IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

特開2022-146883プリンタ、制御方法、および制御プログラム
<>
  • 特開-プリンタ、制御方法、および制御プログラム 図1
  • 特開-プリンタ、制御方法、および制御プログラム 図2
  • 特開-プリンタ、制御方法、および制御プログラム 図3
  • 特開-プリンタ、制御方法、および制御プログラム 図4
  • 特開-プリンタ、制御方法、および制御プログラム 図5
  • 特開-プリンタ、制御方法、および制御プログラム 図6
  • 特開-プリンタ、制御方法、および制御プログラム 図7
  • 特開-プリンタ、制御方法、および制御プログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146883
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】プリンタ、制御方法、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20220928BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20220928BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B41J2/17 201
B41J2/175 101
B41J2/175 501
B41J2/165 101
B41J2/17 203
B41J2/175 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019874
(22)【出願日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2021047125
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】川俣 範幸
(72)【発明者】
【氏名】玉置 修一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056JA06
2C056JA16
2C056JA17
2C056JC06
2C056KB02
2C056KB08
2C056KB37
2C056KC00
(57)【要約】
【課題】各供給流路間の抵抗差によらずノズル孔の吐出性能を回復できるプリンタ、制御方法、および制御プログラムを提供する。
【解決手段】プリンタは複数のサブタンクと複数の供給流路と複数の供給バルブとノズル面とキャップと廃液ポンプとCPUを備える。複数のサブタンクはインクを貯留する。複数の供給流路はヘッドと複数のサブタンクを接続する。複数の供給バルブは複数の供給流路に設けられる。ノズル面はヘッドに設けられる。ノズル面には複数のノズル孔が設けられる。複数のノズル孔は複数の供給流路から供給されたインクを吐出する。キャップは複数のノズル孔を覆ってノズル面に密着可能である。廃液ポンプは廃液流路に設けられる。廃液流路はキャップに接続される。CPUはキャップがノズル面に密着した状態であって、複数の供給バルブの一つを開状態とし、且つ複数の供給バルブの他の一つを閉状態とした状態で廃液ポンプを駆動する(S2)。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留する第一タンクおよび第二タンクと、
ヘッドと前記第一タンクとを接続する第一供給流路と、
前記ヘッドと前記第二タンクとを接続する第二供給流路と、
前記第一供給流路に設けられた第一供給バルブと、
前記第二供給流路に設けられた第二供給バルブと、
前記ヘッドに設けられた面であって、前記第一供給流路から供給されたインクを吐出する第一ノズル孔と、前記第二供給流路から供給されたインクを吐出する第二ノズル孔とが設けられたノズル面と、
前記第一ノズル孔および前記第二ノズル孔を覆って前記ノズル面に密着可能なキャップと、
前記キャップに接続された廃液流路に設けられたポンプと、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記キャップが前記ノズル面に密着した状態であって、前記第一供給バルブおよび前記第二供給バルブの一方を開き、且つ他方を閉じた状態で前記ポンプを駆動する第一パージ処理を実行する
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第一パージ処理の実行後、前記キャップが前記ノズル面に密着した状態であって、前記第一供給バルブおよび前記第二供給バルブの両方を開いた状態で前記ポンプを駆動する第二パージ処理を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第一パージ処理の実行後、前記キャップと前記ノズル面との間の空間を大気と連通させた状態で前記ポンプを駆動する後処理を実行する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記キャップに接続された流路であって、大気と連通する大気連通流路に設けられた大気連通バルブを備え、
前記制御部は、
前記後処理において、前記大気連通バルブを開くことで、前記キャップと前記ノズル面との間の前記空間を大気と連通させた状態とする
ことを特徴とする請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第一パージ処理と前記第二パージ処理との間に、前記ポンプの駆動を停止し、前記第一供給バルブおよび前記第二供給バルブの両方を開いた状態とする中間処理を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記第一供給流路および前記第二供給流路の少なくとも一方は、フィルタを備えた
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項7】
前記第一タンクは、第一タンク流路を介して、インクを貯留する第一メインタンクに接続された第一サブタンクであり、
前記第二タンクは、第二タンク流路を介して、インクを貯留する第二メインタンクに接続された第二サブタンクである
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項8】
前記第一タンク流路に設けられた第一タンクバルブと、
前記第二タンク流路に設けられた第二タンクバルブと
を備え、
前記制御部は、
前記第一タンクバルブおよび前記第二タンクバルブにおいて、前記第一供給バルブおよび前記第二供給バルブのうち開いた供給バルブに応じたタンクバルブを閉じた状態で前記第一パージ処理を実行する
ことを特徴とする請求項7に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記第一タンク流路に設けられた第一タンクバルブと、
前記第二タンク流路に設けられた第二タンクバルブと
を備え、
前記制御部は、
前記第一タンクバルブおよび前記第二タンクバルブにおいて、前記第一供給バルブおよび前記第二供給バルブのうち開いた供給バルブに応じたタンクバルブを開いた状態で前記第一パージ処理を実行する
ことを特徴とする請求項7に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記第一タンクおよび前記第二タンクは、前記ヘッドを支持するキャリッジとは異なる位置に設けられる
ことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項11】
ヘッドに設けられたノズル面において、前記ヘッドと第一タンクとを接続する第一供給流路から供給されたインクを吐出する第一ノズル孔および前記ヘッドと第二タンクとを接続する第二供給流路から供給されたインクを吐出する第二ノズル孔を覆って前記ノズル面に密着可能なキャップが前記ノズル面に密着した状態であって、前記第一供給流路に設けられた第一供給バルブおよび前記第二供給流路に設けられた第二供給バルブの一方を開き、且つ他方を閉じた状態で、前記キャップに接続された廃液流路に設けられたポンプを駆動する第一パージ処理を
備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、
ヘッドに設けられたノズル面において、前記ヘッドと第一タンクとを接続する第一供給流路から供給されたインクを吐出する第一ノズル孔および前記ヘッドと第二タンクとを接続する第二供給流路から供給されたインクを吐出する第二ノズル孔を覆って前記ノズル面に密着可能なキャップが前記ノズル面に密着した状態であって、前記第一供給流路に設けられた第一供給バルブおよび前記第二供給流路に設けられた第二供給バルブの一方を開き、且つ他方を閉じた状態で、前記キャップに接続された廃液流路に設けられたポンプを駆動する第一パージ処理を
実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、制御方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインクジェット記録装置はサブタンクとヘッドを備える。サブタンクにはインクが貯留される。ヘッドには供給流路を介してサブタンクからインクが供給される。ヘッドはノズル孔からインクを吐出する。さらに、インクジェット記録装置はキャッピング手段と廃インクタンクと吸引ポンプを備える。キャッピング手段はノズル孔をキャッピングできる。廃インクタンクは廃液流路を介してキャッピング手段と接続する。吸引ポンプは廃液流路に設けられる。インクジェット記録装置は、ノズル孔の吐出性能を回復させるため、キャッピング手段によってノズル孔がキャッピングされた状態で吸引ポンプを駆動し、パージを行う。これにより、インクがノズル孔から吸引されてキャッピング手段から廃液流路を介して廃インクタンクに排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-216797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記インクジェット記録装置において、第一サブタンクと第二サブタンクが設けられる構成が考えられる。この場合、第一供給流路と第二供給流路が設けられる。第一供給流路は第一サブタンクと接続する。第二供給流路は第二サブタンクと接続する。ヘッドには第一ノズル孔と第二ノズル孔が設けられる。第一ノズル孔は第一供給流路から供給されたインクを吐出する。第二ノズル孔は第二供給流路から供給されたインクを吐出する。この場合、第一供給流路と第二供給流路の間には、インクが流れるときの抵抗差が生じる可能性がある。
【0005】
例えば、各サブタンクに互いに粘度の異なるインクが貯留される場合がある。この場合、粘度の高いインクの供給流路の抵抗は、粘度の低いインクの供給流路の抵抗よりも大きい。例えば、ヘッド、供給流路の部品等の交換時、供給流路内にエアが混入する場合がある。この場合、エアの混入量が多い供給流路の抵抗は、エアの混入量がないまたは少ない供給流路の抵抗よりも大きい。さらに、交換後の部品はインクで濡れていないので、交換後の部品の位置では抵抗が大きくなる場合がある。各供給流路の抵抗差は、各供給流路が長くなるにつれて大きくなる。
【0006】
上記インクジェット記録装置において、サブタンクに貯留されるインク量が多い場合等には、サブタンクがヘッドから離れた位置に配置される構成が考えられる。この場合、サブタンクがヘッド付近に配置される場合に比べて各供給流路が長くなりやすいので、各供給流路の抵抗差が大きくなりやすい。
【0007】
さらに、上記インクジェット記録装置において、一つのキャッピング手段によって各ノズル孔がキャッピングされる構成が考えられる。この場合、第一供給流路と第二供給流路との間に抵抗差がある状態でパージが行われると、抵抗の小さい供給流路からインクが排出されやすく、抵抗の大きい供給流路からはインクが排出されにくい。このため、抵抗の大きい供給流路に応じたノズル孔の吐出性能は、抵抗の小さい供給流路に応じたノズル孔の吐出性能よりも回復しづらくなる。
【0008】
本発明の目的は、各供給流路間の抵抗差によらずノズル孔の吐出性能を回復できるプリンタ、制御方法、および制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一態様に係るプリンタは、インクを貯留する第一タンクおよび第二タンクと、ヘッドと前記第一タンクとを接続する第一供給流路と、前記ヘッドと前記第二タンクとを接続する第二供給流路と、前記第一供給流路に設けられた第一供給バルブと、前記第二供給流路に設けられた第二供給バルブと、前記ヘッドに設けられた面であって、前記第一供給流路から供給されたインクを吐出する第一ノズル孔と、前記第二供給流路から供給されたインクを吐出する第二ノズル孔とが設けられたノズル面と、前記第一ノズル孔および前記第二ノズル孔を覆って前記ノズル面に密着可能なキャップと、前記キャップに接続された廃液流路に設けられたポンプと、制御部とを備え、前記制御部は、前記キャップが前記ノズル面に密着した状態であって、前記第一供給バルブおよび前記第二供給バルブの一方を開き、且つ他方を閉じた状態で前記ポンプを駆動する第一パージ処理を実行することを特徴とする。
【0010】
第一パージ処理では、第一供給バルブおよび第二供給バルブの一方が開き、且つ他方が閉じた状態でポンプが駆動される。このため、第一供給流路と第二供給流路の間の抵抗差によらず、開いた供給バルブに応じたノズル孔からインクが排出される。これにより、プリンタは開いた供給バルブに応じたノズル孔の吐出性能を回復させることができる。よって、プリンタは第一供給流路と第二供給流路の間の抵抗差によらず、ノズル孔の吐出性能を回復させることができる。
【0011】
前記制御部は、前記第一パージ処理の実行後、前記キャップが前記ノズル面に密着した状態であって、前記第一供給バルブおよび前記第二供給バルブの両方を開いた状態で前記ポンプを駆動する第二パージ処理を実行してもよい。
【0012】
第一パージ処理では、第一供給バルブと第二供給バルブのうち、閉じた供給バルブから閉じた供給バルブに応じたノズル孔までの供給流路に、閉じた供給バルブに応じたノズル孔からインクおよびエアが戻る可能性がある。第二パージ処理では、第一供給バルブと第二供給バルブの両方が開いた状態となる。このため、第一供給バルブと第二供給バルブのうち、第一パージ処理で開いていた供給バルブに応じたノズル孔に加えて、第一パージ処理で閉じていた供給バルブに応じたノズル孔からもインクが排出される。よって、プリンタは、第一パージ処理の後に第二パージ処理を実行することで、第一供給バルブと第二供給バルブのうち、第一パージ処理で開いていた供給バルブに応じたノズル孔の吐出性能に加えて第一パージ処理で閉じていた供給バルブに応じたノズル孔の吐出性能も回復させることができる。
【0013】
前記制御部は、前記第一パージ処理の実行後、前記キャップと前記ノズル面との間の空間を大気と連通させた状態で前記ポンプを駆動する後処理を実行してもよい。
【0014】
プリンタは、後処理において、キャップとノズル面の間を大気と連通させた状態でポンプを駆動することで、キャップ内からインクを除去する。よって、プリンタは、第一供給流路と第二供給流路の負圧による第一供給流路または第二供給流路へのインクの逆流を抑制できる。
【0015】
前記プリンタは、前記キャップに接続された流路であって、大気と連通する大気連通流路に設けられた大気連通バルブを備え、前記制御部は、前記後処理において、前記大気連通バルブを開くことで、前記キャップと前記ノズル面との間の前記空間を大気と連通させた状態としてもよい。
【0016】
プリンタは大気連通バルブの開閉を制御するだけで、簡易な構成で、キャップとノズル面の間を大気と連通させることができる。
【0017】
前記制御部は、前記第一パージ処理と前記第二パージ処理との間に、前記ポンプの駆動を停止し、前記第一供給バルブおよび前記第二供給バルブの両方を開いた状態とする中間処理を実行してもよい。
【0018】
中間処理によって第一供給バルブと第二供給バルブの両方が開いた状態になるので、第一供給流路と第二供給流路の圧力が均衡する。この状態で第二パージ処理が実行される。よって、プリンタは、中間処理を実行することで、第二パージ処理において、第一供給流路と第二供給流路の間の圧力差による第一供給流路または第二供給流路へのインクの逆流を抑制できる。
【0019】
前記第一供給流路および前記第二供給流路の少なくとも一方は、フィルタを備えてもよい。
【0020】
例えばフィルタの交換時には第一供給流路と第二供給流路の間に抵抗差が生じやすい。プリンタはフィルタを交換した供給流路のバルブを開いて第一パージ処理を実行できる。この場合、第一供給流路と第二供給流路の間に抵抗差があったとしても、プリンタはフィルタを交換した供給流路に応じたノズル孔の吐出性能を回復させることができる。
【0021】
前記第一タンクは、第一タンク流路を介して、インクを貯留する第一メインタンクに接続された第一サブタンクであり、前記第二タンクは、第二タンク流路を介して、インクを貯留する第二メインタンクに接続された第二サブタンクであってもよい。
【0022】
仮に第一メインタンクから第一タンク流路と第一供給流路を介して、または第二メインタンクから第二タンク流路と第二供給流路を介してインクが流れる場合、第一パージ処理において第一供給流路または第二供給流路分のインクに加えて第一タンク流路または第二タンク流路分のインクを要する可能性がある。プリンタは、第一パージ処理において第一タンク流路および第二タンク流路分のインクを要しないので、第一パージ処理によって消費されるインク量を抑制できる。
【0023】
前記プリンタは、前記第一タンク流路に設けられた第一タンクバルブと、前記第二タンク流路に設けられた第二タンクバルブとを備え、前記制御部は、前記第一タンクバルブおよび前記第二タンクバルブにおいて、前記第一供給バルブおよび前記第二供給バルブのうち開いた供給バルブに応じたタンクバルブを閉じた状態で前記第一パージ処理を実行してもよい。
【0024】
例えば第一供給バルブが開いた状態の場合、プリンタは、第一タンクバルブを閉じた状態で第一パージ処理を実行する。この場合、プリンタは第一パージ処理中に第一メインタンクから第一サブタンクにインクが供給されることを抑制できる。すなわち、プリンタはヘッドとサブタンクの水頭差を安定させて第一パージ処理を実行できる。よって、プリンタはノズル孔の吐出性能を安定して回復させることができる。
【0025】
前記プリンタは、前記第一タンク流路に設けられた第一タンクバルブと、前記第二タンク流路に設けられた第二タンクバルブとを備え、前記制御部は、前記第一タンクバルブおよび前記第二タンクバルブにおいて、前記第一供給バルブおよび前記第二供給バルブのうち開いた供給バルブに応じたタンクバルブを開いた状態で前記第一パージ処理を実行してもよい。
【0026】
例えば第一供給バルブが開いた状態の場合、プリンタは、第一タンクバルブを開いた状態で第一パージ処理を実行する。この場合、プリンタは第一パージ処理中に第一メインタンクから第一サブタンクにインクを供給できる。すなわち、プリンタは、第一パージ処理中に、第一サブタンク内のインクが空になることを抑制できる。このため、プリンタは例えば大量のインクを使用して第一パージ処理を実行できる。よって、プリンタはノズル孔の吐出性能をより確実に回復させることができる。
【0027】
前記第一タンクおよび前記第二タンクは、前記ヘッドを支持するキャリッジとは異なる位置に設けられてもよい。
【0028】
ヘッドが第一タンクおよび第二タンクから離れた位置に配置される。このため、第一供給流路と第二供給流路の長さが長くなる。第一供給流路と第二供給流路の長さが長くなるほど、第一供給流路と第二供給流路の間の抵抗差は大きくなりやすい。プリンタは第一パージ処理を実行することで、第一供給流路と第二供給流路の間の抵抗差によらず、ノズル孔の吐出性能を回復させることができる。
【0029】
本発明の第二態様に係る制御方法は、ヘッドに設けられたノズル面において、前記ヘッドと第一タンクとを接続する第一供給流路から供給されたインクを吐出する第一ノズル孔および前記ヘッドと第二タンクとを接続する第二供給流路から供給されたインクを吐出する第二ノズル孔を覆って前記ノズル面に密着可能なキャップが前記ノズル面に密着した状態であって、前記第一供給流路に設けられた第一供給バルブおよび前記第二供給流路に設けられた第二供給バルブの一方を開き、且つ他方を閉じた状態で、前記キャップに接続された廃液流路に設けられたポンプを駆動する第一パージ処理を備えたことを特徴とする。
【0030】
第二態様は第一態様と同様の効果を奏することができる。
【0031】
本発明の第三態様に係る制御プログラムは、コンピュータに、ヘッドに設けられたノズル面において、前記ヘッドと第一タンクとを接続する第一供給流路から供給されたインクを吐出する第一ノズル孔および前記ヘッドと第二タンクとを接続する第二供給流路から供給されたインクを吐出する第二ノズル孔を覆って前記ノズル面に密着可能なキャップが前記ノズル面に密着した状態であって、前記第一供給流路に設けられた第一供給バルブおよび前記第二供給流路に設けられた第二供給バルブの一方を開き、且つ他方を閉じた状態で、前記キャップに接続された廃液流路に設けられたポンプを駆動する第一パージ処理を
実行させることを特徴とする。
【0032】
第三態様は第一態様と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】プリンタ1を前右上方から見た斜視図である。
図2】初期状態のカラーインクの流路構成図である。
図3】プリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
図4】メイン処理のフローチャートである。
図5】単色パージ処理中のカラーインクの流路構成図である。
図6】中間処理中のカラーインクの流路構成図である。
図7】全色パージ処理中のカラーインクの流路構成図である。
図8】後処理中のカラーインクの流路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係るプリンタ1を説明する。図1の左下側、右上側、右下側、左上側、上側、および下側は、それぞれ、プリンタ1の前側、後側、右側、左側、上側、および下側である。本実施形態において図面中の機械的要素は、実際のスケールを示す。
【0035】
図1に示すプリンタ1はインクジェットプリンタであり、印刷媒体(図示略)にインクを吐出し、印刷を行う。印刷媒体は、布帛、紙等であり、例えばTシャツである。プリンタ1は、一例として、白(W)、黒(K)、イエロー(Y)、シアン(C)、およびマゼンタ(M)の5色のインクを用いて、印刷媒体にカラー画像を印刷できる。
【0036】
以下では、5色のインクのうち白色のインクを「白インク」といい、黒、シアン、イエロー、およびマゼンタの4色のインクを、それぞれ、「黒インク」、「シアンインク」、「イエローインク」、「マゼンタインク」という。黒インク、シアンインク、イエローインク、マゼンタインクを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、単に「カラーインク」という。白インクとカラーインクを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、単に「インク」という。
【0037】
図1に示すように、プリンタ1は搬送部11と一対のガイドレール21を備える。搬送部11は前後方向に延び、プラテン15を支持する。プラテン15の上面には印刷媒体(図示略)が載置される。プラテン15は図3に示す副走査モータ32の駆動によって、搬送部11に沿って前後方向に搬送される。したがって、本実施形態では、前後方向が副走査方向となる。
【0038】
一対のガイドレール21は左右方向に延び、キャリッジ23を支持する。キャリッジ23はプラテン15よりも上方に位置する。キャリッジ23にはヘッド25が搭載される。ヘッド25の個数は特定の個数に限定されないが、一例として六つである。なお、図1では前後方向に並んだ三つのヘッド25のみが図示されている。
【0039】
複数のヘッド25は、それぞれ、図3に示すヘッド駆動部35の駆動によって、カラーインク、白インク、前処理剤、特殊塗料等を吐出する。複数のヘッド25の構造はそれぞれ同じなので、一例として、カラーインクを吐出するヘッド25の構造を説明する。
【0040】
ヘッド25は直方体状である。ヘッド25の下面には図2に示すノズル面26が設けられる。ノズル面26には複数のノズル孔が形成される。本実施形態では、一例として図2に示す四つのノズル孔26K、26Y、26C、26Mがノズル面26に形成される。ヘッド25はノズル孔26K、26Y、26C、26Mのそれぞれから黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクを吐出する。
【0041】
キャリッジ23は図3に示す主走査モータ31の駆動によって、一対のガイドレール21に沿って左右方向に搬送される。これにより、ヘッド25も左右方向に搬送される。したがって、本実施形態では、左右方向が主走査方向となる。
【0042】
上記構成によれば、プリンタ1は、図3に示す副走査モータ32の駆動によってプラテン15を前方から後方に移動させる。その後、プリンタ1は図3に示す副走査モータ32の駆動によってプラテン15を後方から前方に移動させながら、図3に示す主走査モータ31の駆動によってキャリッジ23を左右方向に往復移動させる。ヘッド25は左右方向に走査しながらインクを吐出する。このように、プリンタ1はプラテン15上の印刷媒体をヘッド25に対して前後方向および左右方向に搬送しながらヘッド25からインクを吐出することで、印刷媒体に印刷画像を印刷する。
【0043】
プラテン15の移動経路の左側、且つヘッド25の移動経路の下側の位置には、キャップ17が設けられる。キャップ17の個数はヘッド25の個数に応じ、一例として六つである。キャップ17はヘッド25の配置位置に応じた位置に配置される。
【0044】
キャップ17は図3に示すキャップモータ33の駆動によって上下方向に移動する。印刷終了後、ヘッド25はキャリッジ23によってプラテン15の移動経路の左側まで搬送される。これにより、ヘッド25はキャップ17の上方に配置される。この状態で図3に示すキャップモータ33が駆動することで、キャップ17が上方に移動する。この場合、キャップ17はノズル孔26K、26Y、26C、26Mの全部を下方から覆ってノズル面26に密着する。印刷時は、キャップモータ33が駆動することで、キャップ17が下方に移動し、ノズル面26から離れる。
【0045】
以下では、図2に示すように、キャップ17がノズル孔26K、26Y、26C、26Mの全部を覆ってノズル面26に密着する状態を「密着状態」という。キャップ17が密着状態にある場合、キャップ17とノズル面26の間にはキャップ空間18が形成される。キャップ17がノズル面26に密着する「密着状態」では、後述する単色パージ処理、および全色パージ処理等のパージ処理において、キャップ17とノズル面26とが離れなければよく、例えば、「密着状態」において、キャップ17はキャップ空間18の内部と外部の圧力差を維持できる。
【0046】
図1に示すように、プリンタ1の右部には収納部50が設けられる。収納部50には複数のメインタンク52が収納される。プリンタ1の右部、かつガイドレール21の後側には複数のサブタンク51が配置される。すなわち、複数のメインタンク52とサブタンク51はキャリッジ23に搭載されない、いわゆるオフキャリッジのタンクである。複数のサブタンク51は同じ高さに設けられるのが望ましいが、水平方向におけるサブタンク51の向きは、限定されない。
【0047】
メインタンク52はカートリッジまたはタンクによって構成される。サブタンク51は例えばパウチで構成され、可撓性を有する。複数のメインタンク52とサブタンク51は、それぞれ、インクを貯留する。本実施形態では、メインタンク52は、図2に示すメインタンク52K、52Y、52C、52Mを含む。サブタンク51は、図2に示すサブタンク51K、51Y、51C、51Mを含む。
【0048】
メインタンク52とサブタンク51はオフキャリッジのタンクなので、メインタンク52とサブタンク51の大きさには、キャリッジ23に搭載される、いわゆるオンキャリッジのタンクに比べて大きな制約が課されにくい。このため、メインタンク52とサブタンク51は、オンキャリッジのタンクに比べて大量のインクを貯留しやすい。
【0049】
図2を参照し、一例として、カラーインクの流路構成を説明する。以下では、バルブが閉じた状態を「閉状態」といい、バルブが開いた状態を「開状態」という。図2では、閉状態のバルブは斜線のないバルブで図示され、開状態のバルブは斜線のあるバルブで図示される(図5図8も同様)。図2では、停止中のポンプは斜線のないポンプで図示され、駆動中のポンプは斜線のあるポンプで図示される(図5図8も同様)。
【0050】
プリンタ1はメインタンク52K、52Y、52C、52Mとタンク流路71K、71Y、71C、71Mとサブタンク51K、51Y、51C、51Mを備える。メインタンク52K、52Y、52C、52Mは、それぞれ、黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクを貯留する。メインタンク52K、52Y、52C、52Mは、カラーインクの流路において、最上流となる。
【0051】
タンク流路71K、71Y、71C、71Mは例えばチューブで構成され、可撓性を有する。タンク流路71K、71Y、71C、71Mのそれぞれの上流端は、メインタンク52K、52Y、52C、52Mに接続する。タンク流路71K、71Y、71C、71Mのそれぞれの下流端は、サブタンク51K、51Y、51C、51Mに接続する。
【0052】
したがって、黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクは、それぞれ、メインタンク52K、52Y、52C、52Mからサブタンク51K、51Y、51C、51Mに向かって、タンク流路71K、71Y、71C、71M内を流れる。サブタンク51K、51Y、51C、51Mは、それぞれ、黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクを貯留する。
【0053】
タンク流路71K、71Y、71C、71Mのそれぞれには、タンクバルブ81K、81Y、81C、81M、タンクポンプ82K、82Y、82C、82M、タンクフィルタ83K、83Y、83C、83Mが設けられる。タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mは図3に示すソレノイド811、812、813、814の駆動によって、閉状態と開状態に変位できる。
【0054】
タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mは、それぞれ、閉状態においてタンク流路71K、71Y、71C、71Mを遮断状態にする。タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mは、それぞれ、開状態においてタンク流路71K、71Y、71C、71Mを連通状態にする。
【0055】
タンクポンプ82K、82Y、82C、82Mはタンクバルブ81K、81Y、81C、81Mよりも上流側に設けられる。タンクポンプ82K、82Y、82C、82Mは、それぞれ、図3に示すポンプモータ821、822、823、824の駆動によって、メインタンク52K、52Y、52C、52Mから黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクを吸引する。タンクポンプ82K、82Y、82C、82Mは、それぞれ、図3に示すポンプモータ821、822、823、824の駆動によって、吸引した黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクを、タンク流路71K、71Y、71C、71Mを介してサブタンク51K、51Y、51C、51Mに向かって送る。
【0056】
タンクフィルタ83K、83Y、83C、83Mはタンクポンプ82K、82Y、82C、82Mよりも上流側に位置し、タンク流路71K、71Y、71C、71Mに対して交換可能に取り付けられる。タンクフィルタ83K、83Y、83C、83Mは例えば不織布、織布、樹脂フィルム、多孔質金属片で構成され、インクをろ過する。
【0057】
プリンタ1は供給流路72K、72Y、72C、72Mを備える。供給流路72K、72Y、72C、72Mは例えばチューブで構成され、可撓性を有する。供給流路72K、72Y、72C、72Mのそれぞれの上流端は、サブタンク51K、51Y、51C、51Mに接続する。供給流路72K、72Y、72C、72Mのそれぞれの下流端は、ヘッド25に接続する。
【0058】
供給流路72K、72Y、72C、72Mは可撓性を有するので、ヘッド25の移動に応じて変形できる。供給流路72K、72Y、72C、72Mの上流端から下流端までの長さは、それぞれ、例えばヘッド25の移動範囲の左端から右端までの長さよりも長い。
【0059】
例えば印刷中には、黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクは、それぞれ、サブタンク51K、51Y、51C、51Mとヘッド25の水頭差によって、サブタンク51K、51Y、51C、51Mからヘッド25に向かって、供給流路72K、72Y、72C、72M内を流れる。ヘッド25は、ノズル孔26K、26Y、26C、26Mから、それぞれ、黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクを吐出する。
【0060】
供給流路72K、72Y、72C、72Mのそれぞれには、供給バルブ84K、84Y、84C、84M、供給フィルタ85K、85Y、85C、85Mが設けられる。供給バルブ84K、84Y、84C、84Mは図3に示すソレノイド841、842、843、844の駆動によって閉状態と開状態に変位できる。
【0061】
供給バルブ84K、84Y、84C、84Mは、それぞれ、閉状態において供給流路72K、72Y、72C、72Mを遮断状態にする。供給バルブ84K、84Y、84C、84Mは、それぞれ、開状態において供給流路72K、72Y、72C、72Mを連通状態にする。
【0062】
供給フィルタ85K、85Y、85C、85Mは供給バルブ84K、84Y、84C、84Mよりも下流側に位置し、供給流路72K、72Y、72C、72Mに対して交換可能に取り付けられる。供給フィルタ85K、85Y、85C、85Mは例えば不織布、織布、樹脂フィルム、多孔質金属片で構成され、インクをろ過する。
【0063】
プリンタ1は廃液タンク53と廃液流路73を備える。廃液タンク53は印刷に使用されなかったインク(以下、「廃液99」という。図5参照)を貯留する。廃液流路73は例えばチューブで構成され、可撓性を有する。廃液流路73の一端はキャップ17に接続する。廃液流路73の他端は廃液タンク53に接続する。したがって、図5に示す廃液99は、キャップ空間18から廃液タンク53に向かって廃液流路73内を流れる。
【0064】
廃液流路73には廃液バルブ86と廃液ポンプ87が設けられる。廃液バルブ86は図3に示すソレノイド861の駆動によって閉状態と開状態に変位できる。廃液バルブ86は、閉状態において廃液流路73を遮断状態にする。廃液バルブ86は、開状態において廃液流路73を連通状態にする。
【0065】
廃液ポンプ87は廃液バルブ86よりも廃液流路73の他端側(廃液タンク53側)に設けられる。廃液ポンプ87は、図3に示すポンプモータ871の駆動によって、キャップ空間18から図5に示す廃液99、エア等を吸引する。廃液ポンプ87は、図3に示すポンプモータ871の駆動によって、吸引した廃液99、エア等を、廃液流路73を介して廃液タンク53に向かって送る。
【0066】
プリンタ1は大気連通流路74を備える。大気連通流路74は例えばチューブで構成され、可撓性を有する。大気連通流路74の一端はキャップ17に接続する。大気連通流路74の他端は大気90に開放される。
【0067】
大気連通流路74には大気連通バルブ88が設けられる。大気連通バルブ88は図3に示すソレノイド881の駆動によって閉状態と開状態に変位できる。大気連通バルブ88は、閉状態において大気連通流路74を遮断状態にする。大気連通バルブ88は、開状態において大気連通流路74を連通状態にする。
【0068】
図3を参照し、プリンタ1の電気的構成を説明する。プリンタ1は制御基板10を備える。制御基板10にはCPU41、ROM42、RAM43、およびフラッシュメモリ44が設けられる。CPU41はプリンタ1の制御を司り、ROM42、RAM43、およびフラッシュメモリ44と電気的に接続する。ROM42は、CPU41がプリンタ1の動作を制御するための制御プログラム、各種プログラムの実行時にCPU41が必要な情報等を記憶する。RAM43は、制御プログラムで用いられる各種データ等を一時的に記憶する。フラッシュメモリ44は、不揮発性であり、印刷を行うための印刷データ等を記憶する。
【0069】
CPU41には主走査モータ31、副走査モータ32、キャップモータ33、ヘッド駆動部35、ソレノイド811~814、841~844、861、881、ポンプモータ821~824、871、および操作部37が電気的に接続される。主走査モータ31、副走査モータ32、キャップモータ33、ヘッド駆動部35、ソレノイド811~814、841~844、861、881、およびポンプモータ821~824、871はCPU41による制御によって駆動する。
【0070】
操作部37はタッチパネル等であり、ユーザによる操作に応じた情報をCPU41に出力する。ユーザは操作部37を操作することで、パージを行うためのパージ指示等をプリンタ1に入力できる。
【0071】
図4図8を参照し、メイン処理を説明する。例えばユーザは図3に示す操作部37を操作し、パージ指示をプリンタ1に入力する。パージ指示が入力されると、CPU41は、ROM42から制御プログラムを読み出して動作することで、メイン処理を実行する。パージ指示は、例えば、後述の単色パージ処理(図4参照)においてパージするインクとして、黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクのいずれか一つを指定する。
【0072】
以下では、供給流路72K、72Y、72C、72M自体、供給フィルタ85K、85Y、85C、85M、供給バルブ84K、84Y、84C、84M、供給流路72K、72Y、72C、72Mとサブタンク51K、51Y、51C、51Mの接続部品、供給流路72K、72Y、72C、72Mとヘッド25との接続部品等を総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、「供給流路72K、72Y、72C、72Mの部品」という。インクが供給流路72K、72Y、72C、72M内を流れる場合にインクと供給流路72K、72Y、72C、72Mの間に生じる抵抗を、「供給流路72K、72Y、72C、72Mの抵抗」という。
【0073】
例えば、ユーザが供給流路72Kの部品を交換したときに、供給流路72K内にエアが混入する場合がある。この場合、エアによってインクの流れが阻害されるので、供給流路72Kの抵抗が大きくなる。
【0074】
さらに、例えばユーザが供給流路72Kの部品を交換した場合には、供給流路72Y、72C、72Mの部品はそれぞれイエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクで濡れている。一方で、交換後の供給流路72Kの部品はまだ黒インクで濡れていない。例えば、供給流路72Kの長さが供給流路72Y、72C、72Mの長さよりも長い場合がある。例えば、供給流路72Kの内径が供給流路72Y、72C、72Mの内径よりも小さい場合がある。例えば、供給流路72K、72Y、72C、72Mの部品のバラツキによって、供給流路72Kの部品が供給流路72Y、72C、72Mの部品よりも抵抗を生じやすい場合がある。例えば、黒インクの粘度がイエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクの粘度よりも大きい場合がある。これらの場合も、供給流路72Kの抵抗が大きくなる。
【0075】
以上の場合、供給流路72Kの抵抗は供給流路72Y、72C、72Mの抵抗よりも大きくなりやすい。特にオフキャリッジの場合には、オンキャリッジの場合に比べて供給流路72K、72Y、72C、72Mの長さが長くなりやすいので、供給流路72Kの抵抗は供給流路72Y、72C、72Mの抵抗よりも大きくなりやすい。この場合、仮に黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクの全部のパージが同時に行われると、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクよりも黒インクが排出されにくい可能性がある。
【0076】
イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクよりも黒インクが排出されにくい可能性がある場合、ユーザは操作部37を操作することで、黒インクを指定してパージ指示をプリンタ1に入力する。以下では、パージ指示によって黒インクが指定された場合を適宜例に挙げてメイン処理を説明する。
【0077】
図4に示すように、メイン処理が開始されると、CPU41は初期処理を行う(S1)。初期処理では、CPU41はプリンタ1を図2に示す初期状態とする。例えば、CPU41は図3に示すソレノイド811~814を制御し、図2に示すタンクバルブ81K、81Y、81C、81Mを閉状態にする。CPU41は図3に示すソレノイド841~844を制御し、図2に示す供給バルブ84K、84Y、84C、84Mを閉状態にする。CPU41は図3に示すソレノイド861を制御し、図2に示す廃液バルブ86を閉状態にする。CPU41は図3に示すソレノイド881を制御し、図2に示す大気連通バルブ88を閉状態にする。
【0078】
CPU41は図3に示すポンプモータ821~824の駆動を停止し、図2に示すタンクポンプ82K、82Y、82C、82Mの駆動を停止する。CPU41は図3に示すポンプモータ871の駆動を停止し、図2に示す廃液ポンプ87の駆動を停止する。
【0079】
CPU41は図3に示す主走査モータ31を制御し、図1に示すヘッド25をキャップ17の上方に配置する。ヘッド25がキャップ17の上方に配置された状態で、CPU41は図3に示すキャップモータ33を制御し、図1に示すキャップ17を上方に移動させる。これにより、キャップ17が図2に示す密着状態となる。以上により、プリンタ1は図2に示す初期状態となる。本実施形態では、一例として、キャップ17が密着状態を維持したまま以下のS2~S5の処理が行われる。
【0080】
初期状態では、タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mが閉状態である。このため、メインタンク52K、52Y、52C、52Mからサブタンク51K、51Y、51C、51Mに、それぞれ、黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクが供給されることはない。よって、ヘッド25とサブタンク51K、51Y、51C、51Mの水頭差が安定する。本実施形態では、一例として、ヘッド25とサブタンク51K、51Y、51C、51Mの水頭差が安定した状態で以下のS2~S5の処理が行われる。
【0081】
CPU41は単色パージ処理を行う(S2)。単色パージ処理では、CPU41は図3に示すソレノイド841~844のうち、パージ指示によって指定された一つのカラーインクに応じたソレノイドを制御する。これにより、図2に示す供給バルブ84K、84Y、84C、84Mにおいて、CPU41は制御したソレノイドに対応する供給バルブを開状態にする。つまり、単色パージ処理では、図2に示す供給バルブ84K、84Y、84C、84Mのいずれか一つが開状態となり、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの他の三つは閉状態のままとなる。
【0082】
CPU41は図3に示すソレノイド861を制御し、図2に示す廃液バルブ86を開状態にする。図2に示すタンクバルブ81K、81Y、81C、81Mは閉状態のままである。図2に示す大気連通バルブ88は閉状態のままである。
【0083】
供給バルブ84K、84Y、84C、84Mのいずれか一つが開状態、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの他の三つが閉状態、廃液バルブ86が開状態、タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mの全部が閉状態、大気連通バルブ88が閉状態で、CPU41は図3に示すポンプモータ871を制御し、図2に示す廃液ポンプ87を駆動させる。
【0084】
CPU41は廃液ポンプ87を所定の単色パージ時間分だけ駆動させた後、ポンプモータ871の駆動を停止する。これにより、廃液ポンプ87の駆動が停止する。単色パージ時間は、例えばパージするインク量に応じてユーザによって設定される。
【0085】
図5に示すように、パージ指示によって黒インクが指定された場合、単色パージ処理によって供給バルブ84Kが開状態になる。この場合、供給バルブ84Y、84C、84Mは閉状態のままである。この状態で単色パージ処理によって廃液ポンプ87が駆動しても(矢印A1参照)、供給バルブ84Y、84C、84Mは閉状態なので、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクがサブタンク51Y、51C、51Mから供給流路72Y、72C、72Mを介してヘッド25に向かって下流側へと流れることはない。
【0086】
ただし、供給バルブ84Y、84C、84Mよりも下流側において、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクがヘッド25に向かって供給流路72Y、72C、72M内を下流側へ流れる。これにより、供給流路72Y、72C、72Mのそれぞれの中のイエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクの一部がノズル孔26Y、26C、26Mのそれぞれからキャップ空間18に廃液99として排出される。
【0087】
一方で、供給バルブ84Kは開状態なので、単色パージ処理によって廃液ポンプ87が駆動すると(矢印A1参照)、供給流路72Kと、供給流路72Y、72C、72Mのそれぞれとの間の抵抗差によらず、黒インクがサブタンク51Kから供給流路72Kを介してヘッド25に向かって下流側へと流れる(矢印A2参照)。これにより、ノズル孔26Kからキャップ空間18に黒インクが廃液99として排出され(矢印A2参照)、供給流路72K内からエアが除去される。
【0088】
図4に示すように、CPU41は中間処理を行う(S3)。中間処理では、CPU41は図3に示すソレノイド861を制御し、図5に示す廃液バルブ86を閉状態にする。CPU41は図3に示すポンプモータ871の駆動を停止し、図5に示す廃液ポンプ87の駆動を停止する。
【0089】
CPU41は図3に示すソレノイド841~844のうち、パージ指示によって指定された一つのカラーインク以外のカラーインクに応じたソレノイドを制御する。これにより、図5に示す供給バルブ84K、84Y、84C、84Mにおいて、CPU41は制御したソレノイドに対応する供給バルブを開状態にする。つまり、図5に示す供給バルブ84K、84Y、84C、84Mのすべてが開状態になる。図5に示すタンクバルブ81K、81Y、81C、81Mは閉状態のままである。図5に示す大気連通バルブ88は閉状態のままである。
【0090】
図6に示すように、パージ指示によって黒インクが指定された場合、単色パージ処理によって供給バルブ84Kが既に開状態になっているので、中間処理によってさらに供給バルブ84Y、84C、84Mが開状態になる。これにより、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mのすべてが開状態になる。
【0091】
この場合、サブタンク51K、51Y、51C、51M、供給流路72K、72Y、72C、72M、キャップ空間18は、それぞれつながって一つの閉空間を形成する。このため、サブタンク51K、51Y、51C、51M、供給流路72K、72Y、72C、72M、キャップ空間18の圧力が均衡するようにカラーインクが流れる。
【0092】
単色パージ処理が行われた時点では、供給流路72Kの負圧よりも供給流路72Y、72C、72Mの負圧の方が大きい。単色パージ処理時に供給流路72Y、72C、72Mに発生した負圧により、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクが、サブタンク51Y、51C、51Mから供給流路72Y、72C、72M内をヘッド25に向かって下流側に流れる(矢印A3~A5参照)。
【0093】
図4に示すように、CPU41は全色パージ処理を行う(S4)。全色パージ処理では、CPU41は図3に示すソレノイド861を制御し、図6に示す廃液バルブ86を開状態にする。図6に示す供給バルブ84K、84Y、84C、84Mは開状態のままである。図6に示すタンクバルブ81K、81Y、81C、81Mは閉状態のままである。図6に示す大気連通バルブ88は閉状態のままである。
【0094】
供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの全部が開状態、廃液バルブ86が開状態、タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mの全部が閉状態、大気連通バルブ88が閉状態で、CPU41は図3に示すポンプモータ871を制御し、図6に示す廃液ポンプ87を駆動させる。
【0095】
CPU41は廃液ポンプ87を所定の全色パージ時間駆動させた後、ポンプモータ871の駆動を停止する。これにより、廃液ポンプ87の駆動が停止する。全色パージ時間は、例えばパージするインク量に応じてユーザによって設定される。
【0096】
図7に示すように、全色パージ処理によって廃液ポンプ87が駆動すると(矢印A6参照)、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの全部が開状態なので、黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクがサブタンク51K、51Y、51C、51Mから供給流路72K、72Y、72C、72M内をヘッド25に向かって下流側に流れる(矢印A7、A8、A9、A10参照)。
【0097】
これにより、ノズル孔26K、26Y、26C、26Mからキャップ空間18に黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクが廃液99として排出され(矢印A7、A8、A9、A10参照)、供給流路72K、72Y、72C、72M内からエアが除去される。
【0098】
図4に示すように、CPU41は後処理を行う(S5)。後処理では、CPU41は図3に示すソレノイド881を制御し、図7に示す大気連通バルブ88を開状態にする。図7に示す供給バルブ84K、84Y、84C、84Mは開状態のままである。図7に示すタンクバルブ81K、81Y、81C、81Mは閉状態のままである。図7に示す廃液バルブ86は開状態のままである。
【0099】
供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの全部が開状態、廃液バルブ86が開状態、タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mの全部が閉状態、大気連通バルブ88が開状態で、CPU41はポンプモータ871を制御し、廃液ポンプ87を駆動させる。
【0100】
CPU41は廃液ポンプ87を所定の空吸引時間駆動させた後、ポンプモータ871の駆動を停止する。これにより、廃液ポンプ87の駆動が停止する。空吸引時間は、例えば廃液99の全部が後処理によってキャップ空間18から廃液タンク53に排出される程度の時間に設定される。CPU41はメイン処理を終了する。
【0101】
図8に示すように、後処理によって大気連通バルブ88が開状態になることで、大気90が大気連通流路74からキャップ空間18に流れる(矢印A11参照)。これにより、キャップ空間18が大気90と連通し、大気圧となる。このため、後処理によって廃液ポンプ87が駆動すると(矢印A12参照)、廃液99がキャップ空間18から廃液流路73を介して廃液タンク53に排出される。これにより、プリンタ1はキャップ17に付着する廃液99およびノズル面26に付着する廃液99を除去する。
【0102】
本実施形態の主な作用効果を説明する。以下では、単色パージ処理で供給バルブ84Kが開状態となり、供給バルブ84Y、84C、84Mが閉状態となる場合を例として説明する。なお、単色パージ処理では、供給バルブ84Y、84C、84Mのいずれかが開状態となってもよい。この場合も、プリンタ1は単色パージ処理で供給バルブ84Kが開状態となる場合と同様の効果を奏することができる。
【0103】
プリンタ1は、サブタンク51K、51Y、51C、51Mと、供給流路72K、72Y、72C、72Mと、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mと、ノズル面26と、キャップ17と、廃液ポンプ87と、CPU41とを備える。サブタンク51K、51Y、51C、51Mは、インクを貯留する。供給流路72K、72Y、72C、72Mは、ヘッド25とサブタンク51K、51Y、51C、51Mを接続する。供給バルブ84K、84Y、84C、84Mは、供給流路72K、72Y、72C、72Mに設けられる。ノズル面26は、ヘッド25に設けられる。ノズル面26には、ノズル孔26K、26Y、26C、26Mが設けられる。ノズル孔26K、26Y、26C、26Mは、供給流路72K、72Y、72C、72Mから供給されたインクを吐出する。キャップ17は、ノズル孔26K、26Y、26C、26Mを覆ってノズル面26に密着可能である。廃液ポンプ87は、廃液流路73に設けられる。廃液流路73は、キャップ17に接続される。CPU41は、単色パージ処理を実行する。単色パージ処理では、CPU41は、キャップ17がノズル面26に密着した状態であって、供給バルブ84Kを開状態とし、且つ供給バルブ84Y、84C、84Mを閉状態とした状態で廃液ポンプ87を駆動する。
【0104】
単色パージ処理では、例えば、供給バルブ84Kが開状態となり、且つ供給バルブ84Y、84C、84Mが閉状態となった状態で廃液ポンプ87が駆動される。このため、供給流路72Kと、供給流路72Y、72C、72Mのそれぞれとの間の抵抗差によらず、ノズル孔26Kからインクが排出される。これにより、プリンタ1はノズル孔26Kの吐出性能を回復させることができる。よって、プリンタ1は供給流路72Kと供給流路72Y、72C、72Mのそれぞれとの間の抵抗差によらず、ノズル孔26Kの吐出性能を回復させることができる。さらに、単色パージ処理では、供給バルブ84Y、84C、84Mが閉状態となっているので、廃液ポンプ87の吸引力は主に供給流路72Kに作用する。このため、供給バルブ84Kに加えて供給バルブ84Y、84C、84Mも開状態となっている場合に比べ、供給流路72K内のインクの流速が大きくなる。よって、プリンタ1は、より早く、より確実に、ノズル孔26Kの吐出性能を回復させることができる。
【0105】
CPU41は、単色パージ処理の実行後、全色パージ処理を実行する。全色パージ処理では、CPU41は、キャップ17がノズル面26に密着した状態であって、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの全部を開状態で廃液ポンプ87を駆動する。
【0106】
単色パージ処理では、供給バルブ84Y、84C、84Mが閉状態なので、供給バルブ84Y、84C、84Mからノズル孔26Y、26C、26Mまでの供給流路72Y、72C、72Mに負圧が発生する。この負圧によって、供給バルブ84Y、84C、84Mからノズル孔26Y、26C、26Mまでの供給流路72Y、72C、72Mに、ノズル孔26Y、26C、26Mからインクおよびエアが戻る可能性がある。全色パージ処理では、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの全部が開状態となる。このため、ノズル孔26Kに加えて、ノズル孔26Y、26C、26Mからもインクが排出される。よって、プリンタ1は、単色パージ処理の後に全色パージ処理を実行することで、ノズル孔26Kの吐出性能に加えてノズル孔26Y、26C、26Mの吐出性能も回復させることができる。さらに、単色パージ処理によって供給流路72K内からエアが除去されると、供給流路72Kと供給流路72Y、72C、72Mのそれぞれとの間の抵抗差が単色パージ処理前に比べて小さくなる。供給流路72Kと供給流路72Y、72C、72Mのそれぞれとの間の抵抗差が小さくなった後に、全色パージ処理が実行される。よって、プリンタ1は、全色パージ処理の後に単色パージ処理が行われる場合に比べてより安定的に、ノズル孔26K、26Y、26C、26Mの全部の吐出性能を回復させることができる。
【0107】
CPU41は、単色パージ処理の実行後、後処理を実行する。後処理では、CPU41は、キャップ17とノズル面26との間のキャップ空間18を大気90と連通させた状態で廃液ポンプ87を駆動する。
【0108】
プリンタ1は、後処理において、キャップ空間18が大気90と連通した状態で廃液ポンプ87を駆動することで、キャップ空間18からインクを除去する。これにより、例えば、プリンタ1はキャップ17に付着する廃液99およびノズル面26に付着する廃液99を除去できる。よって、プリンタ1は、供給流路72K、72Y、72C、72Mの負圧による供給流路72K、72Y、72C、72Mへの廃液99の逆流を抑制できる。
【0109】
プリンタ1は、大気連通バルブ88を備える。大気連通バルブ88は、大気連通流路74に設けられる。大気連通流路74は、キャップ17に接続され、大気90と連通する。CPU41は、後処理において、大気連通バルブ88を開くことで、キャップ17とノズル面26との間のキャップ空間18を大気90と連通させた状態とする。
【0110】
例えばキャップ空間18に負圧が発生している場合、キャップ17をノズル面26から下方に離すためには大きな力が必要となる。プリンタ1は大気連通バルブ88の開閉を制御するだけで、簡易な構成で、キャップ空間18を大気90と連通させることができる。さらに、キャップ17がノズル面26に密着したままなので、キャップ空間18内の廃液99がキャップ17からこぼれにくい。このため、プリンタ1はプリンタ1の部品に廃液99が付着することによるプリンタ1の不具合を抑制できる。
【0111】
CPU41は、単色パージ処理と全色パージ処理との間に、中間処理を実行する。中間処理では、CPU41は、廃液ポンプ87の駆動を停止し、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの全部を開状態とする。
【0112】
中間処理によって供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの全部が開状態になるので、供給流路72K、72Y、72C、72Mの圧力が均衡する。例えば、単色パージ処理によって供給流路72Kがパージされた場合、供給流路72Y、72C、72Mにおいて、供給バルブ84Y、84C、84Mよりも下流側には、負圧が発生する。中間処理によって、サブタンク51Y、51C、51Mから供給流路72Y、72C、72Mにインクが供給されることで、上記負圧が小さくなる。このため、プリンタ1は単色パージ処理での供給流路72Kのパージによる供給流路72Y、72C、72Mへの廃液99の逆流を抑制できる。さらに、この状態で全色パージ処理が実行される。よって、プリンタ1は、中間処理を実行することで、全色パージ処理において、供給流路72Kと供給流路72Y、72C、72Mのそれぞれとの間の圧力差による供給流路72Y、72C、72Mへの廃液99の逆流を抑制できる。
【0113】
供給流路72K、72Y、72C、72Mは、供給フィルタ85K、85Y、85C、85Mを備える。
【0114】
例えば供給フィルタ85Kの交換時には供給流路72Kと供給流路72Y、72C、72Mのそれぞれとの間に抵抗差が生じやすい。この場合、供給フィルタ85Kがインクで濡れていない、供給フィルタ85Kの交換時に供給流路72Kにエアが混入する等の理由により、供給流路72Y、72C、72Mの抵抗よりも供給流路72Kの抵抗の方が大きくなりやすい。プリンタ1は供給バルブ84Kを開状態として単色パージ処理を実行できる。この場合、供給流路72Kと供給流路72Y、72C、72Mのそれぞれとの間に抵抗差があったとしても、プリンタ1はノズル孔26Kの吐出性能を回復させることができる。
【0115】
サブタンク51K、51Y、51C、51Mは、タンク流路71K、71Y、71C、71Mを介して、メインタンク52K、52Y、52C、52Mに接続される。メインタンク52K、52Y、52C、52Mは、インクを貯留する。
【0116】
仮にサブタンク51K、51Y、51C、51Mがなく、メインタンク52K、52Y、52C、52Mからヘッド25にタンク流路71K、71Y、71C、71Mと供給流路72K、72Y、72C、72Mを介してインクが流れる場合、単色パージ処理において供給流路72Kに加えてタンク流路71K分のインクを要する可能性がある。プリンタ1は、単色パージ処理においてタンク流路71K分のインクを要しないので、単色パージ処理によって消費されるインク量を抑制できる。
【0117】
プリンタ1は、タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mを備える。タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mは、タンク流路71K、71Y、71C、71Mに設けられる。CPU41は、タンクバルブ81Kを閉状態で単色パージ処理を実行する。
【0118】
例えば供給バルブ84Kが開状態の場合、プリンタ1は、タンクバルブ81Kを閉状態で単色パージ処理を実行する。この場合、プリンタ1は単色パージ処理中にメインタンク52Kからサブタンク51Kにインクが供給されることを抑制できる。すなわち、プリンタ1はヘッド25とサブタンク51Kの水頭差を安定させて単色パージ処理を実行できる。よって、プリンタ1はノズル孔26Kの吐出性能を安定して回復させることができる。
【0119】
サブタンク51K、51Y、51C、51Mは、キャリッジ23とは異なる位置に設けられる。キャリッジ23は、ヘッド25を支持する。
【0120】
ヘッド25がサブタンク51K、51Y、51C、51Mから離れた位置に配置される。このため、供給流路72K、72Y、72C、72Mの長さが長くなる。供給流路72K、72Y、72C、72Mの長さが長くなるほど、供給流路72Kと供給流路72Y、72C、72Mとのそれぞれの間の抵抗差は大きくなりやすい。プリンタ1は単色パージ処理を実行することで、供給流路72Kと供給流路72Y、72C、72Mのそれぞれとの間の抵抗差によらず、ノズル孔26Kの吐出性能を回復させることができる。
【0121】
上記実施形態において、サブタンク51K、51Y、51C、51Mのいずれか一つが本発明の「第一タンク」および「第一サブタンク」に相当する。サブタンク51K、51Y、51C、51Mのいずれか他の一つが本発明の「第二タンク」および「第二サブタンク」に相当する。ヘッド25が本発明の「ヘッド」に相当する。供給流路72K、72Y、72C、72Mのいずれか一つが本発明の「第一供給流路」に相当する。供給流路72K、72Y、72C、72Mのいずれか他の一つが本発明の「第二供給流路」に相当する。供給バルブ84K、84Y、84C、84Mのいずれか一つが本発明の「第一供給バルブ」に相当する。供給バルブ84K、84Y、84C、84Mのいずれか他の一つが本発明の「第二供給バルブ」に相当する。
【0122】
ノズル孔26K、26Y、26C、26Mのいずれか一つが本発明の「第一ノズル孔」に相当する。ノズル孔26K、26Y、26C、26Mのいずれか他の一つが本発明の「第二ノズル孔」に相当する。ノズル面26が本発明の「ノズル面」に相当する。キャップ17が本発明の「キャップ」に相当する。廃液流路73が本発明の「廃液流路」に相当する。廃液ポンプ87が本発明の「ポンプ」に相当する。CPU41が本発明の「制御部」に相当する。図4のS2の処理が本発明の「第一パージ処理」に相当する。
【0123】
図4のS4の処理が本発明の「第二パージ処理」に相当する。図4のS5の処理が本発明の「後処理」に相当する。大気連通流路74が本発明の「大気連通流路」に相当する。大気連通バルブ88が本発明の「大気連通バルブ」に相当する。図4のS3の処理が本発明の「中間処理」に相当する。供給フィルタ85K、85Y、85C、85Mが本発明の「フィルタ」に相当する。
【0124】
メインタンク52K、52Y、52C、52Mのいずれか一つが本発明の「第一メインタンク」に相当する。タンク流路71K、71Y、71C、71Mのいずれか一つが本発明の「第一タンク流路」に相当する。メインタンク52K、52Y、52C、52Mのいずれか他の一つが本発明の「第二メインタンク」に相当する。タンク流路71K、71Y、71C、71Mのいずれか他の一つが本発明の「第二タンク流路」に相当する。タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mのいずれか一つが本発明の「第一タンクバルブ」に相当する。タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mのいずれか他の一つが本発明の「第二タンクバルブ」に相当する。キャリッジ23が本発明の「キャリッジ」に相当する。
【0125】
本発明は上記実施形態から変更できる。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限りそれぞれ組み合わせ可能である。例えば上記実施形態において、複数のメインタンク52と複数のサブタンク51はオンキャリッジのタンクであってもよい。この場合、供給流路72K、72Y、72C、72Mの上流端から下流端までの長さは、それぞれ、ヘッド25の移動範囲の左端から右端までの長さよりも短くてもよい。ヘッド25はラインヘッドであってもよい。
【0126】
上記実施形態では、廃液流路73において廃液ポンプ87が廃液バルブ86よりも廃液タンク53側に設けられる。これに対し、廃液ポンプ87は廃液流路73において廃液バルブ86よりもキャップ17側に設けられてもよい。廃液バルブ86は省略してもよい。
【0127】
上記実施形態において、S1~S5の各処理では、CPU41はソレノイド811~814、841~844、861、881を制御する順番を適宜変更できる。例えば、S2の処理において、CPU41は、廃液ポンプ87を駆動する前にソレノイド841~844のいずれかとソレノイド861を制御すればよい。つまり、S2の処理において、CPU41は、ソレノイド841~844のいずれかをソレノイド861よりも先に制御してもよいし、ソレノイド861をソレノイド841~844のいずかよりも先に制御してもよい。
【0128】
上記実施形態では、CPU41は、S4の処理において廃液ポンプ87の駆動を一旦停止した後、S5の処理で廃液ポンプ87の駆動を再開する。これに対し、CPU41はS4の処理において廃液ポンプ87の駆動を維持したまま、S5の処理において大気連通バルブ88を開状態にしてもよい。
【0129】
上記実施形態において、CPU41はS3~S5の一部または全部を省略してもよい。上記実施形態において、単色パージ時間、全色パージ時間、空吸引時間の長さの設定方法は、適宜変更できる。例えば、パージするインクの量に応じて単色パージ時間、全色パージ時間、空吸引時間が設定されてもよい。例えば、ユーザがパージ終了指示をプリンタ1に入力した場合に、CPU41はポンプモータ871の駆動を停止してもよい。
【0130】
上記実施形態では、CPU41はパージ指示があった場合にS1~S5の処理を一連に行う。これに対し、例えばS1~S5の各処理の実行指示があった場合に、CPU41はS1~S5の各処理を実行してもよい。
【0131】
上記実施形態では、ヘッド25はノズル孔26K、26Y、26C、26Mのそれぞれから色が異なるインクを吐出する。これに対し、ヘッド25はノズル孔26K、26Y、26C、26Mのそれぞれから同じ色のインクを吐出してもよい。例えば、ヘッド25はノズル孔26K、26Y、26C、26Mのそれぞれから白インクを吐出してもよい。この場合、例えばサブタンク51K、51Y、51C、51Mに白インクが貯留されればよい。さらに、例えばメインタンクは一つであってもよい。つまり、プリンタ1は一つのメインタンクから複数のサブタンク51K、51Y、51C、51Mのそれぞれに白インクが供給されるように構成されてもよい。
【0132】
ヘッド25は複数の個別ヘッドを含んでもよい。この場合、個別ヘッドのそれぞれには個別ノズル面が形成される。例えば、第一個別ノズル面にはノズル孔26Kが設けられる。第二個別ノズル面にはノズル孔26Yが設けられる。第三個別ノズル面にはノズル孔26Cが設けられる。第四個別ノズル面にはノズル孔26Mが設けられる。複数の個別ノズル面は全体としてノズル面26を形成する。
【0133】
上記実施形態では、メインタンク52K、52Y、52C、52Mからサブタンク51K、51Y、51C、51Mを介してヘッド25にインクが供給される。これに対し、メインタンク52K、52Y、52C、52Mからサブタンク51K、51Y、51C、51Mを介することなく、ヘッド25にインクが供給されてもよい。
【0134】
上記実施形態では、後処理において、大気連通バルブ88が開状態になることで、キャップ空間18内が大気90と連通する。これに対し、CPU41は例えばキャップモータ33を制御してキャップ17を下方に移動させてもよい。この場合、キャップ17がノズル面26から離れることで、キャップ17とノズル面26との隙間を介してキャップ空間18内が大気90と連通する。
【0135】
上記実施形態では、ヘッド25がキャップ17の上方に位置した状態でキャップ17が上方に移動することで、キャップ17は密着状態となる。これに対し、ヘッド25がキャップ17の上方に位置した状態でヘッド25が下方に移動することで、キャップ17は密着状態となってもよい。
【0136】
上記実施形態では、キャップ17は密着状態においてノズル孔26K、26Y、26C、26Mの全部を覆う。これに対し、キャップ17は密着状態においてノズル孔26K、26Y、26C、26Mの少なくとも二つを覆えばよい。例えばキャップ17が二つのノズル孔26K、26Yを覆う場合、CPU41は二つの供給バルブ84K、84Yの一方を開状態、且つ他方を閉状態で単色パージ処理を行い、二つの供給バルブ84K、84Yの両方を開状態で中間処理、全色パージ処理、および後処理を行ってもよい。例えば、一つのヘッド25に対し、二つのキャップ17が使用されてもよい。
【0137】
上記実施形態では、パージ指示は、単色パージ処理においてパージするインクとして、黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクのいずれか一つを指定する。これに対し、パージ指示は、単色パージ処理においてパージするインクとして、黒インク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンタインクのいずれか二つまたは三つを指定してもよい。
【0138】
この場合、単色パージ処理において、指定されたカラーインクに応じた二つまたは三つの供給バルブが開状態となる。つまり、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mのいずれか二つまたは三つは開状態となり、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの他の二つまたは一つは閉状態のままとなる。すなわち、単色パージ処理では供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの少なくとも一つが閉状態となり、且つ供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの少なくとも一つが開状態となればよい。
【0139】
上記実施形態では、全色パージ処理において、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mの全部が開状態となる。これに対し、全色パージ処理では、単色パージ処理で開状態となった供給バルブに加えて、単色パージ処理で閉状態となった複数の供給バルブの一部が開状態となってもよい。
【0140】
上記実施形態では、供給流路72K、72Y、72C、72Mに、それぞれ、供給フィルタ85K、85Y、85C、85Mが設けられる。これに対し、供給フィルタ85K、85Y、85C、85Mの一部または全部は省略されてもよい。供給フィルタ85K、85Y、85C、85Mは、それぞれ、供給バルブ84K、84Y、84C、84Mよりも上流側に設けられてもよい。タンクフィルタ83K、83Y、83C、83Mも同様に変更できる。
【0141】
上記実施形態では、S1~S5の処理の間、タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mの全部が閉状態となっている。これに対し、CPU41は、S1~S5の一部または全部の処理でソレノイド811~814を制御し、タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mの一部または全部を開状態としてもよい。
【0142】
例えば、CPU41は、閉状態の供給バルブに応じたタンクバルブが開状態でS2、S4の一方または両方の処理を行ってもよい。一例として、供給バルブ84Y、84C、84Mが開状態であれば、CPU41はタンクバルブ81Y、81C、81Mが開状態でS2、S4の一方または両方の処理を行ってもよい。
【0143】
例えば、S1~S5の処理の間、タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mの全部が開状態となっていてもよい。例えば、CPU41は、開状態の供給バルブに応じたタンクバルブが開状態でS2、S4の一方または両方の処理を行ってもよい。一例として、S2の処理において、供給バルブ84Kが開状態であれば、CPU41はタンクバルブ81Kが開状態で廃液ポンプ87を駆動してもよい。この場合、CPU41は、S2の処理において、ポンプモータ821を駆動し、タンクポンプ82Kを駆動してもよい。
【0144】
プリンタ1は、タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mを備える。タンクバルブ81K、81Y、81C、81Mは、タンク流路71K、71Y、71C、71Mに設けられる。CPU41は、タンクバルブ81Kを開状態で単色パージ処理を実行する。
【0145】
例えば供給バルブ84Kが開状態の場合、プリンタ1は、タンクバルブ81Kを開状態で単色パージ処理を実行する。この場合、プリンタ1は単色パージ処理中にメインタンク52Kからサブタンク51Kに黒インクを供給できる。すなわち、プリンタ1は、単色パージ処理中に、サブタンク51K内の黒インクが空になることを抑制できる。このため、プリンタ1は例えば大量の黒インクを使用して単色パージ処理を実行できる。よって、プリンタ1はノズル孔26Kの吐出性能をより確実に回復させることができる。
【符号の説明】
【0146】
1 プリンタ
17 キャップ
23 キャリッジ
25 ヘッド
26 ノズル面
26K、26Y、26C、26M ノズル孔
41 CPU
51K、51Y、51C、51M サブタンク
52K、52Y、52C、52M メインタンク
71K、71Y、71C、71M タンク流路
72K、72Y、72C、72M 供給流路
73 廃液流路
74 大気連通流路
81K、81Y、81C、81M タンクバルブ
84K、84Y、84C、84M 供給バルブ
85K、85Y、85C、85M 供給フィルタ
87 廃液ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8