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特開2022-146935シラン官能化スチレンブロックコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146935
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】シラン官能化スチレンブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/42 20060101AFI20220928BHJP
   C08F 8/04 20060101ALI20220928BHJP
   C08F 236/10 20060101ALI20220928BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C08F8/42
C08F8/04
C08F236/10
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022045186
(22)【出願日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】63/200,672
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519261770
【氏名又は名称】クレイトン・ポリマーズ・リサーチ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グザビエ・デー・デー・イェー・ミュイルデルマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンクイ・スン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AE003
4J002AE00Y
4J002BB032
4J002BB03X
4J002BB052
4J002BB05X
4J002BB122
4J002BB12X
4J002BP011
4J002BP012
4J002BP01W
4J002BP01X
4J002CF002
4J002CF00X
4J002CF092
4J002CF09X
4J002CK022
4J002CK02X
4J002EH146
4J002FD023
4J002FD026
4J002GN00
4J002GQ00
4J100AB02P
4J100AS02Q
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA42
4J100DA48
4J100DA49
4J100DA50
4J100DA51
4J100HA03
4J100HA61
4J100HB02
4J100HC36
4J100HC80
4J100HE17
4J100HG03
4J100JA28
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】シラン官能化ブロックコポリマー(SiHSBC)の全重量に対して80~99.90重量%の水素化スチレンブロックコポリマー(HSBC)及び0.1~20重量%のシランを含む、SiHSBCを提供すること。
【解決手段】HSBCは、ビニル芳香族モノマー由来の少なくとも1種のポリマーブロックA及び共役ジエンモノマー由来の少なくとも1種のポリマーブロックBを含むスチレンブロックコポリマー(SBC)を水素化することによって得られる。ポリマーブロックBは、ポリマーブロックB中の重合した共役ジエンモノマーの全重量に対して80重量%超の重合した1,3-ブタジエンモノマーを有する。SiHSBC並びにSiHSBCを含有する熱可塑性エラストマー組成物は、接着剤層又は下塗剤層を必要とせずに極性及び非極性基材への接着性の向上を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン官能化ブロックコポリマーであって、該シラン官能化ブロックコポリマーの全重量に対して、
(a)80~99.90重量%の水素化スチレンブロックコポリマー、及び
(b)0.1~20重量%のシラン
を含み、
前記シランが、以下の一般式(I)
RR’SiX3-n (I)
[式中、Rはアルケン又はアルキン基であり、R’はH又はアルカン基であり、Xはアルコキシ基であり、n=0、1又は2である]を有し、
前記水素化スチレンブロックコポリマーが、ビニル芳香族モノマー由来の少なくとも1種のポリマーブロックA及び共役ジエンモノマー由来の少なくとも1種のポリマーブロックBを含むスチレンブロックコポリマーを水素化することによって得られ、
前記ポリマーブロックBが、
前記ポリマーブロックB中の重合した前記共役ジエンモノマーの全molに対して95mol%超の水素化レベル、及び
前記ポリマーブロックB中の重合した前記共役ジエンモノマーの全重量に対して80重量%超の重合した1,3-ブタジエンモノマーの量
を有し、
前記水素化スチレンブロックコポリマーが、
18~38のゴム状脂肪族メチル指数、及び
前記水素化スチレンブロックコポリマーの全重量に対して8~45重量%のポリスチレン含有量
を有し、
前記シラン官能化ブロックコポリマーが、
ASTM F88に従って測定して20N/cm超のガラス基材への剥離接着強度
を有する、
シラン官能化ブロックコポリマー。
【請求項2】
前記水素化スチレンブロックコポリマーが、300℃未満の秩序-無秩序遷移温度、及びASTM D1238に従って測定して190℃において2.16kgの荷重で1dg/分超のメルトフローレートを有する、請求項1に記載のシラン官能化ブロックコポリマー。
【請求項3】
前記水素化スチレンブロックコポリマーが、25℃のトルエン中25重量%で1800mPa.s以下の溶液粘度を有する、請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー。
【請求項4】
前記水素化スチレンブロックコポリマーが40~500kg/molの分子量Mを有し、前記ポリマーブロックAが3~45kg/molの分子量Mを有し、前記ポリマーブロックBが5~400kg/molの分子量Mを有する、請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー。
【請求項5】
前記シラン官能化ブロックコポリマーが、1.45~1.55の屈折率を有する、請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー。
【請求項6】
前記ビニル芳香族モノマーが、スチレン、α-メチルスチレン、メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ハロゲン化スチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、ビニルトルエン、ビニルトルエンの異性体、ビニルキシレン、1,1-ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン及びそれらの混合物の群から選択され、前記共役ジエンモノマーが、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ミルセン、ファルネセン、1,3-シクロヘキサジエン、ピペリレン及びそれらの混合物の群から選択される、請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー。
【請求項7】
前記シラン官能化ブロックコポリマーが、前記ブロックコポリマーにグラフト化したシランを、前記シラン官能化ブロックコポリマーの全重量に対して0.1~10重量%含む、請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー。
【請求項8】
前記水素化スチレンブロックコポリマーの全molに対して、前記ポリマーブロックAが30mol%未満の水素化レベルを有し、前記ポリマーブロックBが70mol%超の水素化レベルを有する、請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー。
【請求項9】
前記スチレンブロックコポリマーが、A-B、A-B-A、(A-B)X、(A-B-B’)X(ただし、Aはポリスチレンブロックであり、B及びB’は、同じ又は異なっており、ポリブタジエン、ポリ(イソプレン-r-ブタジエン)及びポリ(ブタジエン-r-スチレン)の群から選択され、nは正の整数であり、Xはカップリング剤の残基である)及びそれらの混合物の群から選択される構造を有する、請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー。
【請求項10】
前記シランが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン;メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン及びそれらの混合物の群から選択される、請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー。
【請求項11】
前記シラン官能化ブロックコポリマーが、45~250kg/molの分子量(M)を有する、請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー。
【請求項12】
熱可塑性ポリマー組成物であって、該熱可塑性ポリマー組成物の全重量に対して、
5~95重量部の請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー、及び
5~95重量部の熱可塑性エラストマー配合物
を含み、
前記熱可塑性エラストマー配合物が、100重量部の1種以上の熱可塑性エラストマー、並びに、該熱可塑性エラストマー100重量部に対して、50~250部の可塑剤及び0~50部の少なくとも1種の添加剤を含み、
前記熱可塑性エラストマーが、ポリオレフィン、水素化スチレンブロックコポリマー、スチレンブロックコポリマー、熱可塑性プラスチックコポリエステル又はコポリエステル-エーテル、熱可塑性加硫物、熱可塑性ポリウレタン及びそれらの混合物からなる群から選択される、
熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項13】
100部の請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー、並びに、該シラン官能化ブロックコポリマー100重量部に対して、
0~150部のポリオレフィン、
植物油、プロセス油、鉱油、フタル酸エステル及びそれらの混合物からなる群から選択される30~300部の可塑剤、及び
0~50部の少なくとも1種の添加剤
を含む、熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項14】
100部の請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマー、並びに、該シラン官能化ブロックコポリマー100重量部に対して、
ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリオレフィン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)及びそれらの混合物の群から選択される10~150部のポリオレフィン、
0~300部の可塑剤、及び
0~50部の少なくとも1種の添加剤
を含む、熱可塑性ポリマー組成物。
【請求項15】
請求項1又は2に記載のシラン官能化ブロックコポリマーを含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シラン官能化スチレンブロックコポリマー、組成物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、セラミック、金属をベースとする基材材料は、高い耐熱性、より良好な機械的性質、及び高い耐久性を有し、電化製品、電子部品、自動車部品、ソーラーパネル及び他の多くの用途において役立つ。いくつかの用途において、これらの材料は、熱可塑性エラストマーに接着する、又は熱可塑性エラストマーと複合体を形成する。熱可塑性エラストマーは可撓性に優れ、加工が容易なため、このような材料は、構造部材の製造、衝撃吸収、損傷からの保護、及びシーリングに適している。しかし、熱可塑性エラストマー、例えばスチレン系熱可塑性エラストマーは極性が乏しいため、このようなエラストマーと極性基材との接着強度は、いくつかの最終使用用途にとって十分ではない。
【0003】
熱可塑性エラストマーと極性及び非極性基材などの基材の接着強度を向上させるために、接着促進剤/下塗剤の使用が試みられてきた。より良好な接着性を得るための一般に知られている別の手法は、熱可塑性エラストマーを塗布する前に基材の表面処理を行うことである。シラン官能化ブロックコポリマーは、基材へのより良好な接着性をもたらすが、他の性質、例えば、可撓性、弾性、加工性、貯蔵安定性、プロセス安定性、透明度、機械的性質などに影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、他の性質に影響を及ぼすことなく基材への接着性を増大させる改良されたシラン官能化ブロックコポリマーが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
第1の態様において、本開示は、シラン官能化ブロックコポリマーの全重量に対して、(a)80~99.90重量%の水素化スチレンブロックコポリマー(HSBC)、及び(b)0.1~20重量%のシランを含む、それから本質的になる、又はそれからなるシラン官能化ブロックコポリマー(SiHSBC)に関する。シランは、RR’SiX3-nの一般式(I)[式中、Rはアルケン又はアルキン基であり、R’はH又はアルカン基であり、Xはアルコキシ基であり、n=0、1又は2である]を有する。HSBCは、ビニル芳香族モノマー由来の少なくとも1種のポリマーブロックA及び共役ジエンモノマー由来の少なくとも1種のポリマーブロックBを含むスチレンブロックコポリマー(SBC)を水素化することによって得られる。ポリマーブロックBは、ポリマーブロックB中の重合した共役ジエンモノマーの全molに対して95mol%超の水素化レベル、及びポリマーブロックB中の重合した共役ジエンモノマーの全重量に対して80重量%超の重合した1,3-ブタジエンモノマーの量を有する。HSBCは、18~38のゴム状脂肪族メチル指数(rubbery aliphatic methyl index(RAMI))、及び水素化スチレンブロックコポリマーの全重量に対して10~45重量%のポリスチレン含有量(PSC)を有する。SiHSBCは、ASTM F88に従って測定して、20N/cm超のガラス基材への剥離接着強度を有する。
【0006】
第2の態様において、HSBCは、25℃のトルエン中25重量%で≦1800mPa.sの溶液粘度を有する。
【0007】
第3の態様において、ポリマーブロックAは、3~45kg/molの分子量(M)を有し、ポリマーブロックBは、5~400kg/molの分子量(M)を有する。
【0008】
第4の態様において、HSBCは、40~500kg/molの分子量(M)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用する以下の用語は、以下の意味を有する。
【0010】
「[A、B及びCなどの群]のうちの少なくとも1つ」又は「[A、B及びCなどの群]のうちのいずれか」は、群からの単一のメンバー、群からの複数のメンバー、又は群からのメンバーの組合せを意味する。例えば、A、B及びCのうちの少なくとも1つは、例えば、Aのみ、Bのみ若しくはCのみ、並びにA及びB、A及びC、B及びC、又はA、B及びC、又はA、B及びCのうちの他のすべての組合せを含む。「A、B又はC」として示される実施形態のリストは、実施形態Aのみ、Bのみ、Cのみ、「A若しくはB」、「A若しくはC」、「B若しくはC」又は「A、B若しくはC」を含むと解釈するものである。
【0011】
「コポリマー」は、複数種のモノマーに由来するポリマーを指す。
【0012】
「ブロックコポリマー」は、重合したモノマーがブロックにおいて存在する、複数種のモノマーを含むコポリマーを指す。各ブロックは、同じブロックコポリマー中の結合している周囲ブロックの一連のモノマーとは異なる一連のモノマーで構成されている。各ブロックは、ホモポリマー又はランダムコポリマーで構成されていてもよい。
【0013】
「可塑剤」は、材料をより柔軟に、より可撓性にするため、又は材料の可塑性を増大させるため、又は材料の粘度を低下させるため、又は製造プロセスにおける材料の取扱い中の摩擦を低下させるために材料に添加される化合物を指す。可塑剤は、製造中の原材料の取扱いを容易にするため又は最終使用用途の要求を満たすためにプラスチック及びゴムなどのポリマーに添加される。
【0014】
「秩序-無秩序遷移温度」又はODTは、ブロックコポリマーが相分離状態と非相分離状態の間を遷移する温度を指す。ODTは、ゼロ剪断粘度が動的レオロジーによって測定され得る温度を上回る温度と定義されている。ODT温度は、温度掃引が様々な周波数により行われる動的機械分析(DMA)を使用して測定することができ、ODTは、複素粘度が低周波数において単一の値に併合し始める温度として確認される。
【0015】
「カップリング効率」又はCEは、カップリングしたポリマーの重量%及びカップリングしていないポリマーの重量%の値を指す。カップリングしたポリマー及びカップリングしていないポリマーの重量%は、GPC及び示差屈折計(RI)検出器の出力を使用して決定することができる。特定の溶出体積におけるシグナルの強度は、その溶出体積において検出された材料の量に比例する。カップリングしたポリマーに対応するM範囲にわたる曲線下面積は、カップリングしたポリマーの重量%を表し、同様にカップリングしていないポリマーの重量%も表す。CEのパーセンテージは、カップリングしたポリマーの重量%/(カップリングしたポリマーの重量%+カップリングしていないポリマーの重量%)を100倍することにより得られる。CEはまた、GPCからのデータを計算し、すべてのカップリングしたポリマー(2アーム、3アーム、4アームなどのコポリマーを含む)のGPC曲線下の積算面積を、カップリングしたポリマー及びカップリングしていないポリマーの両方の同様のGPC曲線下の積算面積で割ることによって評価することができる。
【0016】
ブロックコポリマーの「ポリスチレン含有量」又はPSCは、ブロックコポリマー中の重合したビニル芳香族モノマー、例えばスチレンの重量%を指し、重合したビニル芳香族単位すべての分子量の合計をブロックコポリマーの全分子量で割ることによって計算される。PSCは、プロトン核磁気共鳴(NMR)などの任意の適切な方法を使用して決定することができる。
【0017】
ポリマーにおける「ゴム状脂肪族メチル指数」又はRAMIは、水素化前のポリマー中の重合した1,3-ブタジエンモノマーのある特定のビニル含有量に関係がある。例えば、18~38のRAMIは、ポリマー中の重合した1,3-ブタジエンモノマー(但し、重合した1,3-ブタジエンモノマーすべてが水素化されている)の全molに対して、水素化前の重合した1,3-ブタジエンモノマーのビニル含有量が48~100mol%であることに対応する。RAMIは、重合したビニル芳香族モノマー(例えば、重合したスチレン単位)のプロトンから脂肪族プロトンへの寄与を除去する補正を行った後、ゴム状単位(例えば、重合した1,3-ブタジエンモノマー、重合したイソプレンモノマーなどの重合した共役ジエンモノマー)内部に存在する全脂肪族プロトンに対する、水素化済みの重合した共役ジエンモノマーのメチル基に存在する脂肪族プロトン(H)の比として計算することができる。脂肪族プロトン(H)は、H-1 NMR分光法を使用して測定することができる。RAMIは、次のように表され、
RAMI=100×(積分2)/(積分1-(0.6*積分3))
式中、積分1は、0.6ppm~2.99ppmのH-1 NMRスペクトルを積分することによって求められ、積分2は、0.6ppmと0.8ppm~1.0ppmの最小領域の間のH-1 NMRスペクトルを積分することによって求められる。積分3は、6.2ppm~7.4ppmのH-1 NMRのHSBCスペクトルを積分することによって求められる。
【0018】
「分子量」又はMwは、ポリマーブロック又はブロックコポリマーのkg/mol単位におけるポリスチレン等価分子量を指す。Mwは、ポリスチレン較正標準を使用したゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができ、例えば、ASTM5296-19に従って行われる。GPC検出器は、紫外線若しくは屈折率検出器又はそれらの組合せであってもよい。クロマトグラフは、市販のポリスチレン分子量標準を使用して較正される。このように較正されたGPCを使用して測定したポリマーのMwは、ポリスチレン等価分子量又は見かけの分子量である。本明細書に示すMwは、GPCトレースのピークで測定され、一般にポリスチレン等価の「ピーク分子量」と呼ばれ、Mと示される。ポリマーGPCがいくつかのピークを示す場合、選択したMは、主要種(重量%での最大)のピーク分子量である。
【0019】
「透明度」は、物体を通る光透過率を指す。透明度は、ASTM D-1003に従って測定することができる。この試験方法は、定義された試験片厚さの透明な物体の全光透過率及び散乱を評価する。
【0020】
「清澄度」は、光が平坦な材料を通過して散乱したとき、不清澄又はくすみ効果を生じる可能性がある材料の性質を指す。したがって、材料を通して見たときに、物体がかすんで見える。
【0021】
「熱可塑性ブロックコポリマー」は、より高い温度で処理することができ、処理前に故意に架橋されていないブロックコポリマーを指す。
【0022】
本開示は、シラン官能化ブロックコポリマー(SiHSBC)の全重量に対して80~99.90重量%の水素化スチレンブロックコポリマー(HSBC)を0.1~20重量%のシラン化合物で官能化又はグラフト化することによって得られるSiHSBCに関する。SiHSBCは、接着剤又は下塗剤の層を必要とせずに、ガラス、シリコン(silicium)ウエハ、セラミック、金属、プラスチック、強化用繊維などの極性及び非極性基材への接着性を向上させる。
【0023】
水素化スチレンブロックコポリマー(「HSBC」):HSBCは、スチレンブロックコポリマー(SBC)の水素化によって得られる熱可塑性ブロックコポリマーである。
【0024】
諸実施形態において、SBCは、ビニル芳香族モノマー由来の少なくとも1種のポリマーブロックA及び共役ジエンモノマー由来の少なくとも1種のポリマーブロックBを含む、線状又は分岐状(多数アーム)ブロックコポリマーのいずれかである。ビニル芳香族モノマーは、任意の順序によって及び任意の分布において共役ジエンブロックに導入又は共重合させることができる。
【0025】
諸実施形態において、SBCは、A-B、A-B-A、(A-B)X、A-B-B’、(A-B-B’)X、A-I-B-I-A、(A-I-B)-X及びそれらの混合物の群から選択される構造を有し、式中、nは正の整数であり、Xはカップリング剤の残基であり、各Iは主に重合したイソプレンモノマーのポリマーブロックである。諸実施形態において、ポリマーブロックB及びB’は、同じ又は異なっており、ポリブタジエン、ポリ(イソプレン-r-ブタジエン)及びポリ(ブタジエン-r-スチレン)の群から選択され、ここで、-r-は、ランダムコポリマーを指し、例えば、「ポリ(イソプレン-r-ブタジエン)」は、ポリイソプレンブタジエンランダムコポリマーを意味する。
【0026】
諸実施形態において、ビニル芳香族モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルトルエンの異性体、ビニルキシレン、1,1-ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン及びそれらの混合物の群から選択される。
【0027】
諸実施形態において、共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ミルセン、ファルネセン、1,3-シクロヘキサジエン、ピペリレン及びそれらの混合物の群から選択される。
【0028】
諸実施形態において、ポリマーブロックBは、ポリマーブロックB中の重合した共役ジエンモノマーの全重量に対して>80又は>85又は>90又は>95又は最大100重量%の量の重合した1,3-ブタジエンモノマーを有する。
【0029】
諸実施形態において、ポリマーブロックB中の重合した1,3-ブタジエンモノマーは、重合した1,3-ブタジエンモノマーの全重量に対して、水素化前では48~95又は50~90又は55~85、60~85又は>55重量%又は<90重量%のビニル含有量を有する。
【0030】
諸実施形態において、重合したビニル芳香族モノマーに由来するポリマーブロックAは、本質的に水素化されないままであり、重合した共役ジエンモノマーをベースとするポリマーブロックBは水素化される。諸実施形態において、ポリマーブロックAは、重合したビニル芳香族モノマーの全molに対して<30又は<20又は<10又は<5mol%の水素化レベルを有する。諸実施形態において、ポリマーブロックBは、ポリマーブロックB中の重合した共役ジエンモノマーの全molに対して>70又は>80又は>90又は>95又は>98又は>99mol%の水素化レベルを有する。水素化レベルは、水素化により飽和になる元の不飽和結合の%を指し、これはUV-VIS分光測光法及び/又はプロトンNMR及び/又はオゾン分解滴定を使用して決定することができる。
【0031】
諸実施形態において、SBCは、スチレン-ブタジエン(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン(SI)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-イソプレン/ブタジエン(S-I/B)、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン(SIBS)、スチレン-ブタジエン/スチレン(S-B/S)、スチレン-ブタジエン/スチレン-スチレン(S-B/S-S)、スチレン-イソプレン/スチレン(S-I/S)、スチレン-イソプレン/スチレン-スチレン(S-I/S-S)及びそれらの混合物の群から選択されるが、それらだけに限らない。諸実施形態において、HSBCは、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン/ブチレン(SEB)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン/エチレン/プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-エチレン/ブチレン/スチレン-スチレン(SE/B/SS)及びそれらの混合物の群から選択されるが、それらだけに限らない。
【0032】
諸実施形態において、ポリマーブロックAは、3~45又は3.5~30又は4~25又は4.5~20又は5~15、5~10kg/molの分子量(M)を有する。
【0033】
諸実施形態において、ポリマーブロックBは、5~400又は10~250又は15~150又は5~80又は20~70kg/molの分子量(M)を有する。
【0034】
諸実施形態において、HSBCは、40~500又は50~300又は60~200又は70~150又は80~120kg/molの分子量(M)を有する。
【0035】
諸実施形態において、HSBCは、HSBCの全重量に対して8~45又は10~40又は12~35又は14~30、15~25重量%のポリスチレン含有量(PSC)を有する。
【0036】
諸実施形態において、HSBCは、<300℃又は150~300℃又は170~280℃又は180~260℃、190~250℃の秩序-無秩序遷移温度(ODT)を有する。
【0037】
諸実施形態において、HSBCは、18~38又は19~36又は20~35又は22~34又は25~32のゴム状脂肪族メチル指数(RAMI)を有する。
【0038】
諸実施形態において、HSBCは、25℃のトルエン中25重量%で≦1800mPa.s又は<1600mPa.s又は<1400mPa.s又は50~1800mPa.s又は80~1200mPa.sの溶液粘度を有する。
【0039】
官能化/グラフト化のためのシラン:HSBCは、一般式(I):RR’SiX3-n[式中、Rはアルケン又はアルキン基であり、R’はH又はアルカン基であり、Xはアルコキシ基であり、n=0、1又は2である]のシランで官能化されると、シラン官能化ブロックコポリマー(SiHSBC)が得られる。諸実施形態において、R基は、ビニル、アリル、ブテニル、シクロヘキセニル、シクロペンタジエニルなどの群から選択される。R’は、H又はC~C10のアルカンから選択することができ、Xは、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、アシルオキシなどの群から選択することができる。
【0040】
適切なシランの例として、ビニルトリメトキシシラン(VTMOS)、ビニルトリエトキシシラン(VTEOS)、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン及びそれらの混合物の群が挙げられるが、それらだけに限らない。
【0041】
HSBCに添加するシランの量は、シラン官能化の所望のレベルに基づいて変わる。通常、この量は、HSBC及びシランの合計重量に対して0.1~20又は0.5~15又は1~12又は2~10重量%の範囲内である。
【0042】
HSBCへの十分なレベルのシラングラフト化は、基材、例えば、ガラス、シリコンウエハ、セラミック、金属、プラスチック、強化用繊維などへのSiHSBCの所望の接着を得るために必要である。諸実施形態において、HSBCにグラフト化したシランのレベル(シラン官能化の程度)は、SiHSBCの全重量に対して0.1~20又は0.2~15又は0.5~12又は0.1~10又は0.2~5又は0.2~4の範囲内である。
【0043】
シランをグラフト化のためにHSBCに添加する場合、一部はグラフト化せずに残される可能性がある。諸実施形態において、グラフト化されていないシランの量は、HSBCにグラフト化させるために添加したシランの全重量に対して<40又は<30又は<20又は<10重量%である。
【0044】
諸実施形態において、シランをHSBCにグラフト化させてSiHSBCを形成した後、SiHSBCは、45~250又は50~220又は60~200kg/molの分子量(M)を有する。
【0045】
SiHSBCを作製する方法:最初に、少なくとも1種のポリマーブロックA及び少なくとも1種のポリマーブロックBを含有するSBCを調製する。SBCは、アニオン重合によって又は逐次(若しくは連続)重合によって調製することができる。諸実施形態において、モノマーの重合は、開始剤を含有する溶液にモノマーを段階的に添加し、続いて、得られた逐次ブロックコポリマー鎖をカップリング剤(存在する場合)とカップリングさせることによって実施される。
【0046】
諸実施形態において、SBCは、-30~150℃又は10~100℃又は30~90℃の温度で、アニオン重合に使用されるステップと同様のステップを用いて逐次重合により調製される。それは、不活性雰囲気、例えば窒素中、又は約0.5~65barの範囲内の圧力下において実施される。重合は一般に、温度、モノマー成分の濃度、ポリマーの分子量などを含む要因に応じて<12時間又は5分~5時間を必要とする。
【0047】
カップリングを伴う諸実施形態において、カップリング剤は、ジ-又はマルチビニルアレーン化合物;ジ-又はマルチエポキシド;ジ-又はマルチイソシアネート;ジ-又はマルチアルコキシシラン;ジ-又はマルチイミン;ジ-又はマルチアルデヒド;ジ-又はマルチケトン;アルコキシスズ化合物;ジ-又はマルチハロゲン化物、例えば、シリコンハロゲン化物及びハロシラン;モノ-、ジ-又はマルチ無水物;ジ-又はマルチエステル、例えば、モノアルコールとポリカルボン酸とのエステル;一価アルコールとジカルボン酸とのエステルであるジエステル;一塩基酸とグリセロールなどの多価アルコールとのエステルであるジエステル;並びにそれらの混合物の群から選択されるが、それらだけに限らない。
【0048】
諸実施形態において、シラン系カップリング剤が、カップリングしたSBCの調製に使用される。諸実施形態において、カップリング剤としてのシラン及び官能化剤としてのシラン化合物は、同じ又は異なっている。
【0049】
諸実施形態において、任意の有効量のカップリング剤を使用して、SBCについて所望のカップリング効率を得る。諸実施形態において、SBCは、カップリングした場合、>50%又は>60%又は>70%又は>80%又は>90%のカップリング効率を有する。
【0050】
次に、水素化プロセスを使用して、SBC前駆体を水素化して、水素化スチレンブロックコポリマー(HSBC)を得る。共役ジエンブロックの二重結合に選択的であり、ポリスチレンブロックの芳香族不飽和を実質上そのままにしておく水素化プロセスを使用して、HSBCを調製することができる。
【0051】
諸実施形態において、水素化プロセスは、金属、例えば、ニッケル、チタン又はコバルト、及びアルキルアルミニウムなどの適切な還元剤を含む触媒又は触媒前駆体を使用する。触媒濃度は、重量で10~500ppmの範囲内である。SBCの水素化は、25~175℃又は35~150℃又は50~100℃の範囲の比較的低い水素化温度を使用することによって制御される。通常、水素化は、5分~8時間又は30分~4時間の範囲内で実施される。水素化は、オートクレーブにおいて約3000psig未満又は100~1500psig又は200~800psigの水素圧力で実施することができる。水素化が完了した後、触媒及び触媒残渣は、ポリマーから分離される。
【0052】
シランによるHSBCの官能化/グラフト化:諸実施形態において、HSBCへのシランのグラフト化は、160~240℃又は170~230℃又は180~220℃の温度で、当技術分野で公知の装置、例えば単軸押出機又は二軸押出機によって溶融相で実施される。
【0053】
諸実施形態において、SiHSBCは、固相法によって調製される。HSBC、シラン及び開始剤が、反応器中、40℃~HSBCの溶融温度又は軟化温度の範囲の温度で固相シラン官能化に使用される。シラン官能化の程度が0.1~20重量%のSiHSBCが、反応器の終わりにおいて放出される。
【0054】
開始剤の例として有機過酸化物が挙げられるが、これは、官能化温度で<6分又は<1分の半減期をもたらす所与の反応温度でHSBC中にフリーラジカルを発生させることができる。実施形態において、有機過酸化物は、過酸化ジクミル(DCP)及び1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、過酸化ジアシル、アルキル過酸エステル、過炭酸塩、過酸化ジラウロイル(DLPO)、過酸化ジベンゾイル(DBPO)、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPEH)、tert-ブチルペルオキシ-イソブチレート(TBPIB)、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(DTBPC)、tert-ブチルペルベンゾエート(TBPB)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(DHBP)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3(DYBP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド(TBP)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)、tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、過酸化ラウロイル、過酸化ジプロピオニル、p-メンタンヒドロペルオキシド並びにそれらの混合物の群から選択されるが、それらだけに限らない。
【0055】
諸実施形態において、50~160℃又は60~150℃又は70~140℃の範囲の1分半減期温度によりフリーラジカルを形成する有機過酸化物が、溶融相押出法においてHSBCにシランをグラフト化するために、又は固相官能化法において50~200℃の反応温度にて添加される。
【0056】
諸実施形態において、開始剤は、HSBC及びシランの合計重量に対して0.01~5又は0.1~2又は0.2~1重量%の量で添加される。
【0057】
諸実施形態において、SiHSBCは、水又は湿った空気で処理することによって架橋される。水は、40~90℃又は65~85℃又は70~80℃の温度で0.5時間~12時間又は1時間~10時間又は最大1週間以上にわたって熱水/水蒸気とすることができる。
【0058】
シラン官能化ブロックコポリマーをベースとする組成物:諸実施形態において、熱可塑性ポリマー組成物は、熱可塑性ポリマー組成物の全重量に対して、5~95の重量部のSiHSBC及び5~95の重量部の熱可塑性エラストマー配合物(TPEC)を含むように調製される。
【0059】
熱可塑性エラストマー配合物(TPEC)は、1種以上の熱可塑性エラストマー(TPE)、並びにTPE100重量部に対して、50~250部の可塑剤及び0~50部の少なくとも1種の添加剤を含む組成物を指す。諸実施形態において、TPEは、ポリオレフィン、水素化スチレンブロックコポリマーをベースとするTPE(TPE-HSBC)、スチレンブロックコポリマーをベースとするTPE(TPE-SBC)、熱可塑性プラスチックコポリエステル又はコポリエステル-エーテル(TPE-E)、熱可塑性加硫物(TPE-V)、熱可塑性ポリウレタン(TPE-U)及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0060】
或いは、熱可塑性ポリマー組成物は、TPECを用いずに、単に可塑剤又はポリオレフィンのいずれかを用いて配合することができる。諸実施形態において、SiHSBC、並びにSiHSBC100重量部に対して、0~150部のポリオレフィン、30~300部の可塑剤及び0~50部の少なくとも1種の添加剤を含む熱可塑性ポリマー組成物である。諸実施形態において、熱可塑性ポリマー組成物は、SiHSBC、並びにSiHSBC100重量部に対して、10~150部のポリオレフィン、0~300部の可塑剤及び0~50部の少なくとも1種の添加剤を含む熱可塑性ポリマー組成物である。
【0061】
ポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリオレフィン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン及び1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデケン、1-オクタデケンなどのC~C20コモノマーを含むα-オレフィンのコポリマー、ランダムポリプロピレン又はブロックポリプロピレンなどのエチレン-プロピレンコポリマー、並びにそれらの混合物の群から選択することができるが、それらだけに限らない。
【0062】
諸実施形態において、熱可塑性ポリマー組成物は、他のポリマー、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリフェニルスルホン、ポリカルボネート、ポリエチレン/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリカルボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、メチルメタクリレート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリエーテルイミド、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、ポリエステル、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリフェニレンエーテル、セルロース、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン及びそれらの混合物をさらに含む。
【0063】
代表的な添加剤として、活性化剤、硬化剤、安定剤、中和剤、増粘剤、融合助剤、スリップ剤、剥離剤、抗微生物剤、界面活性剤、酸化防止剤、オゾン分解防止剤、変色pH指示薬、可塑剤、粘着性付与剤、フィルム形成添加剤、染料、顔料、架橋剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、触媒、充填剤、その他の樹脂、酸化還元対、繊維、難燃剤、粘度調整剤、湿潤剤、脱気剤、強化剤、接着促進剤、着色料、熱安定剤、光安定剤、潤滑剤、流動性調整剤、防滴剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、加工助剤、応力緩和用添加剤、ワックス及びそれらの混合物が挙げられる。
【0064】
可塑剤は、植物油、プロセス油、鉱油、フタル酸エステル及びそれらの混合物の群から選択することができる。プロセス油として、パラフィン系油、ナフテン系油からなる群のうちの1種以上の成分を挙げることができる。諸実施形態において、パラフィン系油は、飽和炭素骨格であり、ナフテン系油は、芳香族をほぼ含有しない多価不飽和炭素構造又は環状構造を有する。
【0065】
ワックスは、天然ワックス、石油由来のワックス及びそれらの混合物であってもよい。
【0066】
代表的な非反応性充填剤として、CaCO、カーボンブラック、グラファイト及びそれらの混合物が挙げられる。代表的な反応性充填剤として、シリカ、ガラスビーズ、砂、タルク、マイカ、粘土、珪灰石、Mg(OH)、Al(OH)、酸化鉄、酸化スズ及びそれらの混合物が挙げられる。ここで意味する反応性充填剤は、シラン化合物と反応する充填剤材料である。
【0067】
諸実施形態において、熱可塑性ポリマー組成物は、当技術分野で既知の装置、例えば、ブレンダー、ミキサー、ニーダー、ローラー、二軸スクリュー押出機又は押出機によって調製される。
【0068】
諸実施形態において、熱可塑性ポリマー組成物は、組成物の諸成分を乾燥混合することによって調製される。或いは、熱可塑性ポリマー組成物は、適切な溶媒中で諸成分を混合することによって調製することができる。溶媒として、有機溶媒、例えば、シクロヘキサン、ナフサ、トルエン、酢酸エチル及び酢酸プロピルなどのエステル溶媒、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒を挙げることができる。溶媒の量は、100部のSiHSBCに対して100~2000部とすることができる。
【0069】
シラン官能化ブロックコポリマーの性質:SiHSBCは、処理(例えば、加熱、溶媒中でなど)した場合、基材に所望の接着性を生じる。諸実施形態において、基材は、ガラス、シリコンウエハ、セラミック、金属、プラスチック、強化用繊維、木材、革、石材、コンクリート、岩、紙、段ボール紙、布帛、ガラス、レンガ、石膏、セメント、タイル、モルタル及びアスファルトの群から選択されるが、それらだけに限らない。
【0070】
諸実施形態において、SiHSBCは、下塗剤の層を必要とせずにガラス基材に接着し、高温/高湿度条件に長期間、例えば、1週間、1カ月、3カ月又はそれ以上晒された後でもガラス基材への優れた接着性を維持する。
【0071】
諸実施形態において、SiHSBCは、ISO37に従って測定して、2mm厚の圧縮成形プレートから切り出したタイプ2のダンベルを使用し、500mm/分の引張速度を使用して23℃で試験することによって>3又は>5又は>10又は<30MPaの引張強度を有する。
【0072】
諸実施形態において、熱水への曝露による架橋後のSiHSBCは、>3又は>5又は>10又は<30MPaの引張強度を有する。
【0073】
諸実施形態において、SiHSBCは、試験片を23℃の水中で1週間エージングする前及び後にASTM F88に従って測定して、>20又は>30又は>40又は>50又は>60又は<100N/cmのガラス基材への剥離接着強度を有する。
【0074】
諸実施形態において、SiHSBCは、ASTMD2240に従って測定して、10~70又は20~70又は30~60又は>15又は>20のショアA硬度を有する。
【0075】
諸実施形態において、SiHSBCは、ASTM D1238に従って測定して、190℃において2.16kgの荷重で>1又は>3又は>5又は>15dg/分のメルトフローレート(MFR)を有する。
【0076】
諸実施形態において、SiHSBCは、1mmプレートに関して測定して、>70%又は>75%又は>80%又は>85%の清澄度を有する。
【0077】
諸実施形態において、SiHSBCは、ASTM D-1003に従って測定して、1mmプレートに関して>70%又は>75%又は>80%又は>85%の透明度を有する。
【0078】
諸実施形態において、SiHSBCは、1.45~1.55又は1.48~1.54又は1.51~1.525の屈折率(RI)を有する。
【0079】
熱可塑性ポリマー組成物の性質:SiHSBCを含有する熱可塑性ポリマー組成物は、様々な基材への接着性が向上したことを特徴とする。諸実施形態において、熱可塑性ポリマー組成物は、試験片を23℃の水中で1週間エージングする前及び後にASTM F88に従って測定して、>10又は>20又は>30又は>40、>50又は<100N/cmのガラス基材への剥離接着強度を有する。
【0080】
諸実施形態において、熱可塑性ポリマー組成物は、ASTM D2240に従って測定して、10~80又は15~70、<70又は<50又は>15又は>20のショア硬度Aを有する。
【0081】
諸実施形態において、熱可塑性ポリマー組成物は、ASTM D1238に従って測定して、190℃において2.16kgの荷重で>1又は>3又は>5又は>10、>15dg/分のメルトフローレート(MFR)を有する。
【0082】
諸実施形態において、硬化後の熱可塑性ポリマー組成物は、120℃又は180℃において24時間後に<80%又は<70%又は>40%又は>50%の圧縮永久ひずみを有する硬化組成物を提供する。
【0083】
最終使用用途:SiHSBC及びその熱可塑性ポリマー組成物は、物品、例えば、窓ガラス、フロントガラスなどと共に使用するシールを形成するために使用することができる。SiHSBC及びその組成物の他の工業用途として、ワイヤ及びケーブルにおいての、ソーラーパネル用の透明ゴム状層としての、繊維コーティングのための、難燃システム、高温耐性硬化TPEなどにおいての接着剤、シーラント、下塗剤、タイ層、窓用カプセル化剤が挙げられる。
【実施例0084】
以下の実施例は、以下に示す性質又は測定方法と共に、本開示をさらに説明するために提供される。
【0085】
材料:以下の材料が使用される。
【0086】
BC1は、(S-E/B)Xの構造を有する、スチレン及び1,3-ブタジエンモノマーから得られた選択的水素化カップリングブロックコポリマーであり、カップリング効率が93%、Mが75kg/mol、ポリスチレン含有量(PSC)が20%、RAMIが29、水素化レベルが99.2mol%、190℃及び2.16kg荷重におけるMFRが38dg/分、ODTが200℃、硬度ショアAが52、25℃のトルエン中25重量%で測定しての溶液粘度が90mPa.sである。
【0087】
BC2は、S-E/B-Sの構造を有する、スチレン及び1,3-ブタジエンモノマーから得られた選択的水素化ブロックコポリマーであり、Mが235kg/mol、PSCが31重量%、RAMIが26、水素化レベルが99.2mol%、硬度ショアAが60、25℃のトルエン中25重量%で測定しての溶液粘度が>50mPa.sである。
【0088】
BC3は、(S-E/B)Xの構造を有する選択的水素化ブロックコポリマーであり、カップリング効率が92%、Mが242kg/mol、PSCが13重量%、RAMIが30、190℃及び2.16kg荷重におけるMFRが0.4dg/分、水素化レベルが99mol%、ODTが255℃、硬度ショアAが35、25℃のトルエン中25重量%で測定しての溶液粘度が650mPa.sである。
【0089】
BC4は、S-E/B-Sの構造を有する、スチレン及び1,3-ブタジエンモノマーから得られた選択的水素化ブロックコポリマーであり、Mが80kg/mol、PSCが30重量%、RAMIが15、230℃及び2.16kg荷重におけるMFRが2dg/分、水素化レベルが99.2mol%、硬度ショアAが70、25℃のトルエン中25重量%で測定しての溶液粘度が1800mPa.sである。
【0090】
BC5は、スチレン及び1,3-ブタジエンモノマーから得られた選択的水素化ブロックコポリマーである。これはS-E/B/S-Sの構造を有し、Mが150kg/mol、PSCが60重量%、RAMIが14、水素化レベルが99.5mol%、硬度ショアAが79である。
【0091】
BC6は、BC4の2重量%無水マレイン酸官能化変型体である。
【0092】
BC7は、S-E/B-Sの構造を有する、スチレン及び1,3-ブタジエンモノマーから得られた選択的水素化ブロックコポリマーであり、Mが280kg/mol、PSCが31重量%、RAMIが15、水素化レベルが99mol%、硬度ショアAが70、25℃のトルエン中25重量%で測定しての溶液粘度が50mPa.s超である。
【0093】
Kristalex(商標)5140は、Eastman製の140℃の軟化点を有する炭化水素樹脂である。
【0094】
シリケートタイプのガラス板が基材として使用され、これは任意の特定の表面処理が行われておらず、長さ(L)*幅(W)*高さ(H)=135*25.4*3mmの寸法を有する。
【0095】
SiHSBCの調製プロセス:SiHSBCは、30mm共回転二軸スクリュー押出機を使用して、BC1~BC7各々を様々なシラン(VTMOS及びVTEOS)並びに過酸化物と共に押出すことによって製造される。諸実施形態において、諸成分は、HSBC100部あたりの部数として添加される。官能化中の押出機の温度プロフィル、シランの各々の量及び過酸化物の量を表1に要約する。
【0096】
【表1】
【0097】
HSBC及びSiHSBCの性質を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
MFR(190℃/2.16kg)への貯蔵期間の影響を様々なSiHSBCsに関して評価した。試料を乾燥し、85℃でアルミニウム箔袋中に様々な期間貯蔵した。MFR結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
表4に示すように、溶融状態での貯蔵期間に対するSiHSBCのMFR(230℃/2.16kg)を測定して、流動性を研究した。
【0102】
【表4】
【0103】
HSBC及びSiHSBC試料を80℃の水に12時間晒した。水に晒した場合及び晒していない場合の試料の性質を測定し、表5に報告した。
【0104】
【表5】
【0105】
ガラス基材上のSiHSBCに関する剥離接着試験は、ガラス基材上にSiHSBCの2mmプレートを180℃で5分間圧縮成形することによって実施された。結果を表6に示す。
【0106】
【表6】
【0107】
HSBC、SiHSBC及び無水マレイン酸官能化HSBCの剥離接着性能の比較を表7に示す。各試料の2mmプレートをガラス基材上に圧縮成形する。
【0108】
【表7】
【0109】
SiHSBCを10重量%濃度でトルエンと混合して、下塗剤を得た。表8に示すように、得られた下塗剤をガラス基材に塗布して、ガラス基材上の下塗剤の剥離接着力及び透明度を研究した。
【0110】
【表8】
【0111】
熱可塑性ポリマー組成物は、SiHSBCを熱可塑性エラストマー配合物(TPEC)と乾式混合することによって調製された。熱可塑性ポリマー組成物の2mmプレートが、180℃~230℃の温度で得られた。これらのプレートは、ガラス基材上に200℃で5分間圧縮成形され、剥離接着強度が測定された。詳細を表9に示す。
【0112】
【表9】
【0113】
表10に示すように、熱可塑性ポリマー組成物の剥離接着性能を、様々な基材に関して評価した。モールドを70℃に予熱し、熱可塑性ポリマー組成物を各々の基材に240℃で直接射出オーバーモールドした。組成物付きの基材を室温で1日間貯蔵した後、剥離接着力を測定した。
【0114】
【表10】
【0115】
本明細書で使用する場合、用語「含む(comprising)」は、その用語の後に特定される要素又はステップを包含することを意味するが、任意のそのような要素又はステップは網羅的ではなく、実施形態は他の要素又はステップを包含することができる。用語「含む」及び「包含する(including)」は本明細書において様々な態様を説明するために使用されているが、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」は、本開示のより明確な態様を提供するために「含む」及び「包含する」の代わりに使用することができ、また開示もされている。
【外国語明細書】