドバルブSRの通電を遮断するように構成されている。なお、クラッチC3の油圧サーボSVc3が、本発明の後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボに対応し、所定油圧Pc3rが、本発明の第2の所定油圧に対応している。
【0090】
前述した図4において、横軸はクラッチC3の係合圧Pc3を示している。図4において、領域Bおよび領域Dは、ガレージ制御中にクラッチC3の解放制御(ドレン制御)を実行するに当たって、リニアソレノイドバルブSL3に供給される元圧を確保する必要がある領域に対応している。すなわち、領域Bおよび領域Dは、信号圧Psrを元圧にしてリニアソレノイドバルブSL3によるクラッチC3の係合圧Pc3の解放制御を実行する必要のある領域に対応している。一方、領域Aおよび領域Cは、クラッチC3の係合圧Pc3が低圧であり、クラッチC3の解放制御を実行する必要がない、すなわち元圧してソレノイドバルブSRの信号圧Psrが不要な領域に対応している。
【0091】
ガレージ制御においてソレノイドバルブSRの通電が遮断されるのは、クラッチC3の解放制御を実行するための元圧(信号圧Psr)の確保を目的としており、クラッチC3がトルク容量を持たない程度に低圧である場合には、解放制御を実行する必要がなく、元圧の確保が不要になる。このような場合には、ソレノイドバルブSRの通電を遮断しないことで、ソレノイドバルブSRの通電が維持される。
【0092】
ここで、クラッチC3の解放制御が必要になる、領域A・Cと領域B・Dとの境界である下限閾値βとして、例えば、クラッチC3がトルク容量を持ち出す直前の油圧であるパックエンド圧Pendに、部品のバラツキ等を考慮した余裕値X2を加算した値が設定される。すなわち、下限閾値βが下式(2)で算出される値となる。前記所定油圧Pc3rは、クラッチC3がトルク容量を有する油圧値の範囲であり、下限閾値βよりも高圧の油圧値に対応する。
β=Pend+X2・・・(2)
【0093】
本実施例におけるガレージ制御部106a(前述の実施例と区別するため符号を106aに変更)は、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられると、ブレーキB2の油圧サーボSVb2の係合圧Pb2が所定油圧Pb2rであり、且つ、後進段を形成するクラッチC3の油圧サーボSVc3の係合圧Pc3が所定油圧Pc3rであることを条件にして、ソレノイドバルブSRの通電を遮断する。すなわち、ガレージ制御部106aは、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられると、ブレーキB2の係合圧Pb2が下限閾値αよりも高く、且つ、クラッチC3の係合圧Pc3が下限閾値βよりも高いか否かを判定し、ブレーキB2の係合圧Pb2が下限閾値αよりも高く、且つ、クラッチC3の係合圧Pc3が下限閾値βよりも高いと判定された場合に、ソレノイドバルブSRの通電を遮断する。一方、ガレージ制御部106aは、ブレーキB2の係合圧Pb2が下限閾値α以下、および、クラッチC3の係合圧Pb2が下限閾値β以下の少なくとも一方を満たした場合、ソレノイドバルブSRの通電を維持する。クラッチC3の係合圧Pc3は、例えば、クラッチC3の指示圧Pc3*に基づいて推定された油圧値、または、油圧センサによって直接検出された油圧値が適用される。また、係合圧Pc3が下限閾値βよりも高いことを確実に判定するため、係合圧Pc3が下限閾値βよりも高い状態が所定時間tl経過したか否かを判定するものであっても構わない。
【0094】
また、ガレージ制御部106aは、ソレノイドバルブSRの通電を遮断した後も、ブレーキB2の係合圧Pb2が下限閾値αよりも高いか否か、および、クラッチC3の係合圧Pc3が下限閾値βよりも高いか否かを継続して判定し、これらの少なくとも一方を満たさなくなると、ソレノイドバルブSRを通電状態に切り替える。また、ガレージ制御部106aは、ガレージ制御が終了したことを判断すると、ソレノイドバルブSRを通電状態に切り替える。
【0095】
図7は、本実施例における電子制御装置100の制御作動の要部、すなわちレンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられたときの制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、車両運転中において繰り返し実行される。
【0096】
先ず、ガレージ制御部106aの制御機能に対応するS10において、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられたことに伴うガレージ制御の実行中であるか否かが判定される。レンジ操作ポジションPOSshの切替が実行されていない場合、または、ガレージ制御が終了した場合には、S10の判定が否定され、ガレージ制御部106aの制御機能に対応するS40において、ソレノイドバルブSRが通電される(SRソレノイドON)。S10の判定が肯定される場合、ガレージ制御部106aの制御機能に対応するS100において、ブレーキB2の係合圧Pb2が下限閾値αよりも高く、且つ、クラッチC3の係合圧Pc3が下限閾値βよりも高いか否かが判定される。S100の判定が否定される場合、ガレージ制御部106aの制御機能に対応するS40において、ソレノイドバルブSRが通電される。一方、S100の判定が肯定される場合、ガレージ制御部106aの制御機能に対応するS30において、ソレノイドバルブSRの通電が遮断され(SRソレノイドOFF)、クラッチC3のドレン制御に伴う元圧(信号圧Psr)が確保される。このように、ソレノイドバルブSRの通電の遮断が、クラッチC3のドレン制御に伴う元圧の確保が必要な領域に限定されることで、ソレノイドバルブSRの不要な通電状態の遮断が抑制される。
【0097】
上述のように、本実施例によっても前述の実施例と同様の効果を得ることができる。また、本実施例によれば、レンジ操作ポジションPOSshがRポジションからNポジションに切り替えられたとき、さらに、後進段を形成するクラッチC3の油圧サーボSVc3の油圧が、そのクラッチC3の油圧制御が必要となる所定油圧Pc3rであることを条件にして、ソレノイドバルブSRの通電が遮断されるため、ソレノイドバルブSRの信号圧Psrを元圧にして後進段を形成するクラッチC3の油圧サーボSVc3の油圧制御が不要な場合には、ソレノイドバルブSRの通電が維持されることで、ソレノイドバルブSRの不要な通電の遮断をなくすことができる。
【0098】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0099】
例えば、前述の実施例では、ソレノイドバルブSRの信号圧Psrが、フェールセーフバルブ160の第1油室160aに入力されるとともに、クラッチC3の係合圧Pc3を制御するリニアソレノイドバルブSL3の元圧として供給されるように構成されていたが、必ずしも本実施例の態様のソレノイドバルブSRに限定されない。すなわち、非通電状態で油圧を出力するノーマリオープン式ソレノイドバルブから構成され、出力された油圧が、後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボに係合圧を出力するノーマリクローズ式ソレノイドバルブの元圧として供給されるとともに、フェールセーフバルブのスプール弁子をフェール位置に向かって付勢するための油室に供給されるように構成されるソレノイドバルブであれば、適宜適用することができる。
【0100】
また、前述の実施例では、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sを正常位置に付勢する油圧としてブレーキB2の係合圧Pb2が第2油室160bが供給されるものであったが、必ずしもブレーキB2の係合圧Pb2に限定されない。すなわち、油圧式摩擦係合装置の油圧サーボの油圧が入力されることで、フェールセーフバルブ160のスプール弁子160sが正常位置に付勢されるように構成される限りにおいて、油圧式摩擦係合装置の油圧サーボを適宜変更することができる。
【0101】
また、前述の実施例では、1速前進段1ST~4速前進段4THで走行中にオールオフフェールが発生すると、所定の前進段として4速前進段4THが形成され、5速前進段5TH~10速前進段10THで走行中にオールオフフェールが発生すると、所定の前進段として8速前進段が形成されるように構成されるものであったが、必ずしも4速前進段4THまたは8速前進段8THに限定されるものではなく、所定の変速段を適宜変更することができる。また、油圧回路70において、コントロールバルブ150は必ずしも必須ではなく、これを省略して実施することもできる。例えば、1速前進段1ST~10速前進段10THに何れの前進段であっても、走行中にオールオフフェールが発生した場合には単一の所定の変速段が形成されるようにすることで、コントロールバルブ150を省略することができる。
【0102】
また、前述の実施例では、自動変速機20が、第1遊星歯車装置22~第4遊星歯車装置28、クラッチC1~C4、ブレーキB1、B2を含んで構成され、10速の前進段および1速の後進段に切替可能に構成されるものであったが、変速段の数や構造については本実施例の態様に限定されず、適宜変更され得る。ここで、自動変速機の構造が変更されるに伴い、前進段および後進段を形成するクラッチおよびブレーキの作動状態の組み合わせが変更されるため、それに合わせて、フェールセーフバルブ160の第2油室160bに供給される油圧式摩擦係合装置の係合圧、および、信号圧Psrが元圧として供給されるリニアソレノイドバルブが適宜変更される。
【0103】
また、前述の実施例のフェールセーフバルブ160の構造は、本実施例の態様に限定されず適宜変更することができる。要は、ソレノイドバルブSRが入力されるとスプール弁子がフェール位置に切り替えられるように構成されるフェールセーフバルブであれば、矛盾の生じない範囲で適宜変更することができる。
【0104】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0105】
20:自動変速機
70:油圧回路
72:油圧制御装置
100:電子制御装置(制御装置)
110:マニュアルバルブ
160:フェールセーフバルブ(切替バルブ)
160s:スプール弁子
160sp:スプリング(付勢部材)
B1、B2:ブレーキ(油圧式摩擦係合装置)
C1~C4:クラッチ(油圧式摩擦係合装置)
SL1~SL6:リニアソレノイドバルブ(ノーマリクローズ式ソレノイドバルブ)
SR:ソレノイドバルブ(ノーマリオープン式ソレノイドバルブ)
SVc1~SVb2:複数個の油圧サーボ
SVb2:油圧サーボ(第1の油圧サーボ)
SVc4:油圧サーボ(第2の油圧サーボ)
SVc3:油圧サーボ(後進段を形成する油圧式摩擦係合装置の油圧サーボ)
POSsh:レンジ操作ポジション(レンジ操作位置)
PD:前進レンジ圧
PR:後進レンジ圧
Pb2r:所定油圧
Pc3r:所定油圧(第2の所定油圧)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7