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特開2022-14686地盤改良セメント組成物用添加剤、地盤改良セメント組成物、地盤改良体及び地盤改良工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014686
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】地盤改良セメント組成物用添加剤、地盤改良セメント組成物、地盤改良体及び地盤改良工法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/22 20060101AFI20220113BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20220113BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20220113BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20220113BHJP
   C08F 220/04 20060101ALI20220113BHJP
   C08F 220/38 20060101ALI20220113BHJP
   C08F 216/12 20060101ALI20220113BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C09K17/22 P
C04B24/26 B
C04B28/02
C09K17/02 P
C08F220/04
C08F220/38
C08F216/12
E02D3/12 102
C04B24/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117172
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕哉
【テーマコード(参考)】
2D040
4G112
4H026
4J100
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040BA01
2D040CA01
2D040CA10
2D040CB03
2D040CC01
4G112MD01
4G112PB29
4H026CA01
4H026CB01
4H026CB08
4H026CC02
4J100AE18P
4J100AJ02Q
4J100BA03P
4J100BA56P
4J100CA04
4J100JA67
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ソイルセメントの練りあがり時間を短縮することができる地盤改良セメント組成物用添加剤を提供する。
【解決手段】特定のビニルエーテル、プロぺ二ルエーテル、ブテニルエーテルのスルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位とカルボン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位とを含有する共重合体と炭酸塩、及び/又は重炭酸塩とを含み、炭酸塩及び重炭酸塩の合計量が、共重合体の質量に対して、0.5~30倍である地盤改良セメント組成物用添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1);
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。R、Rは、水酸基又は-SOZを表し、Zは水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。但し、R、Rのいずれか一方は、-SOZを表し、他方は、水酸基を表す。)で表されるスルホン酸(塩)基含有単量体(A)由来の構造単位(a)とカルボン酸(塩)基含有単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体(α)と、炭酸塩及び/又は重炭酸塩とを含み、
該炭酸塩及び重炭酸塩の合計量が、該共重合体(α)の質量に対して0.5~30倍であることを特徴とする地盤改良セメント組成物用添加剤。
【請求項2】
前記スルホン酸(塩)基含有単量体(A)は、3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸又はその塩であることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良セメント組成物用添加剤。
【請求項3】
前記共重合体(α)は、構造単位(a)及び構造単位(b)の割合がそれぞれ全構造単位100モル%に対して5~50モル%、50~95モル%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤改良セメント組成物用添加剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の地盤改良セメント組成物用添加剤とセメントとを含むことを特徴とする地盤改良セメント組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の地盤改良セメント組成物の硬化物を含むことを特徴とする地盤改良体。
【請求項6】
地盤に形成された孔に請求項4に記載の地盤改良セメント組成物を注入する工程を含むことを特徴とする地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良セメント組成物用添加剤、地盤改良セメント組成物、地盤改良体及び地盤改良工法に関する。より詳しくは、地盤の支持力強化等を目的とする地盤改良に用いられる地盤改良セメント組成物用添加剤、地盤改良セメント組成物、地盤改良体及び地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良は、建造物の基礎部分の支持力強化や液状化対策等の目的で地盤の強度を高めるために地盤に人工的な改良を加えることである。近年、地震や大雨による被害が頻発していることから地盤改良の重要度が増してきており、政府も国土強靭化基本計画を策定して防災対策を推進している。
地盤改良には様々な方法があるが、中でも費用対効果の高さなどから、セメントを含む硬化剤を使用する方法が多く用いられており、(1)セメント系固化材等の硬化材を改良したい現場の土と混合して改良体の造成等を行う固結工法や、(2)セメントを含む組成物を地盤に注入する薬液注入工法等が幅広く利用されている。
【0003】
上記(1)の工法として、例えばソイルセメント埋め戻し工法が挙げられる。この工法は、建設工事で発生する掘削土や浚渫土等にセメントミルクを地上で添加・混合し、埋め戻し材料や構造体材料等に利用することにより、これらの土を有効活用しようというものである。また最近では、構造物周辺等の狭隘な場所にバイブレーター等の補助工法を行わないでソイルセメントを充填することができるソイルセメント流動化処理工法が開発され、普及しつつある。このような工法においては、ソイルセメントに極めて高い流動性が要求され、ソイルセメント流動化剤として種々のポリマーが開発されている。例えば特許文献1~4には、スルホン酸基を有するポリマーを用いる技術が開示されている。また、例えば特許文献5~7には、ポリマーと炭酸塩又は重炭酸塩とを併用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-347784号公報
【特許文献2】特開平7-257951号公報
【特許文献3】特開平10-95976号公報
【特許文献4】特開平11-279544号公報
【特許文献5】特開2000-169209号公報
【特許文献6】特開2020-23682号公報
【特許文献7】特開2004-175989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、従来ソイルセメントの流動性を向上させる種々の技術が開発されているが、従来技術ではセメントと土とが均一に混ざりにくく、ソイルセメントが練りあがるまでに時間を要していた。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ソイルセメントの練りあがり時間を短縮することができる地盤改良セメント組成物用添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ソイルセメントに用いられる地盤改良セメント組成物用添加剤について種々検討したところ、所定の構造のスルホン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位とカルボン酸(塩)基含有単量体由来の構造単位とを有する共重合体を含み、更に、該共重合体に対して所定の割合で炭酸塩及び/又は重炭酸塩を含む地盤改良セメント組成物用添加剤がソイルセメントの練りあがり時間を短縮することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、下記式(1);
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。R、Rは、水酸基又は-SOZを表し、Zは水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。但し、R、Rのいずれか一方は、-SOZを表し、他方は、水酸基を表す。)で表されるスルホン酸(塩)基含有単量体(A)由来の構造単位(a)とカルボン酸(塩)基含有単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体(α)と、炭酸塩及び/又は重炭酸塩とを含み、該炭酸塩及び重炭酸塩の合計量が、該共重合体(α)の質量に対して0.5~30倍である地盤改良セメント組成物用添加剤である。
【0011】
上記スルホン酸(塩)基含有単量体(A)は、3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸又はその塩であることが好ましい
【0012】
上記共重合体(α)は、構造単位(a)及び構造単位(b)の割合がそれぞれ全構造単位100モル%に対して5~50モル%、50~95モル%であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、上記地盤改良セメント組成物用添加剤とセメントとを含む地盤改良セメント組成物でもある。
【0014】
本発明は更に、地盤改良セメント組成物の硬化物を含むことを特徴とする地盤改良体でもある。
【0015】
本発明は更に、地盤に形成された孔に上記地盤改良セメント組成物を注入する工程を含む地盤改良工法でもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤は、上述の構成よりなり、ソイルセメントの練りあがり時間を短縮することができるため、地盤の支持力強化等を目的とする地盤改良等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0018】
本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤は、上記式(1)で表されるスルホン酸(塩)基含有単量体(A)由来の構造単位(a)とカルボン酸(塩)基含有単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体(α)と、炭酸塩及び/又は重炭酸塩とを含み、該炭酸塩及び重炭酸塩の合計量が、該共重合体(α)の質量に対して0.5~30倍である。
本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤は、炭酸塩及び/又は重炭酸塩(炭酸水素塩)を上記割合で含むことにより、セメントに含まれるカルシウムイオンが捕捉され、カルシウムイオンが凝集してセメント組成物の粘性が上昇することを抑制することができる。本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤は、このようにセメント組成物の粘性を抑制しつつ、上記共重合体(α)が有するスルホン酸(塩)基とカルボン酸(塩)基とでセメント粒子を分散させることにより、セメントと土とを均一に混合し易くし、ソイルセメントの練りあがり時間を短縮することができる。
【0019】
上記炭酸塩及び重炭酸塩の合計量は、共重合体(α)の質量に対して0.5~30倍であればよいが、好ましくは2~30倍であり、より好ましくは5~30倍であり、更に好ましくは10~30倍である。
【0020】
上記炭酸塩及び/又は重炭酸塩におけるカチオンとしては特に制限されず、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。好ましくはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンである。水溶性の観点からより好ましくはアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンであり、更に好ましくはアルカリ金属イオンであり、特に好ましくはナトリウムイオンである。
【0021】
上記炭酸塩として具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸アンモニウム、炭酸銅、炭酸銀、炭酸鉄、炭酸アルミニウム等が挙げられる。
上記重炭酸塩として具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素銅、炭酸水素銀、炭酸水素鉄、炭酸水素アルミニウム等が挙げられる。
上記炭酸塩、重炭酸塩の中でも好ましくは炭酸塩である。
【0022】
上記地盤改良セメント組成物用添加剤に含まれる共重合体(α)は、上記式(1)で表されるスルホン酸(塩)基含有単量体(A)由来の構造単位(a)とカルボン酸(塩)基含有単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する。
上記共重合体(α)における構造単位(a)の割合は特に制限されないが、全構造単位100モル%に対して5~50モル%であることが好ましい。これにより、ソイルセメントの練りあがり時間をより短縮することができる。より好ましくは10~40モル%であり、更に好ましくは15~30モル%である。
【0023】
上記共重合体(α)における構造単位(b)の割合は特に制限されないが、全構造単位100モル%に対して50~95モル%であることが好ましい。これにより、ソイルセメントの練りあがり時間をより短縮することができる。より好ましくは60~90モル%であり、更に好ましくは70~85モル%である。
【0024】
上記共重合体(α)は、上記式(1)で表されるスルホン酸(塩)基含有単量体(A)及びカルボン酸(塩)基含有単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよく、その割合は特に制限されないが、全構造単位100モル%に対して0~10モル%であることが好ましい。より好ましくは0~5モル%であり、更に好ましくは0~1モル%であり、最も好ましくは0モル%である。
【0025】
上記共重合体(α)は、重量平均分子量が2000~150000であることが好ましい。これにより、セメント組成物がスラリーの流動性に優れる効果と固形分が分離沈降しにくい効果とをよりバランス良く発揮することができる。共重合体(α)の重量平均分子量は、より好ましくは2000~100000であり、更に好ましくは2000~50000であり、特に好ましくは3000~40000である。
上記重量平均分子量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
上記スルホン酸(塩)基含有単量体(A)は、上記式(1)で表される構造であり、式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基であり、好ましくは水素原子である。
式(1)において、Rは、CH基、CHCH基又は直接結合であり、好ましくはCH基である。
式(1)において、R、Rは、水酸基又は-SOZであって、R、Rのいずれか一方は、-SOZであり、他方は、水酸基である。好ましくはRが水酸基であり、Rが-SOZである。
式(1)において、Zは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基であり、好ましくは水素原子、金属原子である。
上記金属原子としては特に制限されないが、Li、Na、K等のアルカリ金属が挙げられる。
【0027】
上記式(1)で表されるスルホン酸(塩)基含有単量体(A)として好ましくは3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、3-(メタ)アリルオキシ-1-ヒドロキシプロパンスルホン酸及びこれらの塩であり、より好ましくは3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸及びこの塩である。
【0028】
上記カルボン酸(塩)基含有単量体(B)は、カルボキシル基及び/又はその塩の基とエチレン性不飽和炭化水素基(不飽和基)を有するものであれば、特に制限されないが、以下の不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体等が挙げられる。
【0029】
不飽和モノカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基とカルボアニオンを形成しうる基とを1つずつ有する単量体であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-メチル-2-ペンテン酸、α-ヒドロキシアクリル酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;下記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアルコール又は炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル;不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアミンとのハーフアミド等が挙げられる。
【0030】
不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基を1つとカルボアニオンを形成しうる基を2つとを有する単量体であればよく、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、それらの無水物が挙げられる。
【0031】
上記カルボン酸(塩)基含有単量体(B)としては、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)又は無水マレイン酸が好ましい。より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)であり、特に好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0032】
上記共重合体(α)は、上記式(1)で表されるスルホン酸(塩)基含有単量体(A)及びカルボン酸(塩)基含有単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよく、その他の単量体(E)としては例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-n-ブタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-フェニルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、α-メチル-p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、4-(アリルオキシ)ベンゼンスルホン酸、1-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、1,1-ジメチル-2-プロペン-1-スルホン酸、3-ブテン-1-スルホン酸、1-ブテン-3-スルホン酸、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸等及びこれらの塩等のその他のスルホン酸(塩)基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α-ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1~18のアルキル基のエステルである、アルキル(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びその4級化物等のアミノ基含有アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体類;マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;ビニルホスホン酸、(メタ)アリルホスホン酸等のホスホン酸基を有する単量体;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルピロリドン等のその他官能基含有単量体類;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、モノアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドが1~300モル付加した構造を有する単量体等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体;等が挙げられる。これらその他の単量体(E)についても、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
上記共重合体(α)は、スルホン酸(塩)基含有単量体(A)と、カルボン酸(塩)基含有単量体(B)とを必須成分として含む単量体成分を重合することにより製造することができる。共重合体(α)の製造は、特許文献1に記載の重合体の製造方法を参照して同様に行うことができる。
【0034】
本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤は、上記共重合体(α)を必須とするものであるが、上記共重合体(α)を2種以上含んでいてもよく、上記共重合体(α)と異なる共重合体を1種以上含んでいてもよい。
本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤における上記共重合体(α)の含有割合(2種以上の共重合体を含む場合は、その総含有割合)は、特に制限されないが、添加剤中の固形分(すなわち不揮発分)100質量%に対して、20~100質量%であることが好ましい。より好ましくは、50~100質量%であり、更に好ましくは、80~100質量%である。
【0035】
上述のとおり、本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤をセメントに添加して用いることで、セメント組成物の粘性を抑制し、土と練りあげやすいため、ソイルセメントの練りあがり時間を短縮することができる。
本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤は、炭酸塩及び重炭酸塩の合計量が、該共重合体(α)の質量に対して0.5~30倍であれば特に制限されないが、使用するセメント100質量%に対する共重合体(α)の量が、0.01~15質量%であることが好ましい。これにより、ソイルセメントの練りあがり時間をより短縮することができる。また共重合体(α)の量が上記範囲であれば、経済性の観点からも好ましい。セメント100質量%に対する共重合体(α)の量としてより好ましくは0.1~15質量%であり、更に好ましくは0.2~10質量%であり、特に好ましくは0.2~5質量%である。
このような本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤とセメントとを含む地盤改良セメント組成物もまた、本発明の1つであり、その地盤改良セメント組成物を用いて造成される地盤改良体、すなわち、その地盤改良セメント組成物の硬化物を含む地盤改良体もまた、本発明の1つである。
【0036】
本発明の地盤改良セメント組成物は、組成物の固形分100質量%に対して、本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤を0.01~20質量%含むことが好ましい。このような割合で含むことで、セメント組成物のスラリーを流動性により優れ、かつ、固形分の分離沈降がより充分に抑制されたものとすることができる。本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤の含有量は、より好ましくは組成物の固形分100質量%に対して、0.02~10質量%であり、更に好ましくは、0.05~5質量%である。
【0037】
本発明の地盤改良セメント組成物が含むセメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。本発明の地盤改良セメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0038】
本発明の地盤改良セメント組成物におけるセメントの含有割合は、組成物の固形分100質量%に対して、10~100質量%であることが好ましい。このような割合でセメントを含む地盤改良セメント組成物を用いることで、該組成物を用いて得られる地盤改良体をより強度に優れたものとすることができる。セメントの含有割合は、より好ましくは、組成物の固形分100質量%に対して、20~100質量%であり、更に好ましくは、40~100質量%である。
【0039】
本発明の地盤改良セメント組成物は水を含むことが好ましい。その場合の水の含有割合は、組成物の固形分100質量%に対して、30~120質量%であることが好ましい。このような割合で水を含むことで、地盤改良セメント組成物のスラリーが流動性により優れ、かつ、固形分の分離沈降がより充分に抑制されたものとなる。水の含有量は、より好ましくは、組成物の固形分100質量%に対して、30~100質量%であり、更に好ましくは、30~80質量%である。
【0040】
本発明の地盤改良セメント組成物は、本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤とセメントとを含む限り、その他の混和剤を更に含有していてもよい。
中でも、本発明の添加剤と消泡剤とを併用すると、消泡剤がセメント組成物スラリー中の気泡を消泡することでスラリー粘度を下げることができるため、本発明の地盤改良セメント組成物が、本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤と消泡剤とを含むものであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
消泡剤としては、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤等の種々の消泡剤の1種又は2種以上を用いることができる。
【0041】
本発明の地盤改良セメント組成物が消泡剤を含む場合、消泡剤の含有割合は、本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤100質量%に対して、5~50質量%であることが好ましい。より好ましくは、5~40質量%である。
【0042】
本発明の地盤改良セメント組成物は、消泡剤以外のその他の混和剤を含んでいてもよい。
消泡剤以外の混和剤としては、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤(減水剤)や、上記共重合体以外の、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)、分子中にリン酸基を有する各種リン酸系分散剤(減水剤)等の減水剤が挙げられる。
また、本発明の地盤改良セメント組成物は、例えば、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、AE剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等のセメント添加剤(材)の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0043】
本発明の地盤改良セメント組成物は、スラリー状態とした場合の流動性に優れるため、地盤改良のためのセメント組成物を地盤に形成された孔に注入して地盤改良体を造成する地盤改良工法に好適に用いることができる。
このような地盤改良工法、すなわち、地盤に形成された孔に本発明の地盤改良セメント組成物を注入する工程を含む地盤改良工法もまた、本発明の1つである。
【0044】
本発明の地盤改良工法において地盤に孔を形成する方法は特に制限されないが、効率的に孔を形成することができる点で地盤を削孔して孔を形成する方法が好ましい。
地盤を削孔して孔を形成する地盤改良工法としては、例えば、形成した孔に管を挿入し、管からスラリー化した地盤改良セメント組成物を地中に高圧噴射して地中の土を切削すると同時に化学的に固化する高圧噴射撹拌式の地盤改良工法や、孔中でセメント組成物と土と混合して地盤改良体を造成する機械撹拌工法等が挙げられ、本発明の地盤改良セメント組成物は、これらいずれの工法にも好適に用いることができる。
したがって、上記地盤改良工法が、地盤を削孔して孔を形成する工程及び孔中で本発明の地盤改良セメント組成物を高圧噴射して地中の土を切削すると同時に化学的に固化する工程を含むことや、地盤を削孔して孔を形成する工程及び孔中で本発明の地盤改良セメント組成物と土とを混合する工程を含むことは、いずれも本発明の地盤改良工法の好適な実施形態である。上記機械撹拌工法の中でも、先端に撹拌翼を有するロッドを備えた施工機で地盤の深層まで削孔しつつ、形成された孔中で現場の土壌と撹拌、混合し、地中に改良体を造成する機械撹拌工法であることは本発明の地盤改良工法の特に好適な実施形態である。
【0045】
本発明の地盤改良工法は、本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤とセメントとを混合する工程(1)と、工程(1)で得られた混合物に土を混合する工程(2)とを含むことが好ましい。
上記地盤改良工法は、上記工程(2)を地盤に形成された孔中で行っても、工程(2)で得られた混合物を地盤に形成された孔に注入してもよい。
【0046】
上記工程(1)において本発明の地盤改良セメント組成物用添加剤とセメントとを混合する方法は特に制限されず、例えば、共重合体(α)、又は、炭酸塩及び/若しくは重炭酸塩(以下、炭酸塩等ともいう)の一方をセメントと混合した後、共重合体(α)又は炭酸塩等のもう一方を混合してもよいが、共重合体(α)と炭酸塩等とを混合した後、セメントを混合することが好ましい。
また、上記工程(1)において、共重合体(α)並びに炭酸塩及び/又は重炭酸塩は、水溶液の形態で用いることが好ましい。
【0047】
本発明の地盤改良工法は、上記工程以外の他の工程を含んでいてもよい。
また、本発明の地盤改良工法は、上記以外の他の工法であってもよい。他の工法としては、高圧噴射併用機械撹拌工法等がある。
【実施例0048】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0049】
<重量平均分子量>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empower2プロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel
G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの。
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記標準物質のMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
標準物質試料液注入量:100μL(重合体濃度0.1質量%の溶離液溶液)
重合体試料液注入量:100μL(重合体濃度0.5質量%の溶離液溶液)
【0050】
<ソイルセメントの練りあがり時間の測定>
測定を行う前に、あらかじめ、ポリ袋に本山木節粘土(A粘土粉末、瀬戸窯業原料株式会社製)5000gと水4000gを投入し、10分間手で混合し、一日以上静置して含水比80%の含水粘土を調整した。
ポリプロピレン製カップ(品番:ニューディスポカップ100mL;アズワン社製)に、セメント系固化材に対して規定量の質量%の共重合体、炭酸ナトリウムを含む水168.8gを入れて撹拌し、添加剤溶液を調整した。
調整した添加剤溶液に、セメント系固化材(ジオセット200、太平洋セメント製)を90g添加して、スリーワンモーターを用いて、300rpmで4分間攪拌し、セメントスラリーを調整した。
ホバート型ミキサー(型番N-50;ホバート社製)の釜に、含水比80%の含水本山木節粘土506.3gと調整したセメントスラリーを投入し、ホバート型ミキサーで攪拌を開始して、ソイルセメントの調整を行った。攪拌開始から2分後に、攪拌を停止し、30秒間、釜の側面についた粘土をかき落とした。その後攪拌を再開し、目視でソイルセメントを粘土の玉が見えなくなり、均一になるまで観察した。ホバートミキサーでの攪拌開始から、粘土の玉が見えなくなるまでの時間をソイルセメントの練りあがり時間として計測した。
【0051】
<製造例1>
攪拌機、還流冷却器、滴下装置を備えた、容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、脱イオン水176.3g、モール塩0.0014gを仕込み、攪拌しながら沸点還流状態となるように昇温して重合反応系とした。次いで、攪拌下、沸点還流状態の上記重合反応系中に、35質量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、35%SBSと記載)86.7gを滴下し、35%SBS滴下開始5分後に、80%AA464.9g、40質量%3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下、40%HAPSと記載)575.9g、15%NaPS168.6gをそれぞれ別個のノズルから滴下した。なお、上記の各水溶液の滴下時間は、80%AAを180分間、40%HAPSを130分間、15%NaPSを200分間、35%SBSを180分間とした。また、各水溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)して重合反応を完結させ、共重合体の水溶液を得た。
【0052】
<製造例2>
製造例1と同様のセパラブルフラスコに、脱イオン水267.5g、モール塩0.0013gを仕込み、攪拌しながら沸点還流状態となるように昇温して重合反応系とした。次いで、攪拌下、沸点還流状態の上記重合反応系中に、35%SBS56.2gを滴下し、35%SBS滴下開始5分後に、80%AA464.9g、40%HAPS518.3g、15%NaPS165.5gをそれぞれ別個のノズルから滴下した。なお、上記の各水溶液の滴下時間は、80%AAを180分間、40%HAPSを130分間、15%NaPSを200分間、35%SBSを180分間とした。各水溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)して重合反応を完結させ、共重合体の水溶液を得た。
【0053】
<製造例3>
製造例1と同様のセパラブルフラスコに、脱イオン水300gを仕込み、攪拌しながら沸点還流状態となるように昇温して重合反応系とした。次いで、攪拌下、沸点還流状態の上記重合反応系中に、35%SBS205.7gを滴下し、35%SBS滴下開始5分後に、80%AA810g、15%NaPS390gをそれぞれ別個のノズルから滴下した。なお、上記の各水溶液の滴下時間は、120分間として、各水溶液の滴下速度は一定とし、滴下は連続的に行った。上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)して重合反応を完結させ、共重合体の水溶液を得た。
【0054】
<実施例1~6及び比較例1>
製造例1~3で得られた重合体と炭酸ナトリウムとを表1に記載の割合で用い、上記の方法によりソイルセメントの練りあがり時間を測定した。結果を表1に示した。
なお、表1における共重合体と炭酸ナトリウムの添加量(%)はセメントの質量に対する割合である。
【0055】
【表1】