(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146850
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】プラズマ発生装置、プラズマ発生方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20220928BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20220928BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H05H1/24
H01L21/302 104H
H01L21/306 R
H01L21/306 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021151917
(22)【出願日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2021047406
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】竹市 弥生
(72)【発明者】
【氏名】堀越 章
(72)【発明者】
【氏名】上野 美佳
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F043
【Fターム(参考)】
2G084AA03
2G084AA07
2G084BB14
2G084BB21
2G084BB32
2G084CC11
2G084CC20
2G084CC34
2G084DD01
2G084DD12
2G084DD22
2G084DD25
2G084DD32
2G084DD67
2G084FF07
2G084FF12
2G084FF32
2G084HH09
2G084HH12
2G084HH20
2G084HH30
2G084HH34
2G084HH36
2G084HH42
2G084HH45
2G084HH54
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB29
5F004BD01
5F004CB09
5F004CB12
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5F043DD12
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE33
(57)【要約】
【課題】より高い精度でプラズマ源の温度を制御できる技術を提供する。
【解決手段】プラズマ発生装置1は、プラズマ源2と、冷却部材4と、温度測定部6と、制御部とを備える。プラズマ源2はプラズマを発生させる。冷却部材4は、プラズマ源2に冷却用ガスを供給するための少なくとも一つの給気口411を有する。温度測定部6はプラズマ源2の温度を測定する。制御部は、温度測定部6によって測定された測定温度に基づいて冷却用ガスの流量を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを発生させるプラズマ源と、
前記プラズマ源に冷却用ガスを供給するための少なくとも一つの給気口を有する冷却部材と、
前記プラズマ源の温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定部によって測定された測定温度に基づいて前記冷却用ガスの流量を制御する制御部と
を備える、プラズマ発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ発生装置であって、
前記プラズマ源は、処理対象側の処理空間と、前記処理空間と反対側の冷却空間とを仕切る仕切部材を有し、
前記少なくとも一つの給気口は前記冷却空間に設けられる、プラズマ発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマ発生装置であって、
前記プラズマ源は、第1線状電極および第2線状電極を含み、
前記仕切部材は、
前記第1線状電極が挿入された第1穴と、
前記第2線状電極が挿入された第2穴と
を有する、プラズマ発生装置。
【請求項4】
請求項2に記載のプラズマ発生装置であって、
前記プラズマ源は、
前記仕切部材よりも前記処理対象とは反対側に設けられる第1線状電極と、
前記仕切部材よりも前記処理対象側に設けられ、前記仕切部材の厚み方向において前記第1線状電極と対向しない位置に設けられる第2線状電極と
をさらに含み、
前記冷却用ガスは、第1ガス、および、前記第1ガスよりもプラズマ化しやすい第2ガスを含む、プラズマ発生装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプラズマ発生装置であって、
前記制御部は、前記測定温度が第1温度であるときの前記第1ガスの流量を、前記測定温度が前記第1温度よりも低い第2温度であるときの前記第1ガスの流量よりも大きくする、プラズマ発生装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のプラズマ発生装置であって、
前記制御部は、前記測定温度が第1温度であるときの前記第2ガスの流量を、前記測定温度が前記第1温度よりも低い第2温度であるときの前記第2ガスの流量よりも小さくする、プラズマ発生装置。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置であって、
前記少なくとも一つの給気口は、前記冷却空間に接する前記仕切部材の冷却面に対向する位置に設けられ、前記少なくとも一つの給気口は前記仕切部材の前記冷却面に向かって開口する、プラズマ発生装置。
【請求項8】
請求項7に記載のプラズマ発生装置であって、
前記冷却部材は、
前記仕切部材に対して前記処理対象とは反対側に設けられ、前記プラズマ源の周縁に連結されて前記プラズマ源とともにガス空間を形成する流路形成部材をさらに含み、
前記少なくとも一つの給気口は前記ガス空間において開口しており、
前記流路形成部材の側壁には、前記ガス空間から前記冷却用ガスを排出する少なくとも一つの排気路が形成されている、プラズマ発生装置。
【請求項9】
請求項8に記載のプラズマ発生装置であって、
前記流路形成部材の前記側壁には、複数の前記排気路が形成されており、
前記複数の排気路は、前記流路形成部材の前記側壁の周方向において互いに異なる位置に形成される、プラズマ発生装置。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置であって、
前記冷却部材は、複数の前記給気口を含み、
前記複数の給気口は、前記プラズマ源のうち互いに異なる複数の領域に向かって前記冷却用ガスを流出させ、
前記制御部は、前記複数の領域の各々に供給する前記冷却用ガスの流量を個別に制御する、プラズマ発生装置。
【請求項11】
請求項10に記載のプラズマ発生装置であって、
前記冷却部材は、前記冷却用ガスが前記複数の領域に向かってそれぞれ流れる複数のガス流路を仕切る流路仕切部材をさらに備える、プラズマ発生装置。
【請求項12】
請求項11に記載のプラズマ発生装置であって、
前記冷却部材は、前記複数のガス流路にそれぞれ対応して設けられた複数の排気路をさらに含む、プラズマ発生装置。
【請求項13】
請求項2に記載のプラズマ発生装置であって、
前記冷却部材は、
前記プラズマ源のうち互いに異なる複数の領域に向かって前記冷却用ガスを流出させる複数の前記給気口と、
前記冷却用ガスが前記複数の領域に向かってそれぞれ流れる複数のガス流路を仕切る流路仕切部材と、
前記複数のガス流路にそれぞれ対応して設けられた複数の排気路と、
を含み、
前記制御部は、前記複数の領域の各々に供給する前記冷却用ガスの流量を個別に制御し、
前記流路仕切部材は、前記冷却空間に接する前記仕切部材の冷却面に当接している、プラズマ発生装置。
【請求項14】
請求項10から請求項13のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置であって、
前記制御部は、前記温度測定部によって測定された前記複数の領域の温度の差が低減するように、前記冷却用ガスの流量を個別に制御する、プラズマ発生装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置であって、
前記温度測定部は、前記プラズマ源に対して処理対象とは反対側の位置に設けられる、プラズマ発生装置。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置であって、
前記冷却部材は、前記少なくとも一つの給気口から流出した前記冷却用ガスを整流する整流部材を含み、前記整流部材を通じて前記冷却用ガスを前記プラズマ源に供給する、プラズマ発生装置。
【請求項17】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に処理液を供給するノズルと、
請求項10から請求項14のいずれか一つに記載のプラズマ発生装置と
を備え、
前記プラズマ源は、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面に対向する位置に設けられ、
前記プラズマ源の前記複数の領域は、平面視において、前記基板の前記主面の第1中央領域と対向する第2中央領域と、前記基板の前記主面の第1周縁領域に対応する第2周縁領域とを含み、
前記制御部は、前記第2周縁領域の温度が前記第2中央領域の温度よりも高くなるように、前記冷却用ガスの流量を調整する、基板処理装置。
【請求項18】
プラズマ源がプラズマを発生させる工程と、
前記プラズマ源の温度を温度測定部によって測定する工程と、
前記温度測定部によって測定された温度に基づいた流量で冷却用ガスを前記プラズマ源に供給する工程と
を備える、プラズマ発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、プラズマ発生装置、プラズマ発生方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大気圧下でプラズマを発生させるプラズマ源が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、プラズマ源は複数の第1線状導体と複数の第2線状導体と板状の隔離部材とを含んでいる。複数の第1線状導体は隔離部材の一方側において互いに平行に設けられ、複数の第2線状導体は隔離部材の他方側において互いに平行に設けられる。各第1線状導体および各第2線状導体は隔離部材の厚み方向において互いに対向しておらず、厚み方向に沿って見て、第1線状導体および第2線状導体は交互に配列される。
【0003】
このようなプラズマ源において、第1線状導体と第2線状導体との間に交流電圧が印加されることにより、プラズマ源の周囲にプラズマが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラズマによって熱が生じるので、プラズマ源の温度が高くなる。耐熱性の高い部材でプラズマ源を構成すれば、プラズマ源は高温に耐えることができるものの、その製造コストは高くなる。
【0006】
そこで、プラズマ源を冷却することが考えられる。しかしながら、プラズマ源を冷却しすぎると、プラズマが消失し得る。
【0007】
そこで、本願は、より高い精度でプラズマ源の温度を制御できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
プラズマ発生装置の第1の態様は、プラズマを発生させるプラズマ源と、前記プラズマ源に冷却用ガスを供給するための少なくとも一つの給気口を有する冷却部材と、前記プラズマ源の温度を測定する温度測定部と、前記温度測定部によって測定された測定温度に基づいて前記冷却用ガスの流量を制御する制御部とを備える。
【0009】
プラズマ発生装置の第2の態様は、第1の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記プラズマ源は、処理対象側の処理空間と、前記処理空間と反対側の冷却空間とを仕切る仕切部材を有し、前記少なくとも一つの給気口は前記冷却空間に設けられる。
【0010】
プラズマ発生装置の第3の態様は、第2の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記プラズマ源は、第1線状電極および第2線状電極を含み、前記仕切部材は、前記第1線状電極が挿入された第1穴と、前記第2線状電極が挿入された第2穴とを有する。
【0011】
プラズマ発生装置の第4の態様は、第2の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記プラズマ源は、前記仕切部材よりも前記処理対象とは反対側に設けられる第1線状電極と、前記仕切部材よりも前記処理対象側に設けられ、前記仕切部材の厚み方向において前記第1線状電極と対向しない位置に設けられる第2線状電極とをさらに含み、前記冷却用ガスは、第1ガス、および、前記第1ガスよりもプラズマ化しやすい第2ガスを含む。
【0012】
プラズマ発生装置の第5の態様は、第4の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記制御部は、前記測定温度が第1温度であるときの前記第1ガスの流量を、前記測定温度が前記第1温度よりも低い第2温度であるときの前記第1ガスの流量よりも大きくする。
【0013】
プラズマ発生装置の第6の態様は、第4または第5の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記制御部は、前記測定温度が第1温度であるときの前記第2ガスの流量を、前記測定温度が前記第1温度よりも低い第2温度であるときの前記第2ガスの流量よりも小さくする。
【0014】
プラズマ発生装置の第7の態様は、第2から第6のいずれか一つの態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記少なくとも一つの給気口は、前記冷却空間に接する前記仕切部材の冷却面に対向する位置に設けられ、前記少なくとも一つの給気口は前記仕切部材の前記冷却面に向かって開口する。
【0015】
プラズマ発生装置の第8の態様は、第7の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記冷却部材は、前記仕切部材に対して前記処理対象とは反対側に設けられ、前記プラズマ源の周縁に連結されて前記プラズマ源とともにガス空間を形成する流路形成部材をさらに含み、前記少なくとも一つの給気口は前記ガス空間において開口しており、前記流路形成部材の側壁には、前記ガス空間から前記冷却用ガスを排出する少なくとも一つの排気路が形成されている。
【0016】
プラズマ発生装置の第9の態様は、第8の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記流路形成部材の前記側壁には、複数の前記排気路が形成されており、前記複数の排気路は、前記流路形成部材の前記側壁の周方向において互いに異なる位置に形成される。
【0017】
プラズマ発生装置の第10の態様は、第1から第7のいずれか一つの態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記冷却部材は、複数の前記給気口を含み、前記複数の給気口は、前記プラズマ源のうち互いに異なる複数の領域に向かって前記冷却用ガスを流出させ、前記制御部は、前記複数の領域の各々に供給する前記冷却用ガスの流量を個別に制御する。
【0018】
プラズマ発生装置の第11の態様は、第10の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記冷却部材は、前記冷却用ガスが前記複数の領域に向かってそれぞれ流れる複数のガス流路を仕切る流路仕切部材をさらに備える。
【0019】
プラズマ発生装置の第12の態様は、第11の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記冷却部材は、前記複数のガス流路にそれぞれ対応して設けられた複数の排気路をさらに含む。
【0020】
プラズマ発生装置の第13の態様は、第2の態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記冷却部材は、前記プラズマ源のうち互いに異なる複数の領域に向かって前記冷却用ガスを流出させる複数の前記給気口と、前記冷却用ガスが前記複数の領域に向かってそれぞれ流れる複数のガス流路を仕切る流路仕切部材と、前記複数のガス流路にそれぞれ対応して設けられた複数の排気路と、を含み、前記制御部は、前記複数の領域の各々に供給する前記冷却用ガスの流量を個別に制御し、前記流路仕切部材は、前記冷却空間に接する前記仕切部材の冷却面に当接している。
【0021】
プラズマ発生装置の第14の態様は、第10から第13のいずれか一つの態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記制御部は、前記温度測定部によって測定された前記複数の領域の温度の差が低減するように、前記冷却用ガスの流量を個別に制御する。
【0022】
プラズマ発生装置の第15の態様は、第1から第14のいずれか一つの態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記温度測定部は、前記プラズマ源に対して処理対象とは反対側の位置に設けられる。
【0023】
プラズマ発生装置の第16の態様は、第1から第15のいずれか一つの態様にかかるプラズマ発生装置であって、前記冷却部材は、前記少なくとも一つの給気口から流出した前記冷却用ガスを整流する整流部材を含み、前記整流部材を通じて前記冷却用ガスを前記プラズマ源に供給する。
【0024】
基板処理装置の態様は、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に処理液を供給するノズルと、第10から第14のいずれか一つの態様にかかるプラズマ発生装置とを備え、前記プラズマ源は、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面に対向する位置に設けられ、前記プラズマ源の前記複数の領域は、平面視において、前記基板の前記主面の第1中央領域と対向する第2中央領域と、前記基板の前記主面の第1周縁領域に対応する第2周縁領域とを含み、前記制御部は、前記第2周縁領域の温度が前記第2中央領域の温度よりも高くなるように、前記冷却用ガスの流量を調整する。
【0025】
プラズマ発生方法の態様は、プラズマ源がプラズマを発生させる工程と、前記プラズマ源の温度を温度測定部によって測定する工程と、前記温度測定部によって測定された温度に基づいた流量で冷却用ガスを前記プラズマ源に供給する工程とを備える。
【発明の効果】
【0026】
プラズマ発生装置の第1の態様およびプラズマ発生方法の態様によれば、プラズマ源の温度上昇を高い精度で抑制できる。よって、プラズマ源の温度上昇に伴う不具合をより確実に抑制することができる。
【0027】
プラズマ発生装置の第2の態様によれば、冷却用ガスは処理空間には流入しにくいので、処理空間のプラズマを乱しにくい。よって、プラズマによって生じる活性種を処理対象により適切に供給することができる。
【0028】
プラズマ発生装置の第3の態様によれば、第1線状電極および第2線状電極がスパッタされることによって処理対象が汚染されることを抑制できる。また、仕切部材が第1線状電極および第2線状電極の両方を覆うことになるので、第1線状電極および第2線状電極を個別に覆う別個の部材が設けられる場合に比して、構造が簡易である。
【0029】
プラズマ発生装置の第4の態様によれば、プラズマ化しやすい第2ガスも供給されるので、プラズマの発生を維持しつつプラズマ源の温度をより低下させることができる。
【0030】
プラズマ発生装置の第5の態様によれば、適切に温度を制御できる。
【0031】
プラズマ発生装置の第6の態様によれば、温度が高いときの第2ガスの流量が小さいので、プラズマが消失する可能性の低いときの第2ガスの消費量を低減できる。一方で、温度が低いときの第2ガスの流量が大きいので、プラズマが消失する可能性が高いときに、より確実にプラズマを維持することができる。
【0032】
プラズマ発生装置の第7の態様によれば、給気口から流出した冷却用ガスは、仕切部材の主面に対して垂直な方向に沿って衝突するので、冷却用ガスを仕切部材に作用させやすい。
【0033】
プラズマ発生装置の第8の態様によれば、冷却用ガスは仕切部材の冷却面に衝突してからプラズマ源に沿って流れ、流路形成部材の側壁の排気路から外部に排出される。よって、プラズマ源をより効果的に冷却できる。
【0034】
プラズマ発生装置の第9の態様によれば、冷却用ガスが複数の排気路から排出される。よって、冷却用ガスをプラズマ源に対してより均一に作用させることができる。
【0035】
プラズマ発生装置の第10の態様によれば、プラズマ源の各領域の温度を互いに独立に制御できる。
【0036】
プラズマ発生装置の第11の態様によれば、各給気口から流出する冷却用ガスを、対応する領域に対してより確実に供給することができる。
【0037】
プラズマ発生装置の第12の態様によれば、各ガス流路に供給された冷却用ガスは、対応する排気路を通じて排出される。よって、ガス流路の間で冷却用ガスが流れることを抑制できる。これにより、各ガス流路に流れる冷却用ガスの流量を個別により正確に調整することができ、各領域の温度をより高い精度で制御できる。
【0038】
プラズマ発生装置の第13の態様によれば、ガス流路の間で冷却用ガスが流れることをさらに抑制できる。
【0039】
プラズマ発生装置の第14の態様によれば、プラズマ源の温度をより均一化することができる。
【0040】
プラズマ発生装置の第15の態様によれば、温度測定部はプラズマ源と処理対象との間に位置しないので、プラズマによる活性種が処理対象に作用することを阻害しない。
【0041】
プラズマ発生装置の第16の態様によれば、プラズマ源に対してより均一に冷却用ガスを供給することができる。
【0042】
基板処理装置の態様によれば、プラズマ源の第2周縁領域の温度が第2中央領域の温度よりも高いので、第2周縁領域においてより多くのプラズマが発生し、これに起因してより多くの活性種が発生する。よって、基板の主面の第1周縁領域上の処理液に対して、より多くの活性種を作用させることができる。
【0043】
ところで、基板の主面の第1周縁領域では処理液が盛り上がる場合がある。つまり、基板の主面上の処理液の液膜が第1中央領域よりも第1周縁領域で厚くなる場合がある。このような場合には、活性種の作用が基板の周縁に近い側に作用しにくい。したがって、基板の第1周縁領域において処理不足が生じる可能性がある。
【0044】
基板処理装置の態様によれば、基板の第1周縁領域により多くの活性種が供給される。よって、基板の第1周縁領域における処理不足を抑制または回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】基板処理システムの構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図2】制御部の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図3】処理ユニット(基板処理装置)の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図4】プラズマ発生装置の構成の一例を概略的に示す側断面図である。
【
図5】プラズマ源の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図6】プラズマ源の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【
図7】プラズマ発生装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】プラズマ発生装置および冷却ガス供給部の構成の一例を概略的に示す側断面図である。
【
図9】プラズマ発生装置および冷却ガス供給部の構成の他の一例を概略的に示す側断面図である。
【
図10】流路形成部材の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【
図11】基板の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【
図12】プラズマ発生装置および冷却ガス供給部の構成の他の一例を概略的に示す側断面図である。
【
図13】プラズマ源の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図14】プラズマ源の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【
図15】プラズマ発生装置および冷却ガス供給部の構成の他の一例を概略的に示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付の図面を参照しながら、実施の形態について説明する。なお、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本開示の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法または数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0047】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸または面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0048】
<基板処理システムの全体構成>
図1は、プラズマ発生装置が適用される基板処理システム100の構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理システム100は、処理対象である基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。
【0049】
基板Wは例えば半導体基板であり、円板形状を有する。なお、基板Wには、半導体基板の他、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板および光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。また基板の形状も円板形状に限らず、例えば矩形の板状形状など種々の形状を採用できる。
【0050】
基板処理システム100はロードポート101とインデクサロボット110と主搬送ロボット120と複数の処理ユニット130と制御部90とを含む。
【0051】
複数のロードポート101は水平な一方向に沿って並んで配置される。各ロードポート101は、基板Wを基板処理システム100に搬出入するためのインターフェース部である。各ロードポート101には、基板Wを収容するキャリアCが外部から搬入される。各ロードポート101は、搬入されたキャリアCを保持する。キャリアCとしては、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、または、基板Wを外気にさらすOC(Open Cassette)が採用されてもよい。
【0052】
インデクサロボット110は、各ロードポート101に保持されたキャリアCと、主搬送ロボット120との間で基板Wを搬送する搬送ロボットである。インデクサロボット110はロードポート101が並ぶ方向に沿って移動可能であり、各キャリアCと対面する位置で停止可能である。インデクサロボット110は、各キャリアCから基板Wを取り出す動作と、各キャリアCに基板Wを受け渡す動作とを行うことができる。
【0053】
主搬送ロボット120は、インデクサロボット110と各処理ユニット130との間で基板Wを搬送する搬送ロボットである。主搬送ロボット120はインデクサロボット110から基板Wを受け取る動作と、インデクサロボット110に基板Wを受け渡す動作とを行うことができる。また、主搬送ロボット120は各処理ユニット130に基板Wを搬入する動作と、各処理ユニット130から基板Wを搬出する動作とを行うことができる。
【0054】
基板処理システム100には、例えば12個の処理ユニット130が配置される。具体的には、鉛直方向に積層された3個の処理ユニット130を含むタワーの4つが、主搬送ロボット120の周囲を取り囲むようにして設けられる。
図1では、3段に重ねられた処理ユニット130の1つが概略的に示されている。なお、基板処理システム100における処理ユニット130の数は、12個に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0055】
主搬送ロボット120は、4つのタワーによって囲まれるように設けられている。主搬送ロボット120は、インデクサロボット110から受け取る未処理の基板Wを各処理ユニット130内に搬入する。各処理ユニット130は基板Wを処理する。また、主搬送ロボット120は、各処理ユニット130から処理済みの基板Wを搬出してインデクサロボット110に渡す。
【0056】
制御部90は、基板処理システム100の各構成要素の動作を制御する。
図2は、制御部90の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。制御部90は電子回路であって、例えばデータ処理部91および記憶部92を有している。
図2の具体例では、データ処理部91と記憶部92とはバス93を介して相互に接続されている。データ処理部91は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部92は非一時的な記憶部(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)921および一時的な記憶部(例えばRAM(Random Access Memory))922を有していてもよい。非一時的な記憶部921には、例えば制御部90が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理部91がこのプログラムを実行することにより、制御部90が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部90が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
図2の具体例では、インデクサロボット110、主搬送ロボット120および処理ユニット130がバス93に接続された態様が一例として概略的に示されている。
【0057】
なお、制御部90は主制御部と複数のローカル制御部とを有していてもよい。主制御部は基板処理システム100の全体を統括し、ローカル制御部は処理ユニット130ごとに設けられる。ローカル制御部は主制御部と通信可能に設けられ、主制御部からの指示に基づいて処理ユニット130を制御する。主制御部およびローカル制御部の各々は、例えば
図2と同様に、データ処理部91および記憶部92を有している。
【0058】
<基板処理装置>
図3は、処理ユニット(基板処理装置に相当)130の構成の一例を概略的に示す図である。なお、基板処理システム100に属する全ての処理ユニット130が
図3に示された構成を有している必要はなく、少なくとも一つの処理ユニット130が当該構成を有していればよい。
【0059】
図3に例示される処理ユニット130は、プラズマを用いた処理を基板Wに対して行う装置である。プラズマを用いた処理は特に制限される必要がないものの、具体的な一例として、レジスト除去処理を含む。レジスト除去処理とは、基板Wの主面に形成されたレジストを除去する処理である。基板Wは、例えば、半導体基板であり、円板形状を有する。基板Wのサイズは特に制限されないものの、その直径は例えば約300mmである。
【0060】
図3の例では、処理ユニット130はプラズマ発生装置1と基板保持部11とノズル12とガード13とを含んでいる。
【0061】
基板保持部11は基板Wを水平姿勢で保持する。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。
図3の例では、基板保持部11はステージ111と複数のチャックピン112とを含んでいる。ステージ111は円板形状を有し、基板Wよりも鉛直下方に設けられている。ステージ111は、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。複数のチャックピン112はステージ111の上面に立設されており、基板Wの周縁を把持する。なお、基板保持部11は必ずしもチャックピン112を有する必要はない。例えば、基板保持部11は基板Wの下面を吸引して基板Wを吸着してもよい。
【0062】
図3の例では、基板保持部11は回転機構113をさらに含んでおり、回転軸線Q1のまわりで基板Wを回転させる。回転軸線Q1は基板Wの中心部を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。回転機構113は例えばシャフト114およびモータ115を含む。シャフト114の上端はステージ111の下面に連結され、ステージ111の下面から回転軸線Q1に沿って延在する。モータ115はシャフト114を回転軸線Q1のまわりで回転させて、ステージ111を回転させる。これにより、複数のチャックピン112によって保持された基板Wが回転軸線Q1のまわりで回転する。このような基板保持部11はスピンチャックとも呼ばれ得る。
【0063】
ノズル12は、基板Wへの処理液の供給に用いられる。ノズル12は供給管121を介して処理液供給源124に接続される。つまり、供給管121の下流端がノズル12に接続され、供給管121の上流端が処理液供給源124に接続される。処理液供給源124は、例えば、処理液を貯留するタンク(不図示)を含み、供給管121に処理液を供給する。処理液は例えば、塩酸、フッ酸、リン酸、硝酸、硫酸、硫酸塩、ペルオキソ硫酸、ペルオキソ硫酸塩、過酸化水素、水酸化テトラメチルアンモニウム、アンモニアと過酸化水素水との混合液(SC1)、塩酸と過酸化水素水との混合液(SC2)または脱イオン水(DIW)などを含む液を用いることができる。本実施の形態においては、処理液として硫酸を用いる処理が説明される。
【0064】
図3の例では、供給管121には、バルブ122および流量調整部123が介装されている。バルブ122が開くことにより、処理液供給源124からの処理液が供給管121を通じてノズル12に供給され、ノズル12の吐出口12aから吐出される。流量調整部123は、供給管121を流れる処理液の流量を調整する。流量調整部123は例えばマスフローコントローラである。
【0065】
図3の例では、ノズル12はノズル移動機構15によって移動可能に設けられる。ノズル移動機構15は、ノズル12を第1処理位置と第1待機位置との間で移動させる。第1処理位置とは、ノズル12が基板Wの主面(例えば上面)に向けて処理液を吐出する位置である。第1処理位置は、例えば、基板Wよりも鉛直上方であって、基板Wの中心部と鉛直方向において対向する位置である。第1待機位置とは、ノズル12が基板Wの主面に向けて処理液を吐出しない位置であり、第1処理位置よりも基板Wから離れた位置である。第1待機位置は、ノズル12が主搬送ロボット120による基板Wの搬送経路と干渉しない位置でもある。具体的な一例として、第1待機位置は、基板Wの周縁よりも径方向外側の位置である。
図3では、第1待機位置で停止するノズル12が示されている。
【0066】
ノズル移動機構15は、例えば、ボールねじ機構またはアーム旋回機構を有する。アーム旋回機構は、いずれも不図示のアームと支持柱とモータとを含む。アームは水平に延在する棒状形状を有し、アームの先端にはノズル12が連結され、アームの基端が支持柱に連結される。支持柱は鉛直方向に沿って延びており、その中心軸のまわりで回転可能に設けられる。モータが支持柱を回転させることにより、アームが旋回し、ノズル12が中心軸のまわりで周方向に沿って移動する。このノズル12の移動経路上に第1処理位置と第1待機位置とが位置するように、支持柱が設けられる。
【0067】
ノズル12が第1処理位置に位置する状態で、基板保持部11が基板Wを回転させながら、バルブ122が開くと、ノズル12から回転中の基板Wの上面に向かって処理液が吐出される。処理液は基板Wの上面に着液し、基板Wの回転に伴って基板Wの上面を広がって、基板Wの周縁から外側に飛散する。これにより、基板Wの上面には処理液の液膜が形成される。
【0068】
ガード13は、基板保持部11によって保持された基板Wを取り囲む筒状の形状を有している。基板Wの周縁から飛散した処理液はガード13の内周面にあたり、内周面に沿って鉛直下方に流れる。処理液は、例えば、不図示の回収配管を流れて処理液供給源124のタンクに回収される。これによれば、処理液を再利用することができる。
【0069】
プラズマ発生装置1はプラズマを発生させる装置であり、基板保持部11によって保持された基板Wの主面(例えば上面)と鉛直方向において対向する位置に設けられる。
図3の例では、プラズマ発生装置1は基板Wの上面よりも鉛直上方に設けられる。プラズマ発生装置1は電源8に接続されており、電源8からの電力を受けて周囲のガスをプラズマ化させる。なおここでは一例として、プラズマ発生装置1は大気圧下でプラズマを発生させる。ここでいう大気圧とは、例えば、標準気圧の80%以上、かつ、標準気圧の120%以下である。プラズマ発生装置1の具体的な構成の一例は後に詳述する。
【0070】
図3に例示するように、プラズマ発生装置1はプラズマ移動機構14によって移動可能に設けられてもよい。プラズマ移動機構14は、プラズマ発生装置1を第2処理位置と第2待機位置との間で往復移動させる。第2処理位置とは、プラズマ発生装置1によるプラズマを用いて基板Wを処理するときの位置である。第2処理位置において、プラズマ発生装置1と基板Wの上面との間の距離は例えば数mm程度である。
【0071】
第2待機位置とは、プラズマを用いた処理を基板Wに対して行わないときの位置であり、第2処理位置よりも基板Wから離れた位置である。第2待機位置は、プラズマ発生装置1が主搬送ロボット120による基板Wの搬送経路と干渉しない位置でもある。具体的な一例として、第2待機位置は第2処理位置よりも鉛直上方の位置である。この場合、プラズマ移動機構14はプラズマ発生装置1を鉛直方向に沿って昇降させる。
図3では、第2待機位置で停止するプラズマ発生装置1が示されている。プラズマ移動機構14は、例えば、ボールねじ機構またはエアシリンダなどの移動機構を有する。
【0072】
プラズマ発生装置1は、例えば、ノズル12が第1待機位置に退避した状態で、第2待機位置から第2処理位置へと移動することができる。例えば、第1処理位置でのノズル12からの処理液の吐出によって基板Wの上面に処理液の液膜が形成されると、バルブ122が閉じたうえで、ノズル移動機構15がノズル12を第1処理位置から第1待機位置に移動させる。一方、例えば、プラズマ発生装置1が第2待機位置に位置する状態で、電源8がプラズマ発生装置1に電圧を出力する。これにより、第2処理位置よりも基板Wから離れた位置でプラズマ発生装置1がプラズマを発生させる。このとき、例えば、ノズル12が第1処理位置で基板Wの上面に処理液の液膜を供給するのと並行して、プラズマ発生装置1がプラズマを発生させることで、プラズマが発生するまでの待ち時間を削減することができる。
【0073】
その後、プラズマ移動機構14がプラズマ発生装置1を第2待機位置から第2処理位置へと移動させる。これによれば、基板Wの直上にはノズル12が存在しないので、プラズマ発生装置1を基板Wの上面により近づけることができる。言い換えれば、第2処理位置をより基板Wの近くに設定することができる。
【0074】
また、これにより、基板Wの上面の近傍の位置でプラズマ発生装置1が基板の上面の処理液に向かってプラズマを発生させる。このプラズマの発生に伴って種々の活性種が生じる。例えば、空気がプラズマ化することにより、酸素ラジカル、ヒドロキシルラジカルおよびオゾンガス等の種々の活性種が生じ得る。これらの活性種は基板Wの上面に作用する。具体的な一例として、活性種は基板Wの上面の処理液(ここでは硫酸)の液膜に作用する。これにより、処理液の処理性能が高まる。具体的には、活性種と硫酸との反応により、処理性能(ここでは酸化力)の高いカロ酸が生成される。カロ酸はペルオキソ一硫酸とも呼ばれる。当該カロ酸が基板Wのレジストに作用することで、レジストを酸化除去することができる。
【0075】
以上のように、活性種が基板Wの主面上の処理液に作用することにより、処理液の処理性能を向上させることができる。よって、基板Wに対する処理を速やかに行うことができる。
【0076】
<プラズマ発生装置の概要>
次に、プラズマ発生装置1の構成の概要について説明する。
図4は、プラズマ発生装置1の構成の一例を概略的に示す側断面図である。プラズマ発生装置1はプラズマ源2と冷却部材4と温度測定部6とを含んでいる。
【0077】
プラズマ源2は、プラズマを発生させる装置である。プラズマ源2はプラズマリアクタとも呼ばれ得る。プラズマ源2の周囲でプラズマが生じると、プラズマの発生に起因してプラズマ源2の温度が上昇する。プラズマ源2の温度が必要以上に上昇すると、種々の不具合が生じ得る。例えば、耐熱性向上に伴うプラズマ源2の製造コストの増大、処理対象である基板Wへの熱ダメージ、あるいは、基板Wの主面上の処理液の沸騰による周辺部材への汚染、等の不具合が生じ得る。
【0078】
冷却部材4は、プラズマ源2に冷却用ガスを供給するための給気口411を有する。
図4の例では、給気口411はプラズマ源2と間隔を空けて対向している。給気口411は給気路412の下流端に設けられており、給気路412には、冷却ガス供給部5から冷却用ガスが供給される。冷却用ガスは例えば窒素ガスおよび空気の少なくともいずれかを含む。冷却用ガスは給気路412を給気口411に向かって流れ、給気口411から流出する。
【0079】
給気口411から流出した冷却用ガスはプラズマ源2に向かって流れ、プラズマ源2に供給される。冷却用ガスがプラズマ源2に供給されることにより、プラズマ源2を空冷することができる。これにより、プラズマ源2の温度上昇を緩和することができる。その一方で、プラズマ源2の温度が低下しすぎると、プラズマが消失し得る。
【0080】
温度測定部6はプラズマ源2の温度を測定する。温度測定部6は、その測定結果を示す電気信号を制御部90に出力する。
【0081】
制御部90は、温度測定部6によって測定された温度に基づいて、プラズマ源2に供給される冷却用ガスの流量を制御する。
【0082】
このようなプラズマ発生装置1によれば、プラズマ源2の温度をモニタしながら、プラズマ源2を空冷することができる。よって、プラズマ源2の温度を高い精度で制御することができる。したがって、温度上昇および温度低下による上記不具合をより確実に抑制することができる。
【0083】
なお、上述の例では、プラズマ源2が第2処理位置よりも基板Wから離れた第2待機位置に位置する状態で、プラズマ源2の全体にわたってプラズマを発生させる。そして、プラズマ源2の温度が基板Wの処理に適した温度になるように冷却される。その後、プラズマ源2が第2待機位置から第2処理位置へと移動させられる。こうすることで、基板Wの上面の近傍の位置でプラズマを発生させる場合と比較して、プラズマの発生に起因する高熱による基板Wや周辺部材へのダメージを抑制することができる。また、プラズマ源2の全体にわたってプラズマが発生した後に、プラズマ源2を第2処理位置に移動させることで、基板Wの上面を均一に処理することができる。
【0084】
以下では、プラズマ発生装置1の各構成のより詳細な一例について述べる。
【0085】
<プラズマ源>
図5は、プラズマ源2の構成の一例を概略的に示す平面図であり、
図6は、プラズマ源2の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図6は、
図5のA-A断面を示している。
図4から
図6の例では、プラズマ源2は第1電極部21と第2電極部22とを含む。
【0086】
図5および
図6の例では、第1電極部21は複数の第1線状電極211と第1集合電極212とを含み、第2電極部22は複数の第2線状電極221と第2集合電極222とを含む。
【0087】
第1線状電極211は金属材料(例えばタングステン)等の導電性材料によって形成され、長手方向D1に沿って延在する棒状形状(例えば円柱形状)を有する。複数の第1線状電極211は、長手方向D1に直交する配列方向D2において並んで設けられており、理想的には互いに平行に設けられる。
【0088】
第1集合電極212は金属材料(例えばアルミニウム)等の導電性材料によって形成され、複数の第1線状電極211の長手方向D1の一方側の端部(基端)どうしを連結する。
図5の例では、第1集合電極212は、長手方向D1の一方側に膨らむ円弧状の平板形状を有している。複数の第1線状電極211は第1集合電極212から長手方向D1の他方側に向かって延在する。
【0089】
第2線状電極221は金属材料(例えばタングステン)等の導電性材料によって形成され、長手方向D1に沿って延在する棒状形状(例えば円柱形状)を有する。複数の第2線状電極221は配列方向D2において並んで設けられており、理想的には互いに平行に設けられる。第2線状電極221の各々は、平面視において(つまり、長手方向D1および配列方向D2に直交する方向D3に沿って見て)、複数の第1線状電極211のうち互いに隣り合う二者の間に設けられている。
図5の例では、平面視において、第1線状電極211および第2線状電極221は配列方向D2において交互に配列される。第1線状電極211の各々は第2線状電極221と方向D3において対向していない。
【0090】
第2集合電極222は金属材料(例えばアルミニウム)等の導電性材料によって形成され、複数の第2線状電極221の長手方向D1の他方側の端部(基端)どうしを連結する。
図5の例では、第2集合電極222は、第1集合電極212とは反対側に膨らみ、かつ、第1集合電極212と略同径の円弧状の平板形状を有している。複数の第2線状電極221は第2集合電極222から長手方向D1の一方側に向かって延在する。
【0091】
図4から
図6の例では、各第1線状電極211は第1誘電体31によって覆われる。複数の第1誘電体31は石英またはセラミックス等の誘電体材料によって形成される。例えば、各第1誘電体31は長手方向D1に沿って延在する筒状形状を有しており、第1線状電極211が長手方向D1に沿って第1誘電体31に挿入される。第1誘電体31が第1線状電極211を覆うことにより、第1線状電極211がプラズマにスパッタされることに起因して基板Wが汚染されることを防ぐことができる。
【0092】
図4から
図6の例では、各第2線状電極221は第2誘電体32によって覆われる。複数の第2誘電体32は石英またはセラミックス等の誘電体材料によって形成される。例えば、各第2誘電体32は長手方向D1に沿って延在する筒状形状を有しており、第2線状電極221が長手方向D1に沿って第2誘電体32に挿入される。第2誘電体32が第2線状電極221を覆うことにより、第2線状電極221がプラズマにスパッタされることに起因して基板Wが汚染されることを防ぐことができる。
【0093】
図4から
図6の例では、プラズマ源2には仕切部材33が設けられている。仕切部材33は石英またはセラミックス等の誘電体材料によって形成される。図示の例では、仕切部材33は板状形状を有している。以下では、仕切部材33の一方側の主面を処理面33aと呼び、他方側の主面を冷却面33bと呼ぶ。処理面33aおよび冷却面33bは仕切部材33の厚み方向において互いに対向する面である。仕切部材33はその厚み方向が方向D3に沿う姿勢で設けられる。
図5の例では、仕切部材33の処理面33aおよび冷却面33bは平面視において円形状を有している。仕切部材33の厚み(処理面33aと冷却面33bとの間の距離)は例えば数百μm(例えば300μm)程度に設定される。
【0094】
第1電極部21および第1誘電体31は仕切部材33の処理面33a側に設けられており、第2電極部22および第2誘電体32は仕切部材33の冷却面33b側に設けられている。具体的には、第1誘電体31は仕切部材33の処理面33a下に設けられており、第2誘電体32は仕切部材33の冷却面33b上に設けられている。
【0095】
プラズマ源2は処理ユニット130において、処理面33aが処理対象(ここでは基板W)を向く姿勢で設けられる。具体的には、プラズマ源2は、方向D3が鉛直方向に沿い、かつ、処理面33aが基板Wの上面を向く姿勢で設けられる。このプラズマ源2は基板Wと鉛直方向において対向する。
【0096】
仕切部材33は処理面33a側の第1空間と冷却面33b側の第2空間とを仕切る。以下では、第1空間を処理空間と呼び、仕切部材33に対して処理空間とは反対側の第2空間を冷却空間とも呼ぶ。つまり、仕切部材33の処理面33aは処理空間に接する面であり、仕切部材33の冷却面33bは冷却空間に接する面である。
【0097】
図4に例示されるように、プラズマ源2には保持部材34が設けられてもよい。なお
図5および
図6では、図面の煩雑を避けるために、保持部材34を省略している。保持部材34はフッ素系樹脂等の絶縁材料によって形成され、第1電極部21、第2電極部22、第1誘電体31、第2誘電体32および仕切部材33を一体に保持する。例えば、保持部材34は平面視において第1集合電極212および第2集合電極222と略同径のリング形状を有しており、第1集合電極212および第2集合電極222を方向D3で挟持する。
【0098】
図4の例では、第1誘電体31の先端部が保持部材34によって保持される。具体的には、第1誘電体31の先端部が保持部材34に埋設される。よって、第1線状電極211および第1誘電体31からなる部分の両端が保持部材34によって保持される。これにより、当該部分を両端保持することができる。
図4の例では、第2誘電体32の先端部も保持部材34によって保持される。よって、保持部材34は第2線状電極221および第2誘電体32からなる部分も両端保持することができる。
【0099】
第1電極部21および第2電極部22はプラズマ用の電源8に電気的に接続される。より具体的には、第1電極部21の第1集合電極212が配線81を介して電源8の第1出力端8aに電気的に接続され、第2電極部22の第2集合電極222が配線82を介して電源8の第2出力端8bに電気的に接続される。電源8は例えば不図示のスイッチング電源回路を有しており、第1電極部21と第2電極部22との間にプラズマ用の電圧を出力する。より具体的な一例として、電源8はプラズマ用の電圧として高周波電圧を第1出力端8aおよび第2出力端8bに出力する。
【0100】
電源8が第1電極部21と第2電極部22との間に電圧を出力することにより、第1線状電極211と第2線状電極221との間にプラズマ用の電界が生じる。当該電界に応じて、第1線状電極211および第2線状電極221の周囲のガスがプラズマ化する。このプラズマ源2によれば、仕切部材33の処理面33a側および冷却面33b側において、第1線状電極211と第2線状電極221との間のガスがプラズマ化し、それぞれプラズマP1およびプラズマP2が発生する(
図6を参照)。逆に言えば、当該ガスがプラズマ化する程度の電圧が電源8によって第1電極部21と第2電極部22との間に印加される。当該電圧は、例えば、数十kVかつ数十kHz程度の高周波電圧である。なお、
図6の例では、プラズマP1,P2の発生領域の輪郭がそれぞれ二点鎖線で模式的に示されている。プラズマの発生領域は、プラズマが発光する発光領域であるともいえる。
【0101】
<冷却部材>
図4を参照して、冷却部材4は、冷却用ガスを流出する給気口411を有する。
図4の例では、給気口411は冷却空間に設けられている。つまり、給気口411は仕切部材33に対して処理対象(ここでは基板W)とは反対側に設けられている。給気口411は仕切部材33の冷却面33bと方向D3において対向する位置に設けられており、より具体的な一例として、給気口411はプラズマ源2の中心部と方向D3において対向する位置に設けられる。
図4の例では、給気口411は仕切部材33の冷却面33bに向かって開口する。より具体的には、給気口411の開口方向は、冷却面33bに垂直な方向D3に沿う方向である。
【0102】
図4の例では、冷却部材4は、冷却空間に設けられた給気管41を含み、その給気管41の内部の給気路412の下流端が給気口411に相当する。給気管41の給気口411から流出した冷却用ガスはプラズマ源2に向かって流れる。
【0103】
給気管41には、冷却ガス供給部5から冷却用ガスが供給される(
図3も参照)。冷却ガス供給部5は給気管51とバルブ52と流量調整部53とを含んでいる。給気管51は給気管41とガス供給源54とを接続する。言い換えれば、給気管51の下流端が給気管41に接続され、給気管51の上流端がガス供給源54に接続される。なお、給気管41および給気管51は1本の配管の互いに異なる部分であってもよい。ガス供給源54は給気管51に冷却用ガスを供給する。冷却用ガスは例えば窒素ガスおよび空気の少なくともいずれかである。
【0104】
給気管51にはバルブ52および流量調整部53が介装されている。バルブ52は制御部90によって制御される。バルブ52が開くことにより、ガス供給源54からの冷却用ガスが給気管51を通じて給気管41に供給され、給気口411から流出する。給気口411から流出した冷却用ガスはプラズマ源2に向かって流れ、プラズマ源2を冷却する。バルブ52が閉じることにより、冷却用ガスの供給が停止する。流量調整部53は制御部90によって制御され、給気管51を流れる冷却用ガスの流量を調整する。流量調整部53は例えばマスフローコントローラである。
【0105】
図4の例では、冷却部材4は流路形成部材42をさらに含んでいる。流路形成部材42は、給気口411から流出した冷却用ガスが流れるガス空間40を形成する。流路形成部材42は、仕切部材33に対して冷却空間側に設けられ、プラズマ源2の周縁に連結されてプラズマ源2とともにガス空間40を形成する。
図4の例では、流路形成部材42はカバー部421と側壁422とを含む。カバー部421は例えば板状の形状を有しており、その厚み方向が方向D3に沿う姿勢で設けられる。カバー部421は例えば保持部材34と略同径の円板形状を有し、方向D3においてプラズマ源2と対向する位置に設けられている。カバー部421の中心部には、給気管41を貫通配置するための貫通孔が形成されている。給気管41とカバー部421とは互いに連結される。給気管41の給気口411はガス空間40において開口する。
【0106】
側壁422はカバー部421の周縁に立設された円筒形状を有しており、保持部材34側に向かって延在する。側壁422の内周面は、平面視において、第1線状電極211の先端および第2線状電極221の先端よりも外側に位置する。
【0107】
図4の例では、側壁422は方向D3において保持部材34と重なり合っており、保持部材34に連結される。流路形成部材42は保持部材34と一体で構成されてもよいし、複数の部材が組み合わされて構成されてもよい。
【0108】
このような流路形成部材42によれば、カバー部421、側壁422およびプラズマ源2によって囲まれるガス空間40を形成することができる。なお、保持部材34はガス空間40を形成する部材の一部でもあるので、流路形成部材42に属しているともいえる。つまり、側壁422および保持部材34からなる部分を、流路形成部材42の側壁423と把握することも可能である。
【0109】
流路形成部材42には排気路424が設けられる。
図4の例では、排気路424は流路形成部材42の側壁423(図では保持部材34)に設けられている。排気路424は例えば保持部材34の内周面と外周面とを繋ぐ貫通孔である。給気口411から流出した冷却用ガスはプラズマ源2に向かって流れ、プラズマ源2に衝突した後にプラズマ源2に沿って流れて、排気路424から外部に排出される。
【0110】
図4に例示されるように、複数の排気路424が流路形成部材42に設けられてもよい。複数の排気路424は側壁423の周方向において互いに異なる位置に設けられ、より具体的な一例として等間隔に設けられる。
【0111】
なお、排気路424は必ずしも保持部材34に形成される必要はなく、例えば、側壁422に形成されてもよく、側壁422と保持部材34との境界に形成されてもよい。
【0112】
図4の例では、給気管41の給気口411とプラズマ源2との間に整流部材43が設けられている。整流部材43は、給気口411から流出した冷却用ガスを整流し、整流後の冷却用ガスをプラズマ源2に供給するための部材である。整流部材43は例えば板状の形状を有しており、その厚み方向が方向D3に沿う姿勢で設けられる。整流部材43には、複数の貫通孔43aが形成されている。貫通孔43aは整流部材43を方向D3において貫通する。複数の貫通孔43aは平面視において2次元的に配列され、例えばマトリクス状に配列される。整流部材43は円板形状を有しており、その周縁は流路形成部材42の側壁422の内周面に固定される。
【0113】
このような冷却部材4において、給気口411から流出した冷却用ガスは整流部材43の複数の貫通孔43aを通過することにより整流され、整流後の冷却用ガスがプラズマ源2に向かって流れる。冷却用ガスはプラズマ源2に衝突した後にプラズマ源2に沿って周囲に向かって流れて、複数の排気路424から外部に排出される。排気路424は整流部材43よりも下流側に設けられるとよい。
【0114】
<温度測定部>
図4を参照して、温度測定部6はプラズマ源2の温度を測定する。
図4の例では、温度測定部6は、非接触式で温度を測定する温度センサであり、具体的な一例として、赤外線を検出する赤外線センサである。当該センサは、放射温度計を含む。
【0115】
図4の例では、温度測定部6は、プラズマ源2に対して冷却空間側に設けられている。具体的には、温度測定部6は流路形成部材42に対してプラズマ源2とは反対側に設けられている。流路形成部材42には測定用窓425が形成されており、温度測定部6は測定用窓425を通じてプラズマ源2の温度を測定する。
図4の例では、測定用窓425は流路形成部材42のカバー部421に形成されている。測定用窓425はカバー部421を方向D3に沿って貫通し、プラズマ源2と方向D3において対向する。測定用窓425は例えば透光部材であってもよい。この透光部材は、赤外線について高い透光率(例えば60%以上、好ましくは90%以上)を有する透光性材料(例えばガラス)によって形成される。赤外線にとって不透明な整流部材43が設けられる場合には、測定用窓425は整流部材43の貫通孔43aと方向D3において対向する位置に形成される。整流部材43が透光性材料によって形成される場合には、測定用窓425は整流部材43と対向する位置に設けられてもよい。
【0116】
プラズマ源2から発光された赤外線の一部は貫通孔43a(あるいは、整流部材43)および測定用窓425を透過し、温度測定部6に入射する。温度測定部6は当該赤外線を検出し、その検出結果を示す電気信号を温度測定値として制御部90に出力する。
【0117】
図4の例では、複数の温度測定部6が設けられている。複数の温度測定部6は平面視において、例えば給気管41の周囲で周方向に略等間隔に設けられてもよい。カバー部421には、当該複数の温度測定部6に対応して複数の測定用窓425が形成されている。複数の温度測定部6は、平面視において互いに異なる位置でプラズマ源2の温度を測定する。制御部90は複数の温度測定部6によって測定された温度に基づいて、プラズマ源2の測定温度を算出してもよい。例えば、制御部90は、測定された複数の温度の平均値を測定温度として算出してもよい。
【0118】
温度測定部6および冷却部材4はプラズマ源2と一体に移動するとよい。つまり、プラズマ移動機構14はプラズマ源2、冷却部材4および温度測定部6を一体に移動させてもよい。これによれば、冷却部材4はプラズマ源2の位置によらずプラズマ源2を冷却することができ、温度測定部6はプラズマ源2の位置によらず、プラズマ源2の温度を測定することができる。
【0119】
なお、上述の例では、カバー部421の一部に透光部材(測定用窓425)が設けられているものの、カバー部421の全てが透光性材料によって形成されてもよい。整流部材43も透光性材料によって形成される場合、プラズマ源2からの赤外線が整流部材43およびカバー部421を透過できるので、温度測定部6の設置位置の自由度を向上させることができる。
【0120】
<空冷制御>
図7は、プラズマ発生装置1の動作の一例を概略的に示すフローチャートである。制御部90は電源8を制御して、プラズマ源2の周囲にプラズマP1,P2を発生させる(ステップS1)。具体的には、電源8は制御部90の制御下でプラズマ用の電圧(例えば高周波電圧)をプラズマ源2に出力する。これにより、第1線状電極211と第2線状電極221との間にプラズマ用の電界が生じ、当該電界がガスに作用してプラズマP1,P2を発生させる。プラズマ源2は処理が終了するまでプラズマP1,P2を発生させる。
【0121】
処理ユニット130を例に挙げて説明すると、プラズマ源2が第2処理位置においてプラズマP1,P2を発生させることにより、プラズマP1に起因して生じる種々の活性種を基板W上の処理液に供給することができる。これにより、既述のように、基板Wのレジストをより速やかに除去することができる。
【0122】
また、制御部90はバルブ52を開いて冷却用ガスをプラズマ源2に供給する(ステップS2)。具体的には、冷却用ガスがガス供給源54から給気管51を通じて給気管41に供給され、給気口411から流出する。給気口411から流出された冷却用ガスはガス空間40において整流部材43を通じて整流され、整流後の冷却用ガスがプラズマ源2に供給される。プラズマ源2に衝突した冷却用ガスはプラズマ源2に沿って外側に流れ、排気路424を通じて外部に排出される。
【0123】
次に、温度測定部6がプラズマ源2の温度を測定する(ステップS3)。
【0124】
次に、制御部90は温度測定部6によって測定された測定温度に基づいて流量調整部53を制御して、プラズマ源2に供給される冷却用ガスの流量を制御する(ステップS4)。よって、冷却ガス供給部5および冷却部材4は、温度測定部6によって測定された温度に基づいた流量で冷却用ガスをプラズマ源2に供給する。
【0125】
具体的には、制御部90は、測定温度が第1温度であるときの冷却用ガスの流量が、測定温度が第1温度よりも低い第2温度であるときの冷却用ガスの流量よりも大きくなるように、流量調整部53を制御する。つまり、制御部90は、測定温度が高いときに冷却用ガスの流量を増加させることにより、プラズマ源2の温度を低下させ、測定温度が低いときには、冷却用ガスの流量を低減させることにより、プラズマ源2の温度を上昇させる。制御部90は測定温度の増加に対して冷却用ガスの流量を連続的に増加させてもよく、あるいは、段階的に増加させてもよい。
【0126】
次に、制御部90は処理を終了するか否かを判断する(ステップS5)。所定の終了条件が成立していれば、制御部90は処理を終了すると判断し、所定の終了条件が成立していなければ、制御部90は処理を終了しないと判断する。例えば電源8による電圧出力から所定期間が経過したときに終了条件が成立したと判断してもよい。当該所定期間は、例えば基板Wのレジストを除去するのに十分な時間である。終了条件が成立していないときには、再びステップS3が実行され、終了条件が成立したときには、処理を終了する。具体的には、制御部90は電源8に電圧の出力を停止させ、バルブ52を閉じる。
【0127】
以上のように、プラズマ発生装置1によれば、プラズマ源2の温度をモニタしながら冷却用ガスの流量を制御する。よって、プラズマ源2の温度を高い精度で所定の温度範囲内に制御することができる。
【0128】
また上述の例では、プラズマ源2は仕切部材33を含んでおり、冷却部材4は仕切部材33によって仕切られた冷却空間においてプラズマ源2に冷却用ガスを供給する。よって、冷却用ガスは処理空間には流入しにくく、プラズマ源2と処理対象(ここでは基板W)との間のプラズマP1の乱れを招きにくい。したがって、プラズマP1に起因して生じる活性種をより均一に基板Wに供給することができる。
【0129】
また上述の例では、冷却部材4の給気口411は仕切部材33の冷却面33bと対向する位置に設けられており、冷却面33bに向けて開口している。これによれば、給気口411から流出した冷却用ガスは方向D3に沿って仕切部材33に向かって流れるので、冷却用ガスの大部分をプラズマ源2に衝突させることができる。
【0130】
比較のために、冷却用ガスを仕切部材33の冷却面33bに平行な方向に流す構造を考慮する。この場合、冷却用ガスのうちプラズマ源2から離れた位置を流れるガスは、プラズマ源2には直接に接触しないので、プラズマ源2の冷却に寄与しにくい。
【0131】
これに対して、上述の例では、冷却用ガスが方向D3に沿ってプラズマ源2に向かって流れるので、その大部分がプラズマ源2に当たりやすい。よって、給気口411から流出した冷却用ガスの大部分がプラズマ源2の冷却に寄与しやすい。したがって、プラズマ源2をより効果的に冷却することができる。
【0132】
また上述の例では、流路形成部材42の側壁423に排気路424が形成されている。よって、給気口411から流出してプラズマ源2に衝突した冷却用ガスはプラズマ源2に沿って外側に流れ、排気路424を通じて外部に排出される。冷却用ガスは衝突後にプラズマ源2に沿って流れるので、さらに効果的にプラズマ源2を冷却することができる。
【0133】
また上述の例では、複数の排気路424が周方向において異なる位置で流路形成部材42の側壁423に設けられている。具体的な一例として、複数の排気路424は等間隔に設けられている。よって、冷却用ガスはプラズマ源2に沿ってより均等に放射状に外側に流れ、複数の排気路424から外部に排出される。したがって、プラズマ源2をより均一に冷却することができる。これによれば、プラズマ源2の温度分布をより均一化することができる。よって、プラズマ源2による活性種の発生量の分布をより均一化することができ、基板Wに対してより均一に活性種を作用させることができる。
【0134】
また上述の例では、冷却部材4は整流部材43を含んでいる。よって、平面視において冷却用ガスをプラズマ源2に対してより均一に供給することができる。したがって、プラズマ源2の温度をより均一に制御することができる。言い換えれば、平面視におけるプラズマ源2の温度分布をより均一化することができる。これによれば、プラズマ源2による活性種の発生量の分布をより均一化することができ、基板Wに対してより均一に活性種を作用させることができる。
【0135】
また上述の例では、温度測定部6は仕切部材33よりも冷却空間側に設けられている。言い換えれば、温度測定部6はプラズマ源2に対して処理対象(ここでは基板W)とは反対側に設けられている。これによれば、温度測定部6はプラズマ源2と基板Wとの間には設けられないので、基板Wに向かう活性種の移動を阻害しない。また、プラズマ源2を処理対象により近づけることができる。言い換えれば、プラズマ発生装置1の第2処理位置を基板Wのより近くに設定することができる。そして、温度測定部6はプラズマ発生装置1が第2処理位置で停止している場合でもプラズマ源2の温度を測定することができるので、基板Wに対する処理中であっても、プラズマ源2の温度を高い精度で制御することができる。
【0136】
また上述の例では、プラズマ源2が第2処理位置よりも基板Wから離れた第2待機位置に位置する状態で、制御部90が電源8を制御してプラズマ源2の周囲にプラズマP1,P2を発生させる。そして、プラズマ源2の温度が基板Wの処理に適した温度になるように、冷却用ガスによりプラズマ源2が冷却される。その後、プラズマ源2が第2待機位置から第2処理位置へと移動させられる。こうすることで、基板Wの上面の近傍の位置でプラズマを発生させる場合と比較して、プラズマの発生に起因する高熱による基板Wや周辺部材へのダメージを抑制することができる。
【0137】
<空冷制御のタイミング>
制御部90は、プラズマ発生装置1が第2待機位置に位置するときにも、第2処理位置に位置するときにも、第2処理位置と第2待機位置との間の移動中でも、行うことができる。
【0138】
なお、上述の例では、プラズマ処理中のプラズマ源2の温度を測定するために、温度測定部6がプラズマ源2に対して処理対象(ここでは基板W)とは反対側に設けられる。しかしながら、必ずしもプラズマ処理中のプラズマ源2の温度を測定しなくてもよい。例えば、プラズマ発生装置1が第2処理位置よりも鉛直上方の準備位置(第2待機位置を含む)で停止しているときに、電源8がプラズマ源2に電圧を出力してプラズマP1,P2を発生させ、制御部90がプラズマ源2の測定温度に基づいて冷却用ガスの流量を制御する。続いて、プラズマ発生装置1が第2処理位置へと移動し、基板Wに対するプラズマ処理(活性種の供給)を行う。プラズマ処理中では、温度測定部6による温度測定を行わず、冷却ガス供給部5は、準備位置においてプラズマ源2の温度が所定範囲内となったときのガスの流量で、冷却用ガスを供給する。これによっても、プラズマ処理中において、プラズマ源2の温度を所定範囲内に維持することができる。
【0139】
この場合、温度測定部6は必ずしもプラズマ源2に対して基板Wとは反対側に設けられていなくてもよい。温度測定部6はプラズマ源2に対して基板W側に設けられていてもよい。例えば、温度測定部6は、プラズマ源2よりも基板W側かつプラズマ源2よりも外側の位置に設けられてもよい。
図4は、この温度測定部6が二点鎖線で示されている。この場合、温度測定部6はプラズマ源2と一体に移動する必要はなく、処理ユニット130内に移動不能に固定されていてもよい。
【0140】
<温度測定部の種類>
上述の例では、温度測定部6は赤外線センサ(放射温度計)であるものの、例えば、サーモカメラであってもよい。サーモカメラはサーモグラフィーカメラとも呼ばれる。サーモカメラは例えば2次元配置された複数の画素を有する。各画素は赤外線を受光し、その強度を検出する。サーモカメラは赤外線による画像(いわゆるサーモグラフィ)を出力することができる。
【0141】
サーモカメラの撮像範囲はプラズマ源2の一部であってもよく、全部であってもよい。制御部90はサーモカメラによって撮像された画像に基づいて、プラズマ源2のうち撮像範囲内の温度分布を把握することができる。制御部90は複数の画素に対応するプラズマ源2の複数の温度を平均化して、プラズマ源2の測定温度を算出してもよい。
【0142】
また上述の例では、温度測定部6は、温度と相関する赤外線の強度を測定しているものの、必ずしもこれに限らない。温度測定部6は、温度と正または負の相関関係を有する赤外線以外のパラメータを測定してもよい。具体的な一例として、温度測定部6はプラズマP1,P2の発光強度を測定するセンサであってもよい。ガスの種類が一定であれば、プラズマの発光強度は温度が高いほど高くなるので、発光強度と温度との関係を予め測定しておくことにより、温度測定部6によって測定された発光強度と、予め測定した上記関係とに基づいて、プラズマ源2の温度を算出することができる。温度測定部6は、プラズマの光をセンシング可能なカメラ(例えば可視光カメラ)であってもよい。
【0143】
<複数種のガス>
上述したように、プラズマ発生装置1においては、冷却用ガスによってプラズマ源2を冷却することで、プラズマ源2の温度を制御することができる。よって、温度上昇による不具合を抑制できるとともに、温度低下によるプラズマの消失も抑制することができる。しかしながら、プラズマを維持しつつ、プラズマ源2の温度をさらに低下させることは困難である。
【0144】
そこでここでは、温度低下とプラズマP1の発生を両立することを企図する。具体的には、冷却用ガスとして、第1ガスと、第1ガスよりもプラズマ化しやすい第2ガスとを採用する。第1ガスは例えば窒素ガスおよび空気の少なくともいずれかを含む。第2ガスは例えばアルゴンガスである。
【0145】
図8は、プラズマ発生装置1および冷却ガス供給部5の構成の他の一例を概略的に示す図である。
図8は例では、冷却ガス供給部5の給気管51は分岐管51aと分岐管51bと合流管51cとを含む。合流管51cの下流端は給気管51の下流端に相当し、給気管41に接続される。
【0146】
分岐管51aの下流端は合流管51cの上流端に接続され、分岐管51aの上流端は第1ガス供給源54aに接続される。第1ガス供給源54aは第1ガスを分岐管51aに供給する。分岐管51aにはバルブ52aおよび流量調整部53aが介装されている。バルブ52aは制御部90によって制御される。バルブ52aが開くことにより、第1ガス供給源54aからの第1ガスが分岐管51aおよび合流管51cを通じて給気管41に供給され、給気口411から流出する。給気口411から流出した第1ガスはプラズマ源2に向かって流れる。バルブ52aが閉じることにより、第1ガスの供給が停止する。流量調整部53aは制御部90によって制御され、分岐管51aを流れる第1ガスの流量を調整する。流量調整部53aは例えばマスフローコントローラである。
【0147】
分岐管51bの下流端は合流管51cの上流端に接続され、分岐管51bの上流端は第2ガス供給源54bに接続される。第2ガス供給源54bは第2ガスを分岐管51bに供給する。分岐管51bにはバルブ52bおよび流量調整部53bが介装されている。バルブ52bは制御部90によって制御される。バルブ52bが開くことにより、第2ガス供給源54bからの第2ガスが分岐管51bおよび合流管51cを通じて給気管41に供給され、給気口411から流出する。給気口411から流出した第2ガスはプラズマ源2に向かって流れる。バルブ52bが閉じることにより、第2ガスの供給が停止する。流量調整部53bは制御部90によって制御され、分岐管51bを流れる第2ガスの流量を調整する。流量調整部53bは例えばマスフローコントローラである。
【0148】
このような冷却ガス供給部5によれば、制御部90がバルブ52a,52bを開くことにより、第1ガスと、第1ガスよりもプラズマしやすい第2ガスとの混合ガスを冷却用ガスとしてプラズマ源2に供給することができる。後述のように、第1ガスは主としてプラズマ源2の冷却に用いられ、第2ガスは主としてプラズマP2の維持に用いられる。
【0149】
制御部90は温度測定部6によって測定された測定温度に基づいて、冷却用ガスの流量を制御する。具体的には、制御部90は、測定温度が第1温度であるときの第1ガスの流量が、測定温度が第1温度よりも低い第2温度であるときの第1ガスの流量よりも大きくなるように、流量調整部53aを制御する。つまり、制御部90は測定温度が高いときに第1ガスの流量を増加させてプラズマ源2の温度を低下させ、測定温度が低いときに第1ガスの流量を低減させてプラズマ源2の温度を上昇させる。制御部90は測定温度の増加に対して第1ガスの流量を連続的に増加させてもよく、あるいは、段階的に増加させてもよい。
【0150】
以上のように、第1ガスの流量を測定温度に基づいて制御しているので、プラズマ源2の温度を高い精度で所定範囲内に制御できる。
【0151】
しかも、プラズマ源2には、プラズマ化しやすい第2ガスも供給される。例えば、制御部90は第2ガスの流量が予め設定された一定値となるように流量調整部53bを制御してもよい。この第2ガスの供給により、プラズマ源2の周囲においてプラズマP1,P2の発生を維持することができる。具体的には、プラズマ源2の温度が低下しても、第2ガスが仕切部材33よりも冷却空間側においてプラズマ化するので、プラズマP2を維持することができる(
図6も参照)。また、出願人は、この冷却空間側のプラズマP2の維持に起因して、処理空間側においてもプラズマP1が維持されることを確認した。
【0152】
以上のように、冷却用ガスとして、第1ガスと、第1ガスよりもプラズマ化しやすい第2ガスとの混合ガスを採用することにより、温度の低下とプラズマP1,P2の維持とを両立させることができる。言い換えれば、プラズマP1,P2を維持可能な温度範囲を広げることができる。
【0153】
<第2ガスの流量制御>
第2ガスの流量は必ずしも一定に制御される必要はない。制御部90は、温度測定部6によって測定された測定温度に基づいて、第2ガスの流量も制御してもよい。より具体的には、制御部90は測定温度が第1温度であるときの第2ガスの流量が、測定温度が第1温度よりも低い第2温度であるときの第2ガスの流量よりも小さくなるように、流量調整部53bを制御してもよい。つまり、制御部90は、測定温度が高いときに第2ガスの流量を低下させ、測定温度が低いときに第2ガスの流量を増加させてもよい。
【0154】
これによれば、プラズマP1,P2が消失する可能性が高い低温時において第2ガスの流量を増加させることにより、プラズマP1,P2をより確実に維持することができる。一方で、プラズマP1,P2が消失する可能性が低い高温時での第2ガスの消費量を低減させる。これによれば、高温時ではプラズマP1,P2を維持しつつ第2ガスの消費量を低減させることができる。第2ガスの流量はゼロであってもよい。
【0155】
<領域ごとの空冷制御>
図9は、プラズマ発生装置1および冷却ガス供給部5の他の一例を概略的に示す断面図である。以下では、
図9のプラズマ発生装置1をプラズマ発生装置1Aと呼ぶ。プラズマ発生装置1Aは、冷却部材4の構成を除いて、既述のプラズマ発生装置1と同様の構成を有している。
【0156】
プラズマ発生装置1Aにおいては、冷却部材4は複数の給気口411を有している。複数の給気口411は仕切部材33よりも冷却空間側に設けられており、いずれもプラズマ源2と方向D3において対向する位置に設けられている。よって、複数の給気口411はプラズマ源2のうち互いに異なる領域と方向D3において対向する。
【0157】
図9の例では、複数の給気口411として、3つの給気口411A,411B1,411B2が示されている。給気口411Aはプラズマ源2の中央領域(具体的には仕切部材33の中央領域、第2中央領域に相当)と方向D3において対向する位置に形成され、給気口411B1はプラズマ源2の周縁領域(具体的には仕切部材33の周縁領域、第2周縁領域に相当)と方向D3において対向する位置に形成されており、給気口411B2は給気口411Aに対して給気口411B1と反対側において、プラズマ源2の周縁領域と方向D3において対向する位置に形成されている。
図9の例では、冷却部材4は3つの給気管41A,41B1,41B2を含み、給気管41A,41B1,41B2の下流端にそれぞれ給気口411A,411B1,411B2が形成される。
【0158】
冷却ガス供給部5は給気管41A,41B1,41B2に冷却用ガスを供給する。
図9の例では、給気管41Aは給気管51Aを介してガス供給源54に接続される。給気管51Aにはバルブ52Aおよび流量調整部53Aが介装されている。バルブ52Aは制御部90によって制御される。バルブ52Aが開くことにより、ガス供給源54からの冷却用ガスが給気管51Aを通じて給気管41Aに供給され、給気口411Aから流出する。給気口411Aから流出した冷却用ガスはプラズマ源2の中央領域に向かって流れる。バルブ52Aが閉じることにより、給気口411Aからの冷却用ガスの供給が停止する。流量調整部53Aは制御部90によって制御され、給気管51Aを流れる冷却用ガスの流量を調整する。つまり、流量調整部53Aはプラズマ源2の中央領域へ向かう冷却用ガスの流量を調整する。流量調整部53Aは例えばマスフローコントローラである。
【0159】
図9の例では、給気管41B1は分岐管51B1および共通管51B3を介してガス供給源54に接続され、給気管41B2は分岐管51B2および共通管51B3を介してガス供給源54に接続される。共通管51B3にはバルブ52Bおよび流量調整部53Bが介装されている。バルブ52Bは制御部90によって制御される。バルブ52Bが開くことにより、ガス供給源54からの冷却用ガスがそれぞれ給気管41B1,41B2に供給され、給気口411B1,411B2から流出する。給気口411B1,411B2から流出した冷却用ガスはプラズマ源2の周縁領域に向かって流れる。バルブ52Bが閉じることにより、給気口411B1,411B2からの冷却用ガスの供給が停止する。流量調整部53Bは制御部90によって制御され、共通管51B3を流れる冷却用ガスの流量を調整する。つまり、流量調整部53Bはプラズマ源2の周縁領域へ向かう冷却用ガスの流量を調整する。流量調整部53Bは例えばマスフローコントローラである。
【0160】
このような冷却部材4によれば、流量調整部53A,53Bによって、プラズマ源2の中央領域に供給する冷却用ガスの流量と、プラズマ源2の周縁領域に供給する冷却用ガスの流量とを互いに独立に制御することができる。
【0161】
図9の例では、冷却部材4は流路仕切部材44をさらに含んでいる。
図10は、冷却部材4の構成の一例を概略的に示す断面図であり、方向D3に垂直な断面を示している。流路仕切部材44は、流路形成部材42の内部のガス空間40を複数のガス流路に仕切る部材である。
図9および
図10の例では、流路仕切部材44は流路形成部材42のカバー部421の下面に立設された円筒形状を有している。これによれば、流路形成部材42のガス空間40を、流路仕切部材44の内側の中央流路40Aと、流路仕切部材44と側壁422との間の周縁流路40Bとに仕切ることができる。
【0162】
中央流路40Aはプラズマ源2の中央領域と方向D3において対向しており、周縁流路40Bはプラズマ源2の周縁領域と方向D3において対向する。
図10の例では、基板Wが二点鎖線で示されている。この二点鎖線は、処理ユニット130においてプラズマ発生装置1が第2処理位置に位置する状態での基板Wを示している。
図10から理解できるように、プラズマ源2の中央領域は、プラズマ発生装置1が第2処理位置に位置する状態で、基板Wの上面の中央領域(第1中央領域に相当)と方向D3において対向する。プラズマ源2の周縁領域は、プラズマ発生装置1が第2処理位置に位置する状態で、基板Wの上面の周縁領域(第1周縁領域に相当)と方向D3において対向する。
【0163】
給気口411Aは中央流路40Aにおいて開口する。よって、給気口411Aから流出した冷却用ガスは、中央流路40Aを流れてプラズマ源2の中央領域に衝突する。
図9の例では、流路仕切部材44はプラズマ源2に当接しておらず、プラズマ源2の中央領域に衝突した冷却用ガスは流路仕切部材44とプラズマ源2との間を通過し、排気路424から外部に排気される。
【0164】
給気口411B1,411B2は周縁流路40Bにおいて開口する。よって、給気口411B1,411B2から流出した冷却用ガスは、周縁流路40Bを流れてプラズマ源2の周縁領域に衝突する。プラズマ源2の周縁領域に衝突した冷却用ガスは排気路424から外部に排気される。
【0165】
図9および
図10の例では、流路仕切部材44が設けられているので、給気口411Aから流出した冷却用ガスをより確実にプラズマ源2の中央領域に供給することができ、給気口411B1,411B2から流出した冷却用ガスをより確実にプラズマ源2の周縁領域に供給することができる。
【0166】
図9の例では、中央流路40Aには整流部材43Aが設けられ、周縁流路40Bには整流部材43Bが設けられている。整流部材43A,43Bは整流部材43と同様に複数の貫通孔43aを有している。整流部材43Aは円板形状を有しており、その側面が流路仕切部材44の内周面に固定される。整流部材43Bはリング状の板状形状を有し、その外周面が側壁422の内周面に固定され、その内周面が流路仕切部材44の外周面に固定される。
【0167】
給気口411Aから流出した冷却用ガスは整流部材43Aを通じて整流され、プラズマ源2の中央領域に供給される。給気口411B1,411B2から流出した冷却用ガスは整流部材43Bを通じて整流され、プラズマ源2の周縁領域に供給される。
【0168】
図9の例では、温度測定部6として温度測定部6A,6Bが設けられている。温度測定部6Aはプラズマ源2の中央領域の温度を測定し、温度測定部6Bはプラズマ源2の周縁領域の温度を測定する。つまり、温度測定部6Aは、給気口411Aから流出される冷却用ガスの供給先の領域の温度を測定し、温度測定部6Bは、給気口411B1,411B2から流出される冷却用ガスの供給先の領域の温度を測定する。
【0169】
制御部90は、温度測定部6Aによって測定された測定温度に基づいて流量調整部53Aを制御して、プラズマ源2の中央領域に供給する冷却用ガスの流量を制御する。また、制御部90は、温度測定部6Bによって測定された測定温度に基づいて流量調整部53Bを制御して、プラズマ源2の周縁領域に供給する冷却用ガスの流量を制御する。
【0170】
これによれば、プラズマ源2の中央領域および周縁領域の温度を個別に制御することができる。例えば、制御部90は、プラズマ源2の中央領域の温度と周縁領域の温度との差が低減するように、流量調整部53A,53Bを制御する。具体的には、制御部90は温度差が所定の温度差基準値よりも小さくなるように、流量調整部53A,53Bを制御する。これにより、プラズマ源2の温度分布をさらに均一化することができる。
【0171】
ところで、基板Wの上面に形成される処理液の液膜Fは、表面張力等の諸要因に起因して、基板Wの周縁で盛り上がる場合がある。
図11は、基板Wの構成の一例を概略的に示す図である。
図11に例示するように、基板Wの周縁領域上の液膜Fの厚みは、基板Wの中央領域上の液膜Fの厚みよりも大きい。液膜Fの厚みが大きい場合、プラズマ発生装置1から供給された活性種が基板Wの上面の近傍に到達しにくいため、カロ酸が基板Wの上面に到達しにくい。よって、基板Wの周縁領域でのレジストの除去が不足する場合もある。このような基板Wの周縁領域の処理不足を抑制するためには、より多くの活性種を基板Wの周縁領域に供給することが望ましい。つまり、液膜Fが基板Wの周縁領域で盛り上がる場合には、基板Wの中央領域に供給される活性種よりも多くの活性種を周縁領域に供給することが望ましい。
図11の例では、基板Wに供給される活性種を模式的に矢印で示しており、その活性種の多寡を矢印の間隔で示している。
【0172】
そこで、制御部90は基板Wの周縁領域に対向するプラズマ源2の周縁領域の温度が、基板Wの中央領域に対向するプラズマ源2の中央領域の温度よりも高くなるように、流量調整部53A,53Bを制御してもよい。温度が高いほど、より多くのプラズマが発生するので、プラズマ源2の周縁領域の周辺では、プラズマ源2の中央領域よりもプラズマが多く発生する。よって、プラズマ源2の周縁領域の周辺では活性種がより多く発生する。
【0173】
これによれば、基板Wの周縁領域上の処理液の液膜Fに対して、基板Wの中央領域上の液膜Fよりも多くの活性種を供給することができる。よって、厚みの大きい基板Wの周縁領域上の液膜F中でよりカロ酸を多く発生させることができ、たとえ、液膜Fの厚みが大きくても、カロ酸が基板Wの上面に十分に作用することができる。したがって、基板Wの周縁領域における処理不足(レジストの除去不足)を抑制または回避することができる。
【0174】
なお、上述の例では、プラズマ源2の中央領域および周縁領域にそれぞれ供給する冷却用ガスの流量を個別に制御した。しかしながら、プラズマ源2を区画する領域は必ずしも中央領域および周縁領域に限らない。例えば、平面視において、プラズマ源2を配列方向D2に沿って二等分してもよい。要するに、冷却部材4が、プラズマ源2のうち複数の領域にそれぞれ冷却用ガスを供給する複数の給気口411を有し、制御部90が各領域に供給される冷却用ガスの流量を個別に制御すればよい。つまり、各給気口411に繋がる配管上に流量調整部53が設けられ、各流量調整部53が制御部90によって個別に制御されればよい。これにより、プラズマ源2の各領域の温度を個別に制御することができる。例えば、平面視においてプラズマ源2を2次元的に複数に分割した各領域に対応して、給気口411を設け、各給気口411から流出する冷却用ガスの流量を個別に制御してもよい。
【0175】
また制御部90は既述のようにプラズマ源2の各領域の温度の差が小さくなるように、各冷却用ガスの流量を調整してもよい。あるいは、制御部90はプラズマ源2の温度分布が所定の温度分布となるように、各冷却用ガスの流量を調整してもよい。例えば、基板Wの上面のレジストに注入された不純物(イオン)の密度分布にばらつきがある場合がある。不純物の注入量の大きい領域のレジストは、小さい領域に比べて除去されにくいので、不純物の密度が高い領域は、レジストの除去が困難であり、不純物の密度が低い領域は、レジストの除去が容易である。このようなレジスト除去が容易な容易領域およびレジスト除去が困難な困難領域は、基板Wごとに予め決まっており、その情報は、作業員または基板Wの一連の処理工程における上流側の装置によって制御部90に入力される。そこで、制御部90は、基板Wの困難領域と方向D3において対向するプラズマ源2の領域の温度が、基板Wの容易領域と方向D3において対向するプラズマ源2の領域の温度よりも高くなるように、各給気口411から流出される冷却用ガスの流量を個別に制御してもよい。
【0176】
なお
図9の例では、1つのガス供給源54のみが図示されているものの、プラズマ発生装置1Aにおいても、冷却用ガスとして第1ガスと第2ガスとの混合ガスを採用してもよい。この場合、給気口411Aから流出される第1ガスの流量を、給気口411B1,411B2から流出される第1ガスの流量と独立して制御すればよい。また、給気口411Aから流出される第2ガスの流量を、給気口411B1,411B2から流出される第2ガスの流量と独立して制御してもよい。
【0177】
これによれば、プラズマ源2の中央領域および周縁領域に対して、互いに独立して制御された流量で第1ガスおよび第2ガスを供給することができる。
【0178】
<プラズマ発生装置1B>
図12は、プラズマ発生装置1および冷却ガス供給部5の他の一例を概略的に示す断面図である。以下では、
図12のプラズマ発生装置1をプラズマ発生装置1Bと呼ぶ。プラズマ発生装置1Bはプラズマ源2Bと冷却部材4と温度測定部6とを含んでいる。プラズマ源2Bはプラズマ源2と同様にプラズマを発生させるものの、その具体的な構成がプラズマ源2と相違する。
【0179】
<プラズマ源>
図13は、プラズマ源2Bの構成の一例を概略的に示す平面図であり、
図14は、プラズマ源2Bの構成の一例を概略的に示す断面図である。
図14は、
図13のC-C断面を示している。
図12は、
図13のD-D断面に相当する。
図12から
図14に示されるように、プラズマ源2Bは第1電極部21と第2電極部22と仕切部材35とを含む。
【0180】
仕切部材35は、プラズマ源2の仕切部材33と同様に冷却空間と処理空間とを仕切るものの、仕切部材33とは異なって、各第1線状電極211および各第2線状電極221の両方を覆っている。言い換えれば、第1線状電極211および第2線状電極221の大部分は仕切部材35の内部に配置されている。
【0181】
仕切部材35は例えば石英およびセラミックス等の誘電体材料によって形成される。図示の例では、仕切部材35は板状形状を有しており、その厚み方向が方向D3に沿う姿勢で配置される。仕切部材35は処理面35a、冷却面35bおよび側面35cを有する。処理面35aおよび冷却面35bは、方向D3において互いに向かい合う面であり、例えば、方向D3に直交する平坦面である。側面35cは処理面35aの周縁および冷却面35bの周縁を繋ぐ面である。
図13の例では、仕切部材35は円板形状を有しているので、処理面35aおよび冷却面35bは円状の平面であり、側面35cは円筒面である。仕切部材35の処理面35aは処理空間に接する面であり、仕切部材35の冷却面35bは冷却空間に接する面である。仕切部材35の厚みは例えば5mm程度である。
【0182】
仕切部材35には複数の第1穴36および複数の第2穴37が形成される。各第1穴36は長手方向D1に沿って延在しており、その一方側の端が仕切部材35の側面35cにおいて開口する。各第1線状電極211は長手方向D1に沿って第1穴36に挿入される。このように仕切部材35が各第1線状電極211を覆うので、各第1線状電極211がプラズマにスパッタされることに起因して基板Wが汚染されることを防ぐことができる。
【0183】
各第2穴37は長手方向D1に沿って延在しており、その他方側の端が仕切部材35の側面35cにおいて開口する。各第2線状電極221は長手方向D1に沿って第2穴37に挿入される。このように仕切部材35が各第2線状電極221を覆うので、各第2線状電極221がプラズマにスパッタされることに起因して基板Wが汚染されることを防ぐことができる。
【0184】
図12の例では、複数の第1線状電極211および複数の第2線状電極221は同一平面上に設けられている。よって、複数の第1穴36および複数の第2穴37も同一平面上に形成されている。
【0185】
図12の例では、第1線状電極211と仕切部材35の処理面35aとの間隔は、第1線状電極211と仕切部材35の冷却面35bとの間隔よりも狭い。同様に、第2線状電極221と仕切部材35の処理面35aとの間隔は、第2線状電極221と仕切部材35の冷却面35bとの間隔よりも狭い。つまり、第1線状電極211および第2線状電極221は冷却面35bよりも処理面35aに近い位置に設けられている。よって、第1穴36および第2穴37も冷却面35bより処理面35aに近い位置に形成される。
【0186】
プラズマ発生装置1Bは、処理面35aが処理対象(ここでは基板W)を向く姿勢で配置される。処理面35a近傍のガスは後述のようにプラズマ発生装置1Bによってプラズマ化し、該プラズマによる活性種が処理対象に作用する。
【0187】
図13の例では、第1集合電極212および第2集合電極222は仕切部材35よりも外側に設けられている。よって、第1線状電極211の基端部は仕切部材35の側面35cから外側に突出して第1集合電極212に接続され、第2線状電極221の基端部は仕切部材35の側面35cから外側に突出して第2集合電極222に接続される。つまり、図示の例では、仕切部材35は各第1線状電極211のうち基端部以外の部分および各第2線状電極221のうち基端部以外の部分を覆う。
【0188】
第1集合電極212および第2集合電極222はプラズマ用の電源8に接続されており、この電源8の電圧出力により、第1線状電極211と第2線状電極221との間にプラズマ用の電界が生じる。上述の例では、第1線状電極211と処理面35aとの間隔および第2線状電極221と処理面35aとの間隔は狭いので、電界は処理面35a近傍のガスに作用しやすく、該ガスを容易にプラズマ化させることができる。
【0189】
一方で、上述の例では、第1線状電極211と冷却面35bとの間隔および第2線状電極221と冷却面35bとの間隔は広いので、電界は冷却面35b近傍のガスには作用しにくい。よって、基板Wの処理に寄与しない不要なプラズマの発生も抑制することができる。しかも、仕切部材35の冷却面35bと処理面35aとの間の厚みを大きくすることもできるので、仕切部材35の強度および剛性を向上させることができる。
【0190】
また上述の例では、単一の仕切部材35が第1線状電極211および第2線状電極221の両方を覆う。よって、プラズマ源2Bの構造は、第1線状電極211および第2線状電極221をそれぞれ覆う第1誘電体31および第2誘電体32を含むプラズマ源2に比して簡易である。特に上述の例では、仕切部材35の処理面35aは平坦であるので、第2誘電体32と仕切部材33とで段差形状を形成するプラズマ源2に比して、その形状がより簡易である。よって、処理対象である基板W上の処理液が揮発してプラズマ源2B(例えば処理面35a)に付着しても、プラズマ源2Bを洗浄して該処理液を除去することが容易である。
【0191】
<冷却部材>
図12に例示されたプラズマ発生装置1Bの冷却部材4は、プラズマ発生装置1の冷却部材4と同様である。ただし
図12の例では、冷却部材4の流路形成部材42は仕切部材35の冷却面35bの周縁部に取り付けられ、プラズマ源2とともにガス空間40を形成している。より具体的な一例として、流路形成部材42の側壁422が仕切部材35の冷却面35bの周縁部に対して不図示の取付部(例えば接着剤またはねじ止めなど)によって取り付けられる。
【0192】
冷却部材4の給気口411は、プラズマ発生装置1と同様にプラズマ源2Bの冷却面35bと方向D3において対向する位置に形成されており、冷却面35bに向かって開口している。
図12の例では、冷却部材4の排気路424は流路形成部材42の側壁422に形成されている。例えば、複数の排気路424が側壁422の周方向に沿って等間隔に配列される。給気口411からガス空間40に流入した冷却用ガスはプラズマ源2Bの冷却面35bに向かって流れ、プラズマ源2の冷却面35bに衝突した後に冷却面35bに沿って流れ、排気路424を通じて外部に排出される。これにより、プラズマ源2Bを空冷することができる。
【0193】
<温度測定部>
プラズマ発生装置1Bの温度測定部6もプラズマ発生装置1と同様である。すなわち、温度測定部6はプラズマ源2Bの温度を測定し、測定結果を示す電気信号を制御部90に出力する。
【0194】
このようなプラズマ発生装置1Bの動作例は、プラズマ発生装置1と同様である。よって、プラズマ発生装置1Bにおいてもプラズマ発生装置1と同様の効果を奏する。ただし、プラズマ源2Bは冷却空間においてほとんどプラズマを発生させない。もしプラズマ源2Bが冷却空間にプラズマを発生させたとしても、このプラズマは処理空間側のプラズマにほとんど影響を与えない。このため、冷却ガス供給部5が供給する冷却用ガスは専らプラズマ源2Bの冷却に利用される。
【0195】
<プラズマ発生装置1C>
図15は、プラズマ発生装置1および冷却ガス供給部5の他の一例を概略的に示す断面図である。以下では、
図15のプラズマ発生装置1をプラズマ発生装置1Cと呼ぶ。プラズマ発生装置1Cは、流路仕切部材44の有無という点でプラズマ発生装置1Bと相違する。プラズマ発生装置1Cの冷却部材4はプラズマ発生装置1Aと同様に、流路仕切部材44をさらに含んでいる。
【0196】
流路仕切部材44は、ガス空間40を複数のガス流路に仕切る部材であり、例えば、流路形成部材42のカバー部421の下面に立設される。
図15の例では、流路仕切部材44の下端はプラズマ源2Bの仕切部材35の冷却面35bに当接している。ここでは、冷却面35bは平坦面であるので、流路仕切部材44の下端面も平坦面である。流路仕切部材44はガス空間40を複数のガス流路に仕切る。具体的な一例として、流路仕切部材44は円筒形状を有しており、ガス空間40を中央流路40Aと周縁流路40Bとに仕切る。流路仕切部材44の下端面は例えば全周において冷却面35bに接する。
【0197】
図15の例では、流路形成部材42には、給気口411A,411B1,411B2が形成されるとともに、中央流路40A内のガスを排気するための排気路424Aと、周縁流路40B内のガスを排気するための排気路424Bが形成されている。
【0198】
排気路424Aは中央流路40Aに対応して設けられる。
図15の例では、排気路424Aは流路形成部材42のカバー部421に形成され、カバー部421を厚み方向に貫通する。排気路424Aの流入口(つまり、排気口)は、カバー部421の下面のうち中央流路40Aに面する領域に形成されている。よって、排気路424Aの排気口は中央流路40Aにおいて冷却面35bに向かって開口する。より具体的には、排気口の開口方向は、方向D3に沿う方向である。
図15の例では、複数の排気路424Aが設けられており、例えば、給気口411Aのまわりで等間隔に配列される。
【0199】
排気路424Bは周縁流路40Bに対応して設けられる。
図15の例では、排気路424Bは排気路424と同様に、流路形成部材42の側壁422に形成されている。
図15の例では、複数の排気路424Bが設けられており、例えば、周方向に沿って等間隔に配列される。
【0200】
以上のように、冷却部材4には、中央流路40Aに専用の給気口411Aおよび排気路424Aの排気口が形成され、また、周縁流路40Bに専用の給気口411B1,411B2および排気路424Bの排気口が形成される。
【0201】
このようなプラズマ発生装置1Cによれば、給気口411Aから中央流路40Aに供給された冷却用ガスはプラズマ源2Bの中央部を冷却しつつ、排気路424Aを通じて外部に排出される。上述の例では、流路仕切部材44の下端面は仕切部材35の冷却面35bに接触しているので、中央流路40Aに流入した冷却用ガスは周縁流路40Bにはほとんど流入しない。また、給気口411B1,411B2から周縁流路40Bに供給された冷却用ガスはプラズマ源2Bの周縁部を冷却しつつ、排気路424Bを通じて外部に排出される。同様に、周縁流路40Bに流入した冷却用ガスは中央流路40Aにはほとんど流入しない。
【0202】
このように冷却用ガスは中央流路40Aと周縁流路40Bとの間ではほとんど移動しないので、中央流路40Aを流れる冷却用ガスの流量と、周縁流路40Bを流れる冷却用ガスの流量を個別により正確に調整することができる。ひいては、プラズマ源2Bの中央部と周縁部との温度を個別により高い精度で制御することができる。
【0203】
なお、流路仕切部材44は仕切部材35の冷却面35bから若干離れていてもよい。この構造でも、冷却部材4には中央流路40Aに対応した排気路424Aが形成されているので、中央流路40A内の冷却用ガスを排気路424Aを通じて外部に排出できる。よって、中央流路40Aから周縁流路40Bへの冷却用ガスの流入を抑制できる。同様に、周縁流路40Bに対応した排気路424Bによって、周縁流路40Bから中央流路40Aへの冷却用ガスの流入を抑制することができる。もちろん、流路仕切部材44が仕切部材35の冷却面35bと当接していれば、中央流路40Aと周縁流路40Bとの間の冷却用ガスの移動をさらに抑制することができる。
【0204】
また、仕切部材35の冷却面35bが平坦面であれば、プラズマ発生装置1のように第1誘電体31と仕切部材33とで段差を形成するプラズマ源2に比して、その形状が簡易である。よって、流路仕切部材44の下端面を冷却面35bに密着させやすく、流路仕切部材44と冷却面35bとの間の隙間を容易に低減させることができる。逆に言えば、流路仕切部材44の下端面に複雑な形状を必要としない。よって、プラズマ発生装置1Cの製造コストを低減させることができる。
【0205】
<変形例>
プラズマの発光強度はプラズマ源2,2Bの温度に依存するので、制御部90は冷却用ガスの流量に基づいてプラズマの発光強度を制御してもよい。例えば、制御部90は、発光強度測定部(例えばカメラ)によって測定されたプラズマの発光強度に基づいて、発光強度が所定の強度範囲内となるように、冷却用ガスの流量を制御してもよい。プラズマ源2,2Bのうち複数の領域に対して個別に冷却用ガスの流量を制御すれば、プラズマ源2,2Bの各領域におけるプラズマの発光強度を個別に制御することもできる。
【0206】
また、プラズマ発生装置1,1Aにおいて、第1電極部21および第2電極部22は同一平面に設けられてもよい。この場合には、仕切部材33が設けられなくてもよい。
【0207】
また、例えば、プラズマ発生装置1B,1Cにおいて、第1電極部21および第2電極部22は方向D3において互いに異なる位置に設けられてもよい。具体的には、第1線状電極211および第2線状電極221は方向D3において互いに異なる位置に設けられてもよい。
【0208】
また、基板Wに対する処理は必ずしもレジスト除去処理に限らない。基板Wに対する処理として、金属膜の除去等、活性種により処理液の処理能力を向上させることができる全ての処理を採用することができる。また、必ずしも基板Wに処理液を供給する必要もない。例えば、プラズマを用いた処理として、基板Wの上面に対して直接にプラズマを作用させてもよい。当該処理の一例として、基板Wの表面改質処理を挙げることができる。
【0209】
以上のように、プラズマ発生装置1,1A~1C、プラズマ発生方法および処理ユニット(基板処理装置)130は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、このプラズマ発生装置1,1A~1C、プラズマ発生方法および処理ユニット130がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0210】
1,1A~1C プラズマ発生装置
11 基板保持部
12 ノズル
2,2B プラズマ源
211 第1線状電極
221 第2線状電極
33,35 仕切部材
33b,35b 冷却面
36 第1穴
37 第2穴
4 冷却部材
40 ガス空間
411,411A,411B1,411B2 給気口
42 流路形成部材
422 側壁
424,424A,424B 排気路
43 整流部材
44 流路仕切部材
6 温度測定部
90 制御部
S1,S3,S4 工程(ステップ)