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特開2022-146857コンプレッサー制御装置及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146857
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】コンプレッサー制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
B60H1/32 623Z
B60H1/32 623G
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182157
(22)【出願日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036395
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫 知 完
(72)【発明者】
【氏名】金 昌 煥
(72)【発明者】
【氏名】李 相 勳
(72)【発明者】
【氏名】林 太 雄
(72)【発明者】
【氏名】金 眞 成
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211DA31
3L211EA41
3L211EA51
3L211EA56
3L211EA87
3L211FB05
3L211GA31
(57)【要約】
【課題】コンプレッサー制御回路の構成が単純化でき、部品数の削減及び原価の低減が可能なコンプレッサー制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】本発明によるコンプレッサー制御装置は、エアコンコンプレッサーのクラッチ接合及び解除を制御するために必要なエアコン作動状態の情報を検出するセンサーと、バッテリー電流を受けてクラッチ接合を行うクラッチ内の電磁石コイルと、センサーで検出されたエアコン作動状態の情報に基づいて、現在のエアコン作動状態がクラッチ接合可能条件又はクラッチ解除可能条件を満たすかを判定し、判定の結果による作動信号を出力するマイコン、及びマイコンが出力する作動信号により、オン(on)又はオフ(off)に作動してクラッチが接合又は解除されるように、電磁石コイルに対するバッテリー電流の供給を断続するスイッチを含む制御器と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンコンプレッサーのクラッチ接合及び解除を制御するために必要なエアコン作動状態の情報を検出するセンサーと、
バッテリー電流を受けてクラッチ接合を行う前記エアコンコンプレッサーのクラッチ内の電磁石コイルと、
前記センサーで検出されたエアコン作動状態の情報に基づいて、現在のエアコン作動状態がクラッチ接合可能条件又はクラッチ解除可能条件を満たすかを判定し、前記判定の結果による作動信号を出力するマイコン、及び前記マイコンが出力する作動信号により、オン(on)又はオフ(off)に作動して前記クラッチが接合又は解除されるように、前記電磁石コイルに対するバッテリー電流の供給を断続するスイッチを含む制御器と、を備えることを特徴とするコンプレッサー制御装置。
【請求項2】
前記電磁石コイルは、車両のIG2電源端に直接連結され、車両の始動をオン(key on)にした時、オン(on)状態の前記IG2電源端を通じてバッテリー電流が印加されるように設けられ、
前記スイッチは、前記電磁石コイルと接地端との間の回路に位置し、オン(on)又はオフ(off)の作動時に、前記電磁石コイルを通過した後、前記接地端に流れるバッテリー電流の通電経路を開閉させることを特徴とする、請求項1に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項3】
前記スイッチは、前記制御器の内部に前記マイコンと共に設置された半導体スイッチであることを特徴とする、請求項1に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項4】
前記センサーは、エアコンの冷媒圧を検出する冷媒圧センサーを含み、
前記制御器のマイコンは、
コンプレッサーのオフ状態で、
前記冷媒圧センサーで検出された冷媒圧が、予め設定された第1設定圧よりも高い場合、クラッチ接合可能条件を満たすと判定することを特徴とする、請求項1に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項5】
前記制御器のマイコンは、
前記検出された冷媒圧が前記第1設定圧以下である場合、クラッチ解除可能条件を満たすと判定し、
前記クラッチ解除可能条件を満たすと判定するか、又は前記電磁石コイルに印加されるバッテリー電流が予め設定された制限電流以上である場合、前記クラッチが解除されるように前記スイッチをオフ(off)させることを特徴とする、請求項4に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項6】
前記制御器のマイコンは、
前記クラッチ解除可能条件を満たすと判定した状態で、
前記冷媒圧センサーで検出された冷媒圧が、予め設定された第2設定圧(ここで、前記第2設定圧>前記第1設定圧)よりも高い場合、クラッチ接合可能条件を満たすと判定することを特徴とする、請求項5に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項7】
前記制御器のマイコンは、
前記コンプレッサーが過電流によりオフされた状態で、
予め定められた再作動条件を満たし、前記クラッチ接合可能条件を満たすと判定した場合、前記スイッチをオン(on)させて前記クラッチを再作動させることを特徴とする、請求項4又は6に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項8】
前記センサーは蒸発器の温度を検出する蒸発器温度センサーをさらに含み、
前記定められた再作動条件は、
今回のコンプレッサーの再作動が車両の始動後のコンプレッサーにおける最初の作動でないという条件、エアコンがオン(on)であるという条件、前記蒸発器温度センサーで検出された前記蒸発器の温度が予め設定された結氷臨界温度以上であるという条件を含むことを特徴とする、請求項7に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項9】
前記定められた再作動条件は、
前記冷媒圧センサーで検出された冷媒圧が、予め設定された圧力範囲以内であるという条件をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項10】
前記制御器のマイコンは、
前記定められた再作動条件を満たすと、一定時間が経過したか否かを判断し、前記一定時間が経過した状態で前記クラッチ接合可能条件を満たすと判定した場合、前記スイッチをオン(on)させてクラッチを再作動させることを特徴とする、請求項7に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項11】
前記制御器のマイコンにおいて、前記一定時間は外気温センサーで検出された外気温度に対応した故障診断遅延時間により決定されることを特徴とする、請求項10に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項12】
前記コンプレッサーが過電流によりオフされた状態は、
前記制御器のマイコンにより、
前記冷媒圧センサーで検出された冷媒圧が前記第1設定圧以下であるため、クラッチ解除可能条件を満たすと判定された後、前記スイッチがオフ(off)された状態であるか、又は
前記電磁石コイルに印加されるバッテリー電流が予め設定された制限電流以上であるため、前記スイッチがオフされた状態であることを特徴とする、請求項7に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項13】
前記センサーは、エアコン冷媒圧を検出する冷媒圧センサーを含み、
前記制御器のマイコンは、
コンプレッサーのオフ状態で、
前記冷媒圧センサーで検出された冷媒圧から設定データを用いて換算された前記クラッチの温度が、予め設定された第1設定温度よりも高い場合、クラッチ接合可能条件を満たすと判定することを特徴とする、請求項1に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項14】
前記制御器のマイコンは、
前記換算されたクラッチの温度が前記第1設定温度以下である場合、クラッチ解除可能条件を満たすと判定し、
前記クラッチ解除可能条件を満たすと判定されるか、又は前記電磁石コイルに印加されたバッテリー電流が予め設定された制限電流以上である場合、前記クラッチが解除されるように前記スイッチをオフ(off)させることを特徴とする、請求項13に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項15】
前記制御器のマイコンは、
前記クラッチ解除可能条件を満たすと判定した状態で、
前記冷媒圧センサーで検出された冷媒圧から換算された前記クラッチの温度が、予め設定された第2設定温度(ここで、前記第2設定温度>前記第1設定温度)よりも高い場合、クラッチ接合可能条件を満たすと判定することを特徴とする、請求項14に記載のコンプレッサー制御装置。
【請求項16】
エアコンコンプレッサーのクラッチ接合及び解除を制御するために必要なエアコン作動状態の情報がセンサーで検出される段階と、
制御器のマイコンが、前記センサーで検出された前記エアコン作動状態の情報に基づいて、現在のエアコン作動状態がクラッチ接合可能条件又はクラッチ解除可能条件を満たすかを判定し、前記判定の結果による作動信号を出力する段階と、
前記マイコンが出力する作動信号により、クラッチ内の電磁石コイルに対するバッテリー電流の供給を断続するスイッチがオン(on)又はオフ(off)に作動されて、前記クラッチが接合又は解除される段階と、を含むことを特徴とするコンプレッサー制御方法。
【請求項17】
前記センサーは、エアコンの冷媒圧を検出する冷媒圧センサーを含み、
前記制御器のマイコンは、
コンプレッサーのオフ状態で、
前記冷媒圧センサーで検出された冷媒圧が、予め設定された第1設定圧よりも高い場合、クラッチ接合可能条件を満たすと判定することを特徴とする、請求項16に記載のコンプレッサー制御方法。
【請求項18】
前記制御器のマイコンは、
前記検出された冷媒圧が、前記第1設定圧以下である場合、クラッチ解除可能条件を満たすと判定し、
前記クラッチ解除可能条件を満たすと判定するか、又は前記電磁石コイルに印加されるバッテリー電流が予め設定された制限電流以上である場合、前記クラッチが解除されるように前記スイッチをオフ(off)させることを特徴とする、請求項17に記載のコンプレッサー制御方法。
【請求項19】
前記制御器のマイコンは、
前記クラッチ解除可能条件を満たすと判定した状態で、
前記冷媒圧センサーで検出された冷媒圧が、予め設定された第2設定圧(ここで、前記第2設定圧>前記第1設定圧)よりも高い場合、クラッチ接合可能条件を満たすと判定することを特徴とする、請求項18に記載のコンプレッサー制御方法。
【請求項20】
前記制御器のマイコンは、
前記コンプレッサーが過電流によりオフされた状態で、
予め定められた再作動条件を満たし、前記クラッチ接合可能条件を満たすと判定した場合、前記スイッチをオン(on)させて前記クラッチを再作動させることを特徴とする、請求項17又は19に記載のコンプレッサー制御方法。
【請求項21】
前記センサーは蒸発器の温度を検出する蒸発器温度センサーをさらに含み、
前記定められた再作動条件は、
今回のコンプレッサーの再作動が車両の始動後のコンプレッサーにおける最初の作動でないという条件、エアコンがオン(on)であるという条件、前記蒸発器温度センサーで検出された前記蒸発器の温度が予め設定された結氷臨界温度以上であるという条件を含むことを特徴とする、請求項20に記載のコンプレッサー制御方法。
【請求項22】
前記定められた再作動条件は、
前記冷媒圧センサーで検出された冷媒圧が、予め設定された圧力範囲以内であるという条件をさらに含むことを特徴とする、請求項21に記載のコンプレッサー制御方法。
【請求項23】
前記制御器のマイコンは、
前記定められた再作動条件を満たすと、一定時間が経過したか否かを判断し、前記一定時間が経過した状態で前記クラッチ接合可能条件を満たすと判定した場合、前記スイッチをオン(on)させてクラッチを再作動させることを特徴とする、請求項20に記載のコンプレッサー制御方法。
【請求項24】
前記制御器のマイコンにおいて、前記一定時間は外気温センサーで検出された外気温度に対応した故障診断遅延時間により決定されることを特徴とする、請求項23に記載のコンプレッサー制御方法。
【請求項25】
前記コンプレッサーが過電流によりオフされた状態は、
前記制御器のマイコンにより、
前記冷媒圧センサーで検出された冷媒圧から換算されたクラッチの温度が、予め設定された第1設定温度以下であるため、クラッチ解除可能条件を満たすと判定された後、前記スイッチがオフ(off)された状態であるか、又は
前記電磁石コイルに印加されるバッテリー電流が予め設定された制限電流以上であるため、前記スイッチがオフ(off)された状態であることを特徴とする、請求項20に記載のコンプレッサー制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサー制御装置及び制御方法に関し、より詳細には、コンプレッサー制御回路の構成が単純化でき、部品数の削減及び原価の低減が可能になるコンプレッサー制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には室内を暖房したり冷房する空調装置が搭載される。車両における空調装置は、外部温度の変化に関係なく室内温度を常に適正温度に保持することによって、快適な室内環境を提供する。
【0003】
車両用空調装置は、冷媒を循環させるエアコンシステムを含む。エアコンシステムは、冷媒を圧縮するコンプレッサー(compressor)、コンプレッサーにより圧縮された冷媒を凝縮して液化させるコンデンサ(condenser)、コンデンサにより凝縮されて液化された冷媒を膨張させる膨張バルブ(expansion valve)、そして膨張バルブで膨張された冷媒を蒸発させながら冷媒の蒸発潜熱を用いて、車両の室内に送風される空気を冷却する蒸発器(evporator)を主要な構成要素として含む。
【0004】
エアコンシステムでは、夏季の冷房モードのとき、コンプレッサーにより圧縮された高温、高圧の気相冷媒をコンデンサにより液状に凝縮した後、膨張バルブと蒸発器を経て再び圧縮機に循環させる。この過程で膨張バルブにより膨張された低温、低圧の液状冷媒が蒸発器に供給され、蒸発器で蒸発される冷媒との熱交換により冷却された空気が車両の室内に吐き出され、これによって室内の冷房が行われる。
【0005】
一方、車両におけるエアコンのコンプレッサーの制御と電力供給は、制御器及びジャンクションボックス(junction box)内のリレースイッチにより行われている。また、車両のエアコンシステムにおいて、バッテリーの電力を使用しながらコンプレッサーが選択的に作動できるようにする部分は、コンプレッサーのクラッチである。
【0006】
図1は、従来のコンプレッサー制御回路を示す図である。図1には、コンプレッサーの作動を制御するための制御器10とリレースイッチ20、及びコンプレッサー30のクラッチ31を含む制御回路が示されている。
【0007】
コンプレッサー30のクラッチ31には電磁石コイル32が備えられるが、このクラッチ31は、電流により誘起された起磁力を用いて、コンプレッサー30とエンジン(図示せず)を動力伝達可能に連結する。すなわち、エアコンがオン(on)になると、制御器10によりコンプレッサー30のクラッチ31が接合されて、コンプレッサー30のプーリー(図示せず)に伝えられたエンジンクランク軸(図示せず)の回転力がコンプレッサー軸(図示せず)に伝えられ、結局、エンジン回転力により冷媒を圧縮するコンプレッサー30の作動が行われる。
【0008】
リレースイッチ20は、コンプレッサー30のクラッチ31にバッテリー9の電流を選択的に供給するためのものであって、リレースイッチ20は、制御器10が出力する作動信号(リレー駆動信号)によりオン(on)に作動され、クラッチ31の電磁石コイル32に対する電力供給を断続することによって、コンプレッサー30の作動が制御されることを可能にする。
【0009】
この際、制御器10は、コンプレッサーの作動条件及び外部条件に基づいて作動可否を判断した後、リレースイッチ20に作動信号を送信する。すなわち、作動信号によりリレースイッチ20のコイル側が励磁され、これによりリレースイッチ20の接点側が閉まることで、この接点側からクラッチ31内部の電磁石コイル32にバッテリー9の電流が印加される。
【0010】
このように電磁石コイル32に電流が印加されると、電磁石の磁気力が作用してクラッチ31が接合され、これによりプーリーに伝えられたエンジン回転力がコンプレッサー軸に伝達可能になり、コンプレッサー30が作動する。また、リレースイッチ20のコイル側に作動信号(励磁電流)が印加されず、接点側が開いてクラッチ31の電磁石コイル32にバッテリー9の電流が流れないと、電磁石の磁気力が失われてクラッチが解除され、エンジンとコンプレッサーとの間の連結が解除される。
【0011】
また、クラッチを解除するとき、サージ(surge)電圧(逆起電圧)問題を解決するためのダイオード21、33がリレースイッチ20側とクラッチ31側にそれぞれ設けられる。制御器10は、コンプレッサーの作動(クラッチ接合)及び未作動(クラッチ解除)のための信号のみを出力し、リレースイッチ20が電力供給の経路を断続する(リレースイッチの接点側を開閉する)ことによって、コンプレッサー30を制御している。
【0012】
この際、リレースイッチ20で発生するスパーク(spark)や接点側の前、後端で発生する開閉性サージ電圧を低減するためのダイオード21及び接地線22が必要である。また、負荷端になるコンプレッサー30のクラッチ31でも、リレースイッチ20の開閉時における電流の変動による逆起電圧を除去するためのダイオード33及び回路構成が必要であり、これが回路の構成を複雑にしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002-106473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来の問題点を解決するために創出されたものであり、本発明の目的は、コンプレッサー制御回路の構成が単純化でき、部品数の削減及び原価の低減が可能になるコンプレッサー制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるコンプレッサー制御装置は、エアコンコンプレッサーのクラッチ接合及び解除を制御するために必要なエアコン作動状態の情報を検出するセンサーと、バッテリー電流を受けてクラッチ接合を行う前記エアコンコンプレッサーのクラッチ内の電磁石コイルと、前記センサーで検出された前記エアコン作動状態の情報に基づいて、現在のエアコン作動状態がクラッチ接合可能条件又はクラッチ解除可能条件を満たすかを判定し、前記判定の結果による作動信号を出力するマイコン、及び前記マイコンが出力する作動信号により、オン(on)又はオフ(off)に作動して前記クラッチが接合又は解除されるように、前記電磁石コイルに対するバッテリー電流の供給を断続するスイッチを含む制御器と、備えることを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるコンプレッサー制御方法は、エアコンコンプレッサーのクラッチ接合及び解除を制御するために必要なエアコン作動状態の情報がセンサーで検出される段階と、制御器のマイコンが、前記センサーで検出された前記エアコン作動状態の情報に基づいて、現在のエアコン作動状態がクラッチ接合可能条件又はクラッチ解除可能条件を満たすかを判定し、前記判定の結果による作動信号を出力する段階と、前記マイコンが出力する作動信号により、クラッチ内の電磁石コイルに対するバッテリー電流の供給を断続するスイッチがオン(on)又はオフ(off)に作動されて、前記クラッチが接合又は解除される段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるコンプレッサー制御装置及び制御方法によれば、コンプレッサー制御回路の構成が単純化でき、部品数の削減及び原価の低減が可能になる効果を奏する。より詳細には、エアコンコンプレッサーのクラッチにバッテリー電流を選択的に印加するための既存のジャンクションボックス内のリレースイッチとサージ電圧の防止のためのダイオードを省くことができ、これに関連した回路及びワイヤーリングも省くことができる。また、負荷端になるコンプレッサーのクラッチにおいてもリレースイッチの開閉時の電流変動による逆起電圧及びサージ電圧を除去するためのダイオードを省くことができ、これに関連した回路及びワイヤーリングも省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来のコンプレッサー制御装置を示す構成図である。
図2】本発明の一実施形態による制御装置を示す構成図である。
図3A】本発明の一実施形態による制御方法において、コンプレッサーのクラッチ作動条件の判定ロジックを示すフローチャートである。
図3B】本発明の一実施形態による制御方法において、コンプレッサーのクラッチ作動条件の判定ロジックを示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態による制御方法において、冷媒圧によりクラッチ温度が設定された設定データの例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態による制御方法において、エアコンコンプレッサーの再作動ロジックを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態で提示される特定の構造又は機能的説明は、単に本発明の概念に基づく実施形態を説明する目的で例示されたものであり、本発明の概念に基づく実施形態は様々な形態で実施可能である。また、本明細書で説明された実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更物、均等物、又は代替物を含むものと理解される。
【0020】
一方、本発明において、第1及び/又は第2などの用語は、多様な構成要素を説明するために使用されるが、構成要素は、上記用語で限定されない。上記用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用され、例えば、本発明の概念に基づく技術範囲内で、第1構成要素は第2構成要素と命名され、同様に、第2構成要素は第1構成要素と命名され得る。
【0021】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いる、又は「接続されて」いると記載された場合、その他の構成要素に直接連結されているか、又は接続されていてもよいが、中間にさらに他の構成要素が存在してもよい。その反面、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるか、又は「直接接触されて」いると記載された場合には、中間にさらに他の構成要素が存在しないものと理解される。構成要素間の関係を説明するための他の表現、すなわち、「~の間に」と「まさに~間に」、又は「~に隣接する」と「~に直接隣接する」などの表現も同様に解釈される。
【0022】
明細書全体を通じて同一の参照番号は同一の構成要素を示す。本明細書で使用される用語は実施形態を説明するためのものであって、本発明を限定するためのものではない。本明細書において、単数形は、文言において特に記載しない限り、複数形を含む。本明細書で使用される「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」は、記載された構成要素、段階、動作、及び/又は素子が一つ以上の他の構成要素、段階、動作、及び/又は素子の存在又は追加を排除しない。
【0023】
本発明は、コンプレッサー制御回路の構成が単純化でき、部品数の削減、及び原価の低減が可能になるコンプレッサー制御装置及び制御方法に関する。本発明では、コンプレッサー作動のためのジャンクションボックス内のリレースイッチ及びこれに関連した回路を省く代わりに、負荷端(コンプレッサークラッチの電磁石コイル)の後側における制御器内のスイッチをコンプレッサー制御のための回路の開閉手段として用いることによって、回路を従来よりも単純化及び最適化できる。
【0024】
また、本発明においては、制御器(ECU)の内部でクラッチの電力供給制御のための回路開閉を直接行い、制御器でクラッチの接合が可能か否かを判断した後、クラッチの作動を直接制御する。
【0025】
そのために、制御器が許容可能なコンプレッサークラッチ(クラッチの電磁石コイル)の抵抗値及び電力値が選定される必要があり、電流値が許容値(制限電流)以上になる問題を判断及び解決した後、コンプレッサーを再作動させるためのロジックが必要である。のみならず、クラッチの抵抗値の下限値に達する温度を推定し、クラッチの接合が可能か否かを判断するロジックを追加することによって、回路の安全性を確保し、実際の接合可能範囲を拡大することが必要である。
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態による制御装置を示す構成図である。本発明では、従来の制御回路(図1を参照)において、ジャンクションボックス内のコンプレッサークラッチ用のリレースイッチ20とサージ電圧防止のためのダイオード21が省かれ、コンプレッサー30のクラッチ31においてもダイオード33などが省かれる。
【0027】
その代わり、図2に示すように、本発明では、制御器(ECU)10の内部に、コンプレッサー30のクラッチ31に対する電力供給を断続して回路を開閉するためのスイッチ12が構成される。すなわち、制御器10の内部のスイッチ12を用いて、コンプレッサー30のクラッチ31に対する電力供給を断続できるようにする。ここで、コンプレッサー30のクラッチ31において、電力が供給される部分、すなわち負荷になる部分は、電磁石コイル32である。
【0028】
本発明の一実施形態において、スイッチ12は、制御器10内のマイコン11が出力する作動信号により開閉されるスイッチング素子でよく、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のような半導体スイッチでよい。
【0029】
そして、車両には、始動オン(key on)になると、オン(IG2 on)状態になるIG2電源端1が備えられ、本発明では、クラッチ31の電磁石コイル32を車両のIG2電源端1に直接連結する。これにより、電磁石コイル32が車両のIG2電源端1を通じてバッテリー電源(B+)に連結される構造となる。このように電磁石コイル32をIG2電源端1を通じてバッテリー電源(B+)に連結することによって、始動オフ(key off)状態で短絡の発生によるバッテリーの放電を防止することができる。
【0030】
図2の実施形態のように、バッテリー9と負荷になるクラッチ31の電磁石コイル32とが回路により直接連結されている場合、バッテリーが放電される恐れがある。したがって、本発明では、始動オン(key on)の状態でのみバッテリー9の電流が供給されるように、バッテリー電源(B+)とクラッチ31の電磁石コイル32との間にIG2電源端1を配置する。
【0031】
すなわち、クラッチ31の電磁石コイル32をIG2電源端1に連結して、クラッチの電磁石コイルがIG2電源端1を通じてバッテリー電源(B+)に連結されるようにする。IG2電源端1は、始動オン(key on、すなわち、IG2 on)状態でのみ回路が閉じて、車両の電源であるバッテリー電源(B+)を車両内の負荷に供給するようになっている。これにより、始動オン(key on)状態でのみ、IG2電源端1を通じてバッテリー9の電流がクラッチ31の電磁石コイル32に流れる。
【0032】
もちろん、電磁石コイル32にバッテリー9の電流が流れると、クラッチ31が接合されてプーリーに伝えられたエンジンの回転力がコンプレッサー軸に伝えられ、これにより冷媒を圧縮するコンプレッサー30の作動が行われる。エアコンは、始動オン(key on、すなわちIG2 on)された状態でのみ作動するため、IG2電源端1に負荷のクラッチ31の電磁石コイル32を連結することは差し支えない。
【0033】
また、クラッチ31の電磁石コイル32は、制御器10内のスイッチ12の一側端子に連結され、この制御器10内のスイッチ12の他側端子は接地端13に連結される。すなわち、「バッテリー9→IG電源端1→コンプレッサー30のクラッチ31(電磁石コイル)→制御器(ECU)10内部のスイッチ12→接地端13」の通電経路が形成されるように、回路が構成される。
【0034】
このように、バッテリー電源(B+)がIG2電源端1を通じてクラッチ31の電磁石コイル32に連結され、このクラッチ31の電磁石コイル32が制御器10内部のスイッチ12を通じて接地端13に連結されるため、エアコンオフ(off)のときには、マイコン11により制御器10内部のスイッチ12がオフ(off)されて、クラッチ31の電磁石コイル32に電流が流れなくなる。
【0035】
本発明において、バッテリー9の電流がクラッチ31の電磁石コイル32に流れると、クラッチ31が接合され、車両の運行中にバッテリー9の電流がクラッチ31の電磁石コイル32に流れなくなると、クラッチ31が解除される。以下の説明において、クラッチの接合は、動力伝達可能にクラッチが結合した状態のことを、クラッチの解除は、両端間の動力が断絶されるようにクラッチが分離された状態のことを意味する。
【0036】
一方、エアコンオン(on)のときは、制御器(ECU)10内のマイコン11が出力する作動信号が制御器内部のスイッチ12に伝えられ、制御器内部のスイッチが閉じる。この際、バッテリー9の電流は、IG電源端1及びクラッチ31の電磁石コイル32、制御器10内のスイッチ12を順次に通過した後、制御器に連結された車体の接地端13に流れる。
【0037】
このように、クラッチ31の電磁石コイル32に電流が印加されてクラッチが接合され、クラッチが接合された状態で、プーリー(図示せず)に伝えられたエンジン(図示せず)の回転力がコンプレッサー軸(図示せず)に伝えられることによって、コンプレッサー30による冷媒圧縮の作動が行われる。
【0038】
制御器10内部のスイッチ12は、エアコンオフ(off)状態で、制御器(ECU)内のマイコン11によりオフ状態(開き状態)を保持し、エアコンオン(on)状態では、制御器内のマイコン11が出力する作動信号によりオン(on)状態(閉じ状態)に転換される。すなわち、制御器10内部のスイッチ12がオン(on)状態であると、クラッチ31接合状態及びコンプレッサー30オン(on)状態、エアコンオン(on)状態になり、制御器10内部のスイッチ12がオフ(off)状態であると、クラッチ31解除状態及びコンプレッサー30オフ(off)状態、エアコンオフ(off)状態になる。
【0039】
このように、制御器10内部のスイッチ12がオン(on)された状態で、電流が流れる間にスイッチが再びオフ(off)されると、スイッチの前、後端に瞬間的な電圧差が発生してサージ電圧又はスパークが発生し得る。これを除去するために、制御器10の内部に予め設けられ、スイッチと回路を通じて連結されている共用ダイオードのような低減素子を用いることができる。
【0040】
このように、制御器の内部でスイッチ側の低減素子を用いて、サージ電圧又はスパークを除去できるので、既存のジャンクションボックス及び負荷側に設置されてきたダイオードなどの低減素子を省くことができる。但し、制御器内の低減素子の容量が不足した場合には、負荷端(クラッチ側)にサージ電圧又はスパークの発生を抑制するためのダイオードを追加できる。
【0041】
一方、図2の回路から分かるように、制御器10内部のスイッチ12がオン(on)状態のとき、クラッチ31の電磁石コイル32に沿って流れた電流は、続いて制御器10内部のスイッチ12を通過した後、接地端13に流れることになる。この際、制御器10の内部とスイッチ12に一定値以上の電流が流れることを防ぐために、制限電流値がマイコン11に設定される。
【0042】
すなわち、クラッチ31の電磁石コイル32を通過した後、制御器10内部及びスイッチ12に流れる作動電流を、制御器10内部のマイコン11でセンサーによりモニタリングし、作動電流が設定された制限電流値以上である過電流状態になる場合、マイコン11は、制御器10内部のスイッチ12をオフ(off)状態に保持する。制御器内部のスイッチがオフ状態になることは、上述したように、クラッチの解除状態及びエアコンのオフ状態になることを意味する。
【0043】
以下、本発明の一実施形態によるコンプレッサー制御方法について説明する。図3A及び図3Bは、本発明の一実施形態による制御方法において、コンプレッサーのクラッチ作動条件の判定ロジックを示すフローチャートであり、図4は、本発明の一実施形態による制御方法において、冷媒圧によるクラッチ温度が設定された設定データの例を示す図である。図3A及び図3Bのクラッチ作動条件の判定ロジックは、制御器10のマイコン11により実行される。
【0044】
クラッチ31の電磁石コイル32に流れる電流値は、電磁石コイルの抵抗値とバッテリー9の電圧値によって変わる。また、電磁石コイル32の抵抗値は、電磁石コイルの温度によって変わる。すなわち、電磁石コイル32の抵抗値は、電磁石コイルの温度が低くなるほど、より小さくなる。
【0045】
なお、クラッチ31の電磁石コイル32に流れる電流値は、抵抗になる電磁石コイルの温度が低いかバッテリー9の電圧値が大きいほど、より大きくなる。すなわち、電磁石コイル32の温度が低いかバッテリー9の電圧値が大きいほど、より多くの電流が電磁石コイルに流れることになる。以下、クラッチの電磁石コイルを通過する電流のことを「作動電流」と称する。
【0046】
通常、電磁石コイルの温度がクラッチの温度になるが、クラッチには電磁石コイルの温度を検出するセンサーがない。したがって、本発明では、冷媒圧センサー2により検出されるエアコン冷媒圧から電磁石コイル32の温度、すなわちクラッチの温度を換算した後、上記換算されたクラッチの温度(クラッチ温度)に基づいて、クラッチ接合可能条件を判断する。
【0047】
すなわち、図3Aに示すように、コンプレッサーのクラッチ31の解除状態(S1段階)で、上記換算されたクラッチの温度(電磁石コイルの温度)を予め設定された第1設定温度(例えば、-10℃)と比較し(S2段階)、第1設定温度よりも高い場合、電磁石コイル32の抵抗値が高くなって作動電流が制限電流よりも低くなるはずなので、この場合、制御器10のマイコン11は、クラッチ接合可能条件であると判定する(S5段階)。
【0048】
一方、S2段階で、上記換算されたクラッチ31の温度が、第1設定温度以下である場合、電磁石コイル32の抵抗値が低くなって作動電流が制限電流以上になるので、制御器10のマイコン11は、現在クラッチ解除可能条件であると判定する(S3段階)。
【0049】
また、図3Aに示すように、クラッチ解除可能条件であると判定した状態で、上記換算されたクラッチ31の温度(電磁石コイルの温度)を第2設定温度(例えば、-5℃)と比較し(S4段階)、第2設定温度よりも高い場合、制御器10のマイコン11は、クラッチ接合可能条件であると判定する(S5段階)。
【0050】
制御器10において、第1設定温度と第2設定温度は、「第2設定温度>第1設定温度」の関係に設定され、これは上記換算されたクラッチの温度に基づいて、コンプレッサーのクラッチ接合可能条件及び解除可能条件を判定するに当たって、ヒステリシス区間を設定しておくためのものである。
【0051】
本発明の一実施形態において、制御器10のマイコン11は、冷媒圧センサー2により検出されたエアコン冷媒圧からクラッチ31の温度を算出するために、図4に示すように、冷媒圧により、それに対応するクラッチの温度(クラッチ温度)が設定されているデータを用いる。図4に示す設定データは、先行研究及び評価試験から取得したデータによって得られるものであり、図4の例は、冷媒圧とクラッチ温度との間の相関関係を定義したマップを示しているが、このようなマップの他に、冷媒圧とクラッチ温度との間の相関関係を定義したテーブルや数式などが用いられてもよい。
【0052】
図4のマップにおいて、冷媒圧によるクラッチ温度は、下記の数式1で表すことができ、本発明におけるクラッチ温度(Tclutch)は、冷媒圧(p)から1次式の下記数式1により求められる。
【0053】
【数1】
【0054】
上記の数式1を用いる場合、AとBの値は、制御器のマイコンに予め設定された値になる。
【0055】
このように、本発明では、クラッチ温度(Tclutch)と冷媒圧(p)との間の相関関係が定義された設定データを用いて、冷媒圧からクラッチ温度を換算した後、上記換算したクラッチの温度に基づき、現在コンプレッサーのクラッチが接合可能条件であるか、又は解除可能条件であるかを判定する。
【0056】
上述のように、制御器10のマイコン11は、クラッチ温度を第1設定温度と比較し、現在クラッチが接合可能条件であると判定するか、又はクラッチ解除可能条件であると判定することを説明した。ここで、クラッチ温度は、冷媒圧センサー2により検出された冷媒圧から換算されたものであり、図4に示すように、クラッチ温度と冷媒圧は互いに比例して増減する関係にある。これにより、クラッチ温度を比較するのではなく、冷媒圧センサー2により検出された冷媒圧を設定圧と比較して判定することが実施可能となる。
【0057】
すなわち、図3Bに示すように、クラッチ解除状態で、冷媒圧センサー2により検出された冷媒圧を予め設定された第1設定圧と比較し(S2’段階)、検出された冷媒圧が第1設定圧よりも高い場合、現在クラッチ接合可能条件を満たすと判定するように(S5段階)、マイコン11を設定する。一方、クラッチ解除状態で、冷媒圧センサー2により検出された冷媒圧が第1設定圧以下である場合、現在クラッチ解除可能条件を満たすと判定するように(S3段階)、マイコン11を設定する。
【0058】
また、クラッチ解除可能条件であると判定した状態で、冷媒圧センサー2により検出された冷媒圧を、予め設定された第2設定圧と比較し(S4’段階)、検出された冷媒圧が第2設定圧よりも高い場合、現在クラッチ接合可能条件を満たすと判定するように(S5段階)、マイコン11を設定する。
【0059】
制御器10のマイコン11において、第1設定圧と第2設定圧は、「第2設定圧>第1設定圧」の関係に設定される。ここで、第1設定圧は、第1設定温度と数式1及び図4の関係を有する圧力値になり、第2設定圧もまた、第1設定温度と数式1及び図4の関係を有する圧力値になる。
【0060】
また、本発明の一実施形態によるコンプレッサー制御方法は、コンプレッサーの過電流オフ(off)状態でコンプレッサー30を再作動させるための制御方法を含む。
図5は、本発明の一実施形態による制御方法において、エアコンコンプレッサーの再作動ロジックを示すフローチャートであり、図5に例示されているエアコンコンプレッサーの再作動ロジックは、制御器10のマイコン11により実行される。
【0061】
基本的に、コンプレッサーのクラッチ31の電磁石コイル32に流れる作動電流値が、制御器10に設定された制限電流値以上になる過電流条件では、制御器10のマイコン11が制御器内部のスイッチ12をオフ(off)させてクラッチを解除し、コンプレッサー及びエアコンをオフ状態に制御する。
【0062】
また、図3Aのクラッチ作動条件の判定ロジックにおいて、換算されたクラッチ31の温度が第1設定温度以下となり、クラッチ解除可能条件であると判定された場合、制御器10のマイコン11が、制御器内部のスイッチ12をオフ(off)させてクラッチ31を解除し、コンプレッサー及びエアコンをオフ状態に制御する。
【0063】
さらに詳細に説明すると、本発明の一実施形態において、制御器10は、コンプレッサー30の過電流オフ状態で、予め定められた再作動条件を満たすと判断し、それと同時にクラッチ接合可能条件であると判定したときに、コンプレッサーを再作動させる。ここで、コンプレッサー30の過電流オフ状態は、コンプレッサーのクラッチ31の電磁石コイル32に流れる作動電流値が、制御器10に設定された制限電流値以上になる過電流条件で、制御器10によりスイッチ12がオフ(off)されてクラッチ31が解除され、コンプレッサー30がオフ(off)された状態を含む。
【0064】
なお、コンプレッサー30の過電流オフ状態は、図3Aのクラッチ作動条件の判定ロジックにおいて、換算されたクラッチ31の温度が第1設定温度以下となり、クラッチ解除可能条件であると判定され、制御器10によりスイッチ12がオフ(off)されてクラッチ31が解除され、コンプレッサー30がオフ(off)された状態を含む。
【0065】
なお、上記定められた再作動条件は、コンプレッサーが再作動する場合、今回のコンプレッサーの再作動が、車両の始動後のコンプレッサーにおける最初の作動でないという条件、そしてエアコンオン(エアコンスイッチオン)であるという条件、また蒸発器温度センサー(thermistor)3により検出された蒸発器の温度が予め設定された結氷臨界温度以上であるという条件を含む。また、上記定められた再作動条件は、冷媒圧センサー2により検出されたエアコン冷媒圧が、予め設定された圧力範囲以内であるという条件をさらに含む。
【0066】
本発明の一実施形態において、制御器10は、コンプレッサー30の過電流オフ状態で上記定められた再作動条件(基本作動条件という)を満たす場合、図5に示すエアコンコンプレッサーの再作動のための制御過程を始める。
【0067】
すなわち、本発明の一実施形態において、制御器10のマイコン11は、コンプレッサー30の過電流オフ(off)状態で、コンプレッサーが再作動をする場合、今回のコンプレッサーの再作動が、車両の始動後のコンプレッサーにおける最初の作動でないという条件を満たし、現在エアコンオン(エアコンスイッチオン)であるという条件、現在蒸発器温度が結氷臨界温度以上であるという条件、そして現在エアコン冷媒圧が予め設定された圧力範囲以内であるという条件をすべて満たすか否かを判断し(S11段階)、満たすと判断すると、図5の制御過程を始める。
【0068】
このように、制御器10のマイコン11は、蒸発器温度センサー3により検出された蒸発器温度が結氷臨界温度以上である条件で、コンプレッサー30を再作動させ、仮に蒸発器温度が結氷臨界温度よりも低い条件では、蒸発器で結氷が発生し得るので、コンプレッサーを再作動させない。
【0069】
また、制御器10のマイコン11は、冷媒圧が適正圧力範囲以内である条件で、コンプレッサー30を再作動させ、仮に冷媒圧が前記圧力範囲から外れている場合には、コンプレッサーを再作動させない。
【0070】
上記条件をすべて満たすと、制御器10のマイコン11は、外気温センサー4により検出された外気温度に対応して決定される故障診断遅延(delay)時間が経過するか否かを判断し(S12段階)、故障診断遅延時間が経過したと判断されると、図3A又は図3Bのクラッチ作動条件の判定過程を行う(S13段階)。
【0071】
ここで、故障診断遅延時間は、下記の表1のように設定され、制御器10のマイコン11は、下記の表1のような設定データを用いて、現在の外気温度に対応する故障診断遅延時間を決定する。
【0072】
【表1】
【0073】
表1の例において、外気温度35℃~-10℃の間の中間区間における故障診断遅延時間は、内挿法(interpolation)による値に決定される。
【0074】
次に、故障診断遅延時間が経過すると、制御器10のマイコン11は、図3A又は図3Bのクラッチ作動条件の判定過程を行うが(S13段階)、図3A又は図3BのS2段階及びS5段階で、クラッチ接合可能条件であると判定した場合、制御器10内部のスイッチ12をオン(on)させるための作動信号を出力する。これにより、制御器内部のスイッチがオン(on)されてクラッチ接合状態になり、コンプレッサーが再作動する(S14段階)。
【0075】
その後、制御器10のマイコン11は、コンプレッサー30の作動中にクラッチ31の電磁石コイル32に流れる作動電流をモニタリングし、モニタリングされる作動電流を制限電流と比較して(S15段階)、作動電流値が制限電流値未満である状態では、制御器10内部のスイッチ12オン(on)、クラッチ31の接合状態、及びコンプレッサー30の作動状態を保持する。
【0076】
一方、図5のS13段階で、図3A又は図3Bのクラッチ作動条件の判定過程を行うが、図3AのS2段階又は図3BのS2’段階、及びS3段階でクラッチ解除可能条件であると判定した場合、制御器10のマイコン11は、制御器内部のスイッチ12をオフ(off)状態に保持し、クラッチ31の解除状態及びコンプレッサー30のオフ状態を保持する。
【0077】
また、コンプレッサー30が作動中の図5のS15段階において、作動電流値が制限電流値以上になる場合、制御器10のマイコン11は、制御器内部のスイッチ12をオフ(off)させて、クラッチ31を解除し(S16段階)、コンプレッサー30を再びオフ(off)状態にさせる。
【0078】
上記のように、本発明によるコンプレッサー制御装置及び制御方法について詳細に説明した。本発明によるコンプレッサー制御装置及び制御方法によると、コンプレッサーのクラッチにバッテリー電流を選択的に印加するための既存のジャンクションボックス内のリレースイッチとサージ電圧防止のためのダイオードを省くことができ、これに関連した回路及びワイヤーリングも省くことができる。
【0079】
なお、負荷端になるコンプレッサーのクラッチにおいても、リレースイッチ開閉時の電流変動による逆起電圧及びサージ電圧を除去するためのダイオードを省くことができ、これに関連した回路及びワイヤーリングも省くことができる。また、部品数の削減及び回路構成の単純化により、原価を低減し、且つ装置の故障確率を下げることができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術範囲はこれに限定されるものではなく、本発明の基本概念を用いた当業者により様々に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 IG2電源端
2 冷媒圧センサー
3 蒸発器温度センサー
4 外気温センサー
9 バッテリー
10 制御器
11 マイコン
12 スイッチ
13 接地端
20 リレースイッチ
21 ダイオード
22 接地線
30 コンプレッサー
31 クラッチ
32 電磁石コイル
33 ダイオード

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5