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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146866
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 201D
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/30 201C
H01G4/30 201K
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022008436
(22)【出願日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036422
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、キュン リュル
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ジョン スク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、チャン ハク
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE04
5E001AJ01
5E001AJ02
5E082AB03
5E082BC35
5E082BC38
5E082BC39
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
(57)【要約】
【課題】積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、(Ba1-xCa)(Ti1-y(Zr、Hf))O(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含む誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極を含むセラミック本体と、上記第1内部電極と連結される第1外部電極と、上記第2内部電極と連結される第2外部電極と、を含み、上記誘電体層及び内部電極のうち少なくともいずれか一つはSnを含み、上記誘電体層と内部電極の界面のSnの平均含有量は、5at%以上及び/または20at%以下の範囲内であることができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ba1-xCa)(Ti1-y(Zr、Hf))O(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含む誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極を含むセラミック本体と、
前記第1内部電極と連結される第1外部電極と、前記第2内部電極と連結される第2外部電極と、を備え、
前記誘電体層及び内部電極のうち少なくともいずれか一つはSnを含み、
前記誘電体層と内部電極の界面のSnの平均含有量は、5at%以上及び/または20at%以下の範囲内である、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記誘電体層及び内部電極がいずれもSnを含む、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記内部電極内のSnの平均含有量は、0.05at%以上及び/または2at%以下の範囲内である、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記セラミック本体内のSnが最大含有量を有する領域が前記誘電体層と内部電極の界面に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記誘電体層及び内部電極のうち少なくともいずれか一つはDyを含み、
前記誘電体層と内部電極の界面のDyの平均含有量は、1at%以上及び/または5at%以下の範囲内である、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記誘電体層及び内部電極がいずれもDyを含む、請求項5に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記内部電極内のDyの平均含有量は、0.025at%以上及び/または1at%以下の範囲内である、請求項5または6に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記セラミック本体内のDyが最大含有量を有する領域が前記誘電体層と内部電極の界面に配置される、請求項5から7のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記誘電体層と内部電極の界面のDyの含有量に対するSnの含有量の割合(Sn/Dy)は、2以上の範囲を満たす、請求項5から8のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層と内部電極の界面のDyの含有量に対するSnの含有量の割合(Sn/Dy)は、4以下の範囲を満たす、請求項5から9のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
(Ba1-xCa)(Ti1-y(Zr、Hf))O(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含む誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極を含むセラミック本体と、
前記第1内部電極と連結される第1外部電極と、前記第2内部電極と連結される第2外部電極と、を備え、
前記誘電体層及び内部電極のうち少なくともいずれか一つはDyを含み、
前記誘電体層と内部電極の界面のDyの平均含有量は、1at%以上及び/または5at%以下の範囲内である、積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記誘電体層及び内部電極がいずれもDyを含む、請求項11に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
前記内部電極内のDyの平均含有量は、0.025at%以上及び/または1at%以下の範囲内である、請求項11または12に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項14】
前記誘電体層と内部電極の界面の平均厚さは、2nm以上及び/または4nm以下の範囲内である、請求項1から13のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項15】
前記誘電体層の平均厚さは、0.5μm以下である、請求項1から14のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項16】
前記第1内部電極及び/または第2内部電極の平均厚さは、0.4μm以下である、請求項1から15のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子製品の小型化の傾向により、積層セラミック電子部品も小型化され、大容量化されることが要求されている。積層セラミック電子部品の小型化及び大容量化の要求に合わせて、積層セラミック電子部品の誘電体シートも薄層化されている。
【0003】
一方、誘電体シートが薄層化されるにつれて、誘電体層の結晶粒の大きさ、成分分布などが影響を受けることにより、チップの耐電圧及び信頼性特性が劣化するという問題点が表れている。かかる信頼性の低下を解決するために、チタン酸バリウムなどのグレインの大きさを成長させる場合、目的とする水準の容量を確保しにくく、信頼性の保証にも限界がある。また、誘電体シートが薄層化されることにより、誘電体層に加わる単位長さ当たりの電界の大きさ(Field strength)が増加し、そのため誘電体の劣化が発生するという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の様々な目的のうち一つは、高温高圧特性に優れた積層セラミック電子部品を提供することにある。
【0005】
本発明の様々な目的のうち一つは、積層セラミック電子部品の絶縁抵抗特性を向上させることにある。
【0006】
本発明の様々な目的のうち一つは、信頼性が向上した積層セラミック電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、(Ba1-xCa)(Ti1-y(Zr、Hf))O(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含む誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極を含むセラミック本体と、上記第1内部電極と連結される第1外部電極と、上記第2内部電極と連結される第2外部電極と、を含み、上記誘電体層及び内部電極のうち少なくともいずれか一つはSnを含み、上記誘電体層と内部電極の界面のSnの平均含有量は、5at%以上及び/または20at%以下の範囲内であることができる。
【0008】
本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品、(Ba1-xCa)(Ti1-y(Zr、Hf))O(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含む誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極を含むセラミック本体と、上記第1内部電極と連結される第1外部電極と、上記第2内部電極と連結される第2外部電極と、を含み、上記誘電体層及び内部電極のうち少なくともいずれか一つはDyを含み、上記誘電体層と内部電極の界面のDyの平均含有量は、1at%以上及び/または5at%以下の範囲内であることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の様々な効果のうち一つは、積層セラミック電子部品の高温高圧特性を向上できることである。
【0010】
本発明の様々な効果のうち一つは、積層セラミック電子部品の絶縁抵抗特性を向上できることである。
【0011】
本発明の様々な効果のうち一つは、積層セラミック電子部品の信頼性を向上できることである。
【0012】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
図2図1のセラミック本体を概略的に示す斜視図である。
図3図1のI-I'断面図である。
図4図3のA領域の拡大図である。
図5(a)】本発明の一実施形態の内部電極及び誘電体界面におけるNi、BiTOに対するEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングイメージである。
図5(b)】本発明の一実施形態の内部電極及び誘電体界面におけるSnに対するEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングイメージである。
図5(c)】本発明の一実施形態の内部電極及び誘電体界面におけるDyに対するEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングイメージである。
図6図5(a)の内部電極及び誘電体界面におけるEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングに対するNi(a)及びBiTO(b)のLine profiling結果を示すグラフである。
図7図5(a)~図5(c)の内部電極及び誘電体界面におけるEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングに対するNi(a)、BiTO(b)、Dy(c)及びSn(d)のLine profiling結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施形態及び添付された図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。これは、本明細書に記載された技術を特定の実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の実施形態の様々な変更(modifications)、均等物(equivalents)、及び/または代替物(alternatives)を含むものと理解されるべきである。図面の説明に関して、類似の構成要素については類似の参照符号が使用される。
【0015】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、複数層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一の思想の範囲内で機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明する。
【0016】
本明細書において、「有する」、「有することができる」、「含む」、または「含むことができる」などの表現は、当該特徴(例えば、数値、機能、動作、または部品などの構成要素)の存在を指し、追加的な特徴の存在を排除しない。
【0017】
本明細書において、「A及び/またはB」、「A及び/またはBの少なくとも一つ」、或いは「A及び/またはBのいずれか一つまたはそれ以上」などの表現は、ともに挙げられた項目の全ての可能な組み合わせを含み得る。例えば、「A及び/またはB」、「A及び/またはBの少なくとも一つ」は、(1)少なくとも一つのAを含む場合、(2)少なくとも一つのBを含む場合、または(3)少なくとも一つのA及び少なくとも一つのBの両方を含む場合を何れも指すことができる。
【0018】
図面において、X方向は第1方向、L方向または長さ方向、Y方向は第2方向、W方向または幅方向、Z方向は第3方向、T方向または厚さ方向と定義することができる。
【0019】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の概略的な斜視図であり、図2は上記積層セラミック電子部品のセラミック本体に対する斜視図であり、図3図1のI-I'断面図である。また、図4図3のA領域の拡大図であり、図5(a)は本発明の一実施形態の内部電極及び誘電体界面におけるNi(a)、BiTO3(a)、Sn(b)及びDy(c)に対するEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングイメージである。図5(b)は本発明の一実施形態の内部電極及び誘電体界面におけるSnに対するEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングイメージである。図5(c)は本発明の一実施形態の内部電極及び誘電体界面におけるDyに対するEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングイメージである。
【0020】
以下、図1図4を参照して、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品について詳しく説明する。
【0021】
図1図4を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、(Ba1-xCa)(Ti1-y(Zr、Hf))O(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される主成分を含む誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極を含むセラミック本体と、上記第1内部電極と連結される第1外部電極と、上記第2内部電極と連結される第2外部電極とを含むことができる。
【0022】
この時、上記誘電体層及び内部電極のうち少なくともいずれか一つはSnを含み、上記誘電体層と内部電極の界面のSnの平均含有量は、5at%以上及び/または20at%以下の範囲内であることができる。本明細書においてある成分の「平均含有量」とは、互いに異なる10個所で採取した試料の含有量の算術平均を意味することができ、例えば積層セラミック電子部品100のセラミック本体110の中心を通りY軸に垂直であるXZ切断面に対して、上記積層セラミック電子部品の中心から近い順に上下5個の界面で測定した含有量の算術平均として求めることができる。
【0023】
本明細書において誘電体層111と第1内部電極121及び/または第2内部電極122の「界面」とは、誘電体層と内部電極が接している面を意味することができ、SEMイメージなどを通じて観察可能な面を意味することができる。また、上記界面は、互いに構成成分が異なる二つの面が接している面を意味することができ、上記誘電体層と内部電極の主要成分の分布を通じて確認可能な面を意味することができる。
【0024】
例えば、図5(a)及び図6を参照すると、Ba及びTiの含有量は所定の位置から検出されず、Niの含有量は、所定の位置を通過してから検出されることを確認することができる。これにより、上記Ba及びTiが分布する領域とNiが分布する領域が明確に区分されることを確認することができ、上記Ba及びNiの含有量が急激に変化する領域を誘電体層と内部電極の界面であると解釈することができる。
【0025】
また、図5(b)は内部電極及び誘電体界面におけるSnに対するEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピング結果を示したものであり、図7図5(a)~図5(c)のEDSマッピングに対するNi(a)、BiTO(b)、Dy(c)及びSn(d)のLine profiling結果を示すグラフである。図5(b)及び図7を参照すると、内部電極と誘電体が会う領域にSnの含有量が最大であるピーク(peak)が位置することができ、上記ピーク(peak)を連結する場合、一つの線として観察されることができる。上記Snの含有量のピーク(peak)を連結した線が誘電体層と内部電極の界面であると解釈することができる。
【0026】
薄い厚さの誘電体層において、結晶粒界の分率を増加させることで、界面における電位障壁(potential barrier)を用いて電荷の移動度を低くすることができる。そのため、結晶粒界の分率を増加させるために小さい結晶粒の分布を有する誘電体が研究されてきた。しかし、誘電体の厚さが薄くなるほど電界強度は急激に増加するようになり、ショットキー障壁(Schottky barrier)が低くなる現象が相対的によく起きるようになる。これにより、結晶粒分布の調節だけでは超薄層環境における誘電体の信頼性を担保し難い。
【0027】
また、誘電体層の厚さが薄くなるにつれて誘電体層の積層数が増加するようになり、誘電体と内部電極の界面の数が増加するようになる。この場合、界面特性により全体積層セラミック電子部品の特性に大きく変化が発生するようになり、界面部を如何に設計して制御するかによって製品の特性及び信頼性が大きく変わる。そこで、本発明者らは、誘電体層と内部電極の界面の特性を制御して信頼性の主要な劣化機構である酸素空孔の移動を抑制することができることを見出した。本明細書において「酸素空孔(oxygen vacancy)」とは、ある化合物において酸素があるべき所から酸素が抜け出して生じた空孔を意味する。例えば、ペロブスカイト構造(ABO)を有するチタン酸バリウム(BaTiO)を還元雰囲気下で焼結すると、上記チタン酸バリウム(BaTiO)が有する酸素のうち一部が還元されて酸素が上記チタン酸バリウム(BaTiO)から落ちるようになり、酸素の落ちて生じた空孔はイオン伝導度を有する酸素空孔となる。かかる酸素空孔は、絶縁性低下などの電気的特性を悪化させる原因となるため、薄い厚さを有する積層セラミック電子部品では、酸素空孔を抑制することが重要である。
【0028】
本実施形態による積層セラミック電子部品は、ペロブスカイト構造(ABO)を有する誘電体層において、Snの分布を制御して酸素空孔の移動を抑制することができる。特に、誘電体層と内部電極の界面におけるSnの含有量が前述した範囲を満たす場合、ドナー(donor)及びアクセプター(acceptor)のバランスを調節して優れた信頼性を実現することができる。
【0029】
本発明の他の実施形態において、積層セラミック電子部品の誘電体層及び内部電極のうち少なくともいずれか一つはDyを含み、上記誘電体層と内部電極の界面のDyの平均含有量は、1at%以上及び/または5at%以下の範囲内であることができる。一般的に希土類元素はAサイトに置換される場合、ドナー(donor)として作用し、Bサイトに置換される場合、アクセプター(acceptor)として作用する傾向がある。この時、Aサイト及び/またはBサイトのいずれの位置に置換されるかを決める重要な要因としてイオン半径が挙げられる。Dyは、希土類元素のうち代表的な両性元素であり、AサイトまたはBサイトに選択的に置換されてアクセプターとドナーのバランスを取る役割を行うことができる。誘電体層と内部電極の界面におけるDyの含有量が上記範囲を満たす場合、酸素空孔の移動を効果的に抑制することができる。
【0030】
一つの例示において、本発明による積層セラミック電子部品の誘電体層及び内部電極のうち少なくともいずれか一つは、Sn及びDyを含み、誘電体層と内部電極の界面のSnの平均含有量は、5at%以上及び/または20at%以下の範囲内であり、上記誘電体層と内部電極の界面のDyの平均含有量は、1at%以上及び/または5at%以下の範囲内であることができる。即ち、前述した2種の実施形態を同時に満たす構成を有することができる。この場合、より優れた信頼性向上の効果を得ることができる。
【0031】
本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層111を間に挟んで交互に積層される第1及び第2内部電極121、122を含むセラミック本体110を含むことができる。
【0032】
上記セラミック本体110は、第1方向(X方向)に対向する第1及び第2面S1、S2、第2方向(Y方向)に対向する第3及び第4面S3、S4、第3方向(Z方向)に対向する第5及び第6面S5、S6を含むことができる。
【0033】
上記セラミック本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示されたように、セラミック本体110は、六面体形状やこれと類似した形状からなることができる。上記セラミック本体110は、焼成過程でセラミック本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。上記セラミック本体110は、必要に応じて角に丸みをつけるラウンド処理をすることができる。上記ラウンド処理は、例えば、バレル研磨などを使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0034】
上記セラミック本体110は、誘電体層111、第1内部電極121、及び第2内部電極122が交互に積層されていることができる。上記誘電体層111、第1内部電極121及び第2内部電極122は、第3方向(Z方向)に積層されていることができる。上記複数の誘電体層111は焼成した状態で、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0035】
本発明による積層セラミック電子部品100の誘電体層111は、(Ba1-xCa)(Ti1-y(Zr、Hf))O(但し、0≦x≦1、0≦y≦0.5)で表される成分を含むことができる。上記成分は、例えばBaTiOにCa、Zr、Sn及び/またはHfが一部固溶された形態で存在する化学物であることができる。上記組成式において、xは0以上、1以下の範囲であることができ、yは0以上、0.5以下の範囲であることができるが、これに制限されるものではない。例えば、上記組成式において、xが0、yが0、zが0である場合、上記成分はBaTiOになることができる。また、上記成分に本発明の目的に応じて多様なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0036】
本発明の一実施形態において、誘電体層111の平均厚さは0.5um以下であることができる。上記誘電体層111の平均厚さは、焼成された誘電体層111のうち第1及び第2内部電極の間に位置した互いに異なる5個所の位置で測定された値の平均であることができる。上記誘電体層111の平均厚さの下限は特に制限されるものではないが、例えば0.01um以上であることができる。
【0037】
上記誘電体層111は、前述した材料を含むスラリーに必要に応じて添加剤を追加し、これをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して複数個のセラミックシートを設けることにより形成されることができる。上記セラミックシートは、上記スラリーをドクターブレード法で数μmの厚さを有するシート(sheet)型で作製することにより形成されることができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
本発明の一つの例示において、積層セラミック電子部品100の第1及び第2内部電極121、122は、各断面がセラミック本体110の対向する両端部にそれぞれ露出するように積層されることができる。具体的に、上記セラミック本体110の第1方向(X方向)の両面に上記第1及び第2内部電極121、122がそれぞれ露出することができ、上記セラミック本体110の第1面S1方向に第1内部電極121が露出し、第2面S2方向に第2内部電極122が露出することができる。
【0039】
一つの例示において、積層セラミック電子部品100の第1及び第2内部電極121、122の平均厚さは、0.4um以下であることができる。上記内部電極の平均厚さは、焼成された内部電極の互いに異なる5個所の位置で測定された値の平均であることができる。上記第1及び第2内部電極の平均厚さの下限は特に制限されるものではないが、例えば0.01um以上であることができる。
【0040】
上記第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上の物質を含む導電性ペーストを用いて形成されることができる。
【0041】
上記セラミック本体110は、誘電体層に第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、誘電体層に第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを第3方向(Z方向)に交互に積層して形成することができる。上記第1及び第2内部電極121、122の印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
前述したSn及び/またはDyは、上記誘電体層及び内部電極のうち少なくともいずれか一つに含まれることができる。上記Sn及び/またはDyが誘電体層に含まれる場合、これは、誘電体層を製造するためのセラミックグリーンシートの製造過程に上記Sn及び/またはDyを添加したものであることができる。また、上記Sn及び/またはDyが内部電極に含まれる場合、これは、内部電極を製造するための導電性ペーストの製造過程に上記Sn及び/またはDyを添加したものであることができる。
【0043】
一つの例示において、積層セラミック電子部品のSn及び/またはDyは、誘電体層及び内部電極にいずれにも含まれることができる。この場合、誘電体層の結晶粒のシェル部及び/または結晶粒界に主に分布するDyと、相対的にシェル部に拡散の難しいSnが焼結段階から押し出される過程を経り、誘電体層の主成分であるチタン酸バリウムなどとの反応時間を最小化して、誘電体層と内部電極の界面の厚さを最小化することができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品の誘電体層と内部電極の界面の平均厚さは、2nm以上及び/または4nm以下の範囲内であることができる。本明細書において、誘電体層と内部電極の界面の「厚さ」は、上記界面の一側表面に対して垂直である方向に測定した他側表面までの距離を意味することができ、「平均厚さ」は前述した平均含有量を求めた位置で測定した値であることができる。例えば、積層セラミック電子部品100のセラミック本体110の中心を通りY軸に垂直であるXZ切断面に対して、上記積層セラミック電子部品の中心から近い順に上下5個の界面で測定した界面の厚さの算術平均として求めることができる。
【0045】
本発明による積層セラミック電子部品は、前述したように、誘電体層と内部電極の界面にSn及び/またはDyが所定の含有量範囲で含まれることができる。この時、Sn及び/またはDyを含む界面は製品の信頼性を向上させることができるが、Sn及び/またはDyの含有量が高く誘電率が低くなるおそれがある。従って、本実施形態の積層セラミック電子部品は、Sn及び/またはDyを含む誘電体層と内部電極の界面の厚さを上記範囲に調節して誘電特性の劣化なしに信頼性を向上させることができる。
【0046】
本発明の一つの例示において、積層セラミック電子部品の内部電極内のSnの平均含有量は、0.05at%以上及び/または2at%以下の範囲内であることができる。本例示の場合、内部電極がSnを含むことができ、前述した誘電体層と内部電極の界面でSnが押し出され(squeeze-out)、上記誘電体層と内部電極の界面でSnが最大含有量を有する領域が配置されると同時に、内部電極内のSnの平均含有量が界面におけるSnの含有量より低くかつ上記範囲を満たすことができる。上記平均含有量は、前述した平均含有量の測定位置と隣接した内部電極の中央部で測定した値であることができる。内部電極に含まれるSnが上記含有量範囲を満たす場合、誘電体層と内部電極の界面を薄く形成することができる。
【0047】
本発明の他の例示において、内部電極内のDyの平均含有量は、0.025at%以上及び/または1at%以下の範囲内であることができる。上記内部電極のDyの含有量もSnの場合と同様に、誘電体層と内部電極の界面にDyが最大含有量を有する領域が配置され、内部電極に含まれるDyの含有量は、上記界面における含有量より低くてよい。内部電極に含まれるDyが上記含有量範囲を満たす場合、電気的特性を低下させず、誘電体層と内部電極の界面を薄く形成することができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、積層セラミック電子部品の誘電体層及び/または内部電極はSnを含み、上記誘電体層及び/または内部電極の内部のSnが最大含有量を有する領域は、上記誘電体層と内部電極の界面に配置されることができる。誘電体層及び/または内部電極の内部のSnが最大含有量を有する領域は、上記誘電体層と内部電極の界面に配置されるということは、上記誘電体層と内部電極の界面から離れるほどSnの平均含有量が低くなることを意味することができ、上記誘電体層111と上記第1内部電極121及び/または第2内部電極122の界面から一定距離離隔した位置におけるSnの平均含有量が上記界面に比べて低いことを意味することができる。図5(b)はSnに対するEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングイメージであり、図7は上記マッピング結果に対するline profiling結果を示すグラフである。図5(b)及び図7を参照すると、誘電体層と内部電極の界面にSnが最大含有量を有する領域が配置されることができる。上記Snが最大含有量を有する領域が上記誘電体層と内部電極の界面に配置される場合、積層セラミック電子部品の電気的特性を低下させず信頼性を向上させることができる。
【0049】
上記実施形態において、本発明による積層セラミック電子部品の誘電体層と内部電極の界面におけるSnの含有量の最大値は、10at%以上及び/または20at%以下の範囲内であることができる。上記Snの含有量の最大値は、前述した平均含有量を測定した位置と同一の位置で測定した値であることができる。
【0050】
一つの例示において、積層セラミック電子部品の誘電体層及び/または内部電極はDyを含み、上記誘電体層及び/または内部電極の内部のDyが最大含有量を有する領域は、上記誘電体層と内部電極の界面に配置されることができる。誘電体層及び/または内部電極の内部のDyが最大含有量を有する領域は、上記誘電体層と内部電極の界面に配置されるということは、上記誘電体層と内部電極の界面から離れるほどDyの平均含有量が低くなることを意味することができ、上記誘電体層111と上記第1内部電極121及び/または第2内部電極122の界面から一定距離離隔した位置におけるDyの平均含有量が上記界面に比べて低いことを意味することができる。図5(c)はDyに対するEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングイメージであり、図7は上記マッピング結果に対するline profiling結果を示すグラフである。図5(c)及び図7を参照すると、誘電体層と内部電極の界面にDyが最大含有量を有する領域が配置されることができる。上記Dyが最大含有量を有する領域は、上記誘電体層と内部電極の界面に配置される場合、積層セラミック電子部品の耐電圧特性を向上させることができる。
【0051】
上記例示において、本発明による積層セラミック電子部品の誘電体層と内部電極の界面におけるDyの含有量の最大値は、2at%以上及び/または5at%以下の範囲内であることができる。上記Dyの含有量の最大値は、前述した平均含有量を測定した位置と同一の位置で測定した値であることができる。
【0052】
本発明の一実施形態において、積層セラミック電子部品の誘電体層及び/または内部電極はSn及びDyを含み、上記誘電体層と内部電極の界面のDyの含有量に対するSnの含有量の割合(Sn/Dy)は、2以上であることができる。上記の割合(Sn/Dy)は、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、または2.5以上であることができるが、これに限定されるものではない。
【0053】
本発明の他の実施形態において、積層セラミック電子部品の誘電体層及び/または内部電極はSn及びDyを含み、上記誘電体層と内部電極の界面のDyの含有量に対するSnの含有量の割合(Sn/Dy)は、4以下であることができる。上記の割合(Sn/Dy)は、4.0以下、3.9 以下、3.8 以下、3.7 以下、3.6以下、または3.5以下であることができるが、これに限定されるものではない。
【0054】
本発明による積層セラミック電子部品の誘電体層と内部電極の界面のDyの含有量に対するSnの含有量の割合(Sn/Dy)が上記範囲を満たす場合、Sn及びDyが適切な割合でAサイト及びBサイトに置換されることができ、これによりフェルミ準位とEiが類似値を有するようになるFermi level pinning効果を有することができ、積層セラミック電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0055】
本発明による積層セラミック電子部品100は、セラミック本体110の外部面に第1外部電極131及び第2外部電極132が配置されることができる。上記第1外部電極131は、本発明による積層セラミック電子部品100のセラミック本体110の第1面S1上に配置されることができ、上記第2外部電極132は、上記セラミック本体110の第2面S2上に配置されることができる。
【0056】
一つの例示において、本発明による積層セラミック電子部品100の第1外部電極131の少なくとも一部がセラミック本体110の第3面S3、第4面S4、第5面S5及び第6面S6上に延長して配置されることができる。また、第2外部電極132の少なくとも一部が上記セラミック本体110の第3面S3、第4面S4、第5面S5及び第6面S6上に延長して配置されることができる。この場合、上記第1外部電極131と第2外部電極132は、互いに離隔して配置されることができる。上記第1外部電極131及び/または第2外部電極132の少なくとも一部がそれぞれ上記セラミック本体110の第3面S3、第4面S4、第5面S5及び第6面S6上に延長して配置される場合、上記延長される部分はいわゆるバンド部として機能することができ、水分浸透などを防止して本発明による積層セラミック電子部品100の信頼性をより向上させることができる。
【0057】
本発明の一実施形態において、積層セラミック電子部品100の第1外部電極131及び第2外部電極132は、導電性金属を含む焼成電極であることができる。上記導電性金属は、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0058】
また、上記第1外部電極131及び第2外部電極132は、ガラスを含むことができる。上記ガラスは、酸化物が混合した組成であることができ、特に制限されるものではないが、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、転移金属酸化物、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択された一つ以上であることができる。上記転移金属は、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)及びニッケル(Ni)からなる群より選択され、上記アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)からなる群より選択され、上記アルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる群より選択された一つ以上であることができる。
【0059】
上記第1外部電極131及び第2外部電極132の形成方法の例示として、導電性金属を含む導電性ペーストにセラミック本体110をディッピングした後、焼成して形成するか、上記導電性ペーストをセラミック本体110の表面にスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などで印刷し焼成して形成することができる。また、上記導電性ペーストをセラミック本体110の表面に塗布するか、または上記導電性ペーストを乾燥させた乾燥膜をセラミック本体110上に転写した後、これを焼成して形成する方法などが挙げられるが、これに制限されるものではない。例えば、上記方法以外の多様な方法で導電性ペーストをセラミック本体110上に形成した後、これを焼成して形成することができる。
【0060】
本発明の他の実施形態において、積層セラミック電子部品100の第1及び第2外部電極131、132は、伝導性付与剤及びベース樹脂を含む樹脂系電極であることができる。上記樹脂系電極は、ベース樹脂の内部に伝導性付与剤が分散した構造を有し、焼成電極に比べて低温の環境で製造されることで伝導性付与剤が粒子形態でベース樹脂の内部に存在することができる。上記第1及び第2外部電極131c、132cが樹脂系電極の場合、外部の衝撃などの物理的ストレスを遮断することができる。
【0061】
上記伝導性付与剤は、導電性金属及び/または伝導性高分子を含むことができる。上記導電性金属は、例えばカルシウム(Ca)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、鉛(Pb)及びこれらの合金からなる群より選択される1種以上であることができるが、これに制限されるものではない。
【0062】
また、上記伝導性高分子の非制限的な例示として、PT(poly(thiophene))、PEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene)、PPS(poly(p-phenylene sulfide))、PANI(polyanilines)、P3HT(poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl))、PolyTPD(poly(4-butylphenyldiphenylamine))、PSS(poly(4-butylphenyldiphenylamine))、PVK(poly(9-vinylcarbazole))、PDBT(poly(4,4'-dimethoxy bithophene))、polyaniline、またはpolypyrroleなどの硫黄(S)及び/または窒素(N)含有化合物が挙げられ、poly(fluorine)、polyphenylene、polypyrene、polyazulene、polynaphthalene、PAC(poly(acetylene))、PPV(poly(p-phenylene vinylene)などのヘテロ原子を含まない化合物を例として挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0063】
上記第1及び第2外部電極131、132は、必要に応じて炭素ナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどのカーボンフィラー及び/または球状、楕円状、フレイク状、繊維状、または樹枝状(デンドライト状)の合金フィラーなどの導電性フィラーを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0064】
上記第1及び第2外部電極131、132に含まれるベース樹脂は、例えば熱硬化性樹脂であることができる。上記熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂などが挙げられるが、これに制限されるものではない。熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて架橋剤、重合開始剤などの硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤などをさらに添加して使用することができる。
【0065】
[実験例]
セラミック本体の長さ方向の面に外部電極が形成された三星電気の1005サイズ(長さ×幅:1.0mm×0.5mm)の量産チップ(温度特性X7R及び容量220.0nF)を使用して高温加速寿命試験(High Accelerated Life Test;HALT)を進行した。試験に使用したチップは、誘電体層と内部電極の両方にSn及びDyを用いたチップを使用し、Sn及びDyの含有量を異ならせたことを除いては、同一の条件で製造したチップを使用した。Sn及びDyの含有量は、前述した平均含有量を求めるための10個所の測定地点で測定し、Sn及びDyのピーク値は、上記測定地点における測定した値のうち最大値を使用した。
【0066】
また、Sn及びDyの平均値は、上記10個所の測定地点におけるSn及びDyの含有量を用いて計算した。Sn及びDyの平均含有量を求めるための方法は以下の通りである。(1)まず、上記測定地点でSnがピーク値を有する地点を内部電極と誘電体層の界面であると想定した。(3)上記界面から両側に2nm以内の領域におけるSn及びDyの含有量の算術平均値を求めた。上記算術平均値はEDS(energy dispersive spectroscopy)マッピングに対するLine profiling結果から計算した。そして、(3)上記10個所の測定地点で計算したSn及びDyの算術平均値からSn及びDyの平均含有量を求めた。
【0067】
【表1】
【0068】
高温加速寿命試験は、130℃の温度及び2×Vr(定格電圧)で100時間の間維持した後、400個のサンプルのうち発生した不良の個数を測定した。
【0069】
上記表1は、Sn及びDyの含有量のピーク値及び平均値に対するHALTテスト結果を示すものである。上記表1に示すように、内部電極と誘電体層の界面におけるSnの平均含有量が5at%より小さい場合、HALTテストで不良が急増することを確認することができる。また、Dyの平均含有量が1at%より小さい場合、不良率が上昇することを確認することができる。そして図7のSn及びDyの含有量を参照すると、Snの平均含有量は約20at%以下の範囲で観察され、Dyの平均含有量は約5at%以下の範囲で観察されることを確認することができる。従って、内部電極と誘電体層の界面におけるDyの平均含有量が5at%以上及び/または20at%以下の範囲内に属する時、優れた高温信頼性を有することを確認することができ、内部電極と誘電体層の界面におけるDyの平均含有量が1at%以上及び/または5at%以下の範囲を満たす時、低い不良率を示すことを確認することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0071】
100:積層セラミック電子部品
110:セラミック本体
111:誘電体層
121、122:第1及び第2内部電極
131、132:第1及び第2外部電極
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6
図7