(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146972
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】スペアタイヤの保持機構
(51)【国際特許分類】
B62D 43/04 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B62D43/04 A
B62D43/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048024
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】浮田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】林口 太一
(57)【要約】
【課題】手間を掛けずに、スペアタイヤの脱落を予防するスペアタイヤの保持機構を提供する。
【解決手段】スペアタイヤ1を支持する支持部材11と、一端がその支持部材11に連結されたチェーン12を巻き取るまたは繰り出す巻取り装置13と、その巻取り装置13を車台2に固定するブラケット14と、を備えたスペアタイヤ1の保持機構10は、支持部材11およびブラケット14に取り付けられて、支持部材11およびブラケット14の位置関係が正位置か否かを検知する検知装置15と、この検知装置15が支持部材11およびブラケット14の位置関係が正位置でないことを検知したことを報知する報知装置16と、を備えて構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペアタイヤを支持する支持部材と、一端がその支持部材に連結されたチェーンを巻き取るまたは繰り出す巻取り装置と、その巻取り装置を車両に固定するブラケットと、を備えたスペアタイヤの保持機構において、
前記支持部材および前記ブラケットの少なくとも一方に取り付けられて、前記支持部材および前記ブラケットの位置関係が前記スペアタイヤを保持した状態における正位置か否かを検知する検知装置と、この検知装置が前記支持部材および前記ブラケットの位置関係が前記正位置でないことを検知したことを報知する報知装置と、を備えたことを特徴とするスペアタイヤの保持機構。
【請求項2】
前記検知装置は前記車両の走行中の振動または前記巻取り装置による前記チェーンの巻取り動作で生じた振れによる前記支持部材および前記ブラケットの位置関係の一時的な変位を検知しない構成を有する請求項1に記載のスペアタイヤの保持機構。
【請求項3】
前記検知装置は、前記支持部材および前記ブラケットのそれぞれに固定されて、前記支持部材および前記ブラケットが前記正位置の場合に互いに通電可能に接触する対の接続部材で構成され、
前記報知装置は前記接続部材どうしの間の通電が切断されたときに前記支持部材および前記ブラケットの位置関係が前記正位置でないことを報知する構成である請求項1または2に記載のスペアタイヤの保持機構。
【請求項4】
前記検知装置は、前記支持部材または前記ブラケットのどちらか一方の部材に固定されたスイッチと他方の部材に固定されたターゲットとを有し、前記支持部材および前記ブラケットの位置関係が前記正位置と非正位置との間で切り替わる場合に前記スイッチが前記ターゲットにより入り切りが切り替わる構成であり、
前記報知装置は、前記支持部材および前記ブラケットの位置関係が前記正位置から前記非正位置になり、前記スイッチの入り切りが切り替わったときに前記支持部材および前記ブラケットの位置関係が前記正位置でないことを報知する構成である請求項1または2に記載のスペアタイヤの保持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペアタイヤの保持機構に関し、より詳細には、チェーンに連結された支持部材によりスペアタイヤを保持するスペアタイヤの保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
スペアタイヤの保持機構として、主索状体(チェーン)に加えて副索状体を用いてスペアタイヤとキャリア(ブラケット)とを連結し、主索状体が切断された場合に副索状体がスペアタイヤの脱落を防止するとともに副索状体に張力が作用したときにスイッチが作動してそのことを警報するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、スペアタイヤの脱落報知装置として、スペアタイヤが脱落したときにスペアタイヤに貫通させた電線が断線することで報知機が作動するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-117779号公報
【特許文献2】特開2019-89526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スペアタイヤの保持機構に保持したスペアタイヤが脱落する要因の一つにチェーンのねじ切れがある。チェーンのねじ切れは障害物との干渉によりスペアタイヤが上下方向を軸として回転することに伴ってチェーンが回転することで生じる。具体的には、チェーンの回転によりチェーンがねじ切られる状態と、回転によりチェーンが伸びて塑性変形した状態で車両が走行し、走行中の振動により切れる状態とが例示される。つまり、チェーンの回転を検知すれば、チェーンがねじ切れを予防することが可能となり、スペアタイヤが脱落することを予防可能になる。
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1、2に記載の発明はスペアタイヤが脱落したことを検知するものであり、スペアタイヤが脱落することを予防することができない。また、それらの発明は、スペアタイヤを新たに設置する際に副索状体を連結したり、電線を連結したりする手間があることに加えて、それらを連結し忘れてスペアタイヤが脱落したときに報知されないという問題がある。また、スペタイヤに交換する際にも、副索状体の連結を解除したり、電線を取り外したりする手間が掛かるという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、手間を掛けずに、スペアタイヤの脱落を予防するスペアタイヤの保持機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の一態様のスペアタイヤの保持機構は、スペアタイヤを支持する支持部材と、一端がその支持部材に連結されたチェーンを巻き取るまたは繰り出す巻取り装置と、その巻取り装置を車両に固定するブラケットと、を備えたスペアタイヤの保持機構において、前記支持部材および前記ブラケットの少なくとも一方に取り付けられて、前記支持部材および前記ブラケットの位置関係が前記スペアタイヤを保持した状態における正位置か否かを検知する検知装置と、この検知装置が前記支持部材および前記ブラケットの位置関係が前記正位置でないことを検知したことを報知する報知装置と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、スペアタイヤが脱落したことを検知するのではなく、支持部材およびブラケットの位置関係が正位置でないことを検知して報知することで、チェーンの回転によるチェーンのねじりを早期に解消することができる。これにより、チェーンのねじれに起因するチェーンのねじ切れを防止するには有利になり、スペアタイヤが脱落することを予防することができる。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、検知装置が支持部材およびブラケットの少なくとも一方に取り付けられる構成であり、スペアタイヤに対する作業が不要になる。これにより、従来に比して手間を掛けずに、スペアタイヤの脱落を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一実施形態のスペアタイヤの保持機構を例示する構成図である。
【
図2】
図1のスペアタイヤの保持機構が車台に取り付けられた状態を例示する斜視図である。
【
図3】
図1のスペアタイヤの保持機構がスペアタイヤを保持した状態を例示する斜視図であり、巻取り装置および一方のブラケットが省略されている。
【
図4】第二実施形態のスペアタイヤの保持機構を例示する構成図である。
【
図5】
図1の第一実施形態の変形例を例示する平面図である。
【
図6】
図1の第一実施形態の変形例を例示する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示におけるスペアタイヤの保持機構の実施形態について説明する。図中において、X方向は車台前後方向を、Y方向は車台幅方向を、Z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。図中において、一点鎖線は信号線を示す。それらの図では、構成が分かり易いように部材の寸法を変化させており、必ずしも実際に製造するものとは一致させていない。
【0012】
図1~
図3に例示するように、第一実施形態のスペアタイヤ1の保持機構10はトラックやバスなどの大型車両のスペアタイヤ1を車台2に保持する機構である。保持機構10は支持部材11、チェーン12、巻取り装置13、ブラケット14、検知装置15、および、報知装置16を備えて構成される。
【0013】
支持部材11は平面視における中央部分にチェーン12の一端が連結されて、その両端部がスペアタイヤ1のホイール3に引っ掛けられて、スペアタイヤ1を支持する。チェーン12はその一端が支持部材11に連結され、他端が巻取り装置13に連結される。巻取り装置13は手動式あるいは電動式であって、チェーン12を巻き取るあるいはチェーン12を繰り出す装置である。X方向に対向配置された一対のブラケット14は一対のブラケット14の間に巻取り装置13を矜持して車台2に固定する。なお、図示しないが支持部材11はホイール3のハブ穴4の縁部に係合する係合部を有しており、スペアタイヤ1が障害部に干渉してチェーン12を軸にして回転した場合に、その回転に伴ってチェーン12を軸にして回転する構成になっている。
【0014】
スペアタイヤ1の保持機構10は、支持部材11の両端部をスペアタイヤ1のホイール3に引っ掛け、巻取り装置13によりチェーン12を巻取り、スペアタイヤ1のホイール3の上端がブラケット14の下端に当接した状態でスペアタイヤ1を保持する。この状態を支持部材11およびブラケット14の位置関係が正位置の状態であり、車両が走行可能となる。
【0015】
本開示において、支持部材11およびブラケット14の位置関係はXY平面における位置関係とZ方向における位置関係との両方を含むものである。正位置とはチェーン12が捻れていない状態でスペアタイヤ1が保持されて、保持機構10を搭載した車両が走行可能な状態である。本実施形態において、正位置とは支持部材11がスペアタイヤ1を支持し、巻取り装置13によりチェーン12が巻き取られてスペアタイヤ1のホイール3の上端がブラケット14の下端に接触した状態で、かつ、支持部材11の長手方向がX方向に向いた状態である。非正位置とは支持部材11およびブラケット14の位置関係が正位置でない状態である。
【0016】
検知装置15は支持部材11およびブラケット14の位置関係がスペアタイヤ1を保持した状態における正位置か否かを検知する装置である。検知装置15は、第一接続部材17、第二接続部材18、および、制御装置19を有して構成される。検知装置15は、第一接続部材17、第二接続部材18、および、制御装置19が閉回路を構成する。検知装置15は支持部材11およびブラケット14の位置関係が正位置の場合に第一接続部材17および第二接続部材18が互いに通電可能に接触して、第一接続部材17および第二接続部材18の間が通電して閉回路に電気が流れる状態になる。検知装置15は支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置の場合に第一接続部材17および第二接続部材18の間の通電が切断されて閉回路に電気が流れない状態になる。
【0017】
第一接続部材17は導電性を有した金属の板状を成し、支持部材11に絶縁状態で固定される。第一接続部材17は、支持部材11がスペアタイヤ1のホイール3に引っ掛けられたときに、平面視でホイール3の中心に形成されたハブ穴4から露出する支持部材11の部位に配置される。
【0018】
第二接続部材18はXY平面視でL字状を成し、ブラケット14に固定される。第二接続部材18はL字の一端が巻取り装置13よりも下方のブラケット14に固定され、L字の他端がブラケット14の下端よりも下方に位置する。第二接続部材18は制御装置19から導出された二本の電線に接続された一対の接続端子18aを有する。一対の接続端子18aは絶縁状態でL字の他端の下面に固定される。なお、
図1の点線が第二接続部材18の下端の位置を示すものとする。
【0019】
制御装置19は情報処理を行う中央演算装置(CPU)、その各種情報処理を行うために用いられるプログラムや情報処理結果を読み書き可能な内部記憶装置、及び各種インターフェースなどから構成されるハードウェアである。制御装置19は、第一接続部材17、第二接続部材18、および、報知装置16に電気的に接続されている。
【0020】
制御装置19は第一接続部材17と第二接続部材18とで構成する閉回路に電気を流し、流した電気が閉回路を循環した場合を支持部材11およびブラケット14の位置関係が正位置であることを検知し、流した電気が閉回路を循環しない場合をその位置関係が非正位置であることを検知する機能要素を有する。制御装置19は支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを検知すると、報知装置16にそのことを報知させる機能要素を有する。各機能要素は、プログラムとして内部記憶装置に記憶されていて、適時、中央演算装置により実行されている。なお、機能要素としては、プログラムの他にそれぞれが独立して機能するプログラマブルコントローラ(PLC)や電気回路で構成されてもよい。
【0021】
報知装置16はメータパネルにアイコンを表示する装置であり、検知装置15が支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを検知すると、そのことをアイコンにより報知する。
【0022】
スペアタイヤ1の保持機構10は、支持部材11の両端部をスペアタイヤ1のホイール3に引っ掛け、巻取り装置13によりチェーン12を巻取り、スペアタイヤ1のホイール3の上端がブラケット14の下端に当接した状態でスペアタイヤ1を保持する。
【0023】
このとき、チェーン12に捻れが生じていない場合に、検知装置15の第一接続部材17と第二接続部材18とは通電可能に接触する。この接触により閉回路に電気が流れるため、制御装置19は支持部材11およびブラケット14の位置関係が正位置であることを検知する。
【0024】
一方、スペアタイヤ1を保持する作業において、チェーン12にねじれが生じた状態になっていると、支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であるため、検知装置15の第一接続部材17と第二接続部材18との通電が切断する。この通電の切断により閉回路に電気が流れないため、制御装置19は支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを検知する。次いで、制御装置19は報知装置16に支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを報知させる。車両の運転者は報知装置16の報知により、支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを知ることができる。これにより、車両を発進させる前に保持機構10を点検することが可能となる。
【0025】
車両の走行中に障害物にスペアタイヤ1が干渉してスペアタイヤ1がチェーン12を軸にして回転すると、その回転に伴って支持部材11がチェーン12を軸にして回転する。このとき、検知装置15の第一接続部材17と第二接続部材18との通電が切断する。この通電の切断により閉回路に電気が流れないため、制御装置19は支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを検知する。次いで、制御装置19は報知装置16に支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを報知させる。車両の運転者は報知装置16の報知により、支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを知ることができる。これにより、車両を緊急停車して保持機構10を点検することが可能となる。
【0026】
以上のように、第一実施形態のスペアタイヤ1の保持機構10は、スペアタイヤ1が脱落したことを検知するのではなく、支持部材11およびブラケット14の位置関係が正位置でないことを検知して報知する。それ故、この保持機構10によれば、チェーン12の回転によるチェーン12の捻じりを早期に解消することができる。これにより、チェーン12のねじれによりチェーン12がねじ切れることを防止するには有利になり、スペアタイヤ1が脱落することを予防することができる。
【0027】
また、この保持機構10は、検知装置15の第一接続部材17が支持部材11に取り付けられ、第二接続部材18がブラケット14に取り付けられる構成である。それ故、スペアタイヤ1に交換する作業やスペアタイヤ1を保持する作業において、スペアタイヤ1の脱落防止のためのスペアタイヤ1に対する作業が不要になる。これにより、従来に比して手間を掛けずに、スペアタイヤ1の脱落を予防することができる。
【0028】
図4に例示するように、第二実施形態のスペアタイヤ1の保持機構10は、第一実施形態に対して検知装置20の構成が異なる。この実施形態の検知装置20は、スイッチ21、ターゲット22、および、制御装置23を有して構成される。
【0029】
スイッチ21はターゲット22を非接触で検出可能な近接スイッチで構成され、ブラケット14に固定される。ターゲット22は板状を成し、支持部材11に固定される。スイッチ21はターゲット22を検出した状態と検出していない状態とが切り替わると入り切りが切り替わる構成である。制御装置23は、スイッチ21がターゲット22を検出した信号が送られて、支持部材11およびブラケット14の位置関係が正位置であることを検知する。また、制御装置23は、スイッチ21がターゲット22を検出しない場合に信号が送られず、支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを検知する。
【0030】
以上のように、第二実施形態の保持機構10によれば、第一実施形態と同様にチェーン12の回転によるチェーン12の捻じりを早期に解消することができる。これにより、チェーン12の捻れによりチェーン12がねじ切れることを防止するには有利になり、スペアタイヤ1が脱落することを予防することができる。また、従来に比して手間を掛けずに、スペアタイヤ1の脱落を予防することができる。
【0031】
既述した実施形態の検知装置15、20は、車両の走行中の振動または巻取り装置13によるチェーン12の巻取り動作で生じた振れによる支持部材11およびブラケット14の位置関係の一時的な変位を検知しない構成を有することが望ましい。この変位を検知しない構成は、XY平面の変位に対する構成と、Z方向の変位に対する構成と、その両方の変位に対する構成とが例示される。
【0032】
図5に例示するように、XY平面の変位に対する構成としては、検知装置15の第二接続部材18の接続端子18aのY方向の長さが第一接続部材17のY方向の長さよりも長い構成が例示される。これにより、車両の走行中の振動または巻取り装置13によるチェーン12の巻取り動作で生じた振れによりスペアタイヤ1がチェーン12を軸に回転して支持部材11およびブラケット14の位置関係が変位しても、第一接続部材17および第二接続部材18の通電が切断されることを防ぐことができる。XY平面における支持部材11およびブラケット14の変位はチェーン12を軸とした回転変位である。したがって、第一接続部材17および接続端子18aはその回転周方向に延びる部材であってもよい。
【0033】
図6に例示するように、Z方向の変位に対する構成としては、検知装置15の第一接続部材17と支持部材11との間に変位吸収部材30を介在させる構成が例示される。変位吸収部材30としては、第一接続部材17をZ方向上方に向かって付勢するバネなどの付勢部材が例示される。これにより、車両の走行中の振動または巻取り装置13によるチェーン12の巻取り動作で生じた振れによりスペアタイヤ1がZ方向に上下動して支持部材11およびブラケット14の位置関係が変位しても、第一接続部材17および第二接続部材18の通電が切断されることを防ぐことができる。変位吸収部材30はスペアタイヤ1のZ方向の上下動による変位を吸収可能であればよく、第二接続部材18をブラケット14に対して上下動可能に固定するスライド機構で構成されてもよい。また、変位吸収部材30の代わりに第一接続部材17および第二接続部材18のそれぞれがバネ性を有する構成にしてもよい。なお、保持機構10はZ方向の変位に対する機構を有することで、スペアタイヤ1のホイール3の形状の異なりにも対応可能となる。具体的に、スペアタイヤ1のホイール3のZ方向の厚みの異なりに対応可能となり、ホイール3の厚みにより検知装置15、23が検知できない事態を回避可能になる。
【0034】
両方の変位に対する構成としては、制御装置19、23が支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを検知してからの経過時間をカウントし、位置関係が正位置であることを検知した場合にカウントした経過時間をリセットし、カウントした経過時間と予め設定された閾値とを比較する構成が例示される。経過時間が閾値以上の場合に制御装置19、23が報知装置16に報知させ、経過時間が閾値未満の場合に制御装置19、23が報知装置16の報知を禁止する。これにより、車両の走行中の振動または巻取り装置13によるチェーン12の巻取り動作で生じた振れにより支持部材11およびブラケット14の位置関係が変位しても、第一接続部材17および第二接続部材18の通電が切断されることを防ぐことができる。
【0035】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示のスペアタイヤ1の保持機構10は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0036】
例えば、保持機構10のブラケット14は車台2に固定されるものに限定されず、車体に固定されてもよい。なお、本開示における車台2とは、車両の骨格部品であり、駆動系や動力伝達系の部品およびキャブや車体が取り付けられるものである。第一実施形態の支持部材11の長手方向はY方向に向いてもよく、ブラケット14の形状も特に限定されるものではない。
【0037】
第一実施形態の検知装置15は、第一接続部材17が導電性を有する金属で構成されたが、第一接続部材17が第二接続部材18の接続端子18aに接触する接続端子を有してもよい。また、第一接続部材17のZ方向の高さを高くし、第一接続部材17の上端をブラケット14の下端よりも高くし、第二接続部材18の下端をブラケット14の下端よりも上方に配置してもよい。第二実施形態の検知装置20も同様に、スイッチ21とターゲット22の配置位置を逆にしてもよい。
【0038】
第一実施形態の検知装置15は、支持部材11とブラケット14とが直に接触する構成であれば、第一接続部材17および第二接続部材18を用いずに、支持部材11やブラケット14に直に接続端子を設けてもよい。また、支持部材11とブラケット14とのどちらか一方に接続部材を設け、他方に接続端子を設ける構成にしてもよい。第二実施形態の検知装置15はターゲット22の代わりに支持部材11の上端の段差やブラケット14の下端の段差を用いてもよい。また、スイッチ21はターゲット22を非接触で検知可能な近接スイッチに限定されず、ターゲット22に直に接触して入り切りが切り替わるリミットスイッチで構成されてもよい。スイッチ21はオンオフスイッチに限定されず、スイッチ21とターゲット22との距離を検知するセンサで構成されてもよい。
【0039】
既述した報知装置16はメータパネルにアイコンを表示する装置としたが、報知装置16としては、支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを報知できればよく、その構成に限定されない。例えば、報知装置16がブザーなどの警告音を発する装置で構成されてもよい。また、報知装置16が運転者が有する携帯端末に対してメッセージを送信する構成でもよい。
【0040】
既述した実施形態の保持機構10は、支持部材11およびブラケット14の位置関係が非正位置であることを検知したときに、そのことを報知する構成である。したがって、スペアタイヤ1の交換作業のときに報知される。この交換作業時の報知を禁止する構成として、巻取り装置13に稼働状況を検知可能なセンサを取り付け、巻取り装置13が稼働して、チェーン12を巻き取るまたは繰り出す場合は、報知装置16の報知を禁止する構成が例示される。これにより、報知装置16が警告音を発する装置で構成された場合に、報知装置16の報知が煩わしい場合を解消することができる。
【0041】
なお、実施形態の保持機構10はチェーン12が予期せず千切れてスペアタイヤ1が保持機構10から脱落した場合にも、支持部材11およびブラケット14の位置関係が正位置ではなくなるため、検知装置15がその状態を検知して報知装置16が報知する。
【符号の説明】
【0042】
1 スペアタイヤ
2 車台
10 保持機構
11 支持部材
12 チェーン
13 巻取り装置
14 ブラケット
15 検知装置
16 報知装置