(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146904
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】動力工具
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20220928BHJP
B25B 21/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B23P19/06 E
B25B21/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038339
(22)【出願日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2021047652
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岡本 太志
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 直紀
(72)【発明者】
【氏名】初見 雅人
(57)【要約】
【課題】ドライバビットが取り付けられたときのドライバビットの先端位置のばらつきを低減するようにした動力工具を提供する
【解決手段】当該動力工具10は、環状係止溝4を外周面に有するドライバビット3が着脱可能に取り付けられるようになっている。ドライバビット3をビットホルダ18の挿入孔22内に挿入すると、ビットホルダ18の周壁部24にその周方向で整列され相互に間隔をあけて配置された少なくとも3つ施錠子128が環状係止溝4に係合する。ビットホルダ18の挿入孔22内には、回転軸線Rの方向で変位可能とされた押圧部材32と、押圧部材32の後方のスプリング34とが配置されている。スプリング34は、各施錠子128によって係止されているドライバビット3を押圧部材32を介して先端側に付勢して、ドライバビット3の環状係止溝4を各施錠子128に後方から押し付ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に延びる環状係止溝を外周面に有するドライバビットが着脱可能に取り付けられるようにされた動力工具であって、
モータによって回転軸線の周りで回転駆動されるビットホルダであって、先端開口から該回転軸線に沿って後方に延びてドライバビットを受け入れるようにされた挿入孔を画定する周壁部、及び該周壁部に配置された施錠子保持孔、を有するビットホルダと、
該施錠子保持孔内に配置された施錠子であって、該挿入孔内に挿入されたドライバビットの環状係止溝に係合するように該周壁部の内周面から径方向内側に突出した係止位置と、該環状係止溝との係合が解除される、該係止位置よりも径方向外側の係止解除位置との間で変位可能に配置された施錠子と、
該周壁部の外側に配置されて、該施錠子を該係止位置に保持する施錠位置と、該施錠子が該係止解除位置に変位することを許容する解錠位置との間で変位可能とされたスリーブと、
該係止位置にある該施錠子によって係止されているドライバビットを先端側に付勢して、該ドライバビットの環状係止溝を該施錠子に後方から押し付けるようにするスプリングと、
を備える動力工具。
【請求項2】
該周壁部の該内周面に取り付けられ、該挿入孔に挿入されたドライバビットの外周面に係合して該ドライバビットを該挿入孔に対して調芯して保持するOリングをさらに備える、請求項1に記載の動力工具。
【請求項3】
該Oリングが、該周壁部の該先端開口に近接した位置に配置されている、請求項2に記載の動力工具。
【請求項4】
該施錠子保持孔と該施錠子がそれぞれ該周壁部の周方向で整列して等間隔に少なくとも3つ配置されている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の動力工具。
【請求項5】
該挿入孔内において該回転軸線の方向で変位可能に配置された押圧部材をさらに備え、該スプリングが該挿入孔内で該押圧部材の後方に配置されており、ドライバビットが該挿入孔内に挿入されたときに、該押圧部材が該ドライバビットの後端に当接して、該スプリングが該押圧部材を介して該ドライバビットを先端側に付勢するようにされた、請求項1乃至4の何れか一項に記載の動力工具。
【請求項6】
前記モータを収容する本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに固定される吸着装置本体であって、前端開口、前記前端開口から後方に延びて前記動力工具との間に内部空間を画定する筒状壁部、及び前記内部空間と連通し外部真空発生源に接続されるようにされた接続開口部を有する吸着装置本体と、
先端吸着開口から後方に延びるビット通路を画定し、前記ビットホルダに取り付けられたドライバビットが該ビット通路内に位置するようにして前記吸着装置本体に着脱可能に取り付けられる吸着先端部材と、
を備え、
前記吸着先端部材が前記吸着装置本体に取り付けられたときに、前記接続開口部から前記内部空間及び前記ビット通路を通って前記先端吸着開口にまで至る吸引流路が画定されて、前記スリーブが前記吸引流路内に収容されるようにされ、
前記吸着先端部材が前記吸着装置本体から取り外されたときに、前記スリーブを直接操作して前記解錠位置としドライバビットを前記ビットホルダから取り外すことが可能となるようにされた、請求項1乃至5の何れか一項に記載の動力工具。
【請求項7】
前記吸着先端部材が、
外周面、及び前記外周面上で周方向に延びるように形成された環状係止溝を有し、前記吸着装置本体の前記筒状壁部の内側に挿入されるようにされた筒状部材と、
前記筒状部材に保持され、前記ビット通路を画定する筒状の吸着ノズルと、
を有し、
前記吸着装置本体が、
前記筒状壁部に形成された施錠子保持孔と、
前記施錠子保持孔内に保持された施錠子であって、前記筒状壁部の内側に挿入された前記筒状部材の前記環状係止溝に係合するように前記筒状壁部の内周面から径方向内側に突出した係止位置と、前記環状係止溝との係合が解除される、前記係止位置よりも径方向外側の係止解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
前記筒状壁部の周囲に配置されて、前記吸着装置本体の前記施錠子を前記係止位置に保持する連結位置と、前記吸着装置本体の前記施錠子が前記係止解除位置に変位することを許容する連結解除位置との間で変位可能とされた連結スリーブと、
を有する、請求項6に記載の動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバビットが着脱可能に取り付けられるようにされた動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電動ドライバのような動力工具に着脱可能に取り付けられるドライバビットには、その外周面に周方向に延びる環状の係止溝が形成されているものがある。そのようなドライバビットが着脱可能に取り付けられる動力工具は、例えば特許文献1に示されるように、ドライバビットが挿入される挿入孔を画定するビットホルダと、ビットホルダに形成された施錠子保持孔内に保持された球状の施錠子と、ビットホルダの外周面上において施錠子を外側から覆うように配置されたスリーブとを備え、施錠子をドライバビットの環状係止溝に係止させることにより、ドライバビットをビットホルダに保持するようになっている。係止溝に係止された施錠子は、スリーブによって径方向外側から押えられることによりドライバビットを係止した状態に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライバビットに形成されている環状係止溝は、通常、球状の施錠子に対してやや大きな曲率の円弧状断面を有している。そのため、球状の施錠子が環状係止溝を係止している状態において、ドライバビットは、その軸線方向に変位可能な状態となる。また、挿入孔はドライバビットを円滑に挿入できるようにするために、通常はドライバビットの外径に対してやや大きな内径を有している。そのため、ドライバビットがビットホルダに取り付けられた状態において、ドライバビットはビットホルダに対してその径方向に僅かに変位可能となる。このような軸線方向や径方向でのドライバビットの変位により、ドライバビットの取り付け方によってドライバビットの先端位置がばらつくことになる。動力工具を作業者が手で持って操作する場合にはこのドライバビットの先端位置のばらつきが問題となることはあまりない。しかしながら、ロボットアームなどの自動機に搭載して使用する場合には、ドライバビットの先端が設定した位置からずれると、ドライバビットの先端がネジやボルトなどの部材に適切に嵌まらないことが生じうる。そうなると、締付け作業が適切に行えず、それにより作業工程が一時的に中断されることになり、生産効率が低下する。
【0005】
そこで本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、ドライバビットが取り付けられたときのドライバビットの先端位置のばらつきを低減することができるようにした動力工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
周方向に延びる環状係止溝を外周面に有するドライバビットが着脱可能に取り付けられるようにされた動力工具であって、
モータによって回転軸線の周りで回転駆動されるビットホルダであって、先端開口から該回転軸線に沿って後方に延びてドライバビットを受け入れるようにされた挿入孔を画定する周壁部、及び該周壁部に配置された施錠子保持孔、を有するビットホルダと、
該施錠子保持孔内に配置された施錠子であって、該挿入孔内に挿入されたドライバビットの環状係止溝に係合するように該周壁部の内周面から径方向内側に突出した係止位置と、該環状係止溝との係合が解除される、該係止位置よりも径方向外側の係止解除位置との間で変位可能に配置された施錠子と、
該周壁部の外側に配置されて、該施錠子を該係止位置に保持する施錠位置と、該施錠子が該係止解除位置に変位することを許容する解錠位置との間で変位可能とされたスリーブと、
該係止位置にある該施錠子によって係止されているドライバビットを先端側に付勢して、該ドライバビットの環状係止溝を該施錠子に後方から押し付けるようにするスプリングと、
を備える動力工具を提供する。
【0007】
当該動力工具においては、ドライバビットをスプリングによって先端側に付勢してドライバビットの環状係止溝を施錠子に後方から押し付けるようになっているため、環状係止溝が施錠子に対して大きい場合であっても、ドライバビットの先端の回転軸線の方向での位置がばらつくことを抑制することが可能となる。
【0008】
また、該周壁部の該内周面に取り付けられ、該挿入孔に挿入されたドライバビットの外周面に係合して該ドライバビットを該挿入孔に対して調芯して保持するOリングをさらに備えるようにすることができる。
【0009】
Oリングによってもドライバビットを調芯することにより、ドライバビットの回転軸線に対する傾きを低減することができ、ドライバビットの先端の位置の特に径方向でのばらつきをさらに抑制することが可能となる。
【0010】
また、該Oリングが、該周壁部の該先端開口に近接した位置に配置されているようにすることができる。
【0011】
さらには、該施錠子保持孔と該施錠子がそれぞれ該周壁部の周方向で整列して等間隔に少なくとも3つ配置されているようにすることができる。
【0012】
施錠子が等間隔に少なくとも3つ配置されていることにより、施錠子が係合する位置においてドライバビットを挿入孔に対して調芯することも可能となる。これにより、ドライバビットの先端の位置のばらつきをさらに抑制することが可能となる。
【0013】
また、
該挿入孔内において該回転軸線の方向で変位可能に配置された押圧部材をさらに備え、該スプリングが該挿入孔内で該押圧部材の後方に配置されており、ドライバビットが該挿入孔内に挿入されたときに、該押圧部材が該ドライバビットの後端に当接して、該スプリングが該押圧部材を介して該ドライバビットを先端側に付勢するようにすることができる。
【0014】
さらに、
前記モータを収容する本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに固定される吸着装置本体であって、前端開口、前記前端開口から後方に延びて前記動力工具との間に内部空間を画定する筒状壁部、及び前記内部空間と連通し外部真空発生源に接続されるようにされた接続開口部を有する吸着装置本体と、
先端吸着開口から後方に延びるビット通路を画定し、前記ビットホルダに取り付けられたドライバビットが該ビット通路内に位置するようにして前記吸着装置本体に着脱可能に取り付けられる吸着先端部材と、
を備え、
前記吸着先端部材が前記吸着装置本体に取り付けられたときに、前記接続開口部から前記内部空間及び前記ビット通路を通って前記先端吸着開口にまで至る吸引流路が画定されて、前記スリーブが前記吸引流路内に収容されるようにされ、
前記吸着先端部材が前記吸着装置本体から取り外されたときに、前記スリーブを直接操作して前記解錠位置としドライバビットを前記ビットホルダから取り外すことが可能となるようにすることができる。
【0015】
また、
前記吸着先端部材が、
外周面、及び前記外周面上で周方向に延びるように形成された環状係止溝を有し、前記吸着装置本体の前記筒状壁部の内側に挿入されるようにされた筒状部材と、
前記筒状部材に保持され、前記ビット通路を画定する筒状の吸着ノズルと、
を有し、
前記吸着装置本体が、
前記筒状壁部に形成された施錠子保持孔と、
前記施錠子保持孔内に保持された施錠子であって、前記筒状壁部の内側に挿入された前記筒状部材の前記環状係止溝に係合するように前記筒状壁部の内周面から径方向内側に突出した係止位置と、前記環状係止溝との係合が解除される、前記係止位置よりも径方向外側の係止解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
前記筒状壁部の周囲に配置されて、前記吸着装置本体の前記施錠子を前記係止位置に保持する連結位置と、前記吸着装置本体の前記施錠子が前記係止解除位置に変位することを許容する連結解除位置との間で変位可能とされた連結スリーブと、
を有することができる。
【0016】
以下、本発明に係る動力工具の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動ドライバをロボットアームに搭載した状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る電動ドライバの断面図である。
【
図4】
図2の電動ドライバにおいてドライバビットを取り外し可能とした状態の図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る、吸着装置を装着した電動ドライバの断面図である。
【
図6】
図5の電動ドライバにおいて、吸着先端部材を吸着装置本体から取り外した状態を示す断面図である。
【
図7】
図5の電動ドライバにおいて、ドライバビットを取り外した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る動力工具10は、電動モータによって駆動される電動ドライバ10であり、ロボットアーム1に取り付けられて使用される。図示の例では、電動ドライバ10は、ダンパー2を介してロボットアーム1の先端に取り付けられている。当該電動ドライバ10は、後述するように、ドライバビット3が着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0019】
図2に示すように、電動ドライバ10は、基端側の第1ハウジング12aと先端側の第2ハウジング12bとからなる本体ハウジング12を有する。第1ハウジング12a内には、電動モータ14と、電動モータ14に連結された遊星歯車機構16とが設けられている。また、第2ハウジング12b内には、遊星歯車機構16を介して電動モータ14に駆動連結されたビットホルダ18が設けられている。ビットホルダ18は、本体ハウジング12に対して回転軸線Rの周りで回転可能に配置され、電動モータ14によって回転軸線Rの周りで回転駆動されるようになっている。ビットホルダ18は、先端開口20から回転軸線Rに沿って後方(図で見て上方)に延びる挿入孔22を画定する周壁部24と、周壁部24を径方向に貫通する施錠子保持孔26とを有する。当該電動ドライバ10はさらに、施錠子保持孔26内に保持された施錠子28と、ビットホルダ18の周壁部24の外側に配置されたスリーブ30とを備える。施錠子保持孔26は、その周壁部24の周方向で整列して相互に間隔をあけて配置されている。本実施形態においては、施錠子保持孔26及び施錠子28はそれぞれ、
図3に示すように周方向で等間隔に3つ配置されている。ビットホルダ18の挿入孔22内には、回転軸線Rの方向で変位可能に配置された押圧部材32と、押圧部材32の後方に配置されて押圧部材32を先端側(図で見て下側)に向かって付勢するスプリング34が配置されている。さらにビットホルダ18の挿入孔22の先端開口20に近接した位置にはOリング36が取り付けられている。
【0020】
ドライバビット3の先端側部分3aは断面円形の外形を有するが、ドライバビット3の後方部分3bは
図3に示すように断面六角形の外形となっている。また、挿入孔22も先端側部分22aは断面円形であるが、後方部分22bはドライバビット3の六角形状に対応する六角形状となっている。このようにドライバビット3の六角形状の後方部分3bが挿入孔22の対応する六角形状の後方部分22bに挿入されることにより、ドライバビット3はビットホルダ18に対して回転方向で固定され、ビットホルダ18が回転駆動したときにビットホルダ18も一緒に回転する。
【0021】
図2に示すようにドライバビット3が挿入孔22に挿入されてビットホルダ18に取り付けられた状態では、各施錠子28が周壁部24の内周面から径方向内側に突出してドライバビット3の断面円弧状の環状係止溝4に係止した係止位置となり、スリーブ30が施錠子28を係止位置に保持する施錠位置となる。これにより、ドライバビット3はビットホルダ18に保持される。このとき、押圧部材32がドライバビット3の後端に当接し、スプリング34が押圧部材32を介してドライバビット3を先端側に付勢する。これにより、ドライバビット3の環状係止溝4が各施錠子28に後方から押し付けられた状態となり、ドライバビット3の先端5が回転軸線Rの方向で一定の位置となる。また、断面円弧状の環状係止溝4は3つの施錠子28に対して径方向でも押し付けられるため、施錠子28と係合する位置においてドライバビット3は挿入孔22に対して調芯される。さらには、先端開口20に近接した位置に取り付けられたOリング36は、径方向で圧縮された状態でドライバビット3の外周面6に係合しており、これによりその係止位置においてもドライバビット3が挿入孔22に対して調芯される。このようにドライバビット3が施錠子28とOリング36とによって異なる位置で調芯されることにより、ドライバビット3の回転軸線Rに対する傾きを実質的に無くするか又は極めて小さくすることが可能となる。
【0022】
このように、当該電動ドライバ10においては、ビットホルダ18に取り付けられたドライバビット3をスプリング34によって先端側に付勢してドライバビット3の環状係止溝4を3つの施錠子28に押し付けることにより、ドライバビット3の先端5を回転軸線Rの方向での一定の位置に位置決めすることができる。また、3つの施錠子28と先端側のOリング36とによってドライバビット3を調芯することにより、ドライバビット3の先端5を回転軸線R上に位置決めして、ドライバビット3の先端5の径方向での位置のばらつきを低減することも可能となる。
【0023】
ドライバビット3を取り外す際には、
図4に示すようにスリーブ30を先端側に変位させて解錠位置とする。そうすると、施錠子28は、図示の通り、径方向外側に変位して環状係止溝4との係合が解除される係止解除位置にまで変位可能となる。この状態でドライバビット3を挿入孔22から引き抜くことにより容易にドライバビット3を取り外すことができる。
【0024】
本発明の第2の実施形態に係る電動ドライバ110は、
図5乃至
図7に示すように、スリーブ130が、後端側に押すことにより施錠位置から解錠位置に変位するようになっている。また電動ドライバ110の本体ハウジング112には吸着装置50が取り付けられている。吸着装置50は、本体ハウジング112に止めねじ52で固定された吸着装置本体54と、吸着装置本体54に着脱可能に取り付けられた吸着先端部材56と、を備える。吸着装置本体54は、前端開口58(
図6)から後方に延びて電動ドライバ110のスリーブ130との間に内部空間59を画定する筒状壁部60と、内部空間59に連通し外部真空発生源(図示しない)にチューブや配管などを介して接続される接続開口部62とを有する。吸着先端部材56は、先端吸着開口64から後方に延びるビット通路66を画定する吸着ノズル68を有し、ドライバビット3がビット通路66内に位置するようになっている。吸着先端部材56が吸着装置本体54に取り付けられている状態では、接続開口部62から内部空間59及びビット通路66を通って先端吸着開口64にまで至る吸引流路69が形成される。また、スリーブ130は吸引流路69内に収容される。外部真空発生源により空気を吸引した状態でドライバビット3の先端5にねじを嵌めると、ねじが吸着されてドライバビット3の先端5に保持されるようになる。
【0025】
吸着装置本体54はさらに、筒状壁部60に形成された施錠子保持孔70と、施錠子保持孔70内に保持された施錠子72と、筒状壁部60の周囲に配置された連結スリーブ74とを備える。筒状壁部60にはL字状の配管部材76が取り付けられており、その端部が接続開口部62となっている。
図5の連結状態においては、吸着先端部材56の後端部分が筒状壁部60内に挿入されて吸着先端部材56が吸着装置本体54に連結されている。具体的には、施錠子72が吸着先端部材56の環状係止溝78に係合するように筒状壁部60の内周面から径方向内側に突出した係止位置にあり、その施錠子72を連結位置にある連結スリーブ74が径方向外側から押さえて係止位置に保持することにより、吸着先端部材56が吸着装置本体54に連結された状態が維持されている。
【0026】
吸着先端部材56はさらに、吸着装置本体54の筒状壁部60内に部分的に挿入される筒状部材80と、筒状部材80に対して回転軸線Rの方向で変位可能に配置されて吸着ノズル68を保持する保持部材82と、筒状部材80と保持部材82との間に配置されて保持部材82を筒状部材80に対して先端側に付勢するスプリング84と、吸着ノズル68を保持部材82に固定するためのロックナット86とを備える。環状係止溝78は、筒状部材80の外周面上で周方向に延びるように形成されている。また、筒状部材80の外周面上にはOリング88が配置されている。
図5の連結状態において、Oリング88は、吸着先端部材56の筒状部材80と吸着装置本体54の筒状壁部60との間で圧縮されてそれらの間を密封している。
【0027】
保持部材82の内周面には雌ねじ部90が形成され、吸着ノズル68の外周面には雄ねじ部92が形成されている。吸着ノズル68はその雄ねじ部92を雌ねじ部90に螺合することにより保持部材82に取り付けられている。また、吸着ノズル68の雄ねじ部92にはロックナット86が螺合されており、ロックナット86を保持部材82に締付けることにより吸着ノズル68を保持部材82に対して固定するようになっている。ロックナット86を緩めた状態とすると、吸着ノズル68を保持部材82に対して回転させて保持部材82に対する吸着ノズル68の位置を変えることができるようになる。これにより、装着されているドライバビット3に合わせて吸着ノズル68の先端吸着開口64の位置を調節することができる。また、吸着ノズル68は保持部材82を介して筒状部材80に対して変位可能に保持されているため、例えば、ねじ締め作業を行なう際にねじが螺合される部材に吸着ノズル68の先端が当たるなどして吸着ノズル68が押されたときに、吸着ノズル68はスプリング84を圧縮しながら保持部材82とともに後退することができる。これにより、ねじ締め作業時に、ねじが螺合される部材に吸着ノズル68が干渉して適切なねじ締めが行えなくなることがないようにしている。
【0028】
図6に示すように、連結スリーブ74を後方に変位させて連結解除位置とすると、施錠子72は、連結スリーブ74による径方向外側からの支持がなくなり、径方向外側に変位することが許容された状態となる。この状態で吸着先端部材56を先端側に引っ張ると施錠子72は係止位置から径方向外側に変位して環状係止溝78との係合が解除される係止解除位置となる。これにより、吸着先端部材56を吸着装置本体54から取り外すことができる。吸着先端部材56が取り外されると、吸着装置本体54の前端開口58からスリーブ130に直接アクセスすることができるようになる。
【0029】
図7に示すように、スリーブ130を直接操作して後方に変位させて解錠位置とすると、施錠子128は、係止位置から径方向外側に変位してドライバビット3の環状係止溝4との係合が解除される係止解除位置にまで変位可能となる。この状態でドライバビット3をビットホルダ118の挿入孔122から引き抜くことによりドライバビット3を取り外すことができる。なお、当該実施形態においては、ドライバビット3は、押圧部材132を介してスプリング134によって先端側に付勢されているため、スリーブ130を解錠位置とすることによりドライバビット3はスプリング134の付勢力によりビットホルダ118から押し出される。また、ドライバビット3が取り外された状態では、押圧部材132が施錠子128の径方向内側に位置して施錠子128を係止解除位置に保持する。これにより、スリーブ130は解錠位置に保持される。ドライバビット3を再度取り付けるときには、ドライバビット3をビットホルダ118に挿入する。そうすると、押圧部材132がドライバビット3に押されて後退し、ドライバビット3の環状係止溝4が施錠子128と整合する位置となったときに、施錠子128がスリーブ130に押されて係止位置となる。またこのときに、スリーブ130はスプリング138に押圧されて施錠位置となる。これにより、ドライバビット3が取り付けられた
図6の状態となる。
【0030】
このように、当該吸着装置50を備える電動ドライバ110においては、外部真空発生源にチューブ等により接続されている吸着装置本体54を本体ハウジング112から取り外すことなくドライバビット3を取り外すことができるため、ドライバビット3の交換を容易に行なうことができる。また、交換したドライバビット3に合せて吸着先端部材56の吸着ノズル68の位置を調節したり、吸着先端部材56を交換したりすることも容易になる。
【0031】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、ドライバビットを保持するための施錠子保持孔と施錠子は、4つ以上配置してもよい。また、ドライバビットがビットホルダに取り付けられた状態において、スプリングは押圧部材を介してドライバビットを付勢しているが、スプリングがドライバビットを直接付勢するようにしてもよい。さらには、本発明の動力工具は電動ドライバに限られず、例えば電動モータに代えてエアモータを使用したエアードライバなどとすることもできる。なお、第2の実施形態における吸着装置は、第1の実施形態における電動ドライバに採用することもできるし、その吸着装置本体の筒状壁部を本体ハウジングと一体に形成することもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 ロボットアーム
2 ダンパー
3 ドライバビット
3a 先端側部分
3b 後方部分
4 環状係止溝
5 先端
6 外周面
10 電動ドライバ(動力工具)
12 本体ハウジング
12a 第1ハウジング
12b 第2ハウジング
14 電動モータ
16 遊星歯車機構
18 ビットホルダ
20 先端開口
22 挿入孔
22a 先端側部分
22b 後方部分
24 周壁部
26 施錠子保持孔
28 施錠子
30 スリーブ
32 押圧部材
34 スプリング
36 Oリング
50 吸着装置
52 止めねじ
54 吸着装置本体
56 吸着先端部材
58 前端開口
59 内部空間
60 筒状壁部
62 接続開口部
64 先端吸着開口
66 ビット通路
68 吸着ノズル
69 吸引流路
70 施錠子保持孔
72 施錠子
74 連結スリーブ
76 配管部材
78 環状係止溝
80 筒状部材
82 保持部材
84 スプリング
86 ロックナット
88 Oリング
90 雌ねじ部
92 雄ねじ部
110 電動ドライバ(動力工具)
112 本体ハウジング
118 ビットホルダ
122 挿入孔
128 施錠子
130 スリーブ
132 押圧部材
134 スプリング
138 スプリング
R 回転軸線