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特開2022-146837噛み合いクラッチ機構、摩擦クラッチ機構、及び2段変速装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146837
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】噛み合いクラッチ機構、摩擦クラッチ機構、及び2段変速装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 11/04 20060101AFI20220928BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20220928BHJP
   F16H 3/48 20060101ALI20220928BHJP
   F16H 3/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
F16D11/04 Z
F16D13/52 D
F16H3/48
F16H3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021080672
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】597021598
【氏名又は名称】株式会社イケヤフォ-ミュラ
(72)【発明者】
【氏名】池谷 信二
【テーマコード(参考)】
3J056
3J528
【Fターム(参考)】
3J056AA03
3J056AA60
3J056BA02
3J056BB02
3J056BB05
3J056BB15
3J056BB21
3J056CA02
3J056CA07
3J056CA12
3J056CC03
3J056CC12
3J056DA18
3J056GA05
3J056GA12
3J528EA21
3J528EA27
3J528EB33
3J528EB63
3J528EB74
3J528FC14
3J528FC32
3J528FC63
3J528FC64
3J528GA08
3J528JA01
3J528JD01
3J528JE02
3J528JG01
3J528JJ01
(57)【要約】
【課題】 変速時にトルクが途切れないようにする事と、低速段時にコーストトルクを伝達できようにした噛み合いクラッチ機構、摩擦クラッチ機構、及び2段変速装置を提供する。
【解決手段】低速段は、ロック機能を有する噛み合いクラッチで、高速段は摩擦クラッチでトルク伝達する機構である。高速段、低速段ともにコーストトルク伝達が可能で、変速はアップダウンともにシームレス変速が可能である。ドライブ、コーストの両方向のトルク伝達が可能で、例えば電動車両に使用した時、後進時及びエネルギー回生時の逆トルク伝達が可能となる。更にワンウエイクラッチ機能で、高速段への変速時にトルク切れがなくその上スムーズな変速が可能となる。更に高速段での使用時は、低速段に噛み合いクラッチを使用するため、摩擦クラッチのドラッグトルクによるロスが発生せず、効率が上昇する。
【選択図】図32
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後述するケースに回転自在に支持された第一回転体と、該第一回転体に設けられた第一ドッグクラッチの歯底から歯先までの距離をHとし、第一ドッグクラッチの、後述する第二ドッグクラッチに正トルク(ドライブトルク)を伝達する側の歯面にX<HなるA点を定義し、A点から歯先Hにかけての歯面が回転軸線に対し平行または第二クラッチを引き込む方向に傾斜し、前記A点から前記歯底を結ぶ傾斜面を設け、第一ドッグクラッチの第二ドッグクラッチに負のトルク(コーストトルク)を伝達する歯面は、歯底からX-△Xの距離まで回転軸線に平行または第二噛み合いクラッチを引き込む方向、または離脱する方向であって摩擦角以下に僅かに傾斜し、前記X-△Xから歯先Hまでは前記回転軸線に対し45度以上であって80度以下に傾いた斜面から構成される第一ドッグクラッチと、ドライブ側歯面が前記第一ドッグクラッチのドライブ歯面のXから先端Hまでと回転軸線に対し同一角度であり、コースト歯面は第一ドッグクラッチのコースト歯面の歯底からX-△Xまでの歯面と同一角度で、該部分は互いに隙間なく接触する歯型を有し、内径部に後述する第一ハブに回転方向は固定され軸方向にのみ摺動自在に係合し、後述する押圧手段で、第一ドッグクラッチとの噛み合い方向に押圧される推力を受圧する手段及び後述するシフト機構の軸移動力を授受する手段を有する第二ドッグクラッチと、第二ドッグクラッチに第一ドッグクラッチとの噛み合い方向への軸力を付勢する押圧手段と、第二ドッグクラッチを軸方向に移動させ、第一ドッグクラッチとの噛み合いを、結合分離させるシフト機構と、シフト機構を駆動するアクチュエーターと、外周部に第二ドッグクラッチを回転方向に固定し、軸方向には摺動可能に係合する手段を有し、内径部に前記第一回転体を回転自在に支持するベアリングを係合する後述するケースに締結部材等で固定または一体に作られた第一ハブと、前記第一回転体、第一、第二ドッグクラッチ、第一ハブ、シフト機構、アクチュエーター等をマウントするケースからなる噛み合いクラッチ機構。
【請求項2】
請求項1の第一回転体が、ケースに回転自在に取り付けられたドライブシャフトまたはトルク伝達軸の外周に回転自在に係合する第二回転体であって、請求項1の第一ハブが、前記ドライブシャフトまたはトルク伝達軸に締結または一体に成形された第二ハブであることを特徴とする噛み合いクラッチ機構。
【請求項3】
請求項1、2のシフト機構が、第二ドッグクラッチを駆動する部材とアクチュエーターにより駆動されるシフト部材から構成され、該部材同士が相対運動を惹起しないように固定締結または一体的に成形され、第二ドッグクラッチを前記第一ドッグクラッチと噛み合い及び離脱方向に駆動する、請求項1、2の噛み合いクラッチ機構。
【請求項4】
請求項3の前記第二ドッグクラッチを駆動する部材が、前記アクチュエーターにより駆動される部材と軸方向または揺動方向に摺動可能に係合し、前記アクチュエーターにより駆動される部材が、前記第二ドッグクラッチを前記第一ドッグクラッチと離脱する方向にのみ弾性体を介し駆動し、結合する方向には弾性体を介さず駆動されることを特徴とする請求項1、2の噛み合いクラッチ機構。
【請求項5】
前記第二ドッグクラッチを駆動する部材を、前記アクチュエーターで駆動される部材により、第一ドッグクラッチと噛み合い及び離脱の双方向に弾性体を介して駆動されることを特徴とする請求項1、2の噛み合いクラッチ機構。
【請求項6】
第二ドッグクラッチを第一ドッグクラッチ方向に押圧する手段と、請求項5の弾性体が同一部材であるであることを特徴とする請求項1、2の噛み合いクラッチ機構。
【請求項7】
モーター等の駆動部材の出力を受ける手段を有し、ケースにベアリング等で回転自在に支持されるドライブシャフトと、該ドライブシャフトに回転自在または固定された低速ドライブギヤー及び高速ドライブギヤーと、外部材を駆動する外部材駆動手段を有し、ケースにベアリング等で回転自在に支持されるドリブンシャフトと、該ドリブンシャフトに回転自在に係合または固定された前記低速ドライブギヤーと噛み合う低速ドリブンギヤー及び高速ドライブギヤーと噛合する高速ドリブンギヤーからなる2列歯車機構であって、低速歯車列の低速ドライブギヤーまたは低速ドリブンギヤーの一方の低速ギヤーはその支持軸に固定され、他の低速ギヤーがその支持軸に回転自在に係合し、該軸と他の低速ギヤー間のトルクの伝達解放を行う噛み合いクラッチと、高速歯車列の一方の高速ギヤーが該高速ギヤーの支持軸に固定され、他の高速ギヤーが該ギヤーの支持軸に回転自在に係合し、他の高速ギヤーと該ギヤーの係合する軸の間を摩擦クラッチ機構でトルク伝達及び解放することを特徴とする2段変速装置。
【請求項8】
請求項7の噛み合いクラッチ機構が請求項2~6の噛み合いクラッチであることを特徴とする2段変速装置。
【請求項9】
請求項7の摩擦クラッチ機構が前記ドライブシャフトまたはドリブンシャフトに回転自在に係合し、該ドライブシャフトまたはドリブンシャフトが内径部を貫通しケースに第二ボスをベアリングで支持された高速ドライブギヤーまたは高速ドリブンギヤーと、該第二ボスのギヤーと反対側に前記ベアリングを挟んで、締結された内径部に第一摩擦部材を係合する手段と、摩擦部材押圧力を受圧する手段を有する第二クラッチハウジングと、該クラッチハウジングの内径軸方向位置に外径部に第二摩擦部材を係合する手段を有し、前記高速ドライブギヤーまたは前記高速ドリブンギヤーを回転自在に係合し、該歯車の中心部を貫通する前記ドライブシャフトまたは前記ドリブンシャフトに締結された第二摩擦クラッチハブと、前記第一、第二摩擦部材に与える押圧力を調整する押圧力調整部材と、該部材に押圧力を印加する弾性体と、前記弾性体の反力を前記第二クラッチハウジングに伝達する締結部材と、前記押圧力調整部材に前記弾性体の摩擦部材押圧力低減方向の軸力を印加するベアリングと、前記ベアリングに前記軸力を印加する第二摩擦クラッチアクチュエーターシャフトと、前記第二摩擦クラッチアクチュエーターシャフトを駆動する第二摩擦クラッチアクチュエーターからなる第二摩擦クラッチ機構。
【請求項10】
請求項1の第一回転体が後述のインターナルギヤーであり、前記インターナルギヤーは内歯歯車と、第一摩擦部材の外径部を係合し、第一、第二摩擦部材の押圧力を受圧する手段を有する第一クラッチハウジングと、第一ハブの内径にベアリングで回転自在に、軸方向には固定係合される第一ボスと、第一ドッグクラッチを有し、前記インターナルギヤーに噛み合う第一プラネットピニオンと、モーター等の駆動部材の動力を受ける第一サンギヤーシャフトと、前記第一プラネットピニオンを回転自在に支持する手段と、外部材を駆動する外部材駆動手段と、前記第二摩擦部材の内径部を係合する手段を有し、第一サンギヤーの外周と第一ボスの内径に回転自在にベアリングで係合する第一プラネットキャリアと、駆動部材の動力を受け、ケースに回転自在に係合し、前記第一プラネットピニオンと噛み合う前記第一サンギヤーと、第一ドッグクラッチと前記第一ハブに係合する第二ドッグクラッチ等から構成される請求項1、3~6の噛み合いクラッチ機構と、前記インターナルギヤーと前記第一プラネットキャリア間のトルクの結合解放をする第一摩擦クラッチ機構とからなる2段変速装置。
【請求項11】
請求項1の第一回転体が後述する第二プラネットキャリアであり、モーター等の駆動部材により駆動する手段を有し、ケースと後述の第二プラネットキャリア内径部にベアリングで回転自在に支持された第二サンギヤーを有する第二サンギヤーシャフトと、前記第二サンギヤーシャフト外周に回転自在に係合し、前記第二サンギヤーよりピッチ円径の大きい第三サンギヤーと、外部材駆動手段と第二摩擦部材の内周部が係合する第一摩擦クラッチハブを有する第三サンギヤーシャフトと、前記第二サンギヤーと噛み合う第三歯車と、前記第三サンギヤーと噛み合い前記第三歯車よりピッチ径の小さい第四歯車を一体的に有する第二プラネットピニオンと、第一ドッグクラッチと第一クラッチハウジングと前記第二プラネットピニオンを回転自在に支持する支持軸を有し、第一ハブの内径部にベアリングで回転自在に軸方向には固定され支持される第二プラネットキャリアと、前記第一ドッグクラッチと前記第一ハブ外周部に係合する第二ドッグクラッチ等を含む請求項1、3~6の噛み合いクラッチ機構と、前記第三サンギヤーシャフトと前記第二プラネットキャリア間のトルクを結合解放する摩擦クラッチ機構を有する2段変速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噛み合いクラッチ機構、摩擦クラッチ機構、及び2段変速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の特許文献1に示されるような遊星ギヤーユニットでモーターの回転速度を減速または等速で維持することを特徴としている2段変速装置が提案されている。しかし、高速段への変速時に一旦ニュートラルを通過するためトルク切れが発生するという問題があった。
また、特許文献2に示されるような電磁コイルの非通電及び通電で低速段と高速段を割り当てることにより電力消費効率を高め、運転者が知覚し得る変速ショックの軽減を図る装置が提案されている。しかし、この装置ではダブル噛み合いを防止するため低速段及び高速段のクラッチが共に非締結のニュートラルを設ける必要があり、変速時にトルク切れが生じ、更に低速段時にワンウエイクラッチでトルクを伝達するためコーストトルクを伝達できない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-017632号公報
【特許文献2】特許第6545921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、変速時にトルクが途切れる事と、低速段時にコーストトルクを伝達できない点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、2段変速機の変速のための、低速段を噛み合いクラッチ、高速段を摩擦クラッチで遊離結合する変速クラッチ機構の発明と、該変速クラッチ機構を利用した遊星ギヤーまたは2軸式歯車の2段変速機に関するものである。前記低速段の噛み合いクラッチの形状を、歯底から歯先までの高さがHの対向する第一、第二ドッグクラッチとし、前記第一ドッグクラッチのドライブトルク伝達歯面は回転軸線に対し平行または噛み合いトルクにより第二ドッグクラッチを引き込む方向に僅かに傾斜させると共に、前記第一ドッグクラッチの歯底とドライブ歯面の歯底からXの高さの点を結ぶ傾斜面を設けた形状とし、該斜面より第二ドッグクラッチが前記第一ドッグクラッチのドライブ歯面に噛み合う時、歯底からXだけ浮くようにした。該第二ドッグクラッチが、前記第一ドッグクラッチの歯底から所定の高さXまで浮き上がる形状となっている。尚Xは0を含む正数である。
更に前記第一ドッグクラッチのコースト歯面は歯底から前記X-△Xの位置まで、回転軸線に対し平行または、噛み合いトルクにより第二ドッグクラッチが噛み込む方向、または摩擦角以下で第二ドッグクラッチが離脱する方向の歯面を有し、前記X-△Xの位置から先端まで、回転軸線に対し45度から80度の範囲で傾斜させた形状の歯面とする。尚△Xは負の値を含む。
【0006】
第二ドッグクラッチのドライブ歯面は、第一ドッグクラッチの歯底からXより歯先側の歯面に合致する回転軸線に対する角度を有し、コースト歯面は第一ドッグクラッチの歯底からX-△X以下の歯面と回転軸線に対し同一の角度を有する形状とする。
【0007】
更に、低速段においては第二ドッグクラッチを弾性体により、第一噛み合いクラッチに噛み合う方向に押圧し、ドライブトルクにより、前記斜面効果で第一ドッグクラッチの歯底から△Xだけ浮き上がっている第二ドッグクラッチを、コーストトルクが印加され噛み合い面が移動する時、第一ドッグクラッチの歯底に押し付け、該第二ドッグクラッチが、前記第一ドッグクラッチの歯底からX-△X以下の歯面に噛み合うようにする。このため該第一、第二ドッグクラッチは、ドライブトルクのみならずコーストトルクも伝達することができる。
【0008】
高速段への変速時、第二ドッグクラッチを移動させるシフト機構により、第二ドッグクラッチをドライブトルクにより第一ドッグクラッチの歯底からXだけ浮き上がっている位置に保ち、第二ドッグクラッチ5がコースト方向へ移動しても、第二ドッグクラッチが第一ドッグクラッチの歯底方向へ移動できないようにする。
【0009】
前記シフト機構の操作と同時または少し遅れ、高速段の摩擦クラッチを結合する。高速段の摩擦クラッチを結合し始めると、第一、第二ドッグクラッチに印加されるトルクはドライブトルク方向のトルクが減少し、コーストトルクに移行する。この時シフト機構の働きで、第二ドッグクラッチは、歯底からXの位置から更に噛み合い方向へ離脱する。第一ドッグクラッチの前記歯底からX-△Xより歯先の斜面である前期回転軸線に対し45度から80度の間で傾斜した斜面に接触する。そして該斜面の作用で、第二ドッグクラッチは第一ドッグクラッチに対し噛み合い離脱方向に付勢され、第一、第二ドッグクラッチの噛み合いは解放される。そして駆動トルクの伝達は高速段の摩擦クラッチに移行する。このため低速段から高速段への変速時にドッグクラッチと摩擦クラッチ双方から非駆動体にトルクが伝達され、該トルクはドッグクラッチから摩擦クラッチへ移行する際はトルクが途切れることなくスムーズに行われる。
【0010】
また、シフト機構が素早く第二ドッグクラッチを駆動すれば、第二ドッグクラッチは第一ドッグクラッチのコースト歯面に接触せず直接噛み合いを離脱させることも可能である。
【0011】
更に高速段の摩擦クラッチを結合し始め、第一、第二ドッグクラッチのドライブ歯面の噛み合い面圧が減少または0となった時、素早く該ドッグクラッチ噛み合いを解放するため、シフト機構を駆動するアクチュエーターと結合する部材と、第二ドッグクラッチを駆動する部材間を弾性体で結合し、シフトアップ時、前記アクチュエーターと結合する部材を、前記ドッグクラッチのドライブ歯面がまだ噛み合っている時に高速段位置まで移動させ、前記弾性体を変形させ位置エネルギーを蓄積し、前記高速段摩擦クラッチの結合力が増大し、前記ドッグクラッチのドライブ歯面の面圧が減少または消滅した時、瞬時に前記弾性体部材の位置エネルギーにより前記第二ドッグクラッチを駆動する部材を駆動し、瞬時に第一、第二ドッグクラッチの噛み合いを解放するような機構にすることもできる。
【0012】
本発明の2段変速装置は、遊星歯車列、または2軸式歯車列の低速段に、前述した特別な機能を有する噛み合いクラッチ機構を使用し、高速段には摩擦クラッチ機構を使用することにより、変速時に駆動トルクを遮断することなく変速可能2段変速装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は低速段の時、ドライブ、コーストの両方向のトルク伝達が可能で、例えば電動車両に使用した時、後進時及びエネルギー回生時の逆トルク伝達が可能となる。更にワンウエイクラッチ機能で、高速段への変速時にトルク切れがなくその上スムーズな変速が可能となる。更に高速段での使用時は、低速段に噛み合いクラッチを使用するため、摩擦クラッチのドラッグトルクによるロスが発生せず、効率が上昇する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図2】第一、第二ドッグクラッチの歯で、正トルク方向に噛合している状態の断面図である。
図3】第一、第二ドッグクラッチが負トルク方向に噛合している状態の断面図である。
図4】第一、第二ドッグクラッチの結合が解放された時の断面図である。
図5】第二噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図6】第三噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図7】第四噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図8】第一シフト機構の断面図である。
図9】第二シフト機構の断面図である。
図10】第五噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図11】第六噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図12】第三シフト機構の断面図である。
図13】第三シフト機構の断面図である。
図14】第三シフト機構の変速動作中の断面図である。
図15】第三シフト機構の変速後の断面図である。
図16】第四シフト機構の主断面図である。
図17】第七噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図18】第八噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図19】第五シフト機構の断面図である。
図20】第五シフト機構の断面図である。
図21】第五シフト機構の変速動作中の断面図である。
図22】第五シフト機構の変速後の断面図である。
図23】第六シフト機構の断面図である。
図24】第九噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図25】第十噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図26】第十一噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図27】第十二噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図28】第十三噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図29】第十四噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図30】第十五噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図31】第十六噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図32】第三A2段変速装置の主断面図である。
図33】第三B2段変速装置の主断面図である。
図34】第一A2段変速装置の主断面図である。
図35】第一B2段変速装置の主断面図である。
図36】第五2段変速装置の主断面図である。
図37】第六2段変速装置の主断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
図1に示す01aは、第一噛み合いクラッチ機構の主断面図である。図2に示す3、5は第一、第二噛み合いクラッチ(以下ドッグクラッチと称する)の歯の形状で、形状及び両者が正トルク(以下ドライブトルクと称する)方向に噛合している状態を示す。図3は第一及び第二ドッグクラッチ3、5が負のトルク(以下コーストトルクと称する)方向に噛み合っている状態を示す。図4は第一、第二ドッグクラッチ3、5の結合が解放された時の図を示す。図5に示す01bは第二噛み合いクラッチ機構、図6に示す01cは第三噛み合いクラッチ機構、図7に示す01dは第四噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
図8に示す07aは第一シフト機構、図9に示す07bは第二シフト機構である。尚図1、3、4、5の噛み合いクラッチ機構は2段変速装置の低速段を受け持つ噛み合いクラッチである。
【0016】
図1の第一噛み合いクラッチ機構01aに示す09はケース、1はケース09に回転自在に取り付けられたトルク伝達軸、7bはトルク伝達軸1に回転自在に係合する第一ドッグクラッチ3を有する第二回転体を示す。9bはトルク伝達軸1に固定または一体的に加工された第二ハブを示す。13bは第二ハブ9bに回転方向には固定され軸方向には摺動自在に係合し、第二ドッグクラッチ5及び外周部に第一シフト機構07aにより軸方向に鼓動される手段である第二スリーブ外周溝11bを有する第二スリーブを示す。03は第二ドッグクラッチ5を第一ドッグクラッチ3の噛み合い方向へ付勢する第一押圧手段を示す。15は第二スリーブ13bの内径部に設けられた一個または複数の斜面溝15で、19は前記第二ハブ9bに設けられた斜面溝15に対応する穴17と、穴17に係合する弾性体19であり、21は弾性体19の押圧力を斜面溝15に伝達する伝達部材である。伝達部材21が斜面溝15をラジアル方向へ押圧することにより、斜面効果により、第二スリーブ13bを第一ドッグクラッチ3方向に押圧する。尚、図6の05は第二押圧手段である。第二押圧手段05は第二スリーブ13bに軸推力を印加する第二弾性体33と、第二弾性体33の軸推力を第二ハブ9bに伝達するリングプレート35とリングプレート35を第二ハブ9bに締結するストッパーリング37から構成される。
【0017】
図2は前記第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5の歯型及び、該ドッグクラッチが正トルク(以下ドライブトルクと称する)で噛み合っている状態、図3は該両ドッグクラッチ3と5同士が負トルク(以下コーストトルクと称する)で噛み合っている状態、図4は第一、第二ドッグクラッチ3、5が離脱している状態を示す。
第一ドッグクラッチ3のドライブトルクを伝達する側の第一ドライブトルク伝達歯面23は、歯底25からXの距離にあるA点から歯先27までの歯面29は回転軸線に対し第二ドッグクラッチ5を噛み込む方向の角度または回転軸線に対し平行な噛み合い面を有し、A点から歯底25までは斜面31で結ばれている。第一ドッグクラッチ3の第一コーストトルク伝達歯面39は、歯底25からX-△Xの距離にあるB点から歯底25までは回転軸線に対し第二ドッグクラッチ5を引き込む方向または軸線に平行、または第二ドッグクラッチ5を離脱させる角度であって摩擦角以下の角度を有する歯面41を持ちB点から歯先27まではその面が回転軸線に対し45度から80度まで傾いた単一斜面または複合斜面を有す歯面43を持つ。
【0018】
図8に示す07aは第一シフト機構、45は回転アクチュエーター、47は回転アクチュエーター45で駆動される第一回転アクチュエーター軸、49は第一回転アクチュエーター軸47に固定されたアーム、51はアーム49に締結し、第二スリーブ外周溝11bに係合するスリーブ移動部材である。回転アクチュエーター45の回転により、スリーブ移動部材51は円弧上に運動し、第二スリーブ13bを軸方向に移動させ、第一、第二ドッグクラッチ3、5の噛み合い離脱を駆動する。
図9に示す07bは第二シフト機構で、53は直動アクチュエーター、55は直動アクチュエーター53で駆動するシフトロッド、57は第二スリーブ外周溝11bに係合し、シフトロッド55に締結され、直動アクチュエーター53により軸方向に移動し、第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5の噛み合い離脱を行うシフトフォークであり、第二シフト機構07bは以上の部材から構成される。
回転または直動アクチュエーター45、53は、電動、油圧、空圧、電磁ソレノイド、手動等のものを用いることが可能である。
スリーブ移動部材51及びシフトフォーク57の第二スリーブ外周溝11bに係合する部位58及び60と第二スリーブ外周溝11bの間は、前記したXと同一または僅かに大きい隙間Yを有する。第一、第二ドッグクラッチ3、5がドライブトルクでの噛み合い位置にある時、隙間Yは第二ドッグクラッチ5の噛み合い離脱方向に、コーストトルクで噛み合っている時は、第一ドッグクラッチ3側に生じる位置に回転アクチュエーター45は制御される。
【0019】
図5は第二噛み合いクラッチ機構01bの主断面図で、第一噛み合いクラッチ機構01aのシフト機構を第一シフト機構07aから、第二シフト機構07bに変更したものである。図6は第三噛み合いクラッチ機構01cの主断面図で、第一噛み合いクラッチ機構01aの第二スリーブ押圧手段を第一押圧手段03から第二押圧手段05に変更したものである。図7は第四噛み合いクラッチ機構01dの主断面図で、第一噛み合いクラッチ機構01aの第一シフト機構07aを第二シフト機構07bに変更し、更に第二スリーブ13bの押圧手段を、第一押圧手段03から第二押圧手段05に変更した噛み合いクラッチ機構である。
【0020】
第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5がドライブトルクにより噛み合っている時は、図2に示すように第二ドッグクラッチ5の第二ドライブトルク伝達歯面23bが第一ドッグクラッチ3の斜面31により歯底25からXだけ浮き上がっている。この時、前記隙間Yは第一ドッグクラッチ3の反対方向に生じている。両ドッグクラッチがコーストトルクで噛み合っている時は、図3に示すように第一または第二押圧手段03、05により第二ドッグクラッチの歯先59は、第一ドッグクラッチの歯底25に接し、第二ドッグクラッチ5の第二コーストトルク伝達歯面39bは、第一ドッグクラッチ3の第一コーストトルク伝達歯面39の歯底からX-△XのB点以下の歯面41に噛み合い、コーストトルクを伝達する。この時、前記隙間Yは第一ドッグクラッチ3側に移行する。
このように本噛み合いクラッチ機構はドライブ、コースト両方向のトルク伝達が可能となる。
【0021】
高速段へのシフト時、後述の高速段の摩擦クラッチに駆動トルク移行が開始されると、第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5の第一、第二ドライブトルク伝達歯面23、23bの伝達トルクは減少し、最終的には0となり、噛み合いは第一、第二コーストトルク伝達歯面39と39bに移行し高速段、低速段のダブル噛み合いによる内部循環トルクが発生しドッグクラッチ噛み合い部にはコーストトルクが発生する。
本発明に置いては、高速段へのシフト開始直前または同時に、前記隙間Yが、第一ドッグクラッチ3の反対側にある時に、第一シフト機構07aまたは第二シフト機構07bを噛み合い離脱方向へ駆動し、隙間Yを第一ドッグクラッチ3側に移行させる。このため、第二ドッグクラッチ5のドライブトルクが失われても、第二ドッグクラッチ歯先59は第一または第二シフト機構07a、07bにより、第一ドッグクラッチの歯底25からXだけ離れた軸方向位置に保たれても第一、第二シフト機構07a、07bによりスリーブ押圧部材の軸推力をブロックし、更にドライブトルクの消滅により、第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5の歯面摩擦が失われるため、第一または第二シフト機構07a、07bは第二スリーブ13bを容易に第一ドッグクラッチ3から離脱方向に△Yだけ移動可能である。つまり第二ドッグクラッチ歯先59は第一ドッグクラッチ3の歯底25からX+△Yだけ浮き上がる。
【0022】
図4に示すように第一ドッグクラッチ3の第一コーストトルク伝達歯面39は前記B点から歯先27までは回転軸線に対し45度から80度まで傾斜した斜面31bとなっている。このため、前記△Xより△Yを大きくなる設定とすることにより、第二ドッグクラッチ5の第二コーストトルク伝達歯面39bは斜面31bに当接する。このため斜面31bの斜面効果により第一、第二ドッグクラッチ3、5間のコーストトルクが増大する前、つまり高速段と低速段のダブル噛み合いによる内部循環トルクが増大する前に第二ドッグクラッチ5は第一ドッグクラッチ3から離脱する方向の軸方向運動が生じ、更に第一または第二シフト機構07a、07bのドッグクラッチ噛み合い離脱方向への駆動により、第二ドッグクラッチ5は第一ドッグクラッチ3との噛み合いをスムーズに離脱することが可能となる。
【0023】
以上のように本実施例の噛み合いクラッチによれば、低速段における通常運転時においては、ドライブ、コーストの両方向のトルク伝達が可能で、更に高速段へのシフトにおいては、第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5の噛み合いを、高速段と低速段のダブル噛み合いによる内部循環トルクの増大を招くことなくスムーズに解放することができる。
【実施例0024】
図10に示す01eは第五噛み合いクラッチ機構の主断面図、図11に示す01fは第六噛み合いクラッチ機構の主断面図、図12に示す07cは第三シフト機構、図13~15は第三シフト機構07cの断面図、図16に示す07dは第四シフト機構を示す。
【0025】
図10に示す第五噛み合いクラッチ機構01eは第四噛み合いクラッチ機構01dのシフト機構を第二シフト機構07bから第三シフト機構07cに変更した噛み合いクラッチ機構である。
図12に示す07cは第三シフト機構の図である。65aは第二回転アクチュエーター軸47bに結合した第一回転アーム、65bは第二回転アクチュエーター軸47bに回転摺動自在に支持され、第二スリーブ13bの軸方向駆動手段69を有する第二回転アーム、61は鶴巻ばねを一例とした第三弾性体である。
第二回転アーム65bが第二スリーブ13bを第一ドッグクラッチ3から離脱する方向へ駆動する場合、第一回転アーム65aは第三弾性体61を介し第二回転アーム65bを駆動、ドッグクラッチを噛み合わせる方向には第一回転アーム65aが第三弾性体61を介さず第二回転アーム65bを直接駆動する構造としたものである。
【0026】
図13は第三シフト機構07cの断面図である。第二回転アクチュエーター軸47bに第二回転アーム65bが第一回転アーム65aと回転アクチュエーター45に挟まれ回転方向に摺動自在に係合している。第一回転アーム65aは第二回転アクチュエーター軸47bに締結固定され、鶴巻ばねを一例とした第三弾性体61が支持されている。第一回転アーム65aに第三弾性体61の第一端部71を駆動する第一ピン73と第二回転アーム65bを直接駆動する第二ピン75が設けられている。第二回転アーム65bには第三弾性体61の第二端部77で駆動される第三ピン79が第一回転アーム65aと干渉しない位置に設けられている。第三弾性体61の第一端部71は第一ピン73に接し、第二端部77は第三ピン79にのみ接すればよい。第三弾性体61は組み込まれる時、第二端部77に対して第一端部71が図の左方向に移動している状態の所定のトルクTで第三ピン79を時計回りに、第一ピン73は反時計回りに捩じる方向のトルクが生じる角度で組み付けられる。その反力トルクTは第一ピン73で図の左方向へ吸収され、第一端部71は図の右方向へ第三弾性体61の第二端部77に接する第三ピン79と、第二回転アーム65bに接する第二ピン75により、第二回転アーム65bは第一回転アーム65aに対しトルクTの強さで、所定回転位置にトルクTで固定される。Tは第二スリーブ13b及び後述の第一スリーブ13aを押圧する第一、第二押圧手段03、05の押圧力に打ち勝つ設定とする。
【0027】
第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5がドライブトルク方向に噛み合い、歯面の摩擦トルクにより、第二スリーブ13bが離脱方向に移動しない状態で、回転アクチュエーター45が第二スリーブ13bを離脱させる位置までに駆動すると、第一回転アーム65aが回転し、第三弾性体61を変形させながら第一ピン73を図14に示す所定位置まで移動させる。所定位置とは第一、第二ドッグクラッチ3、5が離脱した時の位置である。
図14の状態は第三弾性体61の第一端部71と第二端部77間に位置エネルギーが蓄積され第一端部71が第二回転アーム65bの第三ピン79を第二ドッグクラッチ5の離脱方向に回転させるトルクT+T△を印加し続けている。この状態で第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5の噛み合いトルクが消滅すると、第三弾性体61のポテンシャルエネルギーにより第二回転アーム65bは第二スリーブ13bを一気に第一、第二ドッグクラッチ3、5の噛み合いを解放する位置まで移動させ、第一回転アーム65aと第二回転アーム65bの相対位置は、当初の回転アクチュエーター45の操作前の状態に戻り図15に示す位置となる。
【0028】
第二ドッグクラッチ5を解放位置から、第一ドッグクラッチ3と噛み合う位置にシフトする時は、回転アクチュエーター45を解放時とは逆回転させる。この時第一回転アーム65aに取り付けられた第二ピン75が第二回転アーム65bを直接駆動し、第二スリーブ13bを最初の噛み合い位置に移動させる。
【0029】
図11に示す01fは第六噛み合いクラッチ機構の主断面図で、第四噛み合いクラッチ機構01dに対しシフト機構を第二シフト機構07bから図16に示す第四シフト機構07dに変更したクラッチ機構である。
図16に第四シフト機構07dの主断面図を示す。53は直動アクチュエーターで、55bは直動アクチュエーター53で駆動される第二シフトロッドである。57bは第二シフトロッド55bに摺動自在に係合する第二シフトフォークである。83は第二シフトロッド55bに締結部材81で締結された弾性体ストッパーである。85は第二シフトロッド55bに締結された第二シフトフォークストッパーである。
【0030】
第一、第二ドッグクラッチ3、5がドライブトルク伝達状態で噛み合っている状態にある時、図16に示すように第二シフトフォーク57bは第二シフトロッド55b外周に係合する第二弾性体33の第一端部87により第一、第二押圧手段03、05の押圧力より強いプリロードPで押圧され、第二シフトフォーク57bの端部91がシフトフォークストッパー85に接している。また第二弾性体33の第二端部89は弾性体ストッパー83に接し、第二シフトフォーク57bと第二シフトロッド55bは前記プリロードP以下の力では相対運動を惹起しないように係合している。
この状態における第二弾性体33は所定のプリロードを受け、第二シフトフォーク55bの端部91をシフトフォークストッパー85に押し付けている。
【0031】
第一、第二ドッグクラッチ3、5がドライブトルクを受け噛み合っている状態では直動アクチュエーター53により第二シフトロッド55bを離脱方向に駆動しても第二シフトフォーク57bは前記隙間Yしか移動しない。しかし、第二シフトフォーク57bと第二シフトロッド55b間には第二弾性体33が介在しているため、第二シフトロッド55bは、第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5が離脱する所定の位置まで、第二弾性体33を圧縮変形させながら移動可能である。第二弾性体33の変形による推力の増加を△Pとすると、第二シフトフォーク57bと第二スリーブ13b間にはP+△Pの力が働いている。
この状態において第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5間の伝達トルクが消滅すると、第一、第二ドッグクラッチ3、5のドライブ歯面の摩擦力が減少するため、第二弾性体33に蓄積されてポテンシャルエネルギーにより素早く、第二シフトフォーク57bを、第二ドッグクラッチ5が第一ドッグクラッチ3と離脱する所定の位置まで駆動し、第一、第二ドッグクラッチ3、5の噛み合いは素早く解放される。一方で第二ドッグクラッチ5を第一ドッグクラッチ3と噛み合う方向へシフトする時は、第二シフトフォークストッパー85が、第二シフトフォーク57bを第一、第二ドッグクラッチ3、5が噛み合う所定位置まで直接駆動する。
【0032】
第三、第四シフト機構07c、07dに弾性体を用いることにより、高速段へのシフト時、第三、第四シフト機構07c、07dの駆動開始タイミングを早めることが可能で、更に、第二ドッグクラッチ5の噛み合いが第一ドッグクラッチ3の第一ドライブトルク伝達歯面23から第一コーストトルク伝達歯面39に移行する間に離脱方向へ弾性体により加速されるため、第二ドッグクラッチ5の第二コーストトルク伝達歯面39bは第一ドッグクラッチの第一コーストトルク伝達歯面39のより歯先27に近い部位に接触するため、噛み合い離脱が確実となり、更に前記△Xの値を大きくすることが可能で、コースト歯面の噛み合い接触面積を向上し、耐久性向上が可能となる。
【実施例0033】
図17に示す01gは本実施例の第七噛み合いクラッチの主断面図、図18に示す01hは第八噛み合いクラッチ機構の主断面図、図19に示す07eは第五シフト機構、図20、21、22に示す07eは第五シフト機構の所定の状態における断面図を示す。図23に示す07fは第六シフト機構の断面図である。
【0034】
図17に示す第七噛み合いクラッチ機構01gは第五噛み合いクラッチ機構01eのシフト機構を第三シフト機構07cから図19に示す第五シフト機構07eに変更したものである。
図19に示す第五シフト機構07eは、第三シフト機構07cに対し、鶴巻ばねを一例とした第四弾性体95を第一、第二ドッグクラッチ3、5の離脱噛み合いの両方向へのシフトについて介在させた構造を有する。回転アクチュエーター45の第三回転アクチュエーター軸93に第四弾性体95を保持する第二弾性体保持部材97を締結固定し、回転アクチュエーター45と第二弾性体保持部材97の間に第三回転アクチュエーター軸93に回転自在に係合する第三回転アーム99を係合し、第二弾性体保持部材97に第四ピン101を設け、第三回転アーム99の第四ピン101の第三回転アクチュエーター軸93に対し外径方向に第五ピン103を設け、第四弾性体95の両端に外径方向にほぼ放射状に延びる第三端部105及び第四端部107を設け、該端部がクロスした状態で、第四ピン101と第五ピン103を挟むように係合し第二弾性体保持部材97で保持されている。
【0035】
図20は第五シフト機構07eが第二ドッグクラッチ5の歯先59が第一ドッグクラッチ3の歯底25に接している位置関係にある時の状態を示す。従って第一、第二ドッグクラッチ3、5がコーストトルクで噛み合っている時は、第五シフト機構07eは当該図20に示す位置となる。第一、第二ドッグクラッチ3、5の噛み合いトルクがドライブ方向に移行すると、図2で前記したように第二ドッグクラッチ5はXだけ第一ドッグクラッチの歯底25から浮き上がる。この時、第三回転アーム99は第二ドッグクラッチ5の移動に伴い回転するが、回転アクチュエーター45に結合する第三回転アクチュエーター軸93は回転しないように、チェック機構または回転アクチュエーター45により固定しておく。
従って第三回転アーム99及び第四ピン101も移動せず、第三回転アーム99が第五ピン103で第四弾性体95の第三端部105を付勢し第四弾性体95を撓ませながら前記Xに対応する所定の角度だけ回転する。第一、第二ドッグクラッチ3、5に再度コーストトルクが印加されると、第二ドッグクラッチ5の歯先59は第一ドッグクラッチ歯底斜面31から離れ、第四弾性体95の撓みが戻ることにより、第四弾性体95を最初の図20に示す位置に戻し、第二ドッグクラッチ歯先59は第一ドッグクラッチの歯底25に接する位置まで移動する。尚、図19に示す第二スリーブ外周溝11bと該溝に係合するシフト先端部材109は他の実施例が隙間Yを持って係合するが、本実施例においては、該隙間は不要で、シフト先端部材109と第二スリーブ外周溝11bがスムーズに摺動するのに必要な最小隙間をもって係合している。つまり、第五シフト機構07eの第四弾性体95が第一、第二押圧手段03、05の機能を代替する。従って本シフト機構を使用した噛み合いクラッチ機構は、基本的に第一または第二押圧手段03、05は不要である。
【0036】
図18に示す第八噛み合いクラッチ機構01hは、第七噛み合いクラッチ機構01gの第五シフト機構07eを図23に示す第六シフト機構07fに置換したものである。図23の第六シフト機構07fは、第三シフトロッド55c外周に摺動可能に係合し、同じく第三シフトロッド55c外周に係合する第五弾性体111にプリロードを与え挟みこむ2つの第一ピストン113と第二ピストン115を有し、該両ピストン113、115の第五弾性体111の接する反対面に第一、第二締結部材123、125を第三シフトロッド55cに締結し、第五弾性体111により第一、第二ピストン113、115が互いに離脱しない構造となっている。第三シフトフォーク57cは第一、第二ピストン113、115の外周部に摺動可能に係合し、第五弾性体111を包み込む筒部117を有し、該筒部両端112、114に第一、第二ピストン113、115の第五弾性体111と接する面の反対側に接し、第三シフトフォークの筒部117内径部に締結する第一ストッパー部材119と第二ストッパー部材121を有する。
【0037】
第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5がドライブトルクにより噛み合っている時、高速段へのシフトのため直動アクチュエーター53を両ドッグクラッチの離脱方向に駆動しても、両ドッグクラッチは、噛み合いトルクが生みだす摩擦力により、その相対位置を変えない。
このため、第二ドッグクラッチ5に連動する第三シフトフォーク57cも位置を変化せず、第三シフトロッド55cが第一、第二ドッグクラッチ3、5を離脱させる方向の所定位置まで、第一ピストン113と共に第五弾性体111を第三シフトフォーク57cの筒部117端部の第二締結部材125方向へ圧縮しながら移動する。このため、第三シフトフォーク57cは第一、第二ドッグクラッチ3、5離脱方向の軸推力を、第五弾性体111により受ける。高速段のトルク伝達手段へ駆動トルクが移行を開始すると、前記したように第一ドッグクラッチ3と、第二ドッグクラッチ5の噛み合いトルクは減少、歯面の摩擦力も減少する。該摩擦力が、第五弾性体111の第三シフトフォーク57cに加える押圧力より減少した時、第三シフトフォーク57cは第二スリーブ13bと共に第一、第二ドッグクラッチ3、5の噛み合い離脱位置まで速やかに移動する。本状態においては、第一、第二ピストン113、115は、第三シフトロッド55cに設けられた第一、第二締結部材123、125と第三シフトフォーク57cの筒部端に設けられた第一、第二ストッパー部材119、121に接触する位置に戻る。
【0038】
離脱位置から第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5を噛み合わせる時は、直動アクチュエーター53で第三シフトロッド55cを第二ドッグクラッチ歯先59が第一ドッグクラッチの歯底25が接する位置まで、または該位置を僅かに超える位置まで駆動し、その位置に固定する。前記のように第一、第二ドッグクラッチ3、5がドライブトルクで噛み合うと、第二ドッグクラッチの歯先59は第一ドッグクラッチの歯底25からXだけ浮き上がる。従って第三シフトフォーク57cも第一、第二締結部材119、121により、第五弾性体111を変形させながらXだけ第一、第二ドッグクラッチ3、5が離脱する方向に移動する。高速段へのシフト時以外に駆動トルクがドライブトルクからコーストトルクに移行した時は、第五弾性体111が第一、第二締結部材119、121を駆動し、第三シフトフォーク57cは第二ドッグクラッチ歯先59を第一ドッグクラッチ25の歯底に押し付ける。
【0039】
本実施例は、第一、第二ドッグクラッチ3、5が噛み合っている時であっても、回転、直動アクチュエーター45、53は実施例3と同様に所定位置まで第三、第四、第五弾性体61、95、111を変形させながら、第三回転アクチュエーター軸93または第三シフトロッド55cを所定のシフト位置まで駆動できる。このため高速段へのシフト時、第二ドッグクラッチ5をアクチュエーターの速度によらず素早く第一ドッグクラッチ3から離脱させることが可能となる。このため第一ドッグクラッチ3のXを小さく、△Xを大きくすることが可能となり、噛み合い歯面の耐久性を向上が可能となる。更に第二スリーブ13bを押圧する第一、第二押圧手段03、05が不要となり構造が簡単となる。
【実施例0040】
図24に示す01iは第九噛み合いクラッチ機構の主断面図、図25に示す01jは第十噛み合いクラッチ、図26に示す01kは第十一噛み合いクラッチ機構、図27に示す01lは第十二噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
本実施例は、実施例1の第二回転体7b及び第二ハブ9bを第一回転体7a、第一ハブ9aに置換した発明の実施例である。
第九、第十、第十一、第十二噛み合いクラッチ機構01i、01j、01k、01lは、第一ドッグクラッチ3と第一ボス2aを有する第一回転体7aが、第一ボス2aで、後述の第一ハブ9aの内径部にベアリング4及び第一、第二ベアリング締結部材6a、6bにより回転方向には自在に、軸方向には固定され係合している。
【0041】
第一ハブ9aはケース09に締結部材8で固定またはケース09と一体的に作られている。図24に示す第九噛み合いクラッチ機構01iのシフト機構は前記の第一シフト機構07a、第二ドッグクラッチ5を有する第一スリーブ13aの押圧手段が第一押圧手段03であり、図25の第十噛み合いクラッチ機構01jのシフト機構は第二シフト機構07b、第一スリーブ13aの押圧手段が第一押圧手段03である。図26に示す第十一噛み合いクラッチ機構01kは第九噛み合いクラッチ機構01iに対し、第一スリーブ13aの押圧手段を第一押圧手段03から第二押圧手段05に置換したもので、図27に示す第十二噛み合いクラッチ機構01lは前記第十噛み合いクラッチ機構01jのスリーブ押圧手段を第一押圧手段03から第二押圧手段05に置換したものである。
【0042】
本実施例の実施例1との相違は第二ドッグクラッチ5を有する第一スリーブ13a、第一スリーブ13aを係合する第一ハブ9aが回転しないことである。第一スリーブ13aは前記したように回転せず、第一ハブ9aはケース09に対し固定され軸方向にも移動しないことである。
【0043】
本実施例は、第一スリーブ13aが回転しないため、第一スリーブ13aと第一、第二シフト機構07a、07b及び第二押圧手段05間の摺動がなく、摩擦摩耗が生じなく耐久性に優れる。
【実施例0044】
図28、29に示す01m、01nは、第十三、十四噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
第十三噛み合いクラッチ機構01mは、第九噛み合いクラッチ機構01iの第一シフト機構07aを第三シフト機構07cに置換し、更に第一押圧手段03を第二押圧手段05に置換した噛み合いクラッチ機構で、第十四噛み合いクラッチ機構01nは第十噛み合いクラッチ機構01jの第二シフト機構07bを第四シフト機構07dに置換し、更に第一押圧手段03を第二押圧手段05に置換した噛み合いクラッチ機構である。
【0045】
本実施例は、実施例2及び実施例4で述べた効果と同様の効果を有する。
【実施例0046】
図30、31に示す01o、01pは本実施例の第十五、十六噛み合いクラッチ機構の主断面図である。
第十五噛み合いクラッチ機構01oは第九噛み合いクラッチ機構01iの第一シフト機構07aを第五シフト機構07eに置換し、第一、第二押圧手段03、05を除去した構造からなる噛み合いクラッチ機構であり、第十六噛み合いクラッチ機構01pは第十噛み合いクラッチ機構01jの第二シフト機構07bを第六シフト機構07fに置換し、第一、第二押圧手段03、05を除去した噛み合いクラッチ機構である。該シフト機構の変更に伴い、実施例3で記したように、第五、第六シフト機構07e、07fと接触する第一スリーブ外周溝11aの遊びは無い構造をとる。
【0047】
本実施例の効果は、実施例3と実施例4で述べた効果と同様の効果を有する。
【実施例0048】
図32、33に示す023、025は2段変速装置の本実施例である第三A、B2段変速装置の主断面図である。
第三A、B2段変速装置023、025は電動モーターやCVT等の駆動部材127で駆動され、ケース09に回転自在に支持されるドライブシャフト129に低速ドライブギヤー131aと高速ドライブギヤー131bを係合し、デフ等の外部材139を駆動する外部材駆動手段141を有しケース09に回転自在に支持されるドリブンシャフト133に低速ドライブギヤー131aと噛合する低速ドリブンギヤー135aと高速ドライブギヤー131bに噛合する高速ドリブンギヤー135bが係合する低速歯車列011と高速歯車列013からなる2列歯車機構の2段変速装置である。
【0049】
図32に示す第三A2段変速装置023はドライブシャフト129に締結された低速ドライブギヤー131aに噛み合う第一ドッグクラッチ3を有する低速ドリブンギヤー135aはドリブンシャフト133に回転自在に係合し、軸方向には、ストッパー137と第二ハブ9bにより所定位置に係合している。
ドリブンシャフト133に固定締結または一体的に加工され、外周部に第二ドッグクラッチ5を有する第二スリーブ13bが第二ハブ9bに軸方向には自在に回転方向には固定されるようにスプライン143等の手段により係合している。第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5の結合離脱は前述した図10図12に示す第三シフト機構07cによりなされる例を示す。図33に示す第三B2段変速装置025は第一、第二ドッグクラッチ3、5の切り替えを図11図16に示す第四シフト機構07dより行う。
【0050】
ドライブシャフト129に固定締結された高速ドライブギヤー131bと該ギヤーに噛み合い、片側面にケース09に回転自在にかつ軸方向には位置決めされる状態でベアリング136により係合し、第二ボス2bには高速ドリブンギヤー135bに対しベアリング145を挟み、第一摩擦部材147aの外径部149を回転方向に支持する手段151及び後述する弾性体153の第一、第二摩擦部材147a、147bに与える軸推力を受圧する手段155を有する第二クラッチハウジング033が締結されている。更に第二ボス2bの内径部はベアリング157でドリブンシャフト133を回転自在に支持している。ドリブンシャフト133には、前記第二クラッチハウジング033の内径、克軸方向が重なる位置に、外径部に第二摩擦部材147bを回転方向に係合する手段159を有する第二摩擦クラッチハブ035bが締結されている。
【0051】
第二クラッチハウジング033には第一摩擦部材147a、第二摩擦クラッチハブ035bには第一摩擦部材147aに片面または両面を接し第二摩擦部材147b係合している。
第一、第二摩擦部材147a、147bに印加される押圧力を調整する押圧力調整部材161が第一または第二摩擦部材147a、147bに接し、押圧力調整部材161が弾性体153により押圧力を受け、第一、第二摩擦部材147a、147bに押圧力を伝えている。押圧力調整部材161の中心部には後述の第二摩擦クラッチアクチュエーターシャフト165が貫通する中央穴167とベアリング接触部169を有し、該ベアリング接触部169には弾性体153の摩擦部材に印加する力を低減する方向の軸推力を受けるベアリング163が係合し、該ベアリング163には前記中央穴167を貫通する第二摩擦クラッチアクチュエーターシャフト165に締結されたリリースフランジ171が接している。第二クラッチハウジング033の内径部には締結部材152が締結され弾性体153の反力を受けている。
【0052】
第二摩擦クラッチアクチュエーターシャフト165を駆動する第二摩擦クラッチアクチュエーター173は直動アクチュエーターで、第二摩擦クラッチアクチュエーターシャフト165を軸方向に駆動する。
ベアリング163に第二摩擦クラッチアクチュエーター173の軸力が印加されていない状態において、第一、第二摩擦部材147a、147bは、弾性体153の軸推力により、摩擦力で締結され、高速ドリブンギヤー135bとドリブンシャフト133は一体的に回転する。
第二摩擦クラッチアクチュエーター173を駆動し、リリースフランジ171が押圧力調整部材161にベアリング171を介し、弾性体153の摩擦部材押圧力を阻害する方向に軸力を印加すると、第一、第二摩擦部材147a、147bの摩擦結合は解放され、高速ドリブンギヤー135bとドリブンシャフト133間のトルク的結合は解除される。
尚、第二摩擦クラッチアクチュエーター173は、電動モーター、電磁ソレノイド、油圧、空圧等を使用するものでよい。
【0053】
第一、第二ドッグクラッチ3、5が噛み合っている時は、低速ドリブンギヤー135aに伝達されたトルクはドリブンシャフト133に伝達され、デフ等の外部材139等を駆動する低速段の状態となる。
該状態において、低速ドライブ、ドリブンギヤー131a、135aがドライブトルクを伝達している状態においては、第二ドッグクラッチ5は前述したように第一ドッグクラッチ3に対しXだけ浮き上がって噛み合っている。この状態で第五シフト機構07eを第一、第二ドッグクラッチ3、5が噛み合い離脱位置に該当する位置まで操作しても、第二ドッグクラッチ5は噛み合いトルクによる摩擦力で移動せず噛み合い位置を維持する。しかし、第四弾性体95が変形することにより、第五シフト機構07eの回転アクチュエーター45は、噛み合い離脱位置にまで回転する。該状態において、第二摩擦クラッチアクチュエーター173を駆動することにより第二摩擦クラッチ機構017が結合を開始し、滑りながらトルク伝達を始める。第二摩擦クラッチ機構017の伝達トルクが所定のトルクに達すると、第二ドッグクラッチ5の噛み合いが第一ドッグクラッチ3の第一コーストトルク伝達歯面39方向に移動するとともに第四弾性体95の働きで離脱方向へも移動し、第二ドッグクラッチ5の第二コーストトルク伝達歯面39bが第一ドッグクラッチ3のコースト歯面の歯底25からX-△X離れた位置から始まる斜面31bに接触する。このため該斜面31bの斜面効果と、第五シフト機構07eの第四弾性体95の力により、第一、第二ドッグクラッチ3、5の噛み合いはスムーズに素早く離脱する。そして全駆動トルクが第二摩擦クラッチ017により高速歯車列013に移行し、低速段から高速段への切り替えはスムーズに完了する。
【0054】
加速や登坂時の急速なシフトダウン、いわゆるキックダウン時は、駆動トルクが途切れないことが重要である。このようなシフトダウンの場合には、第二摩擦クラッチアクチュエーター173の操作により第二摩擦クラッチ機構017の伝達トルク容量を、微小スリップが生じるまで緩め、本状態で第二摩擦クラッチアクチュエーター173の駆動を停止、第二摩擦クラッチ機構017のトルク伝達を保ちながら、入力回転を第一ドッグクラッチ3が第二ドッグクラッチ5の回転を僅かに上回るまで上昇させ、この状態でシフト機構の直動または回転アクチュエーター45、53を作動させ、シフト機構により第二スリーブ13bを第二ドッグクラッチ5が第一ドッグクラッチ3と噛み合う所定の位置まで駆動し噛合わせる。同時に第二摩擦クラッチアクチュエーター173を操作し第二摩擦クラッチ機構017を解放数する。この一連の操作により駆動トルクが途切れることなくシフトダウンが可能である。本実施例の第三A、B2段変速装置023、025を電動車両用に使用する場合は、第二摩擦クラッチ機構017の微小スリップ及び第一、第二ドッグクラッチ3、5間の回転座差の検出は、電動モーターを一例とした駆動部材127の回転と車速等を比較することにより実施可能である。
通常のシフトダダウン時は、最初に第二摩擦クラッチ機構017を完全に切り離し、第一ドッグクラッチ3の回転を、第二ドッグクラッチ5の回転より僅かに上昇させ、第三シフト機構07cにより第一、第二ドッグクラッチ3、5を噛み合わせればよい。
【0055】
図33に示す第三B2段変速装置025は第三A2段変速装置023のシフト機構を第三シフト機構07cから第四シフト機構07dに置換、第二スリーブの押圧手段を第二押圧手段05から第一押圧手段03に変更した例である。他の構造、機能、作動は、第三A2段変速装置023と同一である。
【0056】
本実施例の図32図33に示す例は、シフト機構に第三、第四シフト機構07c、07dを用いた例であるが、シフト機構には他の第一、第二、第五、第六シフト機構07a、07b、07e、07fを用いてもよい。
また、第二スリーブ押圧手段は、前記したように第五、第六シフト機構07e、07fを使用した時は不要であり、他のシフト機構を使用した時は、第一、第二押圧手段03、05のいずれかの一方を使用すれば良い。
【0057】
本実施例は、高速段、低速段への変速とも、駆動トルクが途切れないシームレスシフトが可能であり、更に高速段、低速段ともにコーストトルク伝達が可能で、電動車両に使用した場合はエネルギー回生が可能で、CVTに使用した場合はエンジンブレーキ使用が可能となる。
【0058】
本実施例は、第十七または第十八噛み合いクラッチ機構01q、01r、第二摩擦クラッチ機構017をドリブンシャフト133上に配置した例であるが、第十七または第十八噛み合いクラッチ機構01q、01r、第二噛み合いクラッチ機構017を、
(1)ドリブンシャフト133上に第十七または第十八噛み合いクラッチ機構01q、01rと第二摩擦クラッチ機構017を設ける前述したレイアウト。
(2)ドリブンシャフト133上に第十七または第十八噛み合いクラッチ機構01q、01rを設けドライブシャフト129上に第二摩擦クラッチ機構017を設けるレイアウト。
(3)ドリブンシャフト133上に第二摩擦クラッチ機構017を設けドライブシャフト129上に第十七または第十八噛み合いクラッチ機構01q、01rを設けるレイアウト。
(4)ドライブシャフト129上に第十七または第十八噛み合いクラッチ機構01q、01rと第二摩擦クラッチ機構017を設けるレイアウト。
以上のように本実施例における2段変速装置のレイアウトは4つの組み合わせが可能である。
【実施例0059】
図34に示す019は第一A2段変速装置、図35に示す021は第一B2段変速装置の2つの2段変速装置の主断面図を示す。
第一A2段変速装置019は実施例4の第一回転体7aがインターナルギヤー7cであり、該インターナルギヤー7cは内歯歯車175、第一摩擦部材147aの外径部149を係合する第一クラッチハウジング031、第一ハブ9aの内径にベアリング4で回転自在に、軸方向には固定係合される第一ボス2aと第一ドッグクラッチ3を有する。該インターナルギヤー7cに噛み合い後述の第一プラネットキャリア177に回転自在に係合する第一プラネットピニオン179、第一プラネットピニオン179を回転自在に支持する支持手段181と外部材139を駆動する外部材駆動手段141、第二摩擦部材147bの内径部183を係合する手段185を有し、後述の第一サンギヤーシャフト187の外周と第一ボス2aの内径に回転自在にベアリング191、193で係合する第一プラネットキャリア177と、モーター、CVT等の駆動部材127の動力を受け、ケース09に回転自在に係合し、第一プラネットピニオン179と噛み合う第一サンギヤー189から構成される駆動力伝達要素を有する。
【0060】
図34に示す第一A2段変速装置019の変速手段は、図30に示す第十五噛み合いクラッチ機構01oと、第一摩擦クラッチ機構015を有する。図35に示す第一B2段変速装置021の変速手段は第十六噛み合いクラッチ機構01pと第一摩擦クラッチ機構015を有する。
第一摩擦クラッチ機構015は第一摩擦部材147aの外径部149がインターナルギヤー7cに設けられた第一クラッチハウジング031に軸方向には自在に回転方向のみ係合し、第一摩擦部材147aに両面または片面を接し、第二摩擦部材147bが第一プラネットキャリア177の第一摩擦クラッチハブ035aの外径部197に第二摩擦部材147bの内径部199が回転方向に係合している。更に第一クラッチハウジング内径部201に第一または第二摩擦部材147a、147bに接し、該部材に印加する押圧力を調整する押圧力調整部材195が設けられ、該押圧力調整部材195の第一または第二摩擦部材147a、147bと接する面の反対面には、弾性体153が接し、押圧力調整部材195を介し、第一、第二摩擦部材147a、147bに押圧力を印加している。
弾性体153に接しその反力を受ける反力調整部材207が、第一クラッチハウジング内径部201に締結部材203で締結され、弾性体153の反力を第一クラッチハウジング031に伝達している。弾性体153により第一、第二摩擦部材147a、147bに印加された押圧力は、第一クラッチハウジング031に設けられた押圧力受動部205により受圧される。
【0061】
押圧力調整部材195は中央部に反力調整部材207中央穴を貫くスリーブ209を有し、スリーブ209が、プラネットキャリア円筒部211の外径に摺動自在に係合している。また押圧力調整部材195と反力調整部材207の間には所定の軸方向隙間が設けられている。
更に第一摩擦クラッチアクチュエーター213のピニオン215と噛み合い、互いに歯数の異なる対向した一組の差動ギヤーセット037がスリーブ209外周にベアリング217を介し係合している。差動ギヤーセット037の第一歯車225はベアリング219を介し反力調整部材207に接し、差動ギヤーセット037の対向面の双方には円周上に深さ方向に勾配を有する複数のカム溝221を有し該カム溝221にはカム溝数に対応する転動体223が係合し、差動ギヤーセット037の相対回転により、第一、第二歯車225、227の距離が変化する構造となっている。前記カム溝221及び転動体223の組み合わせをトルクカム機構039とする。第一歯車225と対向する第二歯車227とストッパーリング229にはベアリング231が介在し、ストッパーリング229は締結部材233により、スリーブ209に締結されている。
【0062】
第一摩擦クラッチアクチュエーター213によりピニオン215を駆動し、ピニオン215に噛み合う差動ギヤーセット037を駆動すると、第一歯車225と第二歯車227は歯数が異なるため、相対回転が惹起される。該相対回転が前記トルクカム機構039の作用により互いの距離が開く方向であれば、開く方向の軸推力がベアリング219、231に推力を与え、押圧力調整部材195は弾性体153を反力調整部材207の方向に押圧し、第一、第二摩擦部材147a、147bに働く摩擦トルクを減少または消滅させる。
第一摩擦クラッチアクチュエーター213を前記と逆方向に駆動すれば、弾性体153は押圧力調整部材195に妨げられることなく第一、第二摩擦部材147a、147bを押圧し、摩擦クラッチは締結される。
【0063】
図34に示す第一A2段変速装置019の第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5が噛み合っている時、インターナルギヤー7cは停止しているため、第一サンギヤー189から第一プラネットピニオン179に動力が伝達されると、第一プラネットピニオン179はインターナルギヤー7cと噛み合い、自転しながら第一サンギヤー189の角速度の1/2以下の角速度で第一プラネットキャリア177と共に公転する。第一プラネットキャリア177に設けられた外部材駆動手段141が外部材139を第一サンギヤー189の入力速度よりも遅い速度で駆動する。従って本状態は当該変速機の低速段となる。
【0064】
前記したように、第一、第二ドッグクラッチ3、5がドライブトルクを伝達している時、第二ドッグクラッチ5は、第一ドッグクラッチ3に対しXだけ浮き上がっている。
この状態から、第十五または第十六噛み合いクラッチ機構01o、01pの回転または直動アクチュエーター45、53を第二ドッグクラッチ5が第三または第四弾性体61、95を撓ませながら第一ドッグクラッチ3から離脱する所定位置まで駆動しても、第一、第二ドッグクラッチ3、5は噛み合いの摩擦力によりその位置に留まる。しかし前述したように、第三弾性体61の働きにより、回転アクチュエーター45は所定位置まで回転可能で、克その位置を保持させる。
この状態から第一摩擦クラッチアクチュエーター213を駆動し、第一摩擦クラッチ機構015の結合を開始すると、第一、第二ドッグクラッチ3、5の噛み合い力は徐々に低下し、その低下分のトルクは第一摩擦クラッチ機構015に移行、ドッグクラッチ歯面の摩擦力は小さくなり消滅する。伝達トルクが第一摩擦クラッチ機構015に移行すると、第一サンギヤー189と第一プラネットキャリア177は同一回転し、該2段変速装置は高速段となる。
【0065】
高速段から低速段へのシフトは、実施例7で述べたように、第一摩擦クラッチ機構015、第十五、または第十六噛み合いクラッチ機構01o、01p及び電動モーターを一例とした駆動部材127の回転制御の協働により行う。
低速段へのシフトは実施例7と同一である。本実施例においては差動ギヤー、トルクカム、弾性体を使用したものである。本摩擦クラッチはその他トルクカムにより直接摩擦クラッチを押す他、油圧、空圧、電磁力を使用して摩擦クラッチを押圧するものでもよい。
【0066】
本実施例は、一軸上で2段変速が可能で、更にインターナルギヤー7cに容易に第一クラッチハウジング031を設定することができるため、機構がコンパクトになる。尚、本実施例は第十五、十六噛み合いクラッチ機構01o、01pを使用した例であるが、第九、十、十一、十二、十三、十四噛み合いクラッチ機構01i、01j、01k、01l、01m、01nを使用してもよい。
【実施例0067】
図36に示す027は第五2段変速装置、図37に示す029は第六2段変速装置の主断面図である。
09はケース、241はケース09及び後述する第二プラネットキャリア235に回転自在に係合し、動力入力部材237と第二サンギヤー239を有する第二サンギヤーシャフト、245は第二サンギヤーシャフト241外周にベアリング253、255で回転自在に係合し、第二サンギヤー239よりピッチ円径の大きい第三サンギヤー243と外部材駆動手段141と第一摩擦クラッチハブ035aを有する第三サンギヤーシャフト、247は第二サンギヤー239と噛み合う第三歯車257と第三サンギヤー243と噛み合い第三歯車257よりピッチ径の小さい第四歯車259を一体的に有する第二プラネットピニオン、235は第一ドッグクラッチ3を有し第二プラネットピニオン247を回転自在に支持する支持軸249と第一クラッチハウジング031及び第一ハブ9aの内径部251にベアリング4で回転自在に軸方向には固定され支持される第二プラネットキャリアである。139はデフを一例とした外部材を示す。
01eは前記第二プラネットキャリア235第一ハブ9a間を結合、解放する機能を有する第五噛み合いクラッチ機構である。015は第三サンギヤーシャフト245と第二プラネットキャリア235間を摩擦結合解放する機能を有する前記の第一摩擦クラッチ機構である。
【0068】
第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5が噛み合っている時、第二プラネットキャリア235は停止している。この状態で第二サンギヤー239により、該歯車と噛み合う第二プラネットピニオン247の第三歯車257を駆動すると、第四歯車259も第三歯車257と同一角速度で回転する。しかし、第四歯車259のピッチ径は第三歯車257より小さいため、ピッチ円上の周速は第三歯車257より小さい。また第四歯車259と噛み合う第三サンギヤー243のピッチ円径は第二サンギヤー239のピッチ円径より大きい。トルクの伝達は、第二サンギヤー239、第三歯車257、第四歯車259、第三サンギヤー243の順で行われるため、第三サンギヤー243の角速度は第二サンギヤー239の角速度より小さくなる。従って第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5が噛み合っている時は、本変速機の低速段となる。
【0069】
一方、第一ドッグクラッチ3と第二ドッグクラッチ5の噛み合いが解放され、第一摩擦クラッチ機構015が締結されると、第二プラネットキャリア235と第三サンギヤーシャフト245の角速度が等しくなる。このため、第二サンギヤーシャフト241と第三サンギヤーシャフト245の角速度も等しくなり、第三サンギヤーシャフト245の回転は減速されず入力部材である第二サンギヤーシャフト241と同一となる。従って本状態は第五、第六2段変速装置027、030の高速段となる。
【0070】
低速段から高速段、高速段から低速段への変速は前述した実施例8と同一となる。実施例8の場合、低速段の減速比が2より大きくないと成立しないが、本実施例の場合、減速比は2を含め広い範囲で実施可能で減速比の選択幅が広がる。
【符号の説明】
【0071】
1 トルク伝達軸
2a 第一ボス
2b 第二ボス
3 第一ドッグクラッチ
4 ベアリング
5 第二ドッグクラッチ
7a 第一回転体
7b 第二回転体
7c インターナルギヤー
9a 第一ハブ
9b 第二ハブ
13a 第一スリーブ
13b 第二スリーブ
45 回転アクチュエーター
53 直動アクチュエーター
61 第三弾性体
65a 第一回転アーム
65b 第二回転アーム
95 第四弾性体
99 第三回転アーム
129 ドライブシャフト
131a 低速ドライブギヤー
131b 高速ドライブギヤー
133 ドリブンシャフト
135a 低速ドリブンギヤー
135b 高速ドリブンギヤー
147a 第一摩擦部材
147b 第二摩擦部材
173 第二摩擦クラッチアクチュエーター
177 第一プラネットキャリア
179 第一プラネットピニオン
187 第一サンギヤーシャフト
189 第一サンギヤー
213 第一摩擦クラッチアクチュエーター
225 第一歯車
227 第二歯車
235 第二プラネットキャリア
239 第二サンギヤー
241 第二サンギヤーシャフト
243 第三サンギヤー
245 第三サンギヤーシャフト
247 第二プラネットピニオン
257 第三歯車
259 第四歯車
03 第一押圧手段
05 第二押圧手段
07a 第一シフト機構
07b 第二シフト機構
07c 第三シフト機構
07d 第四シフト機構
07e 第五シフト機構
07f 第六シフト機構
09 ケース
015 第一摩擦クラッチ機構
017 第二摩擦クラッチ機構
037 差動ギヤーセット
039 トルクカム機構
図1
図2
図3
図4
図5
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