(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146982
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】情報処理装置と情報処理プログラムと情報処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20220929BHJP
G10L 25/66 20130101ALI20220929BHJP
A61B 5/288 20210101ALI20220929BHJP
【FI】
A61B5/107 500
G10L25/66
A61B5/288
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048038
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 義之
(72)【発明者】
【氏名】篠田 侑果
(72)【発明者】
【氏名】前川 亮
(72)【発明者】
【氏名】杉野 法広
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C038VA18
4C038VA20
4C038VB20
4C038VB40
4C038VC20
4C127AA02
4C127BB01
4C127GG11
4C127GG13
4C127GG15
4C127GG18
(57)【要約】
【課題】画一的な胎児心拍数陣痛図(CTG)の判読の補助に用いられる補助情報を提供する。
【解決手段】本発明に係る情報処理装置1は、CTGの判読の補助情報を生成する情報処理装置である。情報処理装置は、CTGを取得する取得部1311と、CTGに含まれる胎児心拍数波形の波形信号を抽出する波形信号抽出部1312と、波形信号から低周波数成分信号を抽出する低域抽出部1314と、低周波数成分信号に基づいて基線を判定するための基線判定対象区間を補助情報として特定する基線区間特定部132と、を有してなる。基線区間特定部は、低周波数成分信号において所定の第1始点から第1所定時間が経過するまでの区間を第1判定区間として抽出し、第1判定区間における低周波数成分信号の分散値が第1閾値よりも小さいとき、第1判定区間を基線判定対象区間を構成する第1構成区間として特定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胎児心拍数陣痛図の判読の補助に用いられる補助情報を生成する情報処理装置であって、
前記胎児心拍数陣痛図を取得する取得部と、
取得された前記胎児心拍数陣痛図に含まれる胎児心拍数波形の波形信号を抽出する波形信号抽出部と、
前記波形信号から所定の低周波数成分信号を抽出する低域抽出部と、
抽出された前記低周波数成分信号に基づいて、胎児心拍数基線を判定するための基線判定対象区間を前記補助情報として特定する基線区間特定部と、
を有してなり、
前記基線区間特定部は、
前記低周波数成分信号において、所定の第1始点から、前記胎児心拍数基線を判定するために必要な第1所定時間が経過するまでの区間を第1判定区間として抽出し、
前記第1判定区間における前記低周波数成分信号の分散値が第1閾値よりも小さいとき、前記第1判定区間を前記基線判定対象区間を構成する第1構成区間として特定する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記基線区間特定部は、
前記第1始点から前記第1所定時間よりも短い第2所定時間が経過した点を新たな前記第1始点として設定し、新たな前記第1始点から前記第1所定時間が経過するまでの区間を新たな前記第1判定区間として抽出し、
複数の前記第1構成区間が特定されたとき、複数の前記第1構成区間のうち、共通する区間を有する前記第1構成区間同士を連結して得られる区間を前記基線判定対象区間として特定する、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
特定された前記基線判定対象区間に基づいて、前記基線判定対象区間における前記胎児心拍数基線を判定する基線判定部、
を有してなり、
前記基線判定部は、前記低周波数成分信号において、前記基線判定対象区間を構成する前記第1構成区間ごとの平均心拍数を前記胎児心拍数基線の胎児心拍数として特定し、前記平均心拍数に基づいて、前記胎児心拍数基線を判定する、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記波形信号から所定範囲の高周波数成分信号を抽出する高域抽出部と、
抽出された前記高周波数成分信号に基づいて、胎児心拍数基線細変動を判定するための細変動判定対象区間を前記補助情報として特定する細変動区間特定部と、
を有してなり、
前記細変動区間特定部は、
抽出された前記高周波数成分信号において、前記基線判定対象区間に対応する区間を前記細変動判定対象区間として特定する、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
特定された前記細変動判定対象区間に基づいて、前記細変動判定対象区間における前記胎児心拍数基線細変動を判定する細変動判定部、
を有してなり、
前記細変動判定部は、
前記細変動判定対象区間の始点を第2始点として設定し、前記第2始点から第3所定時間が経過するまでの区間を第2判定区間として抽出し、
前記第2判定区間における前記高周波数成分信号の分散値と、複数種の閾値から構成される第2閾値と、に基づいて、前記胎児心拍数基線細変動を、中等度、増加、減少または消失のいずれかに判定する、
請求項4記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記細変動判定部は、
前記第2始点から第4所定時間が経過した点を新たな前記第2始点として設定し、新たな前記第2始点から前記第3所定時間が経過するまでの区間を新たな前記第2判定区間として抽出し、
前記第2判定区間ごとに前記胎児心拍数基線細変動を判定する、
請求項5記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記高周波数成分信号は、前記低周波数成分信号よりも高い周波数帯域を含み、
前記低周波数成分信号は、前記高周波数成分信号よりも低い周波数帯域を含み、
前記高周波数成分信号の周波数帯域の一部は、前記低周波数成分信号の周波数帯域の一部と共通する、
請求項4記載の情報処理装置。
【請求項8】
抽出された前記低周波数成分信号に基づいて、一過性変動が生じている1以上の一過性変動区間を前記補助情報として特定する一過性変動区間特定部、
を有してなり、
前記一過性変動区間特定部は、
前記低周波数成分信号において、前記第1始点を第3始点として設定し、前記第3始点から第5所定時間が経過するまでの区間を第3判定区間として抽出し、
前記第3判定区間における前記低周波数成分信号の分散値が第3閾値よりも大きいとき、前記第3判定区間を前記一過性変動区間を構成する第2構成区間として特定する、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記一過性変動区間特定部は、
前記第3始点から第6所定時間が経過した点を新たな前記第3始点として設定し、新たな前記第3始点から前記第5所定時間が経過するまでの区間を新たな前記第3判定区間として抽出し、
1以上の連続する前記第2構成区間により構成される区間を前記一過性変動区間として特定する、
請求項8記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記一過性変動区間特定部は、
前記一過性変動区間のうち、
時系列上の最初の点から第7所定時間が経過するまでの区間を開始区間として抽出し、
時系列上の最後の点から前記第7所定時間が遡るまでの区間を終了区間として抽出し、
前記開始区間の第4分散値が第4閾値より小さいとき、前記開始区間を前記一過性変動区間から除外し、前記終了区間の第5分散値が前記第4閾値より小さいとき、前記終了区間を前記一過性変動区間から除外して、前記一過性変動区間を更新する、
請求項8記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記一過性変動区間に基づいて、前記一過性変動を識別する識別器の学習データを取得するデータ取得部、
を有してなり、
前記データ取得部は、前記一過性変動区間のうち、時系列上の最後の点から第8所定時間が遡るまでの区間の前記低周波数成分信号を前記学習データとして抽出する、
請求項8記載の情報処理装置。
【請求項12】
コンピュータを請求項1記載の情報処理装置として機能させる、
ことを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項13】
胎児心拍数陣痛図の判読の補助に用いられる補助情報を生成する情報処理装置により実行される情報処理方法であって、
前記情報処理装置が、
前記胎児心拍数陣痛図を取得する取得ステップと、
取得された前記胎児心拍数陣痛図に含まれる胎児心拍数波形の波形信号を抽出する波形抽出ステップと、
前記波形信号から所定の低周波数成分信号を抽出する低域抽出ステップと、
抽出された前記低周波数成分信号に基づいて、胎児心拍数基線を判定するための基線判定対象区間を前記補助情報として特定する基線判定対象区間特定ステップと、
を含み、
前記基線判定対象区間特定ステップは、
前記低周波数成分信号において、所定の第1始点から、前記胎児心拍数基線を判定するために必要な第1所定時間が経過するまでの区間を第1判定区間として抽出するステップと、
前記第1判定区間における前記低周波数成分信号に基づいて、前記基線判定対象区間を特定するステップと、
を含む、
ことを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置と情報処理プログラムと情報処理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
胎児心拍数心電図(CTG:cardiotocography)は、分娩監視装置により計測される胎児心拍数と子宮収縮(陣痛)とを時系列に沿って連続的に記録した波形図である。医師は、CTGに基づいて、子宮収縮と胎児心拍数との変化を確認することにより、胎児の状態を推定する。胎児は、分娩時に、種々の要因(例えば、常位胎盤早期剥離、臍帯圧迫など)により、低酸素状態に陥り得る。その結果、胎児には、胎児期および出生後のアシドーシス(血液の酸性化)により虚血性脳症が発症し、将来的に身体障害や発達障害が生じ得る。そのため、妊婦の分娩経過中や妊娠期間中には、CTGに基づいた胎児の低酸素症の所見の有無の持続的・断続的な観察が、行われている。
【0003】
CTGの判読に関して、日本産科婦人科学会は、心拍数基線、心拍数基線細変動、一過性変動に対する判定基準を示している。医師らは、同判定基準に基づく判定を行なっている。しかしながら、CTGは産科医師や助産師の目視により判読されており、産科医師や助産師の経験差に基づく判読の個人差が大きい。そのため、このような判定基準が示されているにも関わらず、依然として虚血性脳症を発症する症例は、多い。
【0004】
これまでにも、胎児心拍数と母体子宮活動に基づいて、心拍数基線細変動や一過性変動などのパラメータを判定し、パラメータごとに定義されたノンリアシュアリング特性(異常)に基づいて、胎児へのリスクのレベルを示す技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に開示された技術は、心拍数基線細変動や一過性変動などのパラメータの標準的な閾値に基づいて、ノンリアシュアリング特性を判定する。しかしながら、同技術は、胎児心拍数から心拍数基線細変動や一過性変動などのパラメータを抽出し、判定する具体的な内容について開示していない。そのため、心拍数基線や、心拍数細変動、一過性変動を画一的に判定・識別可能な技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、CTGの判読の補助に用いられる補助情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る情報処理装置は、胎児心拍数陣痛図の判読の補助に用いられる補助情報を生成する情報処理装置であって、胎児心拍数陣痛図を取得する取得部と、取得された胎児心拍数陣痛図に含まれる胎児心拍数波形の波形信号を抽出する波形信号抽出部と、抽出された波形信号から所定の低周波数成分信号を抽出する低域抽出部と、抽出された低周波数成分信号に基づいて、胎児心拍数基線を判定するための基線判定対象区間を補助情報として特定する基線区間特定部と、を有してなり、基線区間特定部は、低周波数成分信号において、所定の第1始点から、胎児心拍数基線を判定するために必要な第1所定時間が経過するまでの区間を第1判定区間として抽出し、第1判定区間における低周波数成分信号の分散値が第1閾値よりも小さいとき、第1判定区間を基線判定対象区間を構成する第1構成区間として特定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、CTGの判読の補助に用いられる補助情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る情報処理装置に用いられる胎児心拍数陣痛図の例を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る情報処理装置の実施の形態を示すネットワーク接続図である。
【
図3】本発明に係る情報処理装置の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図3の情報処理装置が備えるノイズ除去部の機能ブロック図である。
【
図5】本発明に係る情報処理方法の実施の形態を示すフローチャートである。
【
図6】
図5の情報処理方法に含まれる前処理のフローチャートである。
【
図7】
図5の前処理の各段階における信号の状態の例を示す模式図である。
【
図8】
図5の情報処理方法に含まれる基線判定処理の一部のフローチャートである。
【
図9】
図8の基線判定処理の他の一部のフローチャートである。
【
図10】
図8の基線判定処理の主な処理の例を示す模式図である。
【
図11】
図5の情報処理方法に含まれる細変動判定処理のフローチャートである。
【
図12】
図11の細変動判定処理の主な処理の例を示す模式図である。
【
図13】
図5の情報処理方法に含まれる一過性変動学習処理の一部のフローチャートである。
【
図14】
図13の一過性変動学習処理の他の一部のフローチャートである。
【
図15】
図13の一過性変動学習処理のさらに他の一部のフローチャートである。
【
図16】
図13の一過性変動区間特定処理の主な処理の例を示す模式図である。
【
図17】
図13の一過性変動学習処理における学習データの取得方法を説明する模式図である。
【
図18】
図5の情報処理方法に含まれる一過性変動識別処理のフローチャートである。
【
図19】
図18の一過性変動識別処理の各識別区間を説明する模式図である。
【
図20】実際の胎児心拍数陣痛図に対して、本方法を実行したときの判定結果の例を示す模式図である。
【
図21】実際の胎児心拍数陣痛図に対して、
図8の基線判定処理を実行したときの基線判定対象区間の特定結果を示す模式図である。
【
図22】実際の胎児心拍数陣痛図に対して、
図8の基線判定処理を実行したときの胎児心拍数基線の判定結果を示す模式図である。
【
図23】実際の胎児心拍数陣痛図に対して、
図11の細変動判定処理を実行したときの胎児心拍数基線細変動の判定結果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る情報処理装置(以下「本装置」という。)と情報処理プログラム(以下「本プログラム」という。)と情報処理方法(以下「本方法」という。)との実施の形態について説明する。
【0012】
本発明は、胎児心拍数陣痛図の判読の補助に用いられる補助情報の生成に関する。また、本発明は、胎児心拍数基線(以下「基線」という。)の判定、胎児心拍数基線細変動(以下「細変動」という。)の判定、一過性変動の識別器の生成、一過性変動の識別、に関する。
【0013】
「胎児心拍数陣痛図(CTG:cardiotocography)」は、分娩監視装置により計測される胎児心拍数と子宮収縮(陣痛)とを時系列に沿って連続的に記録した波形図であり、胎児の状態を推定するための子宮収縮と胎児心拍数との変化を示す。胎児心拍数陣痛図(以下「CTG」という。)は、胎児心拍数に対応する波形(以下「胎児心拍数波形」という。)と、子宮収縮に対応する波形と、を含む。
【0014】
図1は、本発明に係る情報処理装置に用いられるCTGの例を示す模式図である。
同図において、上段の波形は胎児心拍数波形を示し、下段の波形は子宮収縮に対応する波形を示す。同図の上段の縦軸は胎児心拍数(bpm:beats per minute)を示し、横軸は経過時間(sec)を示す。
【0015】
「補助情報」は、CTGの判読の補助に用いられる情報である。本実施の形態において、補助情報は、基線判定対象区間と、細変動判定対象区間と、一過性変動区間と、を含む。また、本実施の形態において、補助情報は、本発明により得られる基線の判定結果、細変動の判定結果、一過性変動の識別結果、だけでなく、一過性変動の識別に必要な学習データ(すなわち、識別を補助するデータ)も含む。
【0016】
「基線(胎児心拍数基線)」は、10分間における胎児の凡その平均心拍数である。医学的には、基線は、胎児心拍数に対応する波形のうち、一過性変動の部分と細変動が増加している部分を除外した区間のうち、2分間以上持続している区間(すなわち、基線判定対象区間)で判定される。本実施の形態において、基線は、「正常」「頻脈」「徐脈」の3種のいずれかに判定される。基線は、110bpm未満で「徐脈」、160bpm(beats per minute)を超えると「頻脈」、110bpm以上160bpm以下で「正常」と判定される。基線における「正常」「頻脈」「徐脈」は公知であるため、その説明は省略する。
【0017】
「胎児心拍数基線細変動」は、基線の細かい変動であり、定義上、1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動のうち、振幅、周波数とも規則性がないものを意味する。医学的には、細変動は、基線が判読可能な区間において、判定される。本実施の形態において、細変動は、「中等度(正常)」「増加」「減少」「消失」の4種のいずれかに判定される。細変動における「中等度(正常)」「増加」「減少」「消失」は公知であるため、その説明は省略する。
【0018】
「一過性変動」は、胎児心拍数の急速な変動(「増加」「減少」)である。本実施の形態において、一過性変動は、「一過性頻脈」「早発一過性徐脈」「遅発一過性徐脈」「変動一過性徐脈」「遷延一過性徐脈」の5種を含む。各一過性変動は公知であるため、その説明は省略する。
【0019】
「基線判定対象区間」は、本発明において基線と特定される区間であり、本発明において基線を判定する区間である。基線判定対象区間の詳細は、後述する。
【0020】
「細変動判定対象区間」は、本発明において細変動を判定する区間である。細変動判定対象区間は、基線判定対象区間内に特定される。細変動判定対象区間の詳細は、後述する。
【0021】
「一過性変動区間」は、本発明において一過性変動が生じている区間として特定される区間である。一過性変動区間の詳細は、後述する。
【0022】
「識別器」は、本発明において一過性変動を識別する機械学習アルゴリズム(例えば、CNN(Convolutional Neural Network)などの公知の機械学習アルゴリズム)に基づくモデルである。本発明において、識別器は、「一過性変動以外」「一過性頻脈」「早発一過性徐脈および遅発一過性徐脈」「変動一過性徐脈(軽度)」「変動一過性徐脈(高度)」「遷延一過性徐脈」を識別する。本実施の形態において、識別器の学習データは、後述のとおり、一過性変動区間に基づいて生成される。
【0023】
<<情報処理装置>>
先ず、本装置の実施の形態について説明する。
【0024】
図2は、本装置の実施の形態を示すネットワーク接続図である。
【0025】
本装置1は、CTGの判読の補助に用いられる補助情報を生成する。本装置1は、ネットワークNを介して、外部装置2に接続される。本装置1の具体的な構成と動作とは、後述する。
【0026】
外部装置2は、CTGを生成および/または記憶する機器であり、例えば、分娩監視装置である。
【0027】
ネットワークNは、例えば、インターネット、移動体通信網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)のような通信網である。
【0028】
<情報処理装置の構成>
図3は、本装置1の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【0029】
本装置1は、例えば、パーソナルコンピュータで実現される。本装置1では、本プログラムが動作して、本プログラムが本装置1のハードウェア資源と協働して、本方法を実現する。
【0030】
ここで、コンピュータ(不図示)に本プログラムを実行させることで、本プログラムは、同コンピュータを本装置1と同様に機能させて、同コンピュータに本方法を実行させることができる。
【0031】
本装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、操作部14と、表示部15と、を備える。
【0032】
通信部11は、ネットワークNを介して、外部装置2からCTGを取得する。通信部11は、例えば、通信モジュールや通信インターフェイスにより構成される。CTGは、記憶部12に記憶される。
【0033】
記憶部12は、本装置1が後述する本方法を実行するために必要な情報(例えば、各種閾値など)を記憶する。記憶部12は、例えば、本装置1が備えるHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)のような記録装置、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ、および/または、フラッシュメモリのような可搬性記憶媒体、により構成される。
【0034】
制御部13は、本装置1全体の動作を制御すると共に、後述する本方法を実行する。制御部13は、例えば、本装置1が備えるCPU(Central Processing Unit)と、CPUの作業領域として機能するRAMのような揮発性メモリと、本プログラムなどの各種情報を記憶するROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリと、により構成される。制御部13は、前処理部131と、基線区間特定部132と、基線判定部133と、細変動区間特定部134と、細変動判定部135と、一過性変動区間特定部136と、データ取得部137と、識別器生成部138と、識別部139と、を備える。
【0035】
前処理部131は、CTGに対する前処理、すなわち、CTGの取得、後述する波形信号の抽出、ノイズ除去、低周波数成分の抽出、高周波数成分の抽出、を行う。前処理部131は、取得部1311と、波形信号抽出部1312と、ノイズ除去部1313と、低域抽出部1314と、高域抽出部1315と、を備える。
【0036】
取得部1311は、通信部11を介して、外部装置2からCTGを取得する。本実施の形態において、取得部1311は、リアルタイムでCTGを取得する。取得部1311の具体的な動作は、後述する。
【0037】
波形信号抽出部1312は、取得部1311により取得されたCTGから胎児心拍数波形の信号(以下「波形信号」という。)を抽出する。波形信号抽出部1312の具体的な動作は、後述する。
【0038】
図4はノイズ除去部1313の機能ブロック図である。
【0039】
ノイズ除去部1313は、波形信号抽出部1312(
図3参照)により抽出された波形信号のノイズを除去する。ノイズ除去部1313は、1次フィルタ1313aと、1次ローパスフィルタ1313bと、1次演算部1313cと、2次ローパスフィルタ1313dと、2次演算部1313eと、2次フィルタ1313fと、を備える。本実施の形態において、ノイズ除去部1313は、例えば、本プログラムを実行することにより、1次フィルタ1313a、1次ローパスフィルタ1313b、1次演算部1313c、2次ローパスフィルタ1313d、2次演算部1313e、2次フィルタ1313f、として機能する。ノイズ除去部1313の具体的な動作は、後述する。
【0040】
図3に戻る。
低域抽出部1314は、ノイズが除去された波形信号から所定範囲の低周波数成分信号を抽出する。低域抽出部1314の具体的な動作については、後述する。
【0041】
高域抽出部1315は、ノイズが除去された波形信号から所定範囲の高周波数成分信号を抽出する。高域抽出部1315の具体的な動作については、後述する。
【0042】
基線区間特定部132は、抽出された低周波数成分信号に基づいて、基線を判定するための基線判定対象区間を補助情報として特定する。基線区間特定部132の具体的な動作は、後述する。
【0043】
基線判定部133は、特定された基線判定対象区間に基づいて、同基線判定対象区間における基線を判定する。基線判定部133の具体的な動作は、後述する。
【0044】
細変動区間特定部134は、抽出された高周波数成分信号に基づいて、細変動を判定するための細変動判定対象区間を補助情報として特定する。細変動区間特定部134の具体的な動作は、後述する。
【0045】
細変動判定部135は、特定された細変動判定対象区間に基づいて、同細変動判定対象区間における細変動を判定する。細変動判定部135の具体的な動作は、後述する。
【0046】
一過性変動区間特定部136は、抽出された低周波数成分信号に基づいて、一過性変動を識別する識別器の学習データの取得をするための1以上の一過性変動区間を補助情報として特定する。一過性変動区間特定部136の具体的な動作は、後述する。
【0047】
データ取得部137は、特定された一過性変動区間に基づいて、識別器の学習データを取得する。データ取得部137の具体的な動作は、後述する。
【0048】
「学習データ」は、識別器が一過性変動を識別するための学習に用いられる教師データであり、例えば、低周波数成分信号の一部の区間(少なくとも、一過性変動区間の一部を含む)の波形データ(低周波数成分信号)である。
【0049】
識別器生成部138は、学習データに基づいて、識別器を生成する。識別器生成部138の具体的な動作は、後述する。
【0050】
識別部139は、識別器を用いて、一過性変動を識別する。識別部139の具体的な動作は、後述する。
【0051】
<<情報処理方法>>
次に、本装置1の動作、すなわち、本装置1が実行する本方法について、
図3と
図4も参照しつつ説明する。
【0052】
図5は、本方法の実施の形態を示すフローチャートである。
【0053】
本装置1は、前処理(S1)と、基線判定処理(S2)と、細変動判定処理(S3)と、一過性変動学習処理(S4)と、一過性変動識別処理(S5)と、を実行する。すなわち、本方法は、前処理(S1)と、基線判定処理(S2)と、細変動判定処理(S3)と、一過性変動学習処理(S4)と、一過性変動識別処理(S5)と、を含む。ここで、基線判定処理(S2)と細変動判定処理(S3)と一過性変動識別処理(S5)とは、主に産科の現場において実行される処理である。一方、一過性変動学習処理(S4)は、識別器の学習の現場において実行される処理であり、一過性変動識別処理(S5)の前に予め実行される処理である。前処理(S1)は、基線判定処理(S2)と細変動判定処理(S3)と一過性変動学習処理(S4)と一過性変動識別処理(S5)それぞれに共通して、事前に実行される処理である。
【0054】
<前処理>
図6は、前処理(S1)のフローチャートである。
図7は、前処理(S1)の各段階における信号の状態の例を示す模式図である。
【0055】
「前処理(S1)」は、CTGから波形信号を抽出し、波形信号のノイズを除去し、低周波数成分信号と高周波数成分信号とを生成する処理である。
【0056】
先ず、取得部1311は、通信部11を介して、外部装置2からCTGを取得する(S101)。本実施の形態において、取得部1311は、1名の妊婦に対するCTGを連続的に取得するものとする。
【0057】
次いで、波形信号抽出部1312は、取得されたCTGに含まれる胎児心拍数波形の波形信号を抽出する(S102)。
【0058】
次いで、ノイズ除去部1313は、波形信号に1次フィルタ1313aを適用して、波形信号から主要な突発性ノイズを除去する(S103)。1次フィルタ1313aの閾値は、例えば、10bpm~190bpmである。すなわち、1次フィルタ1313aは、波形信号から、10bpm未満の突発性ノイズと、190bpmを超える突発性ノイズと、を除去する。
【0059】
次いで、ノイズ除去部1313は、主要な突発性ノイズが除去された波形信号(以下「1次ノイズ除去信号」という。)に1次ローパスフィルタ1313bを適用して、1次ノイズ除去信号から低周波数帯成分の信号(以下「1次低周波数成分信号」という。)を抽出する(S104)。その結果、1次フィルタ1313aによる処理S103から漏れた突発性ノイズを含まない波形信号のトレンドが抽出される。1次ローパスフィルタ1313bのカットオフ周波数は、例えば、0.03Hzである。
【0060】
次いで、ノイズ除去部1313は、1次演算部1313cを用いて、1次ノイズ除去信号と1次低周波数成分信号との差分(以下「1次差分」という。)の絶対値を算出する(S105)。その結果、基線に相当する変動が有る程度キャンセルされ、処理S104の後に残留しているノイズは明確になる。
【0061】
次いで、ノイズ除去部1313は、算出された1次差分の絶対値により得られる信号(以下「1次差分信号」という。)に2次ローパスフィルタ1313dを適用して、1次差分信号から低周波数帯成分の信号(以下「2次低周波数成分信号」という。)を抽出する(S106)。その結果、処理S105により明確になったノイズを含む基線に相当する変動成分が抽出される。2次ローパスフィルタ1313dのカットオフ周波数は、例えば、0.06Hzである。
【0062】
次いで、ノイズ除去部1313は、2次演算部1313eを用いて、1次差分信号と2次低周波数成分信号との差分(以下「2次差分」という。)を算出する(S107)。その結果、前述の変動成分は、キャンセルされる。そのため、処理S105により明確になったノイズは、より明確になり、検出可能となる。
【0063】
次いで、ノイズ除去部1313は、2次差分により得られる信号(以下「2次差分信号」という。)に2次フィルタ1313fを適用して、処理S103の後に残留していた微小な突発性ノイズが除去された2次差分信号(以下「ノイズ除去信号」という。)を抽出する(S108)。ここで、2次フィルタの閾値は、10bpmである。すなわち、2次フィルタ1313fは、2次差分信号から10bpmを超える突発性ノイズを除去する。
【0064】
次いで、低域抽出部1314は、ノイズ除去信号に所定のローパスフィルタを適用して、ノイズ除去信号から所定の低周波数成分信号を抽出する(S109)。ここで、本処理S109において適用されるローパスフィルタは、例えば、バターワース型ローパスフィルタ(次数「4」)である。同ローパスフィルタのカットオフ周波数は、例えば、0.03Hzである。抽出された低周波数成分信号は、例えば、記憶部12に記憶される。
【0065】
一方、高域抽出部1315は、ノイズ除去信号に所定範囲のバンドパスフィルタを適用して、ノイズ除去信号から所定範囲の高周波数成分信号を抽出する(S110)。ここで、本処理S110において適用されるバンドパスフィルタは、例えば、バターワース型バンドパスフィルタ(次数「4」)である。同バンドパスフィルタのカットオフ周波数(帯域通過周波数)は、0.02Hz~0.8Hzである。抽出された高周波数成分信号は、例えば、記憶部12に記憶される。
【0066】
ここで、医師がCTGを判読するとき、医師は、胎児心拍数波形の低周波成分(緩やかな変動)と高周波成分(細かい変動)とを明確に区分けしてCTGを判読するのではなく、用途に応じて両成分を使い分けつつCTGを判読している。すなわち、医師が基線を判定する胎児心拍数波形の形状の一部は、医師が細変動を判定する胎児心拍数波形の形状の一部と重複する。そのため、本実施の形態において、高周波数成分信号は低周波数成分信号よりも高い周波数帯域を含み、かつ、低周波数成分信号は、高周波数成分信号よりも低い周波数帯域を含む。すなわち、高周波数成分信号の周波数帯域の一部は、低周波数成分信号の周波数帯域の一部と共通する。その結果、本装置1は、医師の目視に近い判定(基線の判定、細変動の判定)を実現できる。
【0067】
なお、前処理は、時系列に沿って連続的に実行されてもよく、あるいは、所定時間(例えば、3分間)内の波形信号ごとにまとめて実行されてもよい。
【0068】
また、例えば、本発明におけるノイズ除去部が備える各フィルタのカットオフ周波数は、本方法(前処理)に必要な低周波数成分信号と高周波数成分信号とが得られればよく、本実施の形態に限定されない。
【0069】
さらに、前処理において、1次差分の絶対値を算出した時点で、残留しているノイズが検出可能な程度(例えば、2次フィルタで抽出可能な程度)に明確であれば、ノイズ除去部は、処理S106,S107を省略してもよい。
【0070】
<基線判定処理>
図8は、基線判定処理(S2)の一部のフローチャートである。
図9は、基線判定処理(S2)の他の一部のフローチャートである。
図10は、基線判定処理(S2)の主な処理の例を示す模式図である。
【0071】
図10は、後述する第1構成区間を実線矢印で示し、後述する第1非構成区間を破線矢印で示す。同図は、説明の便宜上、第1構成区間および第1非構成区間に対して、時系列に沿って「1」~「10」の番号を付す。同図は、第1構成区間「1」~「3」が連続していることを示す。また、同図は、第1非構成区間「4」~「10」が7回連続していることを示す。さらに、同図は、第1構成区間「1」~「3」までの区間が基線判定対象区間として特定されていることを示す。
【0072】
「基線判定処理(S2)」は、低周波数成分信号に基づいて基線を判定するための基線判定対象区間を特定し、基線判定対象区間に基づいて同基線判定対象区間における基線を判定する処理である。
【0073】
先ず、基線区間特定部132は、基線を判定する対象の胎児心拍数波形(波形信号)に対応する低周波数成分信号を記憶部12から読み出す(S201)。
【0074】
次いで、基線区間特定部132は、低周波数成分信号において、時系列上の最初の点を始点として設定して、同始点から第1所定時間が経過するまでの区間を第1判定区間として抽出する(S202)。ここで、基線判定処理(S2)における始点は、本発明における第1始点の例である。
【0075】
「第1所定時間」は、基線を判定するために必要な時間であり、医学的には2分間である。ここで、CTGにおける胎児心拍数波形は、2分間の基線判定対象区間を有さない場合がある。この場合、医師は、2分間未満であるが2分間に近い時間(例えば、90秒)の基線判定対象区間に基づいて基線を判定する。そのため、第1所定時間は、70秒間から110秒間程度が望ましく、本実施の形態において、第1所定時間は、80秒間に設定される。すなわち、本実施の形態において、第1判定区間は、始点から80秒間の区間である。
【0076】
なお、本発明における基線区間特定部が設定する始点は、時系列上の最初の点に限定されない。すなわち、例えば、本発明における基線区間特定部は、本装置の使用者により選択された点を始点として設定してもよい。
【0077】
次いで、基線区間特定部132は、第1判定区間における低周波数成分信号の分散値(以下「第1分散値」という。)を算出する(S203)。
【0078】
次いで、基線区間特定部132は、第1分散値と所定の第1閾値とを比較して、第1分散値が第1閾値よりも小さいか否かを判定する(S204)。
【0079】
「第1閾値」は、第1判定区間が基線判定対象区間として適切か否かを判定するための閾値である。本実施の形態において、第1閾値は、「7」に設定される。第1閾値は、例えば、予め本装置1の使用者に設定され、記憶部12に記憶されている。
【0080】
第1分散値が第1閾値よりも小さいとき(S204の「Y」)、基線区間特定部132は、第1判定区間を基線判定対象区間を構成する区間(以下「第1構成区間」という。)として特定する(S205)。
【0081】
一方、第1分散値が第1閾値以上のとき(S204の「N」)、基線区間特定部132は、第1判定区間を基線判定対象区間を構成しない区間(以下「第1非構成区間」という。)として特定する(S206)。
【0082】
次いで、基線区間特定部132は、第1非構成区間が所定回数連続しているか否かを判定する(S207)。
【0083】
「所定回数」は、第1非構成区間が連続することにより、時系列において前後する2つの第1構成区間の一部の区間が共通しなくなる回数である。すなわち、所定回数は、時系列において、ある第1構成区間と、次の第1構成区間と、の間に共通する区間が無くなる(2つの第1構成区間が分離する)回数である。所定回数は、例えば、第1所定時間に基づいて設定される。すなわち、例えば、第1所定時間が80秒間で後述する第2所定時間が10秒間のとき、所定回数は9回に設定される。
【0084】
第1非構成区間が所定回数連続していないとき(S207の「N」)、基線区間特定部132は、低周波数成分信号において、第1判定区間よりも時系列における後の区間が第2所定時間以上継続しているか否かを判定する(S208)。換言すれば、基線区間特定部132は、取得部1311が第1判定区間の終点から第2所定時間分の胎児心拍数波形を継続して取得しているか否かを判定する。
【0085】
「第2所定時間」は、第1所定時間よりも短い時間であり、第1判定区間を時系列において後へずらすために設定される時間である。第2所定時間は、時系列において連続する2つの第1判定区間の一部が共通するように設定される。本実施の形態において、第2所定時間は、10秒間に設定される。
【0086】
なお、本発明における第2所定時間は、10秒間に限定されない。すなわち、例えば、本発明における第2所定時間は、5秒間でもよく、あるいは、15秒間でもよい。
【0087】
時系列における後の区間が第2所定時間以上継続しているとき(S208の「Y」)、基線区間特定部132は、始点から第2所定時間が経過した点を新たな始点として設定し、新たな始点から第1所定時間が経過するまでの区間を新たな第1判定区間として抽出する(S209)。換言すれば、基線区間特定部132は、第1判定区間の始点の位置を、同位置から第2所定時間後の点の位置に更新する。つまり、基線区間特定部132は、第1判定区間を時系列において第2所定時間だけ後にずらす。次いで、基線判定処理(S2)は、処理S203に戻る。
【0088】
第1非構成区間が所定回数連続しているとき(S207の「Y」)、基線区間特定部132は、複数の第1構成区間が特定されている場合、複数の第1構成区間のうち、共通する区間を有する第1構成区間同士を連結して得られる区間を基線判定対象区間として特定する(S210)。一方、1つの第1構成区間が特定されている場合、基線区間特定部132は、同第1構成区間を基線判定対象区間として特定する。このように、基線判定対象区間が特定されることにより、本装置1は、医師が実際に基線を判定する区間に近似した区間を基線判定対象区間として特定することができる。基線判定対象区間は、例えば、低周波数成分信号と、低周波数成分信号の基になる波形信号と、に関連付けられて、補助情報として記憶部12に記憶される。
【0089】
次いで、基線判定部133は、低周波数成分信号において、基線判定対象区間を構成する第1構成区間ごとの平均心拍数を算出する(S211)。平均心拍数は、例えば、第1構成区間と、同第1構成区間により構成される基線判定対象区間と、に関連付けられて、補助情報として記憶部12に記憶される。
【0090】
次いで、基線判定部133は、第1構成区間ごとの平均心拍数と所定の閾値とを比較して、第1構成区間ごとに基線を判定する(S212)。具体的には、基線判定部133は、平均心拍数が「110bpm」より小さいとき「第1構成区間に対応する基線の胎児心拍数は徐脈である」と判定し、平均心拍数が「160bpm」より大きいとき「第1構成区間に対応する基線の胎児心拍数は頻脈である」と判定し、平均心拍数が「110bpm」以上かつ「160bpm」以下のとき「第1構成区間に対応する基線の胎児心拍数は正常である」と判定する。ここで、基線を判定するための閾値は、医学的に「110bpm」「160bpm」に規定されており、予め記憶部12に記憶されている。判定結果は、例えば、第1構成区間と、同第1構成区間により構成される基線判定対象区間と、に関連付けられて、補助情報として記憶部12に記憶される。次いで、基線判定処理(S2)は、処理S208に戻る。
【0091】
時系列において後の区間が第2所定時間以上継続していないとき(S208の「N」)、基線区間特定部132は、後述する待機カウントの値が「0」と「1」のいずれであるかを判定する(S213)。
【0092】
待機カウントの値が「0」のとき、基線区間特定部132は、第2所定時間待機後に待機カウントに「1」を加算して(S214)、処理S208を実行する。一方、待機カウントの値が「1」のとき、基線区間特定部132は、最後に基線判定対象区間として特定された区間以降の区間において、基線判定対象区間として特定されていない第1構成区間の有無を判定する(S215)。
【0093】
基線判定対象区間として特定されていない第1構成区間が有るとき(S215の「Y」)、基線判定処理(S2)は、処理S210へ戻る。一方、同第1構成区間が無いとき(S215の「N」)、基線判定処理(S2)は、終了する。
【0094】
<細変動判定処理>
図11は、細変動判定処理(S3)のフローチャートである。
図12は、細変動判定処理(S3)の主な処理の例を示す模式図である。
【0095】
「細変動判定処理(S3)」は、高周波数成分信号において基線判定対象区間に対応する区間を細変動判定対象区間として特定し、細変動判定対象区間に基づいて、細変動を判定する処理である。細変動判定処理(S3)は、例えば、基線判定処理(S2)において、基線判定対象区間が特定された後に実行される。
【0096】
先ず、細変動区間特定部134は、細変動を判定する対象の胎児心拍数波形(波形信号)に対応する高周波数成分信号と、同波形信号に対応する低周波数成分信号に関連付けられている基線判定対象区間と、を記憶部12から読み出す(S301)。
【0097】
次いで、細変動区間特定部134は、高周波数成分信号において、基線判定対象区間に対応する区間を細変動判定対象区間として特定する(S302)。
【0098】
次いで、細変動区間特定部134は、細変動判定対象区間の最初の点(始点)を始点として設定して、同始点から第3所定時間が経過するまでの区間を第2判定区間として抽出する(S303)。ここで、細変動判定処理(S3)における始点は、本発明における第2始点の例である。
【0099】
「第3所定時間」は、細変動を判定するために必要な時間であり、第1所定時間よりも短い時間に設定される。第3所定時間は、例えば、細変動判定対象区間内における細変動の判定結果が頻繁に変動しない時間に設定される。本実施の形態において、第3所定時間は、40秒間に設定される。すなわち、本実施の形態において、第2判定区間は、始点から40秒間の区間である。
【0100】
なお、本発明における第3所定時間は、40秒間に限定されない。ここで、第3所定時間が50秒間より長いと、細かい細変動が均され、細変動の判定の精度が悪化する。一方、第3所定時間が30秒間より短いと、複数の細かい細変動が個別に判定されて、判定結果が頻繁に変動する。そのため、本発明における第3所定時間は、30秒間~50秒間の間であることが望ましい。
【0101】
次いで、細変動判定部135は、第2判定区間における高周波数成分の分散値(以下「第2分散値」という。)を算出する(S304)。
【0102】
次いで、細変動判定部135は、第2分散値と所定の第2閾値とを比較して、第2判定区間における細変動を判定する(S305)。具体的には、細変動判定部135は、第2分散値が「1.3」以上かつ「20」以下のとき「第2判定区間における細変動は中等度である」と判定し、第2分散値が「20」より大きくかつ「25」以下のとき「第2判定区間における細変動は増加である」と判定し、第2分散値が「0.07」以上かつ「1.3」より小さいとき「第2判定区間における細変動は現象である」と判定し、第2分散値が「0.07」より小さいとき「第2判定区間における細変動は消失である」と判定する。判定結果は、例えば、対応する第2判定区間に関連付けられて、補助情報として記憶部12に記憶される。
【0103】
次いで、細変動区間特定部134は、基線判定対象区間において、第2判定区間よりも時系列において後の区間が第4所定時間以上継続しているか否かを判定する(S306)。
【0104】
「第4所定時間」は、第3所定時間よりも短い時間であり、第2判定区間を時系列において後へずらす時間である。第4所定時間は、時系列において連続する2つの第2判定区間の一部が共通するように設定される。本実施の形態において、第4所定時間は、10秒間に設定される。
【0105】
なお、本発明における第4所定時間は、10秒間に限定されない。すなわち、例えば、本発明における第4所定時間は、5秒間でもよく、あるいは、15秒間でもよい。
【0106】
時系列において後の区間が第4所定時間以上継続しているとき(S306の「Y」)、細変動区間特定部134は、始点から第4所定時間が経過した点を新たな始点として設定し、新たな始点から第3所定時間が経過するまでの区間を新たな第2判定区間として抽出する(S307)。換言すれば、細変動区間特定部134は、第2判定区間の始点の位置を、同位置から第4所定時間後の点の位置に更新する。つまり、細変動区間特定部134は、第2判定区間を時系列において第4所定時間だけ後にずらす。次いで、細変動判定処理(S3)は、処理S304に戻る。このように、第4所定時間ずつ第2判定区間をずらしながら細変動を判定することにより、本装置1は、基線のうち、医師が実際に基線から細変動を判定するために目視する区間に近似した区間で細変動を判定することができる。
【0107】
一方、時系列において後の区間が第4所定時間以上継続していないとき(S306の「N」)、細変動判定処理(S3)は、終了する。
【0108】
なお、細変動判定処理は、基線特定対象区間が特定されるごとに実行されてもよい。すなわち、細変動判定処理は、基線判定対象処理と並行して実行されてもよい。この場合、細変動判定処理は、例えば、基線判定対象区間が特定されるたびに実行される。
【0109】
<一過性変動学習処理>
図13は、一過性変動学習処理(S4)の一部のフローチャートある。
図14は、一過性変動学習処理(S4)の他の一部のフローチャートである。
図15は、一過性変動学習処理(S4)のさらに他の一部のフローチャートである。
図16は、一過性変動学習処理(S4)の主な処理の例を示す模式図である。
【0110】
「一過性変動学習処理(S4)」は、低周波数成分信号に基づいて、一過性変動区間を特定し、一過性変動区間に基づいて判別器の学習データを取得する処理である。前述のとおり、一過性変動学習処理(S4)は、一過性変動識別処理(S5)よりも前に実行される処理である。
【0111】
先ず、一過性変動区間特定部136は、一過性変動区間を抽出する対象の胎児心拍数波形(波形信号)に対応する低周波数成分信号を記憶部12から読み出す(S401)。低周波数成分信号は、例えば、予め前処理(S1)により取得され、記憶部12に記憶されている。
【0112】
次いで、一過性変動区間特定部136は、低周波数成分信号において、時系列上の最初の点を始点として設定して、同始点から第5所定時間が経過するまでの区間を第3判定区間として抽出する(S402)。ここで、一過性変動区間特定処理(S4)における始点は、本発明における第3始点の例である。
【0113】
「第5所定時間」は、一過性変動区間を抽出するために設定される時間であり、第1所定時間よりも短い時間に設定される。通常、医師は、1つの一過性変動区間に対して、1つの一過性変動を判定する。そのため、第5所定時間は、例えば、一過性変動区間内における一過性変動の判定結果が頻繁に変動しない時間に設定される。本実施の形態において、第5所定時間は、40秒間に設定される。すわなち、本実施の形態において、第3判定区間は、始点から40秒間の区間である。
【0114】
なお、本発明における第5所定時間は、40秒間に限定されない。ここで、第5所定時間が50秒間より長いと、一過性変動区間の始点および終点付近において一過性変動が生じていない区間(基線など)が多く含まれ得る。また、複数の短い一過性変動区間が1つの一過性変動区間としてまとめられ得る。その結果、一過性変動判定区間の抽出の精度が悪化する。一方、第5所定時間が30秒間より短いと、第3判定区間内において、心拍数の変動が少ない区間が占める割合が大きくなる事態が生じ得る。その結果、同第3判定区間の変動量が均され、同第3判定区間が一過性変動区間を構成する区間として特定されない場合が生じ得る。そのため、本発明における第5所定時間は、30秒間~50秒間の間であることが望ましい。
【0115】
次いで、一過性変動区間特定部136は、第3判定区間における低周波数成分の分散値(以下「第3分散値」という。)を算出する(S403)。
【0116】
次いで、一過性変動区間特定部136は、第3分散値と所定の第3閾値とを比較して、第3分散値が第3閾値よりも大きいか否かを判定する(S404)。
【0117】
「第3閾値」は、第3判定区間が一過性変動区間として適切か否かを判定するための閾値である。本実施の形態において、第3閾値は、「15」に設定される。第3閾値は、例えば、予め本装置1の使用者に設定され、記憶部12に記憶されている。
【0118】
第3分散値が第3閾値よりも大きいとき、(S404の「Y」)、一過性変動区間特定部136は、第3判定区間を一過性変動区間を構成する第2構成区間として特定する(S405)。
【0119】
一方、第3分散値が第3閾値以下のとき(S404の「N」)、一過性変動区間特定部136は、第3判定区間を一過性変動区間を構成しない第2非構成区間として特定する(S406)。
【0120】
次いで、一過性変動区間特定部136は、第2非構成区間が所定回数連続しているか否かを判定する(S407)。
【0121】
「所定回数」は、第2非構成区間が連続することにより、時系列において前後する2つの第2構成区間の一部の区間が共通しなくなる回数である。すなわち、所定回数は、時系列においてある第2構成区間と、次の第2構成区間との間に共通する区間が無くなる(2つの第2構成区間が分離する)回数である。所定回数は、例えば、第5所定時間に基づいて設定される。すなわち、例えば、第5所定時間が40秒間のとき、所定回数は3回に設定される。
【0122】
第2非構成区間が所定回数連続していないとき(S407の「N」)、一過性変動区間特定部136は、低周波数成分信号において、第3判定区間よりも時系列において後の区間が第6所定時間以上継続しているか否かを判定する(S408)。換言すれば、一過性変動区間特定部136は、取得部1311が第5判定区間の終点から第6所定時間分の胎児心拍数波形を取得しているか否かを判定する。
【0123】
「第6所定時間」は、第5所定時間よりも短い時間であり、第3判定区間を時系列において後へずらすために設定される時間である。第6所定時間は、時系列において連続する2つの第2判定区間の一部が共通するように設定される。本実施の形態において、第6所定時間は、10秒間に設定される。
【0124】
なお、本発明における第6所定時間は、10秒間に限定されない。すなわち、例えば、本発明における第6所定時間は、5秒間でもよく、あるいは、15秒間でもよい。
【0125】
時系列において後の区間が第2所定時間以上継続しているとき(S408の「Y」)、一過性変動区間特定部136は、始点から第6所定時間が経過した点を新たな始点として設定し、新たな始点から第5所定時間が経過するまでの区間を新たな第3判定区間として抽出する(S409)。換言すれば、一過性変動区間特定部136は、第3判定区間の始点の位置を、同位置から第6所定時間後の点の位置に更新する。つまり、一過性変動区間特定部136は、第3判定区間を時系列において第6所定時間だけ後にずらす。次いで、一過性変動区間特定処理(S4)は、処理S403に戻る。
【0126】
第2非構成区間が所定回数連続しているとき(S407の「Y」)、一過性変動区間特定部136は、複数の第2構成区間のうち、共通する区間を有する第2構成区間同士を連結して得られる区間を一過性変動区間として特定する(S410)。換言すれば、一過性変動区間特定部136は、1以上の連続する第2構成区間により構成される区間を一過性変動区間として特定する。
【0127】
次いで、一過性変動区間特定部136は、一過性変動区間のうち、時系列上の最初の点(最初の第2構成区間の始点)から第7所定時間が経過するまでの区間を開始区間として抽出すると共に、時系列上の最後の点(最後の第2構成区間の終点)から第7所定時間が遡るまでの区間を終了区間として抽出する(S411)。
【0128】
「第7所定時間」は、第5所定時間よりも短い時間であり、一過性変動区間のうち、一過性変動が生じていない区間を含み得る区間(開始区間、終了区間)を抽出するために設定される時間である。第7所定時間は、一過性変動区間の両端に一過性変動が生じていない区間が含まれないように(同区間が極力少なくなるように)設定される。本実施の形態において、第7所定時間は、10秒間に設定される。
【0129】
なお、本発明における第7所定時間は、10秒間に限定されない。すなわち、例えば、本発明における第7所定時間は、5秒間でもよく、あるいは、15秒間でもよい。
【0130】
次いで、一過性変動区間特定部136は、開始区間の分散値(以下「第4分散値」という。)と、終了区間の分散値(以下「第5分散値」という。)と、を算出する(S412)。
【0131】
次いで、一過性変動区間特定部136は、第4分散値と所定の第4閾値とを比較して、第4分散値が第4閾値よりも小さいか否かを判定する(S413)。
【0132】
「第4閾値」は、一過性変動が生じていない区間が開始区間に含まれるか否かを判定するために設定される閾値である。本実施の形態において、第4閾値は、「3」に設定される。第4閾値は、例えば、予め本装置1の使用者に設定され、記憶部12に記憶されている。
【0133】
第4分散値が第4閾値よりも小さいとき(S413の「Y」)、一過性変動区間特定部136は、開始区間を一過性変動区間から除外する(S414)。
【0134】
一方、第4分散値が第4閾値以上のとき(S413の「N」)、一過性変動区間特定部136は、開始区間を一過性変動区間の一部として維持する(S415)。
【0135】
次いで、一過性変動区間特定部136は、第5分散値と所定の第5閾値とを比較して、第5分散値が第5閾値よりも小さいか否かを判定する(S416)。
【0136】
「第5閾値」は、一過性変動が生じていない区間が終了区間に含まれるか否かを判定するために設定される閾値である。本実施の形態において、第5閾値は、「3」に設定される。第5閾値は、例えば、予め本装置1の使用者に設定され、記憶部12に記憶されている。
【0137】
第5分散値が第5閾値よりも小さいとき(S416の「Y」)、一過性変動区間特定部136は、終了区間を一過性変動区間から除外する(S417)。
【0138】
一方、第5分散値が第5閾値以上のとき(S416の「N」)、一過性変動区間特定部136は、終了区間を一過性変動区間の一部として維持する(S418)。
【0139】
次いで、一過性変動区間特定部136は、処理S414,S415,S417,S418の結果に基づいて、一過性変動区間を更新する(S419)。更新された一過性変動区間は、補助情報として記憶部12に記憶される。このように、一過性変動区間を特定・更新することにより、本装置1は、医師が実際に一過性変動を判定する区間に近似した区間を一過性変動区間として特定することができる。
【0140】
次いで、データ取得部137は、処理S419において更新された一過性変動区間を読み出す(S420)。
【0141】
次いで、データ取得部137は、一過性変動区間の時系列上の最後の点(一過性変動区間の終点)から第8所定時間が遡るまでの区間の低周波数成分信号を第1学習データとして取得する(S421)。
【0142】
「第8所定時間」は、一過性変動のうち、比較的短時間で現れる一過性変動が生じている区間を学習データとして取得するために設定される時間である。医学的に、一過性変動は、2分未満に終了すると規定されている。しかし、実際には、一過性変動は、90秒程度の比較的短時間で終了する場合がある。第8所定時間は、この短時間で現れる一過性変動に対応するために設定される時間であり、80秒間から100秒間の間が望ましい。本実施の形態において、第8所定時間は、90秒間に設定される。第8所定時間は、例えば、予め本装置1の使用者に設定されて記憶部12に記憶されている。
【0143】
次いで、データ取得部137は、一過性変動区間の時系列上の最後の点から第9所定時間が遡るまでの区間の低周波数成分信号を第2学習データとして取得する(S422)。
【0144】
「第9所定時間」は、一過性変動のうち、比較的長時間で現れる一過性変動が生じている区間を学習データとして取得するために設定される時間である。医学的に、一過性変動は、2分未満に終了すると規定されている。しかし、実際には、一過性変動は、2分を超える比較的長時間で終了する場合がある。第9所定時間は、この長時間で現れる一過性変動に対応するために設定される時間であり、150秒間から200秒間の間が望ましい。本実施の形態において、第9所定時間は、180秒間に設定される。第9所定時間は、例えば、予め本装置1の使用者に設定されて記憶部12に記憶されている。
【0145】
図17は、第1学習データと第2学習データそれぞれの取得方法を説明する模式図である。同図は、一過性変動区間ごとに、同区間の最後の点から第8所定時間が遡るまでの区間が第1学習データとして取得され、同区間の最後の点から第9所定時間が遡るまでの区間が第2学習データとして取得されること、を示す。
【0146】
図13~
図16に戻る。
次いで、データ取得部137は、第1学習データおよび第2学習データと、一過性変動の種類に対応するラベルの選択肢と、を表示部15に表示させる(S423)。
【0147】
「ラベル」は、一過性変動の種類ごとに予め設定され、記憶部12に記憶されている識別標識である。本実施の形態において、一過性変動以外の変動のラベルは「0」、一過性頻脈のラベルは「1」、早発一過性徐脈および遅発一過性徐脈のラベルは「2」、変動一過性徐脈(軽度)のラベルは「3」、変動一過性徐脈(高度)のラベルは「4」、遷延一過性徐脈のラベルは「5」、に設定される。
【0148】
次いで、例えば、本装置1の使用者は、例えば、操作部14を用いて、第1学習データと第2学習データそれぞれに対応するラベルを選択する。このとき、データ取得部137は、第1学習データと第1学習データに対応して選択されたラベルとを関連付け、第2学習データと第2学習データに対応して選択されたラベルとを関連付けて、補助情報(識別を間接的に補助する補助情報)として記憶部12に記憶する(S424)。次いで、一過性変動学習処理(S4)は、処理S408へ戻る。
【0149】
時系列において後の区間が第6所定時間以上経過していないとき(S408の「N」)、一過性変動区間特定部136は、後述する待機カウントの値が「0」と「1」のいずれであるかを判定する(S425)。
【0150】
待機カウントの値が「0」のとき、一過性変動区間特定部136は、第6所定時間待機後に待機カウントに「1」を加算して(S426)、処理S408を実行する。一方、待機カウントの値が「1」のとき、一過性変動区間特定部136は、最後に一過性変動区間として特定された区間以降の区間において、一過性変動区間として特定されていない第2構成区間の有無を判定する(S427)。
【0151】
一過性変動区間として特定されていない第2構成区間が有るとき(S427の「Y」)、一過性変動学習処理(S4)は、処理S410へ戻る。一方、同第2構成区間が無いとき(S427の「N」)、一過性変動学習処理(S4)は、終了する。
【0152】
なお、データ取得処理において、本発明におけるデータ取得部は、複数の第1学習データと第2学習データそれぞれの取得・記憶のみ実行してもよい。この場合、各ラベルとの関連付けは、例えば、別処理にて実行される。
【0153】
また、データ取得処理において、本発明におけるデータ取得部は、複数の一過性変動区間に対して、連続的に第1学習データと第2学習データとを取得してもよい。
【0154】
<一過性変動識別処理>
図18は、一過性変動識別処理(S5)のフローチャートである。
図19は、一過性変動識別処理(S5)の各識別区間を説明する模式図である。
【0155】
「一過性変動識別処理(S5)」は、第1学習データと第2学習データとに基づいて生成された識別器を用いて、一過性変動を識別する処理である。
【0156】
以下の説明において、記憶部12は、第1識別器と第2識別器とを予め記憶しているものとする。ここで、第1識別器は、例えば、ラベルに関連付けられた複数の第1学習データに基づいて、予め識別器生成部138により生成された識別器である。第2識別器は、例えば、ラベルに関連付けられた複数の第2学習データに基づいて、予め識別器生成部138により生成された識別器である。
【0157】
先ず、識別部139は、第1識別器と第2識別器とを記憶部12から読み出す(S501)。
【0158】
次いで、識別部139は、一過性変動を識別する対象の胎児心拍数波形(波形信号)に対応する低周波数成分信号を記憶部12から読み出す(S502)。
【0159】
次いで、識別部139は、低周波数成分信号において、時系列上の最初の点を識別区間の始点として設定して、同始点から第8所定時間が経過するまでの区間を第1識別区間として抽出すると共に、同始点から第9所定時間が経過するまでの区間を第2識別区間として抽出する(S503)。
【0160】
次いで、識別部139は、第1識別器を用いて第1識別区間における低周波数成分信号から一過性変動を識別すると共に、第2識別器を用いて第2識別区間における低周波数成分信号から一過性変動を識別する(S504)。
【0161】
次いで、識別部139は、第1識別器の識別結果(第1識別結果)と、第2識別器の識別結果(第2識別結果)と、に基づいて、第1識別区間と第2識別区間それぞれの最終的な識別結果(最終識別結果)を決定する(S505)。このとき、例えば、第1識別結果と第2識別結果とが一致するとき、識別部139は、第1識別結果を第1識別区間の最終識別結果として決定すると共に、第2識別結果を第2識別区間の最終識別結果として決定する。また、例えば、第1識別結果と第2識別結果それぞれが異なる一過性変動を識別したとき、識別部139は、第1識別結果と第2識別結果の両方を、第1識別区間と第2識別区間それぞれの最終識別結果として決定する。一方、第1識別結果と第2識別結果のいずれか一方のみが一過性変動を識別したとき、識別部139は、その一過性変動を、第1識別区間と第2識別区間それぞれの最終識別結果として決定する。最終識別結果は、低周波数成分信号の対応する位置(区間)に関連付けられて、補助情報として記憶部12に記憶される。
【0162】
なお、本発明における識別部は、第1識別結果と第2識別結果それぞれが異なる一過性変動を識別したとき、単に一過性変動が有るという識別結果を第1識別区間と第2識別区間それぞれの最終識別結果として決定してもよい。
【0163】
次いで、識別部139は、低周波数成分信号において、第2識別区間よりも時系列における後の区間が第10所定時間以上継続しているか否かを判定する(S506)。
【0164】
「第10所定時間」は、第1識別区間と第2識別区間とを時系列において後へずらす時間である。第10所定時間は、一過性変動が過不足なく判定されるように設定される。本実施の形態において、第10所定時間は、3秒間に設定される。
【0165】
時系列において後の区間が第10所定時間以上継続しているとき(S506の「Y」)、識別部139は、処理S503を実行する。
【0166】
時系列において後の区間が第10所定時間以上経過していないとき(S506の「N」)、識別部139は、後述する待機カウントの値が「0」と「1」のいずれであるかを判定する(S507)。
【0167】
待機カウントの値が「0」のとき、識別部139は、第10所定時間待機後に待機カウントに「1」を加算して(S508)、処理S506を実行する。一方、待機カウントの値が「1」のとき、一過性変動識別処理(S5)は、終了する。
【0168】
なお、本発明における識別部は、一過性変動区間に対してのみ識別処理を実行してもよい。この場合、本発明における識別部は、一過性変動区間特定処理において一過性変動区間が特定されるごとに、一過性変動を識別してもよい。
【0169】
<<実施例>>
次に、本発明の実施例について説明する。
【0170】
図20は、実際のCTGに対して、基線判定処理(S2)と細変動判定処理(S3)とを実行したときの判定結果の例を示す模式図である。
【0171】
図中の2段表記の数値のうち、上段の下線付きの数値は基線のラベル(「0」は正常)を示し、下段の数値は細変動のラベル(「0」は中等度、「2」は減少)を示す。同図は、「a」~「f」までの6つの基線判定対象区間が特定されていることを示す。また、同図は、基線判定対象区間「b」「d」「e」「f」では区間内で細変動の判定が変化していることを示す。さらに、同図は、基線判定対象区間「c」~「e」において、基線判定対象区間の始点・終点の位置と、細変動の判定結果と、に対して医師による修正が施されていることを示す。
【0172】
図21は、実際のCTGに対して、基線判定処理(S2)を実行したときの基線判定対象区間の特定結果を示す模式図である。
【0173】
「総区間数」は、医師が基線と判定した区間の数である。「未特定数」は、医師が基線と判定した区間のうち、本装置1が特定しなかった基線判定対象区間の数である。「微調整数」は、本装置1が特定した基線判定対象区間のうち、始点および/または終点の位置が医師により微調整された基線判定対象区間の数である。「過特定数」は、本装置1が特定した基線判定対象区間のうち、医師が基線と判定しなかった区間の数である。「区間正答率」は、(総区間数-過特定数)/(総区間数+未特定数)により算出された正答率である。
図21に示されるとおり、本装置1による基線判定対象区間の特定の正答率は、約96%であった。
【0174】
図22は、実際のCTGに対して、基線判定処理(S2)を実行したときの基線の判定結果を示す模式図である。
【0175】
「正答数」「誤答数」は、医師の判定に対して、本装置1の判定結果が正答であった数と、誤答であった数と、を示す。
図22に示されるとおり、本装置1による基線の判定の正答率は、100%であった。本実施例に用いられたCTGの胎児心拍数には、徐脈は生じていない。
【0176】
図23は、実際のCTGに対して、細変動判定処理(S3)を実行したときの細変動の判定結果を示す模式図である。
【0177】
「正答数」「誤答数」は、医師の判定に対して、本装置1の判定結果が正答であった数と、誤答であった数と、を示す。
図20に示されるとおり、本装置1による細変動の判定の正答率は、中等度で約99%であり、減少で約92%であり、消失で100%であった。本実施例に用いられたCTGの胎児心拍数には、細変動の増加は生じていない。
【0178】
なお、本装置が生成した識別器により一過性変動を識別した結果、識別精度は、約79%であった。このとき、ラベル「0」の学習データ数は308個、ラベル「1」の学習データ数は161個、ラベル「2」の学習データ数は76個、ラベル「3」の学習データ数は321個、ラベル「4」の学習データ数は83個、ラベル「5」の学習データ数は33個であった。
【0179】
このように、本発明は、基線の判定において100%、細変動の判定において90%~100%という非常に高い正答率を実現する。また、本発明は、一過性変動の識別において訳79%という高い正答率を実現する。すなわち、本発明は、画一的(自動的)に高精度なCTGの判読を可能とする。その結果、本発明は、これらの情報を補助情報として医師に提供することにより、医師のCTGの判読を補助することができる。
【0180】
<まとめ>
以上説明した実施の形態によれば、本装置1は、波形信号から低周波数成分信号を抽出する低域抽出部1314と、低周波数成分信号に基づいて基線判定対象区間を特定する基線区間特定部132と、を有してなる。基線区間特定部132は、低周波数成分信号において第1判定区間を抽出し、第1判定区間における低周波数成分信号に基づいて、基線判定対象区間を補助情報として特定する。この構成によれば、本装置1は、基線の特徴が現れやすい低周波数成分信号をCTGから抽出し、低周波数成分信号に基づいて基線判定対象区間を補助情報として特定する。すなわち、本装置1は、CTGから画一的(自動的)に補助情報(基線判定対象区間)を特定することができる。その結果、本装置1は、CTGを判読する人の個人差に依存せず、画一的なCTGの判読の補助に用いられる補助情報を提供することができる。
【0181】
また、以上説明した実施の形態によれば、基線区間特定部132は、第1判定区間における低周波数成分信号の分散値(第1分散値)が第1閾値よりも小さいとき、第1判定区間を基線判定対象区間を構成する第1構成区間として特定する。この構成によれば、本装置1は、医師がCTGを判読するとき、目視により確認するCTGのメモリとは異なる指標(低周波数成分信号の分散値)に基づいて、基線判定対象区間を構成する第1構成区間を特定する。その結果、本装置1は、画一的なCTGの判読の補助に用いられる補助情報を提供することができる。
【0182】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、基線区間特定部132は、第1始点から第1所定時間よりも短い第2所定時間が経過した点を新たな第1始点として設定し、新たな第1始点から第1所定時間が経過するまでの区間を新たな前記第1判定区間として抽出する。すなわち、基線区間特定部132は、第1判定区間を時系列において第2所定時間分後にずらす。そして、基線区間特定部132は、複数の第1構成区間が特定されたとき、複数の第1構成区間のうち、共通する区間を有する第1構成区間同士を連結して得られる区間を基線判定対象区間として特定する。この構成によれば、本装置1は、第1判定区間を時系列において少しずつ後にずらしながら第1構成区間を特定することができる。その結果、本装置1は、基線判定対象区間の始点と終点とを正確に特定し、医師が実際に基線を判定する区間に近似した区間を基線判定対象区間として特定することができる。
【0183】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、基線判定部133は、低周波数成分信号において、基線判定対象区間を構成する第1構成区間ごとの平均心拍数を基線の胎児心拍数として特定し、平均心拍数に基づいて基線の胎児心拍数を判定する。すなわち、本装置1は、基線判定対象区間の長さに関わらず、常に第1構成区間ごとの基線の胎児心拍数を判定する。この構成によれば、本装置1は、基線判定対象区間の長さに関わらず、常に一定の区間(第1判定区間)における低周波数成分信号の変動を捉えることができる。そのため、本装置1は、基線判定対象区間における低周波数成分信号の変動を安定的に捉えることができる。その結果、本装置1は、安定した基線の画一的な判定を実現することができる。
【0184】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、本装置1は、波形信号から高周波数成分信号を抽出する高域抽出部1315と、高周波数成分信号に基づいて細変動判定対象区間を補助情報として特定する細変動区間特定部134と、を有してなる。細変動区間特定部134は、高周波数成分信号において、基線判定対象区間に対応する区間を細変動判定対象区間として特定する。この構成によれば、本装置1は、細変動の特徴が現れやすい高周波数成分信号をCTGから抽出し、高周波数成分信号に基づいて細変動判定対象区間を補助情報として特定する。すなわち、本装置1は、CTGから画一的(自動的)に補助情報(細変動判定対象区間)を特定することができる。その結果、本装置1は、画一的なCTGの判読の補助に用いられる補助情報を提供することができる。
【0185】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、本装置1は、細変動を判定する細変動判定部135を有してなる。細変動判定部135は、細変動判定対象区間から第2判定区間を抽出し、第2判定区間における高周波数成分信号に基づいて細変動を判定する。この構成によれば、本装置1は、細変動判定対象区間の長さに関わらず、常に一定の区間(第2判定区間)における高周波数成分信号の変動を捉えることができるため、細変動判定対象区間における高周波数成分信号の変動を安定的に捉えることができる。その結果、本装置1は、安定した細変動の判定を実現することができる。
【0186】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、細変動判定部135は、第2始点から第4所定時間が経過した点を新たな第2始点として設定し、新たな第2始点から第3所定時間が経過するまでの区間を新たな第2判定区間として抽出し、第2判定区間ごとに細変動を判定する。すなわち、細変動判定部135は、第2判定区間を時系列において少しずつ後にずらしながら、第2判定区間ごとに細変動を判定する。この構成によれば、本装置1は、細変動判定対象区間の長さに関わらず、常に一定の区間(第2判定区間)における高周波数成分信号の変動を捉えることができるため、細変動判定対象区間における高周波数成分信号の変動を安定的に捉えることができる。また、第4所定時間ずつ第2判定区間をずらしながら細変動を判定することにより、本装置1は、基線のうち、医師が実際に基線から細変動を判定するために目視する区間に近似した区間で細変動を判定することができる。その結果、本装置1は、安定した細変動の判定を実現することができる。
【0187】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、細変動判定部135は、第2判定区間における高周波数成分信号の分散値と、複数種の閾値から構成される第2閾値と、に基づいて、細変動を、「中等度」「増加」「減少」または「消失」のいずれかに判定する。この構成によれば、本装置1は、医師がCTGを判読するとき、目視により確認するCTGのメモリとは異なる指標(高周波数成分信号の分散値)に基づいて、細変動を判定する。その結果、本装置1は、画一的なCTGの判読の補助に用いられる補助情報(細変動の判定結果)を提供することができる。
【0188】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、高周波数成分信号は、低周波数成分信号よりも高い周波数帯域を含む。一方、低周波数成分信号は、高周波数成分信号よりも低い周波数帯域を含む。また、高周波数成分信号の周波数帯域の一部は、低周波数成分信号の周波数帯域の一部と共通する。通常、医師は、基線や細変動の判定の際に、波形信号の高周波数成分と低周波数成分とを画一的に見分けてはいない。そのため、この構成によれば、本装置1は、低周波数成分信号と高周波数成分信号とが1つの閾値で区分けされる場合と比較して、医師の目視による判定に近い判定結果を得ることができる。
【0189】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、本装置1は、低周波数成分信号に基づいて、一過性変動が生じている1以上の一過性変動区間を補助情報として特定する一過性変動区間特定部136を有してなる。この構成によれば、本装置1は、一過性変動の特徴が現れやすい低周波数成分信号をCTGから抽出し、低周波数成分信号に基づいて一過性変動区間を補助情報として特定する。すなわち、本装置1は、CTGから画一的(自動的)に補助情報(一過性変動区間)を特定することができる。その結果、本装置1は、CTGを判読する人の個人差に依存せず、画一的なCTGの判読の補助に用いられる補助情報を提供することができる。
【0190】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、一過性変動区間特定部136は、第3判定区間における低周波数成分信号の分散値(第3分散値)が第3閾値よりも大きいとき、第3判定区間を一過性変動区間を構成する第2構成区間として特定する。この構成によれば、本装置1は、医師がCTGを判読するとき、目視により確認するCTGのメモリとは異なる指標(低周波数成分信号の分散値)に基づいて、一過性変動区間を構成する第2構成区間を特定する。その結果、本装置1は、CTGを判読する人の個人差に依存せず、画一的なCTGの判読の補助に用いられる補助情報を提供することができる。
【0191】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、一過性変動区間特定部136は、第3始点から第5所定時間よりも短い第6所定時間が経過した点を新たな第3始点として設定し、新たな第3始点から第5所定時間が経過するまでの区間を新たな前記第3判定区間として抽出する。すなわち、一過性変動区間特定部136は、第3判定区間を時系列において第6所定時間分後にずらす。そして、一過性変動区間特定部136は、複数の第2構成区間が特定されたとき、複数の第2構成区間のうち、共通する区間を有する第2構成区間同士を連結して得られる区間を一過性変動区間として特定する。この構成によれば、本装置1は、第3判定区間を時系列において少しずつ後にずらしながら第2構成区間を特定することができる。このように一過性変動区間を特定・更新することにより、本装置1は、医師が実際に一過性変動を判定する区間に近似した区間を一過性変動区間として特定することができる。その結果、本装置1は、一過性変動区間の始点と終点とを正確に特定することができる。
【0192】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、一過性変動区間特定部136は、一過性変動区間のうち、時系列上の最初の点から第7所定時間が経過するまでの区間を開始区間として抽出し、時系列上の最後の点から第7所定時間が遡るまでの区間を終了区間として抽出する。そして、一過性変動区間特定部136は、開始区間の第4分散値が第4閾値より小さいとき、開始区間を一過性変動区間から除外し、終了区間の第5分散値が第4閾値より小さいとき、終了区間を一過性変動区間から除外して、一過性変動区間を更新する。この構成によれば、本装置1は、一過性変動区間において、一過性変動が生じていない区間を含み得る区間に対して再判定を実行し、一過性変動区間の始点と終点とをより正確に特定することができる。
【0193】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、本装置1は、一過性変動区間に基づいて、一過性変動を識別する識別器の学習データを取得するデータ取得部137を有してなる。データ取得部137は、一過性変動区間のうち、時系列上の最後の点から第8所定時間が遡るまでの区間の低周波数成分信号を学習データ(第1学習データ)として抽出する。医学的に、一過性変動は、2分未満に終了すると規定されている。そのため、一過性変動を識別する場合、一過性変動区間の終点を起点として取得される学習データは、一過性変動区間の始点を起点として取得される学習データよりも、一過性変動の特徴を含みやすい。したがって、この構成によれば、本装置1は、一過性変動の特徴を含んだ学習データを一過性変動の識別を補助する補助情報として得ることができる。
【0194】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、本装置1は、学習データに基づいて生成された識別器を用いて、一過性変動を識別する識別部139を有してなる。識別部139は、低周波数成分信号に基づいて、一過性変動を自動的に識別する。この構成によれば、本装置1は、基線判定対象区間だけでなく、一過性変動の識別結果を補助情報として取得する。その結果、本装置1は、CTGを判読する人の個人差に依存せず、画一的なCTGの判読の補助に用いられる補助情報を提供することができる。
【0195】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、本装置1は、波形信号のノイズを除去するノイズ除去部1313を有してなる。ノイズ除去部1313は、主要な突発性ノイズを除去後に、ローパスフィルタの適用と、信号の差分の算出と、を2回繰り返すことにより、残留しているノイズを明確にし、除去する。この構成によれば、本装置1は、CTGの胎児心拍数の波形信号に多く含まれるノイズの大部分を除去することができる。その結果、本装置1は、基線判定対象区間、一過性変動区間を精度よく特定することができ、基線、細変動を精度よく判定することができる。
【0196】
なお、本装置は補助情報として少なくとも基線判定対象区間を特定できればよく、本装置の構成は、本実施の形態に限定されない。すなわち、例えば、本装置は、識別器生成部および識別部を備えなくてもよく、さらに一過性変動区間特定部およびデータ取得部を備えなくてもよく、あるいは、さらに細変動区間特定部および細変動判定部を備えなくてもよい。
【0197】
また、本発明におけるノイズ除去部は突発性ノイズを除去できればよく、本発明におけるノイズ除去部の構成は、本実施の形態に限定されない。すなわち、例えば、本発明におけるノイズ除去部は、2次ローパスフィルタおよび2次演算部を備えなくてもよい。
【0198】
さらに、本発明における制御部は、ノイズ除去部を備えなくてもよい。この場合、本装置は、例えば、ノイズ除去部として機能する専用の回路を備えてもよい。また、例えば、波形信号のノイズが少ない場合には、波形信号からノイズを除去しなくてもよい。
【0199】
さらにまた、本方法における各閾値は、各判定結果および識別結果の正答率などに基づいて定められればよく、本実施の形態に限定されない。
【0200】
さらにまた、本装置により実行される本方法は、本実施の形態に限定されない。すなわち、例えば、本装置は、一過性変動学習処理および/または一過性変動識別処理を実行しなくてもよく、さらに細変動判定処理を実行しなくてもよい。
【0201】
さらにまた、一過性変動学習処理において、本発明におけるデータ取得部は、第1学習データと第2学習データそれぞれを取得すればよく、第1学習データと第2学習データそれぞれに対応するラベル(一過性変動の種類)の関連付けを実行しなくてもよい。この場合、例えば、第1学習データおよび第2学習データへのラベル付けは、別途実行されてもよい。
【0202】
さらにまた、本装置は、外部装置に組み込まれてもよく、あるいは、外部装置に本プログラムを実行させることにより、外部装置が本装置として機能してもよい。
【0203】
さらにまた、以上説明した実施の形態では、本装置1は、1つのコンピュータにより構成されていた。これに代えて、本装置は、複数のコンピュータにより構成されてもよい。すなわち、例えば、本装置は、本装置として機能する複数のコンピュータ群で構成されてもよい。具体的には、例えば、本装置(コンピュータ群)は、記憶部を備えるコンピュータと、本方法を実行する制御部を備えるコンピュータと、により構成されてもよい。また、例えば、複数のコンピュータが、前処理部、基線区間特定部、基線判定部、細変動判定区間特定部、細変動判定部、一過性変動区間特定部、データ取得部、識別器生成部、識別部それぞれの機能を分散して備えてもよい。この場合、コンピュータ群を構成する複数のコンピュータは、通信回線を通じて情報の送受信をしてもよく、あるいは、可搬記憶媒体を用いて情報の譲受をしてもよい。
【符号の説明】
【0204】
1 情報処理装置
12 記憶部
1311 取得部
1312 波形信号抽出部
1314 低域抽出部
1315 高域抽出部
132 基線区間特定部
133 基線判定部
134 細変動区間特定部
135 細変動判定部
136 一過性変動区間特定部
137 データ取得部
139 識別部