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特開2022-146987リングろう材、管接続構造及び管接続構造の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146987
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】リングろう材、管接続構造及び管接続構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/14 20060101AFI20220929BHJP
   B23K 3/06 20060101ALI20220929BHJP
   B23K 1/18 20060101ALI20220929BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20220929BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B23K35/14 Z
B23K3/06 J
B23K1/18 B
B23K1/00 330H
B01D53/26 100
B23K35/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048045
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】山岸 稔秋
(72)【発明者】
【氏名】町田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】塚田 亨
【テーマコード(参考)】
4D052
【Fターム(参考)】
4D052AA01
4D052BA01
4D052BA04
4D052BB02
4D052BB04
4D052FA01
(57)【要約】
【課題】一方の管と他方の管とが接続される端部同士の間に、溶融されたろう材が入り込み易くなって、ろう付け不良を減らすことができるリングろう材を提供する。
【解決手段】一方の管10と他方の管20との端部11、21同士が嵌め合わされ、ろう付けする際に用いられるリングろう材30であって、一方の管の端部11が、他方の管の端部21に外嵌状態になる円筒嵌合部12と、一方の管10の端口がテーパ状に拡径した拡径端口部13とによって設けられ、ろう付けがなされる際の拡径端口部13が上を向いた保持状態で、他方の管20に外嵌すると共に拡径端口部13の上に位置されるようにリング状に成形され、断面形状が、ろう付けがなされる際の保持状態において下側が尖った形態で、他方の管の端部21の外周面と、拡径端口部13の拡径内面13aとの間に挿入される下側尖形部31を備える形態に設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管と他方の管との端部同士が嵌め合わされ、ろう付けによってシール状態に接続するシールろう層を設ける際に用いられるろう材であって、前記一方の管の端部が、前記他方の管の端部に外嵌状態になる円筒嵌合部と、該一方の管の端口が端縁に向かってテーパ状に拡径した拡径端口部とによって設けられ、前記ろう付けがなされる際の前記拡径端口部が上を向いて拡径された形態に保持される保持状態で、前記他方の管に外嵌すると共に前記拡径端口部の上に位置されるようにリング状に成形されたリングろう材において、
該リングろう材の断面形状が、ろう付けがなされる際の保持状態において下側が尖った形態で、前記他方の管の端部の外周面と、前記拡径端口部の拡径内面との間に挿入される下側尖形部を備える形態に設けられていることを特徴とするリングろう材。
【請求項2】
前記下側尖形部のリング内周面の下端部が、前記他方の管の端部の外周面に線接触するように、前記リング内周面が下方に向かって縮径するテーパ状に設けられていることを特徴とする請求項1記載のリングろう材。
【請求項3】
前記下側尖形部のリング外周面の下端部が、前記拡径端口部の拡径内面に線接触するように、前記リング外周面が下方に向かって前記拡径内面のテーパよりも鋭角なテーパ状に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のリングろう材。
【請求項4】
前記断面形状の図形的な重心が、前記ろう付けがなされる際の前記保持状態で、前記拡径端口部の拡径内面における拡径縁よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項に記載のリングろう材。
【請求項5】
切れ目のあるリング状に成形された形態であって、該切れ目が斜めにカットされたスリット状であり、ろう付けがなされる際に保持される状態において、前記切れ目を形成する上側斜めカット部と下側斜めカット部とが上下方向に重なるように設けられていることを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1項に記載のリングろう材。
【請求項6】
切れ目のあるリング状に成形された形態であって、該切れ目が斜めにカットされたスリット状であり、ろう付けがなされる際に保持される状態において、前記切れ目を形成する内側斜めカット部と外側斜めカット部とがリングの径方向に重なるように設けられていることを特徴とする請求項1~5のうちいずれか1項に記載のリングろう材。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項に記載のリングろう材を用いて設けられる管接続構造であって、前記一方の管が、直管をペアピン形状に曲げることで成形されたヘアピン管であり、前記他方の管が、直管をU字状に曲げることで形成されたU字継手管であって、接続されて形成された配管が、熱交換器の熱媒体が流通する配管であることを特徴とする管接続構造。
【請求項8】
前記熱交換器の配管が、圧縮空気除湿装置の蒸発器の配管であることを特徴とする請求項7記載の管接続構造。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の管接続構造に係る製造方法であって、ろう付けを行う方法が、ガスバーナーの炎をサイドから当てるサイドヒーティング方式の自動ろう付け機を用いてろう材を加熱・溶融させるガスろう付け法であることを特徴とする管接続構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の管と他方の管との端部同士が嵌め合わされ、ろう材を溶融させるろう付けによってシール状態に接続するシールろう層を設ける際に用いられるろう材であって、リング状に成形されたリングろう材、管接続構造及び管接続構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図10及び11に示すように、一方の管10と他方の管20との端部同士が嵌め合わされ、ガスバーナーを用いてろう材を溶融させるろう付けによってシール状態に接続するシールろう層を設ける際に用いられるろう材であって、一方の管10の端部が、他方の管20の端部に外嵌状態になる筒状嵌合部と、その一方の管10の端口が端縁に向かってテーパ状に拡径した拡径端口部とによって設けられ、ろう付けがなされる際の前記拡径端口部が上を向いて拡径された形態に保持される保持状態で、他方の管20に外嵌すると共に前記拡径端口部の上に位置されるようにリング状に成形されたリングろう材では、断面が円形になっている(特許文献1参照)。また、このようなリングろう材100では、ろう付け工程の準備工程で他方の管に外嵌する状態に仮装着し易くするように、図11(a)に示すようなリング形状の円の径方向に切られた形態の切れ目101が設けられている。
【0003】
この従来の断面が円形のリングろう材では、ガスバーナーによる自動ろう付け機でバーナーの炎を吹き付けられると、他方の管20の端部に外嵌すると共に前記拡径端口部の上に位置されて溶融したろう材が飛散して外に漏れるという欠点があった。すなわち、一方の管10と他方の管20とを接続させるろう付けの作業は、作業効率化のため自動ろう付け機(サイドヒーティング)によって、多数のろう付けを一斉に行う(図8参照)が、バーナーの炎の勢いによってろう材が飛んで不良となるものが発生する場合がある。その際は、後工程で作業者が手動ろう付けによって再ろう付けを行うことになるため効率が悪い。なお、図8に示した自動ろう付け機の例では、サイドヒーティングが左右の両側からなされ、複数層に配されたろう付け部を加熱する構成になっている。
【0004】
これに対して、従来のリングろう材の形態例としては、テーパ付き単ロールを用いて製造し、一連の湾曲したテープであって、所定の直径で巻いたとき、真正な円錐台リングを形成することを特徴とする急冷凝固箔よりなる円錐台リング用ろう材であり、単ロール表面をテーパ状に形成し、該テーパ面に近接し、且つこれとほぼ平行に溶融金属収容器のノズル面を位置せしめ、高速回転する前記ロールのテーパ面に溶融金属を噴出せしめて製造する(特許文献2参照)ものであって、肉厚が箔膜状のものが提案されている。このリングろう材によれば、一方の鋼管の凹テーパを備える端口と他方の鋼管の凸テーパを備える端口とを接合することができる。なお、この箔膜状のリングろう材は、管の側周壁の厚さについて前記の凹テーパ及び凸テーパを適切に形成できるような十分に肉厚な鋼管の接続に用いることができる。
【0005】
また、従来から、冷凍サイクルの蒸発器などの熱交換器の熱媒体が流通する管路に用いられる管材としては、熱伝導性が高いことや曲げ加工のし易さから、銅管が主に用いられている。すなわち、ストレートパイプ(直管)形状の銅管を、適宜に曲げることやろう材によってシール状態に接続することで、気体や液体の流動性のある冷媒(熱媒体)を流通させる管路を構築している。例えば、一方の管10が、直管をペアピン形状に曲げることで成形されたヘアピン管10Aであり、他方の管20が、直管をU字状に曲げることで形成されたU字継手管20Aであって、両者がろう付けによってシール状態に接続された配管50aが、熱交換器の熱媒体を流通させる配管50aとして用いられている(図7~9参照)。
【0006】
この場合、従来は一般的に、一方の管10と他方の管20とはどちらも銅管が用いられており、銅材はろう材に係るぬれ性が良いため、フラックスを塗布する工程を必要としないで、ガスバーナーを用いてろう材を加熱・溶融させるガスろう付け法によって管路を接続することができる。このフラックスを塗布する工程を必要としないとは、ガスバーナーによってろう付け部へ吹き付けられる炎に、フラックスを混入させることでフラックスを気化状態に吹き付けることとは別に、フラックスをろう付けを行う部位へ刷毛などでグリース状に直接的に塗り付けることが行われないということである。なお、ガスバーナーの炎と共にフラックスを吹き付けることによれば、ガスバーナーの炎が当たる部位に、酸化被膜が形成されることを防止できるため、銅管の表面が黒化することを防止できる利点もある。
【0007】
このような銅管同士の接続によって形成される管接続構造を備える銅管による配管は、例えば、硫黄などの腐食性のある成分が混入した圧縮空気を除湿する際の熱交換器のように、高い耐腐食性を要求される場合には不向きであり、その対策としてステンレス鋼管を用いる場合がある。しかしながら、ステンレス鋼管は、精度の高い曲げ加工が難しく、ヘアピン管10Aとしては用いられるが、精度の高い曲げ加工が要求されるU字継手管20Aについては、銅管を用いることにメリットがある。なお、図9に示すような圧縮空気除湿装置では、ヘアピン管10Aの曲げ部14の側の方が高温高湿で腐食性のある成分の濃度が高い圧縮空気に接触することになるため腐食されやすく、U字継手管20Aの側の方が腐食されにくい環境になっていることからも、U字継手管20Aとして銅管を用いることにメリットがある。なお、図9は圧縮空気除湿装置を模式的に示しており、ヘアピン管10AとU字継手管20Aとの接続部となっている部分を一つのU字継手管20Aのみについて示した図になっているが、実際は配管が長く形成されるため多数のU字継手管20Aが配され、多数の接続部が配設された形態(図8参照)となっている。
【0008】
しかしながら、ステンレス鋼管と銅管とをろう付けによって接続する場合は、ステンレス鋼管10はろう材に係るぬれ性が悪いため、ろう付けを行う部位にフラックスを塗布する工程が必要になっている。すなわち、ガスバーナーによってろう付け作業を行う場合、金属の表面には酸化被膜が形成され、この酸化被膜は、ろうの「ぬれ(ろうが熱で溶かされて広がる時の広がり易さ、回り込み易さ)」を阻害するが、この酸化被膜を除去して、ぬれを良くするのが、フラックスの役割になっている。そして、ろう付けの工程後には、残留した腐食性のあるフラックスを除去する工程である湯洗工程が必要となり、生産性が悪かった。特に、熱交換器に用いられるような配管に係るろう付けの場合、多数の接続部が密集した形態となるため、フラックスを適切に塗る作業や、残留したフラックスを落とす作業には手間がかかり、効率的に行うことが難しかった。また、品質を安定的に向上させることが難しかった。さらにまた、ステンレス鋼管と銅管とのろう付けの品質を高めるためには、銀ろう材によってろう付けを行った後に、さらに銅ろう材によってろう付けを行う方法があるが、いずれもフラックスを用いる作業となって生産性が悪かった。
【0009】
次に、ステンレス鋼管10と銅管20との端部同士が嵌め合わされてろう付けによってシール状態に接続されて設けられる管接続構造が用いられる圧縮空気除湿装置について説明する。従来から、圧縮空気を発生する圧縮空気装置から導入された高温多湿状態にある圧縮空気について除湿を行う圧縮空気除湿装置では、空気中に含まれる水分などを凝集・結露させて除去するように、熱交換器と、その熱交換器を介して圧縮空気を冷却する装置(例えば、冷凍機、地下水などの冷却用媒体の利用装置)とを構成要素としている。この圧縮空気除湿装置としては、例えば、除湿効果を好適に高めるため、熱交換器が第1の熱交換器部と第2の熱交換器部の二段階に設けられ、前記第1の熱交換器部が、一次側の圧縮空気の予冷を行うと共に二次側の圧縮空気の再加熱を行うように、一次側の圧縮空気に係る冷却用の流路と二次側の圧縮空気に係る再熱用の流路とが交錯するように配されることによって設けられ、前記第2の熱交換器部が、前記第1の熱交換器部で予冷された圧縮空気を冷却用媒体で冷却することで結露を生じさせて除湿するように設けられているものがある。
【0010】
このような圧縮空気除湿装置としては、例えば、以下のような構成を有するものが、本出願人によって先に開示されている(特許文献3及び特許文献4参照)。図9に示すように、図外のエアーコンプレッサによって圧送される圧縮空気に含まれる水分を結露させて除湿する熱交換器50と、圧縮空気を冷却するための冷凍サイクル55とを備えている。また、熱交換器50は、導入口51から導入した圧縮空気を、一次冷却部(一次冷却用の流路53a)、二次冷却部(二次冷却用の流路53b)および再熱部(再熱用の流路53c)からなる気体流路を経て排出口52から排出可能に構成されている。また、この圧縮空気除湿装置には、除湿によって生じた水分を装置外部に排出するためのドレン排出口54が配設されている。一方、冷凍サイクル55は、熱交換器の二次冷却部(二次冷却用の流路53b)内に配設されて冷媒の気化熱によって圧縮空気を冷却する蒸発器55aと、気化した冷媒を一定の圧送能力で圧送する圧縮機55bと、圧縮した気化冷媒を凝縮して液化させる凝縮器55cと、液化冷媒を一次的に貯蔵する受液器55dと、液化冷媒を降圧させるキャピラリチューブ又は電子膨張弁55eとを備えている。
【0011】
この圧縮空気除湿装置では、先ず、圧縮機55bを駆動して冷媒を冷凍サイクル55内で循環させる。この際に、受液器55d内の液化冷媒がキャピラリチューブ又は電子膨張弁55eを通過して蒸発器55a内に吐出され、蒸発器55a内で液化冷媒が気化することにより、熱交換器の二次冷却部(二次冷却用の流路53b)が冷却される。この状態で図外のエアーコンプレッサを駆動することにより、導入口51から水分を含んだ圧縮空気が導入される。また、熱交換器内に導入された圧縮空気は、一次冷却部(一次冷却用の流路53a)を通過する際に予備冷却され、次いで、二次冷却部(二次冷却用の流路53b)を通過する際に、蒸発器55aによって所定の露点温度以下に冷却される。この際に、圧縮空気中の水分が、蒸発器55aの配管50aに取り付けられたフィン50bの表面に結露水として結露し、この結露水は、熱交換器の底部に向けて流れ落ちてドレン排出口54から外部に排出される。一方、二次冷却部(二次冷却用の流路53b)内で除湿された圧縮空気は、再熱部(再熱用の流路53c)を通過する際に、導入口51から導入される圧縮空気によって再熱されて排出口52から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2017-94346号公報(第2図)
【特許文献2】特開平05-123890号公報(第1頁)
【特許文献3】特開2001-183014号公報(第1図、[0002]、[0003])
【特許文献4】特開2017-127801号公報(第1頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
リングろう材、管接続構造及び管接続構造の製造方法に関して解決しようとする問題点は、従来の断面が円形のリングろう材では、例えば、ガスバーナーを用いる自動ろう付け機でバーナーの炎を吹き付けられると、一方の管の端部に他方の管の端部が内嵌されて接続される場合であって前記他方の管の端部に外嵌すると共に前記一方の管に設けられた拡径端口部の上に位置されて溶融されたろう材の一部が、飛散して外に漏れてろう付け不良が発生する場合があるという課題があった。
【0014】
そこで本発明の目的は、一方の管と他方の管とが接続される端部同士の間に、溶融されたろう材が入り込み易くなって、ろう付け不良を減らすことができるリングろう材、管接続構造及び管接続構造の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係るリングろう材の一形態によれば、一方の管と他方の管との端部同士が嵌め合わされ、ろう付けによってシール状態に接続するシールろう層を設ける際に用いられるろう材であって、前記一方の管の端部が、前記他方の管の端部に外嵌状態になる円筒嵌合部と、該一方の管の端口が端縁に向かってテーパ状に拡径した拡径端口部とによって設けられ、前記ろう付けがなされる際の前記拡径端口部が上を向いて拡径された形態に保持される保持状態で、前記他方の管に外嵌すると共に前記拡径端口部の上に位置されるようにリング状に成形されたリングろう材において、該リングろう材の断面形状が、ろう付けがなされる際の保持状態において下側が尖った形態で、前記他方の管の端部の外周面と、前記拡径端口部の拡径内面との間に挿入される下側尖形部を備える形態に設けられているを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るリングろう材の一形態によれば、前記下側尖形部のリング内周面の下端部が、前記他方の管の端部の外周面に線接触するように、前記リング内周面が下方に向かって縮径するテーパ状に設けられていることを特徴とすることができる。
【0017】
また、本発明に係るリングろう材の一形態によれば、前記下側尖形部のリング外周面の下端部が、前記拡径端口部の拡径内面に線接触するように、前記リング外周面が下方に向かって前記拡径内面のテーパよりも鋭角なテーパ状に設けられていることを特徴とすることができる。
【0018】
また、本発明に係るリングろう材の一形態によれば、前記断面形状の図形的な重心が、前記ろう付けがなされる際の前記保持状態で、前記拡径端口部の拡径内面における拡径縁よりも内側に位置していることを特徴とすることができる。
【0019】
また、本発明に係るリングろう材の一形態によれば、切れ目のあるリング状に成形された形態であって、該切れ目が斜めにカットされたスリット状であり、ろう付けがなされる際に保持される状態において、前記切れ目を形成する上側斜めカット部と下側斜めカット部とが上下方向に重なるように設けられていることを特徴とすることができる。
【0020】
また、本発明に係るリングろう材の一形態によれば、切れ目のあるリング状に成形された形態であって、該切れ目が斜めにカットされたスリット状であり、ろう付けがなされる際に保持される状態において、前記切れ目を形成する内側斜めカット部と外側斜めカット部とがリングの径方向に重なるように設けられていることを特徴とすることができる。
【0021】
また、本発明に係る管接続構造の一形態によれば、前記リングろう材を用いて設けられる管接続構造であって、前記一方の管が、直管をペアピン形状に曲げることで成形されたヘアピン管であり、前記他方の管が、直管をU字状に曲げることで形成されたU字継手管であって、接続されて形成された配管が、熱交換器の熱媒体が流通する配管であることを特徴とすることができる。
【0022】
また、本発明に係る管接続構造の一形態によれば、前記熱交換器の配管が、圧縮空気除湿装置の蒸発器の配管であることを特徴とすることができる。
【0023】
また、本発明に係る管接続構造の製造方法の一形態によれば、前記管接続構造に係る製造方法であって、ろう付けを行う方法が、ガスバーナーの炎をサイドから当てるサイドヒーティング方式の自動ろう付け機を用いてろう材を加熱・溶融させるガスろう付け法であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るリングろう材、管接続構造及び管接続構造の製造方法によれば、一方の管と他方の管とが接続される端部同士の間に、溶融されたろう材が入り込み易くなって、ろう付け不良を減らすことができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る管接続構造を設けるための部材の形態例であって銅管にリングろう材が外嵌された状態を示す側面図である。
図2図1の形態例の断面図である。
図3図1の形態例の部材をろう付けによって管接続構造を設けるためにセッティングした状態を示す断面図である。
図4図3の部分拡大断面図である。
図5図1の形態例に用いることができるリングろう材の形態例を示す(a)平面図、(b)A-A線断面図である。
図6図1の形態例に用いることができるリングろう材の他の形態例を示す(a)平面図、(b)B-B線断面図である。
図7】本発明に係る管接続構造を備える熱交換器用の管路の形態例を示す側面図である。
図8】本発明に係る管接続構造を備える熱交換器の製造工程の形態例示す側面図である。
図9】本発明に係る管接続構造を備える熱交換器が組み込まれている圧縮空気除湿装置の形態例を示す断面図である。
図10】従来のリングろう材を、管接続構造を設けるためにセッティングした状態を示す断面図である。
図11】従来のリングろう材の形態例を示す(a)平面図、(b)C-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る管接続構造の形態例を添付図面(図1~9)に基づいて詳細に説明する。
【0027】
本発明の形態例に係る管接続構造によれば、図1~4などに示すように、ステンレス鋼管(SUSパイプ)10と銅管20(本発明の銅とは、純銅、もしくは銅を主成分とした銅合金を指す。)との端部11、21同士が嵌め合わされ、例えば、ガスバーナー60(図8参照)を用い、ろう材を溶融させるろう付けによってシール状態に接続するシールろう層を備えるものであって、ろう付けがなされるステンレス鋼管の端部11の表面処理層が、銅メッキ層15(本発明の銅メッキとは、純銅メッキ、もしくは銅を主成分とした銅合金メッキを指す。)であることを特徴としている。なお、ステンレス鋼管10と銅管20との端部11、21同士の嵌め合わせは、シールろう層が適切に形成されるように、遊嵌状態になっており、図3及び4では、シールろう層が形成される隙間40を示してある。
【0028】
このようにステンレス鋼管の端部11に銅メッキをすることで、フラックスを塗って酸化被膜の除去を行う代わりに、その銅メッキによって酸化被膜の形成を防ぐことができ、ろう付けの際のろう材に係るぬれ性を向上できる。これによれば、ステンレス鋼管10の表面が、銅管20の表面と同等になって、その表面のぬれ性が銅管のぬれ性と同等になるため、溶融したろうが回りやすくなって、ガスバーナー60(図8参照)を用いる自動ろう付けにおいて外部へのろうの漏れはなくなり、不良率を低減できる。従って、この管接続構造によれば、ステンレス鋼管10と銅管20とをろう付けによって接続する場合に、フラックスを塗布する工程を必要とせずに、安定した品質で効率よく生産できるという特別有利な効果を奏する。
【0029】
すなわち、例えば、ガスバーナー60によってろう付け作業を行う場合、金属(特にステンレス鋼管10)の表面には酸化被膜が形成され、この酸化被膜は、ろうのぬれを阻害するため、従来はフラックスを用いていたが、ステンレス鋼管10の表面処理として銅メッキを行うことで、そのフラックスを塗る作業をなくすことができた。特に、熱交換器50(図9参照)に用いられるような配管に係るろう付けの場合であって、多数の接続部が密集した形態となってマトリクス状に前後左右複数列に配された場合(図8参照)には、フラックスを適切に塗る作業や、残留したフラックスを落とす作業は難しく手間がかかるが、これらの作業が不要となることで、生産性を向上できると共に、品質を安定的に向上させることできる。
【0030】
また、このステンレス鋼管10に施される銅メッキ層15の厚さについては、5μm以上であれば、酸化被膜の形成を防ぐ効果が安定的になり、安全率とコストを考慮して、5~10μm程度にするとよい。上記銅メッキとは、銅メッキ液中にステンレス鋼管10の端部11を浸漬して銅メッキ液とステンレス鋼管10との間に所定電位を印加してステンレス鋼管10の端部11に銅メッキを施す電解メッキ法が好適であるが、無電解銅メッキ法、銅の真空蒸着法などの乾式メッキ法を含む。なお、本形態例のろう付けで用いられるろう材の材質としては、りん銅ろうが用いられている。これによれば、ろう付けの品質を安定的に向上させることできると共に、ろう付けの生産性を向上できる。
【0031】
また、本形態例のように、ステンレス鋼管10と銅管20との端部11、21同士の嵌め合わせが、ステンレス鋼管の端部11に銅管の端部21が内嵌された形態に設けられていることで、熱伝導率の高い銅管の端部21が内嵌されているため、保温され易く、溶融したろうが毛細管現象によってステンレス鋼管10と銅管20との隙間40に進入し易くなり、適切にシールした状態に接続・接合することができる。
【0032】
また、本形態例では、図1~4などに示すように、ステンレス鋼管の端部11が、銅管の端部21に外嵌状態になる円筒嵌合部12と、そのステンレス鋼管10の端口が端縁に向かってテーパ状に拡径した拡径端口部13とによって設けられ、ろう付けがなされる際の拡径端口部13が上を向いて拡径された形態に保持される保持状態で、銅管20に外嵌すると共に拡径端口部13の上に位置されるようにリング状に成形されたリングろう材30が、溶融され、冷却されて固化することによって前記シールろう層が設けられている。
【0033】
これによれば、リングろう材30を、ろう付けがなされる際の拡径端口部13の開口が上を向いた保持状態で、銅管20とステンレス鋼管10との間に適切に配置することができる。すなわち、例えば図8に示すように、ガスバーナー60によってろう付け作業を自動的に行う場合において、ステンレス鋼管10と銅管20との端部11、21同士の接続部が鉛直方向に起立した状態に保持されることで、図3及び4に示すようにリングろう材30を適切に配置でき、溶融されたろうが、重力によってステンレス鋼管10の漏斗状の拡径端口部13によって受けられると共にステンレス鋼管10と銅管20との端部11、21同士の隙間40に流れ易い形態になっている。このため、ろう付けの品質を安定的に向上させることできると共に、ろう付けの生産性を向上できる。なお、前述のステンレス鋼管10と銅管20との端部11、21同士の接続部が鉛直方向に起立した状態に保持されるとは、あくまで形態例であり、本発明では、その接続部の中心軸線の軸線方向が厳密に鉛直方向と一致することを必要とするものではない。すなわち、溶融されたろうが拡径端口部13によって適切に受けられる程度に、その拡径端口部13が上を向いて拡径されているように起立していればよいのは勿論である。
【0034】
また、本形態例では、図7~9に示すように、ステンレス鋼管10が、直管をペアピン形状に曲げることで成形されたヘアピン管10Aであり、銅管20が、直管をU字状に曲げることで形成されたU字継手管20Aであって、接続されて形成された配管が、熱交換器50の熱媒体が流通する配管50aになっている(図7~9参照)。そして、本形態例では、その熱交換器50の配管50aを、図9に示すように、圧縮空気除湿装置の蒸発器55aの配管50aとして用いることができる。
【0035】
この圧縮空気除湿装置の熱交換器50では、配管の耐腐食性が要求され、ろう付けの品質が高いことが必要となるが、図9に示すように、ステンレス鋼管10を蒸発器55aの配管50aの管路長の大部分を占めるヘアピン管10Aとして用いることができ、ステンレス鋼管10と銅管20の接続部が、前述のようにろう付けによって適切に接続されるため、ろう付けの品質を安定的に向上でき、配管50aの耐腐食性を向上できる。
【0036】
次に、本発明に係る管接続構造に用いることができるリングろう材30の形態例を添付図面(図1~9)に基づいて詳細に説明する。
本発明に係るリングろう材30は、一方の管(本形態例ではステンレス鋼管10)と他方の管(本形態例では銅管20)との端部同士が嵌め合わされてろう付けによってシール状態に接続される際に用いられるろう材であって、一方の管の端部11が、他方の管の端部21に外嵌状態になる円筒嵌合部12と、その一方の管の端口が端縁に向かってテーパ状に拡径した拡径端口部13とによって設けられ、ろう付けがなされる際の拡径端口部13が上を向いて拡径された形態に保持される保持状態で、他方の管に外嵌すると共に拡径端口部13の上に位置されるようにリング状に成形されたものにおいて、そのリングろう材30の断面形状が、ろう付けがなされる際の保持状態において下側が尖った形態で、他方の管の端部21の外周面22と、拡径端口部13の拡径内面13aとの間に挿入される下側尖形部31を備える形態に設けられていることを特徴とする。
【0037】
このようにリングろう材の形状を加工することで、ろう材が一方の管(本形態例ではステンレス鋼管10)と他方の管(本形態例では銅管20)の間に入りこみやすくなり、ろう付け時の不良を減らすことができる。このため、ろう付け不良の修正を行う作業も減らすこともできる。例えば、一方の管であるヘアピン管10Aと他方の管であるUベンド(U字継手管)とのろう付けは、作業効率化のためにガスバーナーを用いる自動ろう付け機(サイドヒーティング)により多数のろう付けを一斉に行っている(図8参照)。その際に、従来は、ガスバーナーの炎の勢いによってろう材が飛んで不良となるものが発生する場合あり、後工程で作業者が手動ろう付けにて再ろう付けを行っているため効率が悪いという課題があった。これに対して、本発明にかかるリングろう材によれば、その課題を解消することができ、品質と生産性を向上させることができる。
【0038】
すなわち、本発明に係るリングろう材によれば、その下側尖形部31を一方の管10と他方の管20とが接続される端部同士の一方の管の拡径内面13aと他方の管の外周面22との間の断面三角形状のスペースに深く差し込むことができ、溶融されたろうが、外周面22と、他方の管の端部21が内嵌(遊嵌)するように筒状に拡径された円筒嵌合部12の内周面との隙間40に入り込み易くなって毛細管現象を好適に生じさせ、その隙間40の全周に行き渡ることができ、ろう付けの品質を安定的に向上できると共に、ろう付けの生産性を向上できるという特別有利な効果を奏する。
【0039】
なお、本形態例では、一方の管がステンレス鋼管10であり、他方の管が銅管20となっているが、本発明に係るリングろう材30が使用される管接続構造を構成する管材の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば、一方の管が銅管となって他方の管がステンレス鋼管であってもよく、さらに、従来の一般的な管接続構造のように一方の管も銅管20であっても良いのは勿論である。また、本形態例のリングろう材の材質としては、りん銅ろうが用いられているが、本発明に係るリングろう材については、これに限定されるものではなく、銅を主成分とした銅系ろう等の他の材質のリングろう材にも適用できるのは勿論である。
【0040】
また、本形態例のリングろう材30では、下側尖形部31のリング内周面32の下端部32aが、他方の管(本形態例では銅管20)の端部21の円筒状の外周面22に線接触するように、そのリング内周面32が下方に向かって縮径するテーパ状に設けられている。なお、本形態例の外周面22とリング内周面32との角度差(リング内周面32の勾配角θ1)は5°に設定されている。つまり、リング内周面32は、外周面22が鉛直線に平行な面とすると、その面から5°外側へ開くように傾斜した逆円錐面状に形成されている。なお、この勾配角は、これに限定されるものではなく、リング内周面32の下端部32aが、円筒状の外周面22に実質的に線接触状態に接触できる角度範囲を含むものである。なお、上記の実質的に線接触状態に接触とは、全周に渡って連続した状態で均一に線接触している理想的な場合の線接触のみを意味するものではなく、断続的や部分的であって不均一な接触である場合も含み、実質的に点接触や面接触と異なる状態を含むことを意味する。
【0041】
これによれば、図4に示すように、リングろう材30を仮に装着した状態の加熱されて溶融される前の状態では、リング内周面32の下端部32aのみが、他方の管(銅管20)の外周面22に円形に線接触する状態になっている。このため、例えば、図8のようにガスバーナーで加熱された際には、リングろう材30のリング内周面32の下端部32aから溶融が始まり、そのリングろう材30の下部から上部へ向って順次溶融することになり、安定的に溶融が進んでろう付けがなされることになる。つまり、ガスバーナーの加熱による初期段階から熱伝導性の高い銅管20を介してリングろう材30の下端部32aに伝わり、リングろう材30の溶融が適切に始まり、その後に増大される熱量によってリングろう材30の全体を適切に溶融させることができる。このようにリングろう材30の溶融が下側から順次連続的になされるため、溶融したろうは、順次重力によって下方へ流れ、銅管20の外周面22とステンレス鋼管10の円筒嵌合部12の内周面12aとの隙間40に入り込み、毛細管現象によってその隙間40に行き渡ることができ、適切なシールろう層を形成できる。従って、ろう付けの品質を安定的に向上させることができると共に、ろう付けの生産性を向上させることができる。
【0042】
また、本形態例のリングろう材30では、下側尖形部31のリング外周面33の下端部33aが、ステンレス鋼管10の拡径端口部13の拡径内面13aに線接触するように、リング外周面33が下方に向かって拡径内面13aのテーパよりも鋭角なテーパ状に設けられている。なお、本形態例では、拡径内面13aの勾配角度が45°であり、リングろう材30のリング外周面33の勾配角度が40°であって、その両者の角度差θ2は5°に設定されている。なお、この勾配角は、これに限定されるものではなく、リング外周面33の下端部33aが、拡径内面13aに実質的に線接触状態に接触できる角度範囲を含むものである。
【0043】
これによれば、図4に示すように、このリングろう材30を装着した状態の溶融する前の状態では、リング外周面33の下端部のみが、一方の管(ステンレス鋼管10)の拡径端口部13の拡径内面13aに円形に線接触する状態になっている。このため、例えば、図8のようにガスバーナーで加熱された際には、リングろう材30のリング外周面33の下端部から溶融が始まり、そのリングろう材30下部から上部へ向って順次溶融することになり、安定的に溶融が進んでろう付けがなされることになる。なお、ステンレス鋼管10は熱伝導性が銅管20よりも劣るため、リング外周面33は銅管20に接触しているリング内周面32よりも溶融が進みにくいが、リング内周面32側のリングろう材30の方がより早く溶融することで、溶融されたろうの流れはスムースになって、適切にろう付けがなされる。つまり、リング内周面32の側のリングろう材から順次溶融することで、溶融されたろうが、順次銅管20の外周面22を伝って、その円筒の外周面22とステンレス鋼管10の円筒嵌合部12の内周面12aとの隙間40に入り込むため、ろう付けの品質を安定的に向上させることができると共に、ろう付けの生産性を向上させることができる。
【0044】
ところで、図示した形態例では、リングろう材30のリング内周面32の下端部32aとリング外周面33の下端部33aの両方が周方向に線接触するように、角度差θ1及びθ2が設定されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、リングろう材30のリング内周面32とリング外周面33とにより挟まれる角度が、銅管20の外周面22とステンレス鋼管10の拡径内面13aとにより挟まれる角度より小さくなっている場合、前述のように角度差θ1及びθ2を有してもよく、あるいは角度差θ1又はθ2を零としてもよい。
【0045】
さらに、本形態例のリングろう材30では、図4に示すように、下側尖形部31を備えて他方の管20の外周面22に外嵌するリングろう材30の断面形状について、その断面形状の図形的な重心Gが、前記ろう付けがなされる際の前記保持状態で、拡径端口部13の拡径内面13aにおける拡径縁13bよりも内側に位置するように設けられている。なお、重心Gが拡径縁13bよりも内側に位置するとは、重心Gから銅管20の外周面22までの距離が、拡径縁13bから銅管20の外周面22までの距離よりも、短いことを意味している。
【0046】
これによれば、リングろう材30が溶融される際に内側へ向って傾斜し易く、溶けたろうが拡径端口部13の拡径内面13aの内側で適切に受けられて外に漏れないように、順次隙間40に入り込み、毛細管現象によってその隙間40に行き渡されることができる。すなわち、これによれば、図8に示すようなサイドヒーティング方式の自動ろう付け機を利用して、ろう付けを効率的に行うことができる。
【0047】
なお、本形態例のリングろう材30の断面形状は、下端の先が尖ったおおよそ三角形の形状になっている。そして、このリングろう材30のリング形の外径形状は、逆円錐台形状になっている。また、このリングろう材30のリング形の内径形状(リング内周面の全体形状)は、リング形の外径形状よりもテーパの角度の鋭角な逆円錐台形状になっている。 この形状によれば、前述のように下側尖形部31を備えて重心Gを適切に設定できると共に、従来の円形のリングろう材と断面積が同等であって同等の体積を備えるリングろう材30を適切に形成することができる。
【0048】
また、本発明に係るリングろう材30では、図5に示すように、切れ目35のあるリング状に成形された形態であって、その切れ目35が斜めにカットされたスリット状であり、ろう付けがなされる際に保持される状態において、その切れ目35を形成する上側斜めカット部35aと下側斜めカット部35bとが上下方向に重なるように設けられていることを特徴とすることができる。
【0049】
これによれば、図10及び11に示したような従来の断面が円形のリングろう材に比較して、リングろう材30が下側から溶融される際に、上側斜めカット部35aと下側斜めカット部35bとが上下に交錯しているため、切れ目35を塞ぐように溶融したろうが流れ易くなり、そのろうが銅管20の外周面22とステンレス鋼管10の円筒嵌合部12の内周面12aとの隙間40の全周について連続して入り込み易くなるため、ろう付けの品質を安定的に向上させることができると共に、ろう付けの生産性を向上させることができる。
【0050】
さらに、本発明に係るリングろう材30の他の形態例としては、図6に示すように、切れ目36のあるリング状に成形された形態であって、その切れ目36が斜めにカットされたスリット状であり、ろう付けがなされる際に保持される状態において、その切れ目36を形成する内側斜めカット部36aと外側斜めカット部36bとがリングの径方向に重なるように設けられていることを特徴とすることができる。
【0051】
これによっても、図10及び11に示したような従来の断面が円形のリングろう材に比較して、リングろう材30が下側から溶融される際に、内側斜めカット部36aと外側斜めカット部36bとがリングの径方向に交錯しているため、切れ目36を塞ぐように溶融したろうが流れ易くなり、そのろうが銅管20の外周面22とステンレス鋼管10の円筒嵌合部12の内周面12aとの隙間40の全周について連続して入り込み易くなるため、ろう付けの品質を安定的に向上させることができると共に、ろう付けの生産性を向上させることができる。
【0052】
また、本発明に係るリングろう材30では、切れ目のあるリング状に成形された形態であって、その切れ目が斜めにカットされたスリット状であり、その切れ目によって形成される一対の斜めカット部が、図5に示す特徴と図6に示す特徴の両方を兼ね備えたものであっても良いのは勿論である。すなわち、切れ目が3次元的に形成され、一対の斜めカット部が、ろう付けがなされる際に保持される状態において、上下方向と径方向の両方に重なる形態であってもよい。これによっても、図5図6の形態例と同等の効果を得ることができる。
【0053】
次に、本発明に係る管接続構造の製造方法の例について説明する。
以上に記載の管接続構造に係る製造方法であって、ろう付けを行う方法が、図8に示すようなガスバーナー60の炎をサイドから当てるサイドヒーティング方式の自動ろう付け機を用いてろう材を加熱・溶融させるガスろう付け法であることを特徴とすることができる。
【0054】
すなわち、以上に記載した管接続構造によれば、サイドヒーティング方式の自動ろう付け機を利用して、ろう付けを効率的に行うことができる。従来では、このサイドヒーティング方式の自動ろう付け機を用いた場合に、ガスバーナー60の炎で吹き付ける際、ろうが飛散して外に漏れるという課題があったが、以上に記載の管接続構造やリングろう材30を採用することで、その問題点を解消することができた。
【0055】
また、前述のように、ステンレス鋼管10の端部が銅メッキされた管接続構造については、ろう付けがなされる部位に、ぬれ性を向上させて酸化被膜が形成されることを防止するためのフラックスを塗布しない状態で、ろう付けを行う管接続構造の製造方法を採用することができる。
【0056】
これによれば、ステンレス鋼管10と銅管20とを接続するろう付け作業の場合において、その接続部にフラックスを塗布する工程が不要になり、ろう付け工程の後に残存フラックスを除去する工程も不要になるため、ろう付けの品質を維持しつつ、ろう付けの生産性を向上させることができる。
【0057】
ところで、本発明に係るリングろう材を溶融させる加熱手段としては、高周波による加熱、加熱板や電気炉であってもよい。
【0058】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0059】
10 ステンレス鋼管(一方の管)
10A ヘアピン管
11 ステンレス鋼管の端部(一方の管の端部)
12 円筒嵌合部
12a 内周面
13 拡径端口部
13a 拡径内面
13b 拡径縁
14 曲げ部
15 銅メッキ層
20 銅管(他方の管)
20A U字継手管
21 銅管の端部(他方の管の端部)
22 外周面
30 リングろう材
31 下側尖形部
32 リング内周面
32a リング内周面の下端部
33 リング外周面
33a リング外周面の下端部
35 切れ目
35a 上側斜めカット部
35b 下側斜めカット部
36 切れ目
36a 内側斜めカット部
36b 外側斜めカット部
40 隙間
50 熱交換器
50a 配管
50b フィン
51 導入口
52 排出口
53a 一次冷却用の流路
53b 二次冷却用の流路
53c 再熱用の流路
54 ドレン排出口
55 冷凍サイクル
55a 蒸発器
55b 圧縮機
55c 凝縮器
55d 受液器
55e キャピラリチューブ又は電子膨張弁
60 ガスバーナー
θ1 リング内周面の勾配角
θ2 角度差
G 重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11