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特開2022-146983穀物検査装置及び該装置を利用した栽培管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146983
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】穀物検査装置及び該装置を利用した栽培管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20220929BHJP
   G01G 17/00 20060101ALI20220929BHJP
   G01G 13/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01N21/85 A
G01G17/00 C
G01G13/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048039
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】池田 信義
(72)【発明者】
【氏名】原 正純
【テーマコード(参考)】
2F046
2G051
【Fターム(参考)】
2F046BA01
2G051AA04
2G051AB01
2G051AB02
2G051CA04
2G051DA13
2G051EA17
2G051EC01
(57)【要約】
【課題】屑粒も含む原料全体での不良粒混入率を求めることが可能な穀物検査装置を提供することに加え、この穀物検査装置のデータを有効利用して農家に対して次年度の稲の栽培管理に役立てる栽培管理システムを提供することを技術的課題とする。
【解決手段】原料を粒径選別して第一の良品と第一の不良品とに選別しそれぞれの重量値を計量する米選機と、前記第一の良品を光学的に選別して第二の良品と第二の不良品とに判別する光学式選別機とを備えた穀物検査装置であって、前記第一の良品に含まれる第二の不良品の第一の不良品混入率を算出するとともに、前記整粒計量手段で計量した前記第一の良品の重量値と前記屑粒計量手段で計量した前記第一の不良品の重量値と前記第一の不良品混入率とに基づき、前記原料に含まれる前記第一の不良品及び前記第二の不良品の第二の不良品混入率を算出する算出手段が備えられたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を粒厚選別して第一の良品と第一の不良品とに選別する米選機と、
前記第一の良品を第二の良品と第二の不良品とに光学的に判別する光学式選別機と、
を備えた穀物検査装置であって、
前記米選機には、前記第一の良品と前記第一の不良品とをそれぞれ計量する整粒計量手段と屑粒計量手段とが備えられ、
前記光学式選別機には、前記第一の良品を撮像する撮像手段と、該撮像手段で取得した撮像信号に基づいて前記第一の良品を第二の良品と第二の不良品とに判別する判別手段とが備えられ、
該判別手段の判別結果に基づき、前記第一の良品に含まれる前記第二の不良品の割合となる第一の不良品混入率を算出するとともに、前記整粒計量手段で計量した前記第一の良品の重量値と前記屑粒計量手段で計量した前記第一の不良品の重量値と前記第一の不良品混入率とに基づき、前記原料に含まれる前記第一の不良品及び前記第二の不良品の割合となる第二の不良品混入率を算出する算出手段が備えられたことを特徴とする穀物検査装置。
【請求項2】
原料を粒厚選別して第一の良品と第一の不良品とに選別する米選機と、
前記第一の良品を第二の良品と第二の不良品とに光学的に判別する光学式選別機と、
前記第二の良品の重量を計量する精品計量手段と、
を備えた穀物検査装置であって、
前記光学式選別機には、前記第二の不良品の重量を計量する不良品計量手段を備える一方、前記米選機には、前記第一の不良品を計量する屑粒計量手段が備えられ、
さらに、前記光学式選別機には、前記第一の良品を撮像する撮像手段と、該撮像手段で取得した撮像信号に基づいて前記第一の良品を第二の良品と第二の不良品とに判別する判別手段と、該判別手段での判別結果に基づき前記第二の不良品を選別排除するエジェクタ手段とが備えられ、
前記精品計量手段で計量された前記第二の良品の重量値と、前記不良品計量手段で計量された前記第二の不良品の重量値とを合算して前記第一の良品の重量値を求めるとともに、
前記判別手段の判別結果に基づき、前記第一の良品に含まれる第二の不良品の割合となる第一の不良品混入率を算出し、該第一の不良品混入率と前記第一の良品の重量値とから前記第二の良品の算出良品重量値と前記第二の不良品の算出不良品重量値とをそれぞれ算出し、前記屑粒計量手段で計量した前記第一の不良品の重量値と前記算出良品重量値と前記算出不良品重量値とから、前記原料に含まれる前記第一の不良品及び前記第二の不良品の割合となる第二の不良品混入率を算出する算出手段が備えられたことを特徴とする穀物検査装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記撮像信号から得られた被検査物のR,G,Bの各信号を単独、もしくは組み合わせて様々な特徴量を算出するとともに、この値を加算、減算、積算又は除算による演算処理を行って流れている原料の個数と各不良因子による不良粒の個数を求め、これらの結果から前記第二の不良品に含まれる各不良因子の混入率を算出する請求項1又は請求項2に記載の穀物検査装置。
【請求項4】
前記不良因子が、害虫等による被害粒、ヤケ米等による被害粒、青未熟粒、籾米、乳白粒又は異物から選択される、少なくとも一つの不良因子であることを特徴とする請求項3に記載の穀物検査装置。
【請求項5】
少なくとも前記穀物検査装置を含む穀物調製ラインと、農業に関するデータを集約した農業データ連携プラットフォームと、前記穀物調製ラインでの玄米の調製加工データを蓄積するサーバーと、農家に対して栽培管理情報を提供する携帯端末とを、通信回線を介して接続した栽培管理システムであって、
前記サーバーには、今年度の玄米の調製加工データと、前記農業データ連携プラットフォームからの農業データとを、農家に対してフィードバックし、次年度の栽培管理指針を農家に提供する栽培管理プログラムが組み込まれていることを特徴とする栽培管理システム。
【請求項6】
前記玄米の調製加工データは、少なくとも前記穀物検査装置により被検査物のなかの各不良因子の混入率である請求項5に記載の栽培管理システム。
【請求項7】
前記サーバーには、今年度の玄米の調製加工データと、前記農業データ連携プラットフォームからの農業データとを、農家に対してフィードバックし、前記穀物調製ラインを構成する機械のメンテナンス情報を提供するメンテナンスプログラムが組み込まれている請求項5に記載の栽培管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農家等で生産した穀物の品質を検査するための穀物検査装置及び該装置を利用した栽培管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農家等で生産した穀物(例えば、玄米及び精米)の品位等検査(農家から出荷した後の穀物検査のこと)は、「米穀の生産者は品位等検査を受けることができる」と国の法律に規定されている(農産物検査法第3条)。すなわち、農家等の米穀の生産者は、公正かつ円滑な取引をすること、米穀の流通ルート上でのトレーサビリティを確保して品質への信頼を獲得すること等を目的に、JA(農協)などで積極的に品位等検査を受けているのが現状である。
【0003】
JA(農協)などでは、現在、農産物検査員が目視で品位等検査を行っているが、最近は着色粒などの混入割合(率)を測定できる穀粒品位判別器(例えば、特許文献1参照)の開発が進展しており、測定器が補助的に活用されるようになっている。また、着色粒などを除去するための色彩選別機は、農家等での利用を目的として小型化・低価格化を実現しながら、性能を向上した機種も登場してきている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、上記特許文献2に記載の光学式選別機にあっては、害虫等による着色粒、ヤケ米等による被害粒、青未熟粒、籾米、乳白粒などの着色粒、及び小石などの異物をすべて一つに含めて不良品として選別して、良品(整粒)と区別している。
また、特許文献3に記載の光学式選別機にあっては、良品の重量と不良品の重量とを比較して、原料に対する不良品混入率を算出し品質検査に利用している。
【0005】
つまり、従来の光学式選別機は、不良品に含まれる、害虫等による着色粒、ヤケ米等による被害粒、青未熟粒、籾米、乳白粒などの着色粒、小石などの異物の各不良因子を判別し、各不良因子の混入率を求めることができなかった。
前記混入率のような品位判別の分析は、選別された不良品を黒色カルトンに取り分けて目視で確認したり、上記穀粒品位判別器を使用して行っていた。
【0006】
加えて、農家等では光学式選別機の前工程に粒径選別等を行う米選機を配設し、該米選機で選別後の原料を光学式選別機で光学的に選別することが行われている(例えば、特許文献4)。
しかし、前記米選機を用いて行う選別によって除去された屑粒については、上記混入率の算出に使用されていない。このため、選別装置に供する原料全体での不良品の混入率を確認することができないという問題があった。
【0007】
さらに、従来の光学式選別機は、ユーザーの調整に基づき、不良品を判別する基準が変更されるため、次年度の圃場での稲の栽培条件など、色彩選別された選別データを農家に対してフィードバックして次年度の栽培管理に役立てることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-125867号公報
【特許文献2】特許第6052287号公報
【特許文献3】特開平10-216650号公報
【特許文献4】特開2010-184226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点にかんがみ、光学式選別機に投入された穀物を良品と不良品に判別すると同時に上記不良品の各不良因子の判別を行うことを可能とし、加えて、屑粒も含む原料全体での不良品混入率を求めることが可能な穀物検査装置を提供することを技術的課題とする。また、この穀物検査装置のデータを有効利用して農家に対して次年度の稲の栽培管理に役立てる栽培管理システムを提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明は、原料を粒厚選別して第一の良品と第一の不良品とに選別する米選機と、前記第一の良品を光学的に選別して第二の良品と第二の不良品とに判別する光学式選別機とを備えた穀物検査装置であって、前記米選機には、前記第一の良品と前記第一の不良品とをそれぞれ計量する整粒計量手段と屑粒計量手段とが備えられ、前記光学式選別機には、前記第一の良品を撮像する撮像手段と、該撮像手段で取得した撮像信号に基づいて前記第一の良品を第二の良品と第二の不良品とに判別する判別手段とが備えられ、該判別手段の判別結果に基づき、前記第一の良品に含まれる第二の不良品の割合である第一の不良品混入率を算出するとともに、前記整粒計量手段で計量した前記第一の良品の重量値と前記屑粒計量手段で計量した前記第一の不良品の重量値と前記第一の不良品混入率とに基づき、前記原料に含まれる前記第一の不良品及び前記第二の不良品を合わせた不良品の割合である第二の不良品混入率を算出する算出手段を備える、という技術的手段を講じた。
【0011】
請求項2記載の発明では、原料を粒厚選別して第一の良品と第一の不良品とに選別する米選機と、前記第一の良品を第二の良品と第二の不良品とに光学的に判別する光学式選別機と、前記第二の良品の重量を計量する精品計量手段と、を備えた穀物検査装置であって、
前記光学式選別機には、前記第二の不良品の重量を計量する不良品計量手段を備える一方、前記米選機には、前記第一の不良品を計量する屑粒計量手段が備えられ、
さらに、前記光学式選別機には、前記第一の良品を撮像する撮像手段と、該撮像手段で取得した撮像信号に基づいて前記第一の良品を第二の良品と第二の不良品とに判別する判別手段と、該判別手段での判別結果に基づき前記第二の不良品を選別排除するエジェクタ手段とが備えられ、
前記精品計量手段で計量された第二の良品の重量値と、前記不良品計量手段で計量された第二の不良品の重量値とを合算して前記第一の良品の重量値を求めるとともに、
前記判別手段の判別結果に基づき、前記第一の良品に含まれる第二の不良品の割合となる第一の不良品混入率を算出し、該第一の不良品混入率と前記第一の良品の重量値とから前記第二の良品の算出良品重量値と前記第二の不良品の算出不良品重量値とをそれぞれ算出し、前記屑粒計量手段で計量した前記第一の不良品の重量値と前記算出良品重量値と前記算出不良品重量値とから、前記原料に含まれる前記第一の不良品及び前記第二の不良品の割合となる第二の不良品混入率を算出する算出手段を備える、という技術的手段を講じた。
【0012】
請求項3記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の穀物検査装置において、前記算出手段が、前記画像信号から得られた第一の良品のR,G,Bの各信号を単独、もしくは組み合わせて様々な特徴量を算出するとともに、この値を加算、減算、積算又は除算による演算処理を行って流れている原料の個数と各不良因子による不良粒の個数を求め、これらの結果から前記第二の不良品に含まれる各不良因子別の混入率を算出することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明では、前記不良因子が、害虫等による被害粒、ヤケ米等による被害粒、青未熟粒、籾米、乳白粒又は異物から選択される、複数の不良因子であることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明では、少なくとも前記穀物検査装置を含む穀物調製ラインと、農業に関するデータを集約した農業データ連携プラットフォームと、前記穀物調製ラインでの玄米の調製加工データを蓄積するサーバーと、農家に対して栽培管理情報を提供する携帯端末とを、通信回線を介して接続した栽培管理システムであって、
前記サーバーには、今年度の玄米の調製加工データと、前記農業データ連携プラットフォームからの農業データとを、農家に対してフィードバックし、次年度の栽培管理指針を農家に提供する栽培管理プログラムが組み込まれていることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明では、前記玄米の調製加工データが、少なくとも前記穀物検査装置により被検査物のなかの各不良因子の混入率であることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明では、前記サーバーには、今年度の玄米の調製加工データと、前記農業データ連携プラットフォームからの農業データとを、農家に対してフィードバックし、前記穀物調製ラインを構成する機械のメンテナンス情報を提供するメンテナンスプログラムが組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、原料を粒厚選別して第一の良品と第一の不良品とに選別する米選機と、前記第一の良品を光学的に選別して第二の良品と第二の不良品とに選別する光学式選別機とを備えた穀物検査装置であって、前記米選機には、前記第一の良品と前記第一の不良品とをそれぞれ計量する整粒計量手段と屑粒計量手段とが備えられ、前記光学式選別機には、前記第一の良品を撮像する撮像手段と、該撮像手段で取得した撮像信号に基づいて前記第一の良品を第二の良品と第二の不良品とに判別する判別手段とが備えられ、該判別手段の判別結果に基づき、前記第一の良品に含まれる第二の不良品の割合となる第一の不良品混入率を算出するとともに、前記整粒計量手段で計量した前記第一の良品の重量値と前記屑粒計量手段で計量した前記第一の不良品の重量値と前記第一の不良品混入率とに基づき、前記原料に含まれる前記第一の不良品及び前記第二の不良品の割合となる第二の不良品混入率を算出する算出手段を備えたものであるので、
被検査物の原料を単に良品と不良品とに判別するだけではなく、前記光学式選別機で判別した前記原料の中に、前記不良品がどの程度の割合で混入しているかを詳細に調べることができ、加えて、前記米選機で除去された屑粒の情報を加味した前記第二の不良品混入率も求めるので、より正確な不良品の混入率を知ることができるという効果がある。
【0018】
また、請求項2記載の発明によれば、原料を粒厚選別して第一の良品と第一の不良品とに選別する米選機と、前記第一の良品を第二の良品と第二の不良品とに光学的に判別する光学式選別機と、前記第二の良品の重量を計量する精品計量手段と、を備えた穀物検査装置であって、
前記光学式選別機には、前記第二の不良品の重量を計量する不良品計量手段を備える一方、前記米選機には、前記第一の不良品を計量する屑粒計量手段が備えられ、
さらに、前記光学式選別機には、前記第一の良品を撮像する撮像手段と、該撮像手段で取得した撮像信号に基づいて前記第一の良品を第二の良品と第二の不良品とに判別する判別手段と、該判別手段での判別結果に基づき前記第二の不良品を選別排除するエジェクタ手段とが備えられ、
前記精品計量手段で計量された第二の良品の重量値と、前記不良品計量手段で計量された第二の不良品の重量値とを合算して前記第一の良品の重量値を求めるとともに、前記判別手段の判別結果に基づき、前記第一の良品に含まれる第二の不良品の割合となる第一の不良品混入率を算出し、該第一の不良品混入率と前記重量値とから前記第二の良品の算出良品重量値と前記第二の不良品の算出不良品重量値とをそれぞれ算出し、前記屑粒計量手段で計量した前記第一の不良品の重量値と前記算出良品重量値と前記算出不良品重量値とから、前記原料に含まれる前記第一の不良品及び前記第二の不良品の割合となる第二の不良品混入率を算出する算出手段を備えたものであるので、被検査物の原料を単に良品と不良品とに判別するだけではなく、前記精品計量手段で計量した重量値に基づいて、前記光学式選別機で判別した前記原料の中に、前記不良品がどの程度の割合で混入しているかを詳細に調べることができ、加えて、前記米選機で除去された屑粒の情報を加味した前記第二の不良品混入率も求めるので、より正確な不良品の混入率を知ることができるという効果がある。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、前記算出手段が、前記光学検出手段から得られたR,G,Bの各信号を単独、もしくは組み合わせて様々な特徴量を算出するとともに、この値を加算、減算、積算又は除算による演算処理を行って流れている原料の個数と各不良因子による不良粒の個数を求め、これらの結果から各不良因子の混入率を算出するものであるから、従来、判別が困難であった茶色系統のヤケ米と籾米との判別や、緑色系統の青未熟粒と白色系統の乳白粒との判別が容易にできるようになった。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、不良因子を、害虫等による被害粒、ヤケ米等による被害粒、青未熟粒、籾米、乳白粒及び異物から複数選択可能としたので、単に良品と不良品とに選別するだけではなく、状況に応じてユーザーの希望する複数の不良因子の混入率の算出を実行することができる。また、別途、穀粒品位判別器に投入することなく、各不良因子の混入率の算出を実行することができるという効果がある。
【0021】
そして、請求項5記載の発明によれば、少なくとも前記穀物検査装置を含む穀物調製ラインと、農業に関するデータを集約した農業データ連携プラットフォームと、前記穀物調製ラインでの穀物の調製加工データを蓄積するサーバーと、農家に対して提栽培管理情報を提供する携帯端末とを、通信回線を介して接続した栽培管理システムであって、
前記サーバーには、今年度の穀物の調製加工データと、前記農業データ連携プラットフォームからの農業データとを、農家に対してフィードバックし、次年度の栽培管理指針を農家に提供する栽培管理プログラムが組み込まれているから、穀物検査装置で計測した今年度の各不良因子の混入率データを有効利用して、農家に対して次年度の稲の栽培管理指針(例えば、翌年の灌水、施肥、農薬散布時期)を提供して栽培管理に役立てることができるようになった。
【0022】
さらに、請求項6記載の発明によれば、前記穀物の調製加工データが、少なくとも前記穀物検査装置により被検査物のなかの各不良因子の混入率が含まれることになるので、農家に対して今年度の作況を見える化して、分かり易く提供することができる。
【0023】
また、請求項7記載の発明によれば、前記サーバーには、今年度の穀物の調製加工データと、前記農業データ連携プラットフォームからの農業データとを、農家に対してフィードバックし、前記穀物調製ラインを構成する機械のメンテナンス情報を提供するメンテナンスプログラムが組み込まれているから、例えば、穀物の調製加工データが平年よりも低い場合、穀物調製ラインの機械の能力が通常よりも劣っている指標となり得るため、警報を発して、機械の調整やメンテナンスを促すように農家に対してお知らせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の穀物検査装置を穀物調製ラインに組み込んで栽培管理システムに構成したブロック図である。
図2】穀物検査装置(光学式選別機)の概略側断面図である。
図3】穀物検査装置の制御回路を示すブロック図である。
図4】表示部の画面に表示された分析結果の表示例である。
図5】栽培管理システムの携帯端末画面に表示された農家に提供する栽培管理の事例である。
図6】表示部の画面に表示された分析結果の表示例である。
図7】穀物検査装置(米選機)の概略側断面図である。
図8】第一の良品、第一の不良品、第二の良品、第二の不良品の関係を示す図である。
図9】本発明の他の実施形態の穀物検査装置の制御回路を示すブロック図である。
図10】本発明の他の実施形態の穀物検査装置を穀物調製ラインに組み込んで栽培管理システムに構成したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の穀物検査装置を穀物調製ラインに組み込んで構成した栽培管理システムのブロック図である。この栽培管理システム10は、個人の農家、営農法人の経営規模として、圃場面積が1~3ha(ヘクタール)程度の中規模から大規模を想定している。符号205は穀物検査装置であり、この穀物検査装置205は米選機202と光学式選別機203とから構成される。
【0026】
図1において、栽培管理システム10は、穀物調製ライン20と、該穀物調製ライン20での穀物の調製加工データを蓄積するサーバー30と、携帯端末40と、民間又は公的機関によって農業に関するあらゆるデータを集約した農業データ連携プラットフォーム50とを、通信回線60を介して接続している。
なお、サーバー30は、クラウド上に構成してもよい。
【0027】
通信回線60は、例えばLAN(Local Area Network)やインターネット回線などのネットワークで構成されている。このネットワークは有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0028】
(穀物調製ライン)
穀物調製ライン20は、個人の農家の納屋、又は営農法人などにあってはライスセンタや工場などの建家内に設置される。穀物調製ライン20は、圃場内を移動しながら収穫する圃場機械(field machinery、例えば、コンバイン)に対し、建家の中に固定された屋内機械(barn machinery)であり、圃場機械で収穫した収穫物を運んできて調製加工することができる。穀物調製ライン20としては、例えば、穀物の乾燥を行う穀物乾燥機(図示せず)と、該穀物乾燥機で乾燥した乾燥籾を放冷する放冷タンクと(図示せず)と、放冷後の籾を脱ぷして玄米に仕上げる籾摺選別機201と、該籾摺選別機201で得られた玄米を基準に合った粒径と基準外の粒径とに粒の径(厚み(大きさ))により選別を行う米選機202と、該米選機202で得られた整粒玄米を光学的な方法によって穀物検査を行う光学式選別機203と、光学式選別機203により穀物検査した後の玄米を計量・袋詰めして出荷を行う計量袋詰め機204とを、一ラインに接続して構成されている。
【0029】
籾摺選別機201には、脱ぷされた摺落米をサンプリングし、発光素子から受光素子へ投光されるセンサ光を透過させ、このセンサ光の摺落米に対する透過率によって、玄米か籾かを判別する脱ぷ率センサ201aが備えられる。また、籾摺選別機201は、その駆動部の電気諸量(例えば、電流値、電力値又は電力量等)を計測する電気諸量計測部201bを備えている。脱ぷ率センサ201a及び電気諸量計測部201bによる計測値により、基準内か否かによって籾摺選別機201に供給される籾の性状を知ることができる。
【0030】
米選機202は、原料(玄米)を整粒(第一の良品)と未熟粒(第一の不良品)とに選別する選別網筒が内装してある。未熟粒の混入量が多いと商品価値が低下する。また、該混入量はその年の稲の生育状況が悪いことの指標となる。例えば、稲作期間中の異常低温と極度の日照不足や、稲作期間中の連日の猛暑による異常高温は、稲の生育不良の原因となり、籾の中に極めて貧弱な実(未熟粒)が入っていたり、中には籾の中に実が稔らない不稔(ふねん)粒となったりする。
【0031】
ここで、本発明での「第一の良品」、「第一の不良品」、「第二の良品」、「第二の不良品」について説明する。
図8に示すように、米選機202で選抜された良品を「第一の良品」、不良品を「第一の不良品」としている。
そして、光学式選別機203において、後述する比較回路227aで良品と判別された前記第一の良品を「第二の良品A1」、不良品と判別された前記第一の良品を「第二の不良品B1」としている。
また、後述する計測回路227bで良品と判別された前記第一の良品を「第二の良品A2」、不良品と判別された前記第一の良品を「第二の不良品B2」としている。
さらに、後述するエジェクタ駆動装置での選別後の前記第二の良品A1を「第二の良品A3」、同じく選別後の前記第二の不良品B1を「第二の不良品B3」としている。
【0032】
米選機202は、図7に示すように、筐体74の背面部に原料投入ホッパ75が設けられ、筐体74内には、屑粒及び未熟米(第1の不良品)と整粒(第1の良品)とを粒径選別するための選別網筒76が立設されており、該選別網筒76の上面は閉鎖され、選別網筒76内には揚穀ロール77が立設された、いわゆる上送式竪型選別部となしている。該揚穀ロール77には外周に螺旋状の揚穀螺旋78が軸装され、インバータモータ70などの回転駆動手段により揚穀ロール77を回転させることで、原料投入ホッパ75から選別網筒76内の下部に供給された原料(穀粒)が、揚穀螺旋78の回転によって遠心力を受けつつ選別網筒76内を上昇していく。
【0033】
選別網筒76には多数の選別孔79が穿設され、選別網筒76と筐体74との間は屑粒室80が形成されている。これにより、上述の遠心力を受けながら選別網筒76内を上昇する原料(穀粒)から屑粒(未熟粒)が多数の選別孔79を介して屑粒室80に移送されることで、選別孔79の大きさにより原料から屑粒が除かれて粒径選別が行われる。
【0034】
屑粒室80の下部は、屑粒排出樋71を介して筐体74外に連絡されており、屑粒粒室80に移送された屑粒が屑粒排出樋71を経て筐体74外へ排出される。
【0035】
前記屑粒排出樋71から排出された屑粒は、屑粒計量器202bで計量される。そして、計量した重量値は後述する計測回路227bに送信される。
【0036】
揚穀ロール77の上端部には、板状の掻出羽根72が所定数設けられると共に、選別網筒76の上端は、一次貯留タンクとしての粒選貯留タンク73の基端に連通しており、選別網筒76の上端まで搬送された玄米が、掻出羽根72の回転による遠心力によって粒選貯留タンク73内に放擲状に搬入される。そして、粒選貯留タンク73の下方に設けられた整粒排出口81から原料(選別網筒76を通過しない原料)が排出される。
【0037】
前記整粒排出口81から排出された原料は、該原料を計量する整粒計量器202aで計量される。そして、計量した重量値は後述する計測回路227bに送信される。
【0038】
屑粒計量器202bと整粒計量器整202aの計量値に基づいて、整粒と屑粒(未熟粒)との選別割合を知ることで、整粒の歩留りの算出や屑粒の混入率を算出することができる。加えて、その年の稲の生育状況の判別の指標に利用したりすることも可能となる。
【0039】
整粒の歩留りの算出や屑粒の混入率の算出は、適切なタイミングで随時行えばよい。例えば、原料のロット毎に行ってもよいし、10kg、30kg等の所定量毎に行ってもよい。また、所定の時間ごとに行ってもよいし、連続的に行ってもよい。また、前記混入率は、米選機202の制御回路(図示せず)で行ってもよいし、後述する穀物検査装置205の計測回路227bで行ってもよい。
【0040】
米選機202については、本実施例では縦型のものを示したが、縦型に限定されず、選別網筒76を横置きにした横型のもの、あるいは選別網筒76を傾斜して設けるものであってもよい。
【0041】
光学式選別機203は、米選機202により粒径選別された整粒玄米(第一の良品)を、良品(第二の良品)と不良品(第二の不良品)とに選別するとともに、原料に含まれる、害虫等による着色粒、ヤケ米等による被害粒、青未熟粒、籾米、乳白粒、及び小石などの異物が、各不良因子がどの程度の割合で混入しているかを詳細に調べることができるものである。
【0042】
図2に示すように、光学式選別機203は、被検査物供給部203a、シュート203b、光学選別部203c及び排出ホッパ203dを備えている。被検査物供給部203aは、タンク210と、被検査物をシュート203bに供給する振動フィーダ211とを備える。前記供給はロータリーバルブで行うことも可能である。
【0043】
シュート203bは、所定幅を有して振動フィーダ211の先端側下方位置に傾斜した状態で配置され、振動フィーダ211から供給される被検査物を自然流下させる。光学選別部203cは、シュート203bの下端から落下する被検査物の落下軌跡の前後に配設される一対の光学検出装置212a,212bを備える。光学式選別機203は、前記光学検出装置212a,212bの撮像信号に基づいて被検査物を良品(第二の良品)と不良品(第二の不良品)に判別する演算手段213を備える。そして、演算手段213で判別された不良品を排除するエジェクタ装置215を備える。
【0044】
符号214は演算手段213からエジェクタ装置215に排除信号を出力するエジェクタ駆動回路である。
【0045】
排出ホッパ203dは、良品排出樋216及び不良品排出樋217を有し、エジェクタ装置215により被検査物を良品(第二の良品A3)と不良品(第二の不良品B3)とに分別して排出する。排出された前記第二の良品A3は、計量袋詰め機204に送られ、精品計量器204aで計量される。本発明では整品計量器204aが精品計量手段となる。また、排出された前記第二の不良品B3は、不良品計量器301で計量される。本発明では不良品計量器301が不良品計量手段となる。
【0046】
計量袋詰め機204は、精品計量器204a上に米袋などの容器204b、袋立て器204cを載置し、図示しないシャッタを開くことによって穀物が容器204bに排出され、所定の計量値に達すると自動的にシャッタが閉鎖して計量・袋詰めが完了する。
【0047】
上述の穀物調製ライン20においては、例えば、図1に示す8種のセンサ類及び制御手段が通信回線60に接続される。
【0048】
(サーバー)
サーバー30は、外部の端末と情報の送受信を行うWebサーバーと、各種データを蓄積してデータベースとして機能させるファイルサーバと、クライアントコンピュータやタブレット端末にインストールが必要なアプリケーションを配信するためのアプリケーションサーバなど汎用的な基本機能を備えたものである。サーバー30は、通信回線60に接続される。前記サーバー30は、クラウド上に設けてもよいし、例えば、穀物検査装置205を配置した施設内に設けてもよい。
【0049】
(携帯端末)
携帯端末40は、圃場や穀物調製ラインなど現場において携帯して閲覧ができる閲覧用の複数のタブレット端末とするのがよい。該タブレット端末の代替機としては、ノート型の汎用パーソナルコンピュータやスマートフォンであってもよい。携帯端末40は、通信回線60に接続される。
【0050】
(農業データ連携プラットフォーム)
農業データ連携プラットフォーム50は、農業に関する土壌や、市況や、気象等の公的データや、民間企業の様々な有償データ等を整備・提供することで、データを活用した新たなサービスの提供や農家の戦略的な経営判断を実現することを目的とするものであり、民間又は公的機関が主催している。
【0051】
図1に示す農業データ連携プラットフォーム50は、例えば、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が主催する「WAGRI」を活用することができる。このプラットフォーム50には、過去の収量データ、市況データ、土壌データ及び農地データを格納した農業用データベース501と、農業用の気象データを格納した気象用データベース502と、過去の履歴を参照することのできる過去履歴データベース503と、を備えて構成される。これらデータベース501,502,503は、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)の形で提供され、ソフトウェアやアプリケーションなどの一部を外部に向けて公開されているから、このデータベースを利用する第三者が開発したソフトウェアと機能とを共有できる仕組みである。このプラットフォーム50は、通信回線60に接続される。
【0052】
(穀物検査装置(光学式選別機203)の制御回路構成)
次に、穀物検査装置205の制御回路について詳述する。該制御回路は、前記光学式選別機203の制御回路を使用することができる。
なお、前記制御回路を独立して別途設けてもよい。
光学式選別機203の演算手段213は、被検査物(ここでは第一の良品)を良品(第二の良品)と不良品(第二の不良品)とに判別するとともに、原料を害虫等による着色粒、ヤケ米等による被害粒、青未熟粒、籾米と、乳白粒などの着色粒及び小石などの異物の各不良因子の混入度合い(率)を計測するものである。ここで、演算手段213は、穀物検査装置205の制御回路を兼ねたものである。
【0053】
図3は光学式選別機203の制御回路を示すブロック図である。図3に示すように、光学検出手段となる光学検出装置(撮像カメラ)212は、CCDラインセンサにより構成されていて、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に感度を有するR素子220、G素子221、B素子222を備えている。光学検出装置(撮像カメラ)212の受光信号は、R素子220、G素子221、B素子222に供給され、それぞれR信号、G信号、B信号に光電変換されて出力される。
【0054】
前記R信号、G信号、B信号は、演算手段213内に設けた増幅器223,224,225にそれぞれ入力され、さらに、信号処理回路226に入力される。信号処理回路226では、R,G,Bの各信号を単独、もしくは組み合わせて様々な特徴量を算出するとともに、加算、減算、積算又は除算による演算処理を行って信号変換を行う。この信号変換は、光学検出装置(撮像カメラ)212で受光した信号を特徴づけて被検査物を特定することであり、この信号が比較回路227aに入力されることで、被検査物(ここでは第一の良品)の良否判別が行われ、第二の良品A1と第二の不良品B1とに判別される。
【0055】
また、前記信号処理回路226で演算処理された前記信号が計測回路227bに入力されることで、前記比較回路227aでの良否判別とは別に、第一の良品が第二の良品A2と第二の不良品B2とに判別され、さらに第二の不良品B2は各不良因子に判別される。
そして、第二の良品A2と、前記各不良因子の混入率の算出が行われる。該混入率が本発明における第一の不良品混入率に該当する。
前記比較回路227aが本発明における判別手段となる。そして、計測回路227bが本発明における算出手段となる。
なお、前記計測回路227bが本発明における前記判別手段及び前記算出手段を兼ねてもよい。その場合、計測回路227bから後述する遅延回路228に信号が送られることになる。
【0056】
符号228は遅延回路であり、光学検出装置(撮像カメラ)212で被検査物を観察する位置とエジェクタ装置215により不良品を排除する排除位置との距離に応じて噴射タイミングを決定するものである。前記比較回路227aから遅延回路228を経て排除信号がエジェクタ駆動回路214に出力される。エジェクタ駆動回路214により決定した排除信号はエジェクタ装置215に出力される。
前記エジャクタ装置215が本発明におけるエジェクダ手段となる。
【0057】
(穀物検査装置の各不良因子の混入率の算出アルゴリズム)
図3に示す信号処理回路226では、被検査物の各粒についてR,G,Bの各値から、分光比R/Gや、分光比R/Bなど、様々な組み合わせにより特徴量を演算する。そして、この演算した値を、計測回路227bに格納された判別式(例えば、特開平9-292344号公報の図6乃至図10などを参照)と比較し、例えば、6種類の不良因子に判別する。
【0058】
前記6種類の不良因子区分として、(a)害虫による被害粒(カメムシ被害粒)とそれ以外は良品と区分し、(b)ヤケ米等による着色粒とそれ以外は良品と区分し、(c)青未熟粒とそれ以外は良品と区分し、(d)乳白粒とそれ以外は良品と区分し、(e)籾とそれ以外は良品と区分し、(f)異物とそれ以外は良品と区分する、といったプログラムをあらかじめ組んでおくと、各不良因子の混入度合い(率)の統計処理を速やかに実行することができる。
【0059】
図3に示す計測回路227b(算出手段)では、前記比較回路227a(判別手段)で良品(第二の良品A1)と不良品(第二の不良品B1)に判別した原料(被検査物)について、前記第一の良品に含まれる前記第二の不良品B1の各不良因子の混入率(第一の不良品混入率)を算出する。
なお、計測回路227bを本発明における判別手段とし、該計測回路227bにて第一の良品を第二の良品A1と第二の不良品B1とに判別してもよい。計測回路227bの判別基準は、ユーザーによって変更できないものであることを特徴とする。
【0060】
加えて、計測回路227bでは、米選機202の整粒計量器202a及び屑粒計量機202bから送信される整粒(第一の良品)の重量値と屑粒(第一の不良品)の重量値を用いて、籾摺選別機201で籾摺りされた原料に含まれる前記各不良因子(前記第一の不良品及び第二の不良品B1)の混入率を算出することが可能である。該混入率が本発明の第二の不良品混入率に該当する。
【0061】
前記第二の不良品混入率の算出方法について説明する。
例えば、先ず、米選機202で整粒(第一の良品)と屑粒(第一の不良品)に選別し、それぞれを計量した結果に基づいて、米選機202に投入された原料の屑粒混入率(第三の不良品混入率)を計測回路227bで算出する。
次に、前記整粒(第一の良品)を光学式選別機203の判別手段で良品(第二の良品A1)と不良品(第二の不良品B1)とに判別し、判別した結果に基づいて、前記第一の良品に含まれる前記第二の不良品B1の各不良因子の混入率(第一の不良品混入率)を算出する。
この第一の不良品混入率は、前記整粒(第一の良品)を光学式選別機203で詳細に判別したものである。
【0062】
そして、前記第三の不良品混入率における前記第一の良品の割合に前記第一の不良品混入率を反映させることで、前記第二の不良品混入率を算出することができる。
ここで、前記第一の良品の重量値は、前記整粒計量器202aで計量されている。よって、前記第一の不良品混入率における各不良因子の混入率を前記第一の良品の重量値にそれぞれかけることで、前記第一の良品に含まれる各不良因子の重量値を算出することができる。ちなみに、前記各不良因子の重量値を合算したものが前記第二の不良品B1の重量値となる。
【0063】
前記各不良因子は第二の不良品B1であって、米選機で選別された第一の良品に含まれるものである。よって、各不良因子の前記重量値を、前記第一の良品の重量値から引き算することで、前記第一の良品から前記第二の不良品B1を除いた前記第二の良品A1の重量値を算出できる。そして、該第二の良品A1の重量値と、前記各不良因子の重量値と、前記第一の不良品の重量値とから前記第二の不良品混入率を算出することができる。
前記第二の良品A1の重量値、前記各不良因子の重量値及び前記第一の不良品の重量値を合算した重量値は、前記原料の重量値であるから、これらの値から前記第二の不良品混入率を計算で求めることが可能である。
【0064】
ところで、前記算出手段は、ユーザーが判別基準を変更できないものとすることが望ましい。判別基準を変更不可として固定することで、次年度の圃場での稲の栽培条件など、色彩選別された選別データを農家に対してフィードバックして次年度の栽培管理に役立てることが容易となる。
本発明では、ユーザーが判別基準を変更可能な比較回路227aと、変更不可能な計測回路227bを設けている。
【0065】
また、前記算出手段は、配置箇所が特に限定されない。前記信号処理装置226からの信号が受信可能であればよい。よって、実施例で示したように光学式選別機203内に配置してもよいし、光学式選別機203を設置する建物内に別途配置してもよい。あるいは、通信回路60を介してサーバー30に設けてもよく、クラウド上に設けることが可能である。
【0066】
(穀物検査装置の通信部)
図3の符号230は穀物検査装置の通信部であり、計測した各不良因子の混入度合い(率)を調製加工データの一部としてサーバー30へ通信回路60を介して送信するものである。サーバー30に蓄積されたデータは、携帯端末40を用いて確認することができる。
なお、通信部30が本発明における通信手段となる。
【0067】
図4は携帯端末40の画面40aに表示された分析結果の表示例である。図4(a)に示すものは、光学式選別機203での判別結果に基づくものである。被検査物を「(e)籾とそれ以外を良品と区分」した結果を示し、本実施例では、被検査物のうち良品が93%、不良品である籾が7%の占有率であった。図4(b)に示すものは、6種の不良因子で計測したものを集計し、得られた原料に含まれる不良因子の詳細な分析結果(円グラフ)である。本実施例では、被検査物のうち良品が93%、不良品が7%の占有率であり、不良品のうち、青未熟が2%、残りの不良因子がそれぞれ1%ずつの結果であった。
【0068】
図6は携帯端末40の画面40aに表示された分析結果の表示例であって、米選機202で除去した屑粒の計量結果を加味したものである。上記図4(b)の表示例は、光学式選別機203での判別結果を示すものであるが、図6で示す表示例は、光学式選別機203の判別結果に、米選機202で除去した屑粒の計量結果を追加したものである。屑粒の混入率も含まれたものであるので、より正確な各不良因子の混入率の情報を得ることが可能となる。
例えば、この情報を乾燥工程での乾燥ロット毎に管理することで、乾燥機に投入された籾毎の「作柄」を評価することができる。
【0069】
なお、整粒の重量は、米選機202で選別し整粒計量器202aで計量した値を使用してもよいし、精品計量器204aの計量結果を使用してもよい。
【0070】
(栽培管理システム)
図1に示す栽培管理システム10のサーバー30には、次年度の栽培管理指針を農家に提供する栽培管理プログラムが組み込まれている。すなわち、この栽培管理プログラムでは、前述した穀物調製ライン20の各種調製機械から得られたデータと、前述した農業データ連携プラットフォーム50の各種サーバーから得られたデータとを参照し、今年度の圃場での稲の栽培条件など農家に対してフィードバックし、次年度の栽培管理(例えば、翌年の灌水、施肥、農薬散布時期)に役立てることができる。
【0071】
図5は、栽培管理システム10の携帯端末40の画面40aに表示された農家に提供する栽培管理の事例である。図5では、圃場番号と、この圃場番号で収穫した穀物を穀物調製ライン10で調製した後の各種データと、農業データ連携プラットフォーム50から得られたデータとを農家に対してフィードバックし、これに基づき、次年度の栽培管理についてのアドバイスを記述している。
【0072】
例えば、図5において、No.1の圃場では、穀物調製加工の結果が穀物調製ライン10の各種データから取得されて記録される。この記録から、米選機202の屑粒の割合が平年より多く、かつ、穀物検査装置205での未熟粒の割合が平年より多かったときは、その根拠や要因が、農業データ連携プラットフォーム50から参照して取得することができる。以上のことから、次年度の対策としては、「施肥管理」「刈り取り時期」を考慮した栽培管理指針(アドバイス)を農家に対して提供できるのである。
【0073】
同様に、図5のNo.2の圃場では、次年度の栽培管理指針(アドバイス)として、収穫時の雨を考慮して「刈り取り前後の管理」を考慮することを農家に対し提供することができ、No.3の圃場では、次年度の栽培管理指針(アドバイス)として、「種籾消毒や害虫防除計画」を重視することを農家に対し提供することができる。
【0074】
このような栽培管理指針(アドバイス)だけに限らず、籾摺選別機201の脱ぷ率が平年よりも低く、かつ、穀物検査装置205での籾の割合が平年より多かったときは、携帯端末40の画面40aに警報を発することもできる。脱ぷ率が平年よりも低い場合、籾摺選別機201の能力が通常よりも劣っている可能性があるため、警報を発して、籾摺選別機201の調整やメンテナンスを促すように農家に対してお知らせするとよい。
【0075】
(本発明の他の実施形態)
本発明の他の実施形態における穀物検査装置305について図9及び図10を参照して説明する。なお、この実施形態における穀物検査装置305において、上述の穀物検査装置205と共通のものについては、繰り返しの説明を一部省略することとする。
【0076】
図10は、穀物検査装置305を穀物調製ライン301に組み込んで構成した栽培管理システムのブロック図である。符号305が穀物検査装置であり、この穀物検査装置305は米選機202、光学式選別機203及び計量袋詰め機204とから構成される。
【0077】
上述の穀物調製ライン301においては、例えば、図10に示す8種のセンサ類及び制御手段が通信回線60に接続される。
【0078】
(穀物検査装置(光学式選別機203)の制御回路構成)
次に、穀物検査装置305の制御回路について詳述する。該制御回路は、前記光学式選別機203の制御回路を使用することができる。
なお、前記制御回路を独立して別途設けてもよい。
光学式選別機203の演算手段213は、被検査物(第一の良品)を良品(第二の良品)と不良品(第二の不良品)とに判別するとともに、原料を害虫等による着色粒、ヤケ米等による被害粒、青未熟粒、籾米と、乳白粒などの着色粒及び小石などの異物の各不良因子の混入度合い(率)を計測するものである。ここで、演算手段213は、穀物検査装置305の制御回路を兼ねたものである。
【0079】
図9は光学式選別機203の制御回路を示すブロック図である。図9に示すように、光学検出手段となる光学検出装置(撮像カメラ)212は、CCDラインセンサにより構成されていて、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に感度を有するR素子220、G素子221、B素子222を備えている。光学検出装置(撮像カメラ)212の受光信号は、R素子220、G素子221、B素子222に供給され、それぞれR信号、G信号、B信号に光電変換されて出力される。
【0080】
前記R信号、G信号、B信号は、演算手段213内に設けた増幅器223,224,225にそれぞれ入力され、さらに、信号処理回路226に入力される。信号処理回路226では、R,G,Bの各信号を単独、もしくは組み合わせて様々な特徴量を算出するとともに、加算、減算、積算又は除算による演算処理を行って信号変換を行う。この信号変換は、光学検出装置(撮像カメラ)212で受光した信号を特徴づけて被検査物を特定することであり、この信号が比較回路227aに入力されることで、被検査物(ここでは第一の良品)の良否判別が行われ、第二の良品A1と第二の不良品B1とに判別される。
【0081】
また、前記信号処理回路226で演算処理された前記信号が計測回路227bに入力されることで、前記比較回路227aでの良否判別とは別に、第一の良品が第二の良品A2と第二の不良品B2とに判別され、さらに第二の不良品B2は各不良因子に判別される。そして、第二の良品A2と、前記各不良因子の混入率の算出が行われる。該混入率が本発明における第一の不良品混入率に該当する。
前記比較回路227aが判別手段となる。そして、計測回路227bが算出手段となる。
なお、前記計測回路227bが前記判別手段及び前記算出手段を兼ねてもよい。その場合、計測回路227bから後述する遅延回路228に信号が送られることになる。
【0082】
符号228は遅延回路であり、光学検出装置(撮像カメラ)212で被検査物を観察する位置とエジェクタ装置215により第二の不良品B1を排除する排除位置との距離に応じて噴射タイミングを決定するものである。前記比較回路227aから遅延回路228を経て排除信号がエジェクタ駆動回路214に出力される。エジェクタ駆動回路214により決定した排除信号はエジェクタ装置215に出力される。
【0083】
(穀物検査装置305の各不良因子の混入率の算出アルゴリズム)
図9に示す信号処理回路226では、被検査物の各粒についてR,G,Bの各値から、分光比R/Gや、分光比R/Bなど、様々な組み合わせにより特徴量を演算する。そして、この演算した値を、計測回路227bに格納された判別式(例えば、特開平9-292344号公報の図6乃至図10などを参照)と比較し、例えば、6種類の不良因子に判別する。
【0084】
前記6種類の不良因子区分として、(a)害虫による被害粒(カメムシ被害粒)とそれ以外は良品と区分し、(b)ヤケ米等による着色粒とそれ以外は良品と区分し、(c)青未熟粒とそれ以外は良品と区分し、(d)乳白粒とそれ以外は良品と区分し、(e)籾とそれ以外は良品と区分し、(f)異物とそれ以外は良品と区分する、といったプログラムをあらかじめ組んでおくと、各不良因子の混入度合い(率)の統計処理を速やかに実行することができる。
【0085】
図9に示す計測回路227b(算出手段)では、前記比較回路227a(判別手段)で良品(第二の良品A1)と不良品(第二の不良品B1)に判別した原料(第一の良品)について、該第一の良品に含まれる不良品(第二の不良品B1)の各不良因子の混入率(第一の不良品混入率)を算出する。
なお、計測回路227bを本発明における判別手段とし、該計測回路227bにて第一の良品を第二の良品A1と第二の不良品B1とに判別してもよい。
【0086】
加えて、計測回路227bでは、米選機202の屑粒計量機202bから送信される屑粒(第一の不良品)の重量値を用いて、籾摺選別機201で籾摺りされた原料に含まれる前記各不良因子(前記第一の不良品及び第二の不良品B2)の混入率を算出することが可能である。該混入率が前記実施形態での第二の不良品混入率に該当する。
【0087】
前記第二の不良品混入率の算出方法について説明する。
例えば、先ず、前記原料を米選機202で整粒(第一の良品)と屑粒(第一の不良品)に選別し、前記屑粒排出樋71から排出された第一の不良品を屑粒計量器202bで計量する。そして、計量した第一の不良品の重量値を前記計測回路227bに送信する。
【0088】
次に、前記第一の良品を光学式選別機203で良品(第二の良品A1)と不良品(第二の不良品B1)とに判別し、判別した結果に基づいて、前記エジェクタ手段で選別排除され不良品排出樋217から排出された第二の不良品B3を前記不良品計量器301で計量し、第二の不良品B3の重量値を求める。また、前記第二の不良品B3が選別排除された後の前記第二の良品A3は、前記精品計量器204aで計量し、第二の良品A3の重量値を求める。
そして、前記計測回路227bにて前記第二の不良品B3の重量値と前記第二の良品A3の重量値とを合算し、前記第一の良品の重量値を求める。
【0089】
別途、前記判別結果に基づいて、前記第一の良品に含まれる前記第二の不良品B1の各不良因子の混入率(第一の不良品混入率)を算出する。
この第一の不良品混入率は、前記第一の良品を光学式選別機203で詳細に判別したものである。
【0090】
前記第一の良品の重量値と前記第一の不良品混入率とから、前記第二の良品A1の算出良品重量値と前記第二の不良品B1の算出不良品重量値とを算出する。具体的には、前記第一の良品の重量値に前記第一の不良品混入率をかけることで算出する。
【0091】
ここで、前記算出良品重量値及び前記算出不良品重量値を算出して求める理由を説明する。
前記第一の良品を光学式選別機203のエジェクダ装置215で選別する際に、第二の不良品B1に第二の良品A1が混入することがある。このため、前記選別後の第二の不良品B3を前記不良品計量器301で計量した重量値は、第二の良品A1が含まれるものである。
また、前記選別後の第二の良品A3を前記精品計量器204aで計量した重量値には、前記選別によって第二の不良品B3に混入してしまった第二の良品A1が含まれない。
このため、これらの混入が原因となる計量誤差を解消するために、前記算出良品重量値及び前記算出不良品重量値を算出して求めている。
【0092】
そして、第二の良品A1の前記算出良品重量値、第二の不良品B1の前記算出不良品重量値及び前記第一の不良品の重量値(屑粒計量器202bで計量したもの)とから、米選機202に投入する前記原料に含まれる前記第一の不良品及び前記第二の不良品B1の割合となる第二の不良品混入率を前記算出手段で算出する。
第二の良品A1の前記算出良品重量値、第二の不良品B1の前記算出不良品重量値及び前記第一の不良品の重量値を合算した重量値は、前記原料の重量値であるから、これらの値から前記第二の不良品混入率を計算で求めることが可能である。
【0093】
ところで、前記算出手段は、ユーザーが判別基準を変更できないものとすることが望ましい。判別基準を変更不可として固定することで、次年度の圃場での稲の栽培条件など、色彩選別された選別データを農家に対してフィードバックして次年度の栽培管理に役立てることが容易となる。
このため、ユーザーが判別基準を変更する際には、前記計測回路227bで判別する第二の良品A2及び第二の不良品B2の判別結果を用いて不良品混入率を算出するようにすればよい。
【0094】
また、前記算出手段は、配置箇所が特に限定されない。前記信号処理装置226からの信号が受信可能であればよい。よって、実施例で示したように光学式選別機203内に配置してもよいし、光学式選別機203を設置する建物内に別途配置してもよい。あるいは、通信回路60を介してサーバー30に設けてもよく、クラウド上に設けることが可能である。
【0095】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0096】
10 栽培管理システム
20 穀物調製ライン
30 サーバー
40 携帯端末
50 農業データ連携プラットフォーム
60 通信回線
201 籾摺選別機
201a 脱ぷ率センサ
201b 電気諸量計測部
202 米選機
202a 整粒計量器
202b 屑粒計量器
203 光学式選別機
203a 被検査物供給部
203b シュート
203c 光学選別部
203d 排出ホッパ
205 穀物検査装置
210 タンク
211 振動フィーダ
212a 光学検出装置
212b 光学検出装置
213 演算手段
214 エジェクタ駆動回路
215 エジェクタ装置
216 良品排出樋
217 不良品排出樋
220 R素子
221 G素子
222 B素子
223 増幅器
224 増幅器
225 増幅器
226 信号処理回路
227a 比較回路
227b 計測回路
228 遅延回路
230 通信部
204 計量袋詰め機
204a 精品計量器
204b 容器
204c 袋立て器
501 データベース
502 データベース
503 データベース
図1
図2
図3
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図10