(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146808
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220928BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220928BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B32B15/08 L
B32B27/20 Z
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047976
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴井 一彦
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA00A
4F100AA20A
4F100AB00B
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AK00A
4F100AK49A
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA23A
4F100DA20A
4F100EJ08A
4F100EJ67A
4F100GB43
4F100JB16A
4F100JG04A
4F100JK07A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】良好な機械強度を呈すると共に所期の誘電特性を呈する硬化物を得ることができる樹脂シート等の提供。
【解決手段】真空プレス処理を用いた絶縁層形成用の樹脂シートであって、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含み、支持体が、金属箔を有し、樹脂組成物層が、(A)ラジカル重合性化合物を含有する、樹脂シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空プレス処理を用いた絶縁層形成用の樹脂シートであって、
支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含み、
支持体が、金属箔を有し、
樹脂組成物層が、(A)ラジカル重合性化合物を含有する、樹脂シート。
【請求項2】
(A)成分が、マレイミド基を含有するラジカル重合性化合物を含む、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
金属箔が、銅箔を含む、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
樹脂組成物層の60℃から200℃における動的粘弾性測定において、100℃以上でのtanδの最大値が、2.0以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項5】
樹脂組成物層が、さらに、(B)熱可塑性樹脂を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項6】
樹脂組成物層が、さらに、(C)無機充填材を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項7】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、50質量%以上である、請求項6に記載の樹脂シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項9】
請求項8に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【請求項10】
(1)内層基板上に、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂シートを、真空プレス処理にて積層させる工程、及び
(2)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程、
を含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関する。さらには、当該樹脂シートを用いて得られる、プリント配線板、半導体装置、及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造において、絶縁層は、例えば特許文献1に記載されているように、真空ラミネート法等を用いて回路基板上に樹脂シートの樹脂組成物層をラミネートし硬化させることにより形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今の高速伝送化に伴い、絶縁材料の更なる低誘電率化及び低誘電正接化が求められている。斯かる誘電特性の改善にあたり、絶縁材料に用いる硬化性化合物としてラジカル重合性化合物が期待されている。しかし、斯かるラジカル重合性化合物を用いて硬化物(絶縁層)を形成したところ、得られる硬化物は機械強度に劣る場合があり、また、所期の誘電特性を呈さない場合があった。
【0005】
本発明の課題は、良好な機械強度を呈すると共に所期の誘電特性を呈する硬化物を得ることができる樹脂シート;当該樹脂シートを用いて形成されたプリント配線板、半導体装置;及びプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、金属箔を含む支持体と、該支持体上に設けられた、(A)ラジカル重合性化合物を含有する樹脂組成物層とを含む樹脂シートを用いて、真空プレス処理により絶縁層を形成することで上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] 真空プレス処理を用いた絶縁層形成用の樹脂シートであって、
支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含み、
支持体が、金属箔を有し、
樹脂組成物層が、(A)ラジカル重合性化合物を含有する、樹脂シート。
[2] (A)成分が、マレイミド基を含有するラジカル重合性化合物を含む、[1]に記載の樹脂シート。
[3] 金属箔が、銅箔を含む、[1]又は[2]に記載の樹脂シート。
[4] 樹脂組成物層の60℃から200℃における動的粘弾性測定において、100℃以上でのtanδの最大値が、2.0以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂シート。
[5] 樹脂組成物層が、さらに、(B)熱可塑性樹脂を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂シート。
[6] 樹脂組成物層が、さらに、(C)無機充填材を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂シート。
[7] (C)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、50質量%以上である、[6]に記載の樹脂シート。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層を含む、プリント配線板。
[9] [8]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
[10] (1)内層基板上に、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂シートを、真空プレス処理にて積層させる工程、及び
(2)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程、
を含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な機械強度を呈すると共に所期の誘電特性を呈する硬化物を得ることができる樹脂シート;当該樹脂シートを用いて形成されたプリント配線板、半導体装置;及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ラジカル重合性化合物の液状、半固形状、及び固形状の判定に用いた2本の試験管の一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0011】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、真空プレス処理を用いた絶縁層形成用の樹脂シートである。該樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含み、支持体が金属箔を有し、樹脂組成物層が(A)ラジカル重合性化合物を含有することを特徴とする。
【0012】
誘電特性の改善にあたり、絶縁材料に用いる硬化性化合物として、極性の低い反応性官能基であるラジカル重合性不飽和基を有する化合物(ラジカル重合性化合物)を利用することが考えられる。しかし、ラジカル重合性化合物を用いて硬化物(絶縁層)を形成したところ、得られる絶縁層は、機械強度に劣る場合があり、また、所期の誘電特性を呈さない場合があった。これに対し、金属箔を含む支持体と、該支持体上に設けられたラジカル重合性化合物を含有する樹脂組成物層とを含む本発明の樹脂シートを用いて、真空プレス処理により絶縁層(樹脂組成物層の硬化物)を形成することで、得られる絶縁層が、良好な機械強度を呈し柔軟性(MIT耐折性)に優れると共に、所期の誘電特性を呈することを本発明者らは見出した。なお、樹脂シート(の樹脂組成物層)を用いて絶縁層を形成するにあたり従来用いられる真空ラミネート法に比し、真空プレス処理では、積層時に樹脂シート(の樹脂組成物層)に付与される圧力が高く、樹脂の染み出しに起因して所期の絶縁層厚みが得られない場合があるという新たな課題が生じることを本発明者らは確認している。斯かる真空プレス処理後の絶縁層の厚みのズレ(目標厚みとの異同)に関し、樹脂組成物層中の残留溶剤量や、樹脂組成物層の動的粘弾性における特定温度域でのtanδの最大値(ここで、tanδは、貯蔵弾性率E’(GPa)と損失弾性率E’’(Pa)の比E’’/E’である。)と関係することを確認し、これら残留溶剤量やtanδの最大値に基づく解決指針と併せて後述することとする。
【0013】
以下、樹脂シートを構成する各層について詳述する。
【0014】
<支持体>
本発明の樹脂シートにおいて、支持体は金属箔を有する。これにより、支持体から後述する導体層を形成することができる。
【0015】
金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0016】
金属箔は、単層構造であっても、異なる種類の金属もしくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。複層構造の金属箔としては、例えば、キャリア金属箔と、該キャリア金属箔と接合する極薄金属箔とを含む金属箔が挙げられる。斯かる複層構造の金属箔は、キャリア金属箔と極薄金属箔との間に、キャリア金属箔から極薄金属箔を剥離可能とする剥離層を含んでもよい。剥離層は、キャリア金属箔から極薄金属箔を剥離できれば特に限定されず、例えば、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pからなる群から選択される元素の合金層;有機被膜等が挙げられる。なお、支持体として複層構造の金属箔を用いる場合、樹脂組成物層は、極薄金属箔上に設けられる。
【0017】
金属箔の製造方法は特に限定されないが、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。
【0018】
支持体は市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製の「HLP箔」、「JXUT-III箔」、三井金属鉱山社製の「マイクロシンMT-Ex銅箔」、「TP-III箔」等が挙げられる。
【0019】
支持体の厚さは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下、35μm以下、30μm以下であり、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上などとし得る。なお、金属箔が複層構造の場合、金属箔全体の厚さが斯かる範囲であることが好ましく、そのうち極薄金属箔の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下の範囲であってよい。
【0020】
<樹脂組成物層>
本発明の樹脂シートにおいて、支持体上に設けられた樹脂組成物層は、(A)ラジカル重合性化合物を含有する。
【0021】
樹脂組成物層は、(A)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(B)熱可塑性樹脂、(C)無機充填材、(D)重合開始剤、及び(E)その他の添加剤等が挙げられる。以下、樹脂組成物層に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0022】
-(A)ラジカル重合性化合物-
樹脂組成物層は、(A)成分として、ラジカル重合性化合物を含む。金属箔を含む支持体と共に、(A)成分を含有する樹脂組成物層を用いることにより、誘電特性に優れる硬化物を得ることが可能となる。(A)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
(A)成分としては、熱又は光により生じたラジカルによって重合し得る化合物、即ちラジカル重合性不飽和基を有する化合物を用いることができる。ラジカル重合性不飽和基としては、例えば、活性エネルギー線の照射により硬化性を示すエチレン性二重結合を有する基が挙げられる。このようなラジカル重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基、フマロイル基、及びマレオイル基が挙げられ、マレイミド基、アリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0024】
(A)成分としては、ラジカル重合性不飽和基を1個以上有することが好ましく、2個以上有することがより好ましい。上限については特に制限はないが、10個以下等とし得る。
【0025】
ラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、マレイミド基を含有するラジカル重合性化合物(マレイミド系ラジカル重合性化合物)、ビニルフェニル基を含有するラジカル重合性化合物(ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物)、(メタ)アクリロイル基を含有するラジカル重合性化合物((メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物)、アリル基を含有するラジカル重合性化合物(アリル系ラジカル重合性化合物)、及びブタジエン骨格を含有するラジカル重合性化合物(ブタジエン系ラジカル重合性化合物)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、マレイミド系ラジカル重合性化合物、ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物、アリル系ラジカル重合性化合物、及び(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物の少なくともいずれかを含むことがより好ましく、マレイミド系ラジカル重合性化合物を含むことがさらに好ましい。
【0026】
マレイミド系ラジカル重合性化合物は、下記式(A-1)で表されるマレイミド基を分子中に含有する化合物である。
【化1】
【0027】
マレイミド系ラジカル重合性化合物は、以下(A1)~(A3)のいずれかのマレイミド系ラジカル重合性化合物であることが好ましい。樹脂組成物層は、(A1)~(A3)のマレイミド系ラジカル重合性化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、(A1)~(A3)のマレイミド系ラジカル重合性化合物を複数含むことがより好ましく、(A1)~(A3)のマレイミド系ラジカル重合性化合物をすべて含むことがさらに好ましい。
(A1)固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物。
(A2)液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物。
(A3)芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド系ラジカル重合性化合物。
但し、(A1)及び(A2)のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、(A3)のマレイミド系ラジカル重合性化合物に該当するものは除かれる。
【0028】
ここで、液状、半固形状、及び固形状の判定は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行う。具体的な判定方法は、下記のとおりである。
【0029】
(1)装置
恒温水槽:
攪拌機、ヒーター、温度計、自動温度調節器(±0.1℃で温度制御が可能なもの)を備えたもので深さ150mm以上のものを用いる。
なお、液状、半固形状、及び固形状の判定では、いずれもヤマト科学社製の低温恒温水槽(型式BU300)と投入式恒温装置サーモメイト(型式BF500)の組み合わせを用い、水道水約22リットルを低温恒温水槽(型式BU300)に入れ、これに組み付けられたサーモメイト(型式BF500)の電源を入れて設定温度(20℃又は60℃)に設定し、水温を設定温度±0.1℃にサーモメイト(型式BF500)で微調整しうるが、同様の調整が可能な装置であればいずれも使用できる。
【0030】
試験管:
試験管としては、
図1に示すように、内径30mm、高さ120mmの平底円筒型透明ガラス製のもので、管底から55mmおよび85mmの高さのところにそれぞれ標線11A、12Bが付され、試験管の口をゴム栓13aで密閉した液状判定用試験管10aと、同じサイズで同様に標線が付され、中央に温度計を挿入・支持するための孔があけられたゴム栓13bで試験管の口を密閉し、ゴム栓13bに温度計14を挿入した温度測定用試験管10bを用いる。以下、管底から55mmの高さの標線を「A線」、管底から85mmの高さの標線を「B線」という。
温度計14としては、JIS B7410(1982)「石油類試験用ガラス製温度計」に規定する凝固点測定用のもの(SOP-58目盛範囲0~100℃)を用いるが、0~100℃の温度範囲が測定できるものであればよい。
【0031】
(2)試験の実施手順
温度60±5℃の大気圧下で24時間以上放置した試料を、
図1(a)に示す液状判定用試験管10aと
図1(b)に示す温度測定用試験管10bにそれぞれ11A線まで入れる。2本の試験管10a、10bを低温恒温水槽に12B線が水面下になるように直立させて静置する。温度計は、その下端が11A線よりも30mm下となるようにする。
試料温度が設定温度±0.1℃に達してから10分間そのままの状態を保持する。10分後、液状判断用試験管10aを低温恒温水槽から取り出し、直ちに水平な試験台の上に水平に倒し、試験管内の液面の先端が11A線から12B線まで移動した時間をストップウォッチで測定し、記録する。
【0032】
同様に、温度20±5℃の大気圧下で24時間以上放置した試料についても、温度60±5℃の大気圧下で24時間以上放置した場合と同様に試験を実施し、試験管内の液面の先端が11A線から12B線まで移動した時間をストップウォッチで測定し、記録する。
【0033】
20℃において、測定された時間が90秒以内のものを液状と判定する。
20℃において、測定された時間が90秒を超え、60℃において、測定された時間が90秒以内のものを半固形状と判定する。
60℃において、測定された時間が90秒を超えるものを固体状と判定する。
【0034】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物の1分子当たりのマレイミド基の数は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1個以上、より好ましくは2個以上で、さらに好ましくは3個以上であり、好ましくは10個以下、より好ましく6個以下、特に好ましくは3個以下である。
【0035】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれかを有することが好ましく、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を有することがより好ましい。
【0036】
脂肪族炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、2価の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0037】
芳香族炭化水素基としては、1価及び2価の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基及びアリーレン基がより好ましい。アリーレン基としては、炭素原子数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~20のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基等が挙げられ、中でも、フェニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基が好ましく、フェニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基がより好ましい。アリール基としては、炭素原子数6~30のアリール基が好ましく、炭素原子数6~20のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0038】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物において、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、マレイミド基の窒素原子は、1価又は2価の芳香族炭化水素基と直接結合していることが好ましい。ここで、「直接」とは、マレイミド基の窒素原子と芳香族炭化水素基との間に他の基がないことをいう。
【0039】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、例えば下記式(A-2)により表される構造であることが好ましい。
【化2】
式(A-2)中、R
31及びR
36はマレイミド基を表し、R
32、R
33、R
34及びR
35は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Dはそれぞれ独立に2価の芳香族基を表す。m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、aは1~100の整数を表す。
【0040】
式(A-2)中のR32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、水素原子が好ましい。
【0041】
アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖状、分枝状又は環状であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0042】
アリール基は、炭素原子数6~20のアリール基が好ましく、炭素原子数6~15のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。アリール基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0043】
アルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-10アルキル基)2、C1-20アルキル基、C2-30アルケニル基、C2-30アルキニル基、C6-10アリール基、-NH2、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO2等が挙げられる。ここで、「Cp-q」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。
【0044】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0045】
式(A-2)中のDは2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基等が挙げられ、中でも、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基が好ましく、ビフェニレン基がより好ましい。2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(A-2)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0046】
m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2であり、1がよりさらに好ましい。
【0047】
aは1~100の整数を表し、好ましくは1~50、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~5である。
【0048】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物としては、式(A-3)で表される樹脂が好ましい。
【化3】
式(A-3)中、R
37及びR
38はマレイミド基を表す。a1は1~100の整数を表す。
【0049】
a1は、式(A-2)中のaと同じであり、好ましい範囲も同様である。
【0050】
固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」等が挙げられる。
【0051】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、マレイミド基を分子中に少なくとも1つ有し、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物であることが好ましい。液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、例えば、脂肪族アミン化合物(ダイマー酸骨格を有するジアミン化合物など)と、マレイン酸無水物と、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物とを含む成分をイミド化反応させることにより得ることができる。
【0052】
炭素原子数5以上の脂肪族基は、1価でもよく、2価でもよく、3価以上でもよい。炭素原子数5以上の脂肪族基は、飽和脂肪族基であってもよく、不飽和脂肪族基であってもよい。炭素原子数5以上の脂肪族基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基、及び、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルケニレン基からなる群より選ばれる少なくとも一の炭化水素基を含むマレイミド化合物が好ましい。例えば、液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基、からなる群より選ばれる少なくとも一の炭化水素基を含むマレイミド化合物が好ましい。また、液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルケニレン基、からなる群より選ばれる少なくとも一の炭化水素基を含むマレイミド化合物が好ましい。
【0053】
脂肪族基の炭素原子数は、通常、5以上である。本発明の効果を顕著に得る観点から、脂肪族基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。本明細書において、ある基が置換基を含む場合、別に断らない限り、その置換基の炭素原子数は、前記の基の炭素原子数には含めない。よって、炭素原子数5以上の脂肪族基が置換基を含む場合、その置換基の炭素原子数は、別に断らない限り、炭素原子数5以上の脂肪族基の炭素原子数には含めない。
【0054】
炭素原子数が5以上のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。炭素原子数が5以上のアルキル基は、炭素原子数が5以上のアルキレン基及び炭素原子数が5以上のアルケニレン基の置換基として有されていてもよい。
【0055】
炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルキレン基とは、環状のアルキレン基のみからなる狭義のものだけでなく、直鎖状のアルキレン基と環状のアルキレン基との両方を含む広義のものも含める概念である。このようなアルキレン基としては、例えば、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0056】
炭素原子数が5以上のアルケニレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルケニレン基とは、環状のアルケニレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルケニレン基と環状のアルケニレン基との両方を含む場合とを含める概念である。このようなアルケニレン基としては、例えば、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチレニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、ヘプタデシニレン基、ヘキサトリアコンチニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
【0057】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物において、炭素原子数が5以上の脂肪族基は、マレイミド基の窒素原子と直接結合していることが好ましい。ここで、「直接」とは、マレイミド基の窒素原子と脂肪族基との間に他の基がないことをいう。
【0058】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、本発明の効果を顕著に得る観点から、炭素原子数が5以上の脂肪族基を2以上含むことが好ましい。
【0059】
炭素原子数が5以上の脂肪族基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。互いに結合して形成された環としては、例えば、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0060】
炭素原子数が5以上の脂肪族基は、置換基を有していなくてもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(A-2)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0061】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、芳香環を分子中に含むことが好ましい。よって、液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基及び芳香環を含むマレイミド化合物が好ましい。芳香環は、単環式の芳香環でもよく、2個以上の単環式の芳香環が縮合した縮合芳香環でもよい。これらの芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環等の単環式芳香環;インダン環、フルオレン環、ナフタレン環等の縮合芳香環;が挙げられる。中でも、芳香環は、芳香族炭素環が好ましい。芳香族炭素環の炭素原子数は、好ましくは6以上10以下である。
【0062】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物の1分子当たりのマレイミド基の数は、1個でもよいが、好ましくは2個以上であり、好ましくは10個以下、より好ましく6個以下、特に好ましくは3個以下である。1分子当たり2個以上のマレイミド基を有する液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物を用いることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0063】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は、本発明の効果を顕著に得る観点から、下記一般式(A-4)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。
【化4】
一般式(A-4)中、Rは置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
【0064】
一般式(A-4)におけるRは、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。この2価の脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状の2価の脂肪族基とは、環状の脂肪族基のみからなる場合と、直鎖状の脂肪族基と環状の脂肪族基との両方を含む場合とを含める概念である。2価の脂肪族基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。アルキレン基、及びアルケニレン基については上述したとおりである。
【0065】
Rの置換基としては、一般式(A-2)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0066】
一般式(A-4)におけるLは単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NR
0-(R
0は水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、C(=O)NR
0-、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及びこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基等が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及び2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、炭素原子数が5以上のアルキル基を置換基として有していてもよい。フタルイミド由来の2価の基とは、フタルイミドから誘導される2価の基を表し、具体例としては一般式(A-5)で表される基が挙げられる。ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基とは、ピロメリット酸ジイミドから誘導される2価の基を表し、具体例としては一般式(A-6)で表される基が挙げられる。式中、「*」は結合手を表す。
【化5】
【0067】
一般式(A-4)中のLのおける2価の連結基としてのアルキレン基は、炭素原子数1~50のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~45のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~40のアルキレン基が特に好ましい。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチルエチレン基(2-プロピレン基)、シクロヘキシレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0068】
一般式(A-4)におけるLにおける2価の連結基としてのアルケニレン基は、炭素原子数2~50のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~45のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~40のアルケニレン基が特に好ましい。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニレン基としては、例えば、メチルエチレニレン基(2-プロペニレン基)、シクロヘキセニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基、ノネニレン基、デセニレン基、ウンデセニレン基、ドデセレン基、トリデセニレン基、ヘプタデセニレン基、ヘキサトリアコンテニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
【0069】
一般式(A-4)におけるLにおける2価の連結基としてのアルキニレン基は、炭素原子数2~50のアルキニレン基が好ましく、炭素原子数2~45のアルキニレン基がより好ましく、炭素原子数2~40のアルキニレン基が特に好ましい。このアルキニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキニレン基としては、例えば、2-プロピニレン基、シクロヘキシニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、ヘプタデシニレン基、ヘキサトリアコンチニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
【0070】
一般式(A-4)におけるLにおける2価の連結基としてのアリーレン基は、炭素原子数6~24のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~18のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~14のアリーレン基がさらに好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらにより好ましい。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
【0071】
一般式(A-4)におけるLにおける2価の連結基であるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(A-2)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様であり、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0072】
一般式(A-4)におけるLにおける2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、例えば、アルキレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる2価の基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基;アルキニレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキニレン基の組み合わせからなる2価の基;アルキニレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基;等が挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、それぞれの基の組み合わせにより縮合環等の環を形成してもよい。また、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、繰り返し単位数が1~10の繰り返し単位であってもよい。
【0073】
中でも、一般式(A-4)におけるLとしては、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキニレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルケレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基であることが好ましい。中でも、Lとしては、アルキレン基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルケレン基;アルケレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルケレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルケレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキケレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキニレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキニレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキニレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキニレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基がより好ましい。
【0074】
一般式(A-4)で表されるマレイミド化合物は、一般式(A-7)で表されるマレイミド化合物であることが好ましい。
【化6】
一般式(A-7)中、R
100はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。nは1~10の整数を表す。
【0075】
一般式(A-7)におけるR100はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。R1は、一般式(A-4)中のRと同様である。
【0076】
一般式(A-7)におけるAはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Aにおける2価の脂肪族基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。Aにおける2価の脂肪族基としては、鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも環状、即ち置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状の2価の脂肪族基が好ましい。
【0077】
アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このようなアルキレン基としては、例えば、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0078】
炭素原子数が5以上のアルケニレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルケニレン基とは、環状のアルケニレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルケニレン基と環状のアルケニレン基との両方を含む場合とを含める概念である。このようなアルケニレン基としては、例えば、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチレニレン基、オクチニレン基、ノネニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、ヘプタデシニレン基、ヘキサトリアコンチニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
【0079】
Aが表す芳香環を有する2価の基における芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環、芳香族複素環等が挙げられ、ベンゼン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環が好ましい。即ち、芳香環を有する2価の基としては、置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基、置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基、置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基が好ましい。芳香環を有する2価の基としては、例えば、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;等が挙げられる。上記アリーレン基は、一般式(2)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基と同様である。
【0080】
一般式(A-7)におけるAが表す、2価の脂肪族基及び芳香環を有する2価の基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(A-2)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0081】
中でも、一般式(A-7)におけるAとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状のアルキレン基;置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基;置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基;又は置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基を表すことが好ましい。
【0082】
一般式(A-7)におけるAが表す基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化7】
【化8】
【0083】
一般式(A-4)で表されるマレイミド化合物は、一般式(A-8)で表されるマレイミド化合物、及び一般式(A-9)で表されるマレイミド化合物のいずれかであることが好ましい。
【化9】
一般式(A-8)中、R
2a及びR
3aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、R
10aはそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基を表す。n1は1~10の整数を表す。
一般式(A-9)中、R
4a、R
6a及びR
7aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、R
5aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表し、R
11a及びR
12aはそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。t2は0~10の整数を表し、m1及びm2はそれぞれ独立に0~4の整数を表す。
【0084】
一般式(A-8)におけるR2a及びR3aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。R2a及びR3aは、一般式(A-4)中のRが表す炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基と同様であり、ヘキサトリアコンチニレン基、ヘキサトリアコンチレン基が好ましい。
【0085】
一般式(A-8)におけるR10aはそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基、又はこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基を表す。アリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基は、一般式(A-4)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基、アルキレン基、アルケニレン基と同様である。R10aとしては、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基又は酸素原子であることが好ましい。
【0086】
一般式(A-8)におけるR
10aにおける2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、酸素原子、アリーレン基、及びアルキレン基の組み合わせが挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化10】
【0087】
一般式(A-9)におけるR4a、R6a及びR7aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。R4a、R6a及びR7aは、一般式(A-4)中のRが表す置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基と同様であり、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が好ましく、オクチレン基がより好ましい。
【0088】
一般式(A-9)におけるR5aはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。R5aは、一般式(A-7)中のAが表す置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基と同様であり、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基がより好ましい。アルキレン基は、一般式(A-4)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。
【0089】
一般式(A-9)におけるR
5aが表す基の具体例としては、例えば以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化11】
【0090】
一般式(A-9)におけるR11a及びR12aはそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。R11a及びR12aは、上記した炭素原子数が5以上のアルキル基と同様であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が好ましく、ヘキシル基、オクチル基がより好ましい。
【0091】
一般式(A-9)におけるm1及びm2はそれぞれ独立に1~15の整数を表し、1~10の整数が好ましい。
【0092】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物の具体例としては、以下の(A-10)~(A-13)の化合物を挙げることができる。但し、液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物はこれら具体例に限定されるものではない。式中、aは1~10の整数を表す。
【化12】
【化13】
【0093】
液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物は市販品を用いることができる。液状又は半固形状のマレイミド系ラジカル重合性化合物の具体例としては、デジグナーモレキュールズ社製の「BMI1500」(式(A-10)の化合物)、「BMI1700」(式(A-11)の化合物)、「BMI3000J」「BMI3000」(式(A-12)の化合物)、「BMI689」(式(A-13)の化合物)、等が挙げられる。
【0094】
芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格を含むマレイミド系ラジカル重合性化合物(以下、「(3)成分」ということがある。)が有する、芳香環と脂肪族炭化水素環とが縮合した骨格としては、インダン骨格、トリメチルインダン骨格、テトラリン骨格、ベンゾシクロブテン骨格、インデン骨格等が挙げられるが、本発明の効果を顕著に得る観点から、トリメチルインダン骨格であることが好ましい。よって、(3)成分は、トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物であることが好ましい。トリメチルインダン骨格とは、下記式(A-14)に示す骨格を表す。
【化14】
【0095】
トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、及び、メルカプト基が挙げられる。
アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、等が挙げられる。
アルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等が挙げられる。
アリール基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
アリールチオ基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
シクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~10である。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0096】
前記の置換基のうち、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0097】
トリメチルインダン骨格が含む1つのベンゼン環に結合する置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合する置換基の数は、通常、0以上3以下である。置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環には、置換基が結合していないことが好ましい。
【0098】
(3)成分の1分子中に含まれるトリメチルインダン骨格の数は、1でもよく、2以上でもよい。上限は、例えば、10以下、8以下、7以下、又は6以下でありうる。
【0099】
(3)成分は、上述したトリメチルインダン骨格に加えて、更に芳香環骨格を含むことが好ましい。当該芳香環骨格の環構成炭素の数は、好ましくは6~10である。芳香環骨格としては、例えば、ベンゼン環骨格、ナフタレン環骨格、等が挙げられる。(3)成分の1分子中に含まれる前記の芳香環骨格の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。(3)成分が2以上の芳香環骨格をトリメチルインダン骨格に加えて含む場合、それら芳香環骨格は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0100】
前記の芳香環骨格が含む芳香環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基として上述した置換基、及び、ニトロ基が挙げられる。1つの芳香環に結合する置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。芳香環に結合する置換基の数は、通常、0以上4以下である。置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0101】
(3)成分は、上述したトリメチルインダン骨格に加えて、更に2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。特に、(3)成分が、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環以外の芳香環骨格を含む場合に、(3)成分が2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。この場合、2価の脂肪族炭化水素基は、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環と芳香環骨格との間を連結することが好ましい。また、2価の脂肪族炭化水素基は、芳香環骨格同士の間を連結することが好ましい。
【0102】
2価の脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは5以下である。2価の脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基としてのアルキレン基がより好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖アルキレン基;エチリデン基(-CH(CH3)-)、プロピリデン基(-CH(CH2CH3)-)、イソプロピリデン基(-C(CH3)2-)、エチルメチルメチレン基(-C(CH3)(CH2CH3)-)、ジエチルメチレン基(-C(CH2CH3)2-)等の分岐鎖アルキレン基;等が挙げられる。(C-2b)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物が2以上の2価の脂肪族炭化水素基をトリメチルインダン骨格に加えて含む場合、それら2価の脂肪族炭化水素基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0103】
(3)成分は、下記式(A-15)で示す構造を含むことが好ましい。(3)成分の全体が式(A-15)で示す構造を有していてもよく、(3)成分の部分が式(A-15)で示す構造を有していてもよい。
【化15】
【0104】
(式中、Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し;Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表し;na1は、正の整数を表し;na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。Ra1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Ra2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。na2が2~4の場合、Ra1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。na3が2~3の場合、Ra2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0105】
式(A-15)において、Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。この2価の芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは16以下である。2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基が有しうる置換基としては、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、及び、メルカプト基が挙げられる。各置換基の水素原子は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい。また、これらの置換基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基の数は、好ましくは1~4である。2価の芳香族炭化水素基が有する置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、Ara1は、置換基を有さない2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0106】
式(A-15)において、Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表す。アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。これらの基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。中でも、Ra1は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選ばれる1種類以上の基であることがより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基が特に好ましい。
【0107】
式(A-15)において、Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表す。アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。これら基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。中でも、Ra2は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選択される1種類以上の基であることがより好ましい。
【0108】
式(A-15)において、Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表す。好ましい2価の脂肪族炭化水素基の範囲は、上述した通りである。
【0109】
式(A-15)において、na1は、正の整数を表す。na1は、好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
【0110】
式(A-15)において、na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。na2は、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。複数のna2は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。na2が2以上の場合、複数のRa1は、同一環内で、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0111】
式(A-15)において、na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。複数のna3は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。na3は、好ましくは0である。
【0112】
(3)成分は、下記式(A-16)で示す構造を含むことが特に好ましい。(3)成分の全体が式(A-16)で示す構造を有していてもよく、(3)成分の部分が式(A-16)で示す構造を有していてもよい。
【化16】
(式中、R
b1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;R
b2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;n
b1は、正の整数を表し;n
b2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;n
b3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。R
b1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。R
b2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。n
b2が2~4の場合、R
b1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。n
b3が2~3の場合、R
b2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0113】
式(A-16)において、Rb1、Rb2、nb1、nb2及びnb3は、それぞれ、式(A-15)におけるRa1、Ra2、na1、na2及びna3と同じである。
【0114】
(3)成分は、更に、下記式(A-17)で示す構造を含んでいてもよい。
【化17】
式(A-17)において、R
c1、R
c2、n
c2及びn
c3は、それぞれ、式(A-15)におけるR
a1、R
a2、n
a2及びn
a3と同じである。また、式(A-17)において、n
c1は、繰り返し単位数であり、1~20の整数を表す。さらに、式(A-17)において、*は、結合手を表す。例えば、(3)成分は、式(A-15)において、n
a2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、R
a1が結合していない場合に、式(A-15)で表される構造に組み合わせて前記の式(A-17)で表される構造を含みうる。また、例えば、(3)成分は、式(A-16)において、n
b2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、R
b1が結合していない場合に、式(A-16)で表される構造に組み合わせて前記の式(A-17)で表される構造を含みうる。
【0115】
(3)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0116】
(3)成分の製造方法は、特に制限は無い。(3)成分は、例えば、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の方法によって製造できる。この発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数に分布があるマレイミド化合物を得ることができる。この方法で得られるマレイミド化合物は、下記式(A-18)で表される構造を含む。よって、(3)成分は、式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物を含んでいてもよい。
【化18】
(式中、R
1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;R
2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;n
1は、0.95~10.0の平均繰り返し単位数を表し;n
2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;n
3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。R
1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。R
2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。n
2が2~4の場合、R
1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。n
3が2~3の場合、R
2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0117】
式(A-18)において、R1、R2、n2及びn3は、それぞれ、式(A-15)におけるRa1、Ra2、na2及びna3と同じである。
【0118】
式(A-18)において、n1は、平均繰り返し単位数を表し、その範囲は0.95~10.0である。発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、式(A-18)で表される構造を含む一群のマレイミド化合物が得られる。式(A-18)中の平均繰り返し単位数n1が1.00より小さくなりうることから分かるように、こうして得られる式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物には、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物が含まれうる。そこで、式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物から、精製により、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除いて(3)成分を得て、その得られた(3)成分のみを樹脂組成物層が含んでいてもよい。しかし、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物が樹脂組成物層に含まれている場合でも、本発明の効果を得ることができる。また、精製を省略した場合、コストの抑制が可能である。そこで、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除くことなく、式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物を樹脂組成物層が含むことが好ましい。
【0119】
式(A-18)において、平均繰り返し単位数n1は、好ましくは0.95以上、より好ましくは0.98以上、更に好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.1以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは7.0以下、特に好ましくは6.0以下である。平均繰り返し単位数n1が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。特に、樹脂組成物のガラス転移温度を効果的に高めることができる。
【0120】
式(A-18)で表される構造の例としては、下記のものが挙げられる。
【化19】
【0121】
式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物は、更に、前記の式(A-17)で示す構造を含んでいてもよい。例えば、式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物は、式(A-18)において、n2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、R1が結合していない場合に、式(A-18)で表される構造に組み合わせて式(A-17)で表される構造を含みうる。
【0122】
式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出される分子量分布Mw/Mnが、特定の範囲にあることが好ましい。分子量分布は、重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割り算して求められる値であり、「Mw/Mn」で表される。具体的には、式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物の分子量分布Mw/Mnは、好ましくは1.0~4.0、より好ましくは1.1~3.8、更に好ましくは1.2~3.6、特に好ましくは1.3~3.4である。式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物の分子量分布Mw/Mnが前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0123】
式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物のうち、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量は、特定の範囲にあることが好ましい。式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物の前記GPC測定を行った場合、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量は、そのGPC測定の結果に基づいて面積%で表すことができる。詳細には、前記のGPC測定で得られるクロマトグラムにおいて、式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物のピークの総面積に対する、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物のピークの面積の割合(面積%)により、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量を表すことができる。具体的には、式(A-18)で表される構造を含むマレイミド化合物の全量100面積%に対して、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量は、好ましくは32面積%以下、より好ましくは30面積%以下、更に好ましくは28面積%以下である。平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0124】
マレイミド系ラジカル重合性化合物のマレイミド基当量は、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは100g/eq.以上、さらに好ましくは120g/eq.以上、200g/eq.以上であり、好ましくは10000g/eq.以下、より好ましくは9000g/eq.以下、さらに好ましくは8000g/eq.以下、2000g/eq.以下、1000g/eq.以下、800g/eq.以下である。マレイミド基当量は、1当量のマレイミド基を含むマレイミド系ラジカル重合性化合物の質量である。
【0125】
マレイミド系ラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは150~16000、より好ましくは200~15000である。
【0126】
マレイミド系ラジカル重合性化合物の分子量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは400以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、さらに好ましくは60000以下である。
【0127】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、ビニルフェニル基を有するラジカル重合性化合物である。ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、液状又は半固形状であることが好ましい。液状又は半固形状の判定は、上記したとおりである。ビニルフェニル基とは、以下に示す構造を有する基である。
【化20】
(*は結合手を表す。)
【0128】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、1分子あたり2個以上のビニルフェニル基を有することが好ましい。
【0129】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、2価の環状基が好ましい。2価の環状基としては、脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。また、2価の環状基は、複数有していてもよい。
【0130】
2価の環状基は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3員環以上、より好ましくは4員環以上、さらに好ましくは5員環以上であり、好ましくは20員環以下、より好ましくは15員環以下、さらに好ましくは10員環以下である。また、2価の環状基としては、単環構造であってもよく、多環構造であってもよい。
【0131】
2価の環状基における環は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0132】
2価の環状基の具体例としては、下記の2価の基(a)又は(b)が挙げられる。
【化21】
(2価の基(a)、(b)中、R
51、R
52、R
55、R
56、R
57、R
61、及びR
62は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数が6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R
53、R
54、R
58、R
59、及びR
60は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。)
【0133】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。炭素原子数が6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基であることが好ましい。R51、R52、R55、R56、R57、R61、及びR62としては、メチル基を表すことが好ましい。R53、R54、R58、R59、及びR60は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0134】
また、2価の環状基は、複数の2価の環状基を組み合わせてもよい。2価の環状基を組み合わせた場合の具体例としては、下記の式(A-19)で表される2価の環状基が挙げられる。
【化22】
(式中、R
71、R
72、R
75、R
76、R
77、R
81、R
82、R
85及びR
86は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数が6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R
73、R
74、R
78、R
79、R
80、R
83及びR
84は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。d1及びd2は、0~300の整数を表す。但し、d1及びd2の一方は0である場合を除く。)
【0135】
R71、R72、R85及びR86は、式(a)中のR510と同じである。R73、R74、R83及びR84は、式(a)中のR530と同じである。R75、R76、R77、R81、及びR82は、式(b)中のR550と同じである。R78、R79、及びR80は、式(b)中のR580と同じである。
【0136】
d1及びd2は0~300の整数を表す。但し、d1及びd2の一方は0である場合を除く。d1及びd2としては、1~100の整数を表すことが好ましく、1~50の整数を表すことがより好ましく、1~10の整数を表すことがさらに好ましい。d1及びd2は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0137】
2価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0138】
ビニルフェニル基は、2価の環状基に直接結合していてもよく、2価の連結基を介して結合していてもよい。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-C(=O)O-、-O-、-NHC(=O)-、-NC(=O)N-、-NHC(=O)O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NH-等が挙げられ、これらを複数組み合わせた基であってもよい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。アルケニレン基としては、炭素原子数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニレン基がさらに好ましい。アリーレン基、ヘテロアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。2価の連結基としては、アルキレン基が好ましく、中でもメチレン基が好ましい。
【0139】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、下記式(A-20)で表されることが好ましい。
【化23】
(式中、R
91及びR
92はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。環A1は、2価の環状基を表す。)
【0140】
R91及びR92はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。2価の連結基としては、上記の2価の連結基と同様である。
【0141】
環A1は、2価の環状基を表す。環Bとしては、上記の2価の環状基と同様である。
【0142】
環A1は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の2価の環状基が有していてもよい置換基と同様である。
【0143】
以下、ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化24】
(q1は、式(A-19)中のd1と同じであり、q2は、式(A-19)中のd2と同じである。)
【0144】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ガス化学社製の「OPE-2St」等が挙げられる。ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物の数平均分子量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下、1500以下である。下限は、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、1000以上である。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0146】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、アクリロイル基及びメタクリロイル基並びにそれらの組み合わせを包含する化合物である。(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物としては、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、1分子あたり2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。用語「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基並びにそれらの組み合わせを包含する。
【0147】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、2価の環状基が好ましい。2価の環状基としては、脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、脂環式構造を含む環状基であることが好ましい。
【0148】
2価の環状基は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3員環以上、より好ましくは4員環以上、さらに好ましくは5員環以上であり、好ましくは20員環以下、より好ましくは15員環以下、さらに好ましくは10員環以下である。また、2価の環状基としては、単環構造であってもよく、多環構造であってもよい。
【0149】
2価の環状基における環は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0150】
2価の環状基の具体例としては、下記の2価の基(i)~(xi)が挙げられる。中でも、2価の環状基としては、(x)又は(xi)が好ましい。
【化25】
【0151】
2価の環状基は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0152】
(メタ)アクリロイル基は、2価の環状基に直接結合していてもよく、2価の連結基を介して結合していてもよい。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-C(=O)O-、-O-、-NHC(=O)-、-NC(=O)N-、-NHC(=O)O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NH-等が挙げられ、これらを複数組み合わせた基であってもよい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。アルケニレン基としては、炭素原子数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニレン基がさらに好ましい。アリーレン基、ヘテロアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。2価の連結基としては、アルキレン基が好ましく、中でもメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。
【0153】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、下記式(A-21)で表されることが好ましい。
【化26】
(式中、R
101及びR
104はそれぞれ独立にアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、R
102及びR
103はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。環A2は、2価の環状基を表す。)
【0154】
R101及びR104はそれぞれ独立にアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、アクリロイル基が好ましい。
【0155】
R102及びR103はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。2価の連結基としては、(メタ)アクリロイル基が結合していてもよい2価の連結基と同様である。
【0156】
環A2は、2価の環状基を表す。環A2としては、上記の2価の環状基と同様である。環A2は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の2価の環状基が有していてもよい置換基と同様である。
【0157】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化27】
【0158】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、市販品を用いてもよく、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」、共栄社化学社製の「DCP-A」、日本化薬社製「NPDGA」、「FM-400」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」、新中村化学工業社製の「NKエステルDCP」等が挙げられる。
【0159】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物の(メタ)アクリロイル基当量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは30g/eq.~400g/eq.、より好ましくは50g/eq.~300g/eq.、さらに好ましくは75g/eq.~200g/eq.である。(メタ)アクリロイル基当量は、1当量の(メタ)アクリロイル基を含む(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物の質量である。
【0160】
アリル系ラジカル重合性化合物とは、アリル基を分子中に少なくとも1つ有する化合物である。アリル系ラジカル重合性化合物は、1分子あたり1個以上のアリル基を有することが好ましく、2個以上のアリル基を有することがより好ましい。下限は特に制限されないが、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下とし得る。
【0161】
また、アリル系ラジカル重合性化合物は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、アリル基に加えて、ベンゾオキサジン環、フェノール環、イソシアヌル環、エポキシ基、及び環状構造を有するカルボン酸誘導体のいずれかを有することが好ましい。
【0162】
ベンゾオキサジン環を有するアリル系ラジカル重合性化合物は、ベンゾオキサジン環の窒素原子及びベンゼン環のいずれかと結合していることが好ましく、窒素原子と結合していることがより好ましい。
【0163】
フェノール環を有するアリル系ラジカル重合性化合物としては、例えば、アリル基を含むクレゾール樹脂、アリル基を含むノボラック型フェノール樹脂、アリル基を含むクレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0164】
イソシアヌル構造を有するアリル系ラジカル重合性化合物は、イソシアヌル構造の窒素原子とアリル基とが直接結合していることが好ましい。イソシアヌル構造を有するアリル系ラジカル重合性化合物としては、イソシアヌル酸アリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。
【0165】
エポキシ基を有するアリル系ラジカル重合性化合物は、エポキシ基を1分子中に2個以上含むことが好ましい。また、エポキシ基を有するアリル系ラジカル重合性化合物は、芳香族構造を有することが好ましく、エポキシ基を有するアリル系ラジカル重合性化合物を2種以上用いる場合は少なくとも1種が芳香族構造を有することがより好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。エポキシ基を有するアリル系ラジカル重合性化合物としては、ビスフェノール構造を有することが好ましく、ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAF型等が挙げられる。
【0166】
環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル系ラジカル重合性化合物としては、環状構造を有するカルボン酸アリルが好ましい。環状構造としては、脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。また、環状基は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、窒素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0167】
環状構造を有するカルボン酸としては、例えば、イソシアヌル酸、ジフェン酸、フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル系ラジカル重合性化合物としては、例えば、イソシアヌル酸アリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジフェン酸ジアリル、ジフェン酸アリル、オルトジアリルフタレート、メタジアリルフタレート、パラジアリルフタレート、シクロヘキサンジカルボン酸アリル、シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル等が挙げられる。
【0168】
アリル系ラジカル重合性化合物は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、明和化成社製「MEH-8000H」、「MEH-8005」(フェノール環を有するアリル系ラジカル重合性化合物);日本化薬社製「RE-810NM」(エポキシ基を有するアリル系ラジカル重合性化合物);四国化成工業社製「ALP-d」(ベンゾオキサジン環を有するアリル系ラジカル重合性化合物);四国化成工業社製「L-DAIC」(イソシアヌル環を有するアリル系ラジカル重合性化合物);日本化成社製「TAIC」(イソシアヌル環を有するアリル系ラジカル重合性化合物(トリアリルイソシアヌレート));大阪ソーダ社製「MDAC」(シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を有するアリル系ラジカル重合性化合物);日触テクノファインケミカル社製「DAD」(ジフェン酸ジアリル);大阪ソーダ社製「ダイソーダップモノマー」(オルトジアリルフタレート)等が挙げられる。
【0169】
アリル系ラジカル重合性化合物のアリル基当量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20g/eq.~1000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~500g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。アリル基当量は、1当量のアリル基を含むアリル系ラジカル重合性化合物の質量である。
【0170】
ブタジエン系ラジカル重合性化合物とは、ブタジエン骨格を分子中に少なくとも1つ有する化合物である。ポリブタジエン構造は主鎖に含まれていても側鎖に含まれていてもよい。なお、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが水素添加されていてもよい。ブタジエン系ラジカル重合性化合物としては、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ブタジエン樹脂、酸無水物基含有ブタジエン樹脂、エポキシ基含有ブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ブタジエン樹脂及びウレタン基含有ブタジエン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂がより好ましい。
【0171】
ブタジエン系ラジカル重合性化合物の具体例としては、日本曹達社製の「JP-100」、CRAY VALLEY社製の「Ricon100」、「Ricon150」、「Ricon130MA8」、「Ricon130MA13」、「Ricon130MA20」、「Ricon131MA5」、「Ricon131MA10」、「Ricon131MA17」、「Ricon131MA20」、「Ricon 184MA6」等が挙げられる。
【0172】
(A)成分の含有量としては、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0173】
-(B)熱可塑性樹脂-
樹脂組成物層は、(A)成分以外に、任意の成分として、更に、(B)成分として熱可塑性樹脂を含有していてもよい。(B)成分を樹脂組成物層に含有させることで、いっそう良好な機械強度を呈する硬化物を得ることが可能となる。(B)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0174】
(B)成分の重量平均分子量(Mn)は、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは8000以上、特に好ましくは10000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、特に好ましくは50000以下である。(B)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0175】
(B)成分としては、重量平均分子量が高分子量であるものを使用することができる。このような成分としては、例えばポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;エラストマーが挙げられる。中でも、(B)成分としては、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、ポリイミド樹脂、及びエラストマーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0176】
ポリイミド樹脂は、繰り返し単位中にイミド結合を持つ樹脂を用いることができる。ポリイミド樹脂は、一般に、ジアミン化合物と酸無水物とのイミド化反応により得られるものを含む。
【0177】
ポリイミド樹脂を調製するためのジアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジアミン化合物、及び芳香族ジアミン化合物を挙げることができる。
【0178】
脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,2-エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,10-ジアミノデカン等の直鎖状の脂肪族ジアミン化合物;1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2,3-ジアミノ-2,3-ブタン、及び2-メチル-1,5-ジアミノペンタン等の分岐鎖状の脂肪族ジアミン化合物;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂環式ジアミン化合物;ダイマー酸型ジアミン(以下「ダイマージアミン」ともいう)等が挙げられ、中でも、ダイマー酸型ジアミンが好ましい。
【0179】
ダイマー酸型ジアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、アミノメチル基(-CH2-NH2)又はアミノ基(-NH2)に置換されて得られるジアミン化合物を意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数11~22のもの、特に好ましくは炭素数18のもの)を二量化することにより得られる既知の化合物であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されている。ダイマー酸は、とりわけ安価で入手しやすいオレイン酸、リノール酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36のダイマー酸を主成分とするものが容易に入手できる。また、ダイマー酸は、製造方法、精製の程度等に応じ、任意量のモノマー酸、トリマー酸、その他の重合脂肪酸等を含有する場合がある。また、不飽和脂肪酸の重合反応後には二重結合が残存するが、本明細書では、さらに水素添加反応して不飽和度を低下させた水素添加物もダイマー酸に含めるものとする。ダイマー酸型ジアミンは、市販品が入手可能であり、例えばクローダジャパン社製の「PRIAMINE1073」、「PRIAMINE1074」、「PRIAMINE1075」;コグニスジャパン社製の「バーサミン551」、「バーサミン552」等が挙げられる。
【0180】
芳香族ジアミン化合物としては、例えば、フェニレンジアミン化合物、ナフタレンジアミン化合物、ジアニリン化合物等が挙げられる。
【0181】
フェニレンジアミン化合物とは、2個のアミノ基を有するベンゼン環からなる化合物を意味し、さらに、ここにおけるベンゼン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。置換基としては、一般式(A-2)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。フェニレンジアミン化合物としては、具体的に、1,4-フェニレンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノビフェニル、2,4,5,6-テトラフルオロ-1,3-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0182】
ナフタレンジアミン化合物とは、2個のアミノ基を有するナフタレン環からなる化合物を意味し、さらに、ここにおけるナフタレン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。置換基としては、一般式(A-2)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。ナフタレンジアミン化合物としては、具体的に、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノナフタレン等が挙げられる。
【0183】
ジアニリン化合物とは、分子内に2個のアニリン構造を含む化合物を意味し、さらに、2個のアニリン構造中の2個のベンゼン環は、それぞれ、さらに任意で1~3個の置換基を有し得る。置換基としては、一般式(A-2)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。ジアニリン化合物における2個のアニリン構造は、直接結合、並びに/或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有する1又は2個のリンカー構造を介して結合し得る。ジアニリン化合物には、2個のアニリン構造が2個の結合により結合しているものも含まれる。
【0184】
ジアニリン化合物における「リンカー構造」としては、具体的に、-NHCO-、-CONH-、-OCO-、-COO-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-CH=CH-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NH-、-Ph-、-Ph-Ph-、-C(CH3)2-Ph-C(CH3)2-、-O-Ph-O-、-O-Ph-Ph-O-、-O-Ph-SO2-Ph-O-、-O-Ph-C(CH3)2-Ph-O-、-Ph-CO-O-Ph-、-C(CH3)2-Ph-C(CH3)2-、下記式(I)、(II)で表される基、及びこれらの組み合わせからなる基等が挙げられる。本明細書中、「Ph」は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基または1,2-フェニレン基を示す。
【0185】
【0186】
一実施形態において、ジアニリン化合物としては、具体的に、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジトリフルオロメチル-1,1’-ビフェニル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4-アミノフェニル4-アミノベンゾエート、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、α,α-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,3-ジイソプロピルベンゼン、α,α-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,4-ジイソプロピルベンゼン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、9,9’-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダン等が挙げられ、好ましくは、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダンである。
【0187】
別の実施形態において、ジアニリン化合物としては、例えば、下記式(B-1)で表されるジアミン化合物等が挙げられる。
【0188】
【化29】
(式(B-1)中、R
1~R
8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-X
9-R
9、又は-X
10-R
10を示し、R
1~R
8のうち少なくとも1つが、-X
10-R
10であり、X
9は、それぞれ独立して、単結合、-NR
9’-、-O-、-S-、-CO-、-SO
2-、-NR
9’CO-、-CONR
9’-、-OCO-、又は-COO-を示し、R
9は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、R
9’は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、X
10は、それぞれ独立して、単結合、-(置換又は無置換のアルキレン基)-、-NH-、-O-、-S-、-CO-、-SO
2-、-NHCO-、-CONH-、-OCO-、又は-COO-を示し、R
10は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアリール基、又は置換又は無置換のヘテロアリール基を示す。)
【0189】
式(B-1)中のR9及びR9’が表すアルキル基は、直鎖、分枝鎖又は環状の1価の脂肪族飽和炭化水素基をいう。アルキル基としては、炭素原子数1~6のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0190】
式(B-1)中のR9及びR9’が表すアルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖又は環状の1価の不飽和炭化水素基をいう。アルケニル基としては、炭素原子数2~6のアルケニル基が好ましく、炭素原子数2又は3のアルケニル基がより好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基等が挙げられる。「置換又は無置換のアルケニル基」におけるアルケニル基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。置換基数としては、1~3個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0191】
「置換又は無置換のアルキル基」におけるアルキル基の置換基、及び「置換又は無置換のアルケニル基」におけるアルケニル基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。置換基数としては、1~3個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0192】
アルコキシ基は、酸素原子にアルキル基が結合して形成される1価の基(アルキル-O-)をいう。アルコキシ基としては、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1~3のアルコキシ基がより好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。
【0193】
式(B-1)中のX10が表すアルキレン基は、直鎖、分枝鎖又は環状の2価の脂肪族飽和炭化水素基をいい、炭素原子数1~6のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキレン基がより好ましい。アルキレン基としては、例えば、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-、-CH(CH3)-CH2-、-C(CH3)2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH(CH3)-、-CH2-CH(CH3)-CH2-、-CH(CH3)-CH2-CH2-、-CH2-C(CH3)2-、-C(CH3)2-CH2-等が挙げられる。「置換又は無置換のアルキレン基」におけるアルキレン基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。置換基数としては、1~3個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0194】
式(B-1)中のR10が表すアリール基としては、炭素原子数6~14のアリール基が好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がより好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられ、好ましくは、フェニル基である。「置換又は無置換のアリール基」におけるアリール基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる。置換基数としては、1~3個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0195】
式(B-1)中のR10が表すヘテロアリール基とは、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を有する芳香族複素環基をいう。ヘテロアリール基は、5ないし12員(好ましくは5又は6員)の単環式、二環式又は三環式(好ましくは単環式)芳香族複素環基が好ましい。このようなヘテロアリール基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、1,2,3-オキサジアゾリル基、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基、フラザニル基、1,2,3-チアジアゾリル基、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基等が挙げられる。「置換又は無置換のヘテロアリール基」におけるヘテロアリール基の置換基としては、「置換又は無置換のアリール基」におけるアリール基の置換基と同様である。
【0196】
R1~R8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-X9-R9、又は-X10-R10を示す。R1~R8は、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、又は-X10-R10である。
【0197】
R1~R8のうち少なくとも1つが-X10-R10である。好ましくは、R1~R8のうち1つ又は2つが-X10-R10であり、より好ましくは、R5~R8のうち1つ又は2つが-X10-R10であり、さらに好ましくは、R5及びR7のうち1つ又は2つが-X10-R10である。
【0198】
一実施形態では、好ましくは、R1~R8のうち1つ又は2つが-X10-R10であり、かつR1~R8のうちその他が水素原子であり、より好ましくは、R5~R8のうち1つ又は2つが-X10-R10であり、かつR1~R8のうちその他が、水素原子であり、さらに好ましくは、R5及びR7のうち1つ又は2つが-X10-R10であり、かつR1~R8のうちその他が、水素原子である。
【0199】
X9は、それぞれ独立して、単結合、-NR9’-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NR9’CO-、-CONR9’-、-OCO-、又は-COO-を示す。R9は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示す。X9は、好ましくは、単結合である。
【0200】
R9’は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示す。R9は、好ましくは、置換又は無置換のアルキル基である。
【0201】
X10は、それぞれ独立して、単結合、-(置換又は無置換のアルキレン基)-、-NH-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NHCO-、-CONH-、-OCO-、又は-COO-を示す。X10は、好ましくは、単結合である。
【0202】
R10は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアリール基、又は置換又は無置換のヘテロアリール基を示す。R10は、好ましくは、置換又は無置換のアリール基である。
【0203】
一実施形態において、式(B-1)で表されるジアミン化合物は、下記式(B-2)で表される化合物であることが好ましく、下記式(B-3)で表される化合物(4-アミノ安息香酸5-アミノ-1,1’-ビフェニル-2-イル)であることがより好ましい。
【化30】
(式中、R
1~R
6及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-X
9-R
9を示し、その他の記号は式(B-1)と同様である。)
【化31】
【0204】
ジアミン化合物は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により合成したものを使用してもよい。例えば、式(B-1)で表されるジアミン化合物は、特許第6240798号に記載されている合成方法又はこれに準ずる方法により合成することができる。ジアミン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0205】
ポリイミド樹脂を調製するための酸無水物は、特に限定されるものではないが、好適な実施形態においては、芳香族テトラカルボン酸二無水物である。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、アントラセンテトラカルボン酸二無水物、ジフタル酸二無水物等が挙げられ、好ましくは、ジフタル酸二無水物である。
【0206】
ベンゼンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するベンゼンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるベンゼン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X13-R13(下記式(B-4)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ベンゼンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0207】
ナフタレンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するナフタレンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるナフタレン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X13-R13(下記式(B-4)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0208】
アントラセンテトラカルボン酸二無水物とは、4個のカルボキシ基を有するアントラセンの二無水物を意味し、さらに、ここにおけるアントラセン環は、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X13-R13(下記式(B-4)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。アントラセンテトラカルボン酸二無水物としては、具体的に、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0209】
ジフタル酸二無水物とは、分子内に2個の無水フタル酸を含む化合物を意味し、さらに、2個の無水フタル酸中の2個のベンゼン環は、それぞれ、任意で1~3個の置換基を有し得る。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、及び-X13-R13(下記式(B-4)の定義と同じ)から選ばれるものが好ましい。ジフタル酸二無水物における2個の無水フタル酸は、直接結合、或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造を介して結合し得る。
【0210】
ジフタル酸二無水物としては、例えば、式(B-4)で表される化合物が挙げられる。
【化32】
(式中、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は-X
13-R
13を示し、
X
13は、それぞれ独立して、単結合、-NR
13’-、-O-、-S-、-CO-、-SO
2-、-NR
13’CO-、-CONR
13’-、-OCO-、又は-COO-を示し、
R
13は、それぞれ独立して、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、
R
13’は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアルケニル基を示し、
Yは、単結合、或いは炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造を示し、
n1及びm1は、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。)
【0211】
Yは、好ましくは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造である。n1及びm1は、好ましくは、0である。
【0212】
Yにおける「リンカー構造」は、炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる1~100個の骨格原子を有する。「リンカー構造」は、好ましくは、-[A-Ph]a-A-[Ph-A]b-〔式中、Aは、それぞれ独立して、単結合、-(置換又は無置換のアルキレン基)-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を示し、a及びbは、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは、0又は1)を示す。〕で表される二価の基である。
【0213】
Yにおける「リンカー構造」は、具体的に、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-O-、-CO-、-SO2-、-Ph-、-O-Ph-O-、-O-Ph-SO2-Ph-O-、-O-Ph-C(CH3)2-Ph-O-等が挙げられる。
【0214】
ジフタル酸二無水物としては、具体的に、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物等が挙げられる。
【0215】
芳香族テトラカルボン酸二無水物は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法又はこれに準ずる方法により合成したものを使用してもよい。芳香族テトラカルボン酸二無水物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0216】
一実施形態において、ポリイミド樹脂を作製するための酸無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物に加えて、その他の酸無水物を含んでいてもよい。
【0217】
その他の酸無水物としては、具体的に、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0218】
ポリイミド樹脂を構成する酸無水物に由来する全構造中の芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造の含有量は、10モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることがなお一層好ましく、90モル%以上であることがなお一層より好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0219】
ポリイミド樹脂は、下記一般式(B)で表される構造単位を有することが好ましい。
【化33】
(一般式(B)中、R
51は、単結合又は酸無水物に由来する残基を表し、R
52は、単結合又はジアミン化合物に由来する残基を表す。)
【0220】
R51は、単結合又は酸無水物に由来する残基を表し、酸無水物に由来する残基であることが好ましい。R51で表される酸無水物に由来する残基とは、酸無水物から2つの酸素原子を除いた2価の基をいう。酸無水物については、上記したとおりである。
【0221】
R52は、単結合又はジアミン化合物に由来する残基を表し、ジアミン化合物に由来する残基であることが好ましい。R52で表されるジアミン化合物に由来する残基とは、ジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた2価の基をいう。ジアミン化合物については、上記したとおりである。
【0222】
ポリイミド樹脂は、従来公知の方法により調製することができる。公知の方法としては、例えば、ジアミン化合物、酸無水物及び溶媒の混合物を加熱して反応させる方法が挙げられる。ジアミン化合物の混合量は、例えば、酸無水物に対して、通常、0.5~1.5モル当量、好ましくは0.9~1.1モル当量であり得る。
【0223】
ポリイミド樹脂の調製に用いられる溶媒としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤が挙げられる。また、ポリイミド樹脂の調製には、必要に応じて、イミド化触媒、共沸脱水溶剤、酸触媒等を使用してもよい。イミド化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルピロリジン、N-エチルピロリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ピリジン等の第三級アミン類が挙げられる。共沸脱水溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。酸触媒としては、例えば、無水酢酸等が挙げられる。イミド化触媒、共沸脱水溶剤、酸触媒等の使用量は、当業者であれば適宜設定することができる。ポリイミド樹脂の調製のための反応温度は、通常、100~250℃である。
【0224】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は、重量平均分子量が30,000以上のフェノキシ樹脂が好ましい。
【0225】
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0226】
ポリアミドイミド樹脂は、アミドイミド構造を有する樹脂である。ポリアミドイミド樹脂は、樹脂組成物層中の他の成分との相溶性の観点から、分子構造中に脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂、特開平05-112760号公報に記載のシロキサン構造を有するポリアミドイミド樹脂、嵩高い分岐鎖構造を有するポリアミドイミド樹脂、非対称モノマーを原料とするポリアミドイミド樹脂、多分岐構造を有するポリアミドイミド樹脂等を用いることが好ましい。
【0227】
中でも、ポリアミドイミド樹脂は、イソシアヌル環構造を有することで、樹脂ワニスの相溶性、及び分散性が向上する観点から、(i)分子構造中にイソシアヌル環構造を有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造とイミド骨格又はアミド骨格とを有するポリアミドイミド樹脂)(ii)分子構造中にイソシアヌル環構造と脂環式構造とを有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造と脂環式構造とイミド骨格又はアミド骨格とを有するポリアミドイミド樹脂)、(iii)イソシアヌル環構造と脂環式構造とを含む繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造と脂環式構造とイミド骨格又はアミド骨格とを含む繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂)がより好ましい。
【0228】
前記(i)~(iii)のポリアミドイミド樹脂の好適な一実施形態としては、(1)脂環式構造ジイソシアネートから誘導されるイソシアヌル環含有ポリイソシアネート化合物と3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の酸無水物とを反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型ポリアミドイミド(以下、当該化合物を「(化合物B-b1)」ということがある。)、(2)化合物(B-b1)に1個のエポキシ基と1個以上のラジカル重合性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型重合性ポリアミドイミド(以下、「化合物(B-b2)」ということがある。)、或いは、(3)化合物(B-b1)の合成過程で残イソシアネート基に1個の水酸基と1個以上のラジカル重合性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型重合性ポリアミドイミド(以下、「化合物(B-b3)」ということがある。)等が挙げられる。
【0229】
化合物(B-b1)としては、具体的に下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。なお、一般式(I)で表される化合物中の繰り返し単位を繰り返し単位(I-1)とする。
【化34】
(式中、wは0~15を表す。)
【0230】
化合物(B-b2)としては、一般式(I)中の繰り返し単位(I-1)の任意の一部のカルボキシル基及び/又は末端カルボキシル基にGMA(グリシジルメタクリレート)が付加した構造(I-2)を有する化合物(II)が挙げられる。
【化35】
(式中、R
40は式(I)中の残基を表す。)
【0231】
カルボキシル基のGMA変性の割合は化合物(B-b1)のカルボキシル基のモル数に対して、GMAを付加する範囲が好ましくは0.3mol%以上、より好ましくは0.5mol%以上、さらに好ましくは0.7mol%以上、又は0.9mol%以上である。上限は、好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下、又は20mol%以下である。
【0232】
化合物(B-b3)としては、上記式(I)において繰り返し単位(I-1)の任意の一部及び/又は末端イミド基がイソシアネート残基であり、これらにペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基が付加した構造(I-3)を有する化合物(III)が挙げられる。
【化36】
(式中、R’は式(I)中の残基を表す。)
【0233】
ペンタエリスリトールトリアクリレートの付加量は、仕込み時のポリイソシアネートのイソシアネート基のmol数に対して、好ましくは40mol%以下、より好ましくは38mol%以下、さらに好ましくは35mol%以下である。一方、ペンタエリスリトールトリアクリレートの付加量は、付加することによる効果を十分に得るという観点から、仕込み時のポリイソシアネートのイソシアネート基のmol数に対して、好ましくは0.3mol%以上、より好ましくは3mol%以上、さらに好ましくは5mol%以上である。
【0234】
ポリアミドイミド樹脂は、公知の種々の方法で合成することができる。ポリアミドイミド樹脂の合成方法としては、例えば国際公開第2010/074197号の段落0020~0030の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0235】
ポリアミドイミド樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、DIC社製の「ユニディックV-8000」、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0236】
ポリエステル樹脂は、樹脂組成物層中の他の成分との相溶性の観点から、分子構造中にフルオレン構造を有することが好ましく、フルオレン構造に加えて、ジオール由来の構造単位と、ジカルボン酸由来の構造単位とを有することが好ましい。
【0237】
ポリエステル樹脂の具体例としては、大阪ガスケミカル社製の「OKP4HT」等が挙げられる。
【0238】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0239】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0240】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0241】
(B)成分におけるエラストマーとは、柔軟性を有する樹脂であり、好ましくは、ゴム弾性を有する樹脂または他の成分と重合してゴム弾性を示す樹脂である。ゴム弾性としては、例えば、日本工業規格(JIS K7161)に準拠し、温度25℃、湿度40%RHにて、引っ張り試験を行った場合に、1GPa以下の弾性率を示す樹脂が挙げられる。エラストマーは、通常、有機溶剤に溶解しうる不定形の樹脂成分である。この(e)エラストマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0242】
一実施形態において、エラストマーは、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリカーボネート構造、ポリスチレン構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂であることが好ましい。「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートを指す。
【0243】
また、別の一実施形態において、エラストマーは、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の樹脂及び25℃以下で液状である樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)が25℃以下である樹脂のガラス転移温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下である。ガラス転移温度の下限は特に限定されないが、通常-15℃以上とし得る。また、25℃で液状である樹脂としては、好ましくは20℃以下で液状である樹脂、より好ましくは15℃以下で液状である樹脂である。ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)により測定しうる。
【0244】
エラストマーとしては、例えば、ポリブタジエン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリブタジエン構造は、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。また、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが、水素添加されていてもよい。ポリブタジエン構造を含有する樹脂を「ポリブタジエン樹脂」ということがある。ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)、等が挙げられる。また、ポリブタジエン樹脂の具体例としては、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリイミド)、フェノール性水酸基含有ブタジエン等が挙げられる。該ポリイミド樹脂のブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0245】
エラストマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂を「ポリ(メタ)アクリル樹脂」ということがある。ポリ(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等が挙げられる。
【0246】
エラストマーとしては、例えば、ポリカーボネート構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリカーボネート構造を含有する樹脂を「ポリカーボネート樹脂」ということがある。このような樹脂としては、反応基を持たないカーボネート樹脂、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂、エポキシ基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ここで反応基とは、ヒドロキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、ウレタン基、及びエポキシ基等他の成分と反応し得る官能基のことをいう。
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、「FPC2136」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。またヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミドを使用することもできる。該ポリイミド樹脂のカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0247】
エラストマーとしては、例えば、ポリシロキサン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリシロキサン構造を含有する樹脂を「シロキサン樹脂」ということがある。シロキサン樹脂の具体例としては、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
【0248】
エラストマーとしては、例えば、ポリアルキレン構造又はポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリアルキレン構造を含有する樹脂を「アルキレン樹脂」ということがある。また、ポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂を「アルキレンオキシ樹脂」ということがある。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造が特に好ましい。アルキレン樹脂及びアルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」等が挙げられる。
【0249】
エラストマーとしては、例えば、ポリイソプレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリイソプレン構造を含有する樹脂を「イソプレン樹脂」ということがある。イソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
【0250】
エラストマーとしては、例えば、ポリイソブチレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリイソブチレン構造を含有する樹脂を「イソブチレン樹脂」ということがある。イソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0251】
エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリスチレン構造を含有する樹脂を「スチレン樹脂」ということがある。スチレン樹脂は、ポリスチレン樹脂は、スチレン単位に組み合わせて、前記のスチレン単位とは異なる任意の繰り返し単位を含む共重合体であってもよく、水添ポリスチレン樹脂であってもよい。
【0252】
任意の繰り返し単位としては、例えば、共役ジエンを重合して得られる構造を有する繰り返し単位(共役ジエン単位)、それを水素化して得られる構造を有する繰り返し単位(水添共役ジエン単位)等が挙げられる。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の脂肪族共役ジエン;クロロプレン等のハロゲン化脂肪族共役ジエン等が挙げられる。共役ジエンとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から脂肪族共役ジエンが好ましく、ブタジエンがより好ましい。共役ジエンは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、ポリスチレン樹脂は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0253】
スチレン樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。スチレン樹脂の具体例としては、水添スチレン系熱可塑性エラストマー「H1041」、「タフテックH1043」、「タフテックP2000」、「タフテックMP10」(旭化成社製);エポキシ化スチレン-ブタジエン熱可塑性エラストマー「エポフレンドAT501」、「CT310」(ダイセル社製);ヒドロキシル基を有する変成スチレン系エラストマー「セプトンHG252」(クラレ社製);カルボキシル基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN503M」、アミノ基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN501」、酸無水物基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックM1913」(旭化成ケミカルズ社製);未変性スチレン系エラストマー「セプトンS8104」(クラレ社製);スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体「FG1924」(Kraton社製)、「EF-40」(CRAY VALLEY社製)が挙げられる。
【0254】
エラストマーの数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは3000以上、特に好ましくは5000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは900,000以下である。数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して、ポリスチレン換算で測定できる。
【0255】
(B)成分の含有量としては、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0256】
-(C)無機充填材-
樹脂組成物層は、上述した成分以外に、更に、(C)成分として無機充填材を含有していてもよい。
【0257】
無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0258】
(C)成分の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0259】
(C)成分の比表面積としては、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0260】
(C)成分の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0261】
(C)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(C)成分の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0262】
(C)成分は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0263】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0264】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0265】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0266】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0267】
(C)成分の含有量は、低誘電正接の絶縁層を実現し、tanδの最大値を小さくする観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは52質量%以上又は54質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0268】
-(D)重合開始剤-
樹脂組成物層は、任意の成分として、(D)重合開始剤を含有していてもよい。(D)重合開始剤を含有させることにより、効率的にラジカル重合性化合物の硬化を行うことができる。
【0269】
重合開始剤の種類は、特に限定されないが、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキシド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンなどのラジカル発生剤が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0270】
重合開始剤は、市販品を用いてもよい。市販品としては、日油社製の「パーヘキシン25B」等が挙げられる。
【0271】
重合開始剤の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0272】
-(E)その他の添加剤-
樹脂組成物層は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の樹脂添加剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0273】
樹脂組成物層は、揮発性成分として、さらに任意の溶剤を含有していてもよい。樹脂組成物層の形成に用いる樹脂組成物に溶剤を含有させることによりワニス粘度を調整できる。溶剤としては、例えば、有機溶剤が挙げられる。但し、トルエンは含まないことが好ましく、樹脂組成物層の全体を100質量としたとき、トルエンの含有量は0.1質量%以下0.01質量%以下、0.001質量%以下又は0.0001質量%以下であることが好ましい。
【0274】
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン類、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0275】
先述のとおり、樹脂シート(の樹脂組成物層)を用いて絶縁層を形成するにあたり従来用いられる真空ラミネート法に比し、真空プレス処理では、積層時に樹脂シート(の樹脂組成物層)に付与される圧力が高く、樹脂の染み出しに起因して所期の絶縁層厚みが得られない場合があるという新たな課題が生じることを本発明者らは確認している。斯かる真空プレス処理後の絶縁層の厚みのズレ(目標厚みとの異同)に関し、樹脂組成物層中の残留溶剤量や、樹脂組成物層の動的粘弾性における特定温度域でのtanδの最大値(ここで、tanδは、貯蔵弾性率E’(GPa)と損失弾性率E’’(Pa)の比E’’/E’である。)と関係することを確認している。以下、真空熱プレス処理後に所期の絶縁層厚みを実現するための指針を、残留溶剤量やtanδの最大値の観点から示す。
【0276】
樹脂組成物層の溶融粘度を調整し、真空プレス処理後に所期の絶縁層厚みを実現する観点から、樹脂組成物層中の溶剤の量は少ないほど好ましい。樹脂組成物層中の溶剤の量(残留溶剤量)は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、さらにより好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。下限は特に制限はないが、0.0001質量%以上等とし得る。残留溶剤量は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0277】
真空プレス処理後に所期の絶縁層厚みを実現する観点から、樹脂組成物層の60℃から200℃における動的粘弾性測定において、100℃以上でのtanδの最大値は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.9以下、さらに好ましくは1.8以下である。該最大値の下限は、良好な回路埋め込み性を実現する観点から、0.3以上、0.4以上、0.5以上等とし得る。動的粘弾性における100℃以上でのtanδの最大値は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0278】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0279】
<その他の層>
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0280】
<樹脂シートの製造方法>
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。有機溶剤については上述したものを用いることができる。
【0281】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0282】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0283】
<樹脂シートの物性、用途>
本発明の樹脂シートは、真空プレス処理を用いた絶縁層形成用の樹脂シートであり、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含み、支持体が金属箔を有し、樹脂組成物層が(A)成分を含有する。金属箔を含む支持体と共に、(A)成分を含む樹脂組成物層を用いて、真空プレス処理にて絶縁層を形成することで、良好な機械強度を呈しMIT耐折性に優れると共に、所期の誘電特性を呈する絶縁層を実現することができる。
【0284】
真空プレス処理にて樹脂シートの樹脂組成物層と回路基板とを積層させ、樹脂組成物層を100℃で30分、次いで200℃で120分間熱硬化させた樹脂組成物層の硬化物は、誘電正接が低いという特性を示す。よって、前記硬化物は、誘電正接が低い絶縁層をもたらす。誘電正接は、好ましくは0.0031未満、より好ましくは0.0030未満、さらに好ましくは0.0026以下又は0.0025以下である。誘電正接の下限値は、0.0001以上等とし得る。誘電正接の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0285】
真空プレス処理にて樹脂シートの樹脂組成物層と回路基板とを積層させ、樹脂組成物層を100℃で30分、次いで200℃で120分間熱硬化させた樹脂組成物層の硬化物は、誘電率が低いという特性を示す。よって、前記硬化物は、誘電率が低い絶縁層をもたらす。誘電率は、好ましくは2.95未満、より好ましくは2.9以下、さらに好ましくは2.9未満である。誘電率の下限値は、1以上等とし得る。誘電率の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0286】
真空プレス処理にて樹脂シートの樹脂組成物層と回路基板とを積層させ、樹脂組成物層を100℃で30分、次いで200℃で120分間熱硬化させた樹脂組成物層の硬化物は、良好な機械強度を呈し柔軟性(MIT耐折性)に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、良好な機械強度を呈し柔軟性に優れる絶縁層をもたらす。MIT試験装置における耐折回数としては、好ましくは400回以上、より好ましくは410回以上、さらに好ましくは420回以上である。上限は1000回以下等とし得る。MIT耐折性は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0287】
本発明の樹脂シートを用いて、真空プレス処理にて絶縁層を形成することで、良好な機械強度を呈しMIT耐折性に優れると共に、所期の誘電特性を呈する絶縁層をもたらすことができる。したがって、本発明の樹脂シートは、真空プレス処理を用いて絶縁層を形成するための樹脂シート(真空プレス処理を用いた絶縁層形成用)として好適に使用することができる。本発明の樹脂シートは、金属箔を含む支持体を備えており、該金属箔を利用して導体層を形成することができる。したがって、本発明の樹脂シートは、プリント配線板の製造において、真空プレス処理を用いて絶縁層と導体層の両層を形成するための樹脂シート(真空プレス処理を用いた絶縁層及び導体層形成用)として好適に使用することができる。本発明の樹脂シートは、プリント配線板の絶縁層(と導体層)、好適にはプリント配線板の層間絶縁層(と導体層)を形成するために好適に使用することができる。本発明において、用語「プリント配線板」には、半導体パッケージの再配線基板も包含される。
【0288】
[プリント配線板、プリント配線板の製造方法]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層を含む。
【0289】
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを真空プレス処理にて積層させる工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0290】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0291】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空プレス処理により、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する。真空プレス処理にて内層基板と樹脂組成物層とを積層させることで、誘電特性、機械強度、及び電気特性を向上させることが可能となる。
【0292】
はじめに樹脂シートの樹脂組成物層と内層基板とが接合するように、内層基板及び樹脂シートを真空プレス装置にセットする。次いで、減圧条件下で内層基板と樹脂組成物層とを加熱圧着する真空プレス処理を行う。真空プレス処理は熱をかける真空熱プレス処理(真空ホットプレス処理)が好ましい。
【0293】
内層基板及び樹脂シートは、クッション紙、ステンレス板(SUS板)等の金属板、離型フィルムなどを介して真空プレス装置にセットすることが好ましい。
【0294】
真空プレス処理は、加熱されたSUS板等の金属板によって、内層基板及び樹脂シートをその両面側から押圧する従来公知の真空プレス装置を用いて実施することができる。市販の真空プレス装置としては、例えば、北川精機社製の「VH1-1603」等が挙げられる。
【0295】
真空プレス処理は、1回のみ実施してもよく、2回以上繰り返して実施してもよい。2回以上繰り返して実施する場合、圧着圧力、加熱温度、プレス時間等は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0296】
真空プレス処理において、圧着圧力(押圧力)は、好ましくは0.49MPa以上、より好ましくは0.98MPa以上であり、好ましくは7.9MPa以下、より好ましくは5.9MPa以下である。
【0297】
真空プレス処理において、雰囲気の圧力、すなわち、処理対象の積層構造が格納されるチャンバ内の減圧時の圧力(減圧度)は、好ましくは3×10-2MPa以下、より好ましくは1×10-2MPa以下である。下限は特に制限はないが、1×10-10MPa以上等とし得る。
【0298】
真空プレス処理において、加熱温度は、樹脂組成物層の組成によっても異なるが、通常150℃以上であり、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、又は180℃以上である。加熱温度の上限は特に限定されないが、通常、240℃以下などとし得る。なお、真空プレス処理は、本発明の効果を顕著に得る観点から、温度を段階的に若しくは連続的に上昇させながら、及び/又は温度を段階的に若しくは連続的に下降させながら、実施してもよい。また、後述するように、真空プレス処理における加熱により、樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成してもよい。
【0299】
真空プレス処理において、プレス時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは300分以下、より好ましくは200分以下、さらに好ましくは150分以下である。
【0300】
内層基板上に、樹脂シートを真空プレス処理にて積層させた後、工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。樹脂組成物層を熱硬化する方法としては、例えば、真空熱プレス処理にてプレス処理を行う場合、プレス時の熱を用いて樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成する方法が挙げられる。
【0301】
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0302】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0303】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0304】
先述のとおり、真空ラミネート法に比し、真空プレス処理では、積層時の樹脂の染み出しに起因して所期の絶縁層厚みが得られない場合があることを本発明者らは確認している。この点、残留溶剤量やtanδの最大値を先述の好適範囲に設定することにより、良好な機械強度や誘電特性はそのままに、真空プレス処理後に所期の絶縁層厚みを実現できる。具体的には、絶縁層の設計厚みを15μmとした場合、熱プレス処理後の絶縁層の厚みのばらつきは好ましくは±30%未満、より好ましくは±20%未満、さらに好ましくは±15%以下である。下限は0%、±0.1%以上等とし得る。真空プレス処理後の絶縁層の厚みの評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0305】
本発明で用いる樹脂シートは、支持体が金属箔を含むので、工程(III)として、サブトラクティブ法又はモディファイドセミアディティブ法により回路を形成する工程を含んでいてもよい。
【0306】
工程(III)においては、支持体(金属箔)を利用して、サブトラクティブ法又はモディファイドセミアディティブ法により回路を形成することができる。
【0307】
サブトラクティブ法においては、金属箔の不要部分(非回路形成部)をエッチング等によって選択的に除去して、回路を形成する。サブトラクティブ法による回路形成は公知の手順に従って実施してよい。例えば、サブトラクティブ法による回路形成は、i)金属箔の表面(すなわち、樹脂組成物層と接合している面とは反対側の面)にエッチングレジストを設けること、ii)エッチングレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、iii)露出した金属箔部分をエッチングして除去すること、iv)エッチングレジストを除去すること、を含む方法により実施することができる。
【0308】
モディファイドセミアディティブ法においては、金属箔の非回路形成部をめっきレジストにより保護し、電解めっきにより回路形成部に銅等の金属を厚付けした後、めっきレジストを除去し、回路形成部以外の金属箔をエッチングで除去して、回路を形成する。モディファイドセミアディティブ法による回路形成は公知の手順に従って実施してよい。例えば、モディファイドセミアディティブ法による回路形成は、i)金属箔の表面(すなわち、樹脂組成物層と接合している面とは反対側の面)にめっきレジストを設けること、ii)めっきレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、iii)めっきレジストを介して電解めっきすること、iv)めっきレジストを除去すること、v)回路形成部以外の金属箔をエッチングして除去すること、を含む方法により実施することができる。なお、金属箔が厚い場合には、上記i)の前に、金属箔が所望の厚さ(通常5μm以下、4μm以下、又は3μm以下)となるようにエッチング等により金属箔全面を薄化してもよい。
【0309】
プリント配線板を製造するに際しては、(IV)穴あけする工程、(V)絶縁層を粗化処理する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(IV)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0310】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0311】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0312】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0313】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例0314】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、別途明示のない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0315】
<使用した無機充填材>
無機充填材1:球状シリカ(電気化学工業社製「UFP-30」、平均粒径0.078μm、比表面積30.7m2/g)100部に対して、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)2部で表面処理したもの。
無機充填材2:球形シリカ(アドマテックス社製「SC2500SQ」、平均粒径0.63μm、比表面積11.2m2/g)100部に対して、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)1部で表面処理したもの。
【0316】
<合成例1:ポリイミド樹脂1の合成>
窒素導入管、撹拌装置を備えた500mlセパラブルフラスコに、4-アミノ安息香酸5-アミノ-1,1’-ビフェニル-2-イル(式(B-3)の化合物)9.13g(30ミリモル)、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物15.61g(30ミリモル)、N-メチル-2-ピロリドン94.64g、ピリジン0.47g(6ミリモル)、トルエン10gを投入し、窒素雰囲気下、180℃で、途中トルエンを系外にのぞきながら4時間イミド化反応させることにより、ポリイミド樹脂1を含むポリイミド溶液(不揮発分20質量%)を得た。ポリイミド溶液において、合成したポリイミド樹脂1の析出は見られなかった。ポリイミド樹脂1の重量平均分子量は、45,000であった。
【0317】
<合成例2:ポリイミド樹脂2の合成>
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、芳香族テトラカルボン酸二無水物(SABICジャパン社製「BisDA-1000」、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物)65.0g、シクロヘキサノン266.5g、及びメチルシクロヘキサン44.4gを仕込み、溶液を60℃まで加熱した。次いで、ダイマージアミン(クローダジャパン社製「PRIAMINE 1075」)43.7g、及び1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン5.4gを滴下した後、140℃で1時間かけてイミド化反応させた。これにより、ポリイミド樹脂2を含むポリイミド溶液(不揮発分30質量%)を得た。また、ポリイミド樹脂2の重量平均分子量は、25,000であった。
【0318】
<合成例3:ポリイミド樹脂3の合成>
環流冷却器を連結した水分定量受器、窒素導入管、及び攪拌器を備えた、500mLのセパラブルフラスコを用意した。このフラスコに、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)20.3g、γ-ブチロラクトン200g、トルエン20g、及び、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダン29.6gを加えて、窒素気流下で45℃にて2時間攪拌して、反応を行った。次いで、この反応溶液を昇温し、約160℃に保持しながら、窒素気流下で縮合水をトルエンとともに共沸除去した。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、及び、水の流出が見られなくなっていることを確認した。確認後、反応溶液を更に昇温し、200℃で1時間攪拌した。その後、冷却して、1,1,3-トリメチルインダン骨格を有するポリイミド樹脂3を含むポリイミド溶液(不揮発分20質量%)を得た。得られたポリイミド樹脂3は、下記式(X1)で表される繰り返し単位及び下記式(X2)で示す繰り返し単位を有していた。また、前記のポリイミド樹脂3の重量平均分子量は、12,000であった。
【化37】
【0319】
<合成例4:エラストマーの合成>
反応容器にG-3000(2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、数平均分子量=5047(GPC法)、ヒドロキシル基当量=1798g/eq.、固形分100質量%:日本曹達社製)50gと、イプゾール150(芳香族炭化水素系混合溶媒:出光石油化学社製)23.5g、ジブチル錫ラウレート0.005gを混合し均一に溶解させた。均一になったところで50℃に昇温し、更に撹拌しながら、トルエン-2,4-ジイソシアネート(イソシアネート基当量=87.08g/eq.)4.8gを添加し約3時間反応を行った。次いで、この反応物を室温まで冷却してから、これにベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(酸無水物当量=161.1g/eq.)8.96gと、トリエチレンジアミン0.07gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル社製)40.4gを添加し、攪拌しながら130℃まで昇温し、約4時間反応を行った。FTIRより2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温してから100メッシュの濾布で濾過して、イミド骨格、ウレタン骨格、ブタジエン骨格を有するエラストマーを得た。
粘度:7.5Pa・s(25℃、E型粘度計)
酸価:16.9mgKOH/g
固形分:50質量%
数平均分子量:13723
ガラス転移温度:-10℃
ポリブタジエン構造部分の含有率:50/(50+4.8+8.96)×100=78.4質量%
【0320】
<合成例5:マレイミド樹脂Aの合成>
発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1に記載の方法にしたがって、下記式(1)で表されるマレイミド樹脂A(Mw/Mn=1.81、u’=1.47(主に1、2又は3))のMEK溶液(不揮発成分70質量%)を準備した。
【化38】
【0321】
<樹脂組成物1の調製>
マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-689」)5部、ビフェニル骨格含有マレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000」、不揮発分70質量%のトルエン:MEKの1:1溶液)10部、合成例5で合成したマレイミド樹脂A 5部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製「H1043」スチレン/エチレン・ブチレン・ブタジエン比=67/33)20部を、ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、無機充填材1を50部、重合開始剤(日油社製「パーヘキシン25B」)0.1部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物1を調製した。
【0322】
<樹脂組成物2の調製>
樹脂組成物1の調製において、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製「H1043」スチレン/エチレン・ブチレン・ブタジエン比=67/33)20部を、合成例1で合成したポリイミド樹脂1 100部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物2を調製した。
【0323】
<樹脂組成物3の調製>
樹脂組成物1の調製において、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製「H1043」スチレン/エチレン・ブチレン・ブタジエン比=67/33)20部を、合成例2で合成したポリイミド樹脂2 67部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物3を調製した。
【0324】
<樹脂組成物4の調製>
樹脂組成物1の調製において、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製「H1043」スチレン/エチレン・ブチレン・ブタジエン比=67/33)20部を、合成例3で合成したポリイミド樹脂3 100部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物4を調製した。
【0325】
<樹脂組成物5の調製>
樹脂組成物1の調製において、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製「H1043」スチレン/エチレン・ブチレン・ブタジエン比=67/33)20部を、合成例4で合成したエラストマー40部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物5を調製した。
【0326】
<樹脂組成物6の調製>
樹脂組成物1の調製において、無機充填材1 50部を、無機充填材2 50部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物6を調製した。
【0327】
<樹脂組成物7の調製>
樹脂組成物1の調製において、マレイミド樹脂A 5部を、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」、Mn=1200、固形分65質量%のトルエン溶液)4.5部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物7を調製した。
【0328】
<樹脂組成物8の調製>
樹脂組成物1の調製において、マレイミド樹脂A 5部を、2官能アクリレート化合物(新中村化学工業社製「NKエステルA-DOG」、分子量326)5部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物8を調製した。
【0329】
<樹脂組成物9の調製>
樹脂組成物1の調製において、マレイミド樹脂A 5部を、ベンゾオキサジン環を有する2官能アリル化合物(四国化成工業社製「ALP-d」)5部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物9を調製した。
【0330】
<樹脂組成物10の調製>
スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」、Mn=1200、固形分65質量%のトルエン溶液)11部、2官能アクリレート化合物(新中村化学工業社製「NKエステルA-DOG」、分子量326)5部、ベンゾオキサジン環を有する2官能アリル化合物(四国化成工業社製「ALP-d」)5部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製「H1043」スチレン/エチレン・ブチレン・ブタジエン比=67/33)20部を、ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、無機充填材1を50部、重合開始剤(日油社製「パーヘキシン25B」)0.1部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物10を調製した。
【0331】
<樹脂組成物11の調製>
樹脂組成物1の調製において、無機充填材1の量を50部から40部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物11を調製した。
【0332】
[実施例1~11]
<樹脂シートAの作製>
支持体として、キャリア銅箔及び極薄銅箔を備えるキャリア付き銅箔(三井金属鉱業社製マイクロシンMT-Ex銅箔(厚さ3μmの極薄銅箔/厚さ18μmのキャリア銅箔))を用意した。樹脂組成物1~11を支持体の極薄銅箔上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μmとなるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、70℃から120℃で7分間乾燥することにより、支持体上に樹脂組成物層を得た。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、キャリア付き銅箔(支持体)、樹脂組成物層、及び保護フィルムの順からなる樹脂シートAを得た。
【0333】
<真空プレス処理を用いた評価用硬化物Aの作製>
樹脂シートAから、保護フィルムを剥離して、樹脂組成物層を露出させた。次いで、露出した樹脂組成物層とキャリア付き銅箔(三井金属鉱業社製マイクロシンMT-Ex銅箔(厚さ3μmの極薄銅箔/厚さ18μmのキャリア銅箔))の極薄銅側が接するように積層し、真空ホットプレス機(北川精機社製、VH1-1603)を用いてラミネートした。プレス条件は、減圧度1×10-3MPa以下の減圧下とし、圧力条件が20kgf/cm2、加熱条件として1段階目のプレスは、温度が100℃、時間30分、2段階目のプレスは、温度が200℃、時間は120分で行った。プレスによる加熱によって樹脂組成物層が硬化された後、キャリア箔を剥離し極薄銅をエッチングすることで評価用硬化物Aを得た。
【0334】
[比較例1]
<樹脂シートBの作製>
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。該支持体上に乾燥後の樹脂組成物層の厚みが20μmとなるよう、樹脂組成物1をダイコーターにて均一に塗布し、70~120℃(平均100℃)で3分間乾燥させて、支持体上に樹脂組成物層を形成した。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、支持体(38μmPETフィルム)/樹脂組成物層/保護フィルム(MA-411)という構成の樹脂シートBを得た。
【0335】
<ラミネート処理を用いた評価用硬化物Bの作製>
離型PETフィルム(リンテック社製「501010」、厚さ38μm、240mm角)の未処理面がガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(松下電工社製「R5715ES」、厚さ0.7mm、255mm角)に接するように、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板上に設置し、該離型PETフィルムの四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した。
【0336】
樹脂シートB(167×107mm角)を、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、第2の樹脂組成物層が離型PETフィルムの離型面と接するように、中央にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。 次いで、支持体を剥離し、190℃で90分の硬化条件で樹脂シート層を熱硬化させた。熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥がし、硬化物層をガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板から取り外した。更に硬化物層から離型PETフィルムを剥離して、評価用硬化物Bを得た。
【0337】
[評価]
<残留溶剤量の測定>
支持体と樹脂組成物層が積層された状態の樹脂シートを10cm×10cmに切り出し、電子天秤を用い初期質量を測定した。次いで、樹脂シートを金網に載せ、予め130℃に設定されたオーブンで15分加熱した後、デシケーター内に移して30分間静置し、室温まで冷却した。その後、電子天秤を用い、樹脂シートの乾燥質量を測定した。初期質量、乾燥質量共に測定は3サンプルについて行い、その平均値を採用し、下記式を用いて樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量(残留溶剤量)を算出した。
残留溶剤量(質量%)=100×(樹脂シートの初期質量-樹脂シートの乾燥質量)/(樹脂シートの初期質量-支持体の質量)
【0338】
<誘電特性(誘電率、誘電正接)の測定>
評価用硬化物を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断した。該試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電率、誘電正接を測定した。3本の試験片について測定を行うことで誘電率及び誘電正接の平均値をそれぞれ算出し、さらに以下の基準で誘電率及び誘電正接を評価した。
-誘電正接-
〇:誘電正接が0.003未満
△:誘電正接が0.003以上0.0031未満
×:誘電正接が0.0031以上
-誘電率-
〇:誘電率が2.9未満
△:誘電率が2.9以上2.95未満
×:誘電率が2.95以上
【0339】
<柔軟性(MIT耐折性)の評価>
評価用硬化物A又は評価用硬化物Bを、幅15mm、長さ110mmの試験片に切断し、MIT試験装置(東洋精機製作所社製、MIT耐折疲労試験機「MIT-DA」)を使用して、JIS C-5016に準拠して、荷重2.5N、折り曲げ角90度、折り曲げ半径1.0mm、折り曲げ速度175回/分の測定条件にて硬化体の破断までの耐折回数を測定した。なお、測定は5サンプルについて行い、上位3点の平均値を算出し、以下の基準で評価した。
〇:耐折回数が405回以上
△:耐折回数が395以上405未満
×:耐折回数が395回未満
【0340】
<動的粘弾性におけるtanδの最大値の測定>
樹脂シートA又は樹脂シートBの樹脂組成物層について、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を使用して動的粘弾性を測定した。樹脂組成物層から採取した試料樹脂組成物1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ1degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、得られた貯蔵弾性率E’(GPa)と損失弾性率E’’(Pa)の値を採用し、下記式を用いてtanδを算出した。そして100℃以上でのtanδの最大値を求めた。
tanδ=E’’/E’
【0341】
<真空プレス処理後の絶縁層の厚みの評価>
(1)真空プレス処理を用いた銅張積層板への樹脂シートの積層
銅張積層板として、1mm角格子の配線パターン(残銅率が59%)にて形成された回路導体(銅)を両面に有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ12μm、基板厚み0.15mm、三菱ガス化学社製「HL832NSF LCA」、255×340mmサイズ)を用意した。該内層回路基板の両面を、メック社製「CZ8201」にて銅表面の粗化処理(銅エッチング量0.5μm)を行った。樹脂シートAから、保護フィルムを剥離して、樹脂組成物層を露出させた。次いで、露出した樹脂組成物層を、真空ホットプレス機(北川精機社製、VH1-1603)を用いて、樹脂組成物層が銅張積層板と接するように、銅張積層板の両面にラミネートした。プレス条件は、減圧度1×10-3MPa以下の減圧下とし、圧力条件が20kgf/cm2の条件下で、加熱条件として1段階目のプレスは、温度が100℃、時間30分、2段階目のプレスは、温度が190℃、時間は120分で行った。プレスによる加熱により樹脂組成物層が硬化された後、極薄銅をエッチングすることで評価用基板Cを得た。
【0342】
(2)真空プレス処理後の絶縁層の厚み観察
FIB-SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、評価用基板Cの断面観察を行い、絶縁層の厚み(銅張積層板の回路導体の直上における絶縁層の厚み)を測定し、以下の基準で評価した。
〇:絶縁層の厚みが15μm±20%未満。
△:絶縁層の厚みが15μm±20%以上30%未満。
×:絶縁層の厚みが15μm±30%以上。
【0343】
【0344】
実施例1~11において、(B)成分~(D)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。