(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146852
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】電池モジュール用緩衝スペーサ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20220928BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20220928BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20220928BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220928BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20220928BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20220928BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20220928BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20220928BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20220928BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20220928BHJP
H01M 50/249 20210101ALN20220928BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/293
H01M10/6555
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6557
H01M8/02
H01M8/2475
H01M50/204 401H
H01M50/262 E
H01M50/249
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158741
(22)【出願日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2021046877
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】片山 和孝
(72)【発明者】
【氏名】森原 康滋
(72)【発明者】
【氏名】山下 昂輝
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
5H126
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE04
5H031KK08
5H040AA14
5H040AY03
5H040CC25
5H040LL01
5H126AA15
5H126AA28
5H126FF08
5H126FF10
5H126GG02
5H126GG18
5H126JJ03
5H126JJ08
(57)【要約】
【課題】正常動作時において冷却機能と変形に伴う隙間変動吸収機能とを有するととともに、異常発熱時において他の電池セルに熱的影響を及ぼすことを抑制できる電池モジュール用緩衝スペーサを提供する。
【解決手段】緩衝スペーサ101は、板バネにより形成され、少なくとも2回の折り返し部を有して形成されたスペーサ本体110を備える。スペーサ本体110は、第一電池セル2aに面接触する第一端板111と、第二電池セル2bまたは支持部材3a,3bに面接触する第二端板112と、第一端板111における第一接触面111aの裏面に対して流体流通層110aを介して対向し、第二端板112における第二接触面112aの裏面に対して距離を有して対向し、かつ、第一電池セル2aからの輻射熱を遮る少なくとも1つの遮熱中間板113と、折り返し部を構成する複数の弾性部114,115とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電池セルと第二電池セルとの隙間または前記第一電池セルと支持部材との隙間に配置され、少なくとも前記第一電池セルの膨張および収縮に伴う隙間変動を吸収する電池モジュール用緩衝スペーサであって、
板バネにより形成され、少なくとも2回の折り返し部を有して形成されたスペーサ本体を備え、
前記スペーサ本体は、
前記第一電池セルに面接触する第一接触面を有する第一端板と、
前記第二電池セルまたは前記支持部材に面接触する第二接触面を有する第二端板と、
前記第一端板における前記第一接触面の裏面に対して流体流通層を介して対向し、前記第二端板における前記第二接触面の裏面に対して距離を有して対向し、かつ、前記第一電池セルからの輻射熱を遮る少なくとも1つの遮熱中間板と、
前記折り返し部を構成する複数の弾性部と、
を備える、電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項2】
前記電池モジュール用緩衝スペーサの周囲には、流体流通空間が形成され、
前記電池モジュール用緩衝スペーサは、前記流体流通層と前記流体流通空間とを連通可能に形成され、前記流体流通層と前記流体流通空間との間で対流を生じさせるように構成されている、請求項1に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項3】
前記流体流通空間は、前記電池モジュールの外枠を構成する筐体の内部空間の一部である、請求項2に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項4】
前記遮熱中間板は、一方の前記折り返し部から他方の前記折り返し部へ向かう方向に延在するリブを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項5】
前記スペーサ本体は、さらに、
前記遮熱中間板における前記第一端板に対向する面の裏面に対して距離を有して対向し、前記第二端板における前記第二接触面の裏面に対して距離を有して対向し、前記遮熱中間板より熱伝導による伝熱量が少ない低熱伝導中間板を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項6】
前記遮熱中間板は、孔を有さない板状に形成され、
前記低熱伝導中間板は、孔を有する板状に形成された、請求項5に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項7】
前記弾性部は、孔を有さない、請求項6に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項8】
前記低熱伝導中間板は、一方の前記折り返し部から他方の前記折り返し部へ向かう方向に延在するリブを有する、請求項5~7のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項9】
前記スペーサ本体は、前記第一端板から前記第二端板に至る全長に亘って同一幅に形成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項10】
前記スペーサ本体は、表面に遮熱膜を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項11】
前記遮熱膜は、前記スペーサ本体の全ての表面に形成される、請求項10に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項12】
前記遮熱膜は、前記第一端板のうち前記第一電池セルと接触する側の表面、および、前記第二端板のうち前記第二電池セルと接触する側の表面の少なくとも一方に形成される、請求項10に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項13】
前記スペーサ本体は、
前記流体流通層を形成する一方部材の表面に遮熱膜を形成し、
前記流体流通層を形成する他方部材の表面に熱放射膜を形成する、請求項10に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項14】
前記第一端板のうち前記第一電池セルと接触する側の表面、または、前記第二端板のうち前記第二電池セルと接触する側の表面には、前記第一電池セルまたは前記第二電池セルと非接触となる凹所が形成される、請求項1~13のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項15】
前記凹所は、複数形成され、かつ、前記第一端板または前記第二端板の周囲と連通不能に形成される、請求項14に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項16】
前記凹所は、前記第一端板または前記第二端板の周囲と連通可能な溝である、請求項14に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項17】
さらに、前記スペーサ本体に接触し、前記スペーサ本体より低融点材料により成形され、伝導熱を融解熱に変換する融解部材を備える、請求項1~16のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項18】
前記融解部材は、前記第一端板に対して非接触である、請求項17に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項19】
前記融解部材は、前記遮熱中間板に接触する、請求項18に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項20】
前記スペーサ本体は、金属の板バネにより形成される、請求項1~19のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項21】
前記スペーサ本体は、樹脂の板バネにより形成される、請求項1~19のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項22】
前記遮熱中間板は、平板状に形成される、請求項1~21のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項23】
前記遮熱中間板は、一方の前記折り返し部から他方の前記折り返し部に向かって波状に形成される、請求項1~21のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項24】
前記スペーサ本体は、少なくとも2回の前記折り返し部を有して九十九折り状に形成される、請求項1~23のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【請求項25】
前記スペーサ本体は、少なくとも2回の前記折り返し部を有して扁平渦巻状に形成される、請求項1~23のいずれか1項に記載の電池モジュール用緩衝スペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール用緩衝スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを積層した電池モジュールにおいて、電池セルは、充電によって膨張し、放電によって収縮する。そこで、電池セルの膨張と収縮による変形を吸収するため、隣接する電池セルの間にスペーサを配置することが知られている。また、電池セルは、発熱するため、冷却することが必要である。
【0003】
特許文献1には、一対の加圧板と、一対の加圧板の間に配置されたC字状のバネ部材とを備えるスペーサが記載されている。C字状のバネ部材の弾性により、電池セルの変形を吸収して、電池セルを加圧することができる。さらに、一対の加圧板の間に冷却流体を流通させることで、電池セルを冷却することができる。
【0004】
特許文献2には、ゴム状弾性体からなる熱伝導シートを、電池セルと冷却部材との間に配置し、さらに、隣接する電池セルの間に配置することが記載されている。これにより、電池セルを冷却するとともに、電池セルの変形を吸収することができる。
【0005】
特許文献3には、隣接する電池セルの間に冷却流体を流通するスペーサを配置し、電池セルの表面に遮熱部材を設けることが記載されている。これにより、電池セルを冷却するとともに、電池セルの変形を吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-170140号公報
【特許文献2】特開2019-079780号公報
【特許文献3】特開2021-005486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池セルの正常動作時において、スペーサには、発熱した電池セルを冷却する機能と、電池セルの膨張および収縮に伴う隙間変動を吸収する機能が求められる。さらに、電池セルの一部が異常発熱した場合に、他の電池セルに熱的影響を及ぼさないことも重要である。従来におけるスペーサは、電池セルの正常動作時には十分な効果を発揮する。しかし、電池セルの異常発熱の場合に対しては、検討の余地がある。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、電池セルの正常動作時において冷却機能と変形に伴う隙間変動吸収機能とを有するととともに、電池セルの異常発熱時において他の電池セルに熱的影響を及ぼすことを抑制できる電池モジュール用緩衝スペーサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
第一電池セルと第二電池セルとの隙間または前記第一電池セルと支持部材との隙間に配置され、少なくとも前記第一電池セルの膨張および収縮に伴う隙間変動を吸収する電池モジュール用緩衝スペーサであって、
板バネにより形成され、少なくとも2回の折り返し部を有して形成されたスペーサ本体を備え、
前記スペーサ本体は、
前記第一電池セルに面接触する第一接触面を有する第一端板と、
前記第二電池セルまたは前記支持部材に面接触する第二接触面を有する第二端板と、
前記第一端板における前記第一接触面の裏面に対して流体流通層を介して対向し、前記第二端板における前記第二接触面の裏面に対して距離を有して対向し、かつ、前記第一電池セルからの輻射熱を遮る少なくとも1つの遮熱中間板と、
前記折り返し部を構成する複数の弾性部と、
を備える、電池モジュール用緩衝スペーサにある。
【発明の効果】
【0010】
緩衝スペーサにおけるスペーサ本体は、板バネにより折り返し部を有する形状に形成されており、折り返し部を構成する弾性部を有する。弾性部の弾性変形により、第一電池セルの膨張および収縮に伴う隙間変動を吸収することができる。さらに、スペーサ本体は、第一電池セルに面接触する第一端板と、第二電池セルまたは支持部材に面接触する第二端板と、第一端板と第二端板との間に位置する少なくとも1つの遮熱中間板とを備える。つまり、スペーサ本体は、少なくとも2回の折り返し部を有し、かつ、少なくとも3枚の板部材を備える。そして、第一端板と遮熱中間板との間に、流体流通層が形成されている。従って、流体流通層にて流体が流通することにより、第一電池セルを冷却することが可能となる。このように、緩衝スペーサは、電池セルの正常動作時において、冷却機能と変形に伴う隙間変動吸収機能とを有する
【0011】
さらに、第一電池セルが異常発熱をした場合に、第一電池セルからの輻射熱が、第一端板と遮熱中間板との間における流体流通層を通過する際に、流体流通層の流体により冷却される。ただし、第一電池セルからの輻射熱は、流体流通層を通過して遮熱中間板に到達し得る。ここで、遮熱中間板は、第一電池セルからの輻射熱を遮ることができる。従って、第一電池セルからの輻射熱は、流体流通層を通過した後に、遮熱中間板によって遮熱することができ、遮熱中間板よりも輻射熱の伝達方向における下流側に伝達されることを抑制できる。従って、第一電池セルの異常発熱時において、緩衝スペーサが熱伝達を抑制することができるため、他の電池セルなどに熱的影響を及ぼすことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】緩衝スペーサを適用した電池モジュールを示す図であって、電池セルが膨張していない状態を示す図である。
【
図2】
図1に示す電池モジュールにおいて、電池セルの充電時における膨張状態を示す図である。
【
図3】実施形態1の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図4】実施形態2の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図5】実施形態3の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図6】実施形態4の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図7】実施形態5の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図8】
図7に示す緩衝スペーサを右から見た図である。
【
図9】実施形態5の変形態様の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図10】実施形態6の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図12】実施形態6の変形態様の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図13】実施形態7の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図15】実施形態8の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図16】実施形態9の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図17】実施形態10の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図18】実施形態11の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図19】実施形態12の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【
図20】実施形態13の緩衝スペーサの拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
電池モジュール1の全体構成について
図1および
図2を参照して説明する。電池モジュール1は、例えば、自動車用や家庭用におけるリチウムイオン二次電池などの蓄電池、燃料電池システムのセルスタックなどを例にあげることができる。電池モジュール1は、
図1に示すように、積層された複数の電池セル2と、支持部材3と、複数の緩衝スペーサ4とを備える。
【0014】
電池セル2は、例えば、直方体の扁平状に形成されている。個々の電池セル2が扁平面の法線方向に配列されている。例えば、電池セル2は、水平方向に配列されている。電池セル2は、直方体の扁平箱形状に形成された筐体21と、筐体21の内部に巻回された電極体22とを備える。筐体21は、例えば、アルミニウムなどの金属、もしくは、放熱性および耐熱性が良好な硬質樹脂などにより成形されている。電極体22は、正極電極と、負極電極と、正極電極と負極電極との間に挟まれたセパレータとを備え、扁平状に巻回されている。
【0015】
図2に示すように、電極体22は、充電に伴って発熱し、主として扁平面法線方向に膨張する。電極体22は、放電に伴って膨張量が減少する。従って、電極体22を収容する筐体21は、充電時に、扁平面法線方向に膨張する。特に、筐体21が直方体の扁平箱形状に形成されているため、筐体21の扁平面が湾曲凸状に膨張変形する。電池セル2の放電時には、電極体22の膨張量が減少することに伴って、筐体21の扁平面は、理想的には、平面状に復帰する。このように、電池セル2の筐体21は、充放電により膨張と収縮を繰り返す。
【0016】
支持部材3は、複数の電池セル2を、電池セル2の積層方向の両端から支持する。つまり、支持部材3は、各電池セル2が充電によって膨張した場合に各電池セル2に対して反力を付与することにより、電池セル2を基準状態(膨張していない状態)に戻すように作用する。
【0017】
支持部材3は、例えば、第一支持部材3a、第二支持部材3bおよび連結部材3cを備える。ただし、支持部材3の構成は、本例に限られず、例えば箱型の筐体など種々の態様を適用することができる。支持部材3は、拘束力を発揮することができれば良く、硬質樹脂、金属などにより成形される。
【0018】
支持部材4は、例えば、閉塞された空間を形成するような筐体とすることもできる。筐体は、電池モジュール1の外枠を構成する。この場合、支持部材4としての筐体の内部空間は、筐体の外部に対して全面において区画されている。
【0019】
第一支持部材3aは、L字状に形成されており、水平方向に配列された複数の電池セル2を載置する台座部分と、複数の電池セル2の配列方向の第一端側(
図1の右側)を支持する部分とを備える。第二支持部材3bは、例えば平板状に形成されており、複数の電池セル2の配列方向において第一端の反対である第二端側(
図1の左側)に配置される。従って、配列された複数の電池セル2は、第一支持部材3aと第二支持部材3bとにより、配列方向に挟まれる状態となる。連結部材3cは、第一支持部材3aと第二支持部材3bとを連結する。
【0020】
緩衝スペーサ4は、複数の電池セル2の配列方向において、隣接する電池セル2の隙間、電池セル2と第一支持部材3aとの隙間、電池セル2と第二支持部材3bとの隙間のそれぞれに配置される。緩衝スペーサ4は、隙間を形成する両部材に接触した状態で配置される。
図1においては、緩衝スペーサ4は、全ての隣接する電池セル2の間に配置する場合を例にあげるが、一部の隣接する電池セル2の間に配置しないようにしても良い。
【0021】
緩衝スペーサ4は、弾性材料により成形されている。緩衝スペーサ4は、自身の弾性変形により、電池セル2の膨張および収縮に伴う隙間変動を吸収する。そして、緩衝スペーサ4は、
図1に示すように、電池セル2の膨張量が小さい場合において、電池セル2に接触することにより電池セル2を弾性支持する。また、緩衝スペーサ4は、
図2に示すように、電池セル2の充電に伴う膨張時において、電池セル2を弾性支持するとともに、電池セル2の放電に伴う膨張量減少時に電池セル2に対して押圧力を付与する。このように、緩衝スペーサ4は、電池セル2の正常動作時において、電池セル2の変形に伴う隙間変動吸収機能を発揮する。
【0022】
さらに、緩衝スペーサ4が配置される領域、すなわち緩衝スペーサ4が占有する領域が、冷却機能を発揮できるように、緩衝スペーサ4は、冷却用の流体が流通可能な流体流通層4a(以下、「内部空間層4a」と称する)を有している。つまり、緩衝スペーサ4が占有する領域において、冷却用の流体を流通させることができる。従って、緩衝スペーサ4は、電池セル2の正常動作時において、隙間変動吸収機能に加えて、冷却機能を発揮する。
【0023】
さらに、緩衝スペーサ4が各隙間に配置された状態において、緩衝スペーサ4の周囲には、流体流通空間5(以下、「周囲空間5」と称する)が形成されている。特に、周囲空間5は、緩衝スペーサ4のうち、隙間を形成する方向を中心軸とした外側全周に形成されている。複数の電池セル2が水平方向に配置されている状態において、電池セル2の配列方向から見た場合に、周囲空間5は、緩衝スペーサ4の上下左右の全方位に形成されている。この周囲空間5は、緩衝スペーサ4の全周に形成されているのが好ましいが、少なくとも上方領域および側方領域に形成されていれば良い。例えば、支持部材3が電池モジュール1の外枠を構成する筐体である場合、周囲空間5は、筐体の内部空間の一部を構成する。
【0024】
そして、上述したように、緩衝スペーサ4が占有する領域には、内部空間層4aが形成されている。さらに、緩衝スペーサ4が占有する領域における内部空間層4aと緩衝スペーサ4の周囲に位置する周囲空間5とが連通可能となるように、緩衝スペーサ4が形成されている。
【0025】
従って、緩衝スペーサ4が占有する内部空間層4aに存在する流体が加熱された場合、当該加熱流体が周囲空間5へ流出し、反対に、緩衝スペーサ4の周囲空間5に存在する低温流体が、緩衝スペーサ4が占有する内部空間層4aに流入するようにできる。つまり、内部空間層4aと周囲空間5との間で対流を生じさせることができる。当該対流により、緩衝スペーサ4が占有する内部空間層4aの流体温度を低下させることができる。このように、緩衝スペーサ4は、周囲空間5との協働によって、高い冷却機能を発揮する。
【0026】
また、緩衝スペーサ4は、電池セル2の異常発熱時において、周囲に熱的影響を及ぼすことを抑制する機能を有する。電池セル2は、異常発熱すると、極めて高温になる場合がある。この場合に、異常発熱した電池セル2の周囲、特に、他の電池セル2に熱的影響を及ぼさないことが重要である。そこで、緩衝スペーサ4は、電池セル2が異常発熱した場合に、他の電池セル2に伝達される熱を低減して、他の電池セル2に熱的影響を及ぼすことを抑制できる。
【0027】
(実施形態1)
図1に示す緩衝スペーサ4の例として、実施形態1の緩衝スペーサ101について
図3を参照して説明する。
図3には、緩衝スペーサ101の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。
【0028】
緩衝スペーサ101は、第一電池セル2aと第二電池セル2bとの隙間に配置され、第一電池セル2aおよび第二電池セル2bの膨張および収縮に伴う隙間変動を吸収する。緩衝スペーサ101は、スペーサ本体110を備える。
【0029】
スペーサ本体110は、板バネにより形成されており、2回の折り返し部を有して形成される。本形態においては、スペーサ本体110は、九十九折り状(ジグザグ形状)に形成する。なお、本形態では、スペーサ本体110は、2回の折り返し部を有するが、3回以上の折り返し部を有するようにしても良い。スペーサ本体110は、金属、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、または、これらを主成分とする合金など、弾性率が高く、プレス加工などの成形加工性に優れた材料が好適である。
【0030】
スペーサ本体110は、第一端板111、第二端板112、遮熱中間板113、および、複数の弾性部114,115を備える。スペーサ本体110は、第一端板111から第二端板112に至る全長に亘って同一幅に形成される。つまり、第一端板111、第二端板112、遮熱中間板113、および、複数の弾性部114,115は、全て同一幅に形成される。
【0031】
第一端板111は、スペーサ本体110の扁平厚み方向の一方端に位置し、第一電池セル2aの扁平面に面接触する第一接触面111aを有する。第一端板111は、平面状板に形成されている。第一接触面111aは、第一電池セル2aに非接着で接触させても良いし、接着させても良い。従って、第一端板111は、第一電池セル2aが発熱した場合に、第一電池セル2aの熱が伝達される。なお、第一端板111は、全長に亘って平面状に形成する場合を例にあげるが、スペーサ本体110の長手方向端部に対応する部位(
図3の上端部位)を、スペーサ本体110の扁平厚みの内側(
図3の左側)に向けて折り曲げ形成しても良い。
【0032】
第二端板112は、スペーサ本体110の扁平厚み方向の他方端に位置し、第二電池セル2bの扁平面に面接触する第二接触面112aを有する。第二端板112は、平面状板により形成されている。第二接触面112aは、第二電池セル2bに非接着で接触させても良いし、接着させても良い。なお、第二端板112は、全長に亘って平面状に形成する場合を例にあげるが、スペーサ本体110の長手方向端部に対応する部位(
図3の下端部位)を、スペーサ本体110の扁平厚みの内側(
図3の右側)に向けて折り曲げ形成しても良い。
【0033】
遮熱中間板113は、第一端板111における第一接触面111aの裏面に対して距離を有して配置されている。そして、遮熱中間板113と第一端板111との対向空間は、
図1の内部空間層4aとしての流体流通層110aを形成する。つまり、遮熱中間板113は、第一端板111に対して流体流通層110aを介して対向して配置されている。従って、流体流通層110aが、第一電池セル2aの輻射熱を冷却する効果を発揮する。
【0034】
さらに、遮熱中間板113は、第二端板112における第二接触面112aの裏面に対して距離を有して配置されている。そして、遮熱中間板113と第二端板112との対向空間は、
図1の内部空間層4aとしての流体流通層110bを形成する。つまり、遮熱中間板113は、第二端板112に対して流体流通層110bを介して対向して配置されている。従って、流体流通層110bが、第二電池セル2bの輻射熱を冷却する効果を発揮する。
【0035】
また、遮熱中間板113は、第一電池セル2aの扁平面の少なくとも中央部分を含む大部分の面に対向して配置されており、第一電池セル2aからの輻射熱を遮る。従って、第一電池セル2aからの輻射熱は、流体流通層110aにより冷却された後に遮熱中間板113に伝達されるが、遮熱中間板113から反対側の面に伝達される伝熱量を低減する。特に、遮熱中間板113は、孔を有さない板状に形成されている。従って、遮熱中間板113は、第一電池セル2aからの輻射熱を直接的に通過される部位を有していない。従って、遮熱中間板113は、高い遮熱効果を発揮する。
【0036】
さらに、遮熱中間板113は、第二電池セル2bの扁平面の少なくとも中央部分を含む大部分の面に対向して配置されており、第二電池セル2bからの輻射熱を遮る。従って、第二電池セル2bからの輻射熱は、流体流通層110bにより冷却された後に遮熱中間板113に伝達されるが、遮熱中間板113から反対側の面に伝達される伝熱量を低減する。特に、上述したように、遮熱中間板113は、孔を有さない板状に形成されている。従って、遮熱中間板113は、第二電池セル2bからの輻射熱を直接的に通過される部位を有していない。従って、遮熱中間板113は、高い遮熱効果を発揮する。
【0037】
ここで、本形態においては、遮熱中間板113は、第一端板111および第二端板112に対して平行な平面板としている。ただし、遮熱中間板113は、第一端板111および第二端板112に対して傾斜した平面板としても良い。ただし、遮熱中間板113を第一端板111および第二端板112に平行に配置することで、流体流通層110a,110bの厚み(遮熱中間板113の法線方向の厚み)を全範囲に亘って同程度とすることができる。つまり、流体流通層110a,110bによる冷却効果を、場所のばらつきなく発揮することができる。
【0038】
複数の弾性部114,115は、スペーサ本体110を形成する板バネの折り返し部を構成する。本形態においては、複数の弾性部114,115は、九十九折りの折り返し部を構成する。そして、複数の弾性部114,115は、第一電池セル2aおよび第二電池セル2bの膨張および収縮に伴い両者間の隙間が変動する場合に、弾性変形する。複数の弾性部114,115の弾性変形により、第一端板111が第一電池セル2aに対して押圧する状態にでき、かつ、第二端板112が第二電池セル2bに対して押圧する状態にできる。複数の弾性部114,115は、孔を有さない折り曲げ形状に形成されている。弾性部114,115は、孔を有さないことにより、高い弾性力を発揮することができる。
【0039】
弾性部114は、第一端板111の端部(
図3の下端)と遮熱中間板113の一端(
図3の下端)とを接続する。弾性部114は、両端が離れたU字状またはV字状に折り曲げられた板としている。これにより、遮熱中間板113を、第一端板111に対して平行に配置することができる。ただし、弾性部114は、両端が接触したU字状に折り曲げられた板とすることもでき、この場合、遮熱中間板113は、例えば、第一端板111に対して傾斜して配置すれば良い。
【0040】
上記のように、第一端板111と遮熱中間板113とは、弾性部114のみにより接続されている。つまり、第一端板111と遮熱中間板113とは、弾性部114が存在する部位以外の周縁部において、隙間を有している。従って、遮熱中間板113と第一端板111との対向空間である流体流通層110aは、緩衝スペーサ101の周囲における周囲空間5(
図1に示す)と連通可能となる。つまり、流体流通層110aと周囲空間5との間で、対流を生じさせることができる。
【0041】
弾性部115は、第二端板112の端部(
図3の上端)と遮熱中間板113の他端(
図3の上端)とを接続する。弾性部115は、両端が離れたU字状またはV字状に折り曲げられた板としている。これにより、遮熱中間板113を、第二端板112に対して平行に配置することができる。ただし、弾性部115は、両端が接触したU字状に折り曲げられた板とすることもでき、この場合、遮熱中間板113は、例えば、第二端板112に対して傾斜して配置すれば良い。
【0042】
上記のように、第二端板112と遮熱中間板113とは、弾性部115のみにより接続されている。つまり、第二端板112と遮熱中間板113とは、弾性部115が存在する部位以外の周縁部において、隙間を有している。従って、遮熱中間板113と第二端板112との対向空間である流体流通層110bは、緩衝スペーサ101の周囲における周囲空間5(
図1に示す)と連通可能となる。つまり、流体流通層110bと周囲空間5との間で、対流を生じさせることができる。
【0043】
緩衝スペーサ101が上述したスペーサ本体110を備えることによる効果を説明する。スペーサ本体110は、板バネにより九十九折り状に形成されており、折り返し部を構成する弾性部114,115を有する。弾性部114,115の弾性変形により、第一電池セル2aおよび第二電池セル2bの膨張および収縮に伴う隙間変動を吸収することができる。
【0044】
さらに、スペーサ本体110は、第一電池セル2aに面接触する第一端板と、第二電池セル2bに面接触する第二端板112と、第一端板111と第二端板112との間に位置する遮熱中間板113とを備える。つまり、スペーサ本体110は、九十九折りにより形成された3枚の板部材を備える。
【0045】
そして、第一端板111と遮熱中間板113との間に、流体流通層110aが形成されている。従って、流体流通層110aにて流体が流通することにより、第一電池セル2aを冷却することが可能となる。また、第二端板112と遮熱中間板113との間に、流体流通層110bが形成されている。従って、流体流通層110bにて流体が流通することにより、第二電池セル2bを冷却することが可能となる。このように、緩衝スペーサ101は、第一電池セル2aおよび第二電池セル2bの正常動作時において、冷却機能と変形に伴う隙間変動吸収機能とを有する。
【0046】
さらに、第一電池セル2aが異常発熱をした場合に、第一電池セル2aからの輻射熱が、第一端板111と遮熱中間板113との間における流体流通層110aを通過する際に、流体流通層110aの流体により冷却される。ただし、第一電池セル2aからの輻射熱は、流体流通層110aを通過して遮熱中間板113に到達し得る。ここで、遮熱中間板113は、第一電池セル2aからの輻射熱を遮ることができる。
【0047】
従って、第一電池セル2aからの輻射熱は、流体流通層110aを通過した後に、遮熱中間板113によって遮熱することができ、遮熱中間板113よりも輻射熱の伝達方向における下流側に伝達されることを抑制できる。従って、第一電池セル2aの異常発熱時において、緩衝スペーサ101が熱伝達を抑制することができるため、第二電池セル2bや周囲の部材などに熱的影響を及ぼすことを抑制できる。
【0048】
特に、内部空間層4aである流体流通層110a,110bは、緩衝スペーサ4の周囲空間5に連通している。従って、内部空間層4aである流体流通層110a,110bと周囲空間5との間で、流体を対流させることができる。つまり、内部空間層4aである流体流通層110a,110bにおける加熱流体を周囲空間5に流出させることができ、さらに、周囲空間5の低温流体を内部空間層4aである流体流通層110a,110bに流入することができる。このような対流により、高い冷却機能を発揮することができる。
【0049】
さらに、第一電池セル2aの熱は、輻射熱の他に、スペーサ本体110を伝って熱伝導する。つまり、第一電池セル2aから第二電池セル2bへの熱伝導経路は、第一端板111、弾性部114、遮熱中間板113、弾性部115、第二端板112の順となる。スペーサ本体110が、九十九折り状に形成されているため、熱伝導経路が、第一電池セル2aと第二電池セル2bとの離間距離に比べて非常に長い。スペーサ本体110における熱伝導経路を長くすることで、第一電池セル2aが異常発熱した場合であっても、第一電池セル2aから第二電池セル2bへの熱伝導による伝熱量を低減することできる。
【0050】
以上より、第一電池セル2aからの輻射熱は、流体流通層110aにより冷却され、さらに、遮熱中間板113により遮熱される。さらに、第一電池セル2aの熱は、スペーサ本体110の熱伝導による伝熱されるが、スペーサ本体110の伝熱距離を長くすることできるため、第二電池セル2bにおける伝熱量を非常に小さくできる。従って、第一電池セル2aの異常発熱時において、緩衝スペーサ101が熱輻射および熱伝導による熱伝達を抑制することができるため、第二電池セル2bや周囲の部材などに熱的影響を及ぼすことを抑制できる。
【0051】
また、スペーサ本体110は、第一端板111から第二端板112に至る全長に亘って同一幅に形成されている。これにより、遮熱中間板113による効果、流体流通層110a,110bによる効果を効果的に発揮させることができる。さらに、スペーサ本体110は、同一幅とすることで、プレス加工において材料の歩留まりが良好となる。また、より高い弾性率が必要な場合には、九十九折り状の構造を損なうことのない範囲で幅方向の端部(
図3の紙面法線方向の端部)を折り曲げたり、スペーサ本体110の長手方向に延びるリブ構造を形成したりすることができる。
【0052】
(実施形態2)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態2の緩衝スペーサ102について
図4を参照して説明する。
図4には、緩衝スペーサ102の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。
【0053】
本形態の緩衝スペーサ102は、スペーサ本体120を備える。スペーサ本体120は、実施形態1のスペーサ本体110と同様の形状を有する。つまり、スペーサ本体120は、第一端板111、第二端板112、遮熱中間板113、複数の弾性部114,115を備える。
【0054】
本形態のスペーサ本体120は、芯材121と、芯材121の表面に遮熱膜122とを備える。芯材121は、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、または、これらを主成分とする合金などの金属を適用することができる。また、芯材121は、高い曲げ弾性率を有する樹脂を適用することもできる。例えば、芯材121は、エポキシ、ポリマレイミド、ポリイミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂をガラス繊維に含侵させ、成形、熱硬化する。
【0055】
また、遮熱膜122は、芯材121の全ての表面に形成されている。従って、遮熱膜122は、スペーサ本体120の全ての表面に形成されている。遮熱膜122は、中外商工株式会社製のサーモレジン(登録商標)SV600を適用することができる。芯材121の遮熱機能が低い場合であっても、遮熱膜122により高い遮熱機能を発揮することができる。遮熱膜122は、芯材121から流体流通層110a,110bへ熱輻射も、流体流通層110a,110bから芯材121への熱吸収も抑制する機能を発揮する。
【0056】
従って、第一電池セル2aの熱が第一端板111に伝達されて、第一端板111から流体流通層110aへの熱輻射が抑制される。さらに、流体流通層110aから遮熱中間板113への熱吸収が抑制される。さらに、遮熱中間板113から流体流通層110bへの熱輻射が抑制される。さらに、流体流通層110bから第二端板112への熱吸収が抑制される。また、第二電池セル2bから第一電池セル2aへの方向の熱輻射も同様に抑制される。
【0057】
遮熱膜122は、芯材121のうち、少なくとも第一端板111および第二端板112の表面に形成されると良い。芯材121に鉄を適用する場合には、鉄が錆びると遮熱効果が低下するため、遮熱膜122に防錆効果を有する材料を適用すると良い。また、遮熱膜122は、短絡を抑制するために、絶縁性を有する塗料が望ましい。
【0058】
さらに、遮熱膜122は、スペーサ本体120の全面に形成されているため、第一端板111のうち第一電池セル2aと接触する側の第一接触面111aに形成されている。従って、遮熱膜122は、第一電池セル2aから第一端板111への熱伝達、および、第一端板111から第一電池セル2aへの熱伝達を抑制することができる。
【0059】
また、遮熱膜122は、第一端板111と遮熱中間板113との対向面に形成されている。従って、遮熱膜122は、第一端板111から流体流通層110aを越えて遮熱中間板113への熱放射による熱伝達、および、遮熱中間板113から流体流通層110aを超えて第一端板111への熱放射による熱伝達を抑制することができる。
【0060】
また、遮熱膜122は、第二端板112と遮熱中間板113との対向面に形成されている。従って、遮熱膜122は、第二端板112から流体流通層110bを越えて遮熱中間板113への熱放射による熱伝達、および、遮熱中間板113から流体流通層110bを超えて第二端板112への熱放射による熱伝達を抑制することができる。
【0061】
また、遮熱膜122は、第二端板112のうち第二電池セル2bと接触する側の第二接触面112aに形成されている。従って、遮熱膜122は、第二電池セル2bから第二端板112への熱伝達、および、第二端板112から第二電池セル2bへの熱伝達を抑制することができる。
【0062】
(実施形態3)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態3の緩衝スペーサ301について
図5を参照して説明する。
図5には、緩衝スペーサ301の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。
【0063】
本形態の緩衝スペーサ301は、スペーサ本体310を備える。スペーサ本体310は、実施形態2のスペーサ本体120と同様の形状を有する。つまり、スペーサ本体310は、第一端板111、第二端板112、遮熱中間板113、複数の弾性部114,115を備える。
【0064】
本形態のスペーサ本体310は、芯材311と、遮熱膜312,313とを備える。遮熱膜312は、第一端板111のうち第一電池セル2aと接触する側の表面(第一接触面111a)に形成されている。従って、遮熱膜312は、第一電池セル2aから第一端板111への熱伝達、および、第一端板111から第一電池セル2aへの熱伝達を抑制することができる。
【0065】
また、遮熱膜313は、第二端板112のうち第二電池セル2bと接触する側の表面(第二接触面112a)に形成されている。従って、遮熱膜313は、第二電池セル2bから第二端板112への熱伝達、および、第二端板112から第二電池セル2bへの熱伝達を抑制することができる。
【0066】
(実施形態4)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態4の緩衝スペーサ302について
図6を参照して説明する。
図6には、緩衝スペーサ302の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。
【0067】
本形態の緩衝スペーサ302は、スペーサ本体320を備える。スペーサ本体320は、実施形態3のスペーサ本体310と同様の形状を有する。つまり、スペーサ本体320は、第一端板111、第二端板112、遮熱中間板113、複数の弾性部114,115を備える。
【0068】
本形態のスペーサ本体320は、芯材311と、接触面遮熱膜312,313と、流通層遮熱膜321,322と、熱放射膜323,324とを備える。芯材311および接触面遮熱膜312,313は、実施形態3における芯材311および遮熱膜312,313と同一構成である。
【0069】
流通層遮熱膜321は、流体流通層110aを形成する一方部材である第一端板111における流体流通層110a側の表面に形成されている。流通層遮熱膜322は、流体流通層110bを形成する一方部材である第二端板112における流体流通層110b側の表面に形成されている。
【0070】
熱放射膜323は、流体流通層110aを形成する他方部材である遮熱中間板113における流体流通層110a側の表面に形成されている。熱放射膜324は、流体流通層110bを形成する他方部材である遮熱中間板113における流体流通層110b側の表面に形成されている。
【0071】
流体流通層110aに着目した場合、第一端板111の表面には流通層遮熱膜321が形成され、遮熱中間板113の表面には熱放射膜323が形成されている。従って、遮熱中間板113に伝達された熱は、熱放射膜323を介して流体流通層110aに放射される。しかし、第一端板111の表面には流通層遮熱膜321が形成されているため、流体流通層110aに放射された熱が第一端板111に熱吸収されることは抑制されている。
【0072】
そうすると、流体流通層110aに放射された熱は、第一端板111に熱吸収されずに、流体流通層110aに滞留しようとする。ただし、流体流通層110aは、緩衝スペーサ302の周囲空間5(
図1に示す)と連通しているため、流体流通層110aと周囲空間5との間で対流する。従って、流体流通層110aに放射された熱が周囲空間5と対流することにより、冷却機能を発揮する。
【0073】
流体流通層110bに着目した場合、第二端板112の表面には流通層遮熱膜322が形成され、遮熱中間板113の表面には熱放射膜324が形成されている。従って、遮熱中間板113に伝達された熱は、熱放射膜324を介して流体流通層110bに放射される。しかし、第二端板112の表面には流通層遮熱膜322が形成されているため、流体流通層110bに放射された熱が第二端板112に熱吸収されることは抑制されている。
【0074】
そうすると、流体流通層110bに放射された熱は、第二端板112に熱吸収されずに、流体流通層110bに滞留しようとする。ただし、流体流通層110bは、緩衝スペーサ302の周囲空間5(
図1に示す)と連通しているため、流体流通層110bと周囲空間5との間で対流する。従って、流体流通層110bに放射された熱が周囲空間5と対流することにより、冷却機能を発揮する。
【0075】
熱放射膜323,324は、株式会社アサヒペン社製の耐熱塗料スプレー黒を適用することができる。また、熱放射膜323,324は、芯材311の表面に熱処理を施すことにより生成された酸化鉄膜を適用することもできる。
【0076】
(実施形態5)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態5の緩衝スペーサ303について
図7および
図8を参照して説明する。
図7および
図8には、緩衝スペーサ303の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。
【0077】
本形態の緩衝スペーサ303は、スペーサ本体330を備える。スペーサ本体330は、実施形態4のスペーサ本体320と同様の形状を有する。つまり、スペーサ本体330は、第一端板111、第二端板112、遮熱中間板113、複数の弾性部114,115を備える。
【0078】
本形態のスペーサ本体330は、芯材331と、流通層遮熱膜321,322と、熱放射膜323,324とを備える。流通層遮熱膜321,322および熱放射膜323,324は、実施形態4と同一構成である。
【0079】
芯材331において、第一端板111のうち第一電池セル2aと接触する側の表面に複数の凹所331aが形成される。複数の凹所331aは、それぞれ独立して形成されている。さらに、複数の凹所331aは、第一端板111の周囲と連通不能に形成される。
【0080】
また、芯材331において、第二端板112のうち第二電池セル2bと接触する側の表面に複数の凹所331bが形成される。複数の凹所331bは、それぞれ独立して形成されている。さらに、複数の凹所331bは、第二端板112の周囲と連通不能に形成される。
【0081】
複数の凹所331aにより、第一端板111は、第一電池セル2aに接触する面積を小さくされている。つまり、複数の凹所331aが、第一電池セル2aから第一端板111への熱伝達、および、第一端板111から第一電池セル2aへの熱伝達を抑制する機能を発揮する。
【0082】
また、複数の凹所331bにより、第二端板112は、第二電池セル2bに接触する面積を小さくされている。つまり、複数の凹所331bが、第二電池セル2bから第二端板112への熱伝達、および、第二端板112から第二電池セル2bへの熱伝達を抑制する機能を発揮する。
【0083】
(実施形態5の変形態様)
実施形態5の変形態様の緩衝スペーサ303aについて
図9を参照して説明する。本形態の緩衝スペーサ303aは、スペーサ本体330aを備える。スペーサ本体330aは、第一端板111、第二端板112、遮熱中間板113、複数の弾性部114,115を備える。
【0084】
本形態のスペーサ本体330aは、芯材331と、接触面遮熱膜332,333と、流通層遮熱膜321,322と、熱放射膜323,324とを備える。芯材331、流通層遮熱膜321,322および熱放射膜323,324は、実施形態5と同一構成である。
【0085】
接触面遮熱膜332は、第一端板111のうち第一電池セル2aと接触する側の表面(第一接触面111a)に形成されている。そして、接触面遮熱膜332は、複数の凹所332aを有する。接触面遮熱膜332の複数の凹所332aは、芯材331の複数の凹所331aの表面に位置する。
【0086】
接触面遮熱膜333は、第二端板112のうち第二電池セル2bと接触する側の表面(第二接触面112a)に形成されている。そして、接触面遮熱膜333は、複数の凹所333aを有する。接触面遮熱膜333の複数の凹所333aは、芯材331の複数の凹所331bの表面に位置する。
【0087】
本形態においては、実施形態5と同様の効果に加えて、実施形態3と同様の効果を発揮する。
【0088】
(実施形態6)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態6の緩衝スペーサ304について
図10および
図11を参照して説明する。
図10および
図11には、緩衝スペーサ303の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。
【0089】
本形態の緩衝スペーサ304は、スペーサ本体340を備える。スペーサ本体340は、実施形態4のスペーサ本体320と同様の形状を有する。つまり、スペーサ本体340は、第一端板111、第二端板112、遮熱中間板113、複数の弾性部114,115を備える。
【0090】
本形態のスペーサ本体340は、芯材341と、流通層遮熱膜321,322と、熱放射膜323,324とを備える。流通層遮熱膜321,322および熱放射膜323,324は、実施形態4と同一構成である。
【0091】
芯材341において、第一端板111のうち第一電池セル2aと接触する側の表面に複数の凹所341aが形成される。複数の凹所341aは、それぞれ独立して形成されている。さらに、複数の凹所341aは、第一端板111の周囲空間5と連通可能な溝である。
【0092】
また、芯材341において、第二端板112のうち第二電池セル2bと接触する側の表面に複数の凹所341bが形成される。複数の凹所341bは、それぞれ独立して形成されている。さらに、複数の凹所341bは、第二端板112の周囲空間5と連通可能な溝である。
【0093】
複数の凹所341aにより、第一端板111は、第一電池セル2aに接触する面積を小さくされている。つまり、複数の凹所341aが、第一電池セル2aから第一端板111への熱伝達、および、第一端板111から第一電池セル2aへの熱伝達を抑制する機能を発揮する。さらに、複数の凹所341aは、周囲空間5と連通可能な溝である。従って、複数の凹所341aにおける流体は、周囲空間5との間で対流する。従って、高い冷却機能を発揮する。
【0094】
また、複数の凹所341bにより、第二端板112は、第二電池セル2bに接触する面積を小さくされている。つまり、複数の凹所341bが、第二電池セル2bから第二端板112への熱伝達、および、第二端板112から第二電池セル2bへの熱伝達を抑制する機能を発揮する。さらに、複数の凹所341bは、周囲空間5と連通可能な溝である。従って、複数の凹所341bにおける流体は、周囲空間5との間で対流する。従って、高い冷却機能を発揮する。
【0095】
さらに、芯材341において、遮熱中間板113は、一方の折り返し部を構成する弾性部114から他方の折り返し部を構成する弾性部115へ向かう方向に延在するリブ341cを有する。遮熱中間板113は、高い剛性を有することができる。第一電池セル2aおよび第二電池セル2bの膨張および収縮に伴い両者間の隙間が変動する場合に、遮熱中間板113は、リブ341cによって、撓み変形することを抑制できる。
【0096】
(実施形態6の変形態様)
実施形態6の変形態様の緩衝スペーサ304aについて
図12を参照して説明する。本形態の緩衝スペーサ304aは、スペーサ本体340aを備える。スペーサ本体340aは、第一端板111、第二端板112、遮熱中間板113、複数の弾性部114,115を備える。
【0097】
本形態のスペーサ本体340aは、芯材341と、接触面遮熱膜342,343と、流通層遮熱膜321,322と、熱放射膜323,324とを備える。芯材341、流通層遮熱膜321,322および熱放射膜323,324は、実施形態6と同一構成である。
【0098】
接触面遮熱膜342は、第一端板111のうち第一電池セル2aと接触する側の表面(第一接触面111a)に形成されている。そして、接触面遮熱膜342は、複数の凹所342aを有する。接触面遮熱膜342の複数の凹所342aは、第一端板111の周囲空間5と連通可能な溝である。接触面遮熱膜342の複数の凹所342aは、芯材341の複数の凹所341aの表面に位置する。
【0099】
接触面遮熱膜343は、第二端板112のうち第二電池セル2bと接触する側の表面(第二接触面112a)に形成されている。そして、接触面遮熱膜343は、複数の凹所343aを有する。接触面遮熱膜343の複数の凹所343aは、第二端板112の周囲空間5と連通可能な溝である。接触面遮熱膜343の複数の凹所343aは、芯材341の複数の凹所341bの表面に位置する。
【0100】
本形態においては、実施形態6と同様の効果に加えて、実施形態3と同様の効果を発揮する。
【0101】
(実施形態7)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態7の緩衝スペーサ103について
図13および
図14を参照して説明する。
図13および
図14には、緩衝スペーサ103の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。また、本形態の緩衝スペーサ103において、以下に説明しない構成については、実施形態1の緩衝スペーサ101と同様である。
【0102】
緩衝スペーサ103は、第一電池セル2aと支持部材3a,3bとの隙間に配置され、第一電池セル2aの膨張および収縮に伴う隙間変動を吸収する。緩衝スペーサ103は、スペーサ本体130を備える。
【0103】
スペーサ本体130は、板バネにより形成されており、3回の折り返し部を有して九十九折り状に形成される。なお、本形態では、スペーサ本体110は、3回の折り返し部を有するが、4回以上の折り返し部を有するようにしても良い。
【0104】
スペーサ本体130は、第一端板131、第二端板132、遮熱中間板133、低熱伝導中間板134、および、複数の弾性部135,136,137を備える。第一端板131は、第一電池セル2aの扁平面に面接触する第一接触面131aを有する。第二端板132は、支持部材3a,3bに面接触する第二接触面132aを有する。
【0105】
遮熱中間板133は、第一端板131における第一接触面131aの裏面に対して距離を有して配置されている。そして、遮熱中間板133と第一端板131との対向空間は、
図1の内部空間層4aとしての流体流通層130aを形成する。つまり、遮熱中間板133は、第一端板131に対して流体流通層130aを介して対向して配置されている。従って、流体流通層130aが、第一電池セル2aの輻射熱を冷却する効果を発揮する。さらに、遮熱中間板133は、第二端板132における第二接触面132aの裏面に対して距離を有して配置されている。
【0106】
また、遮熱中間板133は、第一電池セル2aの扁平面の少なくとも中央部分を含む大部分の面に対向して配置されており、第一電池セル2aからの輻射熱を遮る。従って、第一電池セル2aからの輻射熱は、流体流通層130aにより冷却された後に遮熱中間板133に伝達されるが、遮熱中間板133から反対側の面に伝達される伝熱量を低減する。特に、遮熱中間板133は、孔を有さない板状に形成されている。従って、遮熱中間板133は、第一電池セル2aからの輻射熱を直接的に通過される部位を有していない。従って、遮熱中間板133は、高い遮熱効果を発揮する。
【0107】
低熱伝導中間板134は、遮熱中間板133における第一端板131に対向する面の裏面に対して距離を有して対向する。そして、低熱伝導中間板134と遮熱中間板133との対向空間は、
図1の内部空間層4aとしての流体流通層130bを形成する。つまり、低熱伝導中間板134は、遮熱中間板133に対して流体流通層130bを介して対向して配置されている。従って、流体流通層130bが、第一電池セル2aの輻射熱を冷却する効果を発揮する。
【0108】
また、低熱伝導中間板134は、第二端板132における第二接触面132aの裏面に対して距離を有して対向して配置されている。つまり、低熱伝導中間板134と第二端板132との対向空間は、冷却効果を発揮する流体流通層130cを形成する。流体流通層130cは、
図1の内部空間層4aとして機能する。
【0109】
さらに、低熱伝導中間板134は、遮熱中間板133より熱伝導による伝熱量が少なくなるように形成されている。本形態では、低熱伝導中間板134は、
図14に示すように、孔134aを有する板状に形成されている。孔134aが形成されることにより、低熱伝導中間板134の材料の存在する部分において熱伝導の進行方向に直交する断面積が小さくなるため、熱伝導を低くすることができる。
【0110】
ここで、本形態においては、低熱伝導中間板134は、複数の円形の孔134aを有する場合を例にあげたが、1つの大きな孔、例えば、矩形の孔を有するようにしても良い。ただし、第一電池セル2aが変形した場合に、低熱伝導中間板134が、形状をある程度維持できる曲げ弾性率を有する必要がある。そこで、孔134aの大きさは、要求される曲げ弾性率に応じて決定されると良い。
【0111】
弾性部135は、第一端板131の端部(
図13の下端)と遮熱中間板133の一端(
図13の下端)とを接続する。弾性部136は、遮熱中間板133の他端(
図13の上端)と低熱伝導中間板134の一端(
図13の上端)とを接続する。弾性部137は、低熱伝導中間板134の他端(
図13の下端)と第二端板132の端部(
図13の下端)とを接続する。弾性部135,136,137の弾性変形により、第一端板131が第一電池セル2aを押圧する状態にできる。
【0112】
緩衝スペーサ103が上述したスペーサ本体130を備えることによる効果を説明する。スペーサ本体130は、実施形態1の緩衝スペーサ101のスペーサ本体110による効果を奏する。
【0113】
第一電池セル2aの熱は、輻射熱の他に、スペーサ本体130を伝って熱伝導する。第一電池セル2aから支持部材3a,3bへの熱伝導経路は、第一端板131、弾性部135、遮熱中間板133、弾性部136、低熱伝導中間板134、弾性部137、第二端板132の順となる。スペーサ本体130が、九十九折り状に形成されているため、熱伝導経路が、第一電池セル2aと支持部材3a,3bとの離間距離に比べて非常に長い。スペーサ本体130における熱伝導経路を長くすることで、第一電池セル2aが異常発熱した場合であっても、第一電池セル2aから支持部材3a,3bへの熱伝導による伝熱量を低減することできる。
【0114】
さらに、スペーサ本体130は、低熱伝導中間板134を備える。低熱伝導中間板134は、孔134aを有することにより、熱伝導率が小さい。従って、第一電池セル2aから支持部材3a,3bへの熱伝導による伝熱量が低減される。ここで、低熱伝導中間板134は、孔134aを有するため、輻射熱は、孔134aを通過することにより伝熱されやすくなる。しかし、遮熱中間板133が、低熱伝導中間板134よりも熱源である第一電池セル2a側に配置されている。従って、遮熱中間板133が、第一電池セル2aからの輻射熱を遮熱するため、低熱伝導中間板134が孔134aを有するとしても影響は小さい。
【0115】
(実施形態8)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態8の緩衝スペーサ104について
図15を参照して説明する。
図15には、緩衝スペーサ104の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。また、本形態の緩衝スペーサ104において、以下に説明しない構成については、実施形態1の緩衝スペーサ101と同様である。
【0116】
緩衝スペーサ104は、第一電池セル2aと第二電池セル2bとの隙間に配置され、第一電池セル2aおよび第二電池セル2bの膨張および収縮に伴う隙間変動を吸収する。緩衝スペーサ104は、スペーサ本体140および融解部材150を備える。
【0117】
スペーサ本体140は、第一端板141、第二端板142、第一遮熱中間板143、第二遮熱中間板144、複数の弾性部145,146,147を備える。第一端板141および第二端板142は、実施形態1の第一端板111および第二端板112と同一である。
【0118】
第一遮熱中間板143は、第一端板141における第一接触面141aの裏面に、
図1の内部空間層4aとしての流体流通層140aを介して対向して配置される。第二遮熱中間板144は、第二端板142における第二接触面142aの裏面に対して、
図1の内部空間層4aとしての流体流通層140bを介して対向して配置される。第一遮熱中間板143および第二遮熱中間板144は、実施形態1の遮熱中間板113と同様の機能を有する。第一遮熱中間板143と第二遮熱中間板144とは、対向領域140cを介して対向して配置される。
【0119】
弾性部145は、第一端板141の端部(
図15の下端)と第一遮熱中間板143の一端(
図15の下端)とを接続する。弾性部146は、第一遮熱中間板143の他端(
図15の上端)と第二遮熱中間板144の一端(
図15の上端)とを接続する。弾性部147は、第二遮熱中間板144の他端(
図15の下端)と第二端板142の端部(
図15の下端)とを接続する。
【0120】
複数の弾性部145,146,147の弾性変形により、第一端板141が第一電池セル2aに対して押圧する状態にでき、かつ、第二端板142が第二電池セル2bに対して押圧する状態にできる。複数の弾性部145,146,147は、孔を有さない折り曲げ形状に形成されている。弾性部145,146,147は、孔を有さないことにより、高い弾性力を発揮することができる。
【0121】
緩衝スペーサ104の融解部材150は、スペーサ本体140に接触し、スペーサ本体140より低融点材料により成形され、伝導熱を融解熱に変換する。本形態では、融解部材150は、第一遮熱中間板143と第二遮熱中間板144との対向領域140cに配置されている。特に、融解部材150は、第一遮熱中間板143と第二遮熱中間板144とに挟まれており、両者に接触して配置されている。
【0122】
融解部材150は、例えば、樹脂やはんだなどを適用できる。融解部材150には、熱伝達を許容する上限温度より低い融点を持つ材料が適用される。例えば、熱伝達を許容する上限温度を150℃に設定した場合には、融解部材150は、融点が150℃より低い温度となる樹脂やはんだなどを適用する。融解部材150は、例えば、上限温度を170℃とする場合にはポリプロピレンなどを適用し、上限温度を265℃とする場合はナイロン66などを適用する。
【0123】
つまり、融解部材150が配置される部位において、伝達される熱の温度が、150℃を超えている場合には、融解部材150の融解によって熱を吸収することができる。そして、融解部材150を超えて伝熱される伝熱量は、低減される。
【0124】
ここで、融解部材150と第一電池セル2aとの間には、流体流通層140aおよび第一遮熱中間板143が介在している。つまり、融解部材150は、第一端板141に対して非接触である。これにより、融解部材150に熱が伝達される前に、ある程度冷却することが可能となる。
【0125】
また、融解部材150は、第一遮熱中間板143に接触している。従って、融解部材150は、第一遮熱中間板143から直接熱が伝導される。第一遮熱中間板143から弾性部146を介して第二遮熱中間板144に熱伝導するのと並行して、融解部材150が、第一遮熱中間板143から熱伝導される。従って、第一遮熱中間板143から第二遮熱中間板144に熱伝導する伝熱量を低減することができる。
【0126】
加えて、融解部材150が、第一遮熱中間板143と第二遮熱中間板144の撓みを抑制することができるので、正常動作時では、高い弾性力を発揮することができる。また、融解部材150は、板状に形成し、第一遮熱中間板143と第二遮熱中間板144との間の大部分に配置するようにした。この他に、融解部材150を、棒状、点状など任意の形状とし、複数の融解部材150を、第一遮熱中間板143と第二遮熱中間板144との間に配置するようにしても良い。
【0127】
特に、はんだは、樹脂に比べて、融解熱量は高いが、質量が大きい。そこで、融解部材150としてはんだを用いる場合には、融解部材150を、第一遮熱中間板143と第二遮熱中間板144の間の全体に亘って配置せずに、一部領域のみに配置することで、質量増加を抑制しつつ、融解熱により伝熱量を低減することができる。
【0128】
(実施形態9)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態9の緩衝スペーサ105について
図16を参照して説明する。
図16には、緩衝スペーサ105の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。また、本形態の緩衝スペーサ105において、以下に説明しない構成については、実施形態7の緩衝スペーサ103と同様である。
【0129】
緩衝スペーサ105は、スペーサ本体130と融解部材160とを備える。スペーサ本体130は、実施形態7のスペーサ本体130と同一である。融解部材160は、実施形態8の融解部材150と同様の材料により成形される。
【0130】
本形態では、融解部材160は、低熱伝導中間板134と第二端板132との間に配置される。特に、融解部材160は、低熱伝導中間板134に接触している。ただし、融解部材160は、低熱伝導中間板134と第二端板132とに挟まれており、両者に接触して配置しても良い。
【0131】
また、融解部材160は、低熱伝導中間板134に接触している。従って、融解部材160は、低熱伝導中間板134から直接熱が伝導される。低熱伝導中間板134から弾性部137を介して第二端板132に熱伝導するのと並行して、融解部材160が、低熱伝導中間板134から熱伝導される。従って、低熱伝導中間板134から第二端板132に熱伝導する伝熱量を低減することができる。
【0132】
(実施形態10)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態10の緩衝スペーサ106について
図17を参照して説明する。
図17には、緩衝スペーサ106の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。また、本形態の緩衝スペーサ106において、以下に説明しない構成については、実施形態1の緩衝スペーサ101と同様である。
【0133】
緩衝スペーサ106は、スペーサ本体170を備える。スペーサ本体170は、第一端板171、第二端板172、遮熱中間板173、複数の弾性部174,175を備える。第一端板171、第二端板172、および、複数の弾性部174,175は、実施形態1のスペーサ本体110の対応する部材と同様である。遮熱中間板173と第一端板171との間には、
図1の内部空間層4aとしての流体流通層170aが形成され、遮熱中間板173と第二端板172との間には、
図1の内部空間層4aとしての流体流通層170bが形成される。
【0134】
遮熱中間板173は、平板状ではなく、一方の折り返し部から他方の折り返し部に向かって波状に形成される。これにより、遮熱中間板173の熱伝導経路を長くすることができる。
【0135】
(実施形態11)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態11の緩衝スペーサ107について
図18を参照して説明する。
図18には、緩衝スペーサ107の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。また、本形態の緩衝スペーサ107において、以下に説明しない構成については、実施形態7の緩衝スペーサ103と同様である。
【0136】
実施形態7の緩衝スペーサ103が、第一電池セル2aと支持部材3a,3bとの隙間に配置されるのに対して、本形態の緩衝スペーサ107は、第一電池セル2aと第二電池セル2bとの隙間に配置される。つまり、緩衝スペーサ103の両側に熱源が存在するため、本形態の緩衝スペーサ107は、実施形態7の緩衝スペーサ103を両側の熱源に対応するように変更したものである。
【0137】
本形態の緩衝スペーサ107は、スペーサ本体180を備える。スペーサ本体180は、第一端板181、第二端板182、第一遮熱中間板183、第二遮熱中間板184、低熱伝導中間板185、および、複数の弾性部186,187,188,189を備える。また、スペーサ本体180は、
図1の内部空間層4aとしての流体流通層180a,180b,180c,180dを備える。
【0138】
スペーサ本体180により、第一電池セル2aの熱が第二電池セル2b側へ伝達される伝熱量を低減することができ、さらに、第二電池セル2bから第一電池セル2a側へ伝達される伝熱量を低減することができる。
【0139】
(実施形態12)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態12の緩衝スペーサ108について
図19を参照して説明する。
図19には、緩衝スペーサ108の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。また、本形態の緩衝スペーサ108において、以下に説明しない構成については、実施形態8の緩衝スペーサ104と同様である。
【0140】
緩衝スペーサ108は、スペーサ本体190および複数の融解部材201,202,203を備える。スペーサ本体190は、第一接触面191aを有する第一端板191、第二接触面192aを有する第二端板192、第一遮熱中間板193、第二遮熱中間板194、複数の弾性部195,196,197を備える。第一端板191、第二端板192、第一遮熱中間板193、第二遮熱中間板194、複数の弾性部195,196,197は、実施形態8の第一端板141、第二端板142、第一遮熱中間板143、第二遮熱中間板144、複数の弾性部145,146,147と実質的に同一である。
【0141】
ただし、第一端板191は、全長に亘って平面状に形成されているのではなく、スペーサ本体190の長手方向端部に対応する端部191b(
図19の上端部位)を、スペーサ本体190の扁平厚みの内側(
図19の左側)に向けて折り曲げ形成されている。同様に、第二端板192は、スペーサ本体190の長手方向端部に対応する端部192b(
図19の上端部位)を、スペーサ本体190の扁平厚みの内側(
図19の右側)に向けて折り曲げ形成されている。端部191b,192bの折り曲げ形状は、湾曲した形状としても良いし、テーパ状としても良い。
【0142】
端部191b,192bの折り曲げ形状によって、電池セル2a,2bの挿入時、または、緩衝スペーサ108の挿入時に、電池セル2a,2bにキズが付くことを防止できる。さらに、端部191b,192bの折り曲げ形状が、リブ形状として機能し、板バネ強度を高くすることができる。
【0143】
そして、第一端板191と第一遮熱中間板193との間、第二端板192と第二遮熱中間板194との間、第一遮熱中間板193と第二遮熱中間板194との間のそれぞれに、
図1の内部空間層4aとしての流体流通層190a,190b,190cが形成されている。
【0144】
融解部材201,202,203は、弾性部195,196,197の折り曲げ内側領域に配置されている。融解部材201,202,203は、樹脂やはんだを適用できる。融解部材201,202,203を当該領域に配置することで、融解部材201,202,203は、融解熱により伝熱量を低減する機能に加えて、弾性部195,196,197の弾性力を補助する機能を発揮する。従って、緩衝スペーサ108は、融解部材201,202,203および弾性部195,196,197により、高い弾性力を発揮することができる。
【0145】
ところで、はんだは、樹脂に比べて、融解熱量は高いが、質量が大きい。そこで、融解部材201,202,203としてはんだを用いることで、質量増加を抑制しつつ、融解熱により伝熱量を低減することができる。
【0146】
(実施形態13)
図1に示す緩衝スペーサ4の他の例として、実施形態13の緩衝スペーサ109について
図20を参照して説明する。
図20には、緩衝スペーサ109の板厚および隙間を誇張して示しており、実際の板厚および隙間は小さい。また、本形態の緩衝スペーサ109において、以下に説明しない構成については、実施形態1の緩衝スペーサ101と同様である。
【0147】
緩衝スペーサ109は、スペーサ本体210を備える。スペーサ本体210は、板バネにより形成されており、2回の折り返し部を有して扁平渦巻状に形成される。なお、本形態では、スペーサ本体210は、2回の折り返し部を有するが、3回以上の折り返し部を有するようにしても良い。
【0148】
スペーサ本体210は、第一端板211、第二端板212、遮熱中間板213、および、複数の弾性部214,215を備える。スペーサ本体210は、第一端板211から遮熱中間板213に至る全長に亘って同一幅に形成される。つまり、第一端板211、第二端板212、遮熱中間板213、および、複数の弾性部214,215は、全て同一幅に形成される。
【0149】
第一端板211は、第一電池セル2aの扁平面に面接触する第一接触面211aを有する。第一端板211の端部211b、すなわち、スペーサ本体210の長手方向端部に対応する部位(
図20の上端部位)は、スペーサ本体210の扁平厚みの内側(
図20の左側)に向けて折り曲げ形成されている。第二端板212は、第二電池セル2bの扁平面に面接触する第二接触面212aを有する。遮熱中間板213は、第一端板211と第二端板212との間に配置される。
【0150】
複数の弾性部214,215は、扁平渦巻状の折り返し部を構成する。複数の弾性部214,215は、第一電池セル2aおよび第二電池セル2bの膨張および収縮に伴い両者間の隙間が変動する場合に、弾性変形する。弾性部214は、第一端板211の端部(
図20の下端)と第二端板212の端部(
図20の下端)とを接続する。弾性部215は、第二端板212の端部(
図20の上端)と遮熱中間板213の端部(
図20の上端)とを接続する。
【0151】
第一端板211と遮熱中間板213との間、第二端板212と遮熱中間板213との間のそれぞれには、
図1の内部空間層4aとしての流体流通層210a,210bが形成される。従って、本形態の緩衝スペーサ109によれば、実施形態1と同様に、遮熱中間板213による効果、流体流通層210a,210bによる効果を発揮する。
【0152】
(その他)
例えば、
図3に示す実施形態1の緩衝スペーサ101のスペーサ本体110が、遮熱中間板173が、第一電池セル2aの扁平面および第二電池セル2bの扁平面に対して傾斜して配置されるようにし、遮熱中間板173のみにより構成することもできる。この場合、遮熱中間板173が、遮熱機能を有するとともに、板バネとして弾性機能を有することになる。
【0153】
図10および
図11に示す実施形態6において、遮熱中間板113がリブ341cを有する構成を説明した。
図13、
図16、
図18に示す実施形態7,9,11のように、スペーサ本体130,180が低熱伝導中間板134,185を有する構成において、低熱伝導中間板134,185が上記同様のリブを有するようにしても良い。この場合、遮熱中間板133,183,184および低熱伝導中間板134,185がリブを有するように構成しても良い。また、遮熱中間板133,183,184はリブを有さずに、低熱伝導中間板134,185がリブを有するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0154】
1 電池モジュール
2,2a,2b 電池セル
3,3a,3b 支持部材
4,101,102,103,104,105,106,107,108,109,301,302,303,303a,304,304a 緩衝スペーサ
5 周囲空間(流体流通空間)
110,120,130,140,170,180,190,210,310,320,330,330a,340,340a スペーサ本体
4a,110a,110b,130a,130b,130c,140a,140b,170a,170b,180a,180b,180c,180d,190a,190b,190c,210a,210b 流体流通層
111,131,141,171,181,191,211 第一端板
111a,131a,141a,191a,211a 第一接触面
112,132,142,172,182,192,212 第二端板
112a,132a,142a,192a,212a 第二接触面
113,133,143,144,173,183,184,193,194,213 遮熱中間板
114,115,135,136,137,145,146,147,174,175,186,187,188,189,195,196,197,214,215 弾性部
134,185 低熱伝導中間板
150,160,201,202,203 融解部材